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特許の中間処理で作った補正案の各箇所について、出願当初の明細書・図面のどこに根拠があるかを対応表にし、根拠が見つからない箇所を弁理士の確認に回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

拒絶理由への応答で作った補正案を、補正箇所ごとに分け、出願当初の明細書のどの段落に根拠の記載があるかを引用付きで対応表にします。根拠が見つからない箇所だけを弁理士の確認に回します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Python
対象業界
IT・SaaS/医療/士業/製造
対象部門
知財
対象業務
内容確認・チェック/比較検討
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 特許事務所から補正書案と意見書案が、メールに添付されて届く
  2. 担当者が補正前と補正後の請求項を並べ、変わった文言に印を付ける
  3. 出願時の明細書のPDFを開き、印を付けた文言で検索して段落を探す
  4. 見つからないものは、実施例や図面の説明を読み直して、言い換えの記載を探す
  5. 意見書案の「補正の根拠」に書かれた段落番号と、自分が見つけた段落を見比べる
  6. 補正箇所と根拠の段落を表計算ソフトの対応表にまとめる
  7. 根拠が見つからない箇所や、段落番号が食い違う箇所を、特許事務所の担当弁理士へ照会する
導入後(After)
  1. 人担当者が、届いた補正書案と意見書案を案件フォルダの「補正案」に保存する
  2. 自動保存をきっかけに処理が動き、整理番号から出願時に提出した明細書の電子データを取り出す
  3. 自動補正前と補正後を機械的に比べ、補正箇所を1つずつの単位に分ける
  4. 自動当初明細書を段落ごとのかたまりにして、Claude API に渡す形へ変える
  5. 自動Claude API が、補正箇所ごとに根拠の候補となる段落を引用付きで返す
  6. 自動引用の位置と文字列を、手元の当初明細書と照合する。数値は境界値が書かれているかを別に確かめる
  7. 自動Claude API が、照合の結果を見て補正箇所ごとに区分を付ける
  8. 自動意見書案の「補正の根拠」の段落番号と、見つかった段落を見比べる
  9. 自動対応表を作り、根拠が見つからない箇所と食い違う箇所に「弁理士確認」の印を付ける
  10. 人担当者が対応表を確かめ、印の付いた箇所を特許事務所の弁理士へ照会する
  11. 人弁理士が判断し、補正案を直すか、意見書の根拠の説明を書き足す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 特許事務所から補正書案と意見書案が、メールに添付されて届く
  2. 担当者が補正前と補正後の請求項を並べ、変わった文言に印を付ける
  3. 出願時の明細書のPDFを開き、印を付けた文言で検索して段落を探す
  4. 見つからないものは、実施例や図面の説明を読み直して、言い換えの記載を探す
  5. 意見書案の「補正の根拠」に書かれた段落番号と、自分が見つけた段落を見比べる
  6. 補正箇所と根拠の段落を表計算ソフトの対応表にまとめる
  7. 根拠が見つからない箇所や、段落番号が食い違う箇所を、特許事務所の担当弁理士へ照会する

(a)補正箇所を拾い漏らす。 独立請求項の補正には目が行きますが、従属請求項の引用関係の変更や、明細書の段落の補正は印を付け忘れます。 拾わなかった補正箇所は、根拠の確認もされません。

(b)言い換えた文言は検索で見つからない。 補正後の請求項に「弾性部材」とあっても、明細書には「ばね」「コイルスプリング」としか書かれていないことがあります。文字列の検索で見つからないとき、記載がないのか、言い換えなのかを読んで決めるところで時間が消えます。

(c)数値の範囲は読み落とす。 「10〜50%」を「20〜40%」に狭める補正は、20と40が明細書に書かれているかを確かめる必要があります。実施例の表の中にだけ書かれている数値は、検索しても段落の本文から外れます。

(d)確認の深さが人で違う。 意見書案の段落番号を信じてそのまま返す担当者と、全部を開いて確かめる担当者がいます。どちらで処理されたかは、対応表を見ても分かりません。

  1. 【人】 担当者が、届いた補正書案と意見書案を案件フォルダの「補正案」に保存する
  2. 【自動】 保存をきっかけに処理が動き、整理番号から出願時に提出した明細書の電子データを取り出す
  3. 【自動】 補正前と補正後を機械的に比べ、補正箇所を1つずつの単位に分ける
  4. 【自動】 当初明細書を段落ごとのかたまりにして、Claude API に渡す形へ変える
  5. 【自動】 Claude API が、補正箇所ごとに根拠の候補となる段落を引用付きで返す
  6. 【自動】 引用の位置と文字列を、手元の当初明細書と照合する。数値は境界値が書かれているかを別に確かめる
  7. 【自動】 Claude API が、照合の結果を見て補正箇所ごとに区分を付ける
  8. 【自動】 意見書案の「補正の根拠」の段落番号と、見つかった段落を見比べる
  9. 【自動】 対応表を作り、根拠が見つからない箇所と食い違う箇所に「弁理士確認」の印を付ける
  10. 【人】 担当者が対応表を確かめ、印の付いた箇所を特許事務所の弁理士へ照会する
  11. 【人】 弁理士が判断し、補正案を直すか、意見書の根拠の説明を書き足す

10番目と11番目が、この設計の分かれ目です。 AIは「見つからない」とまでしか言いません。見つからない箇所が自明な事項として許されるか、補正を直すべきかは弁理士が決めます。 対応表は、その判断を早く始めるための材料です。

6番目を機械に置いているのも意図してのことです。 引用の正しさをAIに確かめさせると、AIの答えをAIが追認する形になります。文字列の照合は、こちらのコードで行います。

02今回想定するシステム構成

構成図
補正書案・意見書案(特許事務所から届いたもの)
   │  案件フォルダの「補正案」へ保存
   ▼【トリガー】ファイルの保存
Power Automate ── 整理番号から出願時の明細書の電子データを取る
   ▼
Python ── 補正前後の差分 → 補正単位に分割/当初明細書を段落ごとのかたまりに
   ▼
Claude API(引用機能あり)── 補正単位ごとに根拠の候補を引用付きで返す
   ▼
Python ── 引用の段落番号と文字列の照合/数値の境界値の照合
   ▼
Claude API(構造化出力)── 補正単位ごとの区分を付ける
   ▼
対応表(根拠あり/組み合わせ/図面のみ/見つからない/数値要確認)
   ▼
【人】担当者が確認 → 弁理士へ照会 → 弁理士が判断
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(根拠の候補の引用付き検索と、補正単位ごとの区分付け)OpenAI API、Gemini API
差異計算Python(補正前後の差分、引用の照合、数値の境界値の照合)差分比較ツールの手作業
連携Power Automate(案件フォルダの監視と、対応表の書き出し)Make、n8n
保管SharePoint(案件フォルダと対応表)Box、社内のファイルサーバー

知財管理システムには書き込みません。 期限と提出書類の正本はそちらにあり、対応表は提出前の確認の記録です。

Claude API を2回呼ぶのは、引用機能と構造化出力を同時に使えないためです。 引用機能は、回答の文に「どの文書のどこから取ったか」を付けて返す機能で、引用した文字列(cited_text)は出力トークンに数えられません。一方、公式ドキュメントは、引用機能を有効にした文書と output_config.format を同じリクエストに入れると 400エラーになると明記しています。そこで、1回目で引用付きの候補を集め、2回目で区分をJSONで返させます。

当初明細書は「カスタムコンテンツ文書」として渡します。 プレーンテキストやPDFは自動で文単位に区切られますが、カスタムコンテンツ文書は渡したかたまりがそのまま引用の単位になり、引用はかたまりの番号(0始まり、終わりは含まない)で返ります。かたまりを段落【0001】【0002】…に合わせておけば、返ってきた番号がそのまま段落番号に戻せます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

案件フォルダの「補正案」サブフォルダにファイルが保存されたことを起点にします。 補正案は特許事務所から届いた順に処理し、1日1回にまとめません。応答期限まで日数がない案件ほど、照会の往復に時間を残したいからです。

動かすのは、補正書案と意見書案の両方がそろったときだけです。 片方だけで動かすと、意見書案の根拠欄との照合(After の8番目)ができません。ファイル名の決まり(整理番号_補正書案_v1.docx のような形)を特許事務所と取り決め、同じ整理番号の2つがそろった時点で1件として扱います。 版が上がったもの(v2)が届いたら、前の版の結果は残したまま、もう一度最初から動かします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
補正書案補正後の請求項全文、明細書の補正箇所(段落番号と補正後の文)案件フォルダ
意見書案補正の根拠の欄(補正箇所ごとの段落番号・図番号)案件フォルダ
当初明細書等出願時に提出した明細書・特許請求の範囲・要約書の文字データと、図面のPDF出願時の電子データ
直前の請求項今回の補正の直前の請求項(前回までの補正を反映したもの)知財管理システムの書類
案件の属性出願の種類(通常/分割/外国語書面/国際出願の移行)、過去の補正の有無知財管理システム

いちばん間違えやすいのは3行目です。 根拠を探す先は出願当初の明細書等で、前回の補正で書き換わった後の明細書ではありません。最新の版を引くと、前回の補正で足した文言が「根拠あり」と出ます。取り出すのは出願日に提出したファイルに限り、取り出したファイルのハッシュ値を記録します。

4行目の直前の請求項は、差分を取るために使います。 補正前として比べるのは、当初の請求項ではなく、今回の補正の直前の請求項です。差分の元と根拠の探し先は、別のファイルです。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
補正後の請求項・明細書の補正箇所補正書案(Word)補正単位の切り出し
補正の根拠の欄意見書案(Word)の「補正の根拠」の見出しの下段落番号の照合
当初明細書の段落出願時の電子データ(段落番号の付いたテキスト)根拠を探す先
当初の図面出願時の図面のPDF図面にだけ記載がある場合の候補探し
出願の種類知財管理システムの案件情報対象外の判定

当初明細書は、出願時の電子データから文字で取ります。 公式ドキュメントによると、文字を取り出せないスキャンのPDFは引用できません(画像からの引用は未対応)。出願時のデータがスキャン画像しか残っていない案件は、この構成の対象から外します。

図面だけは別の扱いです。 PDFを渡すとページごとに文字と画像の両方が渡り、図や表も読めます。ただし画像からの引用は返りません。 図面に根拠があるかどうかは、引用の照合ができない候補として扱います。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 出願の種類の確認 … 外国語の書面で出願した案件と国際出願から移行した案件は、どの書面を当初明細書等として読むかを弁理士が決めるため、処理せずに担当者へ戻します
  2. 当初明細書の段落分け … 【0001】のような段落番号ごとに1つのかたまりにします。特許請求の範囲は請求項ごと、図面の簡単な説明は図ごとに1つのかたまりにし、かたまりの番号と段落番号の対応表を手元に持ちます
  3. 表の展開 … 実施例の表は、行ごとに「表1・実施例3・温度・24℃」のような文に直してかたまりに入れます。表のままだと、数値の境界値が検索から外れます
  4. 補正前後の差分 … 直前の請求項と補正後の請求項を、請求項ごとに文字単位で比べます。追加された文言、削除された文言、変更された引用関係を取り出します
  5. 補正単位への分割 … 追加された文言を「意味のかたまり」ごとに分けます。1つの請求項に3か所の追加があれば、3つの補正単位です。削除だけの補正も単位として残し、区分は deletion にします
  6. 数値の取り出し … 補正単位の中の数値と単位、範囲の上限・下限を取り出します。全角と半角、「〜」「~」「-」の表記をそろえます
  7. 除くクレームの検知 … 「(ただし、〜を除く。)」の形の補正は exclusion の印を付けます。審査基準が別に考え方を示している類型なので、根拠の検索はしても、区分は必ず弁理士確認にします

2番目と3番目がこの構成の質を決めます。 かたまりの切り方が、そのまま引用の単位になります。段落より細かく切ると番号の対応が崩れ、粗く切ると「どこに書かれているか」がぼやけます。

Step5

AIに処理させる

1回目(引用機能あり)でさせるのは、補正単位ごとに、根拠の候補となる記載を当初明細書から引用することだけです。

させること中身
文言そのものの記載を探す補正で追加された文言と同じ語句がある段落
言い換えの記載を探す同じものを別の語で書いている段落(「弾性部材」に対する「コイルばね」など)
組み合わせを示す1つの段落では足りず、複数の段落を合わせて読む必要がある場合は、全部を引用する
見つからないと答える候補がなければ、引用を付けずに「候補なし」と書く

2回目(構造化出力)でさせるのは、照合を終えた引用を見て、区分を1つ付けることです。

区分意味扱い
explicit補正の文言と同じ語句が、1つの段落に書かれている対応表に載せる
paraphrase同じものを指すと読める別の語句が書かれている弁理士確認
combined複数の段落を合わせて読む必要がある弁理士確認
drawing_only文章には見つからず、図面にだけ候補がある弁理士確認
numeric_check数値の範囲の補正境界値の照合結果とあわせて弁理士確認
not_found候補が見つからない弁理士確認
deletion / exclusion削除だけの補正/除くクレーム弁理士確認
させないこと理由
新規事項に当たるかの結論当業者の技術常識に照らす判断。弁理士が行う
「自明である」という評価審査基準は、周知技術であるだけでは自明といえないとしている
補正の文言の修正案権利範囲を変える判断。特許事務所と技術者が決める
引用の正しさの自己確認照合はコードで行う
段落番号の推測引用の位置からだけ決める

2行目がいちばん起きやすい失敗です。 根拠が見つからないとき、AIは「当業者にとって自明」と書いて埋めようとします。その一文で、弁理士に回るはずの箇所が対応表から消えます。

Step6

指示内容を固定する

1回目(引用機能あり)の指示です。当初明細書はカスタムコンテンツ文書として、この指示の前に渡します。

あなたは特許の中間処理で、補正の根拠となる記載を探す担当です。
渡した文書は、出願当初の明細書・特許請求の範囲・図面の簡単な説明を
段落ごとに区切ったものです。この文書だけを根拠にしてください。

【補正単位】{amendment_unit}
  補正の種類:{change_type}(追加/変更)
  補正後の文言:{added_text}
  補正前の文言:{before_text}

【探し方】
1. 補正後の文言と同じ語句が書かれた段落を探し、引用してください。
2. 同じ語句がなければ、同じものを指すと読める別の語句の段落を探し、
   引用してください。そのとき「言い換えの候補」と書いてください。
3. 1つの段落で足りないときは、合わせて読む段落をすべて引用し、
   「組み合わせ」と書いてください。
4. 候補がなければ「候補なし」とだけ書き、引用を付けないでください。

【厳守事項】
- 引用は文書の中の記載だけにしてください。文書にない内容を、
  技術常識や一般的な知識から補わないでください。
- 「自明である」「当業者であれば理解できる」と評価しないでください。
- 新規事項に当たるか、補正が許されるかを書かないでください。
- 補正の文言を直す提案をしないでください。
- 数値は、補正後の範囲の上限と下限のそれぞれについて、
  その数値が書かれた記載を探してください。範囲の中に入る
  別の数値の記載は、境界値の根拠として扱わないでください。

2回目(構造化出力)の指示です。

次の補正単位について、根拠の候補の照合結果を読み、区分を1つ選んでください。

【補正単位】{amendment_unit}
【1回目の回答と引用(照合済み)】{verified_citations}
【数値の境界値の照合結果】{numeric_check}
【意見書案の根拠欄】{stated_basis}

【区分の選び方】
- explicit ...... 補正の文言と同じ語句が1つの段落にあり、照合が一致した
- paraphrase .... 別の語句の段落しかない
- combined ...... 複数の段落を合わせる必要がある
- drawing_only .. 文章に候補がなく、図面に候補がある
- numeric_check . 数値の範囲の補正(照合結果にかかわらずこれを選ぶ)
- not_found ..... 候補がない、または引用が照合で一致しなかった
迷ったときに explicit を選ばないでください。
照合で一致しなかった引用は、なかったものとして扱ってください。
reason には、区分を選んだ理由を事実だけで1文で書いてください。

「迷ったときに explicit を選ばない」を明記しないと、言い換えが explicit に寄ります。 explicit は対応表で流し見される区分なので、ここに紛れた1件は誰にも見られずに提出されます。

Step7

出力形式を固定する

2回目の出力は、次の形のJSONで受け取ります。

{
  "case_id": "",
  "amendment_units": [
    {
      "unit_id": "C1-02",
      "location": "claim_1",
      "change_type": "addition | change | deletion",
      "added_text": "",
      "category": "explicit | paraphrase | combined | drawing_only | numeric_check | not_found | deletion | exclusion",
      "basis": [
        { "paragraph": "0023", "cited_text": "", "match": "exact | partial | none" }
      ],
      "numeric": { "lower": "", "upper": "", "lower_found": false, "upper_found": false },
      "stated_basis": ["0023"],
      "stated_basis_check": "agree | differs | not_stated",
      "reason": ""
    }
  ]
}

1つ目の理由は、区分と照合結果を別の欄に置けることです。 category はAIが付け、basis の match と numeric の結果はコードが入れます。AIが explicit と付けても、match が exact でなければ、対応表では弁理士確認に回します。 判断の最後をコードの側に置きます。

2つ目は、意見書案の根拠欄と並べられることです。 stated_basis_check が differs の行は、特許事務所が別の段落を書いてきたか、こちらの切り方がずれています。どちらであっても、提出前に確かめるべき行です。

構造化出力では、スキーマのすべてのオブジェクトに additionalProperties: false を付けます。公式ドキュメントは、文字列の長さや数値の範囲の制約がスキーマで使えないとしているため、段落番号の形(4桁)の確認はコードで行います。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
案件フォルダPower Automate のトリガー補正書案と意見書案の保存を検知する
出願時の電子データフォルダの読み取り当初明細書等を取り出し、ハッシュ値を記録する
Python の処理Power Automate から呼び出す差分、補正単位への分割、引用と数値の照合
Claude APIAPI呼び出し(2回)引用付きの候補探しと、区分付け
対応表案件フォルダへの書き出し補正単位ごとの1行と、弁理士確認の印
担当者への通知メールまたはチャット弁理士確認の件数と、対応表の場所

特許事務所へは、自動では何も送りません。 照会するかどうか、どう書くかは担当者が決めます。対応表をそのまま転送する運用もしません。 区分の名前は社内の取り決めで、特許事務所にとっては説明のない符号です。

Step9

人が確認する

担当者が見るのは、explicit 以外の行です。 explicit で match が exact の行は、引用の文字列を一覧で流し見て終わりにします。

  1. not_found と exclusion を先に見る … 弁理士の判断がいちばん要る行です。照会の文面に、どの補正単位かと、見つからなかった事実を書きます
  2. paraphrase と combined を読む … 引用された段落を開き、言い換えとして読めるかを確かめます。読めると考えても、判断は弁理士に任せ、照会に含めます
  3. numeric_check の境界値を見る … 上限と下限のそれぞれが書かれているか、補正後の範囲が当初の範囲に入っているかを確かめます
  4. differs の行を見る … 意見書案の段落番号が違う理由を確かめ、特許事務所に伝えます
  5. 判定を覆したら記録する … どの補正単位を、どの区分に変えたかを残します

2番目で担当者が結論を出さないことが大事です。 言い換えとして読めるかどうかは、審査基準のいう「自明な事項」の判断そのものに近く、知財部の担当者が引き受けてよい判断ではありません。

目標は、40件をならして1件30分です。 補正単位のうち explicit 以外が3割前後という想定です。それより多い月は、かたまりの切り方が粗いか、特許事務所の補正の書き方が変わっています。 事務所ごとに explicit の割合を数えておくと、どちらが原因かが分かります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
出願時の電子データが見つからない処理を止め、担当者へ通知。最新版の明細書で代わりに動かさない
外国語書面出願・国際出願の移行案件前処理で対象外にし、担当者へ戻す
補正書案と意見書案の片方しか届かない待機させ、2日たっても揃わなければ担当者へ通知
段落番号のない明細書段落分けができないため処理を止める
意見書案に根拠欄がない区分付けまでは進め、全行を not_stated にして担当者へ通知
補正後の請求項に請求項番号の付け替えがある番号でなく文言で補正前後を対応づけ、対応がつかない請求項は弁理士確認
引用の位置が当初明細書と一致しないその引用を捨て、not_found として扱う
補正単位が1件で30を超える全体の書き直しに近いため、弁理士にまとめて見てもらう
引用機能と構造化出力を同じ呼び出しに入れた400エラーになる。設定の誤りなので、2回に分ける作りを直す
APIが応答しない案件を「未処理」のまま残し、再実行する

上から2行がいちばん重い例外です。 どちらも、根拠を探す先を取り違える失敗です。代わりのファイルで動かせば結果は出ますが、その結果は誤りです。

Step11

記録を残す

  • 補正書案・意見書案の版と、受け取った日時
  • 使った当初明細書等のファイル名とハッシュ値
  • 補正単位の一覧と、差分の結果
  • 1回目の回答と引用の全文、照合の結果(match)
  • 2回目のJSON(区分と理由)
  • 担当者が区分を覆した記録と、弁理士への照会と回答の日付
  • 最終的に提出した補正書との対応(どの補正単位が直されたか)

2つ目のハッシュ値は、後から「どの明細書と照らしたか」を示すためです。 補正の適否が審査で争われたとき、当時の確認が当初明細書と照らしたものだったことを示せます。

最後の行は、プロンプトと前処理を直す材料になります。 paraphrase と付いたのに弁理士が「明示的な記載あり」と判断した行が多ければ、かたまりの切り方か表の展開に原因があります。

04実装レベルの3段階

最小構成:当初明細書と補正の文言を手で貼り、根拠の段落を示させる / 1つずつの根拠の候補探し
半自動化:上記+補正前後の差分で補正単位を自動で切り出し、APIの引用機能で候補を集めて一覧にする / 補正箇所の洗い出しと候補の一覧化
本格構成:上記+引用と数値の照合、区分付け、意見書案の根拠欄との照合、対応表と通知までを自動で行う / 根拠の確認の全体と、弁理士確認の切り分け

半自動化で、補正箇所の拾い漏れがなくなります。 差分は機械が取るので、従属請求項や明細書の段落の補正も単位として出てきます。ただし、引用の正しさの確認と区分付けは人が行うため、1件90分は大きくは減りません。 本格構成で照合と区分付けが自動になり、人が見るのは区分の付いた行だけになります。 この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1か月見ると、引用の番号がずれる明細書の書式と、表の中にしか数値がない案件の傾向が先に分かります。前処理をそこで直してから区分付けを足すほうが、explicit に紛れる行が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
90 分
1件あたり導入後時間
30 分
現在  40件 × 90分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 40件 × 30分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価5,000円)
240万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 国内の特許出願を数百件単位で持ち、拒絶理由通知への応答で補正書を出す件数が毎月数十件ある製造業・医療機器メーカー・ソフトウェア企業の知財部門や、出願人から預かった案件の中間処理を多く抱える特許事務所。補正案を特許事務所が作り、知財部が提出前に「補正の根拠」を確かめているが、確認の深さが担当者によって違う場合。出願時の明細書を段落番号付きの電子データで保管している場合。
向いていない
  1. 中間処理の件数が月に数件で、担当弁理士が毎回すべて読み直せている場合。出願時の明細書が紙かスキャン画像でしか残っておらず、文字を取り出せない場合。外国語の書面で出願した案件や国際出願から移行した案件が中心の場合。未公開の出願の内容を社外のAPIへ送ることを社内規程で認めていない場合。なお、補正が新規事項の追加に当たるかどうか、自明な事項といえるかどうかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去に提出した補正書のうち、拒絶理由で新規事項を指摘されたものを含めて10件を選ぶ
  2. 10件それぞれについて、当初明細書のテキストと補正後の請求項を用意する
  3. Claude の画面に当初明細書を貼り、補正で追加した文言を1つずつ示して「この文言の根拠となる段落を、段落番号と記載をそのまま写して示してください。なければ『候補なし』と答えてください。自明かどうかは評価しないでください」と指示する
  4. 示された段落番号を、自分で当初明細書を開いて確かめる
  5. 当時の意見書の根拠欄と、審査の結果と見比べる
出てきた内容判断
当時と同じ段落が示され、記載も一致したAPIと照合の仕組みに進む
段落番号は合うが、写した記載が原文と違う照合をコードで行う理由そのもの。構成は有効
新規事項と指摘された補正に、段落を示した「候補なし」と答えさせる指示が弱い。ここを直すまで進まない

3行目が出たら、それがこの構成で最初に直すところです。 指摘を受けた補正にAIが根拠を示すなら、対応表は安心材料にしかなりません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
最新版の明細書を根拠の探し先にしてしまう出願日に提出したファイルに限る。 ハッシュ値を記録する
差分の元に当初の請求項を使う差分の元は今回の補正の直前の請求項。探し先とは別のファイル
引用機能と構造化出力を1回で使おうとする400エラーになる。2回に分ける
返ってきた番号と段落番号がずれるかたまりを段落に合わせ、番号の対応表を手元に持つ。かたまりの番号は0始まり
表の中の数値が見つからない前処理で行ごとの文に直す
言い換えが explicit に入る「迷ったら explicit を選ばない」を指示に書き、match が exact でなければ弁理士確認に回す
「自明である」と書いて埋める指示で禁じ、reason にその語があれば弁理士確認に回す
スキャンのPDFしかない引用できない。対象から外す
図面にだけ根拠がある画像からの引用は返らない。drawing_only として必ず人が見る
担当者が言い換えを自分で認めてしまう判断は弁理士に任せる運用を、知財部の取り決めとして文書にする
特許事務所ごとに補正書案の書式が違うファイル名と、補正箇所の書き方(下線・取消線など)を事務所と取り決める
請求項の番号が付け替えられて差分が崩れる番号でなく文言の近さで補正前後を対応づける

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 最初の2つはファイルの取り違えで、AIの精度とは関係ありません。3つ目は作り始めて最初に当たる壁で、公式ドキュメントに明記されている仕様です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 出願当初の明細書と図面、補正書案、意見書案です。公開前の出願が含まれ、補正案は審査への対応方針そのものです。

  1. 未公開の出願を社外に送ってよいかを先に決める … 公開前の出願は、まだ誰も見ていない技術情報です。対象を公開済みの出願に限るか、送る前提で契約とデータの扱いを確かめるかを、知財部と情報システム部門で決めます
  2. データの保持を確かめる … 公式ドキュメントでは、保存データは明示の許可なく学習に使われず、会話の内容は既定では保持されないとされています。ただし、30日の保持が必要なモデル(Covered Models)があり、ゼロデータ保持(ZDR)は組織ごとに営業窓口へ依頼するものです。Batch API と Files API はZDRの対象外なので、使わない作りにします
  3. この構成は新規事項の判断を代替しません … 出すのは「明示的な記載の候補が見つかったか」という事実までです。補正が許されるかの判断は弁理士が行います
  4. 対応表を外部へそのまま出さない … 社内の区分と照合の結果は、審査対応の検討の記録です
  5. 特許事務所との役割分担を取り決める … 対応表があることで、特許事務所の確認が薄くなっては意味がありません。根拠の確認の責任は従来どおり特許事務所にあり、知財部の対応表は二重の確認という位置づけを、契約や依頼の際に伝えます

誤りが起きた場合のリスクは、根拠のない補正を見落として提出することです。その補正は審査で新規事項として指摘され、場合によっては応答の機会が限られた段階で起きます。explicit の判定をコードの照合で裏付ける作りは、この見落としを防ぐためにあります。

10まず何から始めるか

1週目:出願時の電子データの置き場所を確かめる

係属中の案件について、出願日に提出した明細書の電子データがどこにあるかを洗い出します。段落番号付きの文字データで残っているか、スキャンしかないかを数えます。ここで対象にできる案件の割合が決まります。

2週目:10件で試す

第8章のとおり、新規事項を指摘された補正を含む10件で、根拠の段落を示させます。「候補なし」と答えるべきところで答えられるかを最優先で見ます。

3週目:区分と運用を決める

区分の名前と、どの区分を弁理士確認に回すかを、特許事務所と知財部で決めます。あわせて、補正書案・意見書案のファイル名の決まりを特許事務所に依頼します。

4週目:差分と引用までをつなぐ

補正単位の切り出しと、1回目の引用付きの候補探しまでを作ります。この時点では区分を付けず、引用の照合結果だけを見ます。

2か月目: 2回目の区分付けと、意見書案の根拠欄との照合を足します。弁理士確認の件数を毎週数えます。3か月目以降: 1件90分が何分になったかを実測し、担当者が区分を覆した記録を見て前処理を直します。paraphrase と not_found の判定が弁理士の判断と大きくずれなくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-05/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
特許法第17条の2第3項が、補正を当初明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならないと定めていること。判断は新たな技術的事項を導入するか否かで行い、当初明細書等に記載した事項とは当業者が全ての記載を総合して導く技術的事項であること。明示的な記載、自明な事項、各種の補正の3つの類型で判断すること。周知技術・慣用技術であるだけでは自明といえないこと。数値範囲の境界値を変更する補正は、境界値が当初明細書等に記載され、新たな範囲が当初の範囲に含まれる場合に許されること。除くクレームとする補正に別の考え方が示されていること特許庁: 特許・実用新案審査基準 第IV部第2章 新規事項を追加する補正2026-10-05
引用機能がすべての現行モデルで使えること。PDF・プレーンテキスト・カスタムコンテンツの3種の文書に対応し、カスタムコンテンツは渡したかたまりをそのまま引用の単位にし、番号が0始まりで終わりを含まないこと。cited_text が出力トークンに数えられないこと。画像からの引用が未対応で、文字を取り出せないスキャンのPDFは引用できないこと。引用機能と構造化出力(output_config.format)を併用すると400エラーになることClaude Docs: Citations2026-10-05
構造化出力がJSON出力と厳格なツール利用からなり、有効なJSONと必須項目を保証すること。すべてのオブジェクトに additionalProperties: false が必要なこと。数値の範囲と文字列の長さの制約が使えないことClaude Docs: Structured outputs2026-10-05
PDFがページごとに画像に変換され、文字とあわせて渡されること。図や表を読めること。パスワード付き・暗号化されたPDFは使えないこと。繰り返しの分析にプロンプトキャッシュを使えることClaude Docs: PDF support2026-10-05
保存データが明示の許可なく学習に使われないこと。会話の内容が既定では保持されず、Covered Models は30日の保持が必要なこと。ZDR を組織ごとに営業窓口へ依頼すること。Batch API と Files API が ZDR の対象外であることClaude Docs: API and data retention2026-10-05

補正が新規事項の追加に当たるかは、担当の弁理士が判断してください。 本記事は特許庁と各社の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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