新しい取引先の登録の申請を Power Automate で受け、添付の登記・口座・インボイスの登録番号の書類と申請の記載の食い違いと不足を拾う
購買の担当が出す新規取引先の登録の申請を受け、添付の登記・口座・登録番号の書類から必要な項目を取り出します。申請の記載と国税庁の公表情報に照らし、食い違いと不足の一覧をマスタ登録の前に返します。
- 生成AI
- Azure OpenAI Service/Claude
- 連携・自動化
- Make/n8n/Power Automate/Zapier
- 対象業界
- 商社/建設/製造
- 対象部門
- 経理/購買
- 対象業務
- 内容確認・チェック/比較検討
- 主な課題
- 人手が足りない/入力作業が多い/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 抽出
- 主な効果
- 入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- ノーコード連携(中)
- 人間の確認
- 必須
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 拠点の購買の担当が、申請をリストに出し、3種類の書類を添付する
- 本社の購買部の担当が申請を開き、添付を1つずつ開く
- 登記事項証明書の商号・本店・代表者と、申請の会社名・所在地・代表者を見比べる。発行日も見る
- 口座の確認書類の銀行・支店・口座番号・口座名義と、申請の振込先を見比べる
- 国税庁の公表サイトで登録番号を検索し、出てきた名称を申請の会社名と見比べる
- 食い違いや不足があれば、拠点の担当へメールで差し戻す
- そろったものを経理部へ回し、経理部の担当が取引先マスタに登録する
- 人拠点の購買の担当が、これまでどおり申請を出して書類を添付する
- 自動申請の作成をきっかけにフローが動き、添付の一覧と中身を取り出す
- 自動添付の数・形式・サイズを確かめ、足りない書類があればこの時点で印を付ける
- 自動AIが添付ごとに書類の種類を見分け、名称・所在地・代表者・発行日・口座・登録番号などを書かれたとおりに写す。書かれていない項目と読めない項目を分けて返す
- 自動法人番号で国税庁の法人番号システムの Web-API を、登録番号で適格請求書発行事業者公表システムの Web-API を呼び、公表されている名称・所在地・登録の状態を取る
- 自動表記をそろえてから、申請・書類・公表情報を項目ごとに見比べ、一致・表記の揺れ・不一致・不足を決める
- 自動項目ごとの結果を一覧にし、`ready`(そろっている)か `return`(差し戻し)か `review`(人の判断が要る)かを規則で決める
- 人本社の購買部の担当が、一覧と書類を見て結果を確かめ、差し戻すか経理部へ回すかを承認で選ぶ
- 自動差し戻しなら、不足と食い違いを全部並べた文面の下書きを拠点の担当へ送る。回すなら、経理部へ確認済みの一覧を付けて知らせる
- 人経理部の担当が取引先マスタに登録する
各工程の詳しい説明を読む
- 拠点の購買の担当が、申請をリストに出し、3種類の書類を添付する
- 本社の購買部の担当が申請を開き、添付を1つずつ開く
- 登記事項証明書の商号・本店・代表者と、申請の会社名・所在地・代表者を見比べる。発行日も見る
- 口座の確認書類の銀行・支店・口座番号・口座名義と、申請の振込先を見比べる
- 国税庁の公表サイトで登録番号を検索し、出てきた名称を申請の会社名と見比べる
- 食い違いや不足があれば、拠点の担当へメールで差し戻す
- そろったものを経理部へ回し、経理部の担当が取引先マスタに登録する
(a)見比べる項目が多い。 1件で、名称・所在地・代表者・発行日・銀行・支店・種別・口座番号・口座名義・登録番号の10項目を、3つの書類と申請のあいだで見比べます。判断ではなく照合ですが、目で行うと1件30分を超えます。
(b)口座名義の違いを見落とす。 申請の口座名義が「カ)ヤマダセイサクシヨ」、通帳が「カ)ヤマダセイサクシヨ ダイヒヨウ」のように、屋号や肩書が付く、拗音が大文字になる、略し方が違うといった違いが毎月出ます。どれが登録し直すべき違いで、どれが表記の揺れかを担当が都度判断しており、振込の不能が出てから気づくことがあります。
(c)差し戻しが二度になる。 1回目の差し戻しで口座の書類の不足を伝え、届いた書類を見てから登記の発行日が古いことに気づいて、もう一度差し戻す。最初に全部の不足を一覧にできていれば、1回で済んだ差し戻しです。 拠点の担当にも取引先にも二度の手間がかかります。
- 【人】 拠点の購買の担当が、これまでどおり申請を出して書類を添付する
- 【自動】 申請の作成をきっかけにフローが動き、添付の一覧と中身を取り出す
- 【自動】 添付の数・形式・サイズを確かめ、足りない書類があればこの時点で印を付ける
- 【自動】 AIが添付ごとに書類の種類を見分け、名称・所在地・代表者・発行日・口座・登録番号などを書かれたとおりに写す。書かれていない項目と読めない項目を分けて返す
- 【自動】 法人番号で国税庁の法人番号システムの Web-API を、登録番号で適格請求書発行事業者公表システムの Web-API を呼び、公表されている名称・所在地・登録の状態を取る
- 【自動】 表記をそろえてから、申請・書類・公表情報を項目ごとに見比べ、一致・表記の揺れ・不一致・不足を決める
- 【自動】 項目ごとの結果を一覧にし、
ready(そろっている)かreturn(差し戻し)かreview(人の判断が要る)かを規則で決める - 【人】 本社の購買部の担当が、一覧と書類を見て結果を確かめ、差し戻すか経理部へ回すかを承認で選ぶ
- 【自動】 差し戻しなら、不足と食い違いを全部並べた文面の下書きを拠点の担当へ送る。回すなら、経理部へ確認済みの一覧を付けて知らせる
- 【人】 経理部の担当が取引先マスタに登録する
8番目が、この設計の分かれ目です。 照合の結果は、支払先のマスタに入る値を決めます。全件を購買部の担当が確かめてから経理部へ回します。 担当が見るのは、一覧で不一致・不足・review になった項目と、その書類の箇所です。
02今回想定するシステム構成
新規取引先の登録の申請(SharePoint リストの入力画面。添付:登記・口座・登録番号の通知書) │ ▼【トリガー】When an item is created Power Automate(クラウドフロー) ├──▶ Get attachments / Get attachment content:添付の一覧と中身 ├──▶ 添付の数・形式・サイズの確認 ▼ AI Builder のプロンプト(Run a prompt、文書の入力、JSON 出力)── 添付ごとに1回 │ 書類の種類/項目ごとの値(書かれたとおり)/not_written ・ unreadable ▼ Power Automate ── HTTP で国税庁の Web-API を呼ぶ ├──▶ 法人番号システム Web-API:名称・本店所在地 ├──▶ 適格請求書発行事業者公表システム Web-API:登録番号の公表情報 ▼ Power Automate ── 表記をそろえて項目ごとに照合 ──▶ ready / return / review ▼ Approvals:本社の購買部の担当(照合の一覧を Markdown で) ├── 差し戻し ──▶ 拠点の担当へ文面の下書き └── 回す ──▶ 経理部へ通知(マスタ登録は人が行う)
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| ワークフロー | Power Automate(クラウドフロー) | Make、n8n、Zapier |
| 生成AI | AI Builder のプロンプト(Run a prompt、文書の入力、JSON 出力) | Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude |
| 連携 | SharePoint リスト(申請・照合の記録・表記の置き換えの一覧) | Microsoft Lists |
| 公表情報 | 国税庁 法人番号システム Web-API、適格請求書発行事業者公表システム Web-API | 公表サイトの画面での検索 |
| 承認 | Approvals(Start and wait for an approval) | Teams のカード |
添付の取り出しは、SharePoint の Get attachments と Get attachment content です。 Get attachments が添付の一覧を返し、その「File identifier」を Get attachment content に渡すと中身が取れます。このコネクタが扱える添付のサイズは90MBまでとされています。
AIは、AI Builder のプロンプトに文書の入力を足して呼びます。 公式の説明では、文書の入力で扱えるのは PNG・JPG・JPEG・PDF で、ファイルの合計は25MB未満、文書は50ページ未満、処理は最大100秒とされています。また、大きな文書から取り出した情報は、特に表の行で不正確・不完全になることがあるとされています。登記事項証明書は数ページで収まるので、この範囲に入ります。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
申請の行が作られたことを起点にします。 When an item is created は新しい行ごとに動きます。修正のたびに動くトリガーは使いません。 フローが照合の結果を同じリストに書き戻すと、その書き込みでまた動くからです。
添付が後から足されることがあります。 拠点の担当が申請を先に保存し、書類を後で添付する場合です。申請の画面に「書類をそろえた」のチェック欄を置き、そこにチェックが付いたら照合を始める形にします。チェックの変更を見るために、トリガーの条件に「チェック欄が はい」を設定し、照合を始めたら「照合中」に変えて二重に動かないようにします。
差し戻した申請の出し直しも同じ行で受け、 前回の照合の結果を残したまま新しい照合を始めます。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 申請 | 会社名、法人番号、本店所在地、代表者、登録番号、振込先(銀行・支店・種別・口座番号・口座名義のカナ)、取引の種別、免税事業者かどうか | 申請の行 |
| 添付の書類 | 登記事項証明書、口座の確認書類、登録番号の通知書(PDF・画像) | 申請の行の添付 |
| 法人番号の公表情報 | 名称、本店所在地(必要に応じて変更履歴) | 法人番号システム Web-API |
| 登録番号の公表情報 | 登録番号に対応する公表事項 | 適格請求書発行事業者公表システム Web-API |
| 表記の置き換えの一覧 | 法人の種類の略語(株式会社→カ)など)、拗音・促音の扱い、全角・半角、旧字体の対応 | SharePoint リスト |
質を決めるのは、表記の置き換えの一覧です。 口座名義のカナは、銀行ごと・取引先ごとに略し方が揺れます。「カ)」「(カ」「カブシキガイシヤ」を同じものとして扱う、小さい「ャ」を大きい「ヤ」と同じとして扱う、といった置き換えを一覧にし、照合の前に申請と書類の両方へかけます。置き換えた後に残った違いだけを「不一致」にします。
公表情報は、申請と書類のどちらとも別の第三の情報として使います。 申請と書類が一致していても、公表情報の名称と違えば、登記の後に商号が変わっているか、書類が古いということです。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | どうやって |
|---|---|---|
| 添付の一覧 | 申請の行 | Get attachments |
| 添付の中身 | 申請の行 | Get attachment content(File identifier を渡す) |
| 法人番号の公表情報 | 国税庁 法人番号システム | HTTP アクションで Web-API を呼ぶ(アプリケーションIDが要る) |
| 登録番号の公表情報 | 国税庁 適格請求書発行事業者公表システム | HTTP アクションで Web-API を呼ぶ(アプリケーションIDが要る) |
| 表記の置き換えの一覧 | SharePoint リスト | Get items |
国税庁の Web-API は、アプリケーションIDが無いと使えません。 発行は無料で、適格請求書発行事業者公表システムのIDは、メールアドレスの仮登録、基本情報の本登録、国税庁の審査を経て発行されるとされています。このIDで、法人番号システムの Web-API も使えます。 法人番号システムのIDの発行には2週間から1か月ほどかかるとされているので、構築を始める前に申し込みます。
法人番号システムの Web-API は、法人番号を指定すると名称・所在地・法人番号の基本の3情報と付随する情報を返し、 条件を付ければ変更履歴も取れるとされています。1回で10件までの法人番号を指定できます。適格請求書発行事業者公表システムの Web-API は、登録番号の指定、取得期間の指定、登録番号と日付の指定の3つの機能があるとされています。登録番号と日付の指定を使えば、取引を始める日の時点で登録が有効かを確かめられます。
個人事業主は法人番号が無いので、法人番号の照会を飛ばします。 登録番号があれば適格請求書発行事業者公表システムだけを引き、登記の照合の代わりに、添付された開業の届出の控えなどの氏名と屋号を写させます。
AIへ渡す前に整形する
- 添付の数と形式の確認 … 添付が3つそろっているか、形式が PDF・PNG・JPG・JPEG かを確かめます。Office の形式は PDF にしてもらいます
- サイズとページの確認 … ファイルの合計が25MB未満、50ページ未満でないものは、分けて添付し直してもらいます
- パスワードの付いたPDFの確認 … 開けないPDFは、AIに渡さずに「読めない」として返します
- 法人番号と登録番号の形の確認 … 法人番号が13桁の数字か、登録番号が「T」と13桁の半角数字かを確かめます。形が合わないものはAIに直させず、そのまま「形が合わない」とします
- 免税事業者の扱い … 申請で免税事業者とされていれば、登録番号の書類と照会を飛ばし、その旨を一覧に残します
- 口座番号の扱い … 口座番号はフローの照合にだけ使い、照合の結果の一覧と承認の詳細には下4桁だけを載せます
4番目は、AIの外で効きます。 桁の足りない番号は、Web-API に問い合わせる前に書き写しの誤りと分かります。書類を読む前に分かる誤りは、書類を読む前に止めます。
AIに処理させる
させるのは、添付ごとに書類の種類を見分け、決まった項目を書かれたとおりに写すことと、書かれていない項目と読めない項目を分けることです。
| 書類 | 写す項目 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 商号、本店、代表者の氏名、会社法人等番号、証明書の発行日、商号・本店の変更の記載 | 欄が無ければ not_written、かすれて読めなければ unreadable |
| 口座の確認書類 | 銀行名、支店名、預金の種別、口座番号、口座名義のカナ | 見開きが写っていなければ not_written |
| 登録番号の通知書 | 登録番号、氏名又は名称、登録年月日 | 書類が無ければ not_written |
| 共通 | 書類の種類(上の3つ/それ以外) | 見分けられなければ unknown |
not_written と unreadable を分けるのが要です。 通帳の表紙しか写っておらず口座番号が無いのは not_written で、拠点の担当に見開きの写しを頼みます。写っているが影で読めないのは unreadable で、スキャンのやり直しを頼みます。頼む中身が違います。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 申請と合っているかを判定すること | 表記をそろえてフローが項目ごとに照らす |
| 口座名義・登録番号・口座番号を直すこと | 桁や文字を補った瞬間、照合が意味を失う |
| 発行日が3か月以内かを判定すること | 日付の計算はフローで行う |
| 取引を始めてよいかを書くこと | 購買部・経理部・法務が決める |
| 反社会的勢力との関係や評判を書くこと | この構成の範囲外。別の手順で調べる |
2行目が、いちばん起きやすい失敗です。 口座名義の「ヨ」が影でかすれていると、AIは申請の値に引っ張られて「ヨ」と読みます。申請の値をプロンプトに入れないのは、このためです。 書類だけを見て写させ、申請との照合は後段に回します。
指示内容を固定する
あなたは製造業の購買部で、新しい取引先の登録の書類を確かめる立場です。
添付された1つの書類だけを見て、書かれていることをそのまま写してください。
推測で埋めないでください。
【書類の種類の見分け方】
- 次のどれかを document_type に入れてください。
registry(登記事項証明書)/bank(通帳の写し・振込先の届出書)/
invoice_notice(適格請求書発行事業者の登録の通知書)/other(それ以外)
- 見分けられなければ unknown にしてください。
【写す項目】
- registry:商号、本店、代表者の氏名、会社法人等番号、発行日、
商号または本店の変更の記載(あれば変更前と変更日も)
- bank:銀行名、支店名、預金の種別、口座番号、口座名義のカナ
- invoice_notice:登録番号、氏名又は名称、登録年月日
【status の選び方】
- ok ........... 値が読み取れた
- not_written .. その項目が書類に無い(写っていない欄も含む)
- unreadable ... 欄はあるが、かすれ・影・解像度で文字が確定できない
迷ったときに ok を選ばないでください。
【厳守事項】
- 値は書類に書かれた文字のまま写してください。
全角・半角、カタカナの大小、記号を直さないでください。
- 口座番号・登録番号・会社法人等番号の桁を補ったり、
それらしい番号に直したりしないでください。
- 1文字でも確定できない文字がある場合は、その項目を unreadable にし、
value には読めた部分だけを入れ、読めない文字を「?」にしてください。
- 日付は書類の表記のまま写し、和暦を西暦に直さないでください。
- 書類の内容が正しいか、取引をしてよいかを書かないでください。
- Don't include JSON markdown in your answer.
【書類】{document}
申請の値をプロンプトに入れていないのが、この指示のいちばんの工夫です。 申請の口座名義を渡して「書類と合っているか」と聞くと、かすれた1文字を申請の値で埋めて「一致」と返します。見比べる相手を知らなければ、寄せることもできません。
「読めない文字を『?』にする」を書くのは、unreadable の理由を担当が一目で分かるようにするためです。 「カ)ヤマダセイサクシ?」と返ってくれば、どの1文字を書類で確かめればよいかが分かります。
「和暦を西暦に直さない」は、日付の計算をフローに任せるための1行です。 変換はフローの側で表を使って行い、変換の誤りがAIの読み取りの誤りと混ざらないようにします。
最後の英文の1行は、公式の案内に合わせたものです。 JSON が作れないというエラーが出るとき、この一文を足すよう案内されています。
出力形式を固定する
次の形のJSONで受け取ります。 添付ごとに1回呼び、例を書き換えて Custom の形に固定します。
{
"document_type": "registry | bank | invoice_notice | other | unknown",
"fields": [
{ "name": "", "value": "", "status": "ok | not_written | unreadable" }
],
"change_records": [
{ "item": "", "before": "", "changed_on": "" }
]
}
項目を name 付きの要素の配列にしているのは、公式の制約に合わせたものです。 JSON の形はキーの無い配列を定義できないとされているので、項目ごとに name を持たせます。
JSON にする理由の1つ目は、フローが項目ごとに照合できることです。 書類の値と申請の値と公表情報を、表記の置き換えの一覧をかけてから比べます。
| 照合の結果 | 意味 | 扱い |
|---|---|---|
| 一致 | 置き換えの前から同じ | 一覧に載せるだけ |
| 表記の揺れ | 置き換えの後に同じ | 一覧に載せ、担当が流し見る |
| 不一致 | 置き換えの後も違う | return か review |
| 不足 | 書類が無い、項目が not_written | return |
| 読めない | 項目が unreadable | return(スキャンのやり直し) |
2つ目は、ready / return / review を規則で決められることです。 全項目が一致か表記の揺れなら ready、不足・読めない・口座名義と口座番号の不一致があれば return、申請と書類は一致しているが公表情報の名称・所在地と違うもの、change_records に商号・本店の変更があるものは review にします。後者は書類が古いのか、申請が古い情報で書かれたのかを、人が見分ける必要があるからです。
3つ目は、差し戻しの文面を一度で書けることです。 return の項目を全部並べて下書きを作るので、第3章の(c)の二度の差し戻しが起きません。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 申請のリスト(SharePoint) | When an item is created、Get attachments、Get attachment content、Update item | 申請と添付の受け取り、照合の結果の書き戻し |
| AI Builder のプロンプト | Run a prompt(文書の入力) | 添付ごとの種類の見分けと項目の写し |
| 国税庁 法人番号システム Web-API | HTTP | 法人番号の公表情報 |
| 国税庁 適格請求書発行事業者公表システム Web-API | HTTP | 登録番号の公表情報 |
| Approvals | Start and wait for an approval | 本社の購買部の担当の確認 |
| Outlook | メールの下書き | 拠点の担当への差し戻しの文面 |
承認の詳細欄には、照合の一覧を表で載せます。 承認の詳細は Markdown で書けるとされているので、項目・申請の値・書類の値・公表情報・結果の5列の表にし、不一致と不足の行を上に並べます。 口座番号は下4桁だけにします。
承認のメールについて、2つの制約に注意します。 公式の説明では、承認の詳細にはフローの作成者が常に表示され、 承認のメールは標準のメールアカウントから送られるとされています。購買部の共用アカウントでフローを作り、担当者個人の名前が出ないようにします。
取引先マスタには書き込みません。 登録は経理部の担当が基幹システムの画面で行います。照合の結果を信じてそのままマスタに流す経路を作ると、照合の見落としが支払の誤りまで一息に進みます。
国税庁の Web-API の利用規約に注意します。 Web-API を使ったサービスを公開する場合は、国税庁が保証したものではない旨の文を示すよう求められています。社内だけで使う照合ですが、承認の詳細欄の末尾にこの文を載せておくと、扱いを迷いません。
人が確認する
人が見るのは、次の3つの場面です。
- 本社の購買部の担当の承認(全件) … 一覧の不一致・不足・
reviewの行と、その根拠の書類の箇所を見て、差し戻すか経理部へ回すかを選びます。 表記の揺れの行は流し見ます reviewの申請 … 公表情報との違いや商号の変更の記載がある申請で、書類が古いのか申請が古いのかを、書類の発行日と公表情報を見て決めます- 経理部の担当のマスタ登録 … 確認済みの一覧を見ながら登録します。口座名義は、一覧ではなく書類の写しを見て入力します
3番目で書類の写しを見て入力するのは、一覧の値を写すと照合の意味が消えるからです。 一覧はフローが表記をそろえた後の値を含みます。マスタには、取引先が書類に書いた形で入れます。
目標は、40件をならして1件15分です。 全項目がそろった申請は一覧を流し見て数分、review の申請は書類と公表情報を見比べるので30分ほどかかります。15分を大きく超える月は、表記の置き換えの一覧が足りず、表記の揺れが不一致に落ちています。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 添付が3つそろっていない | AIを呼ぶ前に return。足りない書類の名前を並べる |
| 形式が PDF・画像でない/25MB以上/50ページ以上 | PDF にして分けて添付し直してもらう |
| パスワードの付いたPDF | 読めないとして return。解除した写しを頼む |
| 処理が100秒を超えて止まる | ページを分けて再投入。続けば review |
document_type が other か unknown | 添付の取り違えとして return |
| 法人番号・登録番号の桁や形が合わない | AIの前に「形が合わない」として return |
| Web-API が応答しない | 1回だけ再実行。続けば公表情報を空にして review |
| 公表情報に登録番号が見つからない | 差し戻す前に、番号の書き写しの誤りと、登録前・失効を疑う。 review |
| 個人事業主で法人番号が無い | 法人番号の照会を飛ばし、氏名と屋号で照らす |
下から2行目を return にしないのは、理由がいくつもあるからです。 番号の写し間違い、登録の申請中、すでに失効している、のどれかで、どれかによって取引先へ伝える中身が変わります。 人が見てから差し戻します。
記録を残す
- 申請の項目と添付のファイル名、照合を始めた時刻
- 添付ごとにAIが返したJSONの全文
- Web-API への問い合わせの条件(番号と日付)と、返ってきた公表情報
- 項目ごとの照合の結果と、表記の置き換えの一覧のどの規則をかけたか
- 承認の結果と承認者、差し戻しの文面
- 差し戻しから出し直しまでの回数と、直った項目
3つ目で問い合わせの条件を残すのは、公表情報が変わるからです。 登録番号は後から失効することがあり、照合したときに有効だったかを後から示せるように、日付とともに残します。
4つ目は、表記の置き換えの一覧を育てる材料です。 担当が「これは表記の揺れ」と判断した不一致を集めると、置き換えの規則に足すべきものが分かります。
04実装レベルの3段階
半自動化で、1件45分が15分になり、この段階が本記事の想定です。 書類を開いて見比べること、公表サイトで調べること、差し戻しを書くことが自動になり、残るのは担当が一覧を見て決めることです。本格構成の登録後の照会では、登録番号の失効を請求書が届く前に知れます。
05工数削減シミュレーション
導入後 40件 × 15分 ÷ 60 = 10 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 拠点ごとに購買の担当が新しい仕入先・外注先を見つけてきて、月に数十件の取引先の登録の申請が本社の購買部と経理部に届く製造業・建設業・商社。申請に登記事項証明書・口座の確認書類・登録番号の通知書を添付させているが、書類と申請の記載を1件ずつ目で見比べていて、口座名義の食い違いや登録番号の誤りがマスタ登録の後に見つかっている場合。Microsoft 365 を使っていて、申請を SharePoint のリストで受けられる場合。
- 新しい取引先が月に数件で、経理部の担当が書類を見比べて足りている場合。取引先の登録を外部の取引先管理のサービスに任せ、口座と登録番号の確認まで代行されている場合。なお、取引を始めてよいか、反社会的勢力との関係や与信をどう判断するかは、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 過去3か月の申請から15件を選ぶ(うち数件は、口座名義の違いや登録番号の誤りで差し戻した申請を入れる)
- 15件の添付の書類を、Microsoft Copilot などの手元のAIサービスに1つずつ渡す
- 「この書類に書かれている商号・本店・代表者・発行日(または銀行・支店・種別・口座番号・口座名義、または登録番号・名称・登録年月日)を、書かれたとおりに写してください。無い項目と読めない項目を分けてください。読めない文字は『?』にしてください」と指示する
- 出てきた値を、申請の記載と手で見比べる
- 公表サイトで法人番号と登録番号を検索し、名称と所在地を見比べる
15件は必ずやってください。 フローを組む前に、「書類から項目が写せるのか」と「表記の揺れがどれくらいあるか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の差し戻しと同じ違いが見つかった | フローの組み立てに進む |
| かすれた文字を、それらしい文字で埋めた | 指示の「?にする」を強める。構成は有効 |
| 通帳の写しの多くで口座番号が読めない | 書類の取り方が先。 見開きを明るく写すよう拠点に頼む |
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| かすれた文字を申請の値で埋めて「一致」になる | 申請の値をプロンプトに入れない。 書類だけを見て写させる |
| 口座名義の略し方の違いが全部「不一致」になる | 表記の置き換えの一覧を作り、照合の前にかける |
| 「書かれていない」と「読めない」が混ざる | not_written と unreadable を分け、読めない文字を「?」にさせる |
| 書類を後から添付すると照合が先に走る | 「書類をそろえた」のチェック欄で始める |
| フローが自分の書き込みで動き直す | 照合中の印を付け、トリガーの条件で除く |
| アプリケーションIDが間に合わない | 構築の最初に申し込む。 発行に時間がかかる |
| 登録番号が見つからないものを差し戻してしまう | 写し間違い・登録前・失効を疑い、review にする |
| 個人事業主で照合が止まる | 法人番号の照会を飛ばす分岐を作る |
| 和暦の変換を誤る | AIに変換させず、フローの側で表を使う |
| 承認の詳細に作成者の名前が出続ける | 購買部の共用アカウントでフローを作る |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 AIには似ていても寄せさせず、同じとみなす規則は一覧として人が決めます。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 取引先の商号・本店・代表者の氏名、口座番号と口座名義、登録番号、登記事項証明書に載っている役員の氏名です。口座の情報は、なりすましの標的になる情報です。
- 口座番号を一覧と通知に全部載せない … 照合の結果と承認の詳細には下4桁だけを載せ、全桁は申請の行と書類にだけ残します
- cross-geo の扱いを確かめる … 日本の地域では既定のモデルが GA (cross-geo) と表示され、地域の外でデータを処理する場合があるとされています。口座番号と役員の氏名が写った書類を地域外で処理してよいか、社内の規程を先に確かめます
- 書類から写すのは決まった項目だけにする … 登記事項証明書には役員全員の氏名や住所が載ることがあります。写させるのは代表者の氏名までにし、ほかの役員の情報はJSONに入れさせません
- 取引の可否をこの構成に持たせない … 出すのは申請・書類・公表情報が合っているかまでです。反社会的勢力との関係や与信の確認は、別の手順で法務と経理が行います
- 公表情報の使い方を規約に合わせる … 国税庁の Web-API の利用規約に同意し、取得した情報が国税庁の保証したものではない旨を示します
- 申請のリストの権限を絞る … 口座の書類が添付されたリストです。閲覧できるのは申請者、本社の購買部、経理部に限ります
誤りが起きた場合のリスクは、誤った口座名義や登録番号がマスタに入ることと、正しい申請を差し戻して取引の開始を遅らせることの2つです。 前者はAIが申請の値に寄せると起き、後者は表記の揺れを不一致にすると起きます。寄せさせない指示と、置き換えの一覧の両方で守る設計にしています。
10まず何から始めるか
1週目:アプリケーションIDを申し込み、表記の置き換えの一覧を作る
国税庁の適格請求書発行事業者公表システムの Web-API のアプリケーションIDを申し込みます。発行まで時間がかかるので、最初に手を付けます。 あわせて、過去1年の差し戻しの記録から、口座名義の略し方と法人の種類の表記の揺れを集め、置き換えの一覧にします。
2週目:15件で試す
過去の申請から15件を選び、手元のAIサービスに書類を渡して項目を写させます。当時の差し戻しと同じ違いが見つかるかと、かすれた文字を埋めていないかを最優先で見ます。
3週目:申請の画面を整える
申請のリストに「書類をそろえた」のチェック欄と「免税事業者」の欄を足します。購買部の共用アカウントを用意し、承認を受ける担当を決めます。
4週目:申請から承認までをつなぐ
Power Automate で、申請の作成から添付の取り出し、AI Builder のプロンプト、表記をそろえた照合、承認までを作ります。最初の1か月は、担当がこれまでどおり自分でも書類を見比べ、一覧と見比べます。
2か月目: アプリケーションIDが届いたら国税庁の Web-API の照会を足し、review の判定を始めます。3か月目以降: 差し戻しの下書きと出し直しの差分の表示を足し、1件45分が何分になったかを実測します。表記の揺れが不一致に落ちる件数が落ち着き、置き換えの一覧の手入れが月1回で済むようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| When an item is created、Get attachments(File identifier を返す)、Get attachment content、Update item があること。添付のサイズが90MBまでであること | Microsoft Learn: SharePoint connector | 2026-10-15 |
| プロンプトに文書の入力を足せること。対応が PNG・JPG・JPEG・PDF で、合計25MB未満、50ページ未満、処理が最大100秒であること。大きな文書からの抽出は特に表の行で不正確・不完全になりうること。Word・Excel・PowerPoint はコードインタープリターを有効にしたときに使えること | Microsoft Learn: Add inputs to your prompt | 2026-10-15 |
| 出力に JSON を選べ、Custom の形が保存時に固定され実行時に使われること。キーの無い配列は定義できないこと。文書を入力にしたプロンプトをフローで使えること。JSON が作れないときに「Don't include JSON markdown in your answer」を足すよう案内されていること | Microsoft Learn: JSON output | 2026-10-15 |
| 日本で GPT-4.1 mini が GA (cross-geo) であり、cross-geo のモデルは地域外でデータを処理する場合があること | Microsoft Learn: Prompt model availability by region | 2026-10-15 |
| Start and wait for an approval が承認の完了まで待つこと。詳細欄で Markdown が使えること。承認の詳細にフローの作成者が常に表示されること。承認のメールは標準のアカウントから送られること | Microsoft Learn: Standard approvals connector | 2026-10-15 |
| Web-API が REST 方式で、登録番号の指定・取得期間の指定・登録番号と日付の指定の3つの機能があること。アプリケーションIDが必要で発行は無料、仮登録・本登録・国税庁の審査を経て発行されること。このIDで法人番号システムの Web-API も使えること。サービスを公開する場合は国税庁が保証したものではない旨を示すこと | 国税庁: 適格請求書発行事業者公表システム Web-API | 2026-10-15 |
| 公表サイトが適格請求書発行事業者の情報を公表し、登録番号(「T」を除く13桁)で検索できること | 国税庁: 適格請求書発行事業者公表サイト | 2026-10-15 |
| 法人番号を指定して基本3情報と付随する情報、条件指定で変更履歴が取れること。1回10件まで。アプリケーションIDが必要で、発行に2週間から1か月ほどかかること | 国税庁: 法人番号システム Web-API | 2026-10-15 |
取引を始めてよいか、反社会的勢力との関係や与信をどう判断するかは、購買部・経理部・法務の責任者が決めてください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
このユースケース(UC-1644)についてのご相談はこちらから。
