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融資先から毎月届く試算表と資金繰り表を前月・計画と照らし、融資後のモニタリングの所見の下書きと業況悪化の兆しの一覧を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

融資先から毎月届く試算表と資金繰り表を、前月・前年同月・計画と照らし、融資後のモニタリングの所見の下書きを作ります。あわせて、業況悪化の兆しとして次の訪問で確かめるべき事項を一覧にします。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
金融
対象部門
営業/財務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/期限・対応漏れが起きる/確認ミスが多い
AIで行う処理
生成
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
36h/月
想定削減
70%
年間削減
1,008h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当者が、ライブラリに届いた試算表と資金繰り表を開く
  2. 売上、利益、現預金、売上債権、借入の残高などを、前月の記録と計画の表から書き写して並べる
  3. 前年同月比や月商に対する倍率を電卓で計算し、気になる動きを探す
  4. 顧客管理のシステムで、直近の面談の記録を読み返す
  5. モニタリングの記録に所見を書き、次の訪問で聞くことをメモする
  6. 資料が届いていない先には、電話で催促する
  7. 月末に課長が記録を読み、必要なら融資管理部と相談する
導入後(After)
  1. 【融資先/人】 試算表と資金繰り表を、融資先ごとのフォルダに置く
  2. 自動ファイルの作成をきっかけにフローが動き、その月の2つの資料がそろったかを確かめる
  3. 自動資料の値を読み出し、前月・前年同月・計画の値と並べ、指標を計算する
  4. 自動行で決めた基準で、兆しの印を付ける
  5. 自動毎月21日に、期限までに資料が届いていない先に「未提出」の印を付ける
  6. 自動Azure OpenAI が、印と面談の記録を材料に、所見の下書きと確認事項を書く
  7. 自動フローが所見の数値を計算済みの値と照らし、合わないものに印を付ける
  8. 自動所見の下書きと兆しの一覧を、モニタリングの記録に書き込む
  9. 人担当者が下書きを読み、根拠を確かめて直し、次の訪問の予定に確認事項を入れる
  10. 人課長が、兆しの印が付いた先を中心に記録を読み、融資管理部との相談を決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当者が、ライブラリに届いた試算表と資金繰り表を開く
  2. 売上、利益、現預金、売上債権、借入の残高などを、前月の記録と計画の表から書き写して並べる
  3. 前年同月比や月商に対する倍率を電卓で計算し、気になる動きを探す
  4. 顧客管理のシステムで、直近の面談の記録を読み返す
  5. モニタリングの記録に所見を書き、次の訪問で聞くことをメモする
  6. 資料が届いていない先には、電話で催促する
  7. 月末に課長が記録を読み、必要なら融資管理部と相談する

(a)書き写しと計算で時間が終わる。 2番目と3番目で1社20分近くかかり、所見を考える時間がほとんど残りません。 20社を受け持つと、月に6時間以上がこの作業です。

(b)見るところが担当者で違う。 売上と利益だけを見る担当者もいれば、売上債権の回転期間まで計算する担当者もいます。同じ動きをしている2社が、担当者が違うと片方だけ記録に残ります。

(c)資料の遅れが見過ごされる。 届いた資料を見るのが仕事なので、届いていない先は目に入りません。 催促が遅れ、2か月分がまとめて届いたときには、資金繰りの山を越えた後だったということがあります。

(d)小さな動きのつながりに気づかない。 売上は横ばいなのに売上債権が増えている、計画より借入が増えているのに設備の投資は無い。1つずつは小さく、別々の行に書かれているので、続けて読まないとつながりません。

  1. 【融資先/人】 試算表と資金繰り表を、融資先ごとのフォルダに置く
  2. 【自動】 ファイルの作成をきっかけにフローが動き、その月の2つの資料がそろったかを確かめる
  3. 【自動】 資料の値を読み出し、前月・前年同月・計画の値と並べ、指標を計算する
  4. 【自動】 行で決めた基準で、兆しの印を付ける
  5. 【自動】 毎月21日に、期限までに資料が届いていない先に「未提出」の印を付ける
  6. 【自動】 Azure OpenAI が、印と面談の記録を材料に、所見の下書きと確認事項を書く
  7. 【自動】 フローが所見の数値を計算済みの値と照らし、合わないものに印を付ける
  8. 【自動】 所見の下書きと兆しの一覧を、モニタリングの記録に書き込む
  9. 【人】 担当者が下書きを読み、根拠を確かめて直し、次の訪問の予定に確認事項を入れる
  10. 【人】 課長が、兆しの印が付いた先を中心に記録を読み、融資管理部との相談を決める

9番目で担当者が見るのは、下書きと、その根拠になった数値と記録です。 書き写しと計算はもう済んでいるので、時間は「なぜ動いたか」を考えることに使えます。

5番目は、第3章の(c)への対策です。 資料が届いた先だけを動かす仕組みにすると、届かない先は永遠に一覧に出ません。期限の翌日に、届いていない先を数える処理を別に動かします。

02今回想定するシステム構成

構成図
試算表・資金繰り表(融資先ごとのフォルダ)    計画の値   財務分析シート   面談の記録
   ▼【トリガー】ファイルの作成時(プロパティのみ)  +  毎月21日の未提出の確認
Power Automate
   ├──▶ 2つの資料がそろったかを確かめる
   ├──▶ 値を読み出し、前月・前年同月・計画と並べ、指標を計算
   ├──▶ 基準で兆しの印を付ける
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 構造化出力
   │   ① 所見の下書き(1文ごとに根拠)
   │   ② 面談の記録から拾った兆し
   │   ③ 次の訪問で確かめる事項
   ▼
Power Automate ── 所見の数値を計算済みの値と照らす
   ▼
モニタリングの記録(SharePoint のリスト)──【担当者が直す】→【課長】
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude、Gemini
連携Power AutomateMake、n8n
資料と記録の置き場SharePoint のライブラリとリストDataverse
面談の記録・財務分析シート既存の顧客管理のシステム各システムの書き出し機能

顧客管理のシステムと財務分析シートは、新しく足すものではありません。 面談の記録は融資先ごとに直近3か月分を、計画の値と前年同月の値は項目名と値の一覧として書き出し、SharePoint に置きます。書き出し方は利用している製品によって違うため、この部分は利用環境に合わせた個別の実装になります。 フローは読むだけで、どちらにも書き込みません。

試算表と資金繰り表は、値として読める形で受け取ることを前提にします。 会計ソフトの書き出しか、銀行が渡している書式の表です。紙やスキャンした画像で届く先は、この構成の対象から外し、読み取りの仕組み(UC-0372 のような構成)を別に用意します。

土台になるのは、Microsoft Foundry で提供される Azure OpenAI のモデルです。 Azure が販売するモデルは Microsoft の Azure 環境でホストされ、モデルの提供元が運営するサービスとはやり取りしないとされています。入力と出力は他の顧客にもモデルの提供元にも提供されず、許可や指示なしに生成AIの基盤モデルの学習に使われないとされています。融資先の月次の業績と資金の動きを扱うので、この点を最初に確かめます。標準のデプロイでは指定した地域の中で処理されますが、「Global」や「DataZone」の種類では処理の場所が広がるので、デプロイの種類も先に決めます。

資料の受け取りは、Power Automate の SharePoint コネクタで行います。 資料が置かれたことは「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」のトリガーで受け、中身は「ファイル コンテンツの取得」で取ります。モニタリングの記録への書き込みは「項目を作成する」と「項目を更新する」です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は2つあります。資料が置かれたときと、毎月21日です。

1つ目は、融資先ごとのフォルダに資料が置かれたときです。「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」のトリガーで受け、ファイル名の融資先コードと対象月から、その月の試算表と資金繰り表の両方がそろったかを確かめます。 片方だけなら何もせずに終え、2つ目が置かれたときに先へ進めます。片方だけで所見を書くと、資金繰り表が無いことを「資金繰りに問題なし」と読む下書きが出ます。

2つ目は、提出の期限の翌日にあたる毎月21日の朝の定時の処理です。毎月の資料を受け取ることになっている先の一覧と、その月にそろった先を突き合わせ、そろっていない先に「未提出」の印を付けます。 片方だけ届いている先は「一部未提出」とします。

資料を出し直した先は、新しい版で作り直します。 前の版の下書きは消さずに「差し替え」の印を付けて残します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
試算表当月までの損益計算書と貸借対照表の科目別の値融資先ごとのフォルダ
資金繰り表月ごとの収入・支出・借入・返済と、月末残高の実績と見込み(向こう3か月)融資先ごとのフォルダ
前月・前年同月の値前月までに読み出した値モニタリングの記録
計画の値経営改善計画や事業計画の月次の売上・利益・借入残高書き出した計画の値
決算の値直前期の財務分析シートの主な値(年商、自己資本など)財務分析シートの書き出し
面談の記録直近3か月の訪問・面談で聞き取った内容顧客管理のシステムの書き出し
兆しの基準指標ごとの基準の値と、印の重さ(注意・要確認)SharePoint のリスト

質を決めるのは、兆しの基準の書き方です。 「売上の減少に注意」では印が付けられません。「売上の前年同月比が3か月続けてマイナス」「現預金が月商の1か月分を下回った」のように、計算できる条件で書きます。 業種によって適切な線が違うので、業種の区分ごとに持たせます。

金融庁の公表資料では、定量面のチェック項目として、売上高・利益・キャッシュフロー・資産・負債等の増減推移比較、現預金月商比の増減推移、売上債権等の回転期間などが挙げられています。 同じ資料は、個々の論点をチェックリストとして用いることはないとも書いています。基準の行は、自行のクレジットポリシーと業種の実情に合わせて決めます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
試算表・資金繰り表融資先ごとのフォルダ「ファイル コンテンツの取得」
前月・前年同月の値、未提出の確認の対象モニタリングの記録「アイテムを取得」。融資先コードと対象月でフィルター クエリを指定して絞る
計画の値・決算の値・面談の記録書き出しを置いたライブラリ「パスを使用してファイルコンテンツを取得する」
兆しの基準SharePoint のリスト「アイテムを取得」。業種の区分で絞る

試算表の科目は、勘定科目の対応表で銀行の科目にそろえます。 会計ソフトによって「売掛金」が「売掛債権」だったり、補助科目に分かれていたりします。対応表に無い科目が出たら、その科目だけ印を付けて担当者に回し、推測で寄せません。

面談の記録は3か月で区切ります。 それより古い発言は事情が変わっていることが多く、昔の「受注は堅調」を今月の所見の根拠にする誤りの元になります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 資料のそろいと版の確認 … その月の試算表と資金繰り表があるか、同じ月の資料が2つ以上無いかを確かめます
  2. 科目をそろえる … 対応表で銀行の科目にそろえ、合計が試算表の合計と合うかを確かめます。合わなければ止めて担当者へ回します
  3. 指標の計算 … 月商、売上の前年同月比と計画比、利益の計画比、現預金の月商に対する倍率、売上債権と棚卸資産の回転期間、借入の残高の前月比と計画比を計算します
  4. 資金繰り表の見込みの確認 … 向こう3か月の月末残高の見込みが、基準の最低残高を下回る月があるかを見ます
  5. 2つの資料の突き合わせ … 試算表の現預金と、資金繰り表の当月末残高の実績を比べます。一致しない場合は差の金額を出します
  6. 兆しの印を付ける … 基準の行ごとに条件を満たすかを判定し、S-01 のような番号と重さを付けます
  7. 面談の記録に番号を振る … 記録ごとに M-01 と日付を付けます

5番目は、第3章の(d)のような、別々の資料のあいだのずれを拾うための処理です。 試算表と資金繰り表は融資先の中で別々に作られていることが多く、同じ月末の現預金が2つの資料で違うことがあります。 違うこと自体は珍しくありませんが、差の理由は担当者が聞くべき事項です。

AIに渡す1社分は、次のような形になります。値も印も、すべてフローが計算したものです。

融資先: 0412 金属加工(業種区分: 製造・受注型)/対象月: 2026-09
提出の状況: complete(試算表 9/18、資金繰り表 9/18)
V-01 売上(当月) 48.2百万円 / 前年同月比 -6.8% / 計画比 -9.5%
V-02 売上の前年同月比 3か月連続マイナス(7月 -2.1%、8月 -4.4%、9月 -6.8%)
V-03 売上債権回転期間 2.9か月(前月 2.3か月)
V-04 現預金 月商の 0.8か月分(前月 1.1か月分)
V-05 借入残高 前月比 +20.0百万円(計画では横ばい)
V-06 資金繰り表 11月末の残高見込みが基準の最低残高を下回る
V-07 試算表の現預金と資金繰り表の9月末残高の差 3.5百万円
S-01 要確認:売上の前年同月比が3か月続けてマイナス(V-02)
S-02 要確認:売上債権回転期間が前月から0.5か月以上延びた(V-03)
S-03 注意:計画に無い借入の増加(V-05)
M-01 2026-08-21 社長:主要取引先の発注が新機種への切替で一時的に減っている

この例では、売上が減っているのに売上債権の回転期間が延び、計画に無い借入が増えています。AIはS-01〜S-03を所見に書き、M-01を売上の減少の理由として引きますが、売上債権が延びた理由と借入の使い道は記録に無いので「理由の聞き取りなし」とし、確かめる事項に「売掛金の取引先別の残高の明細」「借入の資金使途」を挙げます。

3番目の計算は、すべてフローで行い、AIには結果だけを渡します。 回転期間は月商の取り方(当月か直近3か月の平均か)で値が変わるので、計算の決まりを1つに固定し、その決まりを記録に残します。

Step5

AIに処理させる

させるのは、計算済みの値と兆しの印、面談の記録を材料に、所見の下書きを書くことと、次の訪問で確かめる事項を挙げることです。あわせて、面談の記録の中から兆しにあたる記述を拾わせます。

書かせること材料根拠が無いときの扱い
業況の動き(売上・利益)計算済みの前年同月比・計画比計画が無ければ前年同月比だけ
資金の動き現預金の倍率、資金繰り表の見込み、借入の増減資金繰り表が無ければ「資金繰り表の提出なし」
兆しの説明印の付いた基準の行と値印が無ければ「印なし」
面談の記録との関係動きの理由として融資先が話していること記録に無ければ「理由の聞き取りなし」
面談の記録から拾う兆し主要な取引先との取引の変化、支払条件の変更の相談、経理の担当者の交代など無ければ空
次の訪問で確かめる事項理由の聞き取りが無い動き、2つの資料のずれ-

面談の記録から拾う兆しは、記録に書かれた事実に限ります。 「経理の担当者が退職した」は拾いますが、「経営者の説明があいまいだった」のような担当者の印象を、AIが強めて書き直すことはさせません。 印象は担当者が自分で書き足します。

させないこと理由
債務者区分・格付への言及所定の手続で決まる
粉飾・不正の疑いの断定確証の無い記述が記録に残る。「要確認」の事項として挙げるまで
指標の計算フローが計算済み。AIが計算すると取り違えが混ざる
追加の与信・条件の変更の提案担当者と審査の部署が決める
面談の記録に無い理由の推測融資先が話していない理由を記録に残すことになる
Step6

指示内容を固定する

あなたは銀行の法人営業部で、融資先の月次のモニタリングの所見を下書きする担当です。
渡された計算済みの値、兆しの印、面談の記録に書かれていることだけを根拠にしてください。

【書くこと】
1. 所見の下書き:業況の動き、資金の動き、兆しの説明、面談の記録との関係
2. 面談の記録の中で、業況悪化の兆しにあたる事実の記述
3. 次の訪問で確かめる事項

【厳守事項】
- 1文ごとに、根拠にした値・印・記録の番号(V-xx、S-xx、M-xx)を付けてください。
  番号を付けられない文は書かないでください。
- 数値は渡された値をそのまま書いてください。計算、丸め、換算をしないでください。
- 書いた数値は、すべて numbers_used に番号とともに書き出してください。
- 動きの理由は、面談の記録(M-xx)に書かれているものだけを書いてください。
  記録に無ければ「理由の聞き取りなし」と書き、確かめる事項に挙げてください。
- 資料が提出されていない、または一部しか提出されていない場合は、そのことを最初に書いてください。
- 面談の記録から拾う兆しは、記録に書かれた事実に限ってください。
  担当者の印象を強めて書き直さないでください。
- 「粉飾」「不正」「虚偽」の語を使わないでください。
  気になる動きは「理由を確かめる」事項として書いてください。
- 債務者区分、格付、追加の与信、条件の変更に触れないでください。
- 確かめる事項は、融資先に何を聞き、どの資料の提出を求めれば足りるかまで書いてください。

【融資先の情報(業種・与信の概要)】{borrower}
【計算済みの値(V-xx)】{values}
【兆しの印(S-xx)】{signals}
【提出の状況】{submission}
【面談の記録(M-xx)】{notes}

「粉飾」の語を禁じるのは、言葉が記録に残るからです。 モニタリングの記録は後から審査の部署も読みます。確証の無い段階で「粉飾の疑い」と書かれた記録は、その融資先への見方を固定します。 一方で、気になる動きを書かないわけではありません。「理由を確かめる事項」として挙げれば、確かめる作業は落ちません。

「どの資料の提出を求めれば足りるか」まで書かせるのは、確認をヒアリングで終わらせないためです。 金融庁の公表資料には、懸念を持った融資先に対し、ヒアリングに留めることなく、必要な情報の開示等を継続的に要請する必要があると書かれています。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 Azure OpenAI の構造化出力を使い、JSON Schema に沿った形で返させます。

{
  "borrower_id": "",
  "period": "2026-09",
  "submission": "complete | partial | missing",
  "note": [
    {
      "topic": "business | cash | signals | interview",
      "sentences": [ { "text": "", "sources": ["V-03", "S-02"] } ]
    }
  ],
  "interview_signals": [
    { "category": "customer | payment_terms | staff | other", "text": "", "sources": ["M-02"] }
  ],
  "to_confirm": [
    { "item": "", "ask": "", "request_document": null, "sources": ["S-04"] }
  ],
  "numbers_used": [ { "source": "V-03", "value_in_text": "" } ]
}

1つ目の理由は、文と根拠を同じ要素に持たせられることです。 記録の画面では文の横に番号が並び、担当者は番号からその値か記録だけを確かめます。

2つ目は、submission と category を enum で縛れることです。 構造化出力は enum に対応しているので、提出の状況が「ほぼ提出」のようにぼかされることがありません。 一覧で missing と partial を数えれば、催促の対象が決まります。

3つ目は、request_document を「無いときは null」で表せることです。 構造化出力ではすべての項目を必須にし、任意の項目は null との組み合わせの型で表す決まりがあります。資料の提出を求める事項と、聞けば足りる事項が区別できます。

numbers_used は、フローが計算済みの値と照らします。一致しない数値が1つでもあれば、下書きに印を付けて担当者に知らせます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
融資先ごとのフォルダSharePoint コネクタ資料の作成を受け、中身を読む
モニタリングの記録SharePoint コネクタ値・指標・印・所見の下書き・確かめる事項を「項目を作成する」で書き、出し直しは「項目を更新する」
書き出しのライブラリSharePoint コネクタ計画の値・決算の値・面談の記録を読む
Azure OpenAIAPI呼び出し所見の下書き、面談の記録の兆し、確かめる事項
顧客管理のシステム既存の書き出し面談の記録を出す。この構成からは書き込まない

所見は、担当者が確かめるまで「下書き」の状態に置きます。 課長が読む一覧には、担当者が「確認済み」にしたものだけが出ます。下書きのままの記録を上席が読むと、AIの文がそのまま担当者の所見として扱われます。

顧客管理のシステムには、確定した所見を担当者が自分で転記します。 システムへの書き込みは、行内の規程で入力者と操作の記録が決まっていることが多いためです。

Step9

人が確認する

担当者が見るのは、下書きの全文と、印の付いた数値と、確かめる事項です。

  1. 提出の状況を見る … missing と partial の先に催促します。2か月続けて出ていない先は課長に伝えます
  2. 兆しの印と所見を照らす … 印の付いた行の値を開き、所見の文が値と合っているかを確かめます
  3. 理由の聞き取りが無い動きを、次の訪問の予定に入れる … to_confirm を訪問の予定に移します
  4. 自分の印象を書き足す … 面談で感じたことは、AIの下書きとは別の欄に担当者が書きます
  5. 「確認済み」にする … ここで初めて課長の一覧に出ます

4番目の欄を分けるのは、記録を後から読む人のためです。 どこまでが資料と記録に基づく文で、どこからが担当者の見立てかが区別できると、審査の部署が読むときに重みを付けられます。

目標は、240件をならして1件9分です。 印の無い先は下書きを読んで確認済みにするだけで数分、印が付いた先は値と記録を開いて確かめるので長くなります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
片方の資料しか届かない所見を作らず、21日の確認で「一部未提出」にする
科目の合計が試算表の合計と合わない止めて担当者へ。読み出しの誤りか、資料の誤りかを確かめる
対応表に無い科目が出たその科目だけ印を付けて担当者へ。推測で寄せない
前年同月の値が無い(月次の受け取りを始めたばかり)前月比と計画比だけで書き、前年同月比は「比較なし」
計画の値が無い計画比を出さず、「計画の登録なし」と書く
試算表の現預金と資金繰り表の残高が合わない差の金額を確かめる事項に入れる
同じ月の資料が出し直された前の版に「差し替え」の印を付け、新しい版で作り直す
Azure OpenAI が応答しない計算と印までを記録に書き、所見は「下書き未作成」で残して再実行する

上から2行目と3行目は、AIを呼ぶ前に止めます。 科目の読み出しがずれたまま計算すると、存在しない大きな動きに印が付き、もっともらしい所見が書かれます。

Step11

記録を残す

  • 受け取った資料の版と日時、提出の状況
  • フローが計算した指標と、使った計算の決まり、兆しの基準の版
  • Azure OpenAI に渡した指示と、返ってきたJSONの全文
  • 数値の照合の結果
  • 担当者が直した箇所と、担当者が書き足した見立て
  • 確かめる事項と、次の訪問で確かめた結果
  • 催促の記録

6つ目を残すと、確かめる事項が閉じたかを追えます。 3か月続けて同じ事項が出ている先は、確かめられていないか、確かめた結果が記録に戻っていません。

基準の版を残すのは、基準を変えると過去の印の意味が変わるからです。 印の数の推移を見るときに、基準を変えた月で区切って読めます。

04実装レベルの3段階

最小構成:計算した表と記録を手でAIの画面に貼り、所見を書かせる / 数社分の下書き
半自動化:上記+フローで資料を読み出し、指標を計算し、兆しの印を付けて記録に書く / 書き写し・計算・印の一覧化
本格構成:上記+Azure OpenAI の所見の下書き、数値の照合、未提出の確認、確かめる事項 / 所見の下書きまでの全体

最小構成では240社をさばけません。 表を作るのが手作業だからです。確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が18分程度になります。 書き写しと計算は無くなりますが、所見と確かめる事項は担当者が書きます。本格構成で9分になり、この段階が本記事の想定です。 半自動化だけでも価値があります。 指標と印が全社同じ決まりで並ぶので、第3章の(b)の「見るところが担当者で違う」はこの段階でなくなります。 印の付き方を2〜3か月見て基準を直してから、所見の下書きを足すほうが、空振りの印に振り回されません。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
12 名
月間件数
240 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  240件 × 30分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 240件 × 9分 ÷ 60 = 36 時間/月
月間削減時間
84h
削減率
70%
年間削減時間
1,008h
年間金額換算(時間単価4,500円)
454万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 中小企業向けの事業性融資を扱い、条件変更先や経営改善計画の進捗を見ている先、与信額の大きい先などから毎月の試算表と資金繰り表を受け取っている地方銀行・信用金庫・信用組合。法人営業の担当者が1社ずつ前月や計画と見比べてモニタリングの記録を書いており、見るところが担当者ごとに違う場合。試算表と資金繰り表を会計ソフトの書き出しか指定の書式の表で受け取れる場合。
向いていない
  1. 毎月の資料を受け取っている融資先が数社で、担当者が全社を丁寧に見られる場合。資料が紙かスキャンした画像だけで届き、値を取り出す仕組みが無い場合(先に読み取りの仕組みが要ります)。モニタリングで見る項目と、注意を払う動きの基準が決まっていない場合。なお、債務者区分、追加の与信、条件の変更、粉飾かどうかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の資料から10社を選ぶ(後から業況が悪化した先と、安定している先を混ぜる)
  2. 10社について、前月・前年同月・計画の値と、計算した指標を表にする(計算は表計算で行う)
  3. 面談の記録の直近3か月分に番号を振る
  4. 社内で利用が認められている生成AIの画面に、表と記録を貼り付け、「値を計算せずに、1文ごとに根拠の番号を付けて所見を書いてください。理由の聞き取りが無い動きは確かめる事項にしてください。粉飾の語を使わないでください」と指示する
  5. 出てきた下書きと確かめる事項を、当時の記録と、その後の経過と突き合わせる

10社は必ずやってください。 フローを組む前に、「計算済みの値と記録から、根拠付きで所見が書けるのか」を確かめます。

出てきた内容判断
後から悪化した先で、当時の動きが確かめる事項に挙がっているフローの構築に進む
記録に無い理由を書いている指示の書き方で直る。構成は有効
計画の値や前年同月の値がそろわない先が多い書き出しの整備が先。 AIの問題ではない

3行目が出たら、 計画の値の登録と、月次の値の持ち方を先に整えてから試し直してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが指標を計算し直して取り違える計算済みの値を渡し、計算を禁じる
片方の資料だけで所見が書かれる2つがそろってから動かす。そろわなければ「一部未提出」
未提出の先が一覧に出ない期限の翌日に未提出の確認を別に動かす
記録に無い理由が所見に入る理由は面談の記録の番号付きに限る
「粉飾の疑い」のような語が記録に残る語を禁じ、確かめる事項として書かせる
確認がヒアリングで終わる確かめる事項に求める資料まで書かせる
科目の読み出しがずれて大きな動きが出る合計の一致を確かめ、合わなければ止める
回転期間の値が担当者の計算と違う月商の取り方を固定し、決まりを記録に残す
下書きが上席に担当者の所見として読まれる「確認済み」にしたものだけを課長の一覧に出す
担当者の見立てとAIの文が混ざる見立ての欄を分ける
印が多すぎて全部の先に付く業種の区分ごとに基準を持ち、2〜3か月見て直す

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、資料と数字の「無い・ずれる」を、AIの文章が埋めてしまう誤りです。モニタリングで見つけたいのは、まさにその「無い・ずれる」なので、埋められた時点で見えなくなります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 融資先の月次の業績と資金の動き、借入の状況、経営者や従業員について面談で聞き取った内容です。取引先の信用に関わる情報で、守秘義務の対象です。

  1. 処理の場所とデータの扱いを先に確かめる … Azure OpenAI の入力と出力は、他の顧客にもモデルの提供元にも提供されないとされています。デプロイの種類によって処理の場所が広がるので、行内の規程と照らして決めます
  2. 面談の記録の個人の情報を必要以上に渡さない … 経営者の家族や個人の資産の話は、所見の下書きに要りません。書き出しの段で、所見に使う項目だけに絞ります
  3. 言葉の選び方を決めておく … 「粉飾」「不正」のような語は、確証の無い段階で記録に残しません。気になる動きは確かめる事項として書き、確かめた結果を担当者が記録します
  4. この構成は与信の判断を代替しません … 債務者区分、追加の与信、条件の変更、粉飾かどうかの判断は、担当者と審査・融資管理の部署が行うことです。 この構成が出すのは、資料に基づく動きの整理と、確かめる事項だけです
  5. 兆しの基準を形だけにしない … 金融庁の公表資料は、論点をチェックリストとして用いることはないとしたうえで、実効性のある態勢を求めています。印が付いたかどうかで済ませず、確かめた結果が記録に戻っているかを課長が見ます
  6. フォルダと記録の閲覧を絞る … 融資先ごとのフォルダは担当者と上席、融資管理部に限ります

誤りが起きた場合のリスクは、悪化の兆しを見落とすことと、確証の無い評価が記録に残ることの2つです。 前者は規則の印と未提出の確認で、後者は語の制限と、下書きと確認済みを分けることで止めます。

10まず何から始めるか

1週目:兆しの基準を書く

売上、利益、現預金、売上債権、借入、資金繰りの見込みについて、計算できる条件の形で基準を書きます。 最初は10行程度で足ります。融資管理部と法人営業部で、実際に気にしている動きを出し合います。

2週目:10社で試す

先月の資料から10社を選び、計算した表と面談の記録を生成AIの画面に貼って所見を書かせます。記録に無い理由を書いていないか、確かめる事項に求める資料まで書けているかを最優先で見ます。

3週目:勘定科目の対応表を作る

融資先が使っている会計ソフトの上位から、試算表の科目を銀行の科目にそろえる対応表を作ります。あわせて、月商の取り方など計算の決まりを1つに固定します。

4週目:資料の受け取りから印までをつなぐ

融資先ごとのフォルダへの資料の作成を起点に、値の読み出し、指標の計算、兆しの印を記録に書くところまで作ります。21日の未提出の確認も動かします。この時点では所見の下書きを作らず、印の一覧だけを見ます。

2か月目: 印の付き方を見て基準を直します。3か月目以降: Azure OpenAI の所見の下書きと数値の照合を足し、1件30分が何分になったかを実測します。確かめる事項が訪問で閉じ、その結果が記録に戻る流れができた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
定量面のチェック項目として、売上高・利益・キャッシュフロー・資産・負債等の増減推移比較、現預金月商比増減推移、売上債権等の回転期間などが設定されていること。決算期を経過した時点の与信判断で試算表や資金繰り表の確認など事業活動の経過をもとにした定量面のチェックを怠った事例。定性面の検証ポイントに試算表や金融機関借入残高表の開示遅滞状況があること。懸念を持った場合はヒアリングに留めることなく必要な情報の開示等を継続的に要請する必要があること。個々の論点をチェックリストとして用いることはないこと(PDFの原文を取得して確認)金融庁: 金融機関における粉飾等予兆管理態勢の高度化に向けたモニタリングレポート(2025)2026-10-06
Azure が販売するモデル(Azure OpenAI を含む)の入力と出力が、他の顧客やモデルの提供元に提供されず、許可や指示なしに基盤モデルの学習に使われないこと。Microsoft の Azure 環境でホストされ、モデルの提供元のサービスとやり取りしないこと。標準のデプロイでは指定した地域で処理され、Global と DataZone では処理の場所が広がることMicrosoft Learn: Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure2026-10-06
構造化出力が JSON Schema への準拠をさせる機能であること。enum に対応すること。すべての項目を必須にし、任意の項目は null との組み合わせの型で表すこと。additionalProperties を false にすることMicrosoft Learn: How to use structured outputs with Azure OpenAI2026-10-06
「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」のトリガーと「ファイル コンテンツの取得」「パスを使用してファイルコンテンツを取得する」「アイテムを取得」「項目を作成する」「項目を更新する」のアクションがあること。「アイテムを取得」で OData のフィルター クエリを指定できることMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-06

兆しの基準、モニタリングの対象先の決め方、所見の書式は、各金融機関のクレジットポリシーと規程によります。 本記事は金融庁の公表資料と Microsoft Learn で確認できた範囲だけを扱っています。顧客管理のシステムと計画の値の書き出しは、利用している製品によって方法が異なります。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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