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毎月の業務の変更記録から、内部統制の業務記述書とリスクコントロールマトリクスの直すべき箇所を探し、改訂の案を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

毎月の規程改定・システム変更・組織変更などの変更記録を読み、影響する業務プロセスの業務記述書とRCMの直すべき箇所を探します。箇所ごとに現行と改訂案と理由を並べた案と、統制上の要点への影響の有無の案を作ります。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
対象業界
IT・SaaS/保険/製造/金融
対象部門
経営企画/経理
対象業務
台帳・マスタ管理/書類作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
生成
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 推進室の担当が、月初に前月分の変更記録を3つの経路から集める
  2. 1件ずつ読み、どの業務プロセスに関係しそうかを考える
  3. 関係しそうなプロセスの業務記述書とRCMを開き、該当する箇所を探す
  4. 直すべき箇所について、改訂の文面を書く
  5. 統制上の要点に効く変更かどうかを整理し、効くなら整備状況の再評価の要否をメモする
  6. 業務の担当部署に、改訂案と確認したい点を送る
  7. 担当部署の確認を経て、文書を改訂し、版を上げる
導入後(After)
  1. 自動月初に、前月分の変更記録を3つの経路から集め、1件1行の一覧にする
  2. 自動変更記録ごとに、関係しうるプロセスの候補を、プロセスと部署・システム・規程の対応表で絞る
  3. 自動候補のプロセスの業務記述書とRCMを文字にして、Claude API に変更記録と一緒に渡す
  4. 自動Claude API が、直すべき箇所の現行・改訂案・理由と、統制への影響の有無の案を返す
  5. 自動返ってきた「現行」の引用が、文書の原文にそのまま含まれるかをプログラムで照らす
  6. 自動変更記録ごとに、改訂案と確認事項を1枚にまとめ、推進室の確認の一覧に載せる
  7. 人推進室の担当が案を確かめ、統制上の要点に効くものに印を付ける
  8. 人業務の担当部署に改訂案と確認事項を送り、確認を経て文書を改訂する
  9. 人統制上の要点に効く変更は、整備状況の再評価の要否を推進室の責任者が決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 推進室の担当が、月初に前月分の変更記録を3つの経路から集める
  2. 1件ずつ読み、どの業務プロセスに関係しそうかを考える
  3. 関係しそうなプロセスの業務記述書とRCMを開き、該当する箇所を探す
  4. 直すべき箇所について、改訂の文面を書く
  5. 統制上の要点に効く変更かどうかを整理し、効くなら整備状況の再評価の要否をメモする
  6. 業務の担当部署に、改訂案と確認したい点を送る
  7. 担当部署の確認を経て、文書を改訂し、版を上げる

(a)影響する箇所を探す時間が長い。 1件の規程改定が、複数のプロセスの業務記述書とRCMの何行にも効くことがあります。たとえば「決裁の金額の基準の変更」は、契約の審査、契約の実行、支払のプロセスの承認の統制にまたがります。全部を見つけるには、文書をプロセスの数だけ開くことになります。

(b)探し漏れが期末に見つかる。 業務記述書は直したのにRCMの統制の記述が古いまま、という食い違いが、期末の評価でテストをするときに初めて分かります。 そのときには、いつから統制が変わっていたのかを追い直す作業が発生します。

(c)どの文書に効くかが担当者の経験頼み。 システムの変更管理のチケットは技術の言葉で書かれ、どの業務の統制に効くかを読み取れるのは、ITと業務の両方を知る担当者だけです。

(d)「影響なし」の根拠が残らない。 影響なしと判断した変更記録は、何もしないので記録も残りません。後から監査人に「この変更は検討しましたか」と聞かれたときに、検討したことを示せません。

  1. 【自動】 月初に、前月分の変更記録を3つの経路から集め、1件1行の一覧にする
  2. 【自動】 変更記録ごとに、関係しうるプロセスの候補を、プロセスと部署・システム・規程の対応表で絞る
  3. 【自動】 候補のプロセスの業務記述書とRCMを文字にして、Claude API に変更記録と一緒に渡す
  4. 【自動】 Claude API が、直すべき箇所の現行・改訂案・理由と、統制への影響の有無の案を返す
  5. 【自動】 返ってきた「現行」の引用が、文書の原文にそのまま含まれるかをプログラムで照らす
  6. 【自動】 変更記録ごとに、改訂案と確認事項を1枚にまとめ、推進室の確認の一覧に載せる
  7. 【人】 推進室の担当が案を確かめ、統制上の要点に効くものに印を付ける
  8. 【人】 業務の担当部署に改訂案と確認事項を送り、確認を経て文書を改訂する
  9. 【人】 統制上の要点に効く変更は、整備状況の再評価の要否を推進室の責任者が決める

7番目が、この設計の分かれ目です。 AIの案のうち、統制上の要点に効くかどうかの判断は、評価の設計そのものです。案は判断の材料で、判断は人が行います。

2番目でプロセスの候補を対応表で絞っているのも、意図してのことです。 30のプロセスの文書を毎回すべて渡すと、関係の無い文書から無理に「影響あり」を探してきます。関係しうる範囲を表で決め、その中でAIに探させます。

02今回想定するシステム構成

構成図
規程管理の台帳/システムの変更管理のチケット/組織変更の通知/稟議の写し
   ▼【トリガー】月初(前月分の締め)
変更記録の一覧(1件1行)
   ▼
対応表で関係しうるプロセスを絞る(部署・システム・規程 → プロセス)
   ▼
Claude API(Messages API・構造化出力・プロンプトキャッシュ)
   │   入力:変更記録+候補プロセスの業務記述書とRCM
   │   出力:箇所ごとの 現行/改訂案/理由、統制への影響の有無の案、確認事項
   ▼
引用の照合(「現行」が原文に含まれるか)
   ▼
推進室の確認の一覧
   ▼
【人】推進室の確認 → 業務の担当部署の確認 → 文書の改訂(版の管理)
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(Messages API。改訂案と影響の有無の案の作成)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Gemini API
連携変更記録の集約と文書の文字化のプログラム-
保管文書管理の共有フォルダ(版の管理)GRCの専用の製品

新しく足すのは、Claude API の契約と、変更記録を集めて文書を渡すプログラムだけです。 業務記述書とRCMはいまの形のまま使います。最初の準備は、プロセスと部署・システム・規程の対応表を作ることです。 この表が、変更記録をどのプロセスの文書に渡すかを決めます。

Claude API は、構造化出力とプロンプトキャッシュを使います。 構造化出力は、公式の説明では output_config.format に type: "json_schema" とスキーマを渡すと、スキーマに沿ったJSONが返る機能です。プロンプトキャッシュは、同じ前置きの部分を再利用する機能で、要求の最上位に cache_control を置く自動のキャッシュと、内容のブロックごとに置く明示の区切りがあり、既定の保持は5分で、使われるたびに延長されるとされています。

この構成でプロンプトキャッシュが効くのは、同じプロセスの文書を続けて使うからです。 月初の処理を、変更記録の順ではなくプロセスの順に並べ替えて流すと、同じ業務記述書とRCMを前置きにした要求が続き、2件目以降はキャッシュから読まれます。公式の説明では、キャッシュの読み出しは通常の入力の料金より安い倍率で、書き込みは割増とされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

月初に、前月分の変更記録をまとめて処理します。 変更記録は月の途中にも届きますが、規程管理の台帳もシステムの変更管理も月次で締めるので、締めた後の一覧を起点にするほうが漏れが出ません。 1日では終わらない量になっても、月初の数日で全件を案にできれば足ります。

ただし、重要な変更は月初を待ちません。 基幹システムの入れ替え、決裁の権限の大きな変更、新しい事業の開始のように、推進室が「重要」と印を付けた変更記録は、届いた時点で個別に処理します。 実施基準は、組織の変更やITの開発など、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす可能性のある変化が起きるたびにリスクを再評価する仕組みがあるかを、全社的な内部統制の評価項目の例に挙げています。

処理の順は、プロセスの順です。同じプロセスに関係する変更記録を続けて流すことで、文書のキャッシュが効きます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
変更記録種類(規程・システム・組織・商品・委託)、件名、変更の内容、施行日・稼働日、所管部署規程管理の台帳、変更管理のチケット、組織変更の通知、稟議の写し
対応表プロセスごとに、関係する部署・システム・規程・勘定推進室が作る表
業務記述書プロセスごとの文書。節の番号と本文文書管理の共有フォルダ(最新の版)
RCM統制ID、リスクの内容、統制の内容、種類、頻度、担当、勘定、要件、統制上の要点か文書管理の共有フォルダ(最新の版)
過去の判断同じ規程・システムの過去の変更記録と、そのときの判断推進室の判断の記録

質を決めるのは、対応表です。 「この規程はこのプロセスに効く」「このシステムはこのプロセスで使う」が表になっていないと、変更記録を渡す先が決まりません。実施基準は、業務プロセスで使われているシステムの一覧を作ることが有用だとしています。対応表は、その一覧を推進室の用途に合わせて広げたものです。

RCMの列はそのまま渡します。 実施基準の参考の「リスクと統制の対応(例)」は、業務・リスクの内容・統制の内容・要件(実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性、表示の妥当性)・評価内容の列を持っています。自社のRCMの列名をプロンプトで説明し、AIが列の意味を取り違えないようにします。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
前月分の変更記録各台帳を締め日で絞った出力1件1行の一覧
候補プロセス対応表を、変更記録の所管部署・システム・規程で引く渡す文書の範囲
業務記述書の本文文書ファイルを文字にし、節の番号を付ける「現行」の引用元
RCMの行表計算から、候補プロセスの行を統制IDつきで統制ごとの改訂案
過去の判断判断の記録を規程名・システム名で引く同じ変更の繰り返しで判断をそろえる

業務記述書は、節の番号を付けて文字にします。 「1.受注(3)」のような節の番号が付いていれば、AIは箇所を番号で指せ、推進室の担当は文書の該当箇所をすぐ開けます。番号が無い文書は、段落ごとに通し番号を振ってから渡します。

候補プロセスが対応表で1つも引けない変更記録は、AIに渡しません。 「対応表に無い」こと自体が、対応表の見直しか、評価の範囲外の変更かのどちらかなので、推進室の担当が直接見ます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 変更記録の正規化 … 3つの経路の書式を、種類・件名・内容・施行日・所管部署の項目にそろえます
  2. 重複の統合 … 同じ改定が規程の台帳と稟議の写しの両方で届いたら、1件にまとめます
  3. 文書の文字化 … 業務記述書を節の番号つきの文字に、RCMを統制IDつきの行にします
  4. 版の確認 … 渡す文書が文書管理の最新の版かを確かめ、版の番号を記録します
  5. 処理の並べ替え … 候補プロセスごとにまとめ、プロセスの順に並べます
  6. キャッシュの区切り … 業務記述書とRCMを前置き(キャッシュの対象)に、変更記録をその後ろに置きます

4番目を軽く見ないでください。 前月に直したはずの文書の古い版を渡すと、直した箇所をもう一度「直すべき」と挙げてきます。 推進室の担当が二度手間をかけるだけでなく、どちらの版が正しいかの混乱を生みます。

6番目は費用と速さのためです。 公式の説明では、キャッシュできる前置きには最小の長さがあり、それより短いとキャッシュされず、エラーにもならないとされています。業務記述書とRCMは十分に長いので、前置きに置けばキャッシュの対象になります。 応答の cache_read_input_tokens で、実際に読まれたかを確かめます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、変更記録と現行の文書を読み比べて、直すべき箇所の案と、統制への影響の有無の案を書くことです。

書くもの中身書き方の決まり
直すべき箇所業務記述書の節の番号、またはRCMの統制ID文書に無い番号・IDを作らない
現行その箇所の現在の文面原文の文字列をそのまま写す
改訂案変更記録に沿って直した文面変更記録に書かれた範囲だけを直す
理由どの変更記録のどの記述に基づくか変更記録の文字列を引用する
統制への影響の案統制の内容・担当・頻度・種類のどれが変わるか変わるものを挙げるだけ。重要かどうかは書かない
確認事項変更記録からは決められず、担当部署に聞くべき点1問1文
影響なしの理由候補プロセスに直す箇所が無いと判断した理由変更記録のどの点が文書に関わらないか

「改訂案」の決まりが、この構成でいちばん大事です。 変更記録が「決裁の金額の基準を500万円から1,000万円に変更」なら、改訂案はその数字を変えるところまでです。「あわせて承認の手順も見直すのが望ましい」のような、変更記録に無い改善をAIが書き足すと、案が業務の実態から離れます。

最後の行の「影響なしの理由」も、必ず書かせます。 第1章で書いたとおり、影響なしの判断にも根拠を残すことが、この構成の目的の1つです。

させないこと理由
重要な変更に当たるかの判断経営者の評価の責任のもとで推進室が決める
統制上の要点の追加・削除評価の設計そのもの。人が決める
有効性の評価整備状況・運用状況の評価は人がテストして行う
変更記録に無い改善の提案案が実態から離れる。提案は別の場で行う
文書の直接の書き換え案までにする。改訂は担当部署の確認の後

1行目がいちばん起きやすい失敗です。 統制の担当や頻度が変わる変更を渡すと、AIは「重要な変更に該当するため、整備状況の再評価が必要です」と書きがちです。その一文が推進室の判断の前に担当部署へ渡ると、判断が済んだように読まれます。 変わる要素を挙げるところまでにさせます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは上場会社の内部統制推進室で、業務の変更記録を内部統制の文書に反映する案を作る補助をします。
渡された変更記録と文書に書かれていることだけをもとに案を作ってください。推測で補わないでください。

【文書の説明】
- 業務記述書:プロセスごとの文書。各段落の先頭に節の番号がある
- RCM:1行が1つの統制。列は 統制ID/リスクの内容/統制の内容/種類(予防・発見)/
  頻度/担当/勘定/要件/統制上の要点(Yes/No)

【やること】
1. 変更記録の内容が、渡された業務記述書のどの節、RCMのどの統制IDに関わるかを探す
2. 関わる箇所ごとに、現行の文面、改訂案、理由を書く
3. RCMの統制について、統制の内容・担当・頻度・種類のうち変わるものを挙げる
4. 変更記録だけでは決められない点を、担当部署への確認事項にする
5. 関わる箇所が無い場合は、その理由を書く

【厳守事項】
- 節の番号と統制IDは、渡された文書にあるものだけを使ってください。新しい番号やIDを作らないでください。
- current には、文書の文字列をそのまま写してください。言い換え・要約をしないでください。
- 改訂案は、変更記録に書かれた変更の範囲だけを反映してください。
  変更記録に無い改善、望ましい手順、追加の統制を書かないでください。
- 「重要な変更に該当する」「再評価が必要」「統制は有効」など、評価や判断の結論を書かないでください。
  変わる要素を挙げるだけにしてください。
- 統制上の要点(Yes/No)の列を変える案を書かないでください。
- 変更記録の施行日・稼働日は、そのまま写してください。
- 文書に関わる箇所が見つからない場合に、無理に箇所を挙げないでください。

【変更記録】{change_record}
【過去の同種の変更記録と判断】{past_decisions}

(業務記述書とRCMの本文は、この指示の前に、キャッシュの対象となる前置きとして置きます。)

「変更記録に無い改善を書かない」を明記しないと、親切な改善案が混ざります。 内部統制の文書を渡すと、AIは文書を良くしようとして、手順の追加や統制の強化を提案します。禁じるのは、変更記録の外から案を作ることそのものです。

「無理に箇所を挙げない」も同じ理由です。 候補プロセスを渡されると、AIは何かしら関係のある箇所を探してきます。影響なしも正しい答えの1つだと、指示で認めておきます。

Step7

出力形式を固定する

Claude API の構造化出力で、次の形のJSONを受け取ります。

{
  "change_id": "CHG-2026-10-017",
  "process_id": "P05",
  "edits": [
    { "doc": "description | rcm",
      "location": "3.(2) | C05-012",
      "current": "",
      "proposed": "",
      "reason_quote": "",
      "control_changes": ["content | owner | frequency | type"] }
  ],
  "questions": [ "" ],
  "no_impact_reason": ""
}

1つ目の理由は、current を原文と照らせることです。 プログラムが current の文字列が渡した文書に含まれるかを確かめ、含まれなければ「引用不一致」の印を付けます。 公式の説明では、構造化出力は Citations と併用できず、両方を指定すると 400 のエラーになるとされています。引用の正しさは、プログラムの照合で担保します。 location の節の番号と統制IDも、文書に実在するかを同じく照らします。

2つ目は、control_changes で推進室の確認の順番を決められることです。 RCMの行で control_changes があり、その統制が統制上の要点(Yes)なら、推進室の確認の一覧の先頭に置きます。 統制上の要点かどうかはRCMの列から機械的に引き、AIには判断させません。

3つ目は、no_impact_reason で影響なしの根拠が残ることです。 edits が空なら no_impact_reason が必須、という規則をプログラムで確かめます。

公式の説明では、スキーマでは additionalProperties を false にする必要があり、オブジェクトの必須でない項目は必須の項目の後に並ぶとされています。並び順を固定したいので、全項目を必須にし、空のときは空の文字列や空の配列を返させます。 また、スキーマの複雑さには上限があるとされているので、edits の中を深く入れ子にしません。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
規程管理の台帳・変更管理のチケット・組織変更の通知締め日で絞った出力を読む前月分の変更記録
文書管理の共有フォルダ最新の版を読む業務記述書とRCMの本文
Claude APIMessages API(構造化出力、プロンプトキャッシュ)改訂案と影響の有無の案
推進室の確認の一覧表に書き出す変更記録ごとの案、印、確認事項
業務の担当部署人が送る改訂案と確認事項

文書そのものには書き込みません。 改訂は、担当部署の確認を経て推進室が行い、版を上げます。この構成が書くのは確認の一覧だけです。

変更記録の台帳にも書き戻しません。 「推進室で検討済み」の記録は、推進室の判断の記録の側に残します。

Claude API のデータの扱いは、公式の説明では、ゼロデータ保持(ZDR)の取り決めを結べば、応答の返却後にプロンプトと応答を保存しないとされ、Messages API はその対象です。文書は未公表の内部の情報なので、取り決めを結んだ組織で使い、ZDR の対象外の機能(バッチ処理、Files API など)は使いません。

Step9

人が確認する

全件を推進室の担当が確認します。 見る順番は、プログラムが付けた印で決めます。確認の一覧は、たとえば次の形にします。

変更記録プロセス箇所現行(抜粋)改訂案(抜粋)印
決裁基準の改定(11/1施行)契約の実行C05-012500万円以上は部長が承認1,000万円以上は部長が承認統制上の要点・担当と基準の変更
帳票の様式変更債権の管理2.(3)延滞一覧を毎週出力延滞一覧を毎週出力(様式は新)表現の手直し
支払の手順書の誤字の訂正支払---影響なし(理由あり)

一覧の1行目のような案が、推進室の時間を使うべきところです。 2行目以降は、案と理由を読んで採るか捨てるかを決めるだけで済みます。

  1. 統制上の要点に効く案 … control_changes があり、RCMの統制上の要点が Yes のもの。整備状況の再評価の要否を、推進室の責任者と決めます
  2. 引用不一致の案 … current や location が原文と合わないもの。原文で確かめ、案を直すか捨てます
  3. 改訂案のある案 … 文面が変更記録の範囲に収まっているか。改善の書き足しが無いか
  4. 影響なしの案 … no_impact_reason を読み、納得できれば影響なしとして判断の記録に残します

4番目を流さないでください。 影響なしの理由が「関係がない」の一言なら、AIが文書のどこも見ていない可能性があります。 理由が変更記録の具体的な記述に基づいているかを確かめます。

業務の担当部署の確認は省きません。 改訂案は文書の上での整合で、実際の業務がそう変わったかは担当部署にしか分かりません。

目標は、60件をならして1件20分です。 探す作業と書き起こす作業が案の確認に変わり、判断と担当部署とのやり取りが残ります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
対応表で候補プロセスが引けないAIに渡さず、推進室の担当が直接見る。対応表の見直しの候補にする
引用不一致・存在しない番号やID該当の案に印。原文で確かめる
edits が空で no_impact_reason も空案を捨てて再実行。2回続けば担当が直接見る
評価の結論の言葉(「再評価が必要」等)が出た一覧で印を付け、担当部署に送る前に削る
渡す文書が最新の版でない処理を止め、版を確かめてからやり直す
出力が max_tokens で切れた案を捨て、候補プロセスを分けて再実行
変更記録の内容が空・件名だけAIに渡さず、所管部署に内容を問い合わせる
Claude API が応答しない一覧に「未処理」を残し、翌日に再実行

上の2行が大半を占めます。 どちらもAIの問題というより、対応表と文書の番号の整い方の問題です。対応表に無い変更記録が多い月は、評価の範囲の見直しのきっかけにもなります。

Step11

記録を残す

  • 変更記録の一覧(経路、件名、施行日、所管部署)と、統合した重複
  • 渡した文書の版の番号と、候補プロセス
  • Claude API が返したJSONの全文、使ったモデル、cache_read_input_tokens
  • 引用の照合の結果と、付けた印
  • 推進室の判断 … 案を採ったか、直したか、捨てたか。影響なしとしたか。統制上の要点に効くとして再評価の要否をどう決めたか
  • 担当部署の確認の日付と、改訂後の文書の版の番号

5つ目が、この構成で最も大事な記録です。 実施基準は、内部統制の整備及び運用状況を適切に記録・保存することを求めており、前年度の評価結果を継続して使う扱いも、前年度の整備状況と重要な変更が無いことを記録したうえでのものです。毎月の判断の記録が、その「重要な変更が無い」ことを示す材料になります。

最後の行は、いつから統制が変わったかを追うためのものです。 変更記録の施行日と文書の改訂の日を並べておけば、期中の評価のあとに変わった統制がどれかを、期末に一覧で出せます。

04実装レベルの3段階

最小構成:変更記録と文書を手で選んで渡し、案を作らせる / 1件ごとの改訂案
半自動化:上記+変更記録の集約と候補プロセスの絞り込みを自動にし、案を一覧に書き出す / 集約・絞り込み・案の作成
本格構成:上記+引用の照合、印による確認の順番付け、判断の記録と文書の版の紐付け、重要な変更の個別処理 / 月初の処理の全体と、判断の記録

最小構成では、どの文書を渡すかを人が選ぶので、探す作業が残ります。 確かめるための段階です。 半自動化で、探す作業の多くが無くなります。 ただし、引用の照合と確認の順番付けが無いと、案を全部同じ重さで読むことになります。本格構成で1件20分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、引用不一致と統制上の要点の印によって、読む順番と読み方が決まるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の段階で、対応表に無い変更記録と、関係の無い箇所を挙げた案がどれだけ出るかを数えます。対応表を直してから本格構成に進むほうが、確認の時間が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
60 分
1件あたり導入後時間
20 分
現在  60件 × 60分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 60件 × 20分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価4,500円)
216万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 金融商品取引法の内部統制報告制度の対象で、評価の範囲に20を超える業務プロセスを持つ上場の金融機関・保険会社・事業会社。業務記述書とRCMを毎期の評価の直前にまとめて直しており、期中の規程改定やシステム変更が文書に反映されるまでに時間がかかる場合。変更記録は規程管理・システムの変更管理・組織変更の通知として毎月届いているが、どの文書のどの箇所に効くかを探すのが推進の担当の経験に頼っている場合。
向いていない
  1. 業務プロセスが少なく、業務記述書とRCMの量が担当者の頭に収まっている会社。業務記述書とRCMをGRCの専用の製品で持ち、変更の影響の紐付けがすでに製品の中で行われている場合。変更記録が文書として残っておらず、口頭や会議でだけ伝わっている場合。なお、統制上の要点の選定、整備状況・運用状況の有効性の評価、重要な変更に当たるかの判断は、経営者の評価の責任のもとで人が行うもので、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 前期に文書を改訂した変更記録から10件を選ぶ(影響なしだったもの、複数のプロセスに効いたものを入れる)
  2. その10件について、当時どの節と統制IDを直したか、直さなかった理由を並べておく
  3. ZDR の取り決めを結んだ組織の API キーで、候補プロセスの文書と変更記録を渡し、プロンプトの例で案を作らせる
  4. 出てきた案を、当時の改訂と突き合わせる
  5. 評価の結論の言葉や、変更記録に無い改善が出ていないかを確かめる

内部の文書なので、一般向けのAIの画面では試しません。 試す段階から本番と同じ扱いの下で行います。

出てきた内容判断
当時と同じ箇所が挙がり、影響なしも当時と一致した対応表と変更記録の集約に進む
変更記録に無い改善や評価の結論を書いた指示の書き方で直る。構成は有効
関係の無い箇所を多く挙げた渡す文書が広すぎる。 候補プロセスの絞り方を見直す

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、対応表がどこまで細かければよいかが分かったということです。対応表を細かくして、同じ10件をやり直してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「再評価が必要」など結論の言葉が出る評価や判断の結論を書かないと明記し、一覧で検出して削る
変更記録に無い改善が案に混ざる変更記録の範囲だけを直すと明記し、reason_quote で根拠を確かめる
存在しない節の番号や統制IDが出る渡した文書に実在するかをプログラムで照らす
「現行」が原文と違うCitations と構造化出力は併用できない。current をプログラムで照合
30プロセスの文書を全部渡す関係の無い箇所を挙げる。対応表で候補を絞る
古い版の文書を渡す最新の版を確かめ、版の番号を記録する
キャッシュが効かない前置きの順番を固定し、プロセスの順に流す。cache_read_input_tokens で確かめる
統制上の要点の列をAIが変える列を変える案を禁じ、統制上の要点かは表から機械的に引く
影響なしの理由が一言理由が変更記録の具体的な記述に基づくかを確かめる
案を担当部署にそのまま送る推進室の確認の後に送る。結論の言葉が混ざったまま渡さない

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「AIが文書を良くしようとして、判断や改善を書き足す」という同じ形をしています。変更記録の範囲を超えない案になっているかどうかで、推進室がそのまま使えるかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 業務記述書とRCM(自社の業務の手順と統制の弱い点が分かる文書)、規程の改定の内容、システムの変更の内容(権限の設定や改修の箇所を含む)、組織変更の情報(公表前のものを含むことがある)です。

  1. ZDR の取り決めを前提にする … Messages API は ZDR の対象で、バッチ処理や Files API は対象外とされています。月初にまとめて処理するからといってバッチ処理を使わないようにします
  2. 渡す範囲を候補プロセスに限る … 30のプロセスの文書をまとめて渡しません。変更記録に関係しうるプロセスの文書だけを渡します
  3. 公表前の組織変更や新事業の情報を扱いに注意する … 稟議の写しには公表前の情報が入ることがあります。インサイダー情報の管理の規程と照らし、扱える人と時期を決めます
  4. 案を担当部署へ送るのは人にする … 結論の言葉や誤った引用が混ざった案が、評価の判断の前に広がらないようにします
  5. AIの出力を評価の証拠にしない … 整備状況・運用状況の評価は、人がテストして行います。AIの案は文書の改訂の材料で、評価の結論の根拠にしません
  6. 監査人と使い方を共有する … 文書の改訂の過程でAIを使っていることを、内部監査と監査人に伝え、判断の記録をどう示すかを先に相談しておきます

誤りが起きた場合のリスクは、直すべき箇所を見落とすことと、変更記録に無い内容が文書に入ることの2つです。 前者は対応表の不備と影響なしの理由の読み流しから起き、後者は改善の書き足しから起きます。どちらも「変更記録に書かれた範囲だけを、根拠つきで扱う」という同じ区別から出ているので、そこだけは設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:対応表を作る

約30のプロセスについて、関係する部署・システム・規程・勘定を一覧にします。最初は、変更の多いプロセス(契約の審査、債権の管理、決算・財務報告、ITの全般統制)から作ります。 あわせて、ZDR の取り決めと社内の承認の手続を始めます。

2週目:10件で試す

前期に改訂した変更記録から10件を選び、候補プロセスの文書と一緒に渡して案を作らせます。当時の改訂と突き合わせ、評価の結論の言葉と変更記録に無い改善が出ていないかを最優先で見ます。

3週目:変更記録を1つの一覧にする

規程管理の台帳・変更管理のチケット・組織変更の通知を、締め日で絞って1件1行の一覧にするプログラムを作ります。重複の統合の規則もここで決めます。

4週目:文書の文字化と案の作成をつなぐ

業務記述書の節の番号付けとRCMの行の取り出しを作り、候補プロセスごとに案を作って一覧に書き出します。この時点では引用の照合を目で行い、照合の規則を固めます。

2か月目: 引用の照合と確認の順番付けを足し、判断の記録を始めます。プロセスの順に流してキャッシュが効いているかを確かめます。3か月目以降: 1件60分が何分になったかを実測し、対応表に無い変更記録の数を毎月数えます。期末の評価の前に、期中に変わった統制の一覧が判断の記録から出せるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
企業会計審議会が令和5年4月7日に「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」を取りまとめ、公表したこと金融庁: 意見書の公表について2026-10-14
改訂基準・実施基準が令和6年4月1日以後開始する事業年度から適用されること。内部統制の整備及び運用状況を適切に記録・保存する必要があること。参考2(業務の流れ図・業務記述書の例)と参考3(リスクと統制の対応の例。要件として実在性・網羅性・権利と義務の帰属・評価の妥当性・期間配分の適切性・表示の妥当性)。システムの一覧の作成が有用とされること。期中の評価の後に重要な変更があった場合の追加手続。前年度の整備状況と重要な変更がないものは記録により評価結果を継続利用できること。組織の変更やITの開発などの変化のたびにリスクを再評価する仕組みが評価項目の例に挙がっていること金融庁: 意見書(別紙1)2026-10-14
構造化出力を output_config.format で指定すること。additionalProperties は false が必要で、必須でない項目が必須の項目の後に並ぶこと。スキーマの複雑さに上限があること。Citations と併用すると 400 のエラーになることClaude Platform Docs: Structured outputs2026-10-14
cache_control による自動のキャッシュと明示の区切りがあること。既定の保持が5分で使われるたびに延長されること。読み出しが通常の入力より安い倍率、書き込みが割増であること。最小の長さに満たない前置きはキャッシュされずエラーにもならないこと。cache_read_input_tokens で確かめられることClaude Platform Docs: Prompt caching2026-10-14
ZDR の取り決めの下では応答の返却後にプロンプトと応答を保存しないこと。Messages API は ZDR の対象で、バッチ処理と Files API は対象外であることClaude Platform Docs: API and data retention2026-10-14

統制上の要点の選定と、重要な変更に当たるかの判断は、経営者の評価の責任のもとで、内部監査と監査人と相談して決めてください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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