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グループ会社の役員・事業内容・決裁規程・主要契約の資料を検索の対象にし、経営企画の担当者が質問で根拠つきの回答を引けるようにする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

経営企画の担当が「B社の今の取締役は誰か」「C社の主要契約に支配権の変更の条項はあるか」と質問すると、その会社の登記・議事録・規程・契約の要約から基準日に効いている資料だけを探し、根拠の箇所つきで答えます。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
その他/商社/小売/製造
対象部門
経営企画
対象業務
台帳・マスタ管理/情報検索
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
品質標準化/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 他部署や役員から、メールやチャットで調べものの依頼が届く
  2. 担当が、その会社のフォルダを開き、資料の一覧を眺めて候補を探す
  3. 役員の質問なら、最新の登記事項証明書の写しと、その後の株主総会の議事録を開いて突き合わせる
  4. 決裁の質問なら、その会社の決裁規程の今の版を探し、別表の金額を読む
  5. 契約の質問なら、主要契約の要約を開き、足りなければ法務部に写しを頼む
  6. 分からなければ、古くからいる担当やグループ会社の総務に聞く
  7. 答えを書き、根拠のファイル名を添えて返す
導入後(After)
  1. 人担当が社内の検索画面で、会社名・基準日(既定は今日)・質問を入れる
  2. 自動中継プログラムが、会社名を会社コードに直し、基準日とあわせて絞り込みの式を作る
  3. 自動Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、その会社の資料のうち基準日に効いているものだけを探し、根拠の箇所つきで答える
  4. 自動役員の任期を問う質問なら、中継プログラムが役員台帳のデータから就任日と任期満了の見込みを出し、答えに添える
  5. 自動登記の写しと社内の資料で内容が食い違えば、両方を並べて「食い違いあり」の印を付ける
  6. 人担当が根拠の箇所を開いて確かめ、依頼者へ返す
  7. 人「食い違いあり」と出たものは、担当がグループ会社の総務に確かめ、資料の側を直す
  8. 自動質問・絞り込みの式・答え・根拠・食い違いの記録を残す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 他部署や役員から、メールやチャットで調べものの依頼が届く
  2. 担当が、その会社のフォルダを開き、資料の一覧を眺めて候補を探す
  3. 役員の質問なら、最新の登記事項証明書の写しと、その後の株主総会の議事録を開いて突き合わせる
  4. 決裁の質問なら、その会社の決裁規程の今の版を探し、別表の金額を読む
  5. 契約の質問なら、主要契約の要約を開き、足りなければ法務部に写しを頼む
  6. 分からなければ、古くからいる担当やグループ会社の総務に聞く
  7. 答えを書き、根拠のファイル名を添えて返す

(a)資料が会社ごと・年度ごとに散らばっている。 1社のフォルダの中にも「2024年度」「規程」「総会」「その他」といった分け方が混ざり、同じ規程の旧版と新版が別のフォルダにあることがあります。2番目の「候補を探す」に、1件あたりいちばん時間がかかります。

(b)どれが今効いている資料か分からない。 役員の一覧は年に1回しか直されず、決裁規程は改定の議事録だけがあって本文が差し替わっていない、ということが起きます。「最新のファイル」と「今効いている資料」が一致しません。

(c)資料どうしが食い違う。 登記事項証明書の写しでは退任している役員が、社内の会社概要には残っている。どちらが正しいかは、議事録の日付と登記の日付を並べて初めて分かります。 3番目の突き合わせは、慣れた担当でないとできません。

(d)詳しい人に質問が集まる。 6番目の「古くからいる担当に聞く」が、毎月何十回も起きます。その人が休むと、調べものが止まります。

  1. 【人】 担当が社内の検索画面で、会社名・基準日(既定は今日)・質問を入れる
  2. 【自動】 中継プログラムが、会社名を会社コードに直し、基準日とあわせて絞り込みの式を作る
  3. 【自動】 Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、その会社の資料のうち基準日に効いているものだけを探し、根拠の箇所つきで答える
  4. 【自動】 役員の任期を問う質問なら、中継プログラムが役員台帳のデータから就任日と任期満了の見込みを出し、答えに添える
  5. 【自動】 登記の写しと社内の資料で内容が食い違えば、両方を並べて「食い違いあり」の印を付ける
  6. 【人】 担当が根拠の箇所を開いて確かめ、依頼者へ返す
  7. 【人】 「食い違いあり」と出たものは、担当がグループ会社の総務に確かめ、資料の側を直す
  8. 【自動】 質問・絞り込みの式・答え・根拠・食い違いの記録を残す

2番目が、この設計の条件です。 会社と基準日で絞らずに探すと、似た名前の別の会社の規程や、改定前の版が根拠に入ります。答えの文はもっともらしく、根拠のファイル名を開くまで誤りに気づきません。

4番目で任期をプログラムに任せるのは、計算だからです。 取締役の任期は、会社法第332条で「選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」とされ、公開会社でない会社は定款で10年以内まで延ばせます。事業年度の末日と定款の定めという2つの値から決まる計算を、文章を読むモデルにさせません。

02今回想定するシステム構成

構成図
経営企画の担当(社内の検索画面。会社名・基準日・質問を入れる)
   │
   ▼【トリガー】質問の送信
中継プログラム(Python/Cloud Run)
   ├──▶ 会社名を会社コードに直す(会社の一覧)
   ├──▶ 会社コードと基準日で絞り込みの式を作る
   ▼
Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッド
   │   登記の写し/議事録/会社概要/決裁規程/主要契約の要約 から探す
   │   根拠の箇所と出典を返す
   ▼
中継プログラム
   ├──▶ 役員台帳のデータで任期満了の見込みを出す
   ├──▶ 資料の種類ごとの内容を比べ、食い違いに印を付ける
   ▼
答え + 根拠の箇所 + 任期の見込み + 食い違いの印
   ├──▶ 画面へ
   └──▶ 資料の直しの待ち行列へ(食い違い・根拠なし)
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、画面・会社の一覧・検索・役員台帳のデータ・記録をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(会社別の資料の原本とメタデータ)、役員台帳のデータ(会社コード・氏名・役職・就任日・選任した総会の日・任期の定め)─

会社別のフォルダと法務部の文書管理の仕組みは、新しく足すものではありません。 中継プログラムは、どちらにも書き込みません。 最初の準備は、資料1つずつに会社コード・資料の種類・効いている期間の印を付けることと、役員の一覧を役員台帳のデータにすることです。

検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作り、出典を付けて返します。前のセッションの ID を渡すとやり取りを続けられるので、「その取締役の前任は」と聞き足せます。出典ごとに根拠のスコアが返り、根拠の弱い答えを落とす設定があります。

資料の取り込みは Cloud Storage から行います。 TXT、JSON、Markdown、PDF、HTML、DOCX、PPTX、XLSX、XLSM の文書を検索の対象にでき、1ファイルの上限は200MBです。資料ごとの印は、JSON Lines のメタデータファイルに id、content の uri と mimeType、そして structData として書きます。

基準日の考え方の土台は、会社法です。 第915条は、登記した事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならないとしています。登記は変更の後に追いかけて直るもので、基準日によっては「議事録では就任済み、登記はまだ」という時期があることを、設計の前提にします。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、担当が社内の検索画面で質問を送ったことです。 画面は経営企画部のグループ管理グループと、閲覧を許した役員・監査役室だけが使います。会社名と基準日を入れないと送信できない作りにします。基準日の既定は今日ですが、「3月末時点の役員構成」のような質問では担当が日付を変えます。

会社名は候補から選ばせます。 自由に入れさせると「北日本販売」「北日本販売株式会社」「旧・北日本商事」が別の会社として扱われます。会社の一覧には旧商号と略称を持たせ、どれを打っても同じ会社コードに当たるようにします。

1つの会社についての続けての質問は、同じセッションで聞き足します。別の会社に移るときは、新しいセッションで始めます。 前の会社の答えが、次の会社の答えに混ざらないようにするためです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
質問会社コード、基準日、質問の文画面
登記事項証明書の写し商号、本店、目的、役員、登記の日付会社別のフォルダ
議事録株主総会・取締役会の決議と日付会社別のフォルダ
会社概要事業内容、拠点、従業員数、主要取引先グループ会社の総務から年1回
決裁規程その会社の職務権限と金額の基準、別表会社別のフォルダ
主要契約の要約相手方、期間、更新、解除の条項、支配権の変更の条項法務部が作る要約
役員台帳のデータ氏名、役職、就任日、選任した総会の日、任期の定め、退任日経営企画が作る表
会社の一覧会社コード、商号、旧商号、略称、事業年度の末日、公開会社か経営企画

質を決めるのは、資料ごとの「効いている期間」です。 登記の写しなら取得日、議事録なら決議の日、規程なら施行日と次の改定の施行日の前日、契約なら契約の期間です。この期間が無い資料は、基準日で絞れません。

主要契約は、要約だけを検索の対象にします。 契約書の全文は法務部の文書管理の仕組みに残し、検索に入れるのは法務部が作った要約です。要約に「原本の文書番号」を必ず書かせ、 根拠として画面に出すのは要約の箇所と原本の文書番号です。

Step3

データの取得方法を決める

資料は Cloud Storage に会社コードごとのフォルダで置き、メタデータファイルとあわせてデータストアへ取り込みます。 1回の取り込みで扱えるファイルは10万までで、27社分の資料なら1回で入ります。取り込みは月に1回の定時と、資料を足したときに行います。

取るものどこから何に使うか
会社コードメタデータ company_idその会社の資料だけに絞る
資料の種類メタデータ doc_type(registry/minutes/profile/authority_rule/contract_summary)根拠の種類を画面に示し、食い違いを比べる
効いている期間メタデータ valid_from・valid_to基準日に効いている資料だけに絞る
取得日・決議日メタデータ doc_date同じ種類の資料が複数あるとき新しいほうを示す
原本の文書番号メタデータ source_ref契約の要約から原本へたどる

絞り込みの式は、会社と基準日で書きます。 項目を索引可能にしておけば、company_id: ANY("JP014") AND valid_from <= "2026-10-08" AND valid_to >= "2026-10-08" のように、14番の会社の、今日効いている資料だけを引けます。日付は ISO 8601 の文字列で比べられます。索引可能にしても絞り込みに使えない項目があるとされ、title に当てた項目では絞れないので、会社コードは title に当てません。

効いている期間の終わりが決まっていない資料には、遠い先の日付を入れます。 今効いている規程の valid_to を空にすると比較の式に当たらないので、9999-12-31 を入れておき、改定のときに書き換えます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 会社の一覧を作る … 会社コード、商号、旧商号、略称、事業年度の末日、公開会社か、定款の任期の定めを1社1行にします
  2. 資料に印を付ける … 会社別のフォルダの資料1つずつに、会社コード・資料の種類・効いている期間・取得日または決議日を付けます
  3. 規程を版ごとに分ける … 改定の議事録しか無い規程は、改定後の本文を作ってから入れます。議事録だけを入れると、旧版の本文と改定の議事録が別々に答えに出ます
  4. 役員台帳のデータを作る … 登記の写しと議事録から、役員1人ずつの就任日・選任した総会の日・退任日を表にします
  5. 主要契約の要約をそろえる … 法務部に、相手方・期間・自動更新・解除の条項・支配権の変更の条項・原本の文書番号の欄をそろえた要約を作ってもらいます
  6. 重複を除く … 同じ資料がメールの添付とフォルダに二重にあるものは、片方だけにします

1番目の「定款の任期の定め」を落とさないでください。 公開会社でない子会社は定款で任期を延ばしていることが多く、同じ「取締役」でも会社ごとに任期の満了が違います。 ここが空だと、任期の計算はできません。

3番目が、いちばん手間のかかる作業です。 規程の改定を議事録の決議だけで済ませ、本文の差し替えをしていない会社は珍しくありません。この構成を入れる前に、規程の今の本文が無い会社が分かること自体が成果です。

Step5

AIに処理させる

させるのは、絞り込んだ資料の中から質問に当たる箇所を探し、資料の種類と日付を添えて答えることです。 資料に書かれていないことを補うこと、資料どうしのどちらが正しいかを決めること、法的な評価を言うことはさせません。

質問の型答えに含めるもの根拠にする資料
役員の構成氏名、役職、根拠の資料の種類と日付登記の写し、議事録
事業の内容事業内容、拠点、主要取引先会社概要、登記の目的
社内の決裁案件の種類ごとの決裁者と金額の基準決裁規程の今の版
主要契約相手方、期間、解除・支配権の変更の条項の有無と箇所主要契約の要約

answer メソッドの設定は次のようにします。

設定値理由
session会社ごとのセッション同じ会社の聞き足しを続ける
includeCitations有効(既定は無効)根拠の箇所を必ず付ける
ignoreLowRelevantContent有効資料に無いことを答えない
groundingSpec の filteringLevelFILTERING_LEVEL_HIGH根拠の弱い答えを出さない
searchSpec の filter会社コードと基準日他社の資料と古い版を混ぜない
searchSpec の maxReturnResults10(既定。上限は25)1社の資料なら足りる
preamble下の指示答え方の規則を与える
させないこと理由
任期の満了を計算する事業年度と定款の定めから決まる計算で、役員台帳のデータで行う
食い違う資料のどちらかを選ぶ登記と議事録の日付を並べて人が決める
契約を解除できるかを言う法的な評価は法務と顧問弁護士が行う
資料に無い役員や取引先を一般知識で補う公開情報の古い記事が混ざる
他の会社の規程で補う決裁の金額は会社ごとに違う

1行目と2行目がいちばん起きやすい失敗です。 モデルは「就任から2年なので来年の総会で満了です」と書きたがり、事業年度の末日と定款の定めを無視した、もっともらしい年を出します。食い違いも同じで、新しい日付の資料を選んで答えると、登記がまだ追いついていないだけの時期を見落とします。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。

あなたは事業会社の経営企画部で、グループ会社の資料を調べる担当を手伝う立場です。
検索結果に出た、1つのグループ会社の資料だけを根拠に答えます。
資料はすべて、質問の基準日に効いているものに絞ってあります。

【答え方】
1. 質問に当たる箇所を、資料の種類(登記の写し/議事録/会社概要/
   決裁規程/主要契約の要約)と、資料の日付を添えて答えてください。
2. 役員の質問では、氏名と役職を資料の記載のまま書いてください。
3. 決裁の質問では、案件の種類・決裁者・金額の基準を、規程の条または別表の
   箇所とともに書いてください。
4. 契約の質問では、条項の有無と、要約のどの欄に書かれているかを書き、
   原本の文書番号を添えてください。
5. 同じことについて資料どうしで内容が違う場合は、どちらかを選ばず、
   両方を資料の種類と日付つきで並べてください。

【厳守事項】
- 役員の任期がいつ満了するかを計算しないでください。
  「任期は別の仕組みで示す」とだけ書いてください。
- 資料に書かれていない役員・取引先・事業を、一般的な知識や
  報道で補わないでください。書かれていなければ「資料に記載なし」としてください。
- 契約を解除できるか、問題があるかといった評価を書かないでください。
- 他の会社の資料の内容で補わないでください。
- 日付は資料の記載のまま書き、和暦と西暦を書き換えないでください。

「どちらかを選ばず、両方を並べる」を書かないと、モデルは新しい日付の資料を採ります。 それ自体は多くの場合に正しいのですが、登記の写しより社内の会社概要のほうが新しい日付のとき、社内の資料の誤りがそのまま答えになります。選ぶのは人の側に残します。

「和暦と西暦を書き換えない」は、議事録と登記の写しで表記が違うためです。 書き換えの途中で年がずれると、基準日との前後が逆に見えることがあります。

Step7

出力形式を固定する

answer メソッドの応答と、役員台帳のデータからの任期の見込み、食い違いの判定を、中継プログラムが次の形にまとめて画面と記録に渡します。

{
  "query_id": "",
  "session_id": "",
  "requester_id": "",
  "company_id": "JP014",
  "as_of": "2026-10-08",
  "question": "",
  "answer_text": "",
  "citations": [
    { "doc_type": "registry | minutes | profile | authority_rule | contract_summary",
      "doc_date": "", "uri": "", "source_ref": "", "grounding_score": 0.0 }
  ],
  "officers": [
    { "name": "", "title": "", "appointed_at": "", "term_rule": "2y | 10y | other",
      "term_end_estimate": "", "source": "officer_table" }
  ],
  "conflicts": [
    { "field": "", "values": [ { "doc_type": "", "doc_date": "", "value": "" } ] }
  ],
  "status": "answered | no_source | conflict",
  "reviewer": { "checked_by": "", "note": "" }
}

1つ目の理由は、answer_text と officers を別の層に置けることです。 答えの文はモデルが作り、officers の任期の見込みは役員台帳のデータから中継プログラムが入れます。定款を変えて任期を延ばした会社があっても、直すのは台帳のデータだけです。

2つ目は、citations に資料の種類と日付を持たせることです。 担当は根拠を開く前に、登記の写しで答えたのか、会社概要で答えたのかを一覧で見分けられます。役員の質問に会社概要だけが根拠として付いていれば、それだけで疑う理由になります。

3つ目は、conflicts で食い違いを機械的に拾えることです。 中継プログラムは、引用された資料のうち種類の違う2つが同じ項目で違う値を持つものを並べ、status を conflict にします。

引用の位置は UTF-8 のバイトで数えられている点に注意します。 answer メソッドの引用の startIndex と endIndex は文字数ではなくバイトで、日本語の答えを文字の位置で切ると、根拠の箇所がずれて表示されます。 中継プログラムで、バイトの位置として扱って切り出します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
社内の検索画面社内向けの画面会社名・基準日・質問の入力、答えと根拠の表示
会社の一覧読み取り会社名・旧商号・略称から会社コードを引く
Agent Searchanswer メソッドの呼び出し会社と基準日で絞って答えと根拠を返す
役員台帳のデータ読み取り任期満了の見込みを出す
資料の直しの待ち行列書き込み食い違い・根拠なしの質問を載せる
質問の記録書き込み質問・絞り込みの式・答え・根拠を残す

会社別のフォルダと法務部の文書管理の仕組みには、つなぎません。 取り込みは Cloud Storage に置いた写しから行い、資料の原本を検索の仕組みから書き換えることはありません。 食い違いが見つかっても、直すのは担当が原本の側で行い、次の取り込みで反映します。

役員台帳のデータは、経営企画が株主総会の後に直します。 総会の議事録を取り込んだのに台帳を直していないと、答えの文と任期の見込みが食い違います。総会の議事録の取り込みと台帳の更新を、1つの作業として扱います。

Step9

人が確認する

人が確かめるのは、根拠の箇所と、食い違いの印です。

  1. 根拠の資料を開く … 外に出す答え(取締役会の資料、金融機関への説明)は、citations の資料を必ず開いて確かめます
  2. conflict を先に片づける … 登記の写しと議事録の日付を並べ、どちらが今の姿かを決め、グループ会社の総務に確かめます
  3. no_source を記録する … 資料に無いと出た質問は、資料が欠けているのか、質問の会社や基準日の選び違いかを見ます
  4. 月に1回、答えた質問から10件を抜いて読む … 根拠の種類が質問に合っているかを見ます

2番目を省かないでください。 食い違いは、グループ会社の側で登記か社内の資料のどちらかが止まっているしるしです。答えを出して終わりにすると、同じ食い違いが毎月出ます。

目標は、100件をならして1件12分です。 根拠を開いて確かめる時間は残し、フォルダを探し、版を確かめる時間を減らす想定です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
会社名が一覧に無い送信させず、会社の一覧への追加を経営企画に依頼する
根拠のスコアが低く答えが落ちたLOW_GROUNDED_CONTENT。資料の取り込み漏れか印の付け忘れを疑う
当たる資料が無いNO_RELEVANT_CONTENT。no_source で待ち行列へ
登記と議事録で役員が違うconflict。両方を並べ、担当が総務に確かめる
規程の今の版の本文が無い改定の議事録だけが出る。本文の作成をグループ会社に依頼する
役員台帳に定款の任期の定めが無い任期の見込みを出さず、「定めが未登録」と表示する
契約の要約に原本の文書番号が無い答えは出すが、法務部に番号の追記を依頼する
基準日が古く、効いている資料が無い資料の期間の外であることを表示する
検索が応答しない画面に「後で再送」を出し、質問の文は消さずに残す

上から4行目までが大半を占めます。 どれもモデルの問題ではなく、資料の印と取り込みの問題です。待ち行列に溜まった件数は、資料の整備の残りを示します。

Step11

記録を残す

  • 質問の文、担当の ID、会社コード、基準日、日時、セッションの ID
  • 絞り込みの式と、answer メソッドの応答の全文(出典と根拠のスコアを含む)
  • 任期の見込みに使った役員台帳のデータの行と、そのときの値
  • 食い違いの記録と、担当が確かめた結果、直した資料
  • 外に出した答えと、出した先
  • 記録の閲覧の履歴

3つ目を残すのは、台帳が後から直されるためです。 取締役会の資料に「来年6月の総会で任期満了」と書いた根拠が、そのときの台帳のどの値だったかを後から示せます。

記録は、経営企画の中でも閲覧できる人を限ります。 主要契約の要約や、M&Aの検討のための質問は、公表前の重要な情報に当たることがあります。

04実装レベルの3段階

最小構成:数社の資料を手でAIの画面に読み込ませ、担当が質問する / 1社の中で資料を探す時間
半自動化:上記+全社の資料を印つきでデータストアに入れ、会社と基準日で絞って検索する / 絞った検索と出典の表示
本格構成:上記+会社の一覧・役員台帳のデータと任期の見込み、食い違いの印、待ち行列と記録をつなぐ / 調べもの・任期・食い違いの拾い上げの全体

最小構成では、基準日で絞れません。 読み込ませた資料の中に旧版があれば、それも答えに出ます。確かめるための段階です。 半自動化で、1件36分が20分程度になります。 資料を探す時間は減りますが、任期の計算と、登記と議事録の突き合わせは担当が行います。本格構成で12分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、食い違いの拾い上げを人の目で行うか、資料の種類の比較で出すかの違いです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で1か月使うと、印の付いていない資料と、本文の無い規程が先に分かります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
100 件
1件あたり現在時間
36 分
1件あたり導入後時間
12 分
現在  100件 × 36分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 100件 × 12分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価4,500円)
216万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 子会社・関連会社が十数社から数十社あり、各社の役員・事業内容・社内規程・主要契約の資料が、会社ごと・年度ごとのフォルダや担当者の手元に分かれている会社。取締役会資料、関係会社の状況の開示、金融機関や監査への説明、M&Aや組織再編の検討で、グループ会社の「今の姿」を毎月何十回も調べ直している経営企画。グループ会社の担当が数年で入れ替わり、どの資料が最新かを知っている人が限られている場合。
向いていない
  1. グループ会社が数社で、経営企画の担当が全社の役員と主要契約を把握している場合。各社の資料が電子化されておらず、紙の議事録と契約書の原本しか無い場合(先に電子化と版の整理が要ります)。役員の選任の可否、契約の解除の可否、組織再編の判断までAIに答えさせたい場合(この構成は資料の該当箇所を示すだけで、法的な評価は法務と顧問弁護士が行います)。

07最小構成で試す方法

  1. グループ会社を3社選ぶ(役員の交代が最近あった会社と、規程の改定が多い会社を必ず入れる)
  2. その3社の登記の写し・直近2年の議事録・会社概要・決裁規程・主要契約の要約を集める
  3. 過去3か月の調べものから20件を選び、当時の答えと根拠の資料を書き出す
  4. 3社の資料を手元のAIサービスに読み込ませ、「この資料だけを根拠に、資料の種類と日付を添えて答えてください。資料どうしで違うときは両方を並べてください。任期は計算しないでください」と指示して20件を聞く
  5. 出てきた答えと根拠を、当時の答えと突き合わせる

20件は必ずやってください。 データストアを組む前に、「資料の種類と日付を添えて答えられるのか」と「古い版を答えないか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時と同じ答えで、根拠の資料も合っていた資料の印付けとデータストアの構築に進む
古い議事録の役員を答えた基準日の絞り込みで直る。構成は有効
当時の答えが、資料に無い担当の記憶で決まっていた資料を作るのが先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、詳しい担当に質問が集まっていた理由が1つ分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
2年前の議事録の役員を答える効いている期間を資料に持たせ、基準日で絞る
改定前の決裁規程の金額を答える規程を版ごとに分け、議事録だけで改定した規程は本文を作る
モデルが任期の満了を計算する指示で禁じ、役員台帳のデータで出す
資料の食い違いを片方だけで答える両方を並べさせ、conflict で担当へ回す
似た名前の会社の資料が混ざる会社名を候補から選ばせ、会社コードで絞る
valid_to が空の資料が絞り込みに当たらない期間の終わりが無い資料には遠い先の日付を入れる
会社コードを title に当てて絞れないtitle に当てた項目は絞り込みに使えない。別の項目にする
根拠の箇所が画面でずれる引用の位置は UTF-8 のバイト。文字の位置として切らない
契約書の全文が検索に入ってしまう検索に入れるのは要約だけにし、原本の文書番号でたどる
総会の後に台帳を直し忘れる議事録の取り込みと台帳の更新を1つの作業にする

上の4行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも答えの文は正しく見え、資料の日付と種類を見て初めて誤りと分かります。 基準日の絞り込みと、資料の種類を答えに添える作りが、運用に乗るかを決めます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: グループ会社の役員の氏名と経歴、議事録に書かれた投資・借入れ・人事の決議、決裁規程、そして主要契約の相手方と条件です。

  1. 閲覧の範囲を分ける … 主要契約の要約やM&Aに関わる資料は、経営企画の中でも見てよい人が限られます。データソースのアクセス制御はデータストアの作成時に選ぶ設定で、既存のデータストアで切り替えることはできず、 1つの文書の読み手は3,000までです。公式ページではプレビュー(一般提供前)の機能とされているので、使わない場合は、契約の要約を別のデータストアに分け、そのアプリを使える人を限ります
  2. 役員の個人情報を必要な範囲に限る … 検索に入れるのは氏名・役職・就任日などの役員としての情報までにし、住所や生年月日が載った資料は印付けの段階で除くか、その欄を消した写しを入れます
  3. 法的な評価をさせない … 契約を解除できるか、役員の選任が有効かは、法務と顧問弁護士が原本を読んで判断することです。この構成が出すのは、資料のどこに何が書かれているかまでです
  4. 公表前の重要な情報を扱う … 組織再編や出資の検討のための質問は、質問の記録そのものが重要な情報になります。記録の閲覧を限り、保存の期間を決めます
  5. 海外子会社の資料は現地の法令で確かめる … 登記や役員の任期は国ごとに違います。会社法の任期の計算は国内の会社だけに当て、 海外子会社は現地の担当が確かめた値を台帳に入れます
  6. 外に出す答えは人が確かめる … 取締役会の資料や金融機関への説明に使う答えは、根拠の資料を開いて確かめてから出します

誤りが起きた場合のリスクは、古い役員や旧版の規程で答えることと、見てはいけない契約が見えることの2つです。 前者は基準日の絞り込みと食い違いの印で、後者は閲覧の範囲の分け方で止めます。どちらもモデルの外の仕組みで守ります。

10まず何から始めるか

1週目:会社の一覧を作る

27社の会社コード、商号、旧商号、略称、事業年度の末日、公開会社か、定款の任期の定めを1社1行にします。旧商号と定款の任期の定めが、意外と手元にありません。 埋まらない会社は、グループ会社の総務に問い合わせます。

2週目:20件で試す

役員の交代があった会社を含む3社の資料で、過去の調べもの20件を手元のAIサービスに聞きます。古い議事録の役員を答えていないか、任期を計算していないかを最優先で見ます。

3週目:資料に印を付ける

3社分の資料1つずつに、会社コード・資料の種類・効いている期間を付けます。議事録だけで改定された規程が見つかったら、本文の作成をグループ会社に頼みます。役員台帳のデータを3社分作ります。

4週目:3社でデータストアをつなぐ

データストアを作って3社の資料を取り込み、中継プログラムで会社と基準日の絞り込み、任期の見込み、食い違いの印を出すところまで作ります。経営企画の5名だけが使う形で始めます。

2か月目: 27社の資料に印を付けて取り込み、conflict と no_source の件数を毎週数えます。3か月目以降: 主要契約の要約を法務部とそろえて足し、1件36分が何分になったかを実測します。食い違いの待ち行列が毎月片づき、役員台帳の更新が総会の後の定型の作業になった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドが検索結果から回答を作ること。前のセッションの ID でやり取りを続けられること。includeCitations(既定は無効)、引用の startIndex/endIndex が UTF-8 のバイトで数えられること。ignoreLowRelevantContent、preamble、searchSpec の filter と maxReturnResults(既定10、上限25)。groundingSpec の filteringLevel(FILTERING_LEVEL_LOW/HIGH)と出典ごとの根拠のスコア、answerSkippedReasons の NO_RELEVANT_CONTENT/LOW_GROUNDED_CONTENTGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-08
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR、日付を ISO 8601 の文字列で比べられること、項目を索引可能にする必要があること、索引可能でも絞り込みに使えない項目があり title に当てた項目では絞れないことGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-08
検索の対象にできる形式(TXT、JSON、Markdown、PDF、HTML、DOCX、PPTX、XLSX、XLSM)、1ファイル200MBまで、1回の取り込みで10万ファイルまで。Cloud Storage のメタデータが JSON Lines で id、content の uri・mimeType、structData/jsonData を持つことGoogle Cloud: Prepare data for ingesting2026-10-08
データソースのアクセス制御がデータストアの作成時に選ぶ設定で、既存のデータストアで切り替えられないこと。Cloud Storage の文書ではメタデータの acl_info に読める人を書くこと。1つの文書の読み手が3,000までであること。この機能がプレビュー(Pre-GA)とされていることGoogle Cloud: Use data source access control2026-10-08
会社法第332条第1項・第2項(取締役の任期。公開会社でない会社は定款で10年以内まで伸長できること)、第915条第1項(変更の登記を2週間以内にすること)e-Gov 法令検索 法令API: 会社法2026-10-08

役員の任期・選任の有効性や、契約の解除の可否は、各社の定款と原本、法務の判断に従ってください。 本記事は Google Cloud と e-Gov 法令検索で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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