海外の現地代理人へ送る出願・中間処理の指示書を社内の方針メモから英文で下書きし、期限・クレームの番号・費用の上限の書き漏れを確かめる
社内で決めた応答と出願の方針メモから、海外の現地代理人へ送る英文の指示書を下書きします。方針メモの指示の項目とレターの文を並べた対照表を付けさせ、期限・クレームの番号・費用の上限の書き漏れを送る前に確かめます。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Microsoft Copilot
- 対象業界
- IT・SaaS/士業/製造
- 対象部門
- 知財
- 対象業務
- 内容確認・チェック/書類作成
- 主な課題
- 属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 翻訳
- 主な効果
- 入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- SaaS追加(小)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 担当者が、和文の方針メモを部長の確認まで済ませる
- 同じ代理人に送った前回の指示書を探し、下敷きにする
- 方針メモを読みながら、クレームごとの扱いと反論の筋を英文に直す
- 期限の台帳を開き、庁の期限と代理人への社内の期限をレターに書く
- 代理人ごとの取り決めの一覧を開き、費用の上限と報告の求め方を書く
- 方針メモとレターを見比べて、書き漏れが無いかを確かめる
- メールにレターと添付を付けて代理人へ送る
- 人担当者が、和文の方針メモを部長の確認まで済ませる
- 人方針メモの決まった欄(案件番号・代理人・期限・費用の上限)を、期限の台帳と取り決めの一覧から埋める
- 人ChatGPT のプロジェクトで案件ごとのチャットを開き、方針メモと、拒絶理由通知のうち該当する部分の要点を貼る
- 【AI】 方針メモを番号付きの指示の項目に分ける
- 【AI】 Sources の指示書のひな形と訳語表に沿って、英文のレターを作る
- 【AI】 指示の項目とレターの文の対照表、方針メモとレターに出てくる数字(クレーム番号・日付・金額・段落番号)の一覧、確かめてほしい点を付ける
- 人担当者が対照表と数字の一覧を見て、空欄と食い違いを直す
- 人担当者がレターを読み直し、添付を付けて代理人へ送る
各工程の詳しい説明を読む
- 担当者が、和文の方針メモを部長の確認まで済ませる
- 同じ代理人に送った前回の指示書を探し、下敷きにする
- 方針メモを読みながら、クレームごとの扱いと反論の筋を英文に直す
- 期限の台帳を開き、庁の期限と代理人への社内の期限をレターに書く
- 代理人ごとの取り決めの一覧を開き、費用の上限と報告の求め方を書く
- 方針メモとレターを見比べて、書き漏れが無いかを確かめる
- メールにレターと添付を付けて代理人へ送る
(a)1通に1時間かかる。 下敷きを探し、メモを英文に直し、台帳と取り決めを見て、最後に見比べる。拒絶理由通知への応答が重なる月は、方針が決まってから指示書が出るまでに数日かかります。 代理人は期限の数週間前には指示を欲しがっていて、遅れると代理人の側の検討の時間が削られます。
(b)クレームの番号が抜ける。 方針メモで「クレーム5〜7は従属先をクレーム1に直す」と1行で書いた指示が、英文にすると3つの文になります。英文を書いている途中で、5と7だけが残って6が落ちる。 見比べの段で気づければ直せますが、気づかずに送ると、代理人は6を元のまま出します。
(c)下敷きの数字が残る。 前回のレターの費用の上限や、別の案件の期限を書き換え忘れることがあります。前回の案件の応答期限が残ったまま送りかけたことがあり、代理人の側から「期限が台帳と違う」と問い合わせを受けて気づきました。
(d)確かめる項目が人によって違う。 ベテランの担当は、指示書の末尾に「補正の案を送る前に確認させてほしい」「期限の延長が要るなら早めに知らせてほしい」と書きます。入って2年目の担当は、そこを書きません。 代理人が補正の案を確認なしに出してしまい、後から補正の書き方を巡ってやり取りが増えたことがあります。
- 【人】 担当者が、和文の方針メモを部長の確認まで済ませる
- 【人】 方針メモの決まった欄(案件番号・代理人・期限・費用の上限)を、期限の台帳と取り決めの一覧から埋める
- 【人】 ChatGPT のプロジェクトで案件ごとのチャットを開き、方針メモと、拒絶理由通知のうち該当する部分の要点を貼る
- 【AI】 方針メモを番号付きの指示の項目に分ける
- 【AI】 Sources の指示書のひな形と訳語表に沿って、英文のレターを作る
- 【AI】 指示の項目とレターの文の対照表、方針メモとレターに出てくる数字(クレーム番号・日付・金額・段落番号)の一覧、確かめてほしい点を付ける
- 【人】 担当者が対照表と数字の一覧を見て、空欄と食い違いを直す
- 【人】 担当者がレターを読み直し、添付を付けて代理人へ送る
2番目が、この設計の分かれ目です。 期限と費用の上限は、AIに渡す前に人が台帳から方針メモへ写しておきます。 AIが受け取るのは「庁の期限:2026-12-14」のように確定した値で、AIはそれを英文の決まった位置に置くだけです。期限を計算する経路を、最初からAIに持たせません。
6番目の数字の一覧が、第3章の(b)と(c)への答えです。 方針メモに出てくるクレーム番号の集合と、レターに出てくるクレーム番号の集合を並べさせます。メモに6があってレターに6が無ければ、一覧の上で一目で分かります。 自分で書いた英文を読み直すより、確実に抜けが見えます。
02今回想定するシステム構成
和文の方針メモ(部長の確認済み) │ 期限・費用の上限・代理人を台帳と取り決めの一覧から写す ▼【トリガー】方針メモの確定 ChatGPT(業務用ワークスペースのプロジェクト) │ プロジェクトの指示:分け方、訳し方、対照表の形、してはいけないこと │ Sources:指示書のひな形(中間処理・出願)、訳語表、 │ 代理人ごとの取り決めの要点、末尾の定型の依頼文 ▼ 【指示の項目】【英文のレター】【対照表】【数字の一覧】【確かめてほしい点】 ▼ 【担当者が対照表と数字の一覧を確かめ、レターを読み直す】→ 代理人へ送る
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | ChatGPT(業務用ワークスペースのプロジェクト機能) | Claude、Microsoft Copilot |
| 台帳 | 期限の管理台帳(いま使っているもの) | 知財管理システム |
| 送付 | 代理人とのメール(いま使っているもの) | - |
新しく足すのは、ChatGPT の業務用ワークスペースと、そのプロジェクトだけです。 期限の台帳と送付の手順は変えません。英文に直す部分を、前回のレターの下敷きからプロジェクトに替えます。
プロジェクトは、チャット・ファイル・指示をまとめておく機能です。 公式の案内では、プロジェクトの指示はそのプロジェクトのチャット全体に適用され、プロジェクトには、アップロードしたファイルや接続した情報を置く Sources の欄があります。 指示書のひな形と訳語表を Sources に置けば、3名の担当者が同じ書き方の指示書を受け取れます。下敷きを探す作業と、前回の数字が残る経路がなくなります。
一方、プロジェクトはパソコンのフォルダに直接つながるものではないと公式の案内に書かれています。使いたいファイルはアップロードするか接続する必要があります。案件のファイルサーバーを丸ごと読ませる構成にはならず、そうする必要もありません。 渡すのは方針メモと、拒絶理由の要点だけです。
業務用のワークスペースを使うのは、出願前の発明と応答の方針を扱うためです。 公式の案内では、Business・Enterprise・Edu のワークスペースのデータは既定でモデルの学習に使われないとされ、会話の保持はワークスペースの設定に従うとされています。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
方針メモが部長の確認を終えたことを起点にします。 確認の前のメモで指示書を作ると、方針が変わったときに英文だけが古いまま残ります。指示書の下書きを作るのは、方針が決まった後だけです。
案件1件につき、チャットを1つにします。 同じ案件で拒絶理由通知が2回目、3回目と届いたときも、同じチャットを使います。前回の応答で何を補正したかが同じチャットに残っていると、今回のレターで前回の補正と食い違う指示を書いたときに、AIが確かめてほしい点に挙げられます。 別の案件を同じチャットで扱うと、クレームの番号が混ざります。チャットの名前は「社内の案件番号+国+何回目の応答か」にします。
中間処理の指示は、庁の期限の6週間前までに出すことを目安にします。 米国特許商標庁の案内では、拒絶などの通知への応答の多くは法律上6か月以内に受け付けられる必要があり、通知はほとんどの場合、延長の手数料なしで応答できる期間を2か月か3か月に縮めているとされています。縮められた期間を過ぎて応答すると延長の手数料がかかり、期限までに応答しなければ出願は放棄されたものとして扱われます。 代理人の側の検討と、補正の案の確認のやり取りの時間を見込んで、社内の期限を決めます。
出願の指示は、優先期間と国内段階への移行の期限から逆算します。 世界知的所有権機関(WIPO)の一覧では、PCT の国内段階への移行の期限は官庁ごとに違い、米国・日本は30か月、欧州特許庁・韓国・インドは31か月とされています。中国は30か月で、追加の手数料を払えば32か月です。国ごとに違うので、期限はAIに覚えさせず、台帳の値を方針メモに写します。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 方針メモ | クレームごとの扱い、反論の筋、補正の根拠の段落、確かめてほしい点 | 担当者が作り、部長が確認したもの |
| 方針メモの決まった欄 | 社内の案件番号、代理人の整理番号、国、庁の期限、代理人への社内の期限、費用の上限、報告の求め方 | 期限の台帳と取り決めの一覧から人が写す |
| 拒絶理由の要点 | 拒絶の理由の種類(新規性・進歩性・記載要件など)、対象のクレーム、引用文献の番号 | 代理人の報告レターや和訳から人が要点を写す |
| 指示書のひな形 | 中間処理と出願の2種。見出し、定型の文、末尾の依頼文 | Sources |
| 訳語表 | 社内の用語と英訳(補正、削除、従属、引用文献、段落など) | Sources |
| 代理人ごとの取り決めの要点 | 補正の案の事前確認の要否、報告の形式、費用の見積の求め方 | Sources |
質を決めるのは、方針メモの決まった欄です。 欄が埋まっていない方針メモは、AIに渡す前に差し戻します。 欄が空のまま渡すと、AIはひな形の空欄を空欄のまま残すか、もっと悪いことに、それらしい値で埋めようとします。
拒絶理由の要点は、通知の全文ではなく人が写した要点にします。 代理人の報告レターや和訳には、引用文献の要約や代理人の意見が長く書かれています。指示書に要るのは、どのクレームがどの理由で拒絶されたかだけです。 全文を貼ると、AIが代理人の意見を方針の一部として指示書に入れてしまいます。
データの取得方法を決める
方針メモは、確定したファイルから本文をコピーして貼ります。 方針メモのひな形の先頭に、決まった欄を表の形で置いておきます。
| 決まった欄 | 書き方の例 | 写す元 |
|---|---|---|
| 社内の案件番号 | P-2025-0412-US | 期限の台帳 |
| 代理人と整理番号 | 代理人A/Ref. 12345 | 期限の台帳 |
| 指示の種類 | 中間処理(1回目の応答) | 方針メモ |
| 庁の期限(延長なし) | 2026-12-14 | 期限の台帳 |
| 代理人への社内の期限 | 2026-11-02 | 方針メモ |
| 費用の上限 | USD 3,500(超える見込みなら事前に見積) | 取り決めの一覧 |
| 補正の案の事前確認 | 要 | 取り決めの一覧 |
日付は西暦の「年-月-日」に、金額は通貨の記号付きにそろえて書きます。 和暦や「12月中旬」のような書き方を残すと、AIが英文にするときに日付を作ります。通貨も円で書いてAIにドルへ直させることはしません。 費用の上限は、代理人との取り決めの通貨のまま方針メモに書きます。
拒絶理由の要点は、決まった欄の下に3行ほどで書きます。 例:「クレーム1〜4:引用文献1により進歩性なし。クレーム5〜7:記載不明確(『略平行』)。クレーム8:拒絶理由なし」。クレームの番号は「1〜4」のような範囲と、「5、7」のような列挙のどちらかに決めて書きます。 範囲と列挙が混ざると、数字の一覧の照合が難しくなります。
明細書と図面の本文は、チャットに貼りません。 補正の根拠は「段落0034〜0036、図5」のように番号で指定し、代理人は手元の明細書で確かめます。出願の指示でも、明細書と図面はメールの添付で送り、チャットにはファイル名だけを書きます。
AIへ渡す前に整形する
- 方針メモが部長の確認済みの版かを確かめる … 確認の日付と版の番号を見ます
- 決まった欄がすべて埋まっているかを見る … 1つでも空なら、チャットに貼る前に埋めます
- 庁の期限を台帳と見比べる … 台帳の値を写したかを、もう一度台帳で確かめます
- 日付・金額・クレームの番号の書き方をそろえる … 西暦、通貨の記号、範囲か列挙のどちらか
- 発明者の氏名と社外秘の製品名を記号に置き換える … 指示書に要るのは案件番号と整理番号だけです
- 前回の応答の方針メモがあれば、同じチャットにあるかを見る … 2回目以降の応答のとき
3番目を省かないでください。 方針メモの期限を写し間違えたまま渡すと、AIはその誤った期限を正しい英文にしてしまいます。 AIは期限が正しいかを確かめられません。台帳との見比べは、AIの前に人が行います。
AIに処理させる
させるのは、方針メモを指示の項目に分けることと、ひな形と訳語表に沿って英文のレターにすること、そして対照表と数字の一覧を付けることです。
| 見るもの | させること | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 方針メモの本文 | 番号付きの指示の項目に分ける(1項目に1つの指示) | 1つの文に指示が2つ入っていれば、2項目に分けて理由を書く |
| クレームごとの扱い | 維持・補正・削除・従属先の変更を、クレームの番号ごとに英文にする | 扱いが書かれていないクレームは、確かめてほしい点に挙げる |
| 決まった欄 | ひな形の決まった位置にそのまま置く | 欄が空なら、空のまま残して挙げる |
| 用語 | 訳語表の英訳を使う | 訳語表に無い語は、訳の案を付けて挙げる |
| 前回の応答 | 同じチャットにあれば、今回の指示と食い違わないかを見る | 食い違えば、直さずに挙げる |
右端の列は、どれも「人に戻す」の側に倒しています。 指示書は、AIが自然に書いた一文が、そのまま代理人への指示になります。 方針メモに無いことは書かせず、足りないことは挙げさせるだけにします。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 期限を計算する、日付を作る | 期限は台帳から人が写す。計算の誤りは権利の喪失につながる |
| 通貨を換算する、費用を見積もる | 費用の上限は取り決めの通貨のまま写す |
| 方針メモに無い反論の筋を足す | 反論の筋は担当者と発明者が決めたもの |
| 補正の文言を作る | 補正の文言は代理人が案を作り、社内が確かめる |
| 拒絶理由の当否を論じる | 論じるのは方針メモと代理人の仕事 |
| 方針メモの誤りを直す | 気づいたら挙げるだけ。直すのは担当者 |
3行目がいちばん起きやすい失敗です。 進歩性の拒絶への応答で、方針メモに「引用文献1には駆動部の配置の記載がない点で反論」とだけ書いてあっても、AIは英文を整えようとして「また、当業者が組み合わせる動機づけもない」のような一文を足します。 足された主張は、担当者と発明者が検討していない主張です。代理人はそれも指示として受け取り、意見書に書きます。
指示内容を固定する
次の文をプロジェクトの指示に置きます。 案件ごとのチャットでは、方針メモと拒絶理由の要点を貼るだけにします。
あなたは知的財産部の担当として、海外の現地代理人へ送る英文の指示書を
社内の方針メモから下書きする立場です。Sources の「指示書のひな形」
「訳語表」「代理人ごとの取り決めの要点」「末尾の定型」に従ってください。
【やること】
1. 方針メモを、番号付きの指示の項目に分けてください(1項目に1つの指示)。
2. 指示の種類に合ったひな形を使い、英文のレターを作ってください。
用語は訳語表の英訳を使ってください。
3. 決まった欄(案件番号、代理人の整理番号、庁の期限、社内の期限、
費用の上限、補正の案の事前確認)は、書かれた値を一字も変えずに
ひな形の決まった位置に置いてください。
4. レターの後に、次の3つを付けてください。
(1) 対照表(列:項目番号/方針メモの指示/レターの該当する文)
(2) 数字の一覧(列:種類/方針メモにある値/レターにある値)
種類はクレーム番号、日付、金額、段落番号、図番号、引用文献の番号
(3) 確かめてほしい点(列:箇所/理由)。無ければ「なし」
【厳守事項】
- 日付を計算したり、新しく書いたりしないでください。方針メモに無い日付は書かないでください。
- 金額の通貨を換算しないでください。
- 方針メモに無い主張、理由、補足を書き足さないでください。
- 補正後のクレームの文言を作らないでください。何を加えるかと根拠の箇所までにしてください。
- クレームの番号は、方針メモの範囲と列挙をそのまま英文に移し、まとめたり省いたりしないでください。
- 扱いが書かれていないクレームがあれば、推測で扱いを決めず (3) に書いてください。
- 決まった欄が空なら、レターでは [MISSING] と書き、(3) に挙げてください。
- 方針メモの誤りや、前回の応答との食い違いに気づいたら、直さずに (3) に書いてください。
【指示の種類】{中間処理/出願}
【方針メモ】{本文}
【拒絶理由の要点】{本文(中間処理のときだけ)}
「クレームの番号をまとめたり省いたりしない」を明記しないと、AIは英文として読みやすくまとめます。 方針メモの「クレーム5、6、7の従属先を1に変更」を、「claims 5-7」とまとめるのは構いません。問題は、「クレーム5、7(6は維持)」のような方針を「claims 5-7」とまとめてしまうことです。 範囲と列挙をそのまま移させ、数字の一覧で両方を並べます。
「空なら [MISSING] と書く」を入れているのは、空欄を埋めさせないためです。 指示しないと、AIはひな形の期限の欄を空にしておくことを嫌い、拒絶理由通知の日付から「3か月後」を計算して書くことがあります。 書かれた値が正しく見えるほど、人は見落とします。目立つ記号を残させ、送る前に必ず人が埋める形にします。
出力形式を固定する
チャットには、指示の項目、英文のレター、3つの一覧を返させます。
【指示の項目】
1. クレーム1:段落0035の特徴(駆動部の配置)を加えて補正する
2. クレーム2〜4:維持する
3. クレーム5、7:従属先をクレーム1に変更する
4. クレーム6:削除する
5. 引用文献1に駆動部の配置の記載がない点で反論する
6. 補正の案は提出前に社内へ送り、確認を受ける
7. 費用の上限:USD 3,500。超える見込みなら事前に見積を送る
【英文のレター(抜粋)】
Re: Your Ref. 12345 / Our Ref. P-2025-0412-US
Response to Office Action — Instructions
Statutory deadline (without extension): 2026-12-14
Please send us your draft by: 2026-11-02
1. Please amend claim 1 to incorporate the feature described in paragraph [0035] ...
3. Please change the dependency of claims 5 and 7 to claim 1.
4. Please cancel claim 6.
(以下、ひな形の順に続く)
【(1) 対照表】
| 項目 | 方針メモの指示 | レターの該当する文 |
| 4 | クレーム6:削除 | Please cancel claim 6. |
【(2) 数字の一覧】
| 種類 | 方針メモ | レター |
| クレーム番号 | 1, 2-4, 5, 6, 7 | 1, 2-4, 5, 6, 7 |
| 日付 | 2026-12-14, 2026-11-02 | 2026-12-14, 2026-11-02 |
| 金額 | USD 3,500 | USD 3,500 |
| 段落番号 | 0035 | 0035 |
【(3) 確かめてほしい点】
| 箇所 | 理由 |
| クレーム8 | 方針メモに扱いの記載がありません |
3つの一覧に分ける理由の1つ目は、確認の順番が決まることです。 担当者は、まず (2) の数字の一覧を見て、方針メモとレターの値がすべて一致しているかを確かめます。 1つでも違えば、レターを読む前に直させます。次に (3) を見て、方針メモの側に足りないものがないかを確かめます。
2つ目は、対照表で「書かれていない指示」が見えることです。 (1) のレターの欄が空の行は、方針メモにあってレターに入らなかった指示です。 逆に、対照表のどの行にも対応しないレターの文があれば、方針メモに無いことをAIが書き足した疑いがあります。 レターを読み直すときは、その文から見ます。
3つ目は、指示の項目が案件の記録になることです。 番号付きの項目は、代理人からの報告が返ってきたときに「項目3と4は指示どおりに補正されたか」を確かめる手がかりになります。次の応答の方針メモを作るときにも、前回の項目をそのまま見返せます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 期限の管理台帳 | 人が値を写す | 庁の期限、案件番号、代理人の整理番号 |
| 代理人ごとの取り決めの一覧 | 要点を Sources に置く | 事前確認の要否、報告の形式、費用の求め方 |
| ChatGPT のプロジェクト | 画面での操作 | 指示の項目、レター、対照表、数字の一覧 |
| 代理人とのメール | 人が送る | レターの本文と、明細書・図面の添付 |
| 案件のファイルサーバー | 人が保存する | 送ったレターと対照表 |
台帳にもメールにも、AIからは書き込みません。 期限の台帳は知財部の根幹で、AIの出力が台帳の値を変える経路を作らないことが、この構成の前提です。 代理人への送付も、担当者が添付をそろえて自分で送ります。
人が確認する
担当者は、すべてのレターを送る前に確かめます。 確かめる順番を決めておきます。
- 数字の一覧を見る … クレーム番号、日付、金額、段落番号が、方針メモとレターで一致しているか。1つでも違えば、まずそこを直します
- 確かめてほしい点を見る … 扱いの書かれていないクレーム、[MISSING]、前回との食い違い。方針メモの側を直してから、レターを作り直させます
- 対照表を見る … レターの欄が空の行と、どの行にも対応しない文
- レターを頭から読む … 代理人の立場で読み、指示が一通りに読めるかを見ます
- 添付をそろえて送る … 送るのは担当者です
1番目を先にするのは、数字の誤りがいちばん重いからです。 クレーム番号の抜けは権利の範囲に、期限の誤りは権利の喪失に直結します。英文の言い回しは、数字が合っていることを確かめてから見ます。
目標は、1通20分です。 AIが英文にする30分と、見比べの15分の多くが、一覧を確かめる時間に置き換わります。一覧に食い違いが多い案件は、方針メモの書き方に原因があります。 範囲と列挙が混ざっている、扱いの書かれていないクレームがある、のどちらかです。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 決まった欄が空のまま貼られた | レターに [MISSING] が残る。台帳から埋めて作り直す |
| 扱いの書かれていないクレームがある | 確かめてほしい点に挙がる。担当者が方針メモに書き足す |
| 数字の一覧で方針メモとレターが食い違う | レターを使わず、食い違いの箇所を指摘して作り直させる |
| 対照表に対応しないレターの文がある | その文を削らせる。必要な指示なら方針メモに足す |
| 訳語表に無い語が出る | 訳の案を担当者が確かめ、弁理士と決めて訳語表に足す |
| 前回の応答と食い違う指示 | 前回の補正を取り消す意図か、方針メモの誤りかを担当者が確かめる |
| 代理人が英語以外のやり取りを望む | この構成の対象外。英文のレターを作り、代理人側の訳に任せる |
| 期限が迫っていて事前確認の時間が無い | 事前確認を「不要」に変えるかは部長が決め、方針メモに書く |
上から3行目までが大半を占めます。 どれもAIの問題ではなく、方針メモの書き方の問題です。 決まった欄をそろえ、クレームの扱いを全部書くことが、英文の質より効きます。
記録を残す
- 部長の確認を終えた方針メモ(決まった欄を含む)と、確認の日付
- AIが返した指示の項目、レター、対照表、数字の一覧、確かめてほしい点
- 担当者が直した箇所 … どの項目を、なぜ直したか
- 代理人へ送ったレターと添付のファイル名、送った日時
- 代理人から返ってきた補正の案と、指示の項目との照合の結果
- 案件ごとのチャットの名前 … 次の応答で同じチャットを開くため
3つ目の「担当者が直した箇所」は、方針メモのひな形を直す材料になります。 同じ種類の直しが続くなら、ひな形の欄が足りないか、書き方の決まりがあいまいです。直しの記録を月に1回見返し、ひな形と訳語表を直します。
04実装レベルの3段階
最小構成は、確かめるための段階です。 個人の画面では、ひな形と訳語表を毎回貼ることになり、担当者ごとに貼るものが違ってきます。出願前の発明を扱うので、業務用のワークスペースに移るまでは過去の案件だけで試します。 本記事が想定するのは半自動化です。 1通60分が20分になるのは、この段階です。英文に直す時間と見比べの時間が、一覧を確かめる時間に置き換わります。本格構成は、決まった欄を人が写す手間を減らしますが、1通あたりの差は小さく、台帳とつなぐ開発が要ります。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2〜3か月続けると、確かめてほしい点にどんな指摘が多いかが分かります。方針メモのひな形を直し終えてから台帳とつなぐほうが、差し込む欄を決め直す手戻りがありません。
05工数削減シミュレーション
導入後 30件 × 20分 ÷ 60 = 10 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 外国出願を毎月続けていて、米国・欧州・中国などの現地代理人へ出願と拒絶理由への応答の指示を英文のレターで送っている製造業の知財部や、外国出願を取り次ぐ特許事務所。指示書を担当者が前回のレターを下敷きに書いていて、担当者によって書き方と確かめる項目が違う場合。社内で応答の方針をメモにまとめてから指示を出す手順がすでにある場合。
- 外国出願が年に数件で、指示のたびに弁理士が一から書いても負担にならない場合。現地代理人とのやり取りを事務所の英語の担当にすべて任せていて、社内では和文の方針を渡すだけの場合。業務用の生成AIのワークスペースを契約できず、出願前の発明の内容を個人のアカウントに貼ることになる場合。なお、応答の方針そのもの、補正の内容、期限の計算、費用の上限の決定は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 先月送った指示書から10通を選ぶ(うち数通は、送った後に直しの連絡をしたものを入れる)
- その10通の方針メモに、決まった欄を足して埋める
- ChatGPT の業務用ワークスペースでプロジェクトを1つ作り、指示書のひな形と訳語表を Sources に置く
- 第7章の指示をプロジェクトの指示に置き、10通分の方針メモを1つずつ別のチャットに貼る
- 返ってきたレターと数字の一覧を、実際に送った指示書と見比べる
10通は必ずやってください。 方針メモから指示書を作れるかより先に、方針メモが指示書を作れるだけの中身を持っているかが分かります。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 実際に送った指示書と同じ指示がそろった | 3名で使い始める |
| 方針メモに無い主張を書き足した | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 確かめてほしい点に、扱いの書かれていないクレームが多く挙がる | 方針メモのひな形を先に直す |
3行目が出ることは珍しくありません。 これまでは、担当者の頭の中に方針があり、メモに書かれていない部分を英文にするときに補っていました。AIに渡すと、その補っていた部分が「書かれていない」として見えます。 失敗ではなく、方針メモが記録として足りていなかったことが分かったということです。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| AIが期限を計算して書く | 日付を作らないことを指示に書き、空欄は [MISSING] にさせる |
| AIが方針メモに無い主張を足す | 対照表で対応しない文を探し、指示に「書き足さない」を明記する |
| クレームの番号がまとめられて抜ける | 範囲と列挙をそのまま移させ、数字の一覧で比べる |
| AIが補正後のクレームの文言を書く | 何を加えるかと根拠の箇所までにさせる |
| 拒絶理由通知の全文を貼って代理人の意見が混ざる | 人が写した要点だけを貼る |
| 別の案件を同じチャットで扱う | 案件ごとにチャットを分け、名前の付け方を決める |
| 訳語表の訳が代理人によって揺れる | 社内で1つに決め、代理人には訳語表の考え方を一度伝える |
| 方針メモの決まった欄が空のまま | 貼る前に差し戻す。AIに埋めさせない |
| 出願前の製品名がチャットに入る | 方針メモの段階で一般的な呼び方に書き換える |
| 送ったレターがチャットにしか残らない | 案件のファイルサーバーに保存する |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、AIが英文を整えようとして、方針メモに無いものを作る形で起きます。作らせないことを指示に書き、作ったかどうかを一覧で見える形にしておくことで防ぎます。
下の2行は、外へ出したくない情報の扱いです。 発明の内容と製品の名前は、出願されるまで社外秘です。業務用のワークスペースを使っても、チャットに入れる情報は指示書に要る範囲に絞ります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 応答と出願の方針、クレームの扱い、補正の根拠の段落、期限、費用の上限、代理人との取り決めです。出願前の案件では、発明の要点そのものが含まれます。
- 業務用のワークスペースを使う … 公式の案内では、Business・Enterprise・Edu のワークスペースのデータは既定でモデルの学習に使われないとされています。個人のアカウントでは、出願前の案件を扱いません
- 会話の保持と削除を決めておく … 会話の保持はワークスペースの設定に従い、削除したチャットは一般に30日以内に完全な削除の予定に入るとされています。記録の正本はファイルサーバーに置き、チャットは作業の場と割り切ります
- チャットに入れる範囲を絞る … 明細書と図面の本文、発明者の氏名、社外秘の製品名は入れません。指示書に要るのは、クレームの番号、段落の番号、案件番号です
- この構成は方針と期限の判断を代替しません … 応答の方針、補正の内容、期限の管理、費用の上限は、担当者・部長・弁理士が決めることです。 この構成が出すのは、決まった方針の英文の下書きと、書き漏れの一覧だけです
- 送るのは人 … 代理人への送付を自動にしません。指示書は、送った瞬間に代理人の作業の根拠になります
- プロジェクトの利用者を知財部に限る … ひな形と取り決めの要点が置かれるため、ワークスペースの中でも共有の範囲を知財部の担当に絞ります
誤りが起きた場合のリスクは、指示の抜けと、指示の付け足しの2つです。 前者はクレームの番号や期限の抜けで、後者はAIが書き足した主張です。どちらも、数字の一覧と対照表で送る前に見えるようにしてあるかどうかで、防げるかが決まります。
10まず何から始めるか
1週目:方針メモに決まった欄を足す
方針メモのひな形の先頭に、案件番号、代理人の整理番号、指示の種類、庁の期限、社内の期限、費用の上限、補正の案の事前確認の欄を足します。日付は西暦、金額は通貨の記号付き、クレームの番号は範囲か列挙のどちらかで書く決まりも、ここで決めます。
2週目:訳語表とひな形を作る
過去に送った指示書から、出来のよいものを中間処理と出願で1通ずつ選び、ひな形にします。「削除」「補正」「従属」「引用文献」など、指示書に毎回出る語の訳を弁理士と決めて、訳語表にします。
3週目:10通で試す
先月送った指示書10通分の方針メモで、第8章の手順を試します。AIが方針メモに無い主張を足していないか、数字の一覧が実際の指示書と一致するかを最優先で見ます。
4週目:3名で使い始める
業務用のワークスペースにプロジェクトを作り、3名で新しい案件から使います。最初の1か月は、担当者が直した箇所を必ず記録します。
2か月目: 直しの記録を見返し、方針メモのひな形と訳語表を直します。3か月目以降: 1通60分が何分になったかを実測し、代理人からの問い合わせの件数を前と比べます。確かめてほしい点に挙がる指摘がほとんど「なし」になった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 拒絶などの通知への応答の多くが法律上6か月以内に受け付けられる必要があること。通知がほとんどの場合、延長の手数料なしで応答できる期間を2か月か3か月に縮めていること。期限までに応答しなければ出願が放棄されたものとして扱われること。応答は審査官のすべての拒絶と指摘に応える必要があること | USPTO: Responding to Office Actions | 2026-10-12 |
| PCT の国内段階への移行の期限が官庁ごとに違うこと。米国・日本が30か月、欧州特許庁・韓国・インドが31か月、中国が30か月(追加の手数料で32か月)であること | WIPO: Time Limits for Entering National/Regional Phase under PCT Chapters I and II | 2026-10-12 |
| プロジェクトの指示がそのプロジェクトのチャット全体に適用されること。アップロードしたファイルと接続した情報を置く Sources の欄があること。プロジェクトがパソコンのフォルダに直接つながらないこと | ChatGPT ドキュメント: Projects | 2026-10-12 |
| Business・Enterprise・Edu のワークスペースのデータが既定で学習に使われないこと。会話の保持がワークスペースの設定に従い、削除したチャットが一般に30日以内に完全な削除の予定に入ること | ChatGPT ドキュメント: Work cloud security | 2026-10-12 |
応答の方針、補正の内容、期限の管理は、自社の知財部と弁理士・現地代理人が判断してください。 本記事の期限の数字は、米国特許商標庁と WIPO のページで確認できた範囲だけを根拠にしています。国や手続によって期限は違います。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
このユースケース(UC-1279)についてのご相談はこちらから。
