Media > AI活用ユースケース > 情報システム > データセンターの運用担当が、設備の作業手順書と過去の障害報告を Vertex AI Search で検索し、監視の画面に出た設備の警報に合う対処の手順を、設備の番号と冗長の系統で絞った根拠付きで引く

データセンターの運用担当が、設備の作業手順書と過去の障害報告を Vertex AI Search で検索し、監視の画面に出た設備の警報に合う対処の手順を、設備の番号と冗長の系統で絞った根拠付きで引く

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

設備の警報が出たとき、警報の点の名前から設備と冗長の系統を引き、その機種の作業手順書と過去の障害報告を検索します。運用担当が行ってよい初動の手順を、引用付きでそろえます。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
IT・SaaS/その他
対象部門
情報システム
対象業務
情報検索
主な課題
属人化している/引き継ぎができていない/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
対応スピード向上/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
52h/月
想定削減
57%
年間削減
816h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 設備の監視の画面に警報が出る。点の名前と値、発生の時刻を見る
  2. 設備台帳で、点の名前から設備の番号・機種・設置の場所・系統を探す
  3. 共有フォルダから、その機種の作業手順書を開き、警報に当たる箇所を探す
  4. 冗長の相手の系統の状態を、監視の画面で確かめる
  5. 過去に同じ警報が出たかを、障害報告と引継ぎの記録で探す。分からなければ経験のある人に電話する
  6. 手順書が運用担当に許している確認と操作を行い、必要なら電気主任技術者と保守会社を呼ぶ
  7. 対応の経緯を引継ぎの記録に書く。お客様への告知が要るかを責任者に上げる
導入後(After)
  1. 自動設備の監視の画面の警報を、中継プログラムが受け取る
  2. 自動点の名前から設備台帳を引き、設備の番号・機種・設置の場所・系統・相手の系統の設備を特定する
  3. 自動相手の系統の設備に、いま警報が出ていないかを監視の画面から読み、画面のいちばん上に出す
  4. 自動Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドで、その機種の手順書の運用担当向けの節だけから、前提条件・確かめる箇所・行ってよい操作・連絡先を引用付きでまとめさせる
  5. 自動search メソッドで、同じ機種の過去の障害報告と、電気主任技術者・保守会社向けの節を一覧にする
  6. 自動引用の無い文を外す。手順書の改訂より前の障害報告に印を付ける
  7. 人当番が相手の系統の状態を確かめ、引用の原文を見て、運用担当が行ってよい確認と操作を行う
  8. 人手順書が求めるときや、相手の系統にも警報があるときは、電気主任技術者と保守会社を呼び、責任者に上げる
  9. 【自動/人】 経緯を引継ぎの記録に残す。障害報告が書かれたら、対象の設備と機種を付けて取り込む
各工程の詳しい説明を読む
  1. 設備の監視の画面に警報が出る。点の名前と値、発生の時刻を見る
  2. 設備台帳で、点の名前から設備の番号・機種・設置の場所・系統を探す
  3. 共有フォルダから、その機種の作業手順書を開き、警報に当たる箇所を探す
  4. 冗長の相手の系統の状態を、監視の画面で確かめる
  5. 過去に同じ警報が出たかを、障害報告と引継ぎの記録で探す。分からなければ経験のある人に電話する
  6. 手順書が運用担当に許している確認と操作を行い、必要なら電気主任技術者と保守会社を呼ぶ
  7. 対応の経緯を引継ぎの記録に書く。お客様への告知が要るかを責任者に上げる

(a)点の名前から手順書の箇所にたどり着けない。 2番と3番で、「CRAH-3F-07」から空調機の機種を引き、その機種の手順書を開いて、「吸込温度高」がどの章にあるかを探します。 メーカーごとに章の立て方が違います。

(b)冗長の前提を確かめ忘れる。 4番は手順書の冒頭の「前提条件」に書かれていて、警報の箇所から読み始めると目に入りません。

(c)過去の顛末が障害報告に埋もれている。 5番で、同じ空調機で前に同じ警報が出たとき、フィルターの目詰まりだったのか、冷水の弁の故障だったのかは、障害報告の本文を読まないと分かりません。障害報告を受けて手順書が改訂されたかどうかも、報告の末尾にしか書かれていません。

(d)交代の班ごとに初動が違う。 経験のある人がいる班は早く、いない班は電話を待ちます。同じ警報への対処が、その夜の班で変わります。

  1. 【自動】 設備の監視の画面の警報を、中継プログラムが受け取る
  2. 【自動】 点の名前から設備台帳を引き、設備の番号・機種・設置の場所・系統・相手の系統の設備を特定する
  3. 【自動】 相手の系統の設備に、いま警報が出ていないかを監視の画面から読み、画面のいちばん上に出す
  4. 【自動】 Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドで、その機種の手順書の運用担当向けの節だけから、前提条件・確かめる箇所・行ってよい操作・連絡先を引用付きでまとめさせる
  5. 【自動】 search メソッドで、同じ機種の過去の障害報告と、電気主任技術者・保守会社向けの節を一覧にする
  6. 【自動】 引用の無い文を外す。手順書の改訂より前の障害報告に印を付ける
  7. 【人】 当番が相手の系統の状態を確かめ、引用の原文を見て、運用担当が行ってよい確認と操作を行う
  8. 【人】 手順書が求めるときや、相手の系統にも警報があるときは、電気主任技術者と保守会社を呼び、責任者に上げる
  9. 【自動/人】 経緯を引継ぎの記録に残す。障害報告が書かれたら、対象の設備と機種を付けて取り込む

3番目を答えより先に出しているのが、この設計の要です。 手順の答えがどれほど正確でも、相手の系統が止まりかけているときに片方の手順を進めれば、負荷が落ちます。 相手の系統の状態は、検索ではなく監視の画面の値をそのまま出します。

4番目と5番目を分けているのも、意図してのことです。 当番が読む答えは運用担当向けの節だけで作り、電気主任技術者と保守会社の作業は、呼ぶかを決める材料として一覧で見るだけにします。

02今回想定するシステム構成

構成図
設備の監視の画面(警報の点の名前・値・時刻)
   ▼【トリガー】警報の発生(重要度が中以上)
中継プログラム(Python。Cloud Run)
   │   設備台帳で設備の番号・機種・系統・相手の系統を引く
   │   相手の系統の現在の警報を監視の画面から読む(読み取りのみ)
   ▼
Vertex AI Search(Agent Search)
   ├── answer メソッド ── 運用担当向けの節から、前提条件・確認・操作・連絡先(引用つき)
   └── search メソッド ── 同じ機種の障害報告、電気主任技術者・保守会社向けの節の一覧
   │   データストア:作業手順書(節ごと)、障害報告(1件1文書)
   ▼
中継プログラム ── 引用の無い文を外す。改訂前の報告の印
   ▼
当番の画面(相手の系統の状態/初動の答え/引用した原文/呼ぶかの材料)
   ▼
【当番が確かめ、操作し、呼ぶかを決める】
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドと search メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)―
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、監視の画面・設備台帳・検索・当番の画面をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(手順書と障害報告の写し、メタデータ、警報と答えの記録)―

設備の監視の画面と設備には、読みにいくだけで書き込みません。 この構成から設備を操作する経路は作りません。警報の受け取りと相手の系統の状態の読み取りは、監視の仕組みが外へ出せる通知と読み取りの口を使い、どの口が使えるかは監視の仕組みの仕様に合わせて個別に作ります。

土台は、Vertex AI Search の answer メソッドです。 公式ページでは、answer メソッドは検索の結果から回答を作り、回答の文ごとに出典を示す引用を付けられるとされています。結果を答えより先に見せたいときなどは、search メソッドと一緒に使うとされています。公式ページには、Vertex AI Search が Agent Search へ改称中である旨の記載があります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

設備の監視の画面に、重要度が中以上の警報が出たことを起点にします。 監視の仕組みが外へ出す通知(メールや外部への送信の口)を中継プログラムが受け取ります。当番が画面で点の名前を打ち込む形にはしません。 夜間に点の名前を打ち間違えると、別の設備の手順書を読むことになるからです。

同じ設備の警報が続けて出たときは、同じ件として束ねます。 5分以内に同じ設備から出た警報は1件にまとめ、答えを作り直さずに、警報の一覧に足していきます。 当番が操作のあとの状態を書き足して問い直すときは、公式ページにある前の問い合わせのセッションの ID を渡す方法で、同じ会話として続けます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
警報点の名前、値、発生の時刻、重要度設備の監視の画面の通知
設備の情報設備の番号、機種、設置の場所、系統(A・B)、相手の系統の設備、保守会社、手順書の版設備台帳
相手の系統の状態相手の系統の設備の現在の警報と主な値設備の監視の画面(読み取り)
作業手順書機種ごと・節ごとの文。前提条件、確認、操作、連絡先、誰が行うかデータストア
障害報告設備の番号、機種、経緯、原因、対処、再発防止策、改訂した手順書と版データストア

質を決めるのは、手順書の節の「誰が行うか」と、障害報告の「改訂した手順書と版」の2つです。 手順書は、表示の確かめと現地の目視は運用担当、電路の開閉と設備の内部の作業は電気主任技術者と保守会社というように、節ごとに付けます。付けるのは設備の経験のある3名と電気主任技術者です。

障害報告からは、お客様の名前とラックの番号を外して入れます。 検索に要るのは設備と機種と経緯で、どのお客様に影響したかは要りません。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
作業手順書共有フォルダの PDF を、節ごとに分けて Cloud Storage へ写すデータストアの中身
障害報告障害報告のファイルの書き出し。1件を1つの文書にデータストアの中身
設備の情報設備台帳の点の名前での引き当て絞り込みの条件
答えと一覧answer メソッドと search メソッドの応答当番の画面

手順書は、節ごとに1つの文書に分け、メタデータに機種・版・誰が行うか・手順の種類を持たせます。 公式ページでは、非構造のデータのメタデータは JSON Lines(NDJSON)のファイルで、各行に id、structData(または jsonData)、Cloud Storage の文書を指す content の mimeType と uri を持たせるとされています。1つの節は、たとえば次の1行にします。

{"id": "sop-ups-m500-v4-s0302",
 "structData": {"doc_kind": "sop", "equip_type": "ups", "model_code": "M500",
                "sop_ver": "v4", "actor": "operator",
                "proc_kind": "alarm_response", "section": "3.2 バイパス運転の表示"},
 "content": {"mimeType": "application/pdf", "uri": "gs://<bucket>/sop/ups/M500/v4/s0302.pdf"}}

actor は operator(運用担当)、engineer(電気主任技術者)、vendor(保守会社)の3つにします。 障害報告は doc_kind を incident にし、equip_id、model_code、改訂した手順書の revised_sop と revised_ver を持たせます。公式ページでは、取り込めるファイルの上限は200MBで、一度に100,000ファイルまで取り込めるとされています。

手順書の PDF は、データストアを作るときに文書の分割とレイアウトの解析を有効にします。 公式ページでは、レイアウトの解析は PDF の段落・表・画像・見出しを検出し、表や画像に説明を付ける設定もあるとされています。単線結線図や操作の盤面の図は、画像の説明を有効にして、図の中の名前が検索に当たるようにします。 分割はデータストアを作ったあとに切り替えられず、見出しを各チャンクに付ける includeAncestorHeadings は既定で無効です。「前提条件」の節の見出しが本文から離れないよう、作るときに有効にします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 点の名前の引き当て … 点の名前を設備台帳で引き、設備の番号・機種・系統・相手の系統の設備を決めます
  2. 警報の言葉のそろえ … 「吸込温度高」「RETURN AIR HIGH」のような表示を、手順書の言葉の候補に置き換えて問い合わせ文に足します
  3. 相手の系統の読み取り … 相手の系統の設備の現在の警報と主な値を読みます
  4. 絞り込みの条件の組み立て … 答えの側は機種・手順書の版・運用担当、一覧の側は機種と障害報告に分けて組み立てます
  5. 重い警報の見分け … 漏水・煙の検知・消火の設備の作動・受電の喪失なら、検索を待たずに画面に緊急の連絡の手順を出します

5番目は、検索の前に置きます。 消火の設備が作動したときに、手順書を検索している時間はありません。重い警報は、設備台帳に「緊急」の印を付けておき、印があれば社内の緊急時の連絡の手順を先に出します。

絞り込みの条件は、たとえば次のようになります(公式ページの書き方による)。

filter(初動の答え):
  doc_kind: ANY("sop")
  AND model_code: ANY("M500") AND sop_ver: ANY("v4")
  AND actor: ANY("operator")
filter(呼ぶかの材料の一覧):
  (doc_kind: ANY("incident") AND model_code: ANY("M500"))
  OR (doc_kind: ANY("sop") AND model_code: ANY("M500")
      AND actor: ANY("engineer", "vendor"))

公式ページでは、ANY は指定した値のどれかに完全に一致するときに真になり、AND・OR と括弧で組み合わせられるとされています。絞り込みに使う項目は、スキーマの画面でインデックス可能にしておく必要があります。

Step5

AIに処理させる

answer メソッドにさせるのは、その機種の手順書の運用担当向けの節から、警報に当たる前提条件・確かめる箇所・行ってよい操作・連絡先を、手順書の順番と言葉のまま引用付きでまとめることです。 原因の判断はさせません。

返させるもの中身返せないときの扱い
前提条件手順の前に確かめることの記載(相手の系統、負荷の量など)見つからなければ「前提条件の記載なし」
確かめる箇所表示、値、現地で見る場所見つからなければ「運用担当向けの記載なし」
行ってよい操作手順書が運用担当に許している操作と順番見つからなければ「操作の記載なし」
連絡先と連絡の条件電気主任技術者・保守会社を呼ぶ条件原文のまま引用する
させないこと理由
電気主任技術者や保守会社の作業を、当番の手順として書く資格と作業の指揮が要る
原因を断定する原因は保守会社と電気主任技術者が設備を見て決める
前提条件を省いて操作から書く相手の系統が健全でないと手順が成り立たない
別の機種や別の版の記載を、この設備のものとして書く機種と版で操作の順番が違う
過去の障害報告の対処を、手順として書く対処は保守会社が行ったものや、改訂前の手順を含む

3行目がいちばん大事です。 答えを短くまとめさせると、モデルは「前提条件」を前置きとして省き、操作の手順から書き始めがちです。 前提条件を1番目に、見つからなければ「記載なし」と明記させます。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドでは、回答の口調や詳しさをプロンプトの前置き(preamble)で指定できます。前置きを次のようにします。

あなたはデータセンターの運用センターの当番のための、設備の作業手順書の資料係です。
検索で見つかった作業手順書の、運用担当向けの節だけを根拠に、次の順で答えてください。

1. 前提条件(手順の前に確かめること)
2. 確かめる箇所(表示、値、現地で見る場所)
3. 行ってよい操作(手順書の順番のまま)
4. 連絡先と、呼ぶ条件

守ること:
- 1の前提条件を必ず最初に書いてください。見つからなければ「前提条件の記載なし」と書いてください。
- 手順書の言葉と順番のまま書いてください。言い換えないでください。
- 開閉器・遮断器の操作、盤の扉を開ける作業、設備の内部の作業を書かないでください。
- 原因を断定しないでください。
- 機器の名前、番号、値、単位は原文の表記のまま写してください。
- 見つからない項目は「記載なし」と書いてください。
- 検索結果に無いことを書かないでください。

「機器の名前と番号を原文のまま」を入れるのは、空調機や遮断器の番号が1文字違うだけで別の機器になるからです。 「CRAH-3F-07」を「3階の7番の空調機」と言い換えると、当番は盤面の表示と照らせなくなります。

あわせて、answer メソッドの設定を次のようにします。

設定値理由
引用(includeCitations)有効文ごとに出典を示させる。既定は無効
関連性の低い内容の無視(ignoreLowRelevantContent)有効関係の薄い節から無理に答えさせない
根拠の支持による絞り込み(groundingSpec の filteringLevel)FILTERING_LEVEL_HIGH から試す支えの弱い答えを外す。未設定だと絞り込みが掛からない
回答の言語(answerLanguageCode)ja日本語で答えさせる
絞り込み(filter)前処理で組み立てた初動の答えの条件機種・版・運用担当向け

公式ページでは、支持が基準に届かない答えは返されず、理由として LOW_GROUNDED_CONTENT が返るとされています。引用の位置は UTF-8 のバイト単位なので、日本語の答えに印を差し込むときは文字の位置に直します。

Step7

出力形式を固定する

中継プログラムが、応答と設備台帳・監視の画面の値を次の形にそろえて当番の画面に渡します。

{
  "alarm_id": "",
  "point_name": "",
  "equip_id": "",
  "model_code": "",
  "sop_ver": "",
  "system": "A | B",
  "peer_status": { "equip_id": "", "active_alarms": [], "load_pct": null },
  "emergency": false,
  "first_response": "",
  "skipped_reason": "",
  "citations": [
    { "sentence": "", "doc_id": "", "section": "", "quote": "" }
  ],
  "callout_material": {
    "incidents": [ { "incident_id": "", "summary": "", "cause": "",
                     "revised_sop": "", "revised_ver": "", "before_revision": false } ],
    "engineer_sections": [ { "doc_id": "", "section": "", "actor": "engineer | vendor" } ]
  },
  "session_id": ""
}

1つ目の理由は、peer_status を答えと別に、監視の画面の値のまま持てることです。 相手の系統に警報があれば、画面のいちばん上を赤くし、初動の答えより先に「相手の系統にも警報。責任者と電気主任技術者へ」を出します。

2つ目は、first_response と callout_material を分けて持てることです。 当番が行う初動と、呼ぶかを決める材料が、画面の別の枠に出ます。 当番が電気主任技術者向けの節を読んで操作してしまう取り違えを、画面の作りで防ぎます。

3つ目は、before_revision で改訂前の障害報告を見分けられることです。 障害報告を受けて手順書が改訂されていれば、報告の中の「そのときの対処」は、いまの手順と違うことがあります。 真なら一覧で灰色にし、改訂後の版を並べて出します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
設備の監視の画面監視の仕組みの通知と読み取りの口(読み取りのみ)警報の受け取り、相手の系統の状態
設備台帳点の名前での引き当て(読み取りのみ)設備の番号・機種・系統・保守会社
Vertex AI Searchanswer メソッドと search メソッドの API初動の答え、引用、呼ぶかの材料
Cloud Storage手順書と障害報告の写し引用した箇所の原文の表示
引継ぎの記録当番の画面からの書き出し経緯と操作の記録

電気主任技術者と保守会社への連絡は、いまどおり当番が電話で行います。 画面に連絡先と呼ぶ条件を出しますが、呼ぶかどうかは当番と責任者が決めます。 呼ばれた側は、画面の警報の経緯と過去の障害報告の一覧を共有されるので、着く前に見当を付けられます。

Step9

人が確認する

  1. 相手の系統を見る … 画面のいちばん上の相手の系統の状態を、監視の画面でも確かめます
  2. 設備を確かめる … 画面に出た設備の番号と設置の場所が、警報の点と合っているかを見ます
  3. 前提条件を読む … 答えの1番目を、手順書の原文で確かめてから先へ進みます
  4. 行ってよい操作だけを行う … 運用担当向けの節の操作だけを行い、それ以外は呼びます
  5. 経緯を書く … 行った確認と操作、値の変化を引継ぎの記録に書きます

1番目と3番目を省かないでください。 片方の系統の警報に手を付ける前に相手の系統を見ることは、手順書の正しさとは別に、毎回の決まりとして行います。

目標は、240件をならして1件13分です。 相手の系統と設備を確かめ、原文を読み、経緯を書く時間です。設備の経験のある3名は、毎週、答えと実際の対処を見比べます。 運用担当向けの節で対処できなかった警報が同じ機種に偏っていれば、その機種の節の付け方か、警報の言葉の置き換えに抜けがあります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
点の名前が設備台帳に無い検索に回さず、点の名前と値だけを出し、経験者に連絡する
相手の系統にも警報がある答えより先に「責任者と電気主任技術者へ」を出す
漏水・煙・消火の設備の作動・受電の喪失検索を待たず、緊急時の連絡の手順を出す
運用担当向けの記載が無い「記載なし」と出し、保守会社への連絡を促す
答えが作られなかった(支持が低い)答えを出さず、呼ぶかの材料の一覧だけを出す
設備台帳の版と手順書の版が合わない最新の版で答え、版が違うことを画面に出す
法定の点検の作業中の警報作業の予定と照らし、作業に伴う警報なら作業の責任者に確かめる
検索が応答しないいまどおり手順書の PDF を開き、経験者に連絡する

3行目の「検索を待たない」は、常に残しておきます。 この構成は、手順書を探す時間を縮めるためのもので、人と建物の安全に関わる初動には使いません。

Step11

記録を残す

  • 警報(点の名前、値、時刻、重要度)と、束ねた警報の一覧
  • 特定した設備・機種・版・系統と、そのときの相手の系統の状態
  • 絞り込みの条件、answer メソッドと search メソッドの応答の全文
  • 当番が行った確認と操作、呼んだ相手と時刻
  • 障害報告と、それを受けて改訂した手順書の版

2つ目の「そのときの相手の系統の状態」は、後から振り返るときにいちばん要る記録です。 当番がどの状態を見て手順を進めたかが残ります。

04実装レベルの3段階

最小構成:30件に出てくる機種の手順書と障害報告だけのデータストアを作り、短いスクリプトで問い合わせる / 運用担当向けの初動の検索
半自動化:上記+全設備の手順書を取り込み、当番が設備の番号を選んで問い合わせる / 全設備の手順書の検索
本格構成:上記+警報の通知から設備と系統を自動で特定し、相手の系統の状態、緊急の印、改訂前の報告の印までつなぐ / 警報から呼ぶかの材料まで

半自動化で、1件30分が20分ほどになります。 手順書を探す時間は減りますが、点の名前から設備を引くことと、相手の系統を見に行くことが残ります。本格構成で13分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を進める前に、手順書の節の誰が行うかを電気主任技術者と決めてください。 決まっていないと、夜間の当番が触ってよい範囲が、答えによって変わります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
12 名
月間件数
240 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
13 分
現在  240件 × 30分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 240件 × 13分 ÷ 60 = 52 時間/月
月間削減時間
68h
削減率
57%
年間削減時間
816h
年間金額換算(時間単価3,500円)
286万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 受変電・無停電電源装置・非常用発電機・空調機・漏水の検知・消火の設備を持つデータセンターを24時間の交代で監視し、設備の警報に月に数百回対応している事業者。設備ごとの作業手順書と、障害のあとに書いた障害報告が数年分残っている場合。交代の当番に設備の経験の浅い人が増え、警報が出るたびにベテランや保守会社に電話している場合。設備台帳で警報の点の名前と設備の番号・系統が対応づけられる場合。Google Cloud を使っている、または使い始められる場合。
向いていない
  1. サーバー室が1部屋だけで、設備の警報がほとんど出ない場合。作業手順書が保守会社の手元にしか無く、自社で版を管理していない場合。お客様との契約や認証の決まりで、設備の手順書と障害報告を外部のクラウドに置けない場合。なお、電路の開閉の操作、設備を止めるかどうかの判断、お客様への障害の告知の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去1年の障害報告と引継ぎの記録から、30件の設備の警報を選ぶ(運用担当が対処できたものと、保守会社を呼んだものを混ぜる)
  2. その30件に出てくる機種の手順書を節ごとに分け、誰が行うかと版を付けて、Vertex AI Search のデータストアを作る
  3. 同じ機種の障害報告を取り込み、改訂した手順書と版を付ける
  4. 30件の点の名前と値から絞り込みの条件と問い合わせ文を作り、answer メソッドを短いスクリプトで呼んで、答えと引用を見る
  5. 答えの前提条件・確認・操作が、当時運用担当が行ったことと合うかを、設備の経験のある3名が突き合わせる

30件のうち、電気主任技術者や保守会社の作業が答えに出た件数と、前提条件が抜けた件数を最初に数えます。 どちらか1件でもあれば、節の付け方と前置きを直してから先へ進みます。

出てきた内容判断
前提条件から始まり、運用担当の操作だけが出た監視の画面と設備台帳の連携に進む
資格の要る作業が答えに出た節の誰が行うかの付け方を直す
前提条件が抜けた見出しの付け方と前置きを直す

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
資格の要る操作を当番が読んで手を出す節に誰が行うかを付け、答えは運用担当向けだけから作る
相手の系統を見ずに手順を進める相手の系統の状態を答えより先に、監視の画面の値で出す
答えが前提条件を省く前置きで最初に書かせ、見出しを各チャンクに付ける
点の名前から手順書に当たらない設備台帳で引き当て、警報の言葉を手順書の言葉に置き換える
改訂前の障害報告の対処をまねる改訂した手順書と版を報告に付け、灰色で出す
機器の番号が言い換えられる前置きで原文のままを求める
消火や漏水で検索を待つ緊急の印のある警報は検索の前に連絡の手順を出す
同じ警報が何十件も届く同じ設備の5分以内の警報を1件に束ねる
お客様の名前が検索に入る書き出しの段で名前とラックの番号を消す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「手順書に書いてあるから」と、前提と資格を飛ばしてしまう問題です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 設備の構成と系統、手順書、障害報告、警報の記録です。設備の構成と弱点がまとまった情報は、施設の安全に関わる情報になります。

  1. 電路の操作を人と資格に残す … 労働安全衛生規則の第339条は、電路を開路して電気工事の作業を行うときに、開閉器の施錠か通電禁止の表示か監視人の配置、残留電荷の放電、高圧の電路の検電と短絡接地を求めています。第350条は、こうした作業で作業の指揮者を定め、方法と順序を周知し、作業を直接指揮させることを求めています。答えから開閉器の操作を外し、電路の作業は電気主任技術者と保守会社が指揮の下で行います
  2. お客様の名前を入れない … 障害報告の書き出しの段で、お客様の名前とラックの番号を消します
  3. 見る人を絞る … 当番の画面と検索は運用センターの中だけで使い、手順書と障害報告をお客様向けの窓口や外部に出しません
  4. データの置き場所を確かめる … 公式ページでは、データストアの場所は global のほか us、eu のマルチリージョンで、日本のリージョンは載っていません。 お客様との契約と、取得している認証の決まりに照らして決めます
  5. 設備を操作する経路を作らない … 中継プログラムは監視の仕組みから読むだけにし、答えから設備に指令を送る仕組みは作りません
  6. お客様への告知は責任者が決める … 答えにも画面にも、告知の文面は出しません

誤りが起きた場合のリスクは、資格の要る操作に当番が手を出すことと、相手の系統が弱っているときに片方を止めてしまうことの2つです。 前者は節の付け分けと前置きで、後者は相手の系統の状態を答えより先に出すことで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:当番が触ってよい範囲と、緊急の警報を決める

運用センターの責任者と電気主任技術者で、運用担当が行ってよい確認と操作の範囲、検索を待たない緊急の警報を決め、文書にします。

2週目:30件に出てくる機種の手順書の節を付け分ける

節ごとに運用担当・電気主任技術者・保守会社のどれが行うかを付け、版を付けます。「前提条件」の節は、必ず独立させます。

3週目:30件で試す

第8章の手順でデータストアを作り、30件の警報で答えと引用を確かめます。資格の要る操作が答えに出ていないかと、前提条件が最初に出るかを最優先で見ます。

4週目:点の名前と設備台帳をつなぐ

監視の画面の点の名前と、設備台帳の設備の番号・系統・相手の系統の設備の対応表を作ります。

2か月目: 全設備の手順書を取り込み、当番が設備の番号を選んで使い始めます。3か月目以降: 警報の通知からの自動の特定、相手の系統の状態、緊急の印、改訂前の報告の印を足し、1件30分が何分になったかを実測します。設備の経験の浅い当番が、相手の系統を確かめてから運用担当の範囲の初動を行い、呼ぶかを過去の障害報告を見て決められるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-28/最終更新:2026-10-29
確認した内容情報源確認日
answer メソッドが検索結果から回答を作り、文ごとの引用を付けられること(includeCitations の既定は無効)。セッションの ID を渡して続けて問えること。結果を先に見せたいときなどは search メソッドと一緒に使うこと。filteringLevel の値と、届かない答えが LOW_GROUNDED_CONTENT で返されないこと。引用の位置が UTF-8 のバイト単位であること。前置き(preamble)で回答を指定できること。Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-28
絞り込みに使う項目をインデックス可能にすること。ANY が完全一致であること。AND・OR と括弧で組み合わせられることGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-28
非構造のデータのメタデータが JSON Lines(NDJSON)で、各行に id・structData または jsonData・content の mimeType と uri を持つこと。ファイルの上限が200MB、一度に100,000ファイルまで取り込めることGoogle Cloud: Prepare data for ingesting2026-10-28
レイアウトの解析が PDF の段落・表・画像・見出しを検出し、表や画像に説明を付ける設定があること。文書の分割をデータストアの作成後に切り替えられないこと。includeAncestorHeadings の既定が無効であることGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-28
データストアの場所が global と、us・eu のマルチリージョンで、日本のリージョンの記載が無いことGoogle Cloud: Agent Search locations2026-10-28
電路を開路して作業を行うときの開閉器の施錠・通電禁止の表示・監視人、残留電荷の放電、検電と短絡接地(第339条)。作業の指揮者を定め、方法と順序を周知し、直接指揮させること(第350条)e-Gov 法令API: 労働安全衛生規則2026-10-28

電路の操作、設備を止めるかどうか、お客様への告知は、自社の決まりと電気主任技術者・保守会社の判断で行ってください。 本記事は、上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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