Media > AI活用ユースケース > 品質管理 > 顧客との品質の打合せの文字起こしから合意事項と宿題を議事録にし、是正措置の管理表の状態と期限の更新案を作る

顧客との品質の打合せの文字起こしから合意事項と宿題を議事録にし、是正措置の管理表の状態と期限の更新案を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

顧客との品質の打合せの文字起こしから、合意事項・宿題・顧客の要求を拾い出して議事録の下書きにします。あわせて、是正措置の管理表の状態と期限をどう直すかの更新案を作ります。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
商社/製造
対象部門
品質管理/営業
対象業務
台帳・マスタ管理/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
要約
主な効果
品質標準化/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
60h/月
AI導入後
16h/月
想定削減
73%
年間削減
528h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 打合せの最中に、品質担当がメモを取る(同席の営業も別にメモを取る)
  2. 打合せの後、メモと記憶から議事録を書く。聞き漏らした箇所は録画を見返す
  3. 議事録を課長に見せ、顧客へ送ってよいかを確かめる
  4. 顧客へ議事録を送る
  5. 是正措置の管理表を開き、状態・期限・次回の打合せの日を直す
  6. 自社の宿題を、関係する製造・技術の部署へメールで伝える
導入後(After)
  1. 人打合せの主催者が、文字起こしを有効にして打合せを行う
  2. 【人/自動】 打合せの後、文字起こしのファイルを所定の SharePoint のライブラリへ保存する(本格構成では自動で取得する)
  3. 自動ファイルの保存をきっかけにフローが動き、文字起こしと、打合せの対象の管理表の行を取り出す
  4. 自動文字起こしの時刻と話者を整え、AIに渡す
  5. 自動AIが合意事項・宿題・顧客の要求・数値の発言を拾い、根拠の発言と時刻を付けて返す
  6. 自動議事録の下書きと、管理表の更新案(どの欄を、何から何へ)を作る
  7. 人品質担当が根拠の発言を見ながら下書きと更新案を直し、承認する
  8. 自動承認された更新案だけを管理表に書き込み、自社の宿題を関係部署へ知らせる
  9. 人品質担当が議事録を顧客へ送る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 打合せの最中に、品質担当がメモを取る(同席の営業も別にメモを取る)
  2. 打合せの後、メモと記憶から議事録を書く。聞き漏らした箇所は録画を見返す
  3. 議事録を課長に見せ、顧客へ送ってよいかを確かめる
  4. 顧客へ議事録を送る
  5. 是正措置の管理表を開き、状態・期限・次回の打合せの日を直す
  6. 自社の宿題を、関係する製造・技術の部署へメールで伝える

(a)議事録が遅れる。 1時間の打合せの議事録を書くのに、録画の見返しを含めて1時間近くかかります。打合せが続く週は、議事録を送るのが数日後になります。 顧客からは「先日の議事録はまだですか」と先に聞かれます。

(b)合意したのか、持ち帰ったのかが曖昧になる。 メモには「流出防止策 来週」としか書いていないことがあります。それが約束だったのか、検討するという話だったのかは、書いた本人にしか分からず、本人も迷います。 議事録で約束にしてしまい、顧客の期待と社内の段取りがずれます。

(c)管理表が後回しになる。 議事録を送ったところで一区切りついた気になり、5番目が翌週に回ります。その間に別の担当者が管理表を見て、古い期限のまま顧客に答えてしまうことがあります。

(d)宿題が担当者の頭の中にある。 顧客から追加で求められた分析や資料が、議事録には書かれていても、6番目で社内の誰に伝えたかが残っていません。 期限の前日に気づいて慌てるのは、たいていこの宿題です。

  1. 【人】 打合せの主催者が、文字起こしを有効にして打合せを行う
  2. 【人/自動】 打合せの後、文字起こしのファイルを所定の SharePoint のライブラリへ保存する(本格構成では自動で取得する)
  3. 【自動】 ファイルの保存をきっかけにフローが動き、文字起こしと、打合せの対象の管理表の行を取り出す
  4. 【自動】 文字起こしの時刻と話者を整え、AIに渡す
  5. 【自動】 AIが合意事項・宿題・顧客の要求・数値の発言を拾い、根拠の発言と時刻を付けて返す
  6. 【自動】 議事録の下書きと、管理表の更新案(どの欄を、何から何へ)を作る
  7. 【人】 品質担当が根拠の発言を見ながら下書きと更新案を直し、承認する
  8. 【自動】 承認された更新案だけを管理表に書き込み、自社の宿題を関係部署へ知らせる
  9. 【人】 品質担当が議事録を顧客へ送る

7番目が分かれ目です。 議事録は全件、品質担当が読みます。顧客に出す文書で、内容を確かめずに送ってよいものは1件もありません。 変わるのは、ゼロから書く時間が、根拠を確かめながら直す時間に置き換わることです。

9番目の送信も人が行います。 フローから顧客へ自動で送る経路は作りません。

02今回想定するシステム構成

構成図
Teams の会議(自社主催・文字起こしを有効)
   ▼ 打合せの後、文字起こし(.vtt)を所定のライブラリへ保存
   ▼【トリガー】SharePoint のライブラリへのファイルの作成
Power Automate(クラウド フロー)
   ├──▶ 是正措置の管理表(SharePoint リスト)から対象の行を取得
   ├──▶ 文字起こしの時刻と話者を整える
   ├──▶ AI Builder のプロンプト ── 合意事項・宿題・顧客の要求・数値を、根拠つきで返す
   ├──▶ 議事録の下書きと、管理表の更新案を作る
   ▼
【品質担当が確認・修正して承認】(承認アクション)
   ▼
Power Automate ── 承認された更新案を管理表へ/自社の宿題を関係部署へ通知
   ▼
品質担当が議事録を顧客へ送る

(本格構成)Microsoft Graph の callTranscript で、文字起こしを会議の後に自動取得
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウド フロー)Make、n8n
生成AIAI Builder のプロンプト(「プロンプトを実行する」アクション、JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude API
連携Microsoft Graph(callTranscript。本格構成で追加)―
保管SharePoint のリスト(是正措置の管理表)とライブラリ(文字起こし・議事録)Dataverse
会議と文字起こしMicrosoft Teams の会議の文字起こし―

新しく足すのは、フローと、文字起こしを置くライブラリだけです。 管理表はいまの SharePoint のリストを使い、「最終更新の打合せ日」と「最終更新の議事録」の2列を足します。 管理表のどの行が、どの打合せで変わったかを後から追えるようにするためです。

文字起こしは Teams の会議の機能を使います。 Microsoft のサポート ページでは、会議の開催者・共同開催者・発表者が文字起こしを開始・停止でき、既定では開催者と共同開催者が .docx または .vtt のファイルとしてダウンロードでき、文字起こしは会議開催者の OneDrive for Business に保存されるとされています。外部のテナントのユーザーと匿名の参加者は文字起こしにアクセスできないともされているので、顧客には文字起こしではなく議事録を送ります。

生成AIは、Power Automate の中から AI Builder のプロンプトを呼びます。 フローに「プロンプトを実行する」アクションを足し、作っておいたプロンプトを選びます。プロンプトは Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があるとされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

半自動化では、文字起こしのファイルが所定のライブラリに保存されたことを起点にします。 SharePoint コネクタの「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」をトリガーにし、ライブラリには管理番号の列を必須にして、どの不具合の打合せかを保存のときに選んでもらいます。

ファイルは .vtt で保存してもらいます。 プロンプトに渡せるドキュメントの形式は PNG、JPG、JPEG、PDF が基本で、Word のファイルはコード インタープリターを有効にしたときに限られるとされています。.vtt はテキストなので、フローで中身を読んでテキストの入力として渡します。 .docx を選ぶと、この経路に乗りません。

本格構成では、会議の後に文字起こしを自動で取りに行きます。 Microsoft Graph の callTranscript の取得で、/content に text/vtt を指定すると、タイムスタンプ付きの発話と話者のタグが返ります。毎日の夕方に、その日に終わった品質の打合せを予定表から拾い、文字起こしを取得してライブラリへ保存するフローを足します。保存されたあとは、半自動化と同じトリガーから先に流れます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
文字起こし発話の時刻、話者、発話の文Teams の会議(.vtt)
是正措置の管理表の行管理番号、顧客、品番、不具合の内容、原因、暫定対策と状態、恒久対策と状態、期限、担当者SharePoint のリスト
前回の議事録前回の合意事項と宿題SharePoint のライブラリ
参加者の一覧氏名、会社、役割(顧客の品質部門/自社の品質担当/営業)会議の招待と、自社で用意する一覧
用語の一覧品番、工程名、設備名、顧客ごとの呼び方自社で用意するリスト

質を決めるのは、前回の議事録と参加者の一覧です。 前回の宿題が無ければ、「前回の件は完了しました」が何の完了なのかを決められません。参加者の一覧が無ければ、発言が顧客のものか自社のものかが分からず、「顧客が認めた」かどうかを判定できません。

用語の一覧は、文字起こしの誤りを読み解くために渡します。 品番や設備名は、文字起こしで別の言葉に化けやすい語です。AIに一覧と照らして読ませ、議事録では一覧の表記に直させます。 直したときは、元の文字起こしの語を残させます。

Step3

データの取得方法を決める

文字起こしは、SharePoint コネクタの「ファイル コンテンツの取得」でテキストとして読みます。管理表の行は「アイテムを取得」で、保存のときに選んだ管理番号をフィルター クエリにして引きます。前回の議事録は、同じ管理番号でライブラリを引き、日付の新しいものを1つ取ります。

本格構成の Graph の取得には、条件が多くあります。 公式ドキュメントでは、アクセス許可は OnlineMeetingTranscript.Read.All などで、アプリケーションのアクセス許可を使う場合はテナント管理者がアプリケーション アクセス ポリシーを作成してユーザーに付与する必要があるとされています。さらに、トランスクリプトへの Graph API のアクセスと話者の帰属という2つの独立したテナント管理者の設定があり、前者が無効なら要求は403になり、後者が無効なら text/vtt の要求は403になって話者の無い形式で取り直すことになります。話者の無い文字起こしでは、顧客の発言かどうかを判定できません。 情報システム部門と、この2つの設定を先に確かめます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 時刻と話者の整形 … .vtt の時刻と話者のタグを「[00:12:34] 話者名:発話」の1行に直します
  2. 話者を会社と役割に置き換える … 参加者の一覧と照らし、話者名の後ろに「(顧客・品質)」「(自社・品質)」を付けます
  3. 短い相づちの除去 … 「はい」「ええ」だけの発話を落とします。否定の「いえ」は落としません
  4. 用語の一覧を絞る … 対象の品番と工程に関係する語だけを渡します
  5. 長さの確認 … 1時間を大きく超える打合せは、議題の切れ目で前後に分けて渡し、結果を後で合わせます
  6. 前回の宿題の抜き出し … 前回の議事録から、宿題と期限の表だけを取り出して渡します

2番目が、この構成の要です。 AIに「顧客が合意したか」を判定させるには、発言ごとに顧客側か自社側かが分かっている必要があります。 話者のタグが無い文字起こしでは、この前処理ができません。

5番目の分け方は、時刻で機械的に切らないでください。 合意の発言と、それに対する「それで結構です」が切れ目の両側に分かれると、合意が拾えなくなります。 議題の切れ目は、管理表の項目(原因、暫定対策、恒久対策)の言葉が出てくる位置で見ます。プロンプトで選ぶモデルによって、入力と出力のトークン数の上限が異なるとされているので、分ける長さはモデルに合わせて決めます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、文字起こしから次の5つを拾い、それぞれに根拠の発言と時刻を付けることです。

拾うもの中身判断できないときの扱い
合意事項顧客と自社の双方が了承したこと顧客側の了承の発言が無ければ合意にしない
自社の宿題自社が、何を、いつまでにすると言ったか期限の発言が無ければ期限は空欄
顧客の宿題・要求顧客が自社に求めたこと、顧客側が持ち帰ったこと―
持ち帰り「検討します」「確認します」で、約束になっていないもの迷えば持ち帰りにする
数値の発言不良の数、ロット、対象期間、選別の数量聞き取れない数は空欄

合意事項の条件を、顧客側の了承の発言に置きます。 自社が「暫定対策は完了しました」と言っただけでは、合意ではありません。顧客の品質担当が「完了で結構です」と言った発言があって初めて合意です。 前処理で付けた会社と役割が、ここで効きます。

期限は、言われたとおりに残します。 「来週中に」は、打合せの日から日付に直した値と、元の言葉の両方を返させます。日付に直したものだけを議事録に書くと、「来週中」が金曜なのか翌週月曜の朝なのかで顧客と食い違います。

管理表の更新案は、AIの出力からフローが作ります。 合意事項のうち管理表の欄に当たるもの(暫定対策の状態、恒久対策の期限など)だけを取り出し、「管理番号Q-2481:恒久対策の期限 10月31日→11月15日」の形の差分にします。

させないこと理由
顧客の了承の発言が無いものを合意にすること約束していない内容が議事録で約束になる
不具合の原因を判断すること原因の判定は品質担当と技術部門の仕事
期限を補うこと発言の無い期限は、社内の段取りを無視した約束になる
聞き取れない数値を推測すること不良の数やロットの誤りは、顧客への報告の誤りになる
管理表を直接書き換えること承認された差分だけをフローが書く
Step6

指示内容を固定する

あなたは部品メーカーの品質保証部で、顧客との品質の打合せの議事録を作る立場です。
文字起こしと、与えられた管理表の行・前回の宿題だけを見て拾い出してください。
推測で埋めないでください。

【拾うもの】
1. agreements:顧客と自社の双方が了承したこと
2. our_actions:自社が、何を、いつまでにすると言ったこと
3. customer_requests:顧客が自社に求めたこと、顧客側が持ち帰ったこと
4. pending:「検討します」「確認します」「社内で相談します」など、約束になっていないこと
5. figures:不良の数、ロット、対象期間、選別の数量など、発言された数値
それぞれに、根拠の発言をそのまま写した quote と、その時刻 time を付けてください。

【厳守事項】
- agreements にするのは、顧客側(話者に「顧客」と付いた人)が了承を示した発言があるものだけです。
  自社側が「完了しました」と言っただけのものは agreements にしないでください。
- 約束か持ち帰りか迷ったら、pending にしてください。
- 期限は、発言された言葉を due_said にそのまま入れ、打合せの日 {meeting_date} から
  日付に直せる場合だけ due_date に入れてください。直せなければ due_date は空欄です。
- 期限の発言が無い宿題に、期限を補わないでください。
- 聞き取れない数値、文字起こしで崩れている数値は空欄にし、questions に書いてください。
- 品番・工程名・設備名は【用語の一覧】の表記に直し、元の文字起こしの語を original に残してください。
- 不具合の原因が何かを、自分で判断して書かないでください。発言された内容だけを写してください。
- 前回の宿題のうち、この打合せで完了・延期・取り下げが話されたものは、
  previous_actions に結果と根拠を書いてください。話されなかったものは「言及なし」にしてください。
- 回答に JSON マークダウンを含めないでください。

【文字起こし】{transcript}
【管理表の行】{capa_record}
【前回の宿題】{previous_actions}
【参加者】{participants}
【用語の一覧】{glossary}

「自社側が完了しましたと言っただけのものは合意にしない」を書かないと、自社の報告がすべて合意になります。 打合せの大半は自社の報告で、顧客は黙って聞いていることが多いからです。黙っていたことは了承ではありません。

前回の宿題の「言及なし」を入れるのは、宿題の消え方を止めるためです。 前回の宿題が今回話されなかったとき、何も指示しないとAIはそれを議事録から落とします。落ちた宿題は、次の打合せで顧客から聞かれるまで誰も思い出しません。

Step7

出力形式を固定する

プロンプトの出力は、次の形の JSON で固定します。

{
  "capa_no": "",
  "meeting_date": "",
  "agreements": [
    { "item": "", "quote": "", "time": "", "speaker": "" }
  ],
  "our_actions": [
    { "task": "", "owner_said": "", "due_said": "", "due_date": "", "quote": "", "time": "" }
  ],
  "customer_requests": [ { "request": "", "quote": "", "time": "" } ],
  "pending": [ { "item": "", "quote": "", "time": "" } ],
  "figures": [ { "label": "", "value": "", "quote": "", "time": "" } ],
  "previous_actions": [ { "task": "", "result": "done | postponed | dropped | 言及なし", "quote": "" } ],
  "questions": []
}

1つ目の理由は、議事録の形をそろえられることです。 フローはこの JSON から、合意事項・自社の宿題・顧客の要求・持ち帰り・前回の宿題の結果の順に、毎回同じ並びの議事録を作ります。 担当者ごとに議事録の書き方が違う状態が、ここで止まります。

2つ目は、管理表の更新案を規則で作れることです。 フローは agreements のうち、管理表の欄の言葉(暫定対策、恒久対策、効果の確認、期限)を含むものだけを取り出し、差分の行にします。

差分の判定条件扱い
update合意事項に欄の言葉があり、新しい値が読み取れる更新案として承認へ
pending_only持ち帰りだけで、合意が無い管理表は変えず、議事録にだけ載せる
conflict合意の内容が管理表の現在値と矛盾する(完了済みの項目の再開など)品質担当に確かめる

3つ目は、quote と time で確認が速くなることです。 品質担当は録画を最初から見返す必要がなく、時刻のところだけを聞き直せば済みます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
文字起こしのライブラリ「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」「ファイル コンテンツの取得」保存を検知し、中身を読む
是正措置の管理表「アイテムを取得」「項目を更新する」対象の行を引き、承認された差分を書く
AI Builder のプロンプト「プロンプトを実行する」合意事項・宿題・要求・数値を拾う
議事録のライブラリファイルの作成議事録の下書きを保存する
承認「開始して承認を待つ」品質担当に議事録と更新案を承認してもらう
関係部署Teams のチャネルへの投稿自社の宿題と期限を知らせる
Microsoft GraphcallTranscript の取得(本格構成)文字起こしを自動で取る

顧客への送信は、この連携に入れていません。 議事録の送付は品質担当が自分のメールで行います。顧客に出す文書を、フローの送信元から出すことはしません。

承認には期限を決めておきます。 Power Automate のフロー1回の実行は30日が上限で、承認のような保留中のステップも含まれ、30日を過ぎるとタイムアウトします。品質の打合せは毎週から隔週で続くので、承認が次の打合せまで残っていたら、その時点で品質担当に知らせます。

Step9

人が確認する

品質担当が、議事録の下書きと管理表の更新案を、根拠の発言を見ながら確かめます。

  1. 合意事項を先に見る … quote を読み、顧客側の了承の発言が本当にあるかを確かめます。疑わしければ time の箇所を録画で聞き直します
  2. 自社の宿題の期限を見る … due_said と due_date が食い違っていないか。「来週中」を何日とするかは、ここで人が決めます
  3. 持ち帰りを見る … 約束に上げるべきものが混ざっていないか。ここは上げる方向にだけ直します
  4. 数値を見る … 不良の数とロットを、手元の調査記録と照らします
  5. 管理表の更新案を承認する … conflict のものは課長に相談してから決めます

1番目を省かないでください。 合意事項を誤って載せた議事録は、顧客の手元では「自社が認めた記録」として残ります。 削減した時間より、取り消しのやり取りのほうがはるかに重くなります。

課長の確認は、conflict があるときと、新しい期限を約束したときに絞ります。 全件を課長に回すと、第3章の(a)の遅れが課長のところで再び起きます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
文字起こしに話者のタグが無い合意事項を判定できない。議事録の下書きだけ作り、合意事項は空欄にして品質担当へ
.docx で保存されたテキストとして読めない。.vtt で保存し直してもらう
話す言語の設定が違い、文字起こしが崩れている下書きを作らずに品質担当へ。次回から会議の話す言語を確かめる
管理番号が選ばれていないライブラリの必須列で止まる。保存の時点で選んでもらう
1回の打合せで複数の不具合を扱った管理番号を複数選べる列にし、管理番号ごとに分けて渡す
Graph の取得が403で返るトランスクリプトへの Graph のアクセスか話者の帰属の設定を確かめる。話者の無い形式では取り直さない
打合せが長く、出力が途中で切れる議題の切れ目で分けて渡し直す
プロンプトが JSON を返さない1回だけ再実行し、だめなら品質担当へ
承認が次の打合せまで残る品質担当と課長に知らせる。30日でタイムアウトする

Graph の取得が403のとき、話者の無い形式で取り直さない、を明記しておきます。 公式ドキュメントは、話者の帰属が無効なときは話者の無い形式で再試行するよう案内しています。汎用の議事録ならそれで足りますが、この構成では顧客の発言かどうかが要なので、話者の無い文字起こしは使いません。

文字起こしの言語については、サポート ページで、話す言語の設定が必要で、Teams が不一致を検出すると開催者に設定の更新を促すとされています。 海外の顧客と英語で打ち合わせる回は、会議ごとに確かめます。

Step11

記録を残す

  • 文字起こしの元のファイル(.vtt)と、整形後のテキスト
  • プロンプトが返した JSON の全文
  • 議事録の下書きと、品質担当が直して送った版
  • 管理表の更新案と、承認・修正・却下の結果
  • 管理表の行の「最終更新の打合せ日」「最終更新の議事録」
  • 関係部署へ知らせた宿題と期限、知らせた日時

下書きと送った版の両方を残すのは、AIの拾い方の癖を見つけるためです。 品質担当が毎回同じ種類の合意事項を消しているなら、プロンプトの合意の条件がまだ緩いということです。

ログは Power Automate の実行履歴に頼りません。 実行の保持期間は実行の開始時刻から30日です。品質の記録は不具合の解決後も何年も参照されるので、SharePoint のライブラリとリストに残します。

04実装レベルの3段階

最小構成:文字起こしを手で生成AIに貼り、合意事項と宿題を根拠つきで拾わせる / 議事録の下書き
半自動化:上記+文字起こしをライブラリに保存するとフローが動き、管理表の行を引いて議事録の下書きと更新案を作る / 下書き・更新案の作成と、承認された差分の書き込み
本格構成:上記+Graph で文字起こしを自動で取得し、自社の宿題を関係部署へ知らせ、宿題の期限を見回る / 文字起こしの取得から、宿題の通知と期限の見回りまで

半自動化で、第4章の①の大半と②が消えます。 残るのは、文字起こしをダウンロードして保存する手間と、宿題を関係部署へ伝える手間です。本格構成でこの2つも消え、本記事の想定の1件24分になります。 本格構成に進む前に、Graph のテナント設定を確かめてください。 第7章のとおり、トランスクリプトへの Graph のアクセスと話者の帰属は、それぞれテナント管理者の設定です。この2つが会社の方針で無効になっているなら、半自動化のまま運用を続けるのが正解です。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
90 分
1件あたり導入後時間
24 分
現在  40件 × 90分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 40件 × 24分 ÷ 60 = 16 時間/月
月間削減時間
44h
削減率
73%
年間削減時間
528h
年間金額換算(時間単価4,000円)
211万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 自動車・電機・産業機械などの顧客へ部品や材料を納めている製造業や商社の品質保証部門で、顧客から不具合の報告を受け、是正の進め方を Teams の会議で定期的に打ち合わせている場合。打合せのたびに品質担当が議事録を書いて顧客へ送り、是正措置の管理表の状態と期限を手で直している場合。顧客ごとに打合せが月に何度もあり、宿題と期限の漏れが顧客からの指摘で見つかることがある場合。
向いていない
  1. 顧客との打合せを録画・文字起こしすることについて、顧客の了承が得られない場合。打合せが対面だけで、文字起こしを残す手段がない場合。是正措置の管理を顧客のポータルだけで行っており、自社の管理表を持たない場合。なお、不具合の原因の判定や、是正措置の有効性の評価は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の顧客との品質の打合せから5回を選ぶ(合意が曖昧だった回、期限が延びた回を必ず入れる)
  2. その5回の文字起こしを .vtt でダウンロードし、時刻と話者だけの形に整える
  3. 手元の Microsoft 365 Copilot のチャットか、AI Builder のプロンプトの画面に、文字起こしと管理表の行を貼る
  4. 「合意事項・自社の宿題・顧客の要求・持ち帰り・数値を拾い、それぞれに根拠の発言と時刻を付けてください。顧客側の了承の発言が無いものは合意にしないでください」と指示する
  5. 出てきた結果を、当時送った議事録と突き合わせる

5回の突き合わせで、この構成が使えるかが分かります。

出てきた内容判断
当時の議事録と同じ合意事項と宿題が出たフローに進む
自社の報告まで合意事項になった指示の書き方で直る。構成は有効
当時の議事録に無い宿題が出てきた当時の議事録の漏れの可能性が高い。 録画で確かめる
話者が分からず、顧客の発言かを判定できない文字起こしの取り方が先。 話者の付く形で保存する

3行目が出たら、まず喜んでください。 書いた本人も気づいていなかった宿題が、文字起こしには残っていたということです。この構成が拾おうとしているのは、まさにその宿題です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
自社の報告がすべて合意事項になる顧客側の了承の発言があるものだけを合意にすると指示する
話者が分からず、顧客の発言かを判定できない話者のタグが付く .vtt で取る。Graph では話者の帰属の設定を確かめる
「来週中」が勝手に日付になるdue_said と due_date を分け、日付は人が決める
前回の宿題が議事録から消える「言及なし」を必ず返させる
品番や設備名が文字起こしで化ける用語の一覧で直させ、元の語を残させる
相づちを落としたら否定の発言まで消えた「いえ」「いや」は落とさない
長い打合せを時刻で切って合意が拾えない議題の切れ目で分ける
.docx で保存されて読めないライブラリの説明に「.vtt で保存」と書き、.vtt 以外はトリガーの後で止める
管理表を誰かが直接直して、更新案と食い違うconflict として品質担当に回す
課長の確認待ちで議事録が遅れる課長に回すのは conflict と新しい期限の約束だけにする

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「誰が言ったか」という同じところから出ていて、話者を会社と役割に置き換える前処理ができているかで、運用に乗るかが決まります。

3行目と4行目は、顧客との信頼に直接ひびきます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧客の不具合の内容と件数、ロット、顧客の工場や工程の情報、顧客の担当者の氏名と発言、自社の原因の調査の途中経過です。顧客との秘密保持の取り決めの対象になる情報がほとんどです。

  1. 顧客の了承を得てから文字起こしを使う … 文字起こしを議事録の作成に使うこと、AIのサービスで処理すること、保存する場所と期間を、顧客の品質部門に説明して了承を得ます。 秘密保持の取り決めで外部のサービスの利用に条件がある顧客は、条件に合うかを法務と確かめます
  2. 文字起こしの保存場所を限る … 文字起こしは会議開催者の OneDrive for Business に保存されます。所定のライブラリへ移したら、閲覧できる人を顧客品質課と関係者に限ります
  3. 議事録を自動で送らない … 顧客に出す文書は、品質担当が内容を確かめてから自分で送ります
  4. 原因の判断をAIに書かせない … 議事録に載せるのは発言された内容だけです。AIが原因を推定して書いた一文が、顧客の手元で自社の見解として残るのが、いちばん重い失敗です
  5. 入力の中の指示に従わせない … 公式ドキュメントでは、プロンプトの入力に指示を含めることはセキュリティ上の理由で禁止されているとされています。文字起こしの中の発言を、指示として扱わない作りにします
  6. Graph のアクセス許可を絞る … アプリケーションのアクセス許可を使うなら、アプリケーション アクセス ポリシーで品質の打合せを主催する人だけに付与します

誤りが起きた場合のリスクは、約束していないことを約束した記録が顧客に残ることと、約束したことが社内で漏れることの2つです。 前者は合意の条件と人の確認で、後者は宿題の通知と管理表の更新で止めます。

10まず何から始めるか

1週目:顧客に文字起こしの了承をもらう

打合せの多い上位5社の品質部門に、文字起こしを議事録の作成に使うこと、保存の場所と期間を説明します。了承が得られた顧客から始めます。あわせて、参加者の一覧と用語の一覧を作ります。

2週目:5回で試す

了承を得た顧客との打合せから5回を選び、文字起こしを手元の生成AIに貼って拾わせます。当時の議事録と突き合わせ、自社の報告が合意事項になっていないかを最優先で見ます。

3週目:ライブラリと管理表を整える

文字起こしを置くライブラリに管理番号の必須列を足し、管理表に「最終更新の打合せ日」「最終更新の議事録」の列を足します。

4週目:保存から下書きまでをつなぐ

Power Automate でライブラリへの保存を受け、管理表の行を引き、プロンプトを呼び、議事録の下書きを保存するところまで作ります。この時点では管理表の更新案を出さず、議事録の下書きだけを見ます。

2か月目: 管理表の更新案と承認を足し、品質担当が直した箇所を毎週数えます。3か月目以降: 宿題の通知と、Graph での文字起こしの自動取得を足し、1件90分が何分になったかを実測します。顧客から「議事録はまだですか」と聞かれなくなり、管理表と議事録の食い違いが出なくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
会議の開催者・共同開催者・発表者が文字起こしを開始・停止できること。既定では開催者と共同開催者が .docx または .vtt でダウンロードできること。文字起こしが会議開催者の OneDrive for Business に保存されること。話す言語の設定が必要で、不一致を検出すると更新を促すこと。外部のテナントのユーザーと匿名の参加者は文字起こしにアクセスできないことMicrosoft サポート: Teams 会議でライブ文字起こしを開始・停止・ダウンロードする2026-10-06
callTranscript の取得と /content の形式(text/vtt はタイムスタンプと話者のタグ付き)。アクセス許可が OnlineMeetingTranscript.Read.All などであること。アプリケーションのアクセス許可ではアプリケーション アクセス ポリシーが必要なこと。トランスクリプトへの Graph のアクセスと話者の帰属の2つのテナント管理者の設定があり、無効なら403になること。話者の帰属が無効なときは話者の無い形式で再試行するよう案内されていることMicrosoft Learn: Get callTranscript2026-10-06
フローに「プロンプトを実行する」アクションを足して作成済みのプロンプトを選べること。Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があることMicrosoft Learn: Power Automate でプロンプトを使用する2026-10-06
プロンプトの出力を JSON にでき、カスタムの形式に固定できること。JSON を生成できないとき「回答に JSON マークダウンを含めないでください」を足す対処Microsoft Learn: JSON 出力2026-10-06
ドキュメントの入力が PNG、JPG、JPEG、PDF で、Word などはコード インタープリターを有効にしたときに限られること。入力に指示を含めることはセキュリティ上の理由で禁止されていること。モデルによってトークン数の上限が異なることMicrosoft Learn: プロンプトに入力を追加する2026-10-06
SharePoint コネクタの「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」「ファイル コンテンツの取得」「アイテムを取得」「項目を更新する」Microsoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-06
「開始して承認を待つ」があることMicrosoft Learn: 承認コネクタ2026-10-06
フロー1回の実行の継続時間が30日で、承認などの保留中のステップを含み、30日後にタイムアウトすること。実行の保持期間が30日であることMicrosoft Learn: Power Automate の制限と構成2026-10-06

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0504)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次