Media > AI活用ユースケース > 総務 > マンション管理会社が理事会の議案書を Azure OpenAI で校正し、管理規約の条番号と前回の議事録との食い違い・表記の誤りを拾う

マンション管理会社が理事会の議案書を Azure OpenAI で校正し、管理規約の条番号と前回の議事録との食い違い・表記の誤りを拾う

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

理事会の議案書を配布する前に、引用した管理規約の条番号と中身、前回の議事録の決議・金額・業者名、日付と曜日、金額の合計、表記を突き合わせ、食い違いを指摘の一覧にします。フロント担当は一覧を見て直します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Power Automate
対象業界
不動産
対象部門
総務
対象業務
内容確認・チェック/比較検討
主な課題
人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
30h/月
AI導入後
12h/月
想定削減
60%
年間削減
216h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. フロント担当が、前回の議案書をひな形に今回の議案書を書く
  2. 前回の議事録を開き、継続審議の議案、決議の結果、見積の金額と業者名を見比べる
  3. 議案書に書いた規約の条番号を、その組合の規約で引いて確かめる
  4. 日付と曜日、金額の合計、組合ごとの呼び方(理事長・管理者など)を確かめる
  5. 課長に回し、課長が読んで直す点を戻す
  6. フロント担当が直し、理事に配布する
導入後(After)
  1. 人フロント担当が議案書を書き、組合のフォルダの「確認待ち」に置く
  2. 自動ファイルの作成をきっかけにフローが動き、議案書の段落と表を番号付きで取り出す
  3. 自動組合の台帳から規約の版を引き、その版の規約の条と、前回の議事録を取り出す
  4. 自動日付と曜日、金額の合計、表記の決まりをプログラムで調べる
  5. 自動Azure OpenAI が、議案書の記述を、規約のどの条・前回の議事録のどの事項に当たるかで結び付ける
  6. 自動プログラムが、結び付けた先の条番号・金額・業者名・決議の結果と比べ、指摘の一覧を作る
  7. 人フロント担当が一覧を見て直し、課長に回す
  8. 人課長が、規約の改正の前後に関わる指摘と、決議要件に関わる指摘を確かめて、配布する
各工程の詳しい説明を読む
  1. フロント担当が、前回の議案書をひな形に今回の議案書を書く
  2. 前回の議事録を開き、継続審議の議案、決議の結果、見積の金額と業者名を見比べる
  3. 議案書に書いた規約の条番号を、その組合の規約で引いて確かめる
  4. 日付と曜日、金額の合計、組合ごとの呼び方(理事長・管理者など)を確かめる
  5. 課長に回し、課長が読んで直す点を戻す
  6. フロント担当が直し、理事に配布する

(a)条番号を写し間違える。 1番で前回の議案書や別の組合の議案書を写すと、その組合の規約では別の条の番号が残ります。 3番は規約を開いて引く作業で、急ぐ月から省かれます。

(b)前回の議事録とずれる。 前回の理事会で「業者に再見積を依頼し、税込 1,650,000円で継続審議」となった議案を、議案書では最初の見積の金額のまま出してしまうことがあります。理事は前回の議事録を手元に持っているので、配布してから指摘されます。

(c)規約の改正の前後が混ざる。 令和7年の標準管理規約の改正で、総会の定足数や招集の通知の決まりが変わりました。規約を改正した組合の議案書に旧い決まりを書く、改正していない組合に新しい決まりを書く、の両方が起きます。

(d)確認が課長に集中する。 課長は90組合の規約の違いを全部覚えているわけではありません。課長が見て気づくのは表記の誤りが中心で、条番号と議事録の突き合わせは、結局フロント担当に返ります。

  1. 【人】 フロント担当が議案書を書き、組合のフォルダの「確認待ち」に置く
  2. 【自動】 ファイルの作成をきっかけにフローが動き、議案書の段落と表を番号付きで取り出す
  3. 【自動】 組合の台帳から規約の版を引き、その版の規約の条と、前回の議事録を取り出す
  4. 【自動】 日付と曜日、金額の合計、表記の決まりをプログラムで調べる
  5. 【自動】 Azure OpenAI が、議案書の記述を、規約のどの条・前回の議事録のどの事項に当たるかで結び付ける
  6. 【自動】 プログラムが、結び付けた先の条番号・金額・業者名・決議の結果と比べ、指摘の一覧を作る
  7. 【人】 フロント担当が一覧を見て直し、課長に回す
  8. 【人】 課長が、規約の改正の前後に関わる指摘と、決議要件に関わる指摘を確かめて、配布する

5番目と6番目の分け方が、この設計の分かれ目です。 生成AIは「議案書の『第47条に基づき』は、この組合の規約の『総会の会議及び議事』の条を指している」と結び付けるだけで、番号が合っているかは言いません。 番号の比較は、規約の条の一覧と並べたプログラムが行います。

8番目で、課長は議案書を頭から読みません。 一覧の中で、規約の改正の前後と決議要件に関わる指摘だけを確かめます。そこは表記の誤りではなく、組合の運営の手続きに関わるからです。

02今回想定するシステム構成

構成図
組合のフォルダ「確認待ち」(議案書 Word)
   ▼【トリガー】ファイルの作成
Power Automate ── ファイルの中身と組合の番号を取り、処理を呼ぶ
   ▼
Azure Functions
   ├──▶ 段落と表を番号付きで取り出す
   ├──▶ 組合の台帳から規約の版を引き、規約の条の一覧を作る
   ├──▶ 前回の議事録から事項(議案・決議・金額・業者名)を取り出す
   └──▶ 日付と曜日・金額の合計・表記の決まりを調べる
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 記述を規約の条と議事録の事項に結び付ける
   ▼
Azure Functions ── 条番号・金額・業者名・決議の結果を比べる
   ▼
指摘の一覧(組合のフォルダ、議案書の横)
   ▼
【フロント担当が直し、課長が手続きに関わる指摘を確かめる】
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API
連携Power Automate(文書ライブラリのトリガーとファイルの中身の取得)Azure Logic Apps
連携Azure Functions(段落と表の取り出し、規約の条の一覧、照合)AWS Lambda
台帳SharePoint のリスト(組合の番号・規約の版・改正日・役職の呼び方)Azure SQL Database
文書の保管SharePoint の文書ライブラリ(規約・細則・議事録・議案書・指摘の一覧)社内のファイルサーバー

規約、議事録、議案書は、いまあるものです。 足すのは Power Automate のフロー、Functions の処理、組合の台帳の列です。最初の準備作業は、組合の台帳に「規約の版」と「令和7年の改正への対応」の列を足すことです。

突き合わせの土台になるのは、国土交通省のマンション標準管理規約です。 令和7年10月17日に改正され、令和7年12月10日には団地型の規定の一部が修正されています。改正区分所有法は令和8年4月1日から施行されており、国土交通省のページは、総会の開催手続きや決議要件といった管理組合の運営上重要な内容が含まれ、各マンションの管理規約も見直しが必要になるとしています。

改正の概要(単棟型)には、条の新設と見直しが並んでいます。 総会の招集の通知で全ての議案について「議案の要領」を示すこと(第43条)、緊急に総会を招集する際の通知の最短期間を5日間から1週間にすること、基本の総会の定足数を「半数以上」から「過半数」にすること(第47条)、所在等不明区分所有者を総会の決議から除外する手続きの新設(第67条の3)などです。条の新設があると、組合が独自に足した条と番号がぶつかることもあります。

生成AIは、Azure OpenAI の構造化出力で、結び付けを決まった形で返させます。 Chat Completions API の response_format に JSON のスキーマを渡し、strict を有効にします。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

「確認待ち」のフォルダにファイルが作られたときに動かします。 SharePoint のコネクタの「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」で受け、続けて「ファイル コンテンツの取得」で中身を取ります。トリガーの条件で、拡張子が .docx のファイルだけを対象にします。 指摘の一覧は別のフォルダに書き出し、一覧の作成でフローがまた動かないようにします。

フォルダを指定する「フォルダーにファイルが作成されたとき」は使いません。 非推奨で、サブフォルダにファイルが足されても動きません。 組合ごとにフォルダを分け、その下に「確認待ち」を置く形では、90組合のどれも拾えないことになります。ライブラリ全体で受け、フォルダのパスに「確認待ち」を含むものだけを条件で通します。

直した版を置き直したときも、同じく動かします。 2回目以降は前回の指摘の一覧と比べ、消えた指摘、残った指摘、新しく出た指摘に分けて出します。

議案書の列には「組合の番号」と「理事会の開催日」を持たせます。 フロント担当が置くときに入れる列で、どちらかが空なら処理の最初で止めて知らせます。 組合の番号が無いと、どの規約で突き合わせるかが決まりません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
議案書段落(番号付き)、表(見積の比較表など)、議案の番号と題組合のフォルダ「確認待ち」
管理規約・細則条の番号、見出し、本文。その組合の現行の版組合のフォルダ(台帳の「規約の版」で選ぶ)
前回の議事録議案ごとの決議の結果(承認・否決・継続審議)、金額、業者名、宿題組合のフォルダ
組合の台帳組合の番号、規約の版、令和7年の改正への対応、役職の呼び方、会計年度SharePoint のリスト
表記の決まり金額の書き方(税込・税抜の明記、桁の区切り)、日付の書き方、組合ごとの呼び方管理部で作る表

質を決めるのは、規約の版を正しく選べるかです。 組合のフォルダに古い版の規約が残っていると、古い版で突き合わせてしまいます。台帳の「規約の版」とファイル名を対応させ、現行の版だけを取り出します。

前回の議事録は、理事長の確認が済んだ版を使います。 下書きの議事録には、理事会で訂正される前の金額が残っていることがあります。確認済みの印が無い議事録しか無いときは、そのことを一覧に出します。

Step3

データの取得方法を決める

Word のファイルは、Functions で段落と表に分けてから使います。 段落には P-014、表のセルには T2-R3-C4(表2の3行目の4列目)のような番号を付け、生成AIへは番号付きの文字として渡します。 指摘の一覧で、議案書のどこを指しているかを番号で示すためです。

規約は、条ごとに分けて一覧にします。 「第○条(見出し)」の行で区切り、条番号・見出し・本文 の形にします。「第67条の3」のような枝番号の条も、1つの条として扱います。

前回の議事録は、議案ごとに分けて事項にします。 議案の番号と題、決議の結果、金額、業者名、宿題を取り出し、M-03(前回の第3号議案)のような番号を付けます。

取るものどこから何に使うか
段落と表議案書規則の検査と、記述の結び付け
条の一覧現行の版の規約・細則条番号の照合
議案ごとの事項前回の議事録金額・業者名・決議の結果の照合
規約の版・呼び方組合の台帳版の選択と、表記の照合
Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 段落と表に番号を付ける … 見出し、本文、表のセルを分けます
  2. 条番号の引用を拾う … 「第47条」「規約47条」「第六十七条の三」を正規表現で拾い、47・67の3 の形にそろえます
  3. 金額を拾う … 「1,650,000円」「165万円」を数値にそろえ、税込・税抜の語が近くにあるかを記録します
  4. 日付と曜日を調べる … 「11月8日(金)」の曜日を、理事会の開催日の年の暦で確かめます
  5. 金額の合計を調べる … 見積の比較表の小計と合計を、プログラムで足し直します
  6. 呼び方と表記を調べる … 台帳の呼び方(理事長/管理者、組合員/区分所有者)と、表記の決まりの表で拾います
  7. 滞納の情報を記号に置き換える … 滞納の議案の部屋番号と氏名を、滞納者A のような記号にします

4番目から6番目を生成AIにさせないのは、同じ誤りを毎回同じに拾うためです。 曜日と合計は計算で決まり、呼び方は台帳で決まります。機械で全件拾えるものを生成AIに読ませると、議案の多い回の後半で拾い漏れが出ます。

2番目で拾った条番号は、存在するかをこの段階で確かめます。 その組合の規約に無い番号なら、生成AIの結び付けを待たずに「条が存在しない」と指摘にします。

Step5

AIに処理させる

させるのは、前処理で取り出した記述の1つずつに、「規約のどの条の話か」「前回の議事録のどの事項の続きか」を付けることです。

させること中身判断できないときの扱い
条の引用の結び付け条番号を引用した文が、内容から見て規約のどの条の話か当てはまる条が無ければ no_article
継続審議の結び付け議案が、前回の議事録のどの議案の続きか続きでなければ new_item
金額と業者名の結び付け議案書の金額・業者名が、前回の議事録のどの記載に当たるか当てはまる記載が無ければ no_minutes
決議の結果の言い表し議案書が前回の結果をどう書いているか(承認・否決・継続審議)書いていなければ not_stated
させないこと理由
条番号・金額が一致しているかの判定比較はプログラムが行う
正しい条番号・金額の推測どちらが正しいかは、フロント担当にしか分からない
決議要件が法に適っているかの判断管理会社の上長と、必要に応じて専門家の仕事
標準管理規約の知識での補い突き合わせるのは、その組合の現行の規約だけ
文章の書き直し校正の対象は食い違いと表記。文体の直しは出さない

4行目の「標準管理規約の知識で補わない」が、この構成でいちばん大事な区別です。 生成AIは標準管理規約の条番号を知っているので、組合の規約の条の一覧に無い内容でも、標準管理規約の番号で結び付けたくなります。 そうなると、組合の規約が標準と違うことこそ見つけたかったのに、その違いが消えます。

1行目の結び付けでは、条の見出しと本文を必ず渡します。 番号だけを渡すと、生成AIは番号から内容を推測します。内容から結び付けるので、番号が誤って引用されていても、正しい条にたどり着けます。

Step6

指示内容を固定する

あなたはマンション管理会社の管理部で、理事会の議案書を配布の前に
校正する立場です。議案書の記述1つずつについて、この管理組合の規約の
どの条の話か、前回の議事録のどの事項の続きかを結び付けてください。

【結び付けるもの】
- article_ref:条の引用を含む文が、内容から見て指している条の番号
  (下の【この組合の規約の条の一覧】から選ぶ)
- minutes_ref:前回の議事録の事項の番号(例 M-03)
- kind:article(規約の引用)/carryover(継続審議)/amount(金額)/
        vendor(業者名)/result(前回の決議の結果)/other
- stated_result:議案書が書いている前回の決議の結果
  (approved/rejected/continued/not_stated)

【厳守事項】
- 条番号・金額・業者名が一致しているかを書かないでください。
- 内容から結び付けてください。文に書かれた条番号を手がかりに
  条を選ばないでください。
- 【この組合の規約の条の一覧】に無い条を選ばないでください。
  標準管理規約や一般的な知識で番号を補わないでください。
  当てはまる条が無ければ article_ref を空にし status を no_article に
  してください。
- 当てはまる議事録の事項が無いときに、近い議案を選ばないでください。
  minutes_ref を空にし status を no_minutes にしてください。
- 記号に置き換えた部屋番号や氏名を、元に戻そうとしないでください。
- 決議要件が適法か、議案が妥当かを書かないでください。
- evidence には、結び付けの根拠にした議案書の語句をそのまま写してください。

【この組合の規約の版】{bylaw_version}
【この組合の規約の条の一覧(番号・見出し・本文)】{articles}
【前回の議事録の事項】{minutes_items}
【議案書の記述(番号付き)】{statements}

「文に書かれた条番号を手がかりに条を選ばない」が、この指示でいちばん大事な一行です。 書かないと、生成AIは「第47条に基づき」とあれば第47条を選び、結び付けとしては一致してしまいます。 誤って引用された番号を見つけるには、番号ではなく内容で選ばせる必要があります。

「近い議案を選ばない」も同じ理由です。 前回の議事録に無い新しい議案を、似た題の前回の議案に結び付けると、金額の比較で誤った指摘が出ます。

Step7

出力形式を固定する

{
  "agenda_id": "K042-2026-11",
  "union_id": "K042",
  "bylaw_version": "R7対応済み(2026-06 改正)",
  "links": [
    {
      "statement_id": "P-021",
      "text": "規約第47条に基づき、出席組合員の議決権の過半数で決する",
      "kind": "article",
      "article_ref": "46",
      "minutes_ref": "",
      "stated_result": "not_stated",
      "status": "ok",
      "evidence": "出席組合員の議決権の過半数で決する"
    }
  ]
}

JSON にする1つ目の理由は、照合を機械にできることです。 article_ref があれば、文に書かれた条番号と比べます。上の例では、文は「第47条」、結び付けは「46」なので、プログラムが「条番号の食い違い」として指摘にします。 minutes_ref があれば、議事録の事項の金額・業者名・決議の結果と比べます。

2つ目は、番号で議案書の場所に戻れることです。 指摘には statement_id が付き、フロント担当は一覧から議案書の該当箇所を開けます。

スキーマは、Azure OpenAI の決まりに合わせます。 すべての項目を必須にし、すべてのオブジェクトに additionalProperties: false を付けます。pattern や minItems は使えないので、条番号の形と件数はプログラムで確かめます。オブジェクトの項目は最大100個、入れ子は5段までです。

指摘の一覧は、次の形でフロント担当に渡します。

区分例判定する所
条番号P-021「第47条」、内容はこの組合の第46条(総会の会議及び議事)規約の条の一覧
条が存在しないP-033「第67条の3」、この組合の規約に無い条規約の条の一覧
前回の議事録P-040「1,500,000円」、前回 M-03 は税込 1,650,000円で継続審議議事録の事項
決議の結果P-041「前回承認された」、前回 M-04 は継続審議議事録の事項
日付と曜日P-002「11月8日(金)」、暦では土曜日暦
合計T2 の合計 2,310,000円、小計の和は 2,301,000円表の計算
呼び方P-015「管理者」、この組合の規約では「理事長」組合の台帳
手続き招集・定足数・決議要件に触れる記述(規約の版と並べて表示)課長が確かめる
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
組合のフォルダPower Automate のトリガーとファイル コンテンツの取得議案書の作成と中身を取る
規約・議事録・組合の台帳Functions が読む現行の版の規約、前回の議事録、呼び方
Azure OpenAIChat Completions API(構造化出力)記述の結び付け
組合のフォルダFunctions が書き出す指摘の一覧を議案書の横に置く

議案書そのものには書き込みません。 Word のコメントを自動で入れることもしません。直すのはフロント担当で、一覧を見て採った指摘だけを直します。 自動で書き込むと、誤った指摘まで議案書に残り、理事に配布されるおそれがあります。

規約と議事録にも書き込みません。 規約の条番号の重なりが見つかっても、規約を直すかは管理組合が総会で決めることです。

Step9

人が確認する

  1. 「手続き」の区分を先に課長が見る … 招集・定足数・決議要件に触れる記述を、組合の規約の版と並べて確かめます
  2. 条番号と「条が存在しない」を見る … 内容から結び付いた条が正しいかを、規約を開いて確かめます
  3. 前回の議事録と決議の結果を見る … 金額・業者名・結果の違いが、誤記か、その後の再見積かを確かめます
  4. 日付・合計・呼び方を直す … 機械の指摘なので、まとめて直します
  5. 採らなかった指摘を記録する … どの指摘を、なぜ採らなかったかを残します

1番目を課長に置くのは、表記の問題ではないからです。 改正区分所有法は令和8年4月1日から施行されており、国土交通省は、規約の改正を決議する総会の招集手続きを令和8年3月31日までに行うか、4月1日以降に行うかで手続き方法が変わるとしています。この判断は校正ではなく、組合の運営の判断です。

3番目の違いは、誤記とは限りません。 前回の理事会の後に業者が再見積を出したなら、議案書の金額のほうが新しいことがあります。そのときは議案書に「前回から金額が変わった理由」を書き足すのが、理事への説明として親切です。

目標は、1件12分で一覧を見終えることです。 指摘が20を超える議案書は、呼び方と表記の指摘が大半のことが多く、同じ規則の指摘をまとめて1件として扱えば、確かめる数は数件に収まります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
議案書に組合の番号が入っていない処理を止め、フロント担当に知らせる
組合の台帳に規約の版が入っていない条番号の照合を飛ばし、「規約の版が未登録」を指摘に出す
前回の議事録が確認済みでない議事録の照合は行い、「確認前の議事録で照合」と一覧に書く
前回の理事会が流会・延期だった前々回の議事録まで遡り、どの回の議事録で照合したかを書く
生成AIの article_ref が条の一覧に無い番号を指す結び付けを捨て、no_article として扱う
規約が画像の PDF しか無い条の一覧を作れないので、規約の文字起こしを先に行う。それまでは条番号の照合を飛ばす
入力が安全方針で止まる苦情の議案に強い言葉が含まれると、既定の安全方針で止まることがある。その議案の記述を外して呼び直し、外した議案を一覧に出す
構造化出力の応答が途中で切れる応答の最大の長さを見直し、議案ごとに分けて呼び直す
2回目の置き直しで指摘が増えた新しく出た指摘として分けて出す

6行目は、古い組合ほど起きます。 分譲時の規約が紙しか残っておらず、改正のたびに変更の箇所だけを別の紙で持っている組合があります。規約の現行の全文を一度文字にして台帳に紐付けることが、この構成の前提になります。

Step11

記録を残す

  • 議案書の版ごとのファイルと、取り出した段落と表
  • そのとき使った規約の版と、前回の議事録のファイル
  • 規則の検査(曜日・合計・呼び方)の結果
  • 生成AIの入力と出力の全文
  • 照合の結果(指摘の一覧)
  • フロント担当が採った指摘と、採らなかった指摘と理由
  • 課長が「手続き」の区分で確かめた内容

2つ目で「そのときの規約の版」を残すのは、規約が後から改正されるためです。 令和7年の改正への対応で規約を変えた組合では、改正前の議案書をいまの規約で見直すと、正しかった条番号が誤りに見えます。

記録は、議事録の保存の決まりに合わせて残します。 理事から「配布の前に何を確かめたか」を問われたとき、どの版の規約と、どの回の議事録で突き合わせたかを示せるようにします。

04実装レベルの3段階

最小構成:議案書と規約・議事録を手でAIの画面に貼り、結び付けさせる / 結び付けの確かめ
半自動化:上記+曜日・合計・呼び方・条の存在を処理で調べ、一覧に出す / 機械で決まる指摘
本格構成:上記+ファイルの作成で自動で動かし、規約の版と前回の議事録との照合まで行う / 校正の指摘の全体

最小構成では、件数がさばけません。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が20分程度になります。 曜日・合計・呼び方は自動で拾えますが、条の中身と前回の議事録の突き合わせが手で残ります。本格構成で12分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で1か月動かすと、規約の版が台帳に入っていない組合と、議事録が確認済みにならない組合が分かります。そこを整えてから本格構成に進むと、指摘が信用されやすくなります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
12 分
現在  60件 × 30分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 60件 × 12分 ÷ 60 = 12 時間/月
月間削減時間
18h
削減率
60%
年間削減時間
216h
年間金額換算(時間単価3,000円)
65万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 分譲マンションの管理組合を数十〜数百受託し、フロント担当が1人で十数組合の理事会の議案書を毎月作っているマンション管理会社。組合ごとに管理規約の版が違い、令和7年の標準管理規約の改正に合わせて規約を改正した組合と、まだの組合が混ざっている場合。理事から「前回の議事録と金額が違う」「条番号が違う」と指摘されたことがあり、上長の確認が配布の直前に集中している場合。
向いていない
  1. 受託している組合が数組合で、担当者が規約と議事録を全部覚えていられる場合。議案書が定型の帳票から自動で出力され、手で書く文や数値がほとんど無い場合。議案の決議要件が法に適っているかの判断を自動にしたい場合(この構成は規約と議事録との突き合わせの指摘までで、法的な判断は管理会社の上長と、必要に応じて専門家が行います)。

07最小構成で試す方法

  1. 先月配布した議案書から5件を選ぶ(理事から指摘を受けたものを入れる)
  2. 5件それぞれの組合の現行の規約と、前回の議事録を用意する
  3. 手元のAIサービスに、議案書と規約の条の一覧と前回の議事録を貼り、「議案書の条の引用が、内容から見て規約のどの条の話かを結び付けてください。書かれた条番号で選ばないでください。前回の議事録のどの議案の続きかも結び付けてください。一致しているかは書かないでください」と指示する
  4. 結び付けの結果を見て、書かれた条番号・金額と自分で比べる
  5. 理事から受けた指摘に届くかを確かめる

この段階で確かめたいのは、内容から条を結び付けられるかです。 それができれば、比べるのは機械でできます。

出てきた内容判断
結び付けがほぼ正しい段落と表の取り出しと、照合の処理の作成に進む
書かれた条番号どおりに結び付ける指示の書き方で直る。構成は有効
標準管理規約の番号で答える条の一覧だけから選ぶよう指示を強め、一覧に無い番号を捨てる処理を足す
規約の条の一覧が作れない規約の文字起こしと台帳の整備が先

4行目が出る組合は、後回しにして構いません。 規約が文字になっている組合から始め、前回の議事録との照合と、曜日・合計・呼び方の検査だけでも先に動かせます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
書かれた条番号どおりに結び付ける指示で「内容で選ぶ」と明記し、条の見出しと本文を必ず渡す
標準管理規約の番号で補う条の一覧に無い番号を捨てる。その組合の規約だけで突き合わせる
古い版の規約で突き合わせる台帳の「規約の版」で現行の版だけを取り出す
再見積による金額の変化を誤りとして出す指摘の文を「食い違い」とし、理由の書き足しを促す形にする
前回が流会で、照合する議事録が無い前々回まで遡り、どの回で照合したかを一覧に書く
滞納の議案の部屋番号と氏名が生成AIに渡る前処理で記号に置き換える
苦情の議案で入力が止まる既定の安全方針の影響を疑い、その議案を外して呼び直す
議案書に自動でコメントを入れてしまう一覧を横に置くだけにする
指摘の一覧の作成で、またフローが動く一覧は別のフォルダに置き、トリガーを .docx に限る
決議要件の記述を、表記の誤りと同じに扱う「手続き」の区分に分け、課長が規約の版と並べて確かめる

上の2行が、運用に乗るかを決めます。 どちらも生成AIの性質で、引用された番号や一般的な知識に引っ張られるのを、指示と照合の両方で止めます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 議案書(修繕の見積、業者名、滞納の状況、苦情の内容)、管理規約、議事録です。滞納の議案と苦情の議案には、組合員の部屋番号・氏名・事情が含まれます。

  1. 組合員の情報を記号に置き換えてから渡す … 照合に部屋番号や氏名は要りません。前処理で置き換え、元の議案書は組合のフォルダにだけ置きます
  2. 管理委託契約の取り決めを確かめる … 組合の情報を外部のクラウドで処理してよいかを、管理委託契約と個人情報の取り扱いの決まりで確かめます
  3. データの扱いを確かめておく … Azure OpenAI の公式のページは、プロンプトと出力が他の顧客や OpenAI に提供されず、基盤モデルの学習に使われないとしています。Global のデプロイでは処理がどの地域でも行われうるので、デプロイの種類を選びます
  4. 手続きの判断をこの構成に置かない … 指摘は規約・議事録との食い違いの事実です。決議要件が法に適っているかは、課長と、必要に応じて専門家が判断します
  5. 規約の食い違いを、管理会社だけで直さない … 規約の条番号の重なりや、令和7年の改正への未対応が見つかっても、規約を変えるのは管理組合の総会です。理事会への報告の材料にします
  6. 指摘の一覧を担当者の評価に使わない … フロント担当ごとの指摘の数は、受け持つ組合の規約の状態で大きく変わります。数は表記の決まりと台帳の見直しにだけ使います

誤りが起きた場合のリスクは、食い違いを見落として理事に配布することと、誤った指摘で正しい条番号を直してしまうことの2つです。 前者は照合を機械で全件行うことで、後者はフロント担当が規約を開いて確かめることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:組合の台帳に規約の版を持たせる

90組合の台帳に「規約の版」「令和7年の改正への対応」「役職の呼び方」の列を足します。議案書の多い組合から埋め、現行の規約のファイルを対応させます。

2週目:5件で試す

先月の議案書5件を、手元のAIサービスで結び付けさせます。書かれた条番号どおりに選んでいないか、標準管理規約の番号で補っていないかを見ます。

3週目:規則の検査を作る

Functions で曜日・合計・呼び方・条の存在を調べる処理を作ります。この時点では生成AIを使わず、一覧をフロント担当が見ます。

4週目:表記の決まりを表にする

金額の書き方、日付の書き方、組合ごとの呼び方を表にし、規則の検査に入れます。

2か月目: 規約の条と前回の議事録への結び付けと照合を足します。3か月目以降: 採らなかった指摘を見て指示と規則を直し、1件30分が何分になったかを実測します。理事から配布の後に条番号や金額の指摘を受けることが無くなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-28/最終更新:2026-10-29
確認した内容情報源確認日
マンション標準管理規約が令和7年10月17日に改正され、令和7年12月10日に団地型の規定の一部が修正されたこと。改正区分所有法が令和8年4月1日から施行されること。改正に総会の開催手続きや決議要件が含まれ、各マンションの管理規約も見直しが必要とされること。規約の改正を決議する総会の招集手続きを令和8年3月31日までに行うか4月1日以降に行うかで手続き方法が変わること国土交通省: マンション標準管理規約2026-10-28
令和7年改正の概要(単棟型)として、総会の招集の通知で全ての議案について「議案の要領」を示すこと(第43条)、緊急の招集の通知の最短期間を5日間から1週間にすること、基本の総会の定足数を「半数以上」から「過半数」にすること(第47条)、所在等不明区分所有者を総会の決議等から除外する手続きの新設(第67条の3)などが挙げられていること国土交通省: 令和7年マンション標準管理規約改正の概要2026-10-28
令和7年改正版の団地型の第45条第2項・第69条第2項で、引用する条項の番号(第33条の3第1項→第2項)が令和7年12月10日に修正されたこと国土交通省: 令和7年改正版「マンション標準管理規約」の修正について2026-10-28
既定の安全方針(DefaultV2)が、憎悪・暴力・性的・自傷の4つの区分について、入力と出力の両方で重大度「中」以上を止めること。止められた入力はエラーで返ることMicrosoft Learn: Default safety policies in Microsoft Foundry2026-10-28
「When a file is created (properties only)」がライブラリの列の値だけを返し、「Get file content」で中身を取ること。「When a file is created in a folder」が非推奨で、サブフォルダにファイルが足されても動かないことMicrosoft Learn: SharePoint connector2026-10-28
構造化出力が Chat Completions API(response_format)と Responses API(text.format)で使えること。すべての項目を必須にし、additionalProperties: false を設定すること。オブジェクトの項目が最大100個、入れ子が最大5段であること。pattern・minItems などが非対応であることMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-28
プロンプトと出力が他の顧客や OpenAI に提供されず、基盤モデルの学習に使われないこと。Global のデプロイではどの地域でも処理されうることMicrosoft Learn: Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure2026-10-28

規約の改正の要否や決議要件の扱いは、管理組合と管理会社の上長、必要に応じて専門家が判断してください。 本記事は公式の文書で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-2175)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次