上場している競合の決算短信と説明資料を公表のたびに要約し、売上・利益・セグメント・見通しの比較表と自社への示唆の下書きにする
競合が決算を公表するたびに、決算短信と説明資料を読み、売上・利益・セグメント・通期見通しの比較表と、見通しや施策の要約を作ります。そのうえで自社への示唆の下書きを出し、経営企画の担当者が仕上げます。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Python
- 対象業界
- IT・SaaS/商社/小売/製造
- 対象部門
- 経営企画
- 対象業務
- 要約/集計・分析
- 主な課題
- データ分析に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
- AIで行う処理
- 要約
- 主な効果
- 判断支援/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 担当者が決算の公表予定日を確かめ、当日に決算短信と説明資料のPDFを取得する
- 決算短信から、売上高・営業利益・経常利益・純利益と前年同期比、通期予想と修正の有無を比較表に転記する
- セグメント別の売上と利益を拾い、自社と近い事業のセグメントを抜き出す
- 説明資料を読み、業績の要因、受注の動き、価格や原材料の話、新しい施策、リスクの記述を書き出す
- 前の期に同じ会社が何と言っていたかを、過去のメモから探す
- 自社への示唆を数行で書く
- 部長が形をそろえ、経営会議の資料にする
- 人担当者が公表日に決算短信のXBRLと説明資料のPDFを取得し、会社ごとの受領フォルダに置く
- 自動スクリプトがXBRLから売上高・利益・前年同期比・通期予想を読み、比較表の行を作る
- 自動Claude API が決算短信のPDFからセグメント別の数値を構造化して取り出し、スクリプトが合計を検算する
- 自動Claude API が説明資料を、要因・受注・価格と原材料・施策・リスク・見通しの観点で要約する。一文ごとに引用のページが付く
- 自動同じ会社の前の期の要約と並べ、表現が変わった点を印付けする
- 自動比較表と要約から、自社への示唆の下書きを作る
- 人担当者が数値の検算結果と要約の引用ページを確かめ、示唆を書き直す
- 人部長が経営会議の資料として確認する
各工程の詳しい説明を読む
- 担当者が決算の公表予定日を確かめ、当日に決算短信と説明資料のPDFを取得する
- 決算短信から、売上高・営業利益・経常利益・純利益と前年同期比、通期予想と修正の有無を比較表に転記する
- セグメント別の売上と利益を拾い、自社と近い事業のセグメントを抜き出す
- 説明資料を読み、業績の要因、受注の動き、価格や原材料の話、新しい施策、リスクの記述を書き出す
- 前の期に同じ会社が何と言っていたかを、過去のメモから探す
- 自社への示唆を数行で書く
- 部長が形をそろえ、経営会議の資料にする
(a)転記で桁と期を取り違える。 決算短信は百万円単位、説明資料は億円単位のことが多く、累計と四半期単独の数値が並んでいます。手で写すと、どこかで1つは取り違えます。 経営会議で数字の誤りを指摘されると、その資料の他の部分まで信用されなくなります。
(b)前の期の発言が見つからない。 「前の期は受注の回復を言っていたが、今期はどうか」を確かめたいのに、過去のメモは担当者のファイルに散らばっています。比較の肝である「言っていたことが変わったか」が、いちばん追いにくい部分です。
(c)読みどころが人で違う。 ある担当者は受注残を必ず拾い、別の担当者は価格転嫁を拾います。同じ会社でも、担当が替わると比較表の列が変わります。
(d)集中する月に間に合わない。 3月決算の会社が並ぶ月は、2〜3週間で十数社を読みます。後半の会社ほど、説明資料を読み飛ばして数値だけになります。
- 【人】 担当者が公表日に決算短信のXBRLと説明資料のPDFを取得し、会社ごとの受領フォルダに置く
- 【自動】 スクリプトがXBRLから売上高・利益・前年同期比・通期予想を読み、比較表の行を作る
- 【自動】 Claude API が決算短信のPDFからセグメント別の数値を構造化して取り出し、スクリプトが合計を検算する
- 【自動】 Claude API が説明資料を、要因・受注・価格と原材料・施策・リスク・見通しの観点で要約する。一文ごとに引用のページが付く
- 【自動】 同じ会社の前の期の要約と並べ、表現が変わった点を印付けする
- 【自動】 比較表と要約から、自社への示唆の下書きを作る
- 【人】 担当者が数値の検算結果と要約の引用ページを確かめ、示唆を書き直す
- 【人】 部長が経営会議の資料として確認する
2番目と3番目を分けているのが、この設計の要です。 決算短信の主要な数値はXBRLで機械的に読めるので、AIに読ませません。AIが表から取り出すのは、XBRLから取りにくいセグメント別の数値だけで、それも合計の検算を通します。
7番目の確認は省きません。 下書きの示唆は、比較表と要約を材料にした仮説にすぎません。自社の戦略に何を反映するかは、経営企画が決めることです。
02今回想定するシステム構成
担当者 ── 公表日に決算短信(XBRL・PDF)と説明資料(PDF)を取得 │ ▼【トリガー】受領フォルダへの保存(会社コード・決算期付き) 集計スクリプト(Python) ├──▶ XBRLから売上高・利益・前年同期比・通期予想 → 比較表の行 ▼ Claude API ①(構造化出力)── 決算短信のPDFからセグメント別の数値 ▼ 集計スクリプト ── セグメント合計とXBRLの合計を検算、単位をそろえる ▼ Claude API ②(引用あり)── 説明資料の要約(要因/受注/価格と原材料/施策/リスク/見通し) │ 一文ごとに、根拠の文とページ番号 ▼ Claude API ③ ── 前の期の要約と並べて変化点、自社への示唆の下書き ▼ 競合比較のスプレッドシート + 会社別の要約(共有フォルダ) ▼ 【人】担当者が検算・引用を確認し、示唆を書き直す → 部長 → 経営会議
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | Claude API(セグメント数値の取り出し、引用付きの要約、示唆の下書き) | OpenAI API、Gemini API |
| 集計 | Python(XBRLの読み取り、単位の統一、検算、比較表への書き込み) | Google Apps Script |
| 資料の置き場 | 既存の共有フォルダ | SharePoint、Google ドライブ |
| 比較表 | Google スプレッドシート | SharePoint リスト |
資料の取得は、担当者が手で行います。 東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービスは、開示情報をPDFで掲載し、決算短信等の決算情報はXBRL形式またはHTML形式のデータをダウンロードできます。 一方で、安定稼働のためスクレイピング等による自動取得は控えるよう求めており、掲載期間も開示日を含めて31日分です。自動で巡回する仕組みは作らず、公表日に担当者が取りに行き、自社のフォルダに保管します。
要約の土台は、Claude API のPDFの読み取りです。 PDFはテキストと各ページの画像の両方として扱われ、表やグラフも読めます。 1回のリクエストは32MBまで、ページ数は600ページまで(1Mトークン未満のコンテキストでは100ページ)です。パスワードや暗号化の付いたPDFは扱えません。説明資料は多くても60ページ程度なので、1社分は1回で渡せます。
引用と構造化出力は、同じ呼び出しで使えません。 公式は、文書に引用を有効にしたまま output_config.format を指定すると400エラーになるとしています。そのため、数値を取り出す呼び出し(①・構造化出力)と、要約する呼び出し(②・引用あり)を分けています。 構成図で Claude API が3回出てくるのは、この理由です。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
受領フォルダに資料が置かれたことを起点にします。 決算の公表は15時以降が多く、担当者は公表を確かめてから資料を取りに行きます。置いたらすぐ動くようにしておくと、翌朝には比較表の行と要約がそろっています。
フォルダは会社コードと決算期で分けます(例:6xxx_2026Q2)。要約は、ファイルが3つそろうまで動かしません。 決算短信のXBRL、決算短信のPDF、説明資料のPDFのどれかが欠けたまま動かすと、比較表の行と要約の期がずれる状態が生まれます。
説明資料が決算短信より後に出る会社もあります。その場合は、XBRLとPDFが置かれた時点で比較表の行だけを作り、説明資料が届いたら要約を足します。 一覧には「説明資料待ち」と表示します。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 決算短信のXBRL | 売上高、営業利益、経常利益、純利益、前年同期比、通期の予想と修正の有無 | 適時開示情報閲覧サービス(担当者が取得) |
| 決算短信のPDF | セグメント情報、定性的な説明、予想の前提 | 同上 |
| 決算説明資料のPDF | 業績の要因、受注、価格と原材料、施策、リスク、見通しの説明 | 同上、または各社のIRページ |
| 前の期の要約 | 同じ会社の、前の四半期の要約と比較表の行 | 自社の共有フォルダ |
| 比較の定義 | 比較する指標、自社と近いセグメントの対応表、読む観点 | 経営企画で定める一覧 |
| 自社の方針 | 中期経営計画の重点テーマと、いま検討している打ち手 | 経営企画の資料(要点だけ) |
質を決めるのは、下の3つです。 前の期の要約が無ければ「言っていたことが変わったか」が出せません。比較の定義が無ければ、担当者で列が変わるという今の問題を、AIがそのまま引き継ぎます。 自社の方針が無ければ、示唆は一般論になります。
自社と近いセグメントの対応表は、最初に手で作ります。 競合Aの「産業機器事業」と競合Bの「インダストリー事業」が自社のどの事業と比べられるかは、決算資料を読んでも決まりません。 経営企画が決めて、表として持ちます。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 主要な数値と予想 | 決算短信のXBRL | 比較表の行(AIを通さない) |
| セグメント別の売上と利益 | 決算短信のPDFのセグメント情報の表 | 自社と近い事業の比較 |
| 要因・施策・見通しの説明 | 説明資料のPDF(引用を有効にして渡す) | 引用付きの要約 |
| 前の期の要約 | 共有フォルダの会社別のファイル | 変化点の印付け |
XBRLの読み取りは、スクリプトで行います。 項目の名前と単位、当期と前期の区別はXBRLの中に持たれているので、桁や期の取り違えが起きません。 読み取りの実装は、使うライブラリと決算短信の様式に合わせた個別の実装になります。
説明資料は、引用を有効にした文書として渡します。 PDFの文書ブロックに引用を有効にすると、返答の文に page_location の形の引用が付き、根拠にした文(cited_text)と、開始ページ・終了ページの番号が返ります。ページ番号は1から数え、終了ページは含まない数え方です。
AIへ渡す前に整形する
- ファイルのそろいの確認 … XBRL・決算短信のPDF・説明資料のPDFの3つがあるかを確かめます
- PDFの確認 … パスワードや暗号化が無いこと、32MB以内であることを確かめます
- 文字が取り出せるかの確認 … 説明資料がスキャン画像だけのPDFだと、引用が付きません。 公式は、取り出せる文字が無いスキャンのPDFは引用できないとしています。この場合は引用なしで要約し、一覧に「引用なし」と表示します
- 単位の統一 … XBRLの数値を百万円にそろえ、説明資料の億円の記述と並べられるようにします
- 累計と四半期単独の区別 … XBRLは累計で持つことが多いので、前の四半期の累計を引いて四半期単独の値も出します
- 前の期の要約の取り出し … 同じ会社の直前の四半期と、前年同期の要約を読み込みます
- ページ数の確認 … 100ページを超える説明資料は、章で分けて2回に分けます
3番目を軽く見ないでください。 説明資料の中には、スライドを画像として貼り付けたPDFがあります。AIは画像からも読めますが、引用は付かないので、ページを確かめる手間が戻ってきます。 会社ごとに「引用が付く資料か」を一覧に持っておくと、確認の段取りが立ちます。
会社ごとの性質は、1枚の一覧に持ちます。 説明資料が決算短信と同じ日に出るか、文字が取り出せるか、セグメントの名前と自社の事業との対応、決算期と公表予定日です。前処理はこの一覧を見て分岐します。 新しく追い始める会社は、最初の1回で一覧の行を埋めます。
5番目は、比較表の誤りのいちばん多い原因です。 「第2四半期」の数値が累計か3か月単独かで、前年同期比の意味が変わります。計算はスクリプトで行い、AIにはさせません。
AIに処理させる
させるのは、セグメント別の数値の取り出しと、説明資料の観点ごとの要約、そして変化点と示唆の下書きの3つです。
| 呼び出し | させること | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| ①(構造化出力) | 決算短信のセグメント情報の表から、セグメント名・売上・利益・単位・期を取り出す | 表が見つからなければ not_found |
| ②(引用あり) | 説明資料を6つの観点(要因・受注・価格と原材料・施策・リスク・見通し)で要約 | 書かれていない観点は「記載なし」 |
| ③ | 前の期の要約と比べた変化点の印付けと、自社への示唆の下書き | 比較できる前期が無ければ変化点を出さない |
②で「記載なし」を許しているのが大事です。 説明資料に受注の話が無いのに、決算短信の数字から「受注は堅調と見られる」と書かせると、会社が言っていないことを会社の言葉として経営会議に出すことになります。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 売上高・利益・予想の数値の読み取り | XBRLから機械的に読む |
| 前年同期比や四半期単独の計算 | スクリプトで計算する |
| 説明資料に無い要因の推測 | 会社の発言と自社の推測が混ざる |
| 株価や投資の判断 | 目的が違う。経営企画の資料の範囲を超える |
| 自社の戦略の決定 | 示唆は下書き。決めるのは経営企画と経営会議 |
3行目がいちばん起きやすい失敗です。 減益の会社の説明資料に理由が書かれていないと、AIは一般的な理由(原材料高、為替など)を補おうとします。補った理由は、引用が付かないことで見分けられます。 引用の無い文は、一覧で色を変えて出します。
指示内容を固定する
あなたは産業機械メーカーの経営企画部で、競合の決算説明資料を読む担当です。
添付の説明資料だけを根拠に、次の6つの観点で要約してください。
【観点】
1. 業績の要因(増減の理由として会社が挙げているもの)
2. 受注の動き(受注高、受注残、地域や業種の動き)
3. 価格と原材料(価格改定、原材料・部材・物流のコスト)
4. 施策(新製品、設備投資、提携、買収、構造改革)
5. リスク(会社が挙げている懸念、前提の変化)
6. 見通し(通期予想の前提、修正の理由、来期への言及)
【厳守事項】
- 資料に書かれていることだけを書いてください。書かれていない観点は「記載なし」としてください。
- 数値を計算しないでください。資料に書かれた数値をそのまま引用してください。
- 会社の発言として書く文に、あなたの推測を混ぜないでください。
- 「堅調」「好調」などの評価は、資料にその言葉がある場合だけ使ってください。
- 1つの観点は3文以内にしてください。
- 株価や投資の判断に関わることは書かないでください。
【比較の定義(自社と近いセグメント)】{segment_map}
【会社名と決算期】{company} {period}
呼び出し③の指示は、別に分けます。
次の2つを材料に、変化点と自社への示唆の下書きを作ってください。
【今期の比較表の行と要約】{current}
【前の期の要約】{previous}
【自社の重点テーマ】{our_themes}
- 変化点は、前の期と言い方が変わった点だけを挙げ、前の期と今期の文を並べてください。
- 示唆は「仮説」として3つまで。各仮説に、根拠にした比較表の値か要約の文を添えてください。
- 根拠の無い示唆は書かないでください。
- 自社が何をすべきかの結論は書かないでください。
「評価の言葉は資料にある場合だけ」を入れないと、要約の色が担当者の好みからAIの好みに変わるだけになります。 会社が「回復基調」と書いたのか、AIが「回復基調」とまとめたのかを、読む側が区別できなくなります。
示唆を「仮説」と呼ばせているのも意図してのことです。 経営会議の資料に「すべき」と書かれた下書きが残ると、検討されないまま結論として扱われます。
出力形式を固定する
呼び出し①(セグメント別の数値)は、次の形のJSONで受け取ります。
{
"company_code": "",
"period": "",
"unit": "百万円 | 千円 | 億円",
"basis": "cumulative | quarter",
"segments": [
{ "name": "", "sales": "", "profit": "", "page": 0, "status": "ok | not_found | ambiguous" }
]
}
数値を文字列で受け取っているのは、「△120」のような表記をそのまま写させ、変換をスクリプトに任せるためです。構造化出力は数値の範囲の制約に対応していないので、値の検査はどのみちスクリプトで行います。 スクリプトはセグメントの合計とXBRLの合計を比べ、調整額を除いて合わなければ ambiguous として人に回します。
呼び出し②(要約)は、引用付きのテキストで受け取ります。 返答はテキストのブロックと引用の組で返るので、スクリプトで次の表に組み直します。
| 観点 | 要約の文 | 引用の文(cited_text) | ページ |
|---|---|---|---|
| 受注の動き | 半導体向けの受注が前四半期から回復したと説明している | (資料の該当文) | 8 |
| 価格と原材料 | 記載なし | - | - |
1つ目の理由は、根拠のページをその場で開けることです。 経営会議で質問が出たとき、ページ番号があれば数秒で該当の箇所を示せます。
2つ目は、引用の無い文を機械で見分けられることです。 引用の付かない要約の文は、資料以外から来た可能性があるので、一覧で色を変えます。担当者はその文から先に確かめます。
3つ目は、比較表の列が固定されることです。 観点が6つに決まっているので、担当者が替わっても、どの会社も同じ列で並びます。
呼び出し③(変化点と示唆)は、次の形の表で受け取ります。
| 観点 | 前の期の文 | 今期の文 | 変化の種類 |
|---|---|---|---|
| 見通し | 下期に半導体向けの回復を見込むと説明 | 回復の時期を来期にずらしたと説明 | 時期の後ろ倒し |
| 施策 | 記載なし | 東南アジアの生産拠点の増強を説明 | 新しく出た話題 |
変化の種類は「新しく出た話題」「消えた話題」「時期の変更」「強さの変更」の4つに限ります。 種類を決めておくと、24社分を並べたときに「今四半期に時期を後ろへずらした会社が何社あるか」を数えられます。消えた話題は、AIが見落としたのか会社が言わなくなったのかを、担当者が資料で確かめます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 受領フォルダ | 集計スクリプトの監視 | 3つのファイルのそろいを検知する |
| Claude API | API呼び出し(①構造化出力、②引用あり、③通常) | セグメントの数値、要約、変化点と示唆 |
| 競合比較のスプレッドシート | 行の追記 | 数値・検算の結果・要約・引用ページ |
| 会社別の要約ファイル | 共有フォルダへの保存 | 次の期の比較の材料 |
| 社内チャット | 通知 | 検算が合わない会社、引用の無い要約がある会社を担当者へ |
比較表の過去の行は書き換えません。 決算の修正や遡及の組み替えがあっても、新しい行として足し、どちらの数値かを列で区別します。 上書きすると、前の期に経営会議へ出した数字が後から変わってしまいます。
経営会議の資料へは、自動で書き込みません。 出すのは比較表と下書きまでで、資料にするのは担当者と部長です。
人が確認する
人が必ず見るのは、検算の結果と引用の無い文、そして示唆の下書きです。 要約の文をすべて読み直すことはしません。全文を読み直す設計にすると、第10章の8.0時間には収まりません。
- 検算が合わない会社を先に見る … セグメントの合計とXBRLの合計が合わないものは、決算短信の該当ページを開いて数値を確かめます
- 引用の無い文を確かめる … 色の付いた文が資料にあるかを確かめ、無ければ消します
- 変化点を読む … 前の期と今期の文が並んでいるので、言い方の変化が本当に意味のある変化かを判断します
- 示唆を書き直す … 下書きの仮説を読み、自社の事情を足して書き直します。ここは担当者の仕事として残します
4番目は時間を削る対象ではありません。 この業務の価値は示唆にあり、AIの下書きは材料をそろえるためのものです。浮いた時間は、ここに使います。
目標は、8件をならして1件60分です。 うち半分近くを示唆の書き直しに充てる想定で、検算と引用の確認に30分以上かかる会社は、資料の形に理由があります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 説明資料が後から出る | 比較表の行だけ先に作り、「説明資料待ち」と表示。届いたら要約を足す |
| 説明資料がスキャン画像だけ | 引用なしで要約し、「引用なし」と表示。担当者がページを確かめる |
| PDFにパスワードがかかっている | 処理できない。担当者が会社のIRページから別の版を取る |
| 100ページを超える資料 | 章で分けて2回に分ける |
| セグメントの合計がXBRLと合わない | 調整額を除いても合わなければ ambiguous。決算短信を人が確かめる |
| セグメントの組み替えがあった | 前の期との比較を止め、組み替えの注記を一覧に出す |
| 決算の修正(訂正開示)が出た | 新しい行として足し、元の行に「訂正あり」と印を付ける |
| 前の期の要約が無い(新しく追い始めた会社) | 変化点を出さず、要約だけにする |
| API が応答しない | 受領フォルダに残し、再実行。比較表に書き込めたときだけ処理済みにする |
上の3行は、会社ごとにほぼ決まっています。 説明資料が遅れて出る会社、スライドを画像で貼る会社は毎回同じです。会社の一覧に印を付けておけば、驚く場面は減ります。
5行目と6行目は、比較表の信頼に関わります。 セグメントの組み替えがあった期に前の期とそのまま並べると、増えていないものが増えたように見えます。 組み替えの注記を見つけたら、比較を止めます。
記録を残す
- 受け取った資料(XBRL・決算短信のPDF・説明資料のPDF)と、取得した日時・取得元
- XBRLから読んだ値と、スクリプトが計算した四半期単独の値
- Claude API が返したセグメント数値のJSONと、検算の結果
- 要約の文と、それぞれの引用の文・ページ番号
- 担当者が消した文・書き直した示唆と、その理由
- 経営会議に出した版と、出した日
4つ目を残すのは、次の期の比較に使うためです。 前の期に会社が何と言っていたかを、引用の文のまま持っておけば、言い方が変わったときに並べて見せられます。
5つ目は、指示を直す材料になります。 消された文がどの観点に多いかを見ると、AIが補いがちな観点が分かります。
会社別の要約ファイルは、会社コードと決算期の名前で1期1ファイルにします。 次の期の呼び出し③は、このファイルを名前で引きます。担当者が書き直した版と、AIが出した版を別のファイルで残し、次の期の比較には書き直した版を使います。 AIの版だけを積み上げると、担当者が消した文が次の期の「前の期の発言」として戻ってきます。
04実装レベルの3段階
最小構成では、数値の比較ができません。 要約は作れますが、比較表は手で写すままです。要約の質を確かめるための段階です。 半自動化で、1件180分が60分になり、この段階が本記事の想定です。 数値の転記と説明資料の通読が無くなり、検算と引用の確認、示唆の書き直しが残ります。資料の取得は、半自動化でも担当者が行います。 適時開示情報閲覧サービスが自動取得を控えるよう求めているためです。 本格構成で足すのは、取得の漏れの検知と資料のひな形への差し込みです。 公表予定日の一覧を経営企画が持ち、予定日を過ぎても受領フォルダに資料が無い会社を知らせます。 工数の差は小さく、漏れを防ぐための段階です。
05工数削減シミュレーション
導入後 8件 × 60分 ÷ 60 = 8 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 上場している競合を10社以上追っていて、決算期が異なるために毎月どこかの決算を読んでいる製造業・商社など。比較表の作り方や読みどころが担当者ごとに違い、経営会議へ出す資料の形がそろわない場合。決算短信のXBRLや説明資料のPDFを、公表日に担当者が取得できる場合。
- 競合が非上場で、決算短信や説明資料が公表されていない場合。追う競合が数社で、担当者が全文を読む時間がある場合。説明資料がスキャン画像だけで文字が取り出せない会社が多い場合。なお、競合の業績をどう解釈し、自社の戦略に何を反映するかの判断は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 前の四半期に読んだ競合から5社を選ぶ(数値の多い会社と、説明資料が長い会社を混ぜる)
- その5社について、当時作った比較表の行と要約を取り出す
- 説明資料のPDFを、手元のAIサービスの画面に1社ずつ添付する
- 「6つの観点で要約する。書かれていない観点は記載なしとする。数値は計算せず資料のまま引用する。各文にページ番号を添える」と指示する
- 出てきた要約を当時の要約と比べ、ページ番号が正しいかを開いて確かめる
5社は必ずやってください。 スクリプトを組む前に、「資料だけを根拠に要約できるか」「観点で切ると比較しやすくなるか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の要約と同じ要因が拾えている | XBRLの読み取りとAPIの組み込みに進む |
| 資料に無い理由を補った | 指示の書き方と、引用の有無での見分けで直る。構成は有効 |
| 表の数値を読み違えた | 数値はXBRLから取る設計が必要。 画面での試行では見えない部分 |
3行目が出たら、むしろ設計どおりです。 画面で試すとAIが数値も読むので、桁や期の取り違えが出ます。本番では数値をXBRLに任せるので、ここは消えます。
あわせて、3名の担当者に同じ1社の要約を見てもらってください。 それぞれが「自分ならここを拾う」という点を書き出すと、6つの観点で足りるか、観点を足すべきかが分かります。観点は後から変えると過去の要約と並ばなくなるので、ここで決め切るのが近道です。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 引用と構造化出力を同時に指定して400エラー | 呼び出しを分ける。 数値は構造化出力、要約は引用 |
| 累計と四半期単独を取り違える | 計算はスクリプト。 XBRLの値を基に引き算する |
| 百万円と億円が混ざる | スクリプトで単位を統一し、要約は資料の表記のまま引用 |
| 資料に無い理由を補う | 「記載なし」を許し、引用の無い文を色分けする |
| スキャンの説明資料に引用が付かない | 会社の一覧に印を付け、その会社はページを人が確かめる |
| セグメントの組み替えで比較が狂う | 組み替えの注記を見つけたら前の期との比較を止める |
| 示唆が一般論になる | 自社の重点テーマを渡し、根拠の値か文を必ず添えさせる |
| 示唆が結論のように読まれる | 「仮説」と呼ばせ、すべきとは書かせない |
| 資料の取得を自動化しようとする | 閲覧サービスは自動取得を控えるよう求めている。担当者が取得する |
| 比較表の過去の行を上書きする | 訂正は新しい行で足し、元の行に印を付ける |
| 前の期の要約にAIの版を使う | 担当者が書き直した版を次の期の比較に使う |
上の2行が、作り始めて最初に当たる壁です。 引用と構造化出力を1回で済ませようとするとエラーになり、AIに数値まで読ませると期の取り違えが残ります。どちらも「呼び出しを分ける」で解けます。
下の2行は、運用の信頼に関わります。 閲覧サービスの求めに反する取得や、過去の数字の上書きは、一度起きると比較表そのものが使われなくなります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 競合の公開資料(決算短信と説明資料)、比較表、そして自社の中期経営計画の重点テーマと検討中の打ち手です。
- 自社の方針は要点だけを渡す … 示唆の下書きに要るのは重点テーマの見出し程度です。検討中の買収や提携の名前は渡しません
- 資料の取得は閲覧サービスの求めに従う … スクレイピング等の自動取得は控えるよう求められています。担当者が取りに行く運用を崩しません
- この構成は経営の判断を代替しません … 示唆は仮説の下書きです。何を自社の戦略に反映するかは、経営企画と経営会議が決めます
- 会社の発言と自社の推測を混ぜない … 経営会議の資料で、引用のある文とない文を見分けられる形を保ちます
- 社外に出さない … 比較表と示唆には自社の見方が含まれます。共有の範囲を経営企画と経営会議の出席者に限ります
- 掲載期間の後も確認できるように保管する … 閲覧サービスの掲載は31日分です。取得した資料は自社のフォルダに残し、引用のページを後から開けるようにします
公開情報だから何を渡してもよい、とはなりません。 競合の資料そのものは公開されていますが、どの会社を、どの観点で、どれだけ細かく追っているかは自社の関心そのものです。比較の定義の一覧と示唆の下書きは、自社の資料として扱います。
誤りが起きた場合のリスクは、数字を誤って経営会議に出すことと、会社が言っていないことを会社の発言として出すことの2つです。 前者はAIに数値を読ませると起き、後者は引用の無い文を確かめないと起きます。どちらも設計で分けてあるので、その分け方を崩さないことが要です。
10まず何から始めるか
1週目:比較の定義を作る
比較する指標、自社と近いセグメントの対応表、要約の6つの観点を1枚にします。24社すべてを一度に埋める必要はありません。自社と事業の重なりが大きい8社から始めます。
2週目:5社で試す
前の四半期の説明資料を手元のAIサービスに添付し、6つの観点で要約させます。当時の要約と比べ、資料に無い理由を補っていないか、ページ番号が合っているかを最優先で見ます。
3週目:XBRLを1社分読む
決算短信のXBRLから、売上高・利益・予想を読み、比較表の行を作るスクリプトを書きます。累計と四半期単独の計算もここで入れます。
4週目:要約と比較表をつなぐ
Claude API の引用付きの要約を組み込み、比較表に要約の文とページ番号を書き込むところまで作ります。この時点では示唆の下書きを出さず、要約の一覧だけを見ます。
2か月目: セグメント数値の取り出しと検算、前の期との変化点を足します。検算が合わない会社と引用の無い文の数を毎回数えます。3か月目以降: 示唆の下書きを足し、1件180分が何分になったかを実測します。集中する月に24社分の要約が同じ形でそろい、部長が形をそろえ直さずに経営会議へ出せた時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 適時開示情報閲覧サービスが開示情報をPDFで掲載し、決算短信等の決算情報はXBRL形式またはHTML形式でダウンロードできること。掲載期間が開示日を含めて31日分であること。安定稼働のためスクレイピング等による自動取得は控えるよう求めていること | 日本取引所グループ: 適時開示情報閲覧サービス | 2026-10-07 |
| PDFの1リクエストの上限が32MB、600ページ(1Mトークン未満のコンテキストでは100ページ)であること。パスワードや暗号化の付いたPDFは扱えないこと。各ページがテキストと画像として扱われ、表やグラフを読めること。1ページあたり1,500〜3,000トークンのテキストに加えて画像の分を消費すること。トークン数を事前に数えられること | Claude API Docs: PDF support | 2026-10-07 |
PDFの引用が page_location で返り、cited_text と開始・終了のページ番号(1から数え、終了は含まない)を持つこと。取り出せる文字の無いスキャンのPDFは引用できないこと。引用と構造化出力(output_config.format)を同時に使うと400エラーになること | Claude API Docs: Citations | 2026-10-07 |
構造化出力が output_config.format の type: "json_schema" で指定できること。数値の minimum・maximum などの制約には対応していないこと | Claude API Docs: Structured outputs | 2026-10-07 |
競合の業績をどう解釈し、自社の戦略に何を反映するかは、経営企画と経営会議で判断してください。 本記事は日本取引所グループとAnthropicの公開ページで確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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