AIが決めた値段は談合になる?|独占禁止法で見る線

「値段を決めているのは社内の人間ではなく仕組みのほうなので、談合の話とは関係がないと思っていました」「競争相手の売値を見て自動で合わせているだけなのに、それが違反になることがあるのですか」——値付けの自動化を検討する場で、法務の担当者に向けて必ず出てくる問いです。どちらも、聞き方としては自然です。ただし前提が1つずれています。独占禁止法が見ているのは、値段を決めた道具が人か仕組みかではなく、その値段が他社と関係なく独立して決まったと言えるかどうかだからです。この記事では、不当な取引制限という規定の側から、合意が無くても値が揃ってしまう型、揃ったときに何が問われるか、後から証拠として何が残るか、そして社内で先に引いておく線までを順に整理します。値付けそのもののやり方は扱いません。
カメ先生談合と聞くと、部屋に集まって値段を決める場面を思い浮かべる人が多い。ただ、独占禁止法が禁じている不当な取引制限は、集まったかどうかではなく、互いに値をそろえる意思が通じていたかどうかを見ているんだ。
カメ子集まっていなくても、そろえる意思が通じていることがあるのですか。
カメ先生あるんだよ。競い合っている数社が、同じ提供元の値付けの仕組みを使っている。その仕組みを使えば互いの値がそろうと分かったうえで使い続けていれば、言葉を一度も交わしていなくても、独立して決めた値とは見てもらえない。
カメ子つまり、仕組みを入れた後の運用より、入れる前に何を確かめたかのほうが分かれ目になる、ということでしょうか。
- 独占禁止法が問うのは合意の有無ではなく、意思の連絡があったと評価できるか。明示の合意が無くても成立する
- 公正取引委員会は値が揃う型を4つに整理している。うち2つは、競争相手と一度も連絡を取らなくても起こる
- 後から残るのは指示文と設定と記録。揃ってしまってから独立の判断だったと示す材料は、動かす前にしか作れない
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「仕組みが決めた値段だから関係ない」は、どこで崩れるか
最初に、条文の書きぶりを見ておきます。不当な取引制限を定める独占禁止法第2条第6項は、「契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず」という一文から始まります。名義を問わない、と最初に断っているのですから、紙の協定書があるかどうか、口頭の申し合わせがあるかどうかは入口にすぎません。値付けを人がやったか仕組みがやったかも、同じ理由で決め手になりません。
では何を見るのか。値段が他社と関係なく、自社の判断だけで決まったと言えるかどうかです。これは道具の性能の話ではなく、状態の話です。だから「担当者は誰とも会っていません」という説明だけでは足りません。会っていないのに値がそろい続けているなら、なぜそろったのかを説明できる材料が要ります。
この記事で扱うのは、その説明が必要になる場面と、説明できる状態の作り方です。値付けの自動化そのものは禁じられていない。問われるのは、揃ったときに独立の判断だったと示せるかどうか。何に連動させるか、精度をどう測るか、表示をどうするかといった値決めの技法には立ち入りません。
不当な取引制限は、話し合った証拠だけを見る規定ではない
第2条第6項は、他の事業者と「共同して」対価を決定し、維持し、若しくは引き上げること、と定めています。この「共同して」に当たるためには、事業者の相互の間に意思の連絡があることが必要だ、というのが確立した理解です。ここまでは、言葉の印象どおりです。
問題は、意思の連絡の中身です。東京高等裁判所は平成7年9月25日の判決で、意思の連絡とは、相互に同内容の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味する、としたうえで、互いに拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると判示しました。黙示による意思の連絡と呼ばれるものです。
一方で、すべてが違反になるわけではありません。競争相手の値上げを見て、自分も上げたほうが利益になると判断して上げる。コンタクトが無く、それぞれが独立して決めた結果として同じ水準に至る。これは意識的並行行為と呼ばれ、不当な取引制限の規制対象とはされていません。値がそろったという外形だけでは足りず、独立の行動によって行われたことを排除する事実が要る、という線がここに引かれています。
公正取引委員会が整理した、値がそろう4つの型
この線を値付けの仕組みに当てはめると何が起きるか。公正取引委員会は令和3年3月、研究会の報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」を公表しました。我が国で初めて、この主題を横断的に検討した文書です。報告書は経済協力開発機構が2017年に示した分類にならい、値がそろう過程を4つの型に分けて検討しています。
| 型 | 何が起きるか | 話し合いの有無 | 独占禁止法の見方 |
|---|---|---|---|
| 監視型 | 合意があり、その実施を見張り、抜け駆けに素早く報復するために価格調査の仕組みを使う | 合意が先にある | 合意そのものが不当な取引制限になり得る。仕組みは実施を促す役割 |
| 並行利用(当事者が使う) | 合意した内容どおりに値を付けるよう設定した仕組みを、当事者どうしが使う | 合意が先にある | 同じ。市場が動いても再交渉が要らなくなるぶん、実施が容易になる |
| 並行利用(同じ提供元) | 競い合う数社が同じ提供元の仕組みを使うことで、結果として値がそろう | 連絡を取らなくても起こる | そろうと分かったうえで使っていれば意思の連絡と評価され得る |
| シグナリング | 値上げの合図を出し、競争相手の反応を見ながら受け入れられる水準を探る | 明示の合意はない | 発信が買い手にとって有用な情報かどうかに着目して判断される |
| 自己学習 | 各社が学習する仕組みで値を付けた結果、競争的な水準を上回る値に至る | そろえる意思が無い場合もある | そろったという事実だけでは違反にならない。注視する段階 |
表は上から下へ行くほど、話し合った証拠が薄くなります。上の2つは昔ながらのカルテルに道具が足されただけですが、下の3つは、競争相手と一度も連絡を取らないまま起こり得ます。報告書自身も「事業者が意図せずに違反行為に関与する事例が増えることも懸念される」と書いています。次からは、4つの型を1つずつ見ます。
型1 監視型:合意がある場合に、守らせるために使う
すでに価格カルテルなどの合意がある場合に、その合意の実効性を確保する目的で、競争相手の価格情報を集めたり、抜け駆けがあったときに報復したりするために価格調査の仕組みを使う型です。手作業で他社の売値を集めていた時代は、抜け駆けの発見に日数がかかりました。仕組みを使えば、自動かつ継続的に監視できます。
効き方は、監視そのものよりも抜け駆けする気を失わせるところにあります。すぐ見つかり、すぐ報復されると分かっていれば、合意から外れる理由が無くなる。報告書は、これによって合意が安定的に維持されると整理しています。つまり仕組みは、違反を作るのではなく、違反を長持ちさせる役割を担います。
ここで押さえておきたいのは、報告書が価格調査の仕組みの使用それ自体には問題はないと明記している点です。競争相手の公開されている売値を集めること自体は、通常の事業活動です。問題になるのは用途のほうで、報告書は、取引先に転売価格を守らせるための監視に使われた例として、欧州委員会が扱った家電の製造業者4社の事件と、英国の競争当局が扱った楽器の製造業者の事件を挙げています。
型2 並行利用:同じ道具を数社が使うと、話さなくてもそろう
この記事で最も実務に近いのが、この型です。競い合う複数の会社が、同じ提供元の値付けの仕組みを使うことで値がそろう。提供元を中心に値がそろうので、ハブアンドスポーク型と呼ばれます。ふつうのハブアンドスポーク型は、中心を介した当事者どうしの情報交換が問題になりますが、仕組みが介在する場合は、当事者どうしが情報交換をしない場合や、値をそろえる働きがあることを知らない場合でも値がそろう、という点に特徴があります。
報告書は、これを2つに分けています。1つは、利用する側に値がそろうことの共通の認識がある場合。この場合は直接にも間接にも情報交換が無くても、独立の値付けとは評価できず、意思の連絡が認められて不当な取引制限になり得る、とされています。報告書の言い方を借りれば、仕組みの働きを理解し、互いに値がそろうような仕組みを使っていることを相互に認識して、そろうことを認容したうえで使っている状態です。
もう1つは、利用する側に認識が無く、提供元が主導した場合です。この場合は利用者どうしの意思の連絡は認められませんが、提供元の行為が支配型私的独占になり得ると整理されています。参考になる事例として、欧州司法裁判所が2016年1月に示した先決裁定があります。旅行代理店向けのオンライン予約システムを提供する会社が、割引率を最大3%に制限するようシステムを改修する旨のメッセージを各代理店に送り、上限が統一的に導入された事案で、裁判所は、代理店がそのメッセージを認識していた場合、公に距離を置く、行政当局に報告する、上限を実施しないといった証拠が無ければ、協調的行為に参加していたと推認されるとしました。
型3 シグナリング:値上げの合図を、買い手に見えない形で送る
3つ目は、値上げの意図を発信し、それに対する競争相手の反応を確かめるために仕組みを使う型です。継続的に合図を送り、相手が返す合図を監視し、最終的に同じ値になる合図に行き着く。参考になる事例として、報告書は、米国の司法省が1994年3月に大手航空会社8社と和解合意した、航空券の価格情報システムをめぐる事件を挙げています。各社は販売開始日よりずっと前に値上げを示し、競合の反応を見ながら幅を再検討し、互いに受け入れ可能な幅を特定していました。
手作業でこれをやると、先に値上げを顧客に示した会社が客を失います。仕組みを使うと事情が変わります。送信と反応の確認を高速に自動でできるので、顧客には判別できない態様で、競争相手にだけ合図を送ることが可能になる。報告書は、競争相手の価格調査の仕組みだけが拾えるように、顧客が見ていない夜間に非常に短時間だけ値上げの合図を出す、という例を挙げています。
では、公表と合図の線引きはどこにあるか。値上げを公にすること自体は通常の事業活動であり、それだけで不当な取引制限になることはありません。報告書が着目点として示すのは、その発信が買い手にとって本当に有用な情報になっているかです。欧州委員会が2016年7月に扱った定期コンテナ船の事件では、14社が運賃の一斉引上げの意向を実施予定日の3週間から5週間前に公表し、その公表が延期・変更され、他社の公表と同一になる場合がありました。委員会は、これが買い手に新しい運賃の完全な情報を与えるものではなく、互いの意図を探り合いながら調整することを可能にする、との懸念を示しています。
型4 自己学習:そろったという事実だけでは、違反にならない
4つ目は、各社が学習する仕組みで値を付けた結果、そろえる意思が無いのに競争的な水準を上回る値に至る、という型です。ここは誤解が広がりやすいところなので、報告書の書きぶりをそのまま押さえます。まず、この型の具体的な事例は、報告書の時点で国内外ともに確認されていません。根拠として挙がっているのは経済分析で、強化学習の一種を用いた価格設定の仕組みどうしに繰り返しゲームをさせたところ、互いに競合するのではなく、一貫して競争的な価格を上回る価格を設定することを学習した、という結果です。
報告書は、その結果が現実の市場で実現する可能性について疑問も併記しています。1つは、均衡に至るまでに相当数の相互作用が必要とされる点。現実の会社が、その間の損失を長期間にわたって許容できるかには疑問があります。もう1つは、分析が競争環境の安定を前提にしている点で、現実の競争環境はもっと不安定です。加えて、強化学習が実際の値付けに使われる事例自体がほぼ無い、とも書かれています。
法的な扱いも明確です。複数の仕組みが互いに自律的に値付けをした結果、単に値がそろったにすぎない場合は、その事実のみでは不当な取引制限にならないと整理されています。ただし例外があり、競争関係にある会社どうしが、それぞれの仕組みを使えば値がそろうと相互に認識しながら使っている場合には、意思の連絡が認められる可能性がある、とされています。結局ここでも、分かれ目は認識の側にあります。
原因1:競争相手の売値を取り込む設計そのものが引き金になる
ここからは、実務で危うくなる設計を3つに分けます。1つ目は入力です。値付けの仕組みは、競争相手の売値を材料にすると精度が上がります。だから多くの製品が、その機能を備えています。ところが同じ機能が、値がそろった理由を説明できなくする働きも持ちます。他社の売値に反応する設計を自分で選んだ以上、そろったのは偶然だ、とは言いにくくなるからです。
実際に手を打っている会社は、まだ多くありません。公正取引委員会が令和6年10月から令和7年1月にかけて東証プライム上場1,643社を対象に行い869社が回答した調査では、アルゴリズムの活用に伴う独占禁止法違反リスクを念頭に何らかの取組を実施している企業は4.0%、社数にして35社でした。同じ調査で、労務費等の転嫁については74.1%が取り組んでいます。値付けの側だけが手つかずになっている、と読める数字です。
- 競争相手の個別の売値をそのまま学習させる:値がそろったときに、独立して決めたと説明する材料が社内に1つも残らない
- 値付けの担当者が、同業の同じ役割の担当者と日常的に連絡を取っている:仕組みの働きとは別に、意思の連絡を推認させる事実として積み上がる
- 外部の調査会社を通じて競争相手の個別のデータを取り寄せる:間に人を挟んでも、受け取っているものは同じ
- 同じ提供元を使っている同業の社名を営業資料で確かめ、そのまま導入する:そろうと分かったうえで使い続けた、という状態に近づく
- 値がそろった理由を誰も説明できないまま動かし続ける:止める手順が無いので、気づいた後の打ち手も無くなる
公正取引委員会が令和7年6月に改訂したコンプライアンスの手引には、他社の取組例が載っています。通販サイトの運営部門で他社の同じ商品の価格を調べる仕組みを入れているが、その部門の役職員には他社の同じ部門の役職員と接点を持たないよう指導している、というもの。もう1つは、社外のコンサルタントに市場調査を頼む際、競争事業者の個別具体的なデータは取得せず、統計データのみの取得にとどめているというものです。どちらも、入力と接点を絞る打ち手です。
原因2:値付けを外の1社に、まとめて預けている
2つ目は、提供元の集中です。報告書は、現時点では相当数の事業者が同一の仕組みを使うようになる懸念は少ないとしつつ、脚注で但し書きを付けています。限られた一部の分野では、特定の1社がその分野の開発をほぼ一手に担っており、同じ事業者が競合する複数の会社に提供しているケースもある、というものです。自社の業界がその一部に当たるかどうかは、自分で確かめるしかありません。
確かめ方は単純で、同業の上位数社が使っている値付けの仕組みの提供元を、名前で並べてみることです。並べた結果が1社に寄っていたら、型2の入口に立っています。導入をやめる必要はありませんが、そろうことを認識したうえで使い続けている、と外から見える状態になったことは押さえてください。
提供元の側に、値をそろえたくなる誘因が働く場合もあります。報告書は、市場の大半の仕組みを提供している会社が、利用者との間で売上の一定割合を受け取る契約を結んでいる場合を挙げています。利用者の売値が高いほど自分の取り分も増えるので、そろえる働きを仕込む側に、経済的な理由が生まれる。同じ構造は、出店者の売上に応じて手数料が上がる通販の運営事業者にも生じ得る、と指摘されています。だから提供元を選ぶときには、価格の設定方針が何に連動しているのかを、契約の形とあわせて確かめておく必要があります。
原因3:中身を説明できない道具を、説明しないまま使っている
3つ目は、説明できるかどうかです。報告書は、利用する側が動作の詳細を理解できない仕組みについて、コラムを立てて論じています。海外では、仕組みを自社の従業員が協調的行為に従事した場合と同視して、その行為も利用者の行為と捉え得るとする考え方と、開発や活用が萎縮することに配慮して、注意義務や予見可能性の合理的な基準に反する場合のみ責任を負うとする立場の両方がある、と紹介されています。
日本の現時点の整理としては、今後、仕組みの動作をもって「共同して」を満たすと解釈する可能性も残されている、という書きぶりです。そのうえで報告書は、そもそも中身が分からないまま使って買い手に損害を与える可能性を生むことは、ガバナンス上適切ではないと述べています。ここは法の解釈の話というより、使う側の姿勢の話です。
報告書が望ましいとしている対応は2つです。1つは、推論の根拠を人が理解できるようにする技術などを用いて、動作を可能な限り説明できるようにしておくこと。もう1つは、独占禁止法上問題となり得る動作が判明した場合に、その動作を速やかに止められる設計にしておくことです。どちらも導入の後では足せません。要件として最初に書いておく種類のものです。
後から、何が証拠として残るか
疑いを持たれたときに見られるのは、担当者の記憶ではありません。仕組みに与えた指示文、設定した値、いつ誰が変えたかの記録、出力の履歴、そして社内の打ち合わせの記録と連絡のやりとりです。値がそろったという外形は誰にでも見えるので、争点になるのは、独立の行動だったと示す側の材料がそろっているかになります。
材料の作り方は難しくありません。値付けの方針を決めた会議の記録に、何を材料にすると決めたか、何を材料にしないと決めたかを1行ずつ残す。設定を変えたときに、変えた理由を添える。出力を採用しなかったときに、採用しなかった理由を残す。採用しなかった記録のほうが、独立の判断だったことを強く示します。仕組みの言うとおりにしか動いていなければ、判断していたのは誰か、という問いに答えられません。
逆に、後から作れないものもあります。導入前の比較検討の資料、提供元の選定理由、入力に何を使うかを決めた文書。これらは意思決定の時点にしか存在しないので、後から用意すると、用意したこと自体が疑いを深めます。次の節から、動かす前にやっておくことに移ります。
対策1:社内で先に引いておく線
線を引く作業は、法務の仕事というより、値付けを担当する部署と情報システムの部署の仕事です。専門家がいないと始められないと考えると、いつまでも始まりません。次の5つは、いま値付けの自動化を検討している部署が、その場で決められる範囲です。
公開されている統計や自社の実績はよいが、競争相手の個別の売値は直接入れない、というように、使う材料と使わない材料を対にして書きます。外部の調査会社を経由する場合も同じ基準を適用することを、あわせて明記します。
値付けの権限を持つ役職員が、同業の同じ役割の人と接点を持つ場面を洗い出し、業界団体の会合も含めて記録の残し方を決めます。禁じるところまで踏み込むかは会社によりますが、記録は必ず残します。
値付けを自動化する製品や仕組みを作るとき、企画の段階、開発の段階、世に出す段階のそれぞれで、法務を含む管理部門が懸念の有無を確認します。3段階に分けるのは、後戻りの費用を小さくするためです。
その値になった理由と、参照した材料を必ず出させます。人が採用したか採用しなかったかと、その理由を1行で残します。ここが、独立の判断だったと示す材料の中心になります。
競争相手と値がそろう動きが出たときに、誰の判断で止めるのかを先に決めます。止めるとは、仕組みを切ることでも、手動の値付けに戻すことでもかまいません。手順が文書になっていることが要点です。
5つのうち、後から足せないのは4番目と5番目です。根拠を出させる設計と、止められる設計は、製品を選ぶ段階の要件になります。選定の条件に「根拠を出せること」と「止められること」を入れておくだけで、後の選択肢が大きく変わります。
対策2:人が確かめる範囲を、動かす前に決める
確かめる範囲を後から決めると、結局すべてを人が見直すことになり、自動化した意味がなくなります。先に3つに絞ります。入力に何が入っているか、出力に根拠が書かれているか、そして世に出す値を誰がいつ決めたか。それ以外は記録から追える、という線を引いておけば、確認の場は短く済みます。
- 入力に使う価格の出どころを一覧にし、競争相手の個別の売値が含まれていないかを、動かす前に人が確かめる
- 出力には、その値になった理由と参照した材料を必ず書かせる。理由の無い出力は採用しない
- 実際に世に出す値を決める判断は、仕組みの出力を根拠にしない。決めた人と決めた日を記録に残す
- 同業と値がそろう動きが出たときに誰が止めるかを先に決め、止める手順を文書にしておく
ここで気をつけたいのは、AIに値付けの案を出させること自体は否定されていない、という点です。否定されているのは、出てきた値をそのまま世に出す判断まで委ねることです。仕組みは、なぜその値なのかを法的な意味では説明しません。説明できるのは、材料と方針を決めた人だけです。
運用としては、四半期に一度、入力の一覧と、採用しなかった出力の件数と、同業との値の動きを並べて短く見る場を作れば足ります。長い会議にすると続かず、続かない仕組みは半年後に誰も更新しない資料になります。
対策3:迷ったときの相談先と、疑いが出たときの道
自社の設計が線の内側にあるか判断がつかないときは、公正取引委員会に相談する道があります。手段は2つで、性質がかなり違います。1つは事前相談制度で、これから行おうとする具体的な行為について、申出書の受領から原則30日以内に書面で回答が得られます。ただし申出者の名前と相談・回答の内容は原則として公表されます。
もう1つは一般相談です。電話や来庁で相談内容を説明し、原則として口頭で回答を受けるもので、内容は原則として非公表です。相談者の負担と秘密の保持に配慮して設けられている枠です。手元の設計を確かめたいだけならこちらから始めるのが現実的で、社内に専門の部署が無い会社には、全国の商工会議所と商工会の相談窓口2,200か所を使う独占禁止法相談ネットワークもあります。
疑いが出てからの話も、先に知っておく価値があります。カルテルや入札談合について自ら関与を報告した場合に課徴金が減免される課徴金減免制度があり、一方で、違反の疑いのある行為を自主的に直す確約手続は、入札談合や価格カルテル等を対象としません。金額の目安も押さえておきます。不当な取引制限の課徴金の算定率は売上額等の10%で、違反した会社とそのグループ会社がすべて中小企業の場合は4%です。令和7年度には、延べ36名の事業者に総額95億5373万円の課徴金納付命令が出ています。
よくある質問
競争相手の公開されている売値を見て、自動で追随するだけでも違反になりますか
それだけで違反になるわけではありません。競争相手の値上げを見て、自分も追随したほうが利益になると独立して判断した結果として同じ水準に至ることは、意識的並行行為として規制の対象外です。分かれ目は、追随を選んだ判断が本当に独立していたと示せるかどうかです。追随の条件を自分で決め、その理由を記録に残し、採用しなかった場面もあるという形になっていれば、説明できる状態に近づきます。
値付けの仕組みを提供している側にも、責任が及ぶことがありますか
あります。利用する側に値がそろうという認識が無くても、市場で使われる仕組みの大半を提供している会社が、利用者に自社の仕組みを採用させ、それによって複数の利用者の値をそろえる場合には、支配型私的独占として違反になり得る、と整理されています。海外では、顧客リストを共有させる仕組みを開発・導入した販売事業者が、違法行為の促進者として参加していたと認定された例もあります。
社内に法務の専門部署がありません。何から手を付ければよいですか
2つだけ先にやってください。1つは、値付けの仕組みに入れている材料の一覧を作り、競争相手の個別の売値が入っていないかを確かめること。もう1つは、同業の上位数社が使っている提供元を名前で並べ、1社に寄っていないかを見ることです。どちらも半日で終わります。この2つで引っかからなければ、型2の入口からは離れています。判断がつかない部分は、一般相談か商工会議所の窓口に持ち込めます。
結果として競争相手と同じ値になってしまいました。どう動けばよいですか
まず記録を保全します。そのときの設定値、指示文、出力の履歴、値を決めた経緯の記録です。次に、なぜそろったのかを説明できるかを確かめます。原材料の価格が同時に動いたなど、独立に説明できる理由があるなら、それを書いた記録を残します。説明がつかず、同じ提供元の仕組みを同業も使っていると分かった場合は、そのまま動かし続けないでください。止めたうえで、相談に持ち込むのが順番です。
まとめ
要点は、値付けを自動化してよいかどうかではなく、値がそろったときに、独立して決めたと示せる材料が社内にあるかどうかです。独占禁止法は名義を問わないと最初に断っており、見ているのは道具ではなく状態です。公正取引委員会が示した4つの型のうち2つは、競争相手と一度も連絡を取らないまま起こります。だからこそ、入力に何を使うか、提供元がどこに寄っているか、根拠を出せるか、止められるかを、動かす前に決めておく価値があります。まずは自社が使っている材料の一覧と、同業の提供元の並びを作ってみてください。半日で終わるうえに、この2枚が出た時点で、社内の議論が具体の話に変わります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
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