AIの責任者は情報システム部門ではない|決める人を置く体制

AIの責任者は情報システム部門ではない|決める人を置く体制

「AIのことは情報システム部門に任せています」「まず情シスで試して、問題がなければ全社に広げる予定です」——AI活用の相談で最初に決まるのは、たいていこの一行です。決め方としては自然に見えます。ところが、公的な指針が使う側に求めている事項を並べてみると、その多くは情報システム部門の職務の外にあります。窓口を1つ置いたことは、体制を決めたことではありません。本当は、決める人と、止める人と、説明する人を分けて名前を置くところまでが体制です。この記事では、なぜ情報システム部門だけでは回らないのかを指針の記載と調査データで確かめ、役割ごとの持ち分の一覧、決裁の階段、止める権限の置き方、外への説明の窓口、そして立ち上げの半年の順番までを見ていきます。


カメ先生カメ先生

AIの体制づくりって、いちばん詳しい部署に任せることだと思われがちなんだけど、本当は「誰が決めて、誰が止めて、誰が説明するかを分けること」なんだ。


カメ子カメ子

1つの部署でまとめて持ったほうが、話が早いのではないでしょうか。


カメ先生カメ先生

早いのは最初だけでね。使ってよい用途かどうかは事業の判断、権利や表示は法務、教育は人事。1つの部署に寄せると、その部署の権限が届かない領域が空欄のまま残る。


カメ子カメ子

詳しいかどうかではなく、権限が届くかどうかで分ける、ということですね。


この記事のポイント
  • 情報システム部門の職務に収まるのは安全と機密の2項目。用途の是非、説明、教育は権限の外にある
  • 公的な指針は経営層の責任だと書き、責任者を設定することを求めている。窓口を置くこととは別
  • 止める権限は、能力と訓練と権限が揃った人に置く。見ているだけの人には止められない

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目次

ルールは作られたのに、決める人がいない

まず現在地を数字で確認します。2026年1月に実施された企業IT利活用動向調査2026では、AI活用のガバナンス体制について、全社的なAI利用のポリシーやガイドライン、倫理規程を策定しているという回答が最も多く、3分の1以上を占めました。これに専任組織や委員会の設置、経営レベルでの定期的な見直しを合わせると、全社レベルでの組織的な体制を整えている企業は約7割に達すると報告されています。一方で、部門ごとにガイドラインはあるが統一されたポリシーはない、AI利用は各部門に任されており全社的な統制はない、という回答も合わせて2割以上残っています。

ただ、体制を整えたという回答の中身は薄い可能性があります。2026年8月6日に公表された別の実態調査で、生成AIを業務で使っている企業の責任者・担当者548名に投資している領域を聞くと、社員向けの研修・教育が48.9%、利用ガイドライン・ルールの整備が48.7%で上位に並びました。これに対し、利用ログ・承認・例外フローの設計は11.3%です。ルールを書くところには半数近くが手をつけているのに、そのルールを日々回す仕組みには1割しか投資していません。この調査の回答者は生成AIを使っている企業の関係者に限られており、日本企業全体の割合ではないという注記が原典に付いています。

何が足りていないのかも、同じ調査群が示しています。企業IT利活用動向調査2026で、AIガバナンスにおいて特に強化が必要と感じる領域を聞くと、最も高かったのは「人間による最終判断の確保、AI出力の根拠や判断過程を説明できる体制」で35.3%でした。次に「AIシステムに固有のリスクを特定・評価・軽減する仕組み」が続きます。最終判断と説明が最大の課題として挙がっているというのは、決める人と説明する人が置かれていないという意味です。ツールの選定や接続の話ではありません。

指針が使う側に求めている事項を、並べてみる

なぜ情報システム部門だけでは回らないのか。感覚で語らず、公的な指針が使う側に何を求めているかを列挙して確かめます。総務省と経済産業省が2026年3月31日に公表したAI事業者ガイドライン第1.2版は、第5部でAI利用者に関する事項を挙げています。第1.1版は2025年3月28日の公表で、以下の項目は両版に共通して置かれています。

求められているのは、大きく7つです。提供元が定めた留意点を守って想定された範囲内で使うこと、想定された仕様どおりに動いているかを確認すること、適切なデータを入力すること。入力とプロンプトに含まれる偏りに留意し、責任をもってAIの出力結果の事業利用判断を行うこと。個人情報を不適切に入力しないこと。機密情報を不適切に入力しないこと。出力結果を事業判断に使ったときは、その結果を関係する相手に合理的な範囲で情報提供すること。そして関係する相手への説明です。

最後の説明の項目が、いちばん重い内容を含みます。指針は、AIの出力結果を特定の個人や集団に対する評価の参考にする場合には、AIを利用している旨を評価対象となる本人に通知し、求めに応じて説明責任を果たすことを求めています。さらに、利用するAIの性質に応じて、関係する相手からの問合せに対応する窓口を合理的な範囲で設置し、提供元とも連携して説明と要望の受付を行うことも挙げられています。ここまで並べると、この一覧が1つの部門に収まらないことが見えてきます。

情報システム部門の持ち分は、この7つのうち2つ

先の7項目を職務権限で振り分けます。情報システム部門の職務に素直に収まるのは、機密情報の不適切な入力を防ぐこと、そして提供元が定めた留意点やセキュリティ上の注意を守る運用を整えることの2つです。ここは同部門の本来の持ち分であり、社内の誰よりも判断できます。残る5つは、同部門が判断してよい範囲を超えています

たとえば「想定された仕様どおりに動いているかを確認する」は、一見すると情報システム部門の仕事に見えます。しかし確認できるのは、動作が止まっていないか、応答が返っているかまでです。応募書類の絞り込みに使っているAIが妥当な結果を返しているかどうかは、その業務の中身を知っている部門でなければ判定できません。動いているという確認と、正しく効いているという確認は別物です。

もっとはっきりしているのが「責任をもって出力結果の事業利用判断を行う」の項目です。この用途を続けてよいか、この結果を根拠に決めてよいかは事業の判断であり、情報システム部門にはその決定権がありません。権限がない人に責任を割り当てると、判断は保留され続けます。よくある詰まり方が「情シスから止められていないので、たぶん大丈夫」という状態で、これは誰も許可していない状態と同じです。

誰の持ち分でもなくなる3つの領域

情報システム部門に窓口を寄せると、具体的に3つの領域が空欄になります。1つ目は用途の是非です。この業務にAIを使うこと自体をどう考えるか、どの範囲まで任せるかは事業側の判断で、情報システム部門は可否を答える立場にありません。相談された側は答えを持っていないので、判断は先延ばしされます。

2つ目は権利と表示です。学習や入力に使う素材の権利、生成物を外に出すときの表記、契約上の取り決め。指針も、関係者間の責任について契約などで責任の所在を明確化することを求めています。契約と表示は法務や広報の職務であり、技術部門が単独で決めれば後で覆ります。3つ目が教育です。指針は、組織内でAIに関わる者が十分な水準のAIリテラシーを確保するために必要な措置を講じることを求め、あわせて働き方の変化に対する教育やリスキリングの検討も挙げています。

この3つ目は数字にも現れています。企業IT利活用動向調査2026では、AI活用を進める上での導入前の課題として、開発や運用ができる人材やスキルの不足に次いで、従業員のAIに関する教育やリテラシーの不足が挙がりました。教育の設計と実施は人事の職務です。情報システム部門が研修資料を作ることはできますが、対象者を決め、時間を確保し、受講を業務として扱うところは人事の権限がなければ動きません。

指針は、経営層の責任だと書いている

では誰が持つのか。ここも指針に書かれています。同ガイドラインは第1部で、経営者を含む事業執行責任者について、その職務を全うするために、基本理念と指針を踏まえて事業戦略と一体でAIを活用する際のリスク対策を検討・実践し、AIの安全安心な活用を推進することが重要であると述べています。技術部門の担当者ではなく、事業を執行する立場に宛てた記述です。

AIガバナンスの構築を扱う節でも、同じことがより直接に書かれています。効果的な取組とするためには「経営層の責任は大きく、そのため、リーダーシップを発揮することが重要である」。続けて、短期的な利益の観点からガバナンスの構築を単なるコストと捉えるのではなく、持続的成長と中長期的な発展を志向した先行投資として捉えることが重要であるとあります。そのリーダーシップの下で、各組織の戦略と企業体制にガバナンスを落とし込むという順序です。

さらに具体的な要求もあります。共通の指針のうちアカウンタビリティの項には、責任者の明示として「各主体においてアカウンタビリティを果たす責任者を設定する」と書かれています。窓口を置くことと、責任者を設定することは別の作業です。窓口は問い合わせを受ける場所、責任者は説明を引き受ける人です。相談先を情報システム部門にしたまま責任者を設定していない状態は、指針が求めている状態にはなっていません。

止める権限は、能力と訓練と権限が揃った人に置く

体制で最も抜けやすいのが、止める権限です。ここは欧州の規則の書き方が参考になります。欧州のAI規則(規則番号2024/1689、2024年6月13日)は第26条第2項で、高リスクにあたるAIを業務に使う側に対し、人間による監督を、必要な能力と訓練と権限、そして必要な支援を備えた自然人に割り当てることを求めています。第26条の適用開始は2026年8月2日です。日本国内の企業に直接かかる規定ではありませんが、置き方の考え方としてそのまま使えます。

注目したいのは、能力と訓練だけでなく権限が並べて書かれている点です。中身を理解していて訓練も受けているが、止める決定はできない立場の人に監督を割り当てても、この要求は満たせません。見ている人と止められる人が別なら、監督は成立しないということです。監視の担当者が異常に気づいてから、上位者の承認を得て、その上位者が事業側に相談して、という経路をたどる設計は、実質的に止まらない設計です。

実務に落とすと決めることは3つです。何を見て止めると判断するか、誰が単独で止められるか、そして止めた後に誰が再開を決めるか。3つ目を止める人と同じにしないのが要点で、止めた人が再開も決める形にすると、止めることの負担が重くなりすぎます。止める権限は現場に近い側に置き、再開の判断は決裁の階段を1段上げる。この非対称にしておくと、止めることのハードルだけが下がります。

決める人、止める人、説明する人を分ける

体制の骨格は3つの役割です。決める人は、その用途を採るかどうかと範囲を決めます。止める人は、動いているものを一時的に停める判断をします。説明する人は、社外や社内の関係者から問われたときに答えます。この3つを1人に持たせると、止める判断が自分の説明責任と直結するため、止めにくくなります。分ける理由は権限の分散ではなく、止めやすさの確保です。

兼務してよい組み合わせと、避けたい組み合わせがあります。決める人と説明する人の兼務は現実的で、多くの会社ではこれが同じ人になります。避けたいのは、止める人と決める人の兼務です。自分が採用を決めた用途を自分で止めるのは、心理的にも立場的にも難しい。止める人は、その用途の成果に責任を負っていない立場から選ぶのが実務的です。

そして3つの役割の全員に共通する前提を1つ置きます。AIの出力は案であって決定ではない、という扱いです。指針も、AIに単独で判断させるだけでなく適切なタイミングで人間の判断を介在させることを求め、その際に人間の判断が自動化バイアス、つまり自動化されたものへの過度の信頼や依存に左右されない対策を講じるべきだと書いています。決裁の書式の上で、AIが出した内容は根拠資料の1つとして扱い、決定欄には必ず人の名前が入る形にします。人が確認する範囲は、案件が増えてから決めるのでは間に合いません。

役割ごとの持ち分の一覧

ここまでを1枚にまとめます。会社の規模や業種で置き先は変わりますが、判断できる範囲の列を先に書いてから置き先を決めると、肩書きに引きずられずに割り当てられます。契約で守る人の持ち分には、指針が別に挙げている2つも入ります。提供元から受け取ったそのAIについての文書を適切に保管して活用すること、そして提供元が定めたサービス規約を守ることです。文書の保管は技術の話に見えますが、規約の解釈と遵守の確認は法務と調達の職務です。

役割持ち分判断できる範囲置き先の例
決める人用途を採るかどうか、任せる範囲、優先順位事業として続けるかどうかを決められる経営層、事業部門の責任者
止める人動いているものを停める、保留に落とす単独で停止を宣言できる。再開は決めない業務品質の担当、内部監査に近い立場
説明する人社外と社内の問いに答える、窓口を持つ会社の見解として答えられる法務、広報、顧客対応の責任者
技術で支える人安全な使い方の整備、機密の線引き、動作の確認使い方の可否を技術面から答えられる情報システム部門
育てる人対象者の選定、教育の実施、業務時間の確保受講を業務として扱う決定ができる人事、人材開発
契約で守る人委託先との取り決め、権利関係、表示の方針契約条項として書き込める法務、調達
まとめる人案件を集める、材料をそろえる、決まったことを配る決めない。整えるだけ事務局、企画部門
  • 1人が複数の役割を兼ねてよいが、決める人と止める人の兼務は避ける
  • 一覧は既存の職務の記述に足す形で書く。新しい役職を作る必要はない
  • 空欄の役割を残さない。空欄があると、その領域は誰も見ていないという意味になる

決裁の階段は3段で足りる

持ち分を置いたら、案件をどこまで上げるかを決めます。段は3つで足ります。1段目は現場の判断で、すでに許可された用途の範囲内で使う場合。2段目は部門の責任者で、新しい用途を始める場合や、生成したものを社外に出す場合。3段目は横断の会議体で、人の評価に関わる場合、顧客のデータを外部のAIに渡す場合、対外的な説明が必要になる場合です。

階段を4段以上にすると案件が上がらなくなります。段の数ではなく、上げる基準を用途の性質で書くことが効きます。金額で線を引くと、費用は小さいのに影響が大きい用途が現場判断で通ってしまいます。逆に、影響の小さい社内向けの下書き作成に3段目を求めると、現場は申請せずに使い始めます。

決める人上げる基準となる用途の性質
1段目現場の担当者と直属の上司すでに許可された用途の範囲内。社内向けの下書き、要約、検索の補助
2段目部門の責任者新しい用途を始める。生成したものを社外に出す。取引先の情報を扱う
3段目横断の会議体と決める人人の評価に関わる。顧客の個人データを渡す。対外的な説明が必要になる

基準は文章で長く書かず、この3行に収めます。長い基準は読まれません。判断に迷う案件が出たら、その案件を基準の例として1行足す。基準は最初に完成させず、迷った案件で育てていくほうが実態に合います。

外への説明は、誰がするのか

平時に決めておくと効くのが、外から問われたときの担当です。指針は使う側に対し、出力結果を事業判断に使ったときはその結果を関係する相手に合理的な範囲で情報提供すること、そして関係する相手からの問合せに対応する窓口を合理的な範囲で設置し、提供元とも連携して説明と要望の受付を行うことを求めています。窓口の設置は「必要になったら考える」では間に合いません。問い合わせは、こちらの準備が整う前に来ます。

説明を求める相手は3種類に分かれ、それぞれ答える人が違います。取引先からの点検や確認、顧客や利用者からの問い合わせ、そして自社の従業員からの問いです。3つ目は見落とされがちですが、規定として存在する国もあります。欧州のAI規則は第26条第7項で、職場で高リスクにあたるAIを使う雇用者に対し、対象となる労働者とその代表に、当該AIの利用対象となることを知らせることを求めています。これは人事と労務の持ち分で、情報システム部門の職務ではありません。

評価に関わる場面はさらに重くなります。指針は、AIの出力結果を特定の個人や集団に対する評価の参考にする場合には、AIを利用している旨を対象となる本人に通知し、自動化バイアスも踏まえた人間による合理的な判断のもとで、求めに応じて説明責任を果たすとしています。採用や人事評価の補助に使うなら、通知の文面と、問われたときに答える人を、使い始める前に決めておく必要があります。使い始めてから決めると、最初の1件が事故になります。

事務局は、決める人ではない

横断の体制を作るとき、実際に手を動かすのは事務局です。ここで役割を取り違えると、体制は動かなくなります。事務局の仕事は3つに限ります。案件を集めること、判断の材料をそろえること、決まったことを配ること。事務局に決めさせると、事務局が全社の不満を1人で受け止めることになります。そして受け止めきれなくなった時点で、判断は止まります。

材料をそろえるという仕事の中身も決めておきます。案件ごとに、用途、扱うデータの種類、出力の使い道、外に出るかどうか、影響を受ける相手、そして止める合図の担当。この6つが揃っていない申請は会議に載せない、と決めておくと会議が短くなります。会議で議論すべきは可否であって、事実関係の確認ではありません

先の実態調査で、利用ログや承認、例外の流れの設計に投資しているのが11.3%にとどまっていたのは、この事務局機能が置かれていないことの現れとも読めます。同じ調査では、生成AIの利用記録が組織横断で残り後から追跡できるという回答も13.0%でした。決まったことを配り、記録を残す担当がいなければ、決めた内容は数か月で失われます。会議体があるかどうかではなく、この3つの仕事に人が付いているかどうかで見ます。

立ち上げの半年を、置く順番で区切る

最後に時間軸です。半年を6つに区切り、毎月1つだけ置いていきます。同時に全部を整えようとすると、どれも半端になります。順番の原則は、名前を先に置き、仕組みは後から足すことです。

STEP1
1か月目:責任者を1人決める

アカウンタビリティを引き受ける人を1人決め、社内に知らせます。兼務でよく、専任にする必要はありません。ここが決まらないうちに会議体を作ると、会議は情報交換の場になります。

STEP2
2か月目:持ち分の一覧を書く

役割ごとの持ち分を1枚に書き、既存の職務の記述に足します。空欄になった役割があれば、そこが今いちばん危ない領域です。新しい役職は作らず、今ある職務に割り当てます。

STEP3
3か月目:決裁の階段を通してみる

実際の案件2件から3件を、3段の階段に載せて通します。基準の文言を直すのはこの段階です。紙の上で完成させず、通してから直します。

STEP4
4か月目:止める権限を置いて、一度使う

止める人を決め、訓練として一度止めてみます。止めた後に誰が再開を決めるかも同時に確かめます。使ったことのない権限は、必要な場面でも使われません。

STEP5
5か月目:外への説明の窓口を決める

取引先、顧客、従業員の3方向について、答える人と最初の一次回答の期限を決めます。文面の雛形は要りません。誰が答えるかだけ決めておきます。

STEP6
6か月目:見直しの周期を決める

持ち分の一覧と決裁の基準を、いつ誰が見直すかを決めます。半期に一度で足ります。決めた日付をそのまま予定に入れるところまでやって、立ち上げは終わりです。

この6つに、ルールの文面づくりは入っていません。規程の整備は別の作業として並行して進めればよく、体制の立ち上げは、規程の完成を待つ必要がありません。むしろ責任者と持ち分が決まっていないまま書いた規程は、誰が運用するかが書けないまま残ります。

兼務でどこまで回るか

専任の組織を作れる会社は少数です。現実的には兼務で回すことになるので、工数の目安を持っておきます。決める人は月に半日、案件の決裁と見直しに使います。説明する人は問い合わせが来たときだけで、平時はゼロです。止める人は週に30分、指標を見る時間を取ります。最も重いのは事務局で、案件が月に5件程度なら月2日から3日が目安です。

兼務で崩れる型は決まっています。事務局が1人のときです。その1人が異動や休職で抜けると、案件の集約と記録が同時に止まり、決まったことがどこに書いてあるかも分からなくなります事務局だけは2人にしておく。もう1人は普段は何もしなくてよく、記録の置き場所を知っていることが仕事です。

  • 決める人は事業側の責任者が兼務する。技術に詳しい必要はない
  • 止める人は成果責任を負っていない立場から選ぶ。品質や内部監査に近い部署が向く
  • 説明する人は法務と広報で分担する。社内向けと社外向けで担当を分けてよい
  • 事務局は2人置く。案件の集約と記録の置き場所を、2人が知っている状態にする
  • 情報システム部門は技術で支える人として残す。窓口ではなく、判断材料を出す役に置き直す

形だけの体制になっている兆候

置いたつもりで動いていない状態は、外から見て分かります。判断の材料が上がってこない、議事録に持ち帰りが並ぶ、止めた実績がゼロ。この3つが揃っていたら、体制は名前だけです。特に止めた実績がゼロというのは、止める権限が実際には無いことの証拠として読みます。

もう1つの兆候が、外から問われたときの反応です。取引先から利用状況の確認が来たとき、社内で答える人を探し始めるなら、説明する人が決まっていません。指針は、出力の誤りなどについて指摘を受け付ける機会を設け、定期的かつ客観的なモニタリングを実施することも挙げています。受け付ける機会があるかどうかは、問われる前に自分で確かめられます。

  • AIの窓口を情報システム部門に置いて、体制を決めたことにする
  • 会議体を作ることを先に決め、責任者を1人置くことを後回しにする
  • 事務局に可否の判断まで持たせる。決める人がいない会議は結論が出ない
  • 止める権限を管理者だけに置く。気づく人と止められる人が別だと止まらない
  • AIの出力をそのまま決裁の結論欄に書く。決定には必ず人の名前を入れる
  • 対外的な説明の担当を、問い合わせが来てから探す。最初の1件が事故になる
  • 持ち分の一覧を作らず、詳しい人が全部見ている状態を体制と呼ぶ

まとめ

AIの責任者を情報システム部門に置くと、用途の是非、権利と表示、教育の3つが誰の持ち分でもなくなります。根拠は感覚ではありません。公的な指針が使う側に求めている事項を並べると、機密情報の扱いと安全な使い方の整備は同部門の職務に収まりますが、出力結果の事業利用判断、関係者への情報提供と説明、問合せ窓口の設置、そしてAIリテラシーの確保は、同部門の権限の外にあります。

指針は責任の置き先も書いています。経営者を含む事業執行責任者が事業戦略と一体でリスク対策を検討・実践すること、AIガバナンスの構築において経営層の責任は大きくリーダーシップを発揮することが重要であること、そしてアカウンタビリティを果たす責任者を設定すること。窓口を置くことと責任者を設定することは別の作業です。止める権限については、欧州の規則が能力と訓練と並べて権限を要求している点が、そのまま実務の指針になります。

やることは3つに絞れます。責任者を1人決めて名前を社内に知らせること、決める人と止める人と説明する人を分けて持ち分の一覧に書くこと、そして決裁の階段を3段で通してみること。この3つが済んでいれば、規程の完成を待たずに体制は動き始めます。決めた内容をAIに代わりに判断させないための最後の一線は単純です。決定欄に人の名前が入っているかどうか。そこだけは、どんな体制でも譲れません。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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