AIエージェントに個人情報を扱わせてよい?|委託と提供の分かれ目

AIエージェントに個人情報を扱わせてよい?|委託と提供の分かれ目

「顧客の名簿をエージェントに読ませたいのですが、法務に止められました」「社内のツールなので問題ないと思っていたら、外部の仕組みを呼んでいました」——名簿を扱う部署からよく届く相談です。止まる理由は、情報が個人に関わるからではありません。本当の分かれ目は渡し方のほうにあって、同じ「渡す」でも、社内の処理か、委託か、第三者への提供か、国外への移転かで求められるものが変わるからです。しかもエージェントは、人の確認を待たずに次の呼び出し先を決めます。この記事では、4つの渡し方の見分け方から、利用目的の書き方、つないだ先ごとの確認項目、記録に残す項目までを整理します。


カメ先生カメ先生

個人情報をAIに扱わせる話って、入れてよい情報かどうかの話だと思われがちなんだけど、本当は「その情報が誰の手に渡るか」の話なんだ。


カメ子カメ子

情報の種類ではなく、渡る先で決まるということですか。


カメ先生カメ先生

そう。同じ名簿でも、相手が中身を触らない仕組みなら渡したことにならない場合があるし、触る仕組みなら委託や提供として扱う必要が出てくる。


カメ子カメ子

エージェントは呼び出す先を自分で決めるので、渡る先が動いてしまいますね。


この記事のポイント
  • 個人情報を扱わせてよいかは、情報の種類ではなく渡し方で決まる。社内の処理・委託・第三者への提供・国外への移転の4つに分かれる
  • 見分け方の基準は「相手が個人データを取り扱うことになっているか」。契約で取り扱わない旨を定め、アクセスを制御していれば提供に当たらない場合がある
  • エージェント固有の難所は、呼び出し先を実行時に決めること。名簿で固定して増えたら止める設計と、伏せて渡す設計で受け止める

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目次

課題:エージェントは、確認を待たずに外へ出す

最初に、これまでのAI利用と何が違うのかをはっきりさせます。文章を作らせるだけの使い方なら、入力するのは人です。人が入力するのだから、入力の前に確認する余地があります。エージェントは、人が入力しない場面で外部の仕組みを呼びます。日程を調べる、住所を照合する、翻訳する、要約する、名簿の重複を突き合わせる。これらを自分で選んで実行します。

この違いが、個人情報の扱いに直結します。人が入力する場合は「この情報をこの相手に渡してよいか」を1回ずつ判断できますが、エージェントの場合は判断の場面が実行時に移り、そこには人がいません。だから、渡してよい相手と渡してよい情報の範囲を、動かす前に決めておくしかありません。

もう1つの難所は、呼び出し先が増えることです。運用のなかで便利な仕組みが足されていきます。足すのは開発の担当者で、法務や個人情報の担当者には伝わりません。3か月で呼び出し先が2つから7つに増えるのは普通に起きます。増えた5つのなかに、名簿の内容を保存する仕組みや、入力を学習に使う仕組みが混ざっていても、誰も気づきません。

整理の出発点になる公的な文書があります。個人情報保護委員会は2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表し、個人情報取扱事業者に対して2つの注意点を挙げました。1つは、個人情報を含む入力をする場合には、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。もう1つは、本人の同意なく個人データを含む入力をして、その個人データが応答の出力以外の目的で取り扱われる場合には法の規定に違反する可能性があるため、提供する事業者が当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認することです。エージェントの場合、この確認の相手が実行時に増えるという点だけが違います。

同じ「渡す」が、4つに分かれる

求められるものが変わる4つの型を先に並べます。呼び出し先ごとに、どれに当たるかを判定します。1つのエージェントの中で、呼び出し先ごとに型が違うのが普通です。まとめて1つと考えると、必ずどこかで外れます。

渡し方の型どういう状態か求められるものエージェントで起きやすい形
社内の処理にとどまる外部の事業者が中身を取り扱わない状態自ら果たすべき安全管理措置。相手の監督義務は生じない社内に置いた仕組みだけを呼ぶ設計。実際には外部を呼んでいることがある
委託自社の利用目的の範囲内で、相手に取り扱わせる委託先の監督。委託した範囲を超えて扱わせない要約や照合を外部の仕組みに任せる。範囲を書いていないと超える
第三者への提供自社の目的を離れて相手が扱う原則として本人の同意相手が入力を自社の改善や学習に使う設定になっている
国外への移転相手または保存先が外国にある基準に適合する体制の整備、または本人の同意と情報提供保存先の国が明示されていない仕組みを呼んでいる

表の1行目と3行目の差は大きく、間に2行目があります。実務でいちばん多い誤解は、社内のツールから呼んでいるから1行目だと考えてしまうことです。呼び出しの起点が社内かどうかは関係がなく、中身を誰が取り扱うかで決まります。

4つの型は排他ではありません。1つの呼び出しが、委託であり国外への移転でもある、という組み合わせが起きます。要約を外部の仕組みに任せて、その仕組みが外国にある場合です。型を判定するときは「どれか1つ」ではなく「当たるものを全部」で見ます。以下で、判定の基準を具体化します。

見分け方:相手が個人データを取り扱うことになっているか

判定の基準は、公表されている質疑応答にはっきり書かれています。クラウドの仕組みを使っている場合、保存している電子データに個人データが含まれているかどうかではなく、提供する事業者において個人データを取り扱うこととなっているのかどうかが基準になります。取り扱わないこととなっている場合には、本人の同意(法第27条第1項)は不要で、委託先の監督(法第25条)も課されません。

取り扱わないこととなっている場合の具体例も示されています。契約の条項によって外部の事業者がサーバに保存された個人データを取り扱わない旨が定められており、適切にアクセス制御を行っている場合です。逆に言えば、契約に書いていない場合と、アクセス制御をしていない場合は、この扱いにはなりません。

該当しない場合の例も、2024年3月に公表された注意喚起で整理されています。提供する事業者がサーバに保存された個人データを使用できる場合、保守用のIDを保有してアクセスできる場合、そして実際に取り扱っていた場合です。契約書の文言と実際の状態が食い違っていれば、実際の状態で判断されるという趣旨です。あわせて2024年12月には、人事労務の管理をクラウド環境で提供する場合と利用する場合の、安全管理措置と委託先の監督についての留意点も公表されています。

そして重要なのが、この型に当たった場合でも何もしなくてよいわけではないという点です。別の質疑応答では、提供に該当しない場合は委託先の監督義務は課されないものの、自ら果たすべき安全管理措置の一環として、適切な安全管理措置を講じる必要があるとされています。相手を監督する義務がなくなる代わりに、自分の措置として説明できなければなりません。エージェントの設計では、この点が実務の中心になります。

原因1:利用目的が「業務の効率化のため」しか書かれていない

ここから、止まる原因を4つに分けます。1つ目は利用目的です。個人情報は、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内で扱うことが求められます(法第18条第1項)。止まるのは、目的の欄が抽象的すぎて「必要な範囲内」と言えなくなる場合です。

よくあるのは、公表している利用目的が「商品およびサービスのご案内」「お問い合わせへの対応」「業務の効率化」といった並びで終わっている状態です。ここにエージェントの動きを当てると、微妙な行為が出てきます。名簿の情報から興味の傾向を推定する、外部の情報と突き合わせて属性を補う、優先度を付けて並べ替える。推定したり補ったりする行為は、案内や対応という目的の文からは読み取れません

参考になる指摘があります。エージェントを提供する事業者について、利用者の行動の履歴から趣味や嗜好を学習する場合には、その目的を利用目的として特定する必要があるという整理です。この指摘は、エージェントを使う側にもそのまま当てはまります。行動の履歴から傾向を推定して営業に渡すなら、推定という行為が目的の文に含まれている必要があります。

直す順番も決まっています。まず、エージェントにさせる行為を動詞で並べます。読む、突き合わせる、推定する、並べ替える、案内を送る、記録する。次に、いま公表している目的の文で読み取れる動詞を消します。残った動詞が、書き足すべきものです。先に目的を書き直し、そのあとで動かす。逆にすると、動かしてから目的を追いかけることになり、その間の取り扱いは範囲外のままです。

原因2:呼び出し先を実行時に決めるので、事前に列挙できない

2つ目の原因が、エージェント固有の難所です。従来の仕組みなら、外部に出る経路は設計の時点で決まっています。エージェントは、状況を見て次の手を選ぶので、どの呼び出し先を使うかが実行時に決まります。事前の資料に「呼び出し先の一覧」を書いても、実行時に別のものが選ばれる余地が残ります。

この難しさは、公的な論点整理でも指摘されています。2026年4月に公表された整理では、エージェントの創発的な振る舞い、文脈への依存、連鎖の不透明さによって、リスクを事前に特定することが原理的に困難だとされています。つまり「危ない経路を全部洗い出してから動かす」という進め方は成立しません。

成立するのは逆向きの設計です。洗い出して禁じるのではなく、許した先だけを通れるようにする。呼び出し先を名簿として固定し、名簿にない先は呼べない状態にします。個人情報を渡す先については、名簿を2段に分けます。個人に関する情報を渡してよい先の名簿と、渡してはいけない先の名簿です。後者には、要約や翻訳のように便利で呼ばれやすいものが入ることが多いので、明示が要ります。

そのうえで、名簿を増やす手続きを決めます。増やすのは開発の担当者ですが、増やす前に通す関門を1つ置きます。関門で確かめるのは4項目で、次章以降で具体化します。関門がない運用では、3か月後に誰も呼び出し先の一覧を答えられなくなります。この状態は、個人情報の観点では「どこに渡しているか分からない」と同じ意味になります。

原因3:委託した範囲を超える取扱いに気づけない

3つ目は委託の型で起きます。委託として整理する場合、相手は自社の利用目的の範囲内で取り扱うことになります(法第27条第5項第1号)。範囲を超えた取り扱いが起きても、渡した側からは中で何をしているかが見えません。とくに問題になるのが、入力された内容を相手が自分の改善や学習に使う場合です。

この点についての整理は割れ気味ですが、方向性は示されています。委託先が学習に使う場合、委託元の利用目的の達成に必要な範囲内で自社サービスの改善のために使うことは許容される可能性があるものの、汎用的な学習には課題があるという整理です。実務では単純にします。学習に使わない設定になっていることを確認できない先には、個人に関する情報を渡さない。判断が難しい領域を、渡さないことで避けます。

制度の側も動いています。個人情報保護法の改正法が2026年7月10日に成立し、同年7月17日に公布されました。施行は原則として公布から2年以内で、遅くとも2028年7月までとされています。この改正では、委託を受けた者が委託された業務の範囲を超えて個人データを取り扱ってはならないという規律が新たに置かれます。改正後の条文番号では第30条の3にあたる部分です。まだ施行されていませんが、契約と設計を作り直すなら、この方向に合わせて作るほうが手戻りが減ります。

同じ改正では、統計の作成などを目的とする場合に本人の同意を不要とする規定も置かれます。AIの開発を含む大量の情報の解析を念頭に置いた整理です。ただし施行前であり、対象と要件は施行時点の条文と指針で確認する必要があります。いま動かす仕組みの根拠にはできない、という位置で押さえておいてください。

原因4:どの国に置かれているかが見えない

4つ目は国外への移転です。外国にある第三者に個人データを提供する場合、原則として本人の同意が必要になり、同意によらない場合は基準に適合する体制の整備が求められます(法第28条)。実務では、データ保護についての契約を結ぶなどして、日本の法と同等の水準を確保する形が取られます。

エージェントで難しいのは、保存先の国が明示されていない呼び出し先が混ざる点です。提供元の会社の所在地と、データが保存される場所は別です。国内の会社が提供している仕組みでも、処理や保存が外国で行われることがあります。逆に、外国の会社が提供していても、国内の設備に限定する設定が用意されている場合があります。

だから確認するのは会社の所在地ではなく、3つの事実です。処理がどの国で行われるか、保存がどの国で行われるか、そして保存しない設定が選べるか。保存しない設定が選べる呼び出し先は、国外への移転の議論を大きく単純にします。渡した瞬間に処理して捨てるなら、確認すべき論点が減ります。

あわせて、安全管理措置の一部として外部の環境を把握しておくことが求められます。エージェントの場合、把握の対象が呼び出し先の数だけ増えます。呼び出し先の名簿に「処理の国」「保存の国」「保存の有無」の3列を足すのが、いちばん手数の少ない方法です。名簿が資料として存在していれば、把握していることの説明にもなります。

対策1:扱わせない情報を、先に決める

原因の側を4つ見たので、ここから対策に移ります。順番が大事で、最初に来るのは呼び出し先の整備ではなく、渡す情報の側です。渡さなくても仕事が成り立つ情報を先に落とす。この作業で、後の確認の量が半分以下になります。

落とし方は3段です。第1段は、伏せて渡す。氏名、電話番号、メールアドレス、住所の番地を、記号や連番に置き換えて渡します。第2段は、識別できない形にする。会社名と部署の階層だけを渡し、個人の欄を含めません。第3段は、そもそも渡さない。突き合わせと並べ替えは社内で済ませ、文章を作る部分だけを外に出すという切り分けです。

この3段で押さえておきたいのが、提供する側の基準で判断されるという点です。渡した先で識別できなくなっていても、渡す側で個人データとして扱われているなら、第三者への提供の規制の対象になるという整理があります。だから「相手には分からないから大丈夫」という説明は成立しません。伏せる作業は、規制から外れるための作業ではなく、事故のときの被害を小さくするための作業だと考えてください。

要配慮個人情報については、扱わせない側に置くのが実務的です。健康や信条に関わる情報は、取得の段階から制限があり、エージェントの動きのなかで意図せず取得してしまう経路も考えられます。渡さない一覧の先頭に置き、名簿の欄自体を渡さない設計にします。2023年6月の注意喚起でも、要配慮個人情報の取得と利用目的の通知については、生成AIを提供する事業者に対する注意喚起が別に行われています。

対策2:利用目的を、動詞で書き直す

2つ目の対策は、原因1で見た利用目的の書き直しです。書き足すのは、行為を表す動詞です。「AIを利用します」と書くのは目的の特定にならない点に注意してください。手段を書いても、何のために扱うのかは示されません。

書き方の実例を挙げます。案内の配信に関する目的なら、「お客様に対する当社サービスのご案内」で止めず、「ご案内の対象を選ぶために、お客様の業種、規模、過去のお問い合わせの内容を分析すること」まで書きます。台帳の整理なら「重複するご登録を突き合わせて整理すること」。優先度付けなら「ご案内の優先順位を判断するために、公開されている情報と照合して情報を補うこと」。エージェントにさせる動詞が、そのまま目的の文に現れているかどうかで確かめます

書き直したあとの手順も決めておきます。公表している文を差し替え、差し替えた日付を記録し、すでに取得した情報への適用の考え方を整理します。取得のときに示していた範囲を超えて使う場合は、同意の取り直しが必要になる場合があります。ここは自社の判断で決めず、法務や外部の専門家に確認する場所です。

同意そのものについても、エージェント固有の論点があります。エージェントが自分の判断で、外部の仕組みの利用規約やプライバシーの方針に同意する手続きを進めてしまう場合です。この場合の同意の有効性が問題になりうるという指摘があります。同意の操作は、実行してよい行為から外し、提案までにするのが安全です。ここも、AIに判断させない部分の1つになります。

対策3:つないだ先ごとに、4項目を確かめる

3つ目の対策は、呼び出し先を増やすときの関門です。確かめる項目を4つに固定します。項目を固定すると、確認が判断ではなく作業になり、開発の担当者だけで進められます。判断が必要なものだけが法務に上がる形になります。

  • 保存するか。渡した内容を相手が保存するか、処理して捨てるか。保存する場合はどこに保存されるか
  • 学習に使うか。入力された内容を相手が自分の改善や学習に使わない設定になっているか。設定を切り替えられるか、既定でそうなっているか
  • 保存期間はどれだけか。保存する場合の期間と、期間の経過後に消えることを確かめられるか。こちらから消す手段があるか
  • どの国で処理し、どの国で保存するか。国内に限定する設定があるか。外国にある場合は基準に適合する体制の整備が済んでいるか

4項目のうち、2つ目がいちばん見落とされます。無料の枠や試用の枠では既定で学習に使う設定になっていて、有料の枠に切り替えて初めて外れる場合があります。試用のあいだに名簿を渡してしまう事故は、この構造から起きます。試用の段階では、伏せた情報だけを渡す運用にします。

4項目の答えは、名簿の行に書き込みます。口頭で確認して終わりにすると、担当者が変わった時点で消えます。名簿は、確認の記録そのものとして残します。1行につき4項目と確認日と確認した人の名前。この形にしておくと、監査や取引先からの照会にそのまま出せます。

なお、機密情報についても同じ関門を通します。営業の秘密として守るためには秘密として管理していたことが要件になるため、渡した先での扱いを確認していない状態は、管理していたという説明を弱めます。個人情報の関門と別に作る必要はないので、同じ4項目に「機密情報を渡してよいか」の欄を1つ足します。

対策4:呼び出し先を名簿で固定し、増えたら止める

4つ目の対策は、名簿の運用です。作るだけでは動かないので、3つの仕掛けを付けます。第1に、名簿にない先を呼べない状態にすること。第2に、名簿にない先を呼ぼうとしたら止まって記録が残ること。第3に、名簿の変更が、変更した人の名前とともに記録に残ること。

止まったときの扱いも先に決めます。止まったら、その場で例外を認めるのではなく、待ち行列に入れて関門を通します。「急ぎなので今回だけ通す」を認めると、名簿は3週間で意味を失います。急ぎの案件があるなら、名簿にある先だけで回る代替の手順を用意しておくほうが早いです。

名簿の見直しは3か月ごとに置きます。見直しで見るのは、使われていない行と、呼び出し回数が急に増えた行です。使われていない行は消します。消さずに残った権限は、いつか誰かが使います。呼び出しが急に増えた行は、渡している情報の量が想定を超えていないかを確かめます。

あわせて、エージェントの側にも設定を1つ入れます。個人に関する情報を渡す呼び出しの前に、渡す理由と渡す項目を短い文で残させる設定です。根拠を書かせると、書けない場合に止まるようになります。「この照合に住所の番地が必要な理由」を書けないなら、番地を渡さずに実行するほうが正しい、という判断が自動的に働きます。

運用に入ると、名簿を骨抜きにする動きが決まった形で出てきます。先に並べておきます。

  • 「社内のツールから呼んでいるから外には出ていない」と考える。判定は呼び出しの起点ではなく、中身を誰が取り扱うかで決まる
  • 試用の枠のまま名簿を渡して試す。既定で学習に使う設定になっていて、切り替えは有料の枠からという場合がある
  • 呼び出し先の確認を口頭で済ませる。担当者が変わった時点で、確認したという事実そのものが消える
  • 急ぎの案件だけ名簿の外の先を通す。1回認めると、名簿は3週間で意味を失う
  • 記録に渡した内容そのものを控える。記録が新しい保管先になり、そこも守るべき対象になる
  • 相手には識別できないから問題ないと説明する。渡す側で個人データとして扱っているなら、規制の対象からは外れない

対策5:記録として残す項目

5つ目は記録です。個人情報の観点で残すべき項目は、実行の記録とは別に整理します。後から答えられなければならない問いは4つです。誰の情報を、どこに渡し、何のために、いつまで置いたのか。この4つに答えられる形で項目を決めます。

  • 渡した先と、その先の型(社内の処理・委託・第三者への提供・国外への移転のどれか)。1件の呼び出しが複数に当たる場合は全部
  • 渡した項目。氏名を渡したのか、伏せた識別子だけなのか。項目名の一覧で残す。中身そのものは残さない
  • 根拠にした利用目的。公表している文のどの部分に当たるか。差し替えた場合は差し替えの日付も
  • 実行の時刻と件数。件数を残しておくと、想定より広い母集団を渡していたことに後から気づける
  • 止めた場合の理由。名簿にない先だった、根拠が書けなかった、伏せる処理が失敗した、の種類で分ける
  • 確認の記録との対応。呼び出し先の名簿の何行目に基づいて渡したか。名簿の版も残す

中身そのものを記録に残さない点が重要です。渡した内容を記録に控えると、記録が新しい保管先になり、そこも保護の対象になります。項目名と件数だけで、後から答えるべき4つの問いには答えられます。

記録を使う場面も想定しておきます。本人からの開示や利用停止の請求が来た場合、どの先に渡っていたかを答える必要が出ます。取引先から委託先の管理状況を照会される場合もあります。エージェントを使っていることを理由に「分かりません」と答えられる場面はありません。答えられる形にしておくのが、記録を作る目的です。

着手前に埋めるチェックリスト

ここまでの内容を、動かす前に埋める形にまとめます。1つでも空欄があるうちは、個人に関する情報を渡さない設定で動かします。伏せた情報だけでも、多くの検証はできます。

  • エージェントにさせる行為を、動詞で全部書き出したか(読む・突き合わせる・推定する・並べ替える・送る・記録する)
  • 書き出した動詞が、公表している利用目的の文から読み取れるか。読み取れない動詞を書き足したか
  • 呼び出し先を一覧にしたか。一覧に、処理の国・保存の国・保存の有無の3列があるか
  • 呼び出し先ごとに4項目(保存・学習利用・保存期間・所在地)を確認し、確認日と確認者を書いたか
  • 個人に関する情報を渡してよい先と、渡してはいけない先を分けたか。要配慮個人情報は渡さない側に置いたか
  • 伏せて渡す処理を用意したか。氏名・連絡先・番地を置き換えても仕事が成り立つかを試したか
  • 名簿にない先を呼べない状態にしたか。止まったときに記録が残るか
  • 委託として整理する先について、範囲を超える取扱いを禁じる条項が契約にあるか
  • 外国にある先について、基準に適合する体制の整備が済んでいるか。国内に限定する設定を選べるか
  • 外部の仕組みの規約や方針への同意を、実行してよい行為から外したか
  • 記録の6項目を残す設定にしたか。渡した内容そのものを残さない形になっているか
  • 本人からの請求と取引先からの照会に、記録から答えられるか。答える担当を決めたか
  • 3か月後の見直しの日付を決めたか。見直しで見る材料(使われていない行・急に増えた行)を決めたか

13項目のうち、法務の判断が必要なのは4つ目、8つ目、9つ目です。残りは現場で埋められる項目なので、法務に相談する前に埋めておくと、確認の往復が1回で済みます。

実務仕様:渡す前に通す3つの関門

最後に、日々の運用として動く形を示します。個人に関する情報が外に出る手前に、関門を3つ置きます。3つとも機械が判定できる形にして、人の裁量に残しません。

STEP1
関門1:渡す項目の関門

渡そうとしている項目の一覧を作り、渡してよい項目の一覧と突き合わせます。一致しない項目が含まれていたら止めます。ここは判断ではなく突き合わせなので、AIに判定させる必要はありません。伏せる処理が入っているかも、この関門で確かめます。

STEP2
関門2:渡す先の関門

呼び出し先が名簿にあるかを確かめます。名簿にあれば、その行の型(社内の処理・委託・第三者への提供・国外への移転)と、4項目の確認が済んでいるかを見ます。済んでいなければ止めて待ち行列に入れます。名簿にない先は、その場では通しません。

STEP3
関門3:目的の関門

その呼び出しが、書き直した利用目的のどの部分に当たるかを1行で残させます。書けない場合は止まります。これが、根拠を書かせる設定の実体です。書かれた1行は、記録の3つ目の項目にそのまま入ります。

3つの関門を通ったものだけが外に出ます。関門で止まった件は、待ち行列に入って人が見ます。人が確認する範囲は、この待ち行列だけに限ると先に決めておきます。全件を確認する運用にすると、量に負けて確認が形だけになります。

止まった件数は毎週数えます。数え方は種類別で、項目の関門で止まったもの、先の関門で止まったもの、目的の関門で止まったもの。目的の関門で止まる件が多い場合は、目的の文がまだ足りていない合図です。先の関門で止まる件が多い場合は、名簿の整備が追いついていない合図です。止まった件数は失敗の数ではなく、設計を直す材料として読みます。

2026年7月に成立した改正法が、この設計を変える点

最後に制度の先読みを1つ置きます。個人情報保護法の改正法は2026年4月7日に国会へ提出され、2026年7月10日に成立、同年7月17日に公布されました。施行は原則として公布から2年以内で、遅くとも2028年7月までとされています。いま作る設計は、この施行までに1回は見直すことになります

エージェントの設計に効く改正が2つあります。1つは委託先に関する規律の整備で、委託を受けた者が委託された業務の範囲を超えて個人データを取り扱うことを禁じる規定が置かれます。改正後の条文では第30条の3にあたる部分です。もう1つは、統計の作成などを目的とする場合に本人の同意を不要とする規定で、AIの開発を含む大量の情報の解析が念頭に置かれています。

この2つを合わせると、方向性が読めます。解析のための利用は広がる一方で、受け取った側が範囲を超えることへの規律は強まる。エージェントの設計に置き換えると、渡す先ごとに範囲を書いておく作業の重みが増すという意味です。呼び出し先の名簿に「委託した範囲」の列を足しておくと、施行時の手直しが小さくなります

あわせて、課徴金の制度と、子どもの個人情報についての規定、顔の特徴のような生体に関する情報についての規定も入ります。施行前なので、いま動かす仕組みの根拠にはできません。使い方は1つで、これから作る契約と名簿の形を、施行後に作り直さなくてよい形に寄せておくことです。

まとめ

AIエージェントに個人情報を扱わせてよいかは、情報の種類では決まりません。決まるのは渡し方で、社内の処理にとどまるのか、委託なのか、第三者への提供なのか、国外への移転なのかで求められるものが変わります。見分ける基準は、公表されている質疑応答が示すとおり、相手が個人データを取り扱うことになっているかどうかです。契約の条項で取り扱わない旨が定められ、適切にアクセス制御が行われている場合には提供に当たらない扱いになりますが、その場合でも自ら果たすべき安全管理措置は残ります。

エージェント固有の難所は、渡す先が実行時に決まることでした。だから止まる原因は4つに整理できます。利用目的が抽象的で「必要な範囲内」と言えない、呼び出し先を事前に列挙できない、委託した範囲を超える取扱いに気づけない、どの国に置かれているかが見えない。2023年6月2日の注意喚起が求めている「利用目的の範囲内であることの確認」と「機械学習に利用しないこと等の確認」は、エージェントでは確認の相手が実行時に増える形で現れます。

対策は5つです。扱わせない情報を先に決めて伏せて渡す。利用目的を動詞で書き直す。つないだ先ごとに保存と学習利用と保存期間と所在地の4項目を確かめて名簿に書く。名簿にない先は呼べない状態にして、止まったら待ち行列に入れる。そして渡した先と型と項目名と根拠と件数を記録に残す。運用では、項目の関門と先の関門と目的の関門の3つを機械の突き合わせで通し、人が見る範囲は止まった件だけに限る。判定はAIに任せず、渡す理由は文章で残させる。2026年7月に成立した改正法が委託の範囲についての規律を強める方向にあることを踏まえると、範囲を書き残す作業は、いま始めておくほど後が軽くなります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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