AIワークフロー設計で決める7項目|人が受け止める場所

「AIは入れました。でも、いまだに人が指示文を打ち込んで動かしています」「うまく回っている工程と、毎回人が手直しする工程が混ざっていて、どこが悪いのか分からない」——導入から1年ほど経った部署で、この2つは並んで出てきます。足りないのは道具ではありません。本当は、仕事の流れをどこで切り、どこにAIを載せ、どこで人が受け止めるかが図面になっていないだけです。図面が空欄のまま動かすと、空欄は空欄のまま残りません。動き始めてから、人の手作業で埋められていきます。この記事では、AIを業務の流れに組み込む前に決めておく7項目を、決めなかった場合に何が起きるかと対で整理し、詰まる場所の型まで見ていきます。
カメ先生AIのワークフロー設計って、道具をつなぐ作業だと思われがちなんだけど、本当は「人が受け止める場所を決める作業」なんだ。
カメ子つなぐ順番を決めることとは、違うのでしょうか。
カメ先生順番はあとでいい。先に決めるのは、どこで切るか、失敗したらどこへ戻すか、誰がどの合図で止めるか。ここが空欄だと、動き始めてから全部が人の手作業に戻ってくる。
カメ子動かす前に紙の上で決めておく項目がある、ということですね。
- 設計とは道具をつなぐことではない。流れを切って、人が受け止める場所を決めること
- 決めるのは7項目。区切りの単位、入力の形、受け取り先、承認、戻り先、記録、止める合図
- 決めなかった項目は空欄で残らない。動き始めてから、人の手作業で埋められていく
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
つないだのに、流れが決まっていない
2026年8月に公表された実態調査に、この状態がそのまま出ています。従業員100名以上の企業で業務に生成AIを使っている責任者・担当者548名への調査(2026年6月24日から25日に実施)で、業務でAIが動き始めるきっかけを聞くと、人が起動する形が67.1%でした。内訳は、保存された定型の指示文を人が実行しているが36.3%、人がその都度指示文を打ち込んで動かしているが30.8%。決まった時間で自動的に動く形は16.6%、業務システム上のデータの登録や更新をきっかけに動く形は12.0%で、その他を含めても自動で動くのは29.3%にとどまります。
出力側も同じです。AIの出力を参考に人が手作業で成果物を作っているが46.2%、人が手作業でコピーや転記をしているが21.2%で、出力後に人の手作業が発生する割合は67.4%。人が確認して承認すると業務システムに自動で反映される形は23.7%、条件を満たす処理は自動で反映され例外だけ人が対応する形は3.5%で、合わせて27.2%です。社内で最も進んでいる本番運用について聞いても、条件を満たす処理はAIが自動で行い例外のみ人が確認・改善しているという回答は2.9%しかありませんでした。
では何に投資しているのか。同じ調査で現在の投資領域を見ると、社員向けの研修・教育が48.9%、利用ガイドライン・ルールの整備が48.7%で上位に並びます。これに対し、業務フロー・起動条件の再設計は18.4%、利用ログ・承認・例外フローの設計は11.3%。人を育て、ルールを書くところまでは進んだのに、流れそのものを引き直す作業が最も薄いという構図です。なお、この調査の回答者は生成AIを業務で使っている企業の関係者に限られており、日本企業全体の割合ではないと原典が注記しています。傾向として読む数字です。
設計とは、流れを切って受け止め先を決めること
ワークフロー設計という言葉は、道具と道具をつなぐ作業として受け取られがちです。しかし実際に手を動かす前に決めなければならないのは、つなぎ方ではありません。この流れをどの単位で切るか、切った塊のどれにAIを載せるか、載せた塊から出てきたものを誰がどう受け止めるか、この3つです。つなぎ方は、この3つが決まった後にしか決められません。
「受け止める」を具体化しておくと設計が進みます。受け止める側の動作は4つしかありません。そのまま通す、直して通す、前に戻す、止める。この4つのうちどれができる状態にしておくかを工程ごとに決めるのが設計です。逆に言えば、差し戻しの経路がない工程は、そのまま通すか止めるかしか選べない工程になります。図面を書かないと、この不自由さが動かしてから分かります。
この関心は現場側にもあります。2026年1月に実施された企業IT利活用動向調査2026では、AIガバナンスで特に強化が必要な領域として「人間による最終判断の確保、AI出力の根拠や判断過程を説明できる体制」が最も高く、35.3%が挙げました。同じ調査で、組織としてAIを活用している企業は36%にとどまっています。使い始めた企業がまず詰まるのは、最終判断をどこで人に渡すかという一点だということです。
7項目には決める順番がある
7項目は独立していません。区切りが決まらないと承認をどこに置けるかが決まらず、承認の位置が決まらないと失敗時の戻り先が決まりません。だから順番に決めます。以下の4段で進めると、後戻りが減ります。
業務を工程に割り、どこで区切るかを決めます。ここが決まると、以降の6項目を置ける場所が確定します。逆にここが曖昧なまま先に進むと、6項目すべてが宙に浮きます。
各工程の入力の形と、出力をどこへ置くかを決めます。工程の間で受け渡す物の形をそろえる作業です。形が違うものを渡し合うと、そこが必ず人の手作業になります。
人が承認する箇所と、失敗したときの戻り先を決めます。ここが決まって初めて、AIに任せる範囲を言葉にできます。承認と戻り先は必ず対で決めます。
記録に残すものと、止める合図を決めます。動き始めた後に手を入れるための足場で、ここを省くと動いていることしか分からない状態になります。
この順番を守る理由は単純です。後ろの項目は前の項目の答えを材料にするためで、順番を入れ替えると同じ議論を何度もやり直すことになります。1つの流れなら、この4段は会議2回で決まります。
項目1:区切りの単位を決める
題材を1つ固定して最後まで使います。問い合わせフォームに届いた文面を読み、内容を分類し、担当部署に渡し、返信の下書きを作る流れです。ここを切る単位の目安は「1回の判断で完了する塊」。分類は1回の判断、担当部署への割り振りも1回の判断、返信下書きの作成は別の判断です。2つの判断が1つの塊に入っていると、どちらが間違ったのかが後から分けられません。
細かく切りすぎる失敗もあります。文面を読む、要点を抜く、種類を判定する、緊急度を判定する、と4つに割ると、工程の間の受け渡しが3か所増えます。受け渡しが増えるほど、形の不一致が起きる場所が増えます。目安として、1つの塊は「その工程だけを人がやっても数分で終わる」大きさに収めます。数十秒で終わる塊は隣とくっつけます。
決めなかった場合に何が起きるか。承認をどこに置けるかが決まらないので、結局は最後にまとめて1回だけ人が見る形になります。そうすると、間違いが見つかったときに巻き戻す先が「最初から」しかありません。区切りの粗さは、そのまま手戻りの大きさになります。冒頭の調査で完全な自動化が2.9%にとどまるのも、多くの現場が最後に人がまとめて受け止める形で止まっているためだと読めます。
項目2:入力の形をそろえる
次に、各工程が受け取る入力の形を決めます。何が必ず入っていて、何は無いことがあり、無い場合はどう扱うか。この3つを工程ごとに書きます。問い合わせの流れなら、必須は本文と受信日時、任意は会社名と電話番号、添付ファイルは「あれば本文と分けて扱う」まで決めます。公的な指針も利用者に対して、正確性と、必要な場合には最新性が担保されたデータの入力を行うことを挙げています。入力の形は使う側の責任範囲です。
ここが実務で最も軽く見られます。同じ2026年の実態調査で、顧客情報や案件情報などの社内データが重複・欠損・表記ゆれのない状態に整備されているかを聞くと、あまり整備されていないが43.2%、全く整備されていないが7.5%で、合わせて50.7%でした。半数が、そろっていないものを流し込んでいる状態から始めることになります。企業IT利活用動向調査2026も、導入前より導入後のほうが多くの課題は下がるのに、AIに読ませるためのデータ化が進んでいない点と出力の信頼性への不安は下がり幅が小さく、導入後も残り続けると報告しています。
決めなかった場合、例外は最初の工程で発生します。会社名の欄に「担当者名」が入っている、本文が空で添付ファイルだけ、同じ会社が3通りの表記で登録されている。この段階で例外が出ると、以降の全工程がその1件について止まります。対策は、入力の形を先に決めて、形に合わないものは流さず保留に落とすこと。流してから直すのではなく、入口で分けます。
項目3:出力の受け取り先を決める
出てきたものをどこに置くかを決めます。決めるのは3点、置き場所、通知の相手、そして「置かれた時点でそれは何とみなすか」です。3点目が抜けやすい。分類結果が業務システムに書き込まれた時点でそれは確定なのか、下書きなのか。ここを決めないと、受け取った側が確定として扱い、書いた側は下書きだと思っている状態が生まれます。
受け取り先が決まっていない出力は、チャットの履歴に溜まります。冒頭の調査で出力後に人の手作業が67.4%発生していたのは、多くの出力が「人が読んで転記する」以外の受け取り先を持っていないからです。置き場所を決めるとは、転記という工程を消すことです。人が確認して承認すると自動で反映される形が23.7%まで来ているのは、この一手が効くことの裏返しでもあります。
決めなかった場合、成果が測れなくなります。同じ調査で、AI活用の成果を売上や商談化率などの事業指標と結びつけて把握しているのは14.8%、成果を継続的に把握して起動条件や業務フローの改善まで実施しているのは5.7%でした。出力の置き場所が決まっていないと、何件処理したのかも数えられません。改善の材料が最初から取れない状態になります。
項目4:人が承認する箇所を決める
承認は全工程に置くものではありません。置くのは3つの条件に当たる箇所だけです。社外に出る前、お金と契約が動く前、人の評価に関わる前。問い合わせの流れなら、返信を送る直前が1か所目で、分類と割り振りには承認を置きません。承認は数を減らすほど機能します。全部に置くと、全部が形だけになります。
根拠は公的な指針にもあります。2026年3月31日に公表されたAI事業者ガイドライン第1.2版は、共通の指針の公平性の項で「AIに単独で判断させるだけでなく、適切なタイミングで人間の判断を介在させる利用を検討する」とし、続けて「人間の判断が自動化バイアスに左右されないような対策を講じるべきである」と書いています。ここで言う自動化バイアスは、同ガイドラインの脚注で人間の判断や意思決定において、自動化されたシステムや技術への過度の信頼や依存が生じる現象と定義されています。置けばよいのではなく、置いた人が本当に見られる形にするところまでが設計です。
決めなかった場合、承認は最後に1か所だけ、しかも最も忙しい人のところに集まります。その結果、目を通さずに通す運用が定着します。承認箇所を決めるときは、誰が承認するか、何を見て判断するか、判断にかかる時間の見込みを3つ揃えて書きます。3つ目を書くと、その承認が現実に回るかどうかがその場で分かります。
項目5:失敗したときの戻り先を決める
失敗の扱いは「やり直す」では設計になりません。決めるのは戻り先です。選べる先は4つ、同じ工程をもう一度、前の工程へ、入力の修正へ、そして人の手作業へ。問い合わせの流れなら、分類の確信が低い場合は人の手作業へ、入力の形が合わない場合は入力の修正へ、外部のつなぎ先が応答しない場合は同じ工程をもう一度、と分けます。失敗の種類ごとに戻り先を書き分けるのが、この項目の中身です。
戻り先を書かないと、同じ入力での再実行が繰り返されます。入力が原因の失敗を同じ工程で何度やり直しても結果は変わらないので、待ち行列に溜まり続けます。もう1つ起きるのが二重処理です。人が手作業で処理した1件を、自動側がまだ未処理として扱い、返信が2通送られる。戻り先を決めるときは、戻した1件に「誰かが手をつけた」印を残すところまで決めます。
例外の受け皿も同時に作ります。どの戻り先にも当てはまらない1件を置く保留の箱です。箱がないと、そういう1件は流れの途中で止まったまま誰の目にも入りません。保留の箱は、中身が毎日誰かに見られる場所に置きます。箱を作って見る人を決めないなら、箱がないのと同じです。
項目6:記録に残すものを決める
記録は「全部残す」でも「ログを取る」でもなく、残す単位を決めます。単位は流れの1回分です。1件の問い合わせについて、いつ入ってきて、どの工程がどう判定し、誰が承認し、どこへ反映されたか。この一続きが1本の線としてつながって初めて、後から辿れます。工程ごとにばらばらに記録が残っている状態は、辿れる状態ではありません。先のAI事業者ガイドラインも、残し方の条件として、文書化して一定期間保管し、必要なときに、必要なところで、入手可能かつ利用に適した形で参照可能な状態にすることを挙げています。残すだけでなく取り出せるかどうかが条件だという書き方です。
ここは実測で最も弱い部分です。2026年6月の実態調査では、生成AIの利用状況が記録として残り後から追跡できるかを聞いたところ、利用記録が横断的に残り後から追跡できるという回答は13.0%。一部のツールでのみ記録が残るが45.8%、多くのツールで記録は残るが横断的な追跡はできないが25.2%でした。記録が無いのではなく、つながっていないという状態が7割を占めます。
保管期間の考え方には参考になる規定があります。欧州のAI規則(規則2024/1689、2024年6月13日)は第26条第6項で、高リスクにあたるAIを業務に使う側に対し、自動生成される記録を用途に見合った期間、少なくとも6か月保管することを求めています。第26条の適用開始は2026年8月2日です。日本国内の企業に直接かかる規定ではありませんが、6か月という下限は、社内で期間を決めるときの出発点として使えます。なお、監査で示す記録の一覧づくりはこの項目とは別の話なので、ここでは流れを辿れる単位に限って決めます。
項目7:止める合図を決める
最後は止め方です。決めるのは3点、何を見て止めると判断するか、誰が止めるか、どうやって止めるか。3点のどれが欠けても止まりません。特に抜けるのが3点目で、「おかしい」と気づいた人に止める手段がないという状態が普通に起こります。止める手段は、担当者が単独で押せる形にしておきます。上司の承認を得てから止める設計は、止まらない設計です。
権限の話は規定にも書かれています。先の欧州のAI規則は第26条第2項で、人間による監督を、必要な能力と訓練と権限、そして必要な支援を備えた自然人に割り当てることを求めています。能力と訓練だけでは足りず、権限が並んで書かれている点が実務的です。見ている人と止められる人が別なら、監督は成立しません。
止める合図が必要になる理由は、失敗が静かに起きるからです。2026年6月に公表された事例研究は、2026年3月から連続稼働している1つの実務系を8週間追い、22件の事案を記録しました。静かな失敗を5つに分けており、環境と土台の癖、設計時の前提のずれ、エラーの飲み込みと希釈、連鎖する作り話、運用上の記録漏れ。そして静かな失敗のおよそ70%は自動試験ではなく人の観察で見つかり、気づくまでの遅れは13時間から60日にわたったと報告しています。1つの系を追った事例研究なので一般化はできませんが、失敗が音を立てないという性質は設計側が前提にすべき話です。同研究の提言は、失敗を大きな音で、誰の担当か分かる形で、退屈なほど淡々と出すこと。止める合図はその音にあたります。
設計書に残す項目の一覧
7項目を1枚にまとめます。表の3列目が本記事の主眼で、決めなかった場合に何が起きるかを書いておくと、省略の判断がその場でできます。省略してよい項目と、省略すると後で人の手作業に化ける項目が見分けられるからです。
| 項目 | 設計書に書くこと | 決めなかった場合に起きること |
|---|---|---|
| 区切りの単位 | 工程の一覧と、どこで切るか。1つの塊の大きさの目安 | 最後にまとめて人が見る形になり、手戻りが毎回最初からになる |
| 入力の形 | 必須の項目、任意の項目、無い場合の扱い | 入口で例外が出て、その1件について以降の全工程が止まる |
| 出力の受け取り先 | 置き場所、通知する相手、確定か下書きかの扱い | 出力がチャットの履歴に溜まり、転記という手作業が残る |
| 人が承認する箇所 | 承認する人、見る材料、判断にかかる時間の見込み | 承認が最も忙しい人に集まり、目を通さず通す運用が定着する |
| 失敗したときの戻り先 | 失敗の種類ごとの戻り先と、手をつけた印の残し方 | 同じ入力での再実行が続き、二重処理と溜まりが起きる |
| 記録に残すもの | 1回分をつなぐ単位、保管期間、置き場所 | 工程ごとに断片が残るだけで、なぜその出力になったか辿れない |
| 止める合図 | 見る指標、止める人、止める手段 | 気づいた人が止められず、静かな失敗が数週間続く |
- 設計書は1枚に収める。項目ごとに紙が分かれると、決まっていない項目が見えなくなる
- 決めない項目は空欄にせず「今回は決めない」と書く。空欄は決め忘れと区別できない
- 書いた設計書は、動かす前に工程の担当者に読ませる。読めない設計書は引き継げない
詰まる場所は3か所に寄る
設計の失敗はどこに出るのか。複数のAIを組み合わせた実験系を対象にした研究が参考になります。2025年3月に投稿され同年10月に改訂された論文は、7つの枠組みを対象に1,600件を超える実行記録に注記を付け、うち150件を精読して14の失敗の型を作りました。注記者間の一致度はκが0.88。この14の型が3つに分類されている点が実務に効きます。仕様と設計の書き落とし、受け渡しの食い違い、そして検証と終了です。
業務の流れに置き換えると、この3つはそのまま7項目の欠落に対応します。仕様と設計の書き落ちは区切りと入力の形の欠落、受け渡しの食い違いは出力の受け取り先の欠落、検証と終了は承認と記録と止める合図の欠落です。研究の対象は業務の流れそのものではないので数値をこちらに持ち込むことはできませんが、詰まる場所が3か所に寄るという構造は、人の工程が混ざる流れでも同じ形で現れます。
| 詰まる場所の型 | 業務の流れでの現れ方 | 欠けている項目 |
|---|---|---|
| 仕様と設計の書き落ち | 何をどこまでやる工程なのかが人によって違う。想定外の1件が毎日出る | 区切りの単位、入力の形 |
| 受け渡しの食い違い | 前の工程の出力を次の工程が受け取れず、間に人の転記が挟まる | 出力の受け取り先 |
| 終わりの確認の欠落 | 処理が済んだことになっているが誰も確かめていない。間違いが後で発覚する | 人が承認する箇所、記録 |
| 静かな失敗 | エラーにならず、もっともらしい間違いが下流に流れ続ける | 止める合図、記録 |
承認が形だけになるときの見分け方
承認箇所を置いても、しばらくすると通すだけの作業になります。これは担当者の怠慢ではなく、先に触れた自動化バイアス、つまり自動化されたものへの過度の信頼や依存が働くためです。形だけになっているかどうかは、3つの数字で外から分かります。差し戻しの件数、承認までにかかった時間のばらつき、そして差し戻した理由の種類です。
差し戻しが1か月ゼロなら、その承認は機能していないと見ます。AIの出力が完璧だからゼロになることは実務では起きません。承認までの時間が毎回ほぼ同じなのも危険な兆候で、中身を読んでいれば所要時間はばらつきます。理由の種類が1つしかない場合も同じで、見ている観点が1つに固定されていることを示します。
直し方は3つあります。承認の画面に判断の材料を並べておくこと、差し戻しの実績を月に一度数えて共有すること、そして承認者を1人に固定しないこと。3つ目は交代の負担が増えますが、同じ人が見続けると、見落としの型もその人に固定されます。差し戻しをした人が評価される仕組みにしておくと、この3つは自然に回り始めます。
例外の数を数えると、載せ方が決まる
AIをどこまで任せるかは、感覚ではなく例外の割合で決まります。まず1か月、その工程で例外がどのくらい出るかを人の手作業のまま数えます。目安は3段。例外が1割未満なら条件を満たす処理を自動で通し例外だけ人が受け止める形、1割から3割なら人が承認してから反映する形、3割を超えるなら人が主でAIは下書きまで、です。例外の多い工程を自動化すると、例外の処理という新しい手作業が生まれます。
先の実態調査で、条件を満たす処理はAIが自動で行い例外のみ人が確認・改善している形が2.9%にとどまっていたのは、この数え方をせずに載せた結果でもあります。逆に、定型の指示文を人が実行する形が36.3%を占めているのは、例外の多い工程に人が張り付いたまま、指示文だけを効率化した状態だと読めます。この状態は悪くありません。ただし、そこから先に進むには例外の数を数える工程が必要です。
- 例外が1割未満で、間違えても差し戻せる工程。自動で通して例外だけ人が受け止める
- 例外は少ないが、外に出る内容を含む工程。人が承認してから反映する
- 例外が3割を超える工程。人が主で、AIは候補と下書きの提示までに留める
- 例外の内容が毎回違う工程。載せる前に、まず入力の形をそろえる作業から始める
判断そのものは、流れに載せない
7項目を決めても、1つだけ流れに載せてはいけないものがあります。判断です。AIに割り当てるのは、候補を出す、分類する、下書きするまで。決めることそのものを工程として渡すと、承認は形式になり、戻り先も止める合図も意味を失います。この線をどこに引くかは、設計書の上で工程ごとに書き分けます。
線を引くときの具体的な決め方は2つです。1つは、その工程の出力に「なぜそう判定したか」を必ず添えさせること。根拠が書けない判定は人が受け止める側に回します。もう1つは、人が確認する範囲を先に決めて、範囲外は自動で通すと明言すること。範囲を決めずに「念のため全部見る」とすると、量が増えた時点で誰も見なくなります。先に狭く決めておくほうが、実際に見られる範囲は広くなります。
- 7項目を決めずに道具をつなぎ、動かしてから足りないものを人の手作業で埋める
- 全工程に承認を置く。数が多いほど、1件あたりに使える時間が短くなる
- 失敗したら最初からやり直すと決める。原因ごとの戻り先がないと同じ失敗が繰り返される
- 記録は道具側に残っているから十分だと考える。工程をまたいでつながっていなければ辿れない
- 止める判断を管理者だけに持たせる。気づく人と止められる人が別だと止まらない
- 設計書を作らず、作った人の頭の中に流れを置いたままにする
まとめ
AIを業務の流れに組み込む作業は、道具をつなぐ作業ではありません。流れをどこで切り、どこにAIを載せ、どこで人が受け止めるかを紙の上で決める作業です。決めるのは7項目、区切りの単位、入力の形、出力の受け取り先、人が承認する箇所、失敗したときの戻り先、記録に残すもの、止める合図。順番は、流れを切る、形を決める、受け止め方を決める、見える状態にする、の4段で進めます。
2026年の実態調査が示していたのは、研修とルールの整備には約半数が投資しているのに、業務フローと起動条件の再設計は18.4%、記録と承認と例外の設計は11.3%という偏りでした。人が起動する形が67.1%、出力後に人の手作業が発生するのが67.4%という数字は、その偏りの結果として読めます。決めなかった項目は空欄で残らず、人の手作業に化けるということです。
最後に線を1本引いておきます。候補を出す、分類する、下書きするまでは載せてよく、決めることそのものは載せない。この線を工程ごとに書き分けたうえで、承認箇所を3つの条件に絞り、止める合図を担当者が単独で押せる形にしておく。設計書が1枚あれば、動き始めた後に直すことができます。図面のない自動化は、動いている間だけうまくいっているように見える自動化です。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
