【2026年】ディープフェイク対策の始め方|偽の動画と音声に備える

「取引先から、御社の役員が出ている広告を見たが本物かと聞かれました」「経理に、社長の声で振込を急ぐよう電話があったそうです」——広報の窓口や情報システムの相談先に、この種の連絡が届くようになりました。困るのは、聞かれた側がその場で答えられないことです。ディープフェイク対策は、偽物を見破る目を鍛える仕事ではありません。本当は、本物であることを確かめる経路を、事が起きる前に決めておく仕事です。見分ける手がかりは作る側の改良で消えていきますが、経路の決めごとは消えません。この記事では、偽の動画と音声が企業に届く三つの向きを切り分け、事前に決めておくこと、そして起きた後にどの順番で動くかを整理します。
カメ先生ディープフェイクの対策って、偽物を見破る道具を入れることだと思われがちなんだけど、本当は「本物をどう確かめるかの経路を先に決めておくこと」なんだ。
カメ子見分け方を覚えるのではなく、確かめ方を決めておくということですか。
カメ先生そう。映像や音声は、それが誰から来たのかを証明しないからね。だから、指示が来た経路とは別の経路で確かめる決まりを先に作る。
カメ子怪しいかどうかを、その場の判断に任せなくて済むんですね。
- 偽物は三つの向きから来る。自社の名をかたる、社内の誰かをかたる、外の誰かをかたって自社に届く
- 見分ける手がかりは古びる。本物かどうかの判定を、人の目や検知の道具に預ける設計にしない
- 先に決めるのは折り返しの経路、公式の置き場、残す記録の項目。起きてから決めると数時間が溶ける
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最初の連絡は、たいてい社外から届く
偽の動画や音声が出回っていることに、自社が最初に気づくとは限りません。多くの場合、最初の一報は取引先や顧客、あるいは取材の問い合わせという形で外から届きます。しかも聞かれ方は「本物ですか」という一言です。この一言に一次回答を返すまでの時間が、その後の広がり方をほぼ決めます。ところが、答える担当が決まっていない組織では、まず社内で誰に聞くかを探すところから始まります。
この状況が特別なものではなくなってきたことは、脅威の順位にも表れています。情報処理推進機構が2026年1月29日に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が2026年で初めて選出されました。順位は、情報セキュリティ分野の研究者と企業の実務者を含む約250名の選考会が審議して決めています。1位はランサム攻撃、2位はサプライチェーンや委託先を狙った攻撃でした。
同じ一覧の10位には「ビジネスメール詐欺」が残っています。この二つを並べると、起きていることの性質が見えます。まったく新しい攻撃が生まれたというより、これまで文面だけだった手口に、声と映像という裏付けが足されたという読み方です。取引先を装った文面が疑われやすくなった分、送り手は疑いを打ち消す材料を欲しがります。声はその材料として都合がよいわけです。
被害は一つではない。三つの向きに割って考える
対策が散らかる最大の理由は、性質の違う三つの被害を「ディープフェイク対策」という一つの箱に入れてしまうことです。担当部署も、最初に気づく場所も、打ち手も違います。まず向きで割ります。一つ目は、自社の社名や役員の姿が外向けの偽広告や偽動画に使われる型。この場合、傷つくのは自社のブランドと、だまされた顧客です。
二つ目は、社内の誰かをかたって社内に指示が届く型です。送金、支払先の変更、権限の付与、機密情報の送付といった、実行されると戻せない依頼が来ます。三つ目は、外部の誰か——取引先、官公庁、報道機関——をかたって自社に届く型です。ここでは自社は名前を使われる側ではなく、狙われる側になります。
三つを混ぜると、たとえば「検知の道具を入れる」という一つの打ち手で全部を片付けようとしてしまいます。実際には、一つ目は外向けの告知の問題、二つ目は社内の承認手順の問題、三つ目は取引の確認手順の問題です。表で対にしておくと、担当を決めるときに迷いません。
| 向き | かたられるもの | 最初に気づく場所 | 先に決めておくこと |
|---|---|---|---|
| 自社の名をかたる | 社名、役員の顔と声、製品 | 顧客や取引先からの問い合わせ | 公式の置き場と、一次回答の文面と担当 |
| 社内の誰かをかたる | 経営層や上長の声、社内の呼び方 | 経理、情報システム、秘書 | 折り返しの経路と、実行してよい金額と種類の線 |
| 外の誰かをかたる | 取引先の担当者、官公庁、報道 | 営業、購買、広報 | 登録済みの連絡先での照会と、記録の取り方 |
型1:役員の声で、急ぎの送金や情報を求めてくる
必要な素材は多くありません。決算説明の音源、登壇動画、社内向けの挨拶、ウェビナーの録画——外に出ている音声はすでに十分な量があります。届き方は電話やオンライン会議とは限らず、短い音声メッセージが文字のやり取りに添えられる形もあります。音声は本人らしさを補強する材料として使われるので、それ単独で完結していなくても効きます。
この手口については、公的機関が名指しの警告を出しています。米国の連邦捜査局に置かれたインターネット犯罪苦情センターが2025年5月15日に公開した勧告(番号 I-051525-PSA)は、2025年4月以降、現職と元職の高官になりすまして文字メッセージとAIで生成した音声メッセージを送るキャンペーンが続いていると警告しました。狙いは、相手の個人アカウントに入り込むことだとされています。
同じ勧告が挙げている確認手段が、そのまま実務の骨格になります。連絡してきた相手の身元を確かめること、返信する前に発信元の番号を調べること、そして別のやり取りの場に移るよう求められたときは、すでに知っている確実な経路で新しい連絡先を確かめることです。米国での事例に基づく勧告ですが、確認のしかたに国境は関係ありません。
型2:社名と製品を使った偽の広告が出る
偽の広告は、自社サイトより先に顧客の目に触れます。広告として配信されるからです。しかも損害の請求は自社に来ます。顧客からすれば、自社の名前と役員の顔が出ていたものを信じただけだからです。自社が一円も受け取っていない取引について、返金の相談と信用の毀損だけが自社に残るという、割に合わない形になります。
この領域は制度が動いている最中です。自由民主党のディープフェイク対策合同プロジェクトチームは、2026年5月29日に「ディープフェイク詐欺広告対策に関する提言」をまとめ、5月28日に消費者担当大臣、5月29日にデジタル大臣と総務大臣、6月25日に総理へ申し入れました。提言には、規制の対象となる広告の明確化と違法化、マイナンバーカード等を使った広告主の本人確認の義務化、行政機関から削除通知を受け取ってから24時間以内に広告を削除することの義務化、AIで作成したことを明示する仕組み、違反時の罰則、事業者と委託者・出資者が連帯して被害者へ損害賠償責任を負う仕組みの検討、官民連携による専用の通報サイトの構築などが並んでいます。
ここで大事なのは読み方です。これは提言であって、法律ではありません。24時間という数字も、現時点で事業者に課されている期限ではなく、義務化を求める案として書かれた数字です。制度が整うまでの間、企業側にできるのは、偽の広告が出た事実と、それが偽である根拠を自社で記録し、顧客に示せる形で残しておくことです。
型3:存在しない発表と、偽の取材依頼
広報が受ける型がもう一つあります。自社がしていない発表が、記者会見の映像や談話の形で出回るものです。内容は資本提携、値上げ、撤退、不祥事の謝罪など、株価や取引に直接響くものが選ばれます。ここで効くのは、偽物を否定する力ではなく、本物がどこにあるかを、外の人が自力で確かめられる状態です。
具体的には、自社サイトのニュース欄に載っていないものは公式の発表ではない、と外に向けて言い切れる状態を作っておきます。これが言えると、問い合わせへの一次回答が一行で済みます。逆に、公式の発表が自社サイトにはなく媒体の記事にしか存在しない運用だと、この線引きが使えません。
同じことは、取材依頼を受ける側にも当てはまります。報道機関を名乗る依頼に対して、その媒体の代表番号にかけ直す手順を決めておけば、依頼の文面や声の判定は不要になります。判定をやめて照会に置き換えるのが、この記事を通した基本の形です。
見破る側に立つと、なぜ負けるのか
まばたきの回数、口元と音のずれ、影の向き、背景のゆがみ——見分ける手がかりは、確かに一時期は有効でした。しかし手がかりが共有されるほど、作る側はそこを直します。見分け方のチェックリストは、書いた瞬間から古くなっていく種類の資料です。半年前の記事に載っていた見分け方が、今の生成物には当てはまらないということが普通に起きます。
もう一つ、設計としての弱さがあります。判定を人の目に預けると、忙しい現場ほど通してしまいます。疑わしいものを止めた人には手間だけが残り、通した人には何も起きない——この非対称が続く限り、判定の精度は運用の中で下がります。検知の道具を入れても同じで、判定に確率が返ってくるだけで、実行するかどうかの決定は結局その場の人に戻ってきます。
だから軸を移します。中身が本物かを見るのではなく、経路が正しいかを確かめる。国のガイドラインもこの向きを示しており、総務省と経済産業省が2025年3月28日に公表したAI事業者ガイドライン第1.1版は、生成物の精巧さが誤解や偏見を助長しうることに触れたうえで、その利用に際して人間の判断を介在させる対策を講じるよう記しています。判定をAIに委ねる話ではないという点は、はっきりさせておくべきところです。
- 見分け方の一覧を配って社内研修を済ませ、判定を各自に任せる
- 検知の道具の判定結果を、実行してよいかどうかの最終判断にそのまま使う
- 映像が鮮明だったこと、声が本人と同じだったことを、本人確認の根拠として記録する
- 怪しいと思った担当者が、指示してきた相手にその場で本人か聞き返す
原因1:連絡の経路が1本しかない
一つ目の原因は、指示と確認が同じ経路の上で完結していることです。電話で指示が来て、その電話で確認する。会議の中で依頼され、その会議の中で合意する。この形だと、経路そのものが偽物であった場合に検算する余地がありません。本人らしさは経路の正しさの証拠にならないのに、実務では証拠として扱われがちです。
経路が1本になる背景には、たいてい速度への要求があります。急ぎの案件ほど確認を省く力が働き、しかも偽の指示は必ず急ぎの形で来ます。つまり、確認を省きたくなる条件と、確認が必要な条件が重なっているわけです。ここを個人の慎重さで持たせるのは無理があります。
対処は後の章で書きますが、方向だけ先に示すと、経路を2本にすることと、2本目の経路を相手ではなく自社の側が持っておくことです。相手が伝えてきた番号にかけ直すのは、経路を1本のままにしているのと変わりません。
原因2:公式の置き場が、外から分からない
二つ目は、外の人が本物を確かめに行く先が決まっていないことです。発表がサイトのニュース欄にある会社、資料室にある会社、その両方にない会社が混在しています。役員の対外的な発信も、個人の名前で行われているものと会社名義のものが混ざっていると、どこまでが公式かが外から判別できません。
この状態では、問い合わせが来たときの一次回答が長くなります。「その内容は当社の発表ではありません」と言うためには、当社の発表がどこに全部載っているかを同時に示す必要があるからです。置き場が一つに決まっていれば、一次回答は一行で済み、担当者が誰であっても同じ回答になります。
逆に、置き場が決まっていない組織で偽の発表が出ると、社内の確認に時間がかかります。広報が知らない発表が本当にないのか、事業部が単独で出していないかを確かめる作業が挟まるためです。この時間は、外から見れば否定が遅れた時間として記録されます。
原因3:見つけた後に誰が動くかが決まっていない
三つ目は、発見から対応までの間に置かれた空白です。偽の動画を見つけたのが営業担当だった場合、その人はまず上長に相談します。上長は広報に振り、広報は情報システムに聞き、情報システムは法務に確認します。この間、外では拡散が続いています。止まっているのは判断ではなく、判断する人が決まっていないという状態です。
空白が生まれやすいのは、この案件が既存のどの手順にも当てはまらないからです。不正アクセスでもなく、製品の不具合でもなく、社員の失言でもありません。既存の緊急連絡の枠に入らないものは、誰かが自分の担当だと名乗り出るまで動きません。
決めるべきことは多くありません。第一報を受ける窓口、社内で本物か偽物かを一次判断する人、外への告知を決める人。この三つに名前が入っていれば、少なくとも最初の1時間は動きます。役職ではなく、代替者を含めた個人名で決めておくのが実務的です。
決めること1:金額と種類で、折り返しの線を引く
最初に決めるのは、どの依頼を折り返し確認の対象にするかです。すべてを対象にすると運用が持たないので、線を引きます。実務で使いやすいのは、金額の閾値と、種類による指定を組み合わせる形です。金額は自社の決裁基準に合わせ、種類のほうには金額に関係なく対象にするものを並べます。
種類として入れておきたいのは、支払先の口座情報の変更、初回の取引先への送金、権限や役職の付与、顧客名簿や設計情報の送付、そして「今日中に」という条件が付いた依頼です。最後の一つが効きます。期限を切ってくること自体を確認の引き金にしておくと、急がせる手口の効果が落ちます。
折り返し先は、依頼が来た経路とは別の、自社に登録済みの連絡先に限ります。相手から伝えられた番号や新しく作られたやり取りの場は使いません。この決まりを紙に落とし、対象になる部署の壁に貼るところまでやります。覚えている決まりではなく、その場で見える決まりにしておくことが、急いでいる場面では効きます。
決めること2:合言葉は、配り方まで決めて初めて機能する
経営層と事務局の間で、その場で本人を確かめる合言葉を決めておく方法があります。有効ですが、決め方より配り方のほうが難しい仕組みです。会議の場で口頭で共有すれば録音に残り、文書で配れば流出の対象になり、日常的に使えば覚えられます。合言葉は、使うほど寿命が縮む仕組みだと理解して運用する必要があります。
現実的な形は、合言葉を単独で信じないことです。合言葉が合っていても、金額と種類の線に該当する依頼は折り返し確認を通す。合言葉は「その場を止めるための道具」として使い、「実行してよいと決めるための道具」にはしない。この使い分けを決めておくと、破られたときの被害が限定されます。
- 合言葉は定期的に変える。変える日を決めておき、事件が起きてから変えるのではなく先に回す
- 合言葉を尋ねること自体を失礼としない空気を作る。役員側から尋ねるよう促すのが早い
- 合言葉が合わなかったときにどうするかも決めておく。その場で問い詰めず、一度切って登録済みの連絡先にかけ直す
決めること3:公式の一覧を、外から見える場所に置く
三つ目は外向けの整備です。自社の公式な発表、公式に運用しているアカウント、公式に配信している動画の置き場を、自社サイトの一か所にまとめて掲載します。これは偽物を否定するための材料ではなく、本物を確かめたい人が、自社に問い合わせずに済むための材料です。問い合わせが減れば、その分を確認と告知に回せます。
掲載するのは一覧そのものと、更新した日付です。日付が古いまま放置されている一覧は、逆に信用を落とします。運用としては、新しい発信の場を作ったときに一覧へ追記する作業を、作る側の手順に組み込んでおきます。作った後で広報が探して回る形にすると、必ず抜けます。
あわせて、当社の発表はここにしか出さない、という一文を添えます。これがあると、外から見た確認が「載っているかどうか」の一手で済みます。書いた以上は守る必要があるので、事業部が独自に出すことのある会社は、その例外も一覧に明記します。
決めること4:役員の音声と映像が、どれだけ外にあるかを数える
四つ目は棚卸しです。役員や広報担当の声と姿が、どこにどれだけ公開されているかを一覧にします。登壇動画、対談記事に付いた音声、決算説明の録画、採用向けの紹介動画、業界団体での挨拶。数えてみると、たいていは想定より多く、しかも自社が管理していない場所に置かれています。
数える目的は、公開をやめることではありません。発信は事業のために必要ですし、露出を止めても素材は残ります。目的は、どの素材が使われうるかを把握して、備えの優先順位を決めることです。声だけが大量に出ている経営層がいるなら、その人名義の指示に対する折り返しの線を厳しくする、という判断ができます。
棚卸しの副産物として、削除を依頼できる素材も見つかります。役目を終えた告知動画、退任した役員が出ている資料、外部サイトに転載されたままの録画。使う予定がないものを減らしておくのは、費用のかからない打ち手です。ここは年に一度、半日で回せる作業として定例化するのが続けやすい形です。
起きた後は、この順番で動く
実際に偽の動画や音声が確認されたときの順番を決めておきます。順番が大事なのは、告知を先にすると、後から事実関係が変わったときに訂正が必要になるからです。訂正は、最初の告知より広がりません。だから記録が先で、告知は後です。
見つけた画面をそのまま保存します。動画そのもの、掲載されている場所、日時、表示されていた文言、可能なら投稿元の表示名。相手が消したら二度と取れないので、社内で共有する前にまず保存します。共有用に加工したものではなく、加工前のものを残します。
本物か偽物かを、決めておいた担当が判断します。判断の材料は映像の見た目ではなく、その発表や指示が実際に社内に存在するかどうかです。存在しないことの確認は、公式の置き場と、当該部署への照会で行います。
送金や情報の送付が実行されていないかを、同じ時間帯の記録で確かめます。ここで一件でも実行されていれば、対応の主体は広報から情報システムと財務に移ります。実害の有無で動き方が変わるので、告知より先に確かめます。
掲載されている場所の運営者へ削除を求め、必要に応じて所轄の窓口へ相談します。申告には第1工程の記録をそのまま添えます。ここで求められるのは、偽物である根拠を自社が示せることです。公式の一覧を整えておくと、この提出物が短くなります。
自社サイトの公式の置き場に、事実と、当社の発表ではないこと、確認された範囲、問い合わせ先を書きます。断定できない部分は断定しません。分かっている範囲と、まだ確認中の範囲を分けて書くほうが、後の訂正が減ります。
経緯、判断した人、時刻、申告先、結果を一件の記録にまとめます。次に同じことが起きたときに読む資料であり、取引先から経緯を聞かれたときに出す資料でもあります。ここで折り返しの線や公式の一覧に不足が見つかれば、その場で直します。
この六つのうち、最も飛ばされやすいのは第3工程です。外向けの否定に人手が集まり、社内で実行されたかどうかの確認が後回しになります。外への告知より、社内での実行の有無を先に確かめる。順番を紙に書いておく価値は、ほぼここにあります。そして第1工程の記録は、起きてから項目を考えると必ず抜けます。抜けるのは、後から取り直せないものばかりです。掲載場所の見え方も、表示されていた文言も、翌日には変わっています。項目と保存の担当を、平時のうちに決めておきます。
| 残すもの | 具体的に何を | いつまでに | 後で何に使うか |
|---|---|---|---|
| 現物 | 動画や音声のファイル、画面の保存 | 発見から1時間以内 | 削除の要請と、事実関係の証明 |
| 場所 | 掲載されていた場所、表示名、掲載の形式 | 同上 | 同じ出し手による再掲載の把握 |
| 時刻 | 発見の時刻、社内共有の時刻、判断の時刻 | その日のうち | 対応の遅速の説明と、手順の見直し |
| 社内の動き | 誰が判断したか、どの部署へ照会したか | その日のうち | 取引先への経緯説明と、次回の担当決め |
| 実害 | 実行された依頼の有無、対象、金額 | 24時間以内 | 被害の届け出と、社内手順の是正 |
| 外向けの発信 | 告知の文面と掲載時刻、問い合わせの件数 | 対応の終了時 | 訂正の要否判断と、再発時の文面の下敷き |
この表で押さえておきたいのは、記録の目的が二つあることです。一つは削除や届け出のための材料、もう一つは自社の対応が妥当だったと説明するための材料です。後者は、取引先から「なぜもっと早く否定しなかったのか」と聞かれたときに効きます。時刻の入っていない記録は、この用途ではほとんど使えません。時刻が入っていない記録は、この用途では使えません。
AIに任せてよい範囲と、人が握る範囲
この領域でもAIは使えます。ただし使いどころを間違えると、対策そのものが弱くなります。任せてよいのは、探すこと、まとめること、下書きを作ることです。自社名を含む投稿や動画を広く拾ってくる、大量の記録から時系列を組み立てる、告知の文面を複数案作る。ここは人がやるより速く、抜けも少なくなります。
任せてはいけないのは、本物か偽物かの決定と、外に出す文面の最終確定です。判定の道具が返すのは確率であって事実ではありません。確率を根拠に「偽物である」と外に告知して、後から本物だったと分かった場合の損害は取り返せません。だから、判定の出力は「人が確かめる順番を決めるための材料」として使い、決定には使わない、と先に決めておきます。
もう一つ、使うなら根拠を書かせます。どの投稿を、どの語で拾い、いつ時点の情報かを出力に必ず添えさせる。根拠のない一覧は、確認の手間を減らすように見えて、確認できない情報を増やすだけです。人が確認する範囲を先に決め、その範囲の外はAIに任せない。この線引きは、対策の設計そのものです。
よくある質問
偽物を判定する道具を入れれば、対策は足りますか
足りません。判定の道具は疑わしいものを絞り込む役には立ちますが、実行してよいかどうかを決めるのは人です。また、判定の道具は生成の側の改良に追いかけられる立場にあるので、確度は時期によって変わります。道具を入れる場合も、折り返しの経路と公式の置き場は別に整えておく必要があります。
役員の動画や音声は、公開しないほうがよいのでしょうか
公開をやめる判断は、たいてい割に合いません。発信は事業のために必要ですし、すでに出ている素材は消えません。現実的なのは、どれだけ外に出ているかを把握したうえで、その人名義の指示に対する確認の線を厳しくすることです。露出の量を減らすのではなく、露出を前提に手順を組みます。
小さな組織では、どこから手を付けるとよいですか
最初の一つを選ぶなら、折り返しの線です。金額と種類を決めて紙に落とし、経理と情報システムの担当に配る。ここまでなら半日で終わります。次に、公式の発表をサイトの一か所にまとめる作業を入れます。人手をかけずに効くのはこの二つで、合言葉や棚卸しはその後で構いません。
取引先をかたられた場合、こちらから注意喚起すべきですか
事実の確認が先です。相手先に登録済みの連絡先で照会し、相手側が把握しているかを確かめます。自社の判断だけで他社名を出した注意喚起を行うと、事実関係が違ったときに相手の信用を損ねます。自社に届いた事実と、自社が取った対応の範囲で書くのが安全です。
提言の内容は、いつから守る必要がありますか
提言は法律ではないので、そのままでは事業者への義務にはなりません。ただし、広告主の本人確認や、AIで作成したことの明示といった論点は、制度化された場合に自社の広告運用にも関わります。今の段階でできるのは、自社が出稿している広告の出し手情報と、生成物を使った素材の記録を残しておくことです。
まとめ
偽の動画と音声への備えは、見破る力を鍛える話ではありません。手がかりは古くなり、判定を人の目に預けた設計は、忙しい現場から順に崩れます。確かめる対象を中身から経路に移すこと——これが出発点です。情報処理推進機構の2026年の一覧で、AIの利用をめぐるリスクが組織向けの3位に初めて入り、同じ一覧の10位にビジネスメール詐欺が残っていることは、この読み方を支えています。
被害は三つの向きに割れます。自社の名をかたる型、社内の誰かをかたる型、外の誰かをかたって届く型。向きごとに最初に気づく場所が違うので、窓口と一次判断の担当を分けて決めます。事前に決めるのは、金額と種類で引く折り返しの線、合言葉の配り方と使いどころ、公式の一覧の置き場、そして役員の音声と映像の棚卸しの四つです。
起きた後は順番が効きます。記録を先に取り、社内で一次判断をし、実行の有無を確かめてから、申告と告知に進む。外への否定を急いで、社内での実行を見落とすのが最も痛い失敗です。制度の側は、広告主の本人確認や削除の期限を含む提言が2026年5月に出された段階で、まだ動いている最中です。制度が固まるのを待つのではなく、自社の側で決められる四つを先に決めておく。それが、この時期に取れるいちばん確実な備えになります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
