AIマーケティングとは何か?|全体像と始める順番

AIマーケティングとは何か?|全体像と始める順番

「AIマーケティングを始めたいのですが、まずどのツールを入れればいいですか」「ツールは入れました。ただ、前と何が変わったのかを聞かれると答えられません」——このメディアに届く相談で、この2つは驚くほど頻繁に並んで現れます。じつは同じ誤解の表と裏です。AIマーケティングは、特定の道具の名前でも、新しい施策の名前でもありません。本当は、マーケティングの仕事のどこを機械に渡し、どこを人が握るかを決め直す作業のことです。だから道具から入ると、入れたあとに何が変わったかを説明できなくなります。この記事では、AIマーケティングを3つの層に分けて整理し、業務のどこに何が効くのかを地図にしたうえで、着手の順番を6つの工程として示します。


カメ先生カメ先生

AIマーケティングって、新しいツールを入れることだと思われがちなんだけど、本当は「どの仕事をどこまで機械に渡すか」を決め直すことなんだ。


カメ子カメ子

ツールを入れたのに前と変わらない、という話はよく聞きます。


カメ先生カメ先生

そう。渡す範囲を決めないまま入れると、それぞれが好きなところで少しずつ使って、全体では何も動かない。だから業務の地図を先に描くことになる。


カメ子カメ子

地図が先で、道具はその後なんですね。


この記事のポイント
  • AIマーケティングは3つの層に分かれる。予測する層、作る層、実行する層で、人が握るところが違う
  • 業務は調査、制作、配信、分析、運用の5領域に割る。領域ごとに効きやすい仕事と効きにくい仕事がある
  • 着手の順番は、業務を決める、場所を作る、役割を書く、材料をそろえる、測る、確かめるの6工程

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目次

「AIマーケティング」という言葉が、いま指しているもの

この言葉には決まった定義がありません。文脈によって、広告の配信を自動で最適化する仕組みを指すこともあれば、原稿を書かせる使い方を指すこともあり、顧客の行動を予測する分析基盤を指すこともあります。相談の場で話が噛み合わないのは、同じ言葉で互いに別のものを指しているからです。

だから最初にやるべきは、言葉の定義を探すことではなく、自社が何の話をしているのかを切り分けることです。切り分け方はいくつもありますが、実務でいちばん役に立つのは「その仕組みは何をしているのか」で分ける方法です。当てるのか、作るのか、動かすのか。この3つは、必要な材料も、失敗の仕方も、人が確認すべき場所も違います。

もう1つ押さえておきたいのは、AIマーケティングという言葉が指す範囲は、その会社が実際に手を付けている範囲より必ず広いということです。世の中の記事は先進的な事例を扱うので、読むほど自社が遅れているように見えます。比べる相手は他社の事例ではなく、自社の業務のどこが空いているかです。

3つの層に分けると、話が噛み合うようになる

1つ目は、過去のデータから次を当てる層です。反応しそうな相手を抽出する、問合せを振り分ける、離れそうな顧客を見つける。統計的に当てにいく仕組みで、生成AIが広まる前からマーケティングで使われてきました。2つ目は、与えた材料から文や図を書き起こす層。3つ目は、決めた手順に沿って道具を操作する層です。

何をする仕組みかマーケでの現れ方人が握るところ
当てる層過去のデータから次を予測し、仕分ける反応しそうな相手の抽出、問合せの振り分け使ってよい項目と、外す項目の指定
作る層与えた材料から文章や図、画像を書き起こす下書き、要約、言い換え、素材の案出し事実と数値、出してよい表現の確定
動かす層決めた手順に沿って複数の道具を操作する集計の更新、定型連絡の下書きと送信前の準備実行してよい範囲と、止め方の指定

層が違うと、導入の重さがまったく違います。作る層は個人の手元から始められますが、当てる層はデータの整備が要り、動かす層は他の仕組みとつなぐ設計が要ります。順番を飛ばして動かす層から入ると、材料が無いまま自動化することになり、間違いだけが速く広がります

失敗の仕方も違います。当てる層は、偏った過去のデータをそのまま学ぶと、偏った結果を安定して出し続けます。作る層は、事実と違う内容をもっともらしく書きます。動かす層は、間違いに気づく前に次の処理へ進みます。層ごとに見張る場所が違うので、「AIの精度をどう担保するか」という1つの問いに、1つの答えは存在しません

なぜ「ツールを入れること」が目的になってしまうのか

道具から入るのには理由があります。道具には名前があり、価格があり、比較できる形をしています。一方で業務の地図には名前がなく、社内の誰も持っていません。比べられるものだけを比べているうちに、決めやすいところから決まっていくのが、この分野で最も起きやすい順番の入れ替わりです。

裏付けもあります。総務省の令和7年版情報通信白書(2025年7月公表)によると、生成AI導入に際しての懸念事項として日本で最も多かったのは「効果的な活用方法がわからない」でした。次いで社内情報の漏えい等のセキュリティリスク、運用の費用、初期の費用が挙がっています。費用でも安全性でもなく、使いどころが分からないことが筆頭の障害だったという結果です。

使いどころが分からないまま道具を入れると、使う人が自分で使いどころを探すことになります。結果として、熱心な数人の手元だけで成果が出て、部署としては何も変わらない状態が生まれます。地図を先に描くのは、この分散を防ぐためです。地図は完成させる必要がありません。5つの領域に自社の業務を置いて、どこに時間が集中しているかが見えれば、最初の1件を選ぶには十分です。

業務の地図:調査、制作、配信、分析、運用

マーケティングの業務は、施策の名前で並べると数十個になります。しかしAIを当てる場所を考えるときは、5つに畳んだほうが判断しやすくなります。調べる、作る、届ける、読む、回す。この5領域それぞれに、効きやすい仕事と効きにくい仕事があります。

領域効きやすい仕事効きにくい仕事先に決めておくこと
調査公開情報の下調べ、長い資料の要点出し、論点の洗い出し数値の確定、出典が信頼できるかの判断一次情報に当たる範囲
制作下書き、言い換え、構成案、素材の候補出し事実確認、表現してよいかの判断、最終稿の言い切り誰が最終稿を承認するか
配信送る文面の案、出し分けの条件の整理送信の可否、送り先名簿の確定実行の直前に人が挟まる場所
分析集計の下ごしらえ、傾向の言語化、異常値の指摘因果の断定、次にどこへ投資するかの判断使う数字の定義と出どころ
運用定型連絡、記録の整理、問合せの一次仕分け例外対応、苦情への判断例外を人に戻す条件

この表の右2列が本題です。効きにくい仕事に共通するのは、間違えたときに外部へ影響が出ることと、正しさを機械の側では確かめられないことです。数値の確定、送信の可否、因果の断定、苦情の判断。どれも材料の外側にある知識が要ります。

各領域の具体的な進め方は、それぞれの各論に譲ります。この記事で押さえておきたいのは、同じ「マーケでAIを使う」でも、領域によって任せられる深さがまったく違うという点です。制作は深く任せられ、配信は浅くしか任せられません。

日本の企業は、いまどこにいるのか

総務省の令和8年版情報通信白書(2026年7月公表、調査は2025年度企業向け調査)は、日本・米国・ドイツ・中国の4か国を対象にした企業調査の結果を載せています。生成AIについて「積極的に活用する方針である」または「活用する領域を限定して利用する方針である」と答えた企業は日本で68.9%となり、前年度調査の49.7%から大きく上がりました。企業規模別では大企業74.0%、中小企業58.1%です。

自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた割合も、日本で86.4%に達しています。前年度の55.2%からの伸びで、他の3か国との差は縮まりました。使っているかどうかを問う段階は、すでに終わっていると考えたほうが実態に近い数字です。

ただし、組織として取り組んでいるかを問うと様子が変わります。同じ調査で「組織的な取組はない」と答えた割合は日本で27.0%あり、米国・ドイツ・中国に比べて顕著に高い結果でした。使われてはいるが、業務の設計としては手が付いていないという状態が、およそ4社に1社という規模で残っています。

マーケティングの領域は、まだ手が付いていない側にある

同じ白書には、業務類型ごとの活用状況を日本について示した図表があります。最も高いのは議事録やメールの作成補助で、3つの活用区分の合計は71.2%。次いで営業・販売が59.6%、社内ヘルプデスクが50.9%と続きます。マーケティング・広報は49.4%で、13の類型のなかでは中位にあり、未導入と答えた割合は27.6%でした。

内訳を見ると性格がはっきりします。マーケティング・広報で「業務の流れがAIを中心に変更されている」と答えた割合は7.4%で、議事録・メール作成補助の11.3%を下回ります。残りは部署内の特定業務での活用と、従業員が個人作業の効率化で使っている段階です。さらに差が出るのが効果の側で、導入効果を感じると答えた割合は議事録・メール作成補助が72.3%で突出しているのに対し、マーケティング・広報は36.6%にとどまります。手は付いているのに、効いている実感が半分程度しか無いのがこの領域の現在地です。

原因は道具の性能ではなく、当て方にあると考えるほうが自然です。文書作成の補助は、任せる範囲が最初から明確でした。一方でマーケティングの仕事は、調査から運用まで性質の違う作業が連続しています。どこで任せ、どこで人に戻すかを決めないまま入れると、効果が薄まる。地図を描く価値は、まさにこの部分にあります。

先行している事例は、どこを機械に渡しているか

同じ白書は、マーケティング領域の先行事例として2社を挙げています。1社は、顧客が商品やサービスを知ってから購入や利用に至るまでの道筋を作る作業や、コンテンツを生成する仕組みを開発・導入し、業務ごとに特化したAIを組み合わせてマーケティングそのものを作り替えることを構想しているとされます。市場調査については、1億人規模の仮想的な人物像を再現する調査用のモデルを開発し、時間の制約を受けずに聞き取りや調査を行えるほか、対象者の確保が難しい属性についても聞き取りができるようになるとしています。

もう1社は、インターネット広告で大量の制作物を扱うにあたり、効果的な文言や画像を予測して自動で作る仕組みを開発しています。静止画にとどまらず動画広告についても自動化を進めており、完全に自動での生成を2026年中に実現することを目指すとしています。加えて、広告主が指定したルールに基づいて制作物を審査する仕組みも提供しているとされます。

2社に共通しているのは、量が多い工程から機械に渡し、判断の基準は人が指定していることです。審査は自動で行われますが、その基準を決めているのは広告主です。渡しているのは判断そのものではなく、判断を大量に適用する作業のほうだと読めます。先行事例から実務が持ち帰れるのは、規模ではなくこの切り分け方です。

この記事で使う言葉の整理

生成AI

与えた材料や指示をもとに、文章、画像、音声などを書き起こす仕組みを指します。マーケティングでは制作と調査の領域で使われることが多く、下書きや要約に向きます。確率的に次の語をつないでいく仕組みなので、事実の正しさそのものを保証する機能は持っていません。

予測に使うAI

過去のデータから、次に何が起きるかを当てにいく仕組みです。反応しそうな相手の抽出や、離脱しそうな顧客の検知に使われます。学習に使ったデータが偏っていると、その偏りを安定して再現します。だから、どの項目を使い、どの項目を使わないかを人が指定する必要があります。

AIエージェント

指示を受けて、複数の手順を自分で組み立てながら道具を操作する仕組みです。集計の更新や定型連絡の準備のように、手順が決まっている仕事から使われ始めています。実行してよい範囲と止め方を先に決めておくことが前提になります。段階の設計は別の記事で扱います。

ハルシネーション

事実とは異なる内容を、もっともらしい文章として出力してしまう現象です。令和8年版白書でも、生成AIの特性として名指しされています。文章として自然なので、読み手が違和感を持ちにくいところが実務上の厄介さになります。

過剰な同調

利用者の言い分に合わせて、迎合した答えを返してしまう現象です。同じ白書は、ハルシネーションと並べてこの現象にも触れています。期待している結論を含んだ質問をすると、その結論を支える材料だけが返ってくるため、社内の合意形成に使うと危険な方向に働きます。

人が確認を挟む設計

業務の流れのどこに人の判断や確認を入れるかを、あらかじめ決めておく考え方です。白書が紹介する先進企業の事例でも、AIに行わせたほうがよい工程と、人が責任を取らなければならない工程を見極めたうえで、人の判断を適切に介在させる設計が重視されていると述べられています。

始める順番は6つの工程

ここからが本題です。順番は、組織の段階ではなく業務の側で決めます。試行から横展開へ、という組織の話は別の記事に譲り、ここでは「どの業務に、何を、どこまで当てるか」を決める順番だけを扱います。

STEP1
どの業務から手を付けるかを決める

5領域の地図に自社の業務を置き、時間が集中していて、間違えても外部に影響が出ない仕事から選びます。

STEP2
安全に触れる場所を先に作る

入力した情報の扱いが確認できる環境を1か所そろえます。ここが無いと、各自が自分の判断で手元の道具を使い始めます。

STEP3
人とAIの役割分担を1枚に書く

工程ごとに、補助として使うのか、自分で実行させるのかを分けます。分けた結果を1枚の紙にして共有します。

STEP4
渡す材料をそろえる

参照させる社内の資料と数字を決め、更新の担当を置きます。材料が古いと、出てくるものも古いまま安定します。

STEP5
測れる形にしてから広げる

着手前の時間と品質を記録しておきます。導入前の数字は、導入後には取り直せません。

STEP6
確かめる仕組みを載せる

誰が何をどこまで確認するかを決め、確認した記録が残る形にします。広げるのはその後です。

この6工程は、どれか1つを飛ばすと後ろで必ず戻ってきます。特に飛ばされやすいのが2番目と5番目で、前者を飛ばすと情報の持ち出しが起き、後者を飛ばすと効果を説明できなくなります。

工程1:どの業務から手を付けるかを決める

選ぶ基準は3つです。時間が集中していること、間違えても外部に影響が出ないこと、そして正しさを社内で確かめられること。この3つを満たす仕事は、たいてい調査と制作の前半にあります。長い資料の要点出し、原稿の下書き、構成案の候補出しといった作業です。

逆に、最初に選んではいけないのは、送信の可否や名簿の確定のように実行そのものが外に出る仕事です。最初の1件は、失敗しても社内で止まる仕事から選びます。ここで学べるのは、どのくらいの品質のものが返ってくるかという肌感覚で、これが後の工程すべての基準になります。

選んだあとは、その業務の現在の所要時間を測っておきます。作業を工程に割り、それぞれ何分かかったかを3件分だけ書き出せば十分です。測っていない業務は、あとで効果を説明できません。ここを省くと、6工程目でつまずきます。

工程2:安全に触れる場所を先に作る

令和8年版白書は、効果を出す最初の一歩として、比較的安価で導入しやすい汎用のAIを個人作業で使えるようにし、それを組織的に浸透させることを挙げています。あわせて、社員が個人の判断で業務にAIを使う状態を「シャドーAI」と呼び、入力した機密情報が流出する危険をはらむと指摘しています。

使ってよい場所を先に用意しないと、使ってはいけない場所で使われます。これは規律の問題ではなく順番の問題です。手元に締切があり、目の前に道具がある状況では、誰でも早いほうを選びます。用意すべきなのは、入力した情報が学習に使われない設定を管理者側でかけられる環境が1か所あることです。

ルールの中身をどこまで書くかは別の議論になりますが、順番としては場所が先です。同じ白書によると、日本の企業がリスク対策として最も多く挙げたのは「全社的な指針やガイドラインを整備している」で41.1%でした。一方、他の3か国では導入段階の審査や導入後の定期的な評価のほうが高くなっています。書いた規程の数ではなく、確かめる場面がいくつあるかで差が付いています

工程3:人とAIの役割分担を1枚に書く

同じ白書は、業務の変革に取り組む段階で検討すべき問いを明確に書いています。業務の流れ全体を見て、どの作業はAIを人の思考や判断の補助として使い、どの作業はAIに自律的に実行させるべきかを検討し、そのうえで流れ全体を設計するというものです。補助として使うのか、実行を任せるのかは、作業ごとに分かれます

書き方は難しくありません。選んだ業務の工程を左に並べ、右に3つの列を作ります。任せる、下書きだけ作らせる、人がやる。この3列に振り分けるだけで、確認の場所がどこに要るかが自動的に決まります。振り分けた表は共有し、変えるときは日付を入れて上書きします。1枚に収まらないなら、対象の業務が広すぎるという合図です。

先進企業の事例として白書が紹介しているのも、この考え方です。AIに行わせたほうがよい工程と、人が責任を取らなければならない工程を見極めたうえで、人の判断や確認を適切に介在させる設計を重視するというもので、業務の流れの作り直しとセットで語られています。役割分担は道具を選ぶ前に書く。分担が決まっていれば、必要な機能も自然に絞られます。

工程4:渡す材料をそろえる

生成AIは、渡していない情報を知りません。自社の価格、実績、過去の提案、用語の使い分け、言ってはいけない表現。これらを渡さずに使うと、返ってくるのは一般論になります。逆に言えば、材料の質が、そのまま出力の質の上限になります。

マーケティングの領域で先行している事例も、この点を裏付けています。白書が挙げる広告分野の事例では、効果的な広告の文言や画像を予測して自動生成する仕組みが作られていますが、これは大量の制作物と配信結果の蓄積があって初めて成り立ちます。手持ちの記録が薄い段階で同じことをしようとすると、当てにいく層の精度が出ません。同じ調査では、社内のデータをAIが参照できる形に整えていると答えた企業の割合が米国・ドイツ・中国では5割を超え、日本はこれを大きく下回っていました。差が出ているのは道具ではなく、渡せる材料の側です。

そろえる材料は3種類です。参照させる資料、使ってよい数字とその定義、書き方の決まりごと。それぞれに更新の担当を1人置きます。担当を置かないと、半年後に誰も更新していない資料を参照し続ける状態になり、道具を替えても直りません。材料の整備は、当てる層に進むときにさらに重くなります。文章を作らせるだけなら資料の束で足りますが、予測に使う段階では、項目の定義と欠けている値の扱いまで決めておく必要が出てきます。

工程5:測れる形にしてから広げる

効果を測る形にする前に横に広げると、あとから戻れなくなります。測るのは3つで十分です。かかった時間、直した回数、外に出る前に止まった件数。3つ目は品質の指標として使えます。止まった件数が減らないなら、任せる範囲が広すぎるという合図です。

ここで注意したいのが、効率化だけを指標に置くことの危うさです。令和8年版白書によると、生成AIの活用によって生じうる影響として日本の企業が最も多く挙げたのは「作業時間の短縮などによる業務の効率化」で61.6%でした。「製品・サービスの質の向上」は32.2%、「人員不足の解消」は26.8%にとどまります。

他の3か国では、最も多かったのは製品やサービスの質の向上でした。白書自身も、日本では生成AIが業務効率化の文脈で捉えられている一方、他の3か国ではもう一歩踏み込んだ文脈で捉えられている可能性があると述べています。時間だけを測ると、時間だけが縮んで質は動きません。だから測る指標に品質の側を1つ入れておきます。

工程6:確かめる仕組みを載せる

最後に、確認の設計です。国内の枠組みも整ってきました。AIに関する法律は2025年5月に制定され、同年9月から全面施行されています。2025年12月にはAI基本計画が閣議決定され、あわせて同法に基づく指針が策定されました。

この指針は、適正さを保つために必要な要素として、人間中心、公平性、安全性、透明性、アカウンタビリティ、セキュリティ、プライバシーと個人情報、公正競争、AIリテラシー、イノベーションを挙げています。基本の方針としては、危険度に応じて対応を変えること、関係者を巻き込むこと、一気通貫で仕組みを作ること、状況に応じて柔軟かつ迅速に見直すことが示されています。分野を横断する指針としては、総務省と経済産業省がまとめているガイドラインが2026年に第1.2版まで更新されており、活用する側の事業者が何をすべきかも書かれています。要素をすべて自社で満たそうとすると動けなくなるので、危険度に応じて対応を変えるという方針のほうを先に採ります

マーケティングの現場に落とすなら、確かめるのは4点で足ります。使った材料は何か、生成された部分はどこか、誰がいつ確認したか、外に出す前にどこで止めたか。この4点が残っていれば、後から問われたときに答えられます。残っていなければ、担当者の記憶が唯一の記録になります。

AIに判断させないための線引き

この記事で一貫している主張は1つです。AIは案を出す側であって、決める側ではありません。決めるのは人で、そのために必要なのは、案とあわせて根拠を書かせることと、人が確認する範囲を作業に入る前に決めておくことです。後から確認するのではなく、確認する場所を先に決めます

根拠を書かせるのは、正しさを保証させるためではありません。疑うべき場所を絞るためです。どの資料のどこを見たかが書かれていれば、確認はその箇所だけで済みます。書けない部分が出てきたら、そこは材料に無い情報を書いたということなので、優先して確かめます。

  • 生成された数字をそのまま資料や広告の文言に載せ、出どころの確認を後回しにする
  • AIが出した優先順位をそのまま予算配分に使い、なぜその順位なのかを誰も説明できない状態にする
  • 期待している結論を含んだ聞き方をして、返ってきた材料を根拠として扱う
  • 外部に出る文面の最終確認を、生成した本人だけに任せる
  • 「正確に書いて」と付け足すことで、事実確認の工程を省いたことにする

線引きを決めたら、それを守れる形に業務のほうを直します。確認の時間が業務の中に確保されていなければ、線引きは初日から守られません。作る時間が半分になったなら、浮いた時間の一部は確認に戻すのが現実的な設計です。

  • この業務でAIに任せるのは、案を出すところまでか、実行までか
  • 外に出る前に必ず人が見る場所は、どの工程か
  • 確認するのは誰か。役職ではなく、数字の出どころを知っている人になっているか
  • 生成された部分と人が書いた部分は、後から見分けられるか
  • 材料として渡した資料は、いつ誰が更新するか
  • 確認の担当は1人に決める。複数人で見る取り決めは、結果として誰も見なくなる
  • 根拠が書けなかった箇所は、材料に無い情報を書いた疑いがあるものとして扱う
  • 線引きは半期に一度見直す。任せる範囲は、記録が増えるほど広げられる

まとめ

AIマーケティングとは、道具の名前でも施策の名前でもなく、マーケティングの仕事のどこを機械に渡し、どこを人が握るかを決め直す作業のことです。仕組みは、過去から次を当てる層、材料から文や図を作る層、決めた手順で道具を動かす層の3つに分かれ、必要な材料も、失敗の仕方も、人が見張る場所も違います。

業務は調査、制作、配信、分析、運用の5領域に畳んで地図にします。効きにくい仕事に共通するのは、間違えたときに外へ影響が出ることと、正しさを機械の側では確かめられないことです。数字で見ると、日本の企業の86.4%が何らかの業務で生成AIを使っている一方、マーケティング・広報の領域で効果を感じていると答えたのは36.6%でした。手は付いているのに効いていないのは、当て方が決まっていないからです。

着手の順番は6工程です。手を付ける業務を決め、安全に触れる場所を先に作り、人とAIの役割分担を1枚に書き、渡す材料をそろえ、測れる形にしてから広げ、確かめる仕組みを載せる。この順番を守れば、道具を替えても土台は残ります。個別の施策をどう進めるかは各論に譲りますが、地図と順番だけは、施策の数が増えるほど効いてきます。案は出させ、根拠は書かせ、決めるのは人。この線を引いたうえで始めることが、遠回りに見えて最も速い道になります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?

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