許可外のAI利用が広がる原因|シャドーAIの見つけ方

総務省が2026年7月24日に公表した令和8年版の情報通信白書によると、活用方針を「わからない」と答えた企業を除いた集計で、自社の何らかの業務で生成AIを使っていると答えた企業は86.4パーセントに達しました。前年度は55.2パーセントでした。ところが同じ白書では、利用を禁止していると答えた企業を除いた集計で、業務変革への組織的な取り組みはないと答えた企業が27.0パーセント残っています。使う人は一気に増えたのに、会社としての形が追いついていない。「部下がどのAIを使っているのか、正直に言うと分かりません」「経費の申請で初めて、部署が個別に契約していたと知りました」。情報システム部門とマーケティング部門の管理者から、この二つが並んで届きます。管理の甘さの話に見えますが、原因はそこではありません。承認が遅く、配られた道具が業務に合っていない状態では、個人で契約するほうが速い。合理的な行動として広がっています。この記事では、会社が把握していない生成AI利用をどう見つけ、どこまでは見えないのかを整理し、全面禁止ではなく許可制へ移す順番までまとめます。
カメ先生会社が知らないAI利用って、ルールを守らない人の問題だと思われがちなんだけど、本当は『正規の道具が業務に届いていない』ことの表れなんだ。
カメ子決まりを破っているわけではない、ということですか。
カメ先生破っている人もいる。ただ多いのは、既存の道具に後から付いたAIの機能を、自覚なく使っている型だね。本人はAIを使っているつもりがない。
カメ子それだと、聞いても出てこないですね。探し方から考え直します。
- 原因は三つに絞れる。承認が遅い、配られた道具が業務に合わない、個人の契約のほうが速く安く見える
- 実態は一つの手段では掴めない。通信の記録・経費の申請・業務の棚卸し・匿名の申告を組み合わせる
- 全面禁止は利用を減らさず、見えなくするだけ。正規の道具を配ってから禁止の線を引く
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使う人は増えたのに、会社としての形が空いている
最初に数字の意味を正確にそろえます。先ほどの86.4パーセントは、活用方針を「わからない」と答えた企業を除いた上での割合であり、全企業を分母にした利用率ではありません。それでも前年度の55.2パーセントからの動きは大きく、業務のどこかで生成AIが使われている状態は、もはや例外ではないと読めます。問題は利用の広がりではなく、その広がりに会社としての形が付いていないことです。
同じ白書の別の数字がそこを示しています。生成AIの利用を禁止していると答えた企業を除いた集計で、業務変革への組織的な取り組みはないと答えた企業は27.0パーセント。規模別では大企業が18.1パーセント、中小企業が45.6パーセントです。国際比較では米国が1.4パーセント、ドイツが4.9パーセント、中国が2.6パーセントと示されており、日本では使い始めたあとに会社としての取り組みへ進まない例が多いという形になります。
個人の側の数字も添えておきます。生成AIの利用経験がある人は日本で58.8パーセント、前年度の26.7パーセントから大きく伸びました。一方で、利用の理由に内容の正確さや中立性を挙げた人は12.7パーセント、気をつけていることはないと答えた人は24.6パーセント、著作権に配慮していると答えた人は14.6パーセントにとどまります。使う人は増えたが、注意しながら使う人は増えていない、という形です。会社が把握していない利用が危ないのは、この差のためです。
用語をそろえる:シャドーITとシャドーAI
次に言葉を整理します。社内で議論がかみ合わない原因の多くは、指しているものがずれていることです。会社が把握していないクラウドや端末の業務利用を指すシャドーITは以前からある概念で、多くの情報システム部門が対処してきました。生成AIについて語られるシャドーAIは、その一種ではあるものの、扱いが変わる点が三つあります。入力した内容を回収できないこと、出力が業務の判断に混ざること、そして本人に自覚がない場合があることです。
一つ目が最も重い違いです。クラウドに保存したファイルは、場所をたどれば何がどこにあるか分かり、消すこともできます。ところが生成AIに入力した内容は、学習に組み込まれた場合、原則として回収できないと整理されています。二つ目は影響の範囲です。出力の質は、対外に出す文章や社内の意思決定にまで波及します。単に情報が外に出たかどうかの話では終わりません。
| 用語 | 指しているもの | 見分ける手がかり |
|---|---|---|
| シャドーIT | 会社が把握していないクラウドや端末の業務利用 | 保存した場所をたどれば、何がどこにあるか分かる |
| シャドーAI | 会社が把握していない生成AIやAI機能の業務利用 | 入力した内容は戻せず、出力が判断に混ざる |
| 自覚のないシャドーAI | 既存の道具に後から付いたAI機能の利用 | 本人はAIを使っているつもりがない |
| 部門契約のシャドーAI | 情報システム部門を通さない部署単位の契約 | 経費の申請にだけ跡が残る |
表の三行目と四行目を分けたのには理由があります。聞き方と探し方がまったく違うからです。自覚のない利用は聞いても出てこないし、部門契約は通信の記録では見つかりにくい。どちらか一つの手段しか持っていない状態で「うちは把握できている」と判断すると、抜けたまま進みます。
いちばん多いのは、使っている自覚のない利用
実態の把握でつまずく最大の理由が、この型です。表計算や会議の道具、営業の管理システム、資料の共有サービス。すでに社内で使っている道具に、後からAIの機能が付きます。要約のボタン、下書きの提案、会議の書き起こし。使う側からすれば新しい機能が増えただけで、生成AIを使い始めた感覚がありません。アンケートで「生成AIを業務で使っていますか」と聞くと、この層は迷わず「いいえ」と答えます。
解説記事では、AIの機能が既存の道具へ標準で搭載され、AIを使っているという自覚がないまま利用が広がったと指摘されています。ここで見落とされるのは、機能が動くときに何がどこへ送られているかです。会議の音声、共有フォルダの資料、顧客とのやり取り。通常の機能として動く分だけに、入力の中身は最も業務に近いものになります。
だから棚卸しは、サービスの名前ではなく機能の単位で聞きます。会議の書き起こしを自動で作っているか、資料の要約を機能で出しているか、メールの下書きを提案させているか。この聞き方に変えると、これまで出てこなかった利用が一気に見えます。「AIを使っているか」ではなく「その機能を使っているか」と聞く。加えて、ブラウザに入れた拡張機能や、開発者が使う補完の機能も同じ型です。
原因1:承認が遅く、その間に業務が進んでしまう
原因の一つ目は承認の速度です。新しい道具を業務で使いたいと申請してから、情報システム部門の確認、購買の手続き、契約の締結を経て使えるようになるまでに、数週間から数か月かかる会社は珍しくありません。その間も締め切りは動きません。手続きの所要時間が業務の締め切りより長いとき、抜け道は必ず生まれます。解説記事でも、正規の道具の提供が遅いことが原因の第一に挙げられています。
ここで責めるべきなのは申請した側ではありません。承認が遅い理由の多くは、確認する側に判断の基準がないことです。この情報は入力してよいのか、この契約形態なら学習に使われないのか。基準がないと、一件ごとに調べ直すことになり、担当者の負荷で止まります。基準を作れば速くなる、という関係です。
実務としては、判断を二段に分けると効きます。すでに社内で承認済みの道具の一覧に載っているものは、部門の判断で使える。載っていないものだけを個別に審査する。承認済みの一覧を先に厚くしておくほど、個別の審査は減ります。あわせて、審査に何日かかるのかを申請者に示してください。いつ返ってくるか分からない状態が、抜け道の最大の動機になります。
原因2:配られた道具が業務に合っていない
二つ目は、正規の道具の中身です。全社に配ったのに使われず、個人の契約が続いている例はよくあります。理由は使い勝手の差だけではありません。入力できる文字数の上限が低い、扱えるファイルの形式が足りない、社外の資料を読み込ませられない、返答が遅い。業務で必要な条件を満たしていないと、担当者は結果を出すために別の手段を探します。配ったことと、業務で使えることは別です。
見落としがちなのが権限の設計です。安全のために制限を厚くかけた結果、必要な資料を読み込ませられず、実務では使えない状態になっている例があります。制限は必要ですが、どの業務のどの工程で足りなくなるかを確かめないまま設定すると、使われない道具が残ります。使われない道具は、費用だけがかかり、実態の把握にも役立ちません。
確かめ方は簡単で、部門ごとに実際の作業を一つ選び、正規の道具だけで最後まで通せるかを試してもらうことです。途中で止まった箇所が、そのまま抜け道の理由になっています。止まった箇所を記録しておくと、次の契約更新の交渉材料になります。ここを聞かずに規程だけを配ると、規程は読まれても守られません。
原因3:個人の契約のほうが速く、安く見える
三つ目は費用と手続きの見え方です。個人の契約は月に数千円で、その日から使えます。会社として契約すると、人数分の費用と管理の手間が発生し、開始も先になります。担当者の目線では、自分で払ってすぐ使うほうが合理的に見えます。しかも成果が出れば評価されるため、動機は強くなります。個人の契約は、費用と速度の両面で会社の手続きに勝ってしまいます。
ただしこの計算には、見えていない費用が入っていません。入力した内容の扱いが会社の契約で守られないこと、履歴が個人のアカウントに残ること、支払いが経費の申請に紛れて全社の費用が見えないこと。海外の調査では、シャドーAIの利用が多い組織のほうが、情報漏えいが起きたときの費用が高くなる傾向が報告されています。アイ・ビー・エムが2025年7月に公表した年次の調査では、600件の侵害事例のうち20パーセントがシャドーAIに関係し、利用が多い組織では約67万ドルの追加の費用が生じたとされています。
実務では、費用の見え方をそろえるところから始めると話が進みます。個人や部門で払っている月額を集めて全社の合計を出すと、会社として契約したほうが安いことがしばしばあります。散らばった月額を合計して見せると、許可制への合意は取りやすくなります。あわせて、個人が立て替えている状態は、退職時に契約と履歴の扱いが問題になる点も伝えてください。
危ないこと1:入力した情報の行き先をたどれない
ここから危険の側を見ます。一つ目は入力です。解説記事の表現を借りれば、入力したデータがどこのサーバーに、どんな形で、いつまで保存されているのかは、使う側からは見えません。個人向けの無料の使い方では、入力が学習に使われる扱いのサービスが多く、法人向けの契約では既定で学習に使わない設計とされます。個人のアカウントを使われた瞬間に、会社が結んだ契約の保証は効きません。
影響は漏えいだけではありません。会社として保存の場所、保持の期間、削除の手続き、誰がいつ何を入力したかの記録を管理できなくなります。顧客から問い合わせを受けたとき、どの情報がどこへ渡ったのかを答えられない状態が生まれます。金融や医療、公共、士業のように、顧客のデータを外部へ送ること自体が規制の対象になる業種では、この一点だけで業法の問題になります。
海外では、2023年に大手電機メーカーの技術者が社内のプログラムや会議の内容を対話型のAIに入力し、社内利用が制限された事例が報じられました。悪意のある行為ではなく、作業を早く終えたい意図から起きています。入力を禁じる情報は、顧客の氏名や見積の金額のように具体名で列挙する。機密情報という言葉だけでは、人によって線が変わります。
危ないこと2:出力の根拠が会社に残らない
二つ目は出力の側です。会社が把握していない利用では、どの資料をもとに何を書いたのかが残りません。対外に出す文章や、社内の判断に使う資料に、誤った内容が混ざっても、あとから経路をたどれません。米国では、弁護士が生成AIの作った架空の判例を法廷に提出し、制裁を受けた事例が報じられています。誤りが起きたときに、どこで混ざったのかを特定できないことが、実務上の最大の損です。
この危険は、規程で禁じても減りません。減らせるのは、根拠を書かせる運用と、人が確認する工程を業務のどこに置くかを決めることです。会社として配った道具であれば、この運用を初期の設定に組み込めます。把握していない利用では、そもそも組み込む場所がありません。実態の把握が必要なのは、責めるためではなく、この工程を置く場所を作るためです。
あわせて、出力の質が業務の判断に混ざる点にも触れておきます。シャドーAIがシャドーITと違うのは、データの移動だけでなく、思考の過程と自律的な判断を伴うところだと整理されています。要約の切り方、比較の並べ方、優先順位の付け方。誰も検証していない出力が、会議の資料の前提になっていくのが、この問題の静かな怖さです。
危ないこと3:費用と、退職後の持ち出しが見えない
三つ目は、事故が起きていないときにも進む損です。まず費用です。部門ごとの契約や個人の立て替えは、経費の科目に紛れます。全社で何にいくら払っているのかが分からないため、値引きの交渉もできず、重複した契約が残ります。費用が見えないうちは、正規の道具に投資する判断も下せません。実態の把握が予算の議論と直結するのは、この点です。
もう一つが、担当者が辞めたあとの話です。個人のアカウントで作業していた場合、入力した資料の履歴、試行錯誤した指示文、作りかけの成果物は、その人のアカウントの中に残ります。会社の側からは消せませんし、引き継ぐこともできません。個人のアカウントに溜めた作業は、退職の日に会社の手を離れます。回収できる前提で運用を組むと、必ず外れます。
さらに、外部のサービスとの連携の許可も点検の対象です。会社のアカウントで外部の道具に権限を渡していると、担当者が辞めても連携だけが残ります。メールや共有フォルダへの権限が生きたままになっている例は珍しくありません。退職の手続きに、AI関連の道具と連携の解除を項目として加えてください。人事の手続きに一行足すだけで済みます。
実態は、四つの手段を組み合わせて掴む
では何をすれば見つかるのか。一つの手段では届きません。次の表は、手段ごとに何が分かり、何が分からないかを並べたものです。重要なのは右の列です。限界を書かないまま把握したと判断することが、最も危ない状態です。四つを組み合わせて、残る空白を空白として認識するところまでが実態の把握になります。
| 掴み方 | 分かること | 限界 |
|---|---|---|
| 通信の記録を見る | 会社の回線から、どのサービスへ何件つながったか | 個人の回線や私物の端末を経由した分は写らない |
| 経費の申請をたどる | 個人や部門で契約している月額の支払い | 無料の枠で使われている分は出てこない |
| 業務の棚卸しをする | どの作業のどの工程でAIが混ざっているか | 答える人の自覚に依存する |
| 匿名で申告を受ける | 使っている理由と、正規の道具の不便な点 | 件数は正確には出ない |
| 外部連携の許可を点検する | 会社のアカウントで何に権限を渡しているか | 許可を出していない使い方は見えない |
進め方には順番があります。まず通信の記録で当たりを付け、次に経費の申請で契約の実態を拾い、そのうえで棚卸しと匿名の申告で自覚のない利用と理由を集める。記録で「どこに多いか」を掴み、人に聞いて「なぜか」を掴む。逆の順で始めると、聞き取りの範囲が広すぎて終わりません。通信の記録は直近三か月分を見れば傾向がつかめます。
見えているという自己申告を疑う
ここで一つ、実態把握の落とし穴に触れます。把握できているという社内の認識は、実際より高く出ます。クラウドセキュリティアライアンスが2026年4月に公表した調査では、把握していないAIの自律的な仕組みを発見した企業が82パーセントに達した一方、可視化できていると答えた企業は68パーセントありました。見えているという回答と、実際に見つかる量の間には差があるという形です。
この差が生まれるのは、見ている範囲が限られているからです。会社の回線と貸与した端末の記録だけを見ていれば、そこに写るものは把握できます。しかし個人の端末、社外の回線、既存の道具に付いたAIの機能、部門の契約は、その視界に入りません。把握率という言葉を使うときは、分母を何にしたのかを必ず添えてください。
実務としては、把握できていない範囲を一覧にしておくことをお勧めします。見えていないことを認識している状態と、見えていないことに気づいていない状態は、事故が起きたときの対応速度がまったく違います。空白の一覧があれば、次に何を見るかを議論できます。あわせて、情報処理推進機構の情報セキュリティ10大脅威では、2026年の組織向けの一覧にAIの利用をめぐるリスクが初めて第3位で入りました。社内で優先度を上げる材料として使えます。
全面禁止が機能しないのは、見えなくなるからです
実態が見えてくると、多くの会社で最初に出る案が全面禁止です。結論から言えば、これは利用を減らしません。減らすのは可視性です。解説記事の表現では、禁止してもリスクは減らず不可視化されるとされ、使い続ける従業員は私物の端末や社外の回線に移り、より見えない場所に潜ると指摘されています。禁止した瞬間に、把握のための手段がほとんど効かなくなります。
理由は動機の側にあります。業務を早く終えたい、成果を出したいという動機は、禁止では消えません。安全な代わりが用意されていない状態で禁止すると、利用は地下に潜ります。しかも潜ったあとは、事故が起きても報告されません。報告されない事故は、初動が遅れ、被害の範囲の特定が後手に回ります。
もちろん、禁止が正しい場面はあります。扱う情報が特に重い業務、規制で外部への送信が制限されている業務、実在の人物に関わる出力。対象を業務単位に絞った禁止は機能します。機能しないのは、全社に一律で出す禁止です。次の五つは、実際に運用が止まった型です。
- 正規の道具を配らずに禁止だけを出す:代わりがないので、私物の端末や社外の回線に移る
- 申告してきた人を処分の対象にする:次から誰も申告せず、実態の把握が止まる
- 通信の記録だけで把握したと判断する:会社の回線を通らない利用が丸ごと抜ける
- 禁止する情報を「機密情報」とだけ書く:何が機密かの判断が人によって違い、線が引けない
- 規程を配って終わりにする:読まれても、業務が回らなければ守られない
許可制へ移す順番を決める
移し方には順番があります。解説記事で共通して勧められているのは、公式の道具を配ることを最初に置く形です。方針の明文化や技術的な検知を先に置くと、代わりがないまま制限だけが増え、地下に潜る流れを止められません。次の五段階は、三か月ほどで一周できる形にまとめたものです。
学習に使わない契約で、管理の機能があるものを選び、対象の部門に配ります。全社一斉でなくても構いません。利用が多いと分かった部門から始めるほうが、効果が早く出ます。
顧客の氏名と連絡先、見積の金額、契約書の条項、未公表の計画のように、具体名で列挙します。機密情報という言葉で済ませると、線が引けません。
承認済み、条件付き、禁止の三つに分けて社内に示します。条件付きには、どの条件を満たせば使えるのかを書きます。一覧に載っていないものだけを個別に審査します。
使っている道具の申告と、正規の道具で足りない場面の相談を受ける窓口を置きます。申告した人を不利に扱わないことを、口頭ではなく書面で示します。
通信の記録と経費の申請を再度見て、一覧に載っていない利用が増えていないかを確かめます。増えていれば、それは規律の問題ではなく一覧の不足です。
この順番の要点は、制限より先に代わりを配ることにあります。使える道具が手元にあれば、禁止の線は守られやすくなります。四段目の窓口も軽く見ないでください。正規の道具で足りない場面は、現場からしか上がってきません。ここが詰まると、三か月後には同じ状態に戻ります。
人が確認する範囲を、先に決めておく
許可制に移しても、確認の工程がなければ出力の危険は残ります。だから範囲を先に決めます。AIの出力をそのまま使わない領域は、業種によらず共通するものがあります。価格や契約条件の提示、法令や規制の解釈、他社との比較で優劣を断定する記述、人や組織の評価に関わる内容、そして数字と固有名詞と日付。間違えたときに取り返しがつかない領域は、必ず人が通す工程を置きます。
あわせて、根拠を書かせる運用を入れてください。どの資料のどの部分をもとにしたのかが添えられていれば、確認する側はそこだけを見れば済みます。根拠が示せない記述は使わない、という一線があるだけで、誤りは大きく減ります。この運用は、会社として配った道具でなければ組み込めません。実態の把握と正規の道具の配布が、ここでつながります。
そして、教育の中身も変えたほうが効きます。危険の一覧を配るだけでは行動は変わりません。自分の業務のどの工程で、何を入力してよく、どこで人が確認するのかを、部門ごとの作業に当てはめて示す。危険の一覧ではなく、自分の作業の中の判断点を教える。四半期ごとに短く繰り返すほうが、年に一度の長い研修より残ります。
最初の一か月で回す棚卸しの手順
最後に、着手のための具体的な手順をまとめます。大がかりな仕組みは要りません。次の項目を一か月で埋めると、社内で議論するための土台ができます。順番は前の章のとおり、記録から人へ。埋まらなかった項目は、空白のまま残してください。空白を空白として示すことが、次の投資の根拠になります。
- 会社の回線から、どの生成AIサービスへ通信が出ているかを直近3か月分で一覧にした
- 個人や部門で契約している月額の支払いを、経費の申請から抽出して合計した
- 既存の業務の道具に後から付いたAIの機能を、機能の単位で書き出した
- 会社のアカウントで外部のサービスに渡している権限を点検した
- 主要な部署に匿名で、使っている道具と使っている理由を聞いた
- 正規の道具で足りていない用途を、止まった箇所とセットで記録した
- 入力を禁じる情報を、顧客の氏名や見積の金額のように具体名で列挙した
- 申告してきた人を不利に扱わないことを、書面で社内に示した
- 把握できていない範囲を一覧にして、次に見る対象を決めた
この一覧を埋める過程で、たいてい予想外のことが二つ見つかります。一つは、正規の道具が配られている部門でも別の手段が使われていること。もう一つは、費用の合計が想定より大きいことです。どちらも許可制へ進む材料になります。
- 実態の把握は犯人探しではなく、代わりを用意するための材料集めだと最初に伝える
- 既存の道具に後から付いたAIの機能は自覚されにくい。棚卸しは機能の単位で聞く
- 個人のアカウントに残る履歴と指示文は、退職の時点で会社の手を離れる。回収できる前提で組まない
- 入力を禁じる情報は具体名で列挙する。機密情報という言葉だけでは線が引けない
- 数値を使うときは、どの調査の、いつの、誰を対象にした数字かを添える。社内の合意はここで崩れやすい
まとめ
会社が把握していない生成AIの利用は、規律の問題ではなく設計の問題です。承認が遅く、配られた道具が業務に合わず、個人の契約のほうが速い。この三つがそろえば、誰がやっても同じ状態になります。危ないのは、入力した情報の行き先をたどれないこと、出力の根拠が会社に残らないこと、費用が見えないこと、そして退職の日に履歴ごと持ち出されることです。実態は一つの手段では掴めません。通信の記録で当たりを付け、経費の申請で契約を拾い、業務の棚卸しと匿名の申告で自覚のない利用と理由を集める。そのうえで、見えていない範囲を一覧にして残します。全面禁止は利用を減らさず、見えなくするだけです。正規の道具を先に配り、入れてよい情報を具体名で決め、道具を三色に分け、申告の窓口を置き、四半期ごとに突き合わせる。この順で進めてください。今週できるのは一つです。会社の回線の記録を直近三か月分だけ抜き出して、どのサービスに何件出ているかを見てみてください。議論はそこから具体になります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
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