全社のAI規程に足す部門ルール6項目|現場で止まらない接ぎ方

全社のAI規程に足す部門ルール6項目|現場で止まらない接ぎ方

「情報システム部門が作った生成AIのガイドラインは読んだ。でも、広告のバナーを生成してよいかは書いていない」「顧客リストを使った分析を頼まれたが、あれは入力してよい情報なのか誰も答えられない」。全社の規程はあるのに、マーケの現場では判断が止まります。これは規程の出来が悪いからではありません。全社の規程は幹であり、部門の実務に必要な枝葉は、部門が自分で足す前提で書かれているからです。この記事では、マーケ部門が足すべき項目と、全社規程への接ぎ方を整理します。


カメ先生カメ先生

生成AIのルールって、全社で1本作れば足りると思われがちなんだけど、本当は幹と枝葉の二段構えなんだ。


カメ子カメ子

全社のガイドラインだけでは足りない、ということですか。


カメ先生カメ先生

そう。全社の規程はどの部門にも当てはまることしか書けない。広告の素材をどう確かめるかまでは、どうしても書けないんだよ。


カメ子カメ子

部門ごとに、書き足す場所が違ってくるんですね。


この記事のポイント
  • 全社規程は幹、部門の追加ルールは枝葉。同じことを二度書かず、参照でつなぐ
  • マーケで足りないのは、顧客データの線引き・素材の権利確認・外注先との分担・表示の方針
  • 配って終わりにせず、現場から来た相談の記録を次の改訂に回す形にしておく

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目次

全社の規程はあるのに、現場で判断が止まる

多くの会社では、情報システム部門や法務が中心になって生成AIの利用ガイドラインを作っています。入力してはいけない情報の区分、使ってよいサービスの申請、出力は人が確認すること。ここまでは、たいてい書かれています。ところが、展示会で集めたアンケートを要約する、広告のバナーの下絵を生成する、取材した事例を記事の体裁に整える。こうした具体の場面に降ろすと、どの条文にも当てはまるようで、どれも決め手になりません。現場は判断を保留し、結局はその場にいた誰かの経験則で決まっていきます。

理由は単純です。全社の規程は、どの部門にも当てはまることしか書けません。営業が扱うのは商談の記録、開発が扱うのは設計の情報、広報が扱うのは公表前の発表資料です。マーケはそのどれとも違い、顧客の一覧と、外に出す表現の両方を同時に抱えています。全部門に通じる書き方をしようとすれば、粒度は必ず粗くなる。粗い規程は間違ってはいませんが、現場の問いには答えないのです。

だから、規程を作り直す必要はありません。必要なのは、幹に枝を接ぐことです。マーケ部門が自部門の実務に合わせて追加ルールを書き、それが全社規程のどこにぶら下がるのかを示す。この接ぎ方が決まれば、現場の「これはやってよいのか」は、ほとんど部門の文書だけで答えが出るようになります。全社の文書を厚くするより早く、法務の負担も増えません。部門が引き受けるのは判断の基準だけで、申請などの手続きは全社の仕組みに乗せたままにできます。

幹と枝葉に分ける——接ぎ方の三原則

接ぎ方には原則が三つあります。第一に、全社規程に書いてあることを部門文書に書き写さない。写した瞬間に、片方だけが改訂されて食い違う未来が確定します。参照するのは見出しや条番号だけにして、中身は引かない。読み手が二つの文書を行き来する手間より、二つの文書が矛盾している状態のほうがはるかに厄介です。二重に書かれた文書は、必ずどちらかが古くなります。

第二に、部門文書は全社規程より厳しい方向にしか書かない。全社が禁じていることを部門が例外的に認める構造は作れません。緩める必要が本当にあるなら、それは部門文書で処理する話ではなく、全社規程の改訂として上げる話です。ここを混同すると、部門が勝手に例外を作ったと見なされ、次に何かを提案するときの信用を失います。厳しくする方向であれば、部門の裁量で書いても筋が通ります。

第三に、優先関係を部門文書の冒頭に一行書いておきます。「本ルールに定めのない事項は全社ガイドラインによる」「両者が矛盾する場合は全社ガイドラインを優先する」。この一行があるかどうかで、法務や監査の確認にかかる時間が変わります。書き手には当たり前でも、読み手が最初に確かめたいのはそこだからです。あわせて、この文書の所管と、次に見直す時期も同じ場所に書いておくと、問い合わせ先を探す手間が省けます。

決めごと全社規程が書くこと(幹)マーケ部門が足すこと(枝葉)
入力してよい情報機密区分ごとの可否と原則配信リストや商談メモなど実物の名前での可否
使うサービス申請と承認の手続き制作で常用する道具の一覧と用途の限定
出力の確認人が最終確認するという原則誰が何を見るかの分担と、上に上げる基準
外部への委託委託先管理の一般的な考え方制作会社への発注書に足す条項と申告の義務
記録保存の年限と管理の責任者外に出る成果物に絞った履歴の残し方

制度側の現在地——二つの動きを押さえる

部門ルールを書く前に、根拠になる制度の現在地を確認しておきます。ひとつが「AI事業者ガイドライン」です。総務省と経済産業省がまとめた指針で、2024年4月に第1.0版、2025年3月に第1.1版、そして2026年3月31日に第1.2版が公表されています。法律ではありませんが、国内でAIの扱いを議論するときの共通の土台になっていて、社内の規程がこれを下敷きにしている会社も多いはずです。まずは自社の全社規程が、どの版を参照しているのかを確かめてください。

第1.2版では、本編にAIエージェントとフィジカルAIの定義が加わり、別添のサービス事例が大幅に増え、同じ事業者が複数の主体を兼ねる場合の整理が明示されました。ここでいう主体とは、AI開発者・AI提供者・AI利用者の三つです。外部のサービスを使うだけならAI利用者ですが、生成の仕組みを顧客向けの機能に組み込めば、提供者としての責務も乗ってきます。問い合わせに自動で答える窓口をサイトに置く、診断のコンテンツを作る。マーケの企画は、この線をまたぎやすい場所にあります。

もうひとつが、通称AI推進法と呼ばれる「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」です。2025年5月28日に成立し、同年6月4日に一部が施行され、2025年9月1日に全面施行されました。罰則を伴う規制法ではなく、内閣に置かれた本部を中心に、国の推進体制と事業者の協力を定める性格の法律です。ただし、悪質な事案では国が実態調査のうえ事業者名を公表しうるとされており、無関係ではありません。国の基本計画は2025年12月に閣議決定されています。

  • ここに挙げた版数と施行日は2026年8月時点で公表されている内容です。指針は改訂される前提なので、年に一度は原文にあたって差分を確認してください
  • 自社の個別の事案が法に触れるかどうかは、この記事では判断できません。線引きが微妙なものは顧問の弁護士に確かめてください

共通の指針を、自部門の成果物の名前に言い換える

AI事業者ガイドラインには、立場を問わず共通して求められる指針が並んでいます。人間中心、安全性、公平性、プライバシーの保護、セキュリティの確保、透明性、アカウンタビリティ、教育とリテラシー、公正な競争の確保、そしてイノベーション。並べただけでは抽象的ですが、部門の言葉に置き換えると、書くべき項目がそのまま出てきます。逆に言えば、この十項目のどれにも紐づかない項目は、部門ルールに入れる理由が弱いということでもあります。

たとえば公平性は、マーケでは「特定の属性を不利に扱う訴求になっていないか」という広告表現の確認になります。透明性は「生成したものだと読み手に分かるようにするか」という表示の方針に、アカウンタビリティは「後から根拠を出せるか」という記録の設計になります。安全性とセキュリティの確保は、どの道具に何を入れてよいかの線引きに落ちます。抽象的な原則を、自部門が実際に納品しているものの名前で言い換える。これが翻訳の作業です。

この翻訳を飛ばして、指針の言葉のまま部門文書に貼り付けると、読まれない文書がもう一つ増えるだけです。現場が探しているのは原則の再確認ではなく、目の前のバナーを公開してよいかの判断材料です。原則をそのまま写した部門ルールは、読まれないまま形だけ残ります。翻訳できない項目は、無理に部門文書へ持ち込まないほうが健全です。書けるようになるのは、たいてい似た相談が二つ三つたまってからです。

入れる項目その1 顧客データをどこまで渡すか

マーケ部門でいちばん問い合わせが多いのが、顧客の情報を対話型の生成AIに入れてよいか、という問いです。個人情報保護委員会は2023年6月2日付で「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しています。そこでは、個人情報を含む指示文を入力する場合、あらかじめ特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認するよう求めています。つまり最初に確かめるのは情報の中身ではなく、その情報を何のために集めたのか、という出発点です。

さらに、本人の同意を得ずに個人データを含む指示文を入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合には、法の規定に違反する可能性があるとされています。つまり、入力してよいかどうかは、情報の中身と、使うサービス側がその情報をどう扱うかの、両方で決まります。同じ文面でも、入力した内容が学習に使われない設定になっているかどうかで話が変わります。片方だけを見ても答えは出ません。

部門ルールとしては、実務で扱うデータの名前で列挙するのが現実的です。「配信リストの氏名とメールアドレスは入力しない」「商談メモは社名と担当者名を伏せてから要約に使う」「展示会のアンケートの自由記述は、個人が特定できる記述を除いてから渡す」。抽象的な機密区分ではなく、ファイル名を見れば判断がつく粒度まで下ろします。判断に迷った実例が出てきたら、その都度この一覧に足していきます。

入れる項目その2 広告クリエイティブを生成するときの確認

バナーの背景、記事のアイキャッチ、動画の下絵。画像の生成は着手が早い領域ですが、確認すべき点はいちばん多い場所でもあります。生成した画像が既存の作品や商品の意匠に似ていないか。実在の人物と見分けがつく顔が写っていないか。他社のロゴや商標が誤って描き込まれていないか。図版であれば、そこに意味をなさない架空の表記が紛れていないか。公開前に通す関門を、この四つに固定しておきます。

運用上の要点は、これらの確認を生成した本人が行うと決めることです。制作の担当者が見て、判断がつかないものだけを上に上げる。全件を法務に回す運用は、生成の量が増えた時点で必ず滞ります。そして滞った確認は、締め切りの前で飛ばされます。判断がつかなかった実例を、画像つきで部門の文書に残しておくと、次の人はその基準に合わせられるようになります。

文章の生成には別の危うさがあります。生成AIは言い切る文章を作るのが得意で、根拠のない効果や、比較の優位を断定する表現が自然に混ざります。「業界で初めて」「効果は二倍」といった言い回しは、そのまま出せば表示の問題になりえます。表示の適否は最終的に人が判断する、と部門文書に明記しておきましょう。AIに表示の可否を判断させない。数字と効果の表現は人が根拠を確かめる。ここは省略が事故に直結します。

入れる項目その3 権利は他人のものから先に確かめる

権利の話には二つの方向があります。ひとつは「作ったものに自社の権利が生じるか」、もうひとつは「他人の権利を侵していないか」。実務で先に効くのは後者です。自社に権利が生じないとしても広告素材として使えなくなるわけではありませんが、他人の権利に触れれば、公開を止め、差し替え、場合によっては謝る話になります。順番を間違えると、答えの出ない議論だけが長引きます。

他人の権利の確認は、出てきた素材だけでなく、入力した指示文にも及びます。特定の作家名や作品名を書いて似せに行った場合、その意図が記録として残ります。部門ルールには特定の作品・作風・キャラクターを指定する指示は書かないと明示し、あわせて指示文をどこに保存するかも決めておきます。外注先に渡す制作の指示書にも、同じ一文を入れておくと徹底しやすくなります。

使うサービス側の利用規約も、権利の条件を左右します。商用利用の可否、生成物の帰属、入力した内容が学習に使われるかどうかは、サービスごとに違い、しかも改定されます。部門で常用する道具については、確認した日付と該当する条項をひとつの表にまとめ、改定の案内が来たときに更新する担当を決めておきましょう。個別の権利の判断が必要な案件は、部門で抱えずに法務へ渡す、という線も引いておきます。

入れる項目その4 外注先・代理店との分担を書く

マーケの成果物は社内だけで作られません。制作会社、代理店、外部の書き手やデザイナーが関わります。ここに生成AIが入ると、誰が何を使い、誰が確認したのかが見えなくなります。納品物の中に生成物が含まれているかどうかを、発注側が知らないまま公開している状態が、いちばん危ういところです。問題が起きたときに世の中に説明するのは、発注した側だからです。

分担を決める順番は、使ってよいかの可否、申告の義務、確認の責任、納品物の保証、の四段です。使用そのものを一律に禁じる運用は実態と合わないことが多く、隠れて使われるだけに終わります。使ってよいが申告する、という形のほうが管理できます。禁止は、守られていることを確かめる手立てがあって初めて意味を持ちます。確かめようのない禁止は、書いた側の安心にしかなりません。

書く場所は二つあります。契約書や発注書のような取り決めの側と、案件ごとに渡す制作の指示書の側です。前者には、入力した情報を再委託先に渡さないこと、学習に使わせないこと、生成物を含む場合は申告することを入れます。後者には、今回の案件で使ってよい範囲と、確認して返してほしい項目を具体的に書きます。取り決めだけあって指示書に落ちていないと、現場では守られません。

入れる項目その5 生成したと分かるようにするか

表示の方針は、全社規程では決めきれない代表格です。同じ会社でも、社内資料と、広告と、記事と、問い合わせへの返信では、読み手の期待が違います。社内向けなら誰も気にしないことが、外向けの記事では信頼の問題になります。マーケ部門は外に出る成果物を持っているので、ここは自分たちで決めるしかありません。決めずにいると、担当ごとに扱いがばらつき、後から統一するほうが難しくなります。

判断の軸は「読み手が誤解するか」に置くと整理しやすくなります。文章の下書きに使っただけで人が全面的に書き直したものと、生成した画像をそのまま掲載したものでは、読み手が受ける印象が違います。人物に見える画像や、実在の事例のように読める記述は、誤解の余地が大きい側です。誤解が生じうる場面だけ表示する、という線を先に引くほうが、全部に注記を付ける運用より長続きします。

媒体側の規定も絡みます。投稿の際にラベルを付けることを求める場が増えており、その規定は変わります。部門文書には具体的な媒体名の細則までは書かず、「出稿の前に各媒体の最新の案内を確認する」という手順と、確認する担当だけを決めておくのが実務的です。細則を書き込むと、改定のたびに文書が古くなり、古い記述を根拠に判断する人が出てきます。

入れる項目その6 後から説明できる記録を残す

説明責任は、記録がなければ果たせません。何を使い、どんな指示を出し、誰が確認したのか。とはいえ全部を残すのは無理なので、残す対象を先に絞ります。外に出る成果物、顧客のデータを扱った作業、金額の判断に使った分析。この三つに限れば、量は現実的な範囲に収まります。逆に、社内の下書きや、思いつきの相談まで残そうとすると、一週間で破綻します。

置き場所は、作業の流れの中にあることが条件です。別のファイルに転記させる運用は続きません。制作の管理表に一列足す、共有フォルダの命名規則に組み込む、といった形で、作業のついでに記録が残る設計にします。後から思い出して書く記録は、量が増えるほど精度が落ち、やがて書かれなくなります。残す項目も、日付・担当・使った道具・確認者の四つで足ります。

ここで、AIに判断させないという原則を具体化しておきます。生成AIには、結論だけでなく根拠にした出典や、どのデータから導いたのかを併記させる。そのうえで、人が必ず確認する範囲——数字、固有名詞、法に触れうる表現——を先に決めておく。人が見る範囲を先に決めておくと、確認は省略されにくくなります。決めていない確認は、忙しい週から順に消えていきます。

部門ルールに書いてはいけないこと

追加ルールを書くときに、つい越えてしまう線があります。ひとつが越権です。全社規程が禁じていることを部門が認める、購買や契約の手続きを部門の文書で変える、個人情報の取り扱いの解釈を部門が独自に決める。これらは部門の権限の外にあり、書いた時点で無効か、後で問題になります。書き始める前に、どこまでが自部門の裁量なのかを所管の部署に確かめておきましょう。

もうひとつが二重管理です。全社の申請とは別に部門の申請を作ると、現場は同じ内容を二度書くことになり、片方が形骸化します。部門が作るのは申請の窓口ではなく、判断の基準です。手続きは全社の仕組みに乗せ、部門は中身の判断だけを引き受けるのが分担として自然です。部門が持つべきなのは承認の権限ではなく、迷ったときに相談できる窓口のほうです。

三つめが精神論です。「慎重に扱うこと」「常識の範囲で判断すること」。こう書かれた文書は、判断に迷った人を助けません。迷いを解けない一文は、書かないほうが文書は短くなり、読まれる確率が上がります。判断できる形に落とせない項目は、いったん保留にして、事例が集まってから書く。空欄を恐れて曖昧な言葉で埋めるのが、いちばん実害の大きいやり方です。

マーケ部門の追加ルール チェックリスト

ここまでの項目を、そのまま部門文書の目次として使える形に並べます。自社の全社規程を横に置いて、すでに書かれているものには印を付け、残ったものだけを部門で書く。この引き算をしてから書き始めると、分量はかなり減ります。厚い文書を作ることが目的ではなく、現場の問いに答えられる文書を作ることが目的だからです。

  • 優先関係の一文(定めのない事項は全社規程による/矛盾時は全社規程が優先する)
  • 顧客データの可否を、実務で使うファイル・項目の名前で列挙した表
  • 画像を公開する前の確認四点(意匠の類似・実在の人物・他社の商標・架空の表記)と、上に上げる基準
  • 文章の生成で人が必ず確認する範囲(数字・固有名詞・効果や比較の表現)
  • 指定してはいけない指示(特定の作家名・作品名・キャラクター名)と、指示文の保存場所
  • 常用する道具ごとの規約確認の記録(商用利用・帰属・学習利用と、確認した日付)
  • 外注先への申告義務、再委託の禁止、納品物に生成物を含む場合の扱い
  • 生成したと分かるようにする場面の線引きと、媒体の規定を確認する担当
  • 記録を残す対象の限定(外に出る成果物・顧客データを扱った作業・金額判断の分析)
  • 相談窓口と、判断に迷った事例の記録先

十項目のうち、自社ですでに答えが出ているものは意外に少ないはずです。書けない項目があること自体は問題ではありません。空欄のまま配ると現場が困るので、空欄には「現時点では個別に相談」と明記して埋めます。空欄と「相談してください」は、読み手にとってまったく違う情報です。前者は判断を現場に丸投げしており、後者は判断を部門が引き受けています。

配って終わりにしない——改訂を回す仕組み

ルールは、作った日がいちばん実態に合っていて、そこから毎日ずれていきます。使う道具が変わり、指針が改訂され、現場の使い方が広がるからです。だから、作る工程と同じだけの重さで、回す工程を設計しておきます。改訂の予定を書いていない文書は、一年後には誰も参照しなくなります。次の順で組み立てると無理がありません。

STEP1
たたき台を作る前に、現場の質問を集める

直近で判断に迷った相談を十件ほど集めます。実際に来た質問が、書くべき項目の順番を決めてくれます。

STEP2
全社規程との重なりを消す

集めた質問のうち、全社規程で答えが出るものを外します。残ったものが部門で書く範囲です。

STEP3
判断の基準として書き、手続きは全社に乗せる

申請の窓口を新設せず、判断の基準と、上に上げる境界だけを書きます。

STEP4
相談の記録を一か所にためる

窓口に来た質問と回答を同じ場所に残します。これが次の改訂の材料であり、教育の材料にもなります。

STEP5
半年ごとに差分だけを見直す

全文を書き直さず、指針の改訂と、たまった相談の記録から、変わった箇所だけを直します。

回す仕組みで効くのは、記録の一元化です。個別のやり取りで答えてしまうと、同じ質問が何度も来て、しかも答えが人によってぶれます。相談と回答を一か所にためた組織だけが、二回目の改訂に進めます。改訂の材料は、外から探すものではなく、自分たちの相談の中にあります。半年で二十件もたまれば、次に書き足すべき項目は自然に浮かび上がってきます。

ミニ用語解説 規程まわりで混ざりやすい言葉

社内の議論では、似た言葉が入り混じって話が噛み合わなくなります。とくに「ガイドライン」「規程」「手順書」は、社内での重みも改訂の手続きも違います。どれを作るのかが決まらないまま議論を始めると、法務や総務との調整でつまずきます。書き始める前に、自社での使い分けを確認しておくと、後の差し戻しが減ります。

言葉指しているものマーケ部門との関係
ガイドライン守るべき考え方や原則を示す文書幹にあたる。部門はここを参照して枝を足す
規程手続きと権限を定めた社内の決まり改訂には所定の手続きが要る。部門単独では変えられない
手順書作業のやり方を具体的に書いたもの部門で作り、頻繁に更新してよい層
AI利用者外部のAIを業務に使う立場多くのマーケ部門はここに当たる
AI提供者AIを組み込んだ機能を外部に出す立場顧客向けの機能に組み込むと該当しうる

この使い分けが曖昧なまま「マーケのAI規程を作ります」と言うと、本来は所定の手続きが要る文書を部門が作ることになり、法務との調整が長引きます。多くの場合、部門が作るべきなのは規程ではなく手順書か、それに準じる運用の基準です。呼び名を変えるだけで、承認の経路が短くなり、改訂も部門の判断でできるようになります。

ルール整備でよくある失敗

最後に、実際に起きやすいつまずきを挙げておきます。どれも、手を抜いた部門ではなく、まじめに取り組んだ部門ほど陥りやすいものです。丁寧に書こうとするほど文書は厚くなり、厚い文書ほど読まれなくなる。この逆説が、ルール整備にはついて回ります。

  • 全社規程を丸写しして分量を増やす:改訂が二重になり、どちらが最新か誰にも分からなくなる
  • 禁止事項だけを並べる:使ってよい範囲が書かれていないため、現場は結局その都度相談することになる
  • すべての出力を法務確認に回す:量が増えた時点で滞り、確認を飛ばす運用が黙認されはじめる
  • 具体的な製品名と細かい設定を本文に書き込む:仕様が変わるたびに文書が古くなり、改訂が追いつかない
  • 作って配って終わりにする:現場の相談が記録されず、二回目の改訂に必要な材料が残らない

裏を返せば、避け方はどれも同じ方向を向いています。書く範囲を絞り、判断の基準に集中し、変わりやすいものは別紙に逃がす。そして、相談の記録を改訂の燃料にする。この四つが揃えば、部門のルールは配布物ではなく、運用される道具になります。読まれた回数と、同じ質問が減った件数が、その文書の成績表です。

まとめ

マーケ部門の生成AI利用ルールは、ゼロから作るものではなく、全社規程に接ぐものです。写さない、緩めない、優先関係を明記する。この三原則で幹とつなぎ、顧客データの線引き、画像の確認、権利の確かめ方、外注先との分担、表示の方針、記録の残し方という六つの枝を足していきます。制度の側も、AI事業者ガイドラインは2026年3月に第1.2版が出て、AI推進法は2025年9月に全面施行されました。動き続ける前提で、半年ごとに差分だけを見直す形にしておくのが現実的です。まずは、直近で現場から来た相談を十件、書き出すところから始めてみてください。個別の事案が法に触れるかどうかについては、顧問の弁護士に確かめることをおすすめします。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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