限定提供データの3つの条件|秘密にしなくても守れる

「集めたデータを取引先や会員に提供しているが、転売を止める根拠が分からない」「秘密として管理していないので営業秘密には当たらないと言われた」——データを外に出している部署で出てくる問いです。提供しているデータは、守れないわけではありません。配ることを前提にした、限定提供データという枠組みが別に用意されています。この記事では、3つの条件と、実務での備え方を整理します。
カメ先生外に提供しているデータはね、秘密にしていないから守れないと思われがちだが、提供を前提にした枠組みが別にあるんだ。
カメ子秘密にしていなくても守れるのですか。営業秘密とは何が違うのでしょうか。
カメ先生営業秘密は秘密として管理していることが前提になる。こちらは相手を限って提供し、まとまった量を電磁的に管理していることが条件だ。
カメ子前提そのものが違うのですね。条件の中身を順に確かめます。
- 業として特定の相手に提供するデータには、営業秘密とは別の保護の枠組みがある
- 条件は、特定の相手への提供・相当量の蓄積・電磁的な管理の3つ
- 無償で誰でも手に入る状態にしている情報は、対象にならない
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秘密にしていないから守れない、という壁
データを事業に使う会社が増えました。計測して集めた数値、調査して整えた一覧、利用の履歴から作った指標。これらを社外に提供する形の事業も珍しくありません。
提供する以上、秘密にはしていません。取引先は中身を見られますし、会員であれば誰でも取り出せる状態になっています。
ここで問題が起きます。無断で転売された、契約を超えて使われた、退職者が持ち出した。止めたいと思っても、営業秘密としては守れません。
営業秘密として保護されるには、秘密として管理されていることが必要です。外に提供しているデータは、この条件を満たしにくい。
かといって、契約だけを頼りにするのも限界があります。契約は結んだ相手にしか効きません。転売された先の第三者には、契約が及びません。
この隙間を埋めるために設けられたのが、限定提供データという枠組みです。提供することを前提にしたまま、不正な取得や使用を止められる仕組みです。
この枠組みは、データを使った事業が広がったことを受けて設けられました。データそのものが商品になる時代に合わせた仕組みです。以下では3つの条件を順に見ていきますが、個別の判断は事案によるため弁護士に確かめてください。
営業秘密との違い
まず、既に知られている営業秘密との違いを整理します。同じ法律の中にある2つの枠組みですが、考え方が対照的です。
| 観点 | 営業秘密 | 限定提供データ |
|---|---|---|
| 前提 | 秘密として管理していること | 業として特定の相手に提供すること |
| 条件の柱 | 秘密管理性・有用性・非公知性 | 限定提供性・相当蓄積性・電磁的管理性 |
| 形 | 紙でも口頭でも対象になり得る | 電磁的な方法で蓄積・管理されたもの |
| 典型 | 設計図、顧客名簿、製法 | 有償で提供する統計、共有される計測の記録 |
| 外部への提供 | 提供すると秘密管理性が問われる | 提供することが前提 |
表のいちばん下が、違いを端的に表しています。営業秘密は「外に出さないこと」を前提にし、限定提供データは「外に出すこと」を前提にします。
だから、同じデータでも扱いを選べます。社内だけで使うなら営業秘密として、外部に提供する事業にするなら限定提供データとして守る。
なお、改正により、秘密として管理されたデータについても限定提供データとしての保護の対象が広がったとされています。両者が排他的な関係ではなくなってきています。
条件その1:特定の相手に提供していること
1つ目の条件は、業として特定の者に提供する情報であることです。限定提供性と呼ばれます。
「業として」とは、反復・継続して行っていることを指します。一度きりの提供では、この条件を満たしにくい。
「特定の者」とは、会員、契約した取引先、共同で事業を行う相手など、提供する相手が限られていることを指します。
誰でも自由に取得できる状態にしている情報は、この条件を満たしません。自社サイトで無償に公開しているデータは、対象になりにくい。
有償かどうかは、決定的な要素ではありません。無償でも、会員に限って提供しているなら特定の者への提供にあたり得ます。
実務では、誰に提供しているかを説明できる状態にしておきます。会員の一覧、契約の記録。提供の相手が限られていることの裏づけになります。
提供の形も記録します。取り出しの記録が残る仕組みにしておけば、誰にいつ提供したかを後から示せます。紙の資料として渡している部分があるなら、その分は別の枠組みで考えます。
条件その2:相当量が蓄積されていること
2つ目の条件は、電磁的な方法により相当量が蓄積されていることです。相当蓄積性と呼ばれます。
ここでいう「相当量」に、決まった件数の基準はありません。その情報が持つ価値との関係で判断されると考えられています。
重要なのは、個々のデータではなく集まりとしての価値です。1件ずつでは意味を持たない数値でも、大量に集まることで価値が生まれる。その状態が想定されています。
計測の記録、位置の情報、利用の履歴。こうしたデータは、量が集まって初めて分析に使えます。
逆に、少数の重要な情報はこの条件を満たしにくい。そうした情報は、営業秘密として守るほうが自然です。
実務としては、どれだけの量を集め、どのように整えているかを説明できる状態にしておきます。集める仕組みと期間の記録が、そのまま裏づけになります。
集めたデータをどう整えているかも、価値の説明につながります。重複を消し、表記を揃え、分類を付ける。整える作業そのものが、独自の価値を生んでいます。この工程を記録しておくと、単なる寄せ集めではないことを示せます。
条件その3:電磁的に管理されていること
3つ目の条件は、電磁的な方法により管理されていることです。電磁的管理性と呼ばれます。
想定されているのは、識別の情報と合言葉による管理のような、アクセスを制限する仕組みです。誰でも入れる場所に置いてあるデータは、この条件を満たしません。
大切なのは、「管理する意思が外から分かる形になっているか」です。鍵をかけていることが、相手にも分かる状態にしておく。
具体的には、利用者ごとの認証、権限の設定、暗号化された通信、提供の記録。こうした仕組みが該当し得ます。
契約書に「無断使用を禁じる」と書くだけでは、この条件を満たしません。契約は意思の表明であって、電磁的な管理そのものではありません。
ただし、契約が無意味なわけではありません。管理の意思を示す材料になりますし、契約に基づく請求も別に可能です。両方を備えるのが実務です。
対象にならない情報
3つの条件を満たしていても、対象から外れる場合があります。無償で公衆に利用できる状態になっている情報です。
同じ内容が、誰でも自由に手に入る形で出回っているなら、その情報を保護する意味がありません。
実務で気をつけるのは、自社が別の経路で公開してしまう場合です。有償で提供しているデータの一部を、販促のために無償で公開すると、その部分は対象から外れ得ます。
公的機関が公開しているデータをそのまま提供している場合も、同様に考えられます。加工して独自の価値を加えているかどうかが、判断の分かれ目になります。
試用のために一部を公開する運用は、よく行われます。この場合、公開する範囲と保護したい範囲を明確に分けておきます。
どこまで公開しているかを、自社で把握しておく必要があります。販促の資料に載せた数値、記事で紹介した一覧。これらも公開にあたり得ます。
守られるとどうなるのか
条件を満たすと、不正な取得や使用に対して法的な手段を取れるようになります。
具体的には、不正に取得する行為、不正に取得したデータを使用する行為、不正に開示する行為などが不正競争として扱われ、差止めや損害賠償の請求ができるとされています。
契約との違いは、契約を結んでいない相手にも及び得る点です。転売された先の第三者に対しても、要件を満たせば請求の余地が出ます。
ただし、第三者に対する請求には条件があります。不正な経緯を知っていたか、知らなかったことに重い落ち度があったか。何も知らずに取得した相手には、及ばない場合があります。
だから、自社のデータであることを外から分かる形にしておく価値があります。提供の記録、利用の条件の明示。
なお、この枠組みで請求できる範囲や要件は法律の解釈に関わります。個別の判断は事案によるため、弁護士に確かめてください。
どんなデータが当てはまるか
枠組みの説明だけでは、自社のデータが当てはまるか判断しづらい。法人の現場で想定される例を挙げます。
ひとつは、業界の相場や動向をまとめた統計です。自社で調査して整え、会員や契約した相手にだけ提供している。量があり、認証を経て取り出す形なら条件に近づきます。
機械や設備から集めた稼働の記録も想定されます。保守の契約を結んだ相手に提供し、量が集まって初めて分析に使える性質を持っています。
複数の会社で持ち寄って作るデータも典型です。共同で事業を行う相手の間で共有し、外部には出さない。参加している会社が特定されている点が、条件に合います。
反対に、当てはまりにくいのは少数の重要な情報です。設計の図面、取引の条件。こうしたものは、営業秘密として守るほうが自然です。
提供を始める前の段階のデータも、この枠組みには乗りにくい。まだ誰にも提供していないなら、業として提供しているという条件を満たしません。その段階では、営業秘密として管理しておきます。
自社のデータがどちらに近いかを考えると、取るべき備えが見えてきます。外に出すのか、出さないのか。この一点が分岐になります。
同じ会社の中に、両方の性質を持つデータが並んでいることもあります。設計の図面は営業秘密、稼働の記録は限定提供データ。一律に決めず、データごとに分けて考えます。
契約で決めておく項目
法律の枠組みと契約は、両方を備えるものです。契約で決めておく項目を挙げます。
- 利用してよい範囲(社内のみか、グループ会社を含むか)
- 第三者への提供や再販の可否
- 加工や二次的な生成物の扱い
- 契約が終わった後のデータの扱い(消すのか、使い続けられるのか)
- 違反が見つかったときの手続きと責任
- 利用の状況を確かめる権限(記録の提出を求められるか)
4つ目が抜けやすい項目です。契約が終わった後も手元に残ったデータを使い続けられるかは、明記しておきます。
3つ目も近年は重要になっています。提供したデータを加工して別の成果物を作られた場合、その成果物を自由に使ってよいのかを決めておく必要があります。
6つ目は、実効性を持たせるための条項です。利用の状況を確かめられなければ、違反に気づけません。報告を求められる形にしておきます。
契約の様式は、一度作れば使い回せます。個別の交渉で削られる条項もありますが、何を削ったかを記録しておけば後の判断ができます。
持ち出しへの備え
外部への不正な流出だけでなく、社内からの持ち出しにも備えます。実際に起きるのは、こちらのほうが多い。
備えの基本は、誰が何を取り出せるのかを整えることです。権限が広すぎる状態は、管理していると言いにくくなります。
部署ごと、役割ごとに権限を分けます。全員が全件を取り出せる設定になっているなら、その状態そのものが、電磁的な管理の弱さになります。
取り出しの記録も残します。誰がいつ、どの範囲を取り出したか。記録があると、流出したときに経路をたどれます。
大量の取り出しに気づく仕組みも有効です。通常の業務では起こらない量の取り出しが行われたときに、通知が届く設定。
退職の手続きに、権限を外す作業を組み込みます。そして、在職中に大量の取り出しがなかったかを確かめる。この2つを、手続きの一覧に入れておきます。
他社のデータを使う側の注意
ここまでは提供する側の話でしたが、使う側になることもあります。この立場でも、注意する点があります。
提供を受けたデータは、契約の範囲で使います。範囲を超えた使い方は、契約の違反であるだけでなく別の問題にもなり得ます。
特に、受け取ったデータを加工して自社の商品に組み込む場合は要注意です。加工したものが誰のものになるかは、契約で決まっています。
出どころが不明なデータを第三者から買う場合も注意します。不正な経緯を知っていた、あるいは知らなかったことに落ち度があったと判断されると、使う側も責任を問われる余地があります。
だから、データを購入するときは出どころを確かめます。誰が集め、どういう権利関係で提供しているのか。説明できない相手からは買わない。
社内で使うデータの一覧を作り、それぞれの出どころと使ってよい範囲を書き添えておきます。担当が替わったときに、範囲を超えた使い方が始まるのを防げます。
備えるための実務
条件を満たす状態を作るために、何をすればよいか。順に整理します。
何を守りたいのかを具体的にします。「顧客データ全般」では漠然としています。どの仕組みで、どの範囲のデータかまで絞ります。
会員の登録、契約の締結。誰に提供しているかを記録に残します。誰でも取得できる形になっていないかを確かめます。
識別の情報と合言葉、権限の設定。外から見て、管理していることが分かる形にします。既に入れている場合も、記録が残る設定かを確かめます。
販促の資料、記事、試用の画面。無償で公開している部分と、保護したい部分を分けます。
利用の範囲、第三者への提供の禁止、違反したときの扱い。契約は別の根拠になりますし、管理の意思を示す材料にもなります。
3つ目が、いちばん実質的な作業です。鍵をかけていることが外から分かる状態を作るのが要点です。
データを提供する事業を始めるとき
これから提供の事業を始めるなら、設計の段階でこの枠組みを意識しておくと後の手間が減ります。
最初に決めるのは、誰に提供するかです。誰でも取得できる形にするか、相手を限る形にするかで、保護の可否が変わります。
次に、取り出し方を決めます。認証を経て取り出す形にすれば、電磁的な管理の条件を満たしやすくなります。
試用の範囲も先に決めます。無償で見せる部分は保護の対象から外れ得るため、見せてよい範囲を意図して切り分けておきます。
契約の様式も、始める前に用意します。後から結び直すのは大変です。利用の範囲、再提供の可否、違反したときの扱い。
これらを整えておけば、問題が起きたときに取れる手段が広がります。起きてから整えるのでは間に合いません。
提供の窓口を作る段階で、利用の条件を画面に明示します。取り出す前に条件を読む形にしておけば、知らなかったという言い分を防げます。同意の記録も残る仕組みにしておくと、後の立証が楽になります。
社内で誰が把握するか
枠組みを整えても、誰も把握していなければ機能しません。担当を決めます。
必要なのは、どのデータをどの枠組みで守っているかの一覧です。守りたいデータ、提供の相手、管理の仕組み、契約の有無。この4項目が並んでいれば足ります。
作る担当は、データを扱う部署に置きます。法務だけに任せると、どのデータが重要かの判断ができません。現場と法務が一緒に作る形が現実的です。
一覧は、年に一度は見直します。新しく始めた提供、終わった契約、公開の範囲を広げた部分。前提が変わっていることに気づけます。
問題が起きたときの窓口も決めます。無断の転売を見つけた、契約の範囲を超えた使い方を知った。誰に伝えれば動くのかが決まっていないと、報告が止まります。
この一覧は、自社の資産を把握する作業でもあります。何を持っているかを知らない会社は、守ることも、活かすこともできません。
一覧を作る過程で、使われていないデータが見つかることもあります。集めているが誰も使っていない。その場合は、集めるのをやめる判断もあり得ます。持っているだけで、管理の負担は発生します。
やりがちな失敗
現場で見かける失敗を挙げます。どれも、後から取り返しにくい。
- 誰でも取得できる形で公開したまま、保護されると思い込む
- 契約書に禁止と書いただけで、電磁的な管理を入れていない
- 販促のために中身を広く公開し、保護したい範囲まで無償で出す
- 提供の相手や日時の記録を残していない
- 退職者の権限を外し忘れ、取り出せる状態が続く
- 問題が起きてから、何をどう守るかを検討し始める
2つ目が、いちばん多い誤解です。契約は結んだ相手にしか効かず、転売の先には及びません。
5つ目は、運用の問題ですが影響は大きい。権限が残っていると、管理していると言いにくくなります。退職の手続きに、この確認を組み込みます。
- 外に提供するデータは営業秘密になりにくいが、別の枠組みで守れる余地がある
- 契約だけでは足りず、アクセスを制限する仕組みが要件になる
- 個別の判断は事案によるため、弁護士に確かめる
よくある質問
無償で提供していても対象になりますか
会員に限って提供しているなら、特定の者への提供にあたり得ます。有償かどうかが決定的な要素ではありません。誰でも自由に取得できる状態かどうかが分かれ目です。
紙で渡しているデータはどうですか
この枠組みは電磁的な方法での蓄積と管理を前提にしています。紙で渡しているものは、別の枠組みで検討します。
公的機関のデータを加工したものは
加工して独自の価値を加えているかどうかが判断の要素になります。そのまま転載しているだけなら、難しいと考えられます。
営業秘密と両方で守れますか
改正により、秘密として管理されたデータについても保護の対象が広がったとされています。どちらで主張するかは、個別の事案で検討します。
判断に迷ったらどうしますか
3つの条件のうち、電磁的な管理は自社で整えられます。まずそこを固めたうえで、個別の判断は事案によるため弁護士に確かめてください。
集めたデータを分析した結果は守られますか
分析の結果そのものは、元のデータとは別の情報です。量や管理の状況によって、どの枠組みで守るかを個別に考えます。
生成の仕組みに読み込まれるのは防げますか
認証を経なければ取り出せない状態にしておけば、外部の仕組みが自動で読み取ることは難しくなります。誰でも見られる場所に置いていると、読み取られる前提で考える必要があります。
海外の相手に提供する場合は
適用される法律が変わり得ます。契約で準拠する法律と紛争の解決の方法を定めておきます。個別の判断は事案によるため、弁護士に確かめてください。
まとめ
外部に提供することを前提としたデータは、秘密として管理していないため営業秘密としては守りにくい。その隙間を埋めるのが、限定提供データの枠組みです。条件は3つあります。業として特定の相手に提供していること、電磁的な方法で相当量が蓄積されていること、そして電磁的な方法で管理されていることです。3つ目が、実務でいちばん手を動かす部分になります。契約書に禁止と書くだけでは足りず、識別の情報と合言葉のようなアクセスを制限する仕組みが要ります。鍵をかけていることが外から分かる状態にしておく、と考えると分かりやすい。気をつけたいのは、無償で誰でも手に入る状態にしている情報は対象から外れる点です。販促のために中身を広く公開すると、保護したい範囲まで出してしまうことがあります。提供の事業を始めるなら、誰に提供するか、どこまで無償で見せるかを設計の段階で決めておきます。個別の判断は事案によるため、弁護士に確かめてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
