競合の次の一手は公報に出ている|出願情報の読み方

競合が次に何をしようとしているのか。決算の資料を読み、求人の募集を眺め、展示会のブースを見に行く。それでも、分かるのは今やっていることまでです。開発の途中にあるものを知る手がかりが、公開された出願の情報にあります。出願は一定の期間を経ると公開され、誰でも無償で読めます。この記事では、何が分かるのか、どう調べるのかを整理します。
カメ先生競合の開発の方向は、公開された出願の情報から読めることがあります。
カメ子特許の情報ですか。専門的で、私たちには読めない気がします。
カメ先生全部を理解する必要はありません。誰が何の分野に出しているかだけでも分かります。
カメ子分野と件数だけでも分かるのですね。それなら調べられそうです。
- 出願は原則として一定の期間を経た後に公開され、無償の仕組みで誰でも読める
- 出願人と分類で絞れば、専門知識がなくても投資の方向は読み取れる
- 自社の出願も同じように見られているため、公開の時期を意識した設計が要る
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決算と求人だけでは足りない
競合の動きを調べるとき、多くの会社は公開されている資料に当たります。決算の資料、有価証券の報告、採用の募集、報道の記事。どれも有効な材料です。
しかし、これらから分かるのは既に事業になっていることか、これから人を採ろうとしている領域までです。開発の途中にあるものは見えません。
求人から推測する方法は、よく使われます。特定の技術の経験者を募集していれば、その領域に投資している。ただし、募集の文面から読めるのは大まかな方向だけです。
展示会での視察も有効ですが、見せているものは既に商品化の目処が立ったものです。1年後、2年後に何を出すかは、そこには出ていません。
その空白を埋めるのが、公開された出願の情報です。開発の初期に出願するのが通常なので、商品として出てくる前の段階が見えます。
以下では、公開の仕組み、何が書かれているか、そしてマーケの担当が実際にどう使うかを順に見ていきます。なお、技術的・法的な判断は弁理士などの専門家に確かめてください。
出願は一定の期間の後に公開される
特許の出願は、原則として出願の日から一定の期間を経た後に公開されます。その期間は1年6か月です。出願した本人が望まなくても、期間が来れば公開されます。
公開の目的は、同じ研究を重複して行う無駄を防ぐことにあります。権利を得たい以上、内容を社会に開示する。この交換が制度の前提です。
だから、競合が1年半前に何を考えていたかは、原則として読める状態になります。逆に言えば、直近1年半の動きは見えません。この時間差は前提として押さえます。
公開の時期を早めることもできます。出願した側が請求すれば、期間を待たずに公開されます。早く公開したい事情があるときに使われます。
公開されたからといって、権利が認められたわけではありません。審査を請求し、審査を通って初めて権利になります。公開の段階では、あくまで出願の内容が見えるだけです。
審査を請求できる期間にも限りがあります。期間内に請求しなければ、取り下げられたものとして扱われます。この点も、後で述べる読み方に関わってきます。
公報に書かれていること
公開されると、公報という形で内容が出ます。そこに書かれている項目を押さえます。
まず、出願した人や会社の名前と住所。そして、発明した人の名前と住所。誰が出したかは、はっきり分かります。
次に、願書に添えられた書類です。技術の内容を説明した書面、権利として求める範囲を書いた部分、図面、そして要約。
加えて、出願の番号、出願した日、公報の番号と発行の日。これらの日付が、時系列を組み立てるときに効いてきます。
マーケの担当にとって、技術の説明をすべて読む必要はありません。要約と図面を見るだけで、何をしようとしているかの見当はつきます。
要約は数百字程度で、何を解決しようとしているかが書かれています。図面には、装置の構成や画面の例が描かれていることがあります。画面の例は、商品の姿を推し量る材料になります。
調べ方の基本
調べるための仕組みは、無償で公開されています。登録も要りません。誰でもその日から使えます。
マーケの担当が使う入口は、主に2つです。1つは出願した会社の名前で調べる方法。もう1つは技術の分類で調べる方法です。
会社の名前で調べると、その会社が出願したものが一覧で出ます。件数の推移を見るだけで、投資の増減が読めます。
会社の名前は、表記が揺れることがあります。旧社名、合併の前の名前、英語の表記。複数の表記で調べる必要があります。
分類で調べると、その技術分野に誰が出しているかが分かります。自社の事業に関わる分類を特定できれば、その分野の動きを俯瞰できます。
分類は体系として整えられており、階層になっています。自社の製品に近い出願を1件見つけ、そこに付いている分類を手がかりに広げるのがいちばん実用的な進め方です。
件数と分野の推移から読む
技術の中身が読めなくても、件数と分野の推移からは多くのことが分かります。ここが、マーケの担当が使える領域です。
たとえば、ある競合が3年前まで年に数件だった分野で、直近は年に十数件出している。その分野に投資を集めていることが読めます。
逆に、以前は多かった分野で出願が止まっている。その事業から手を引く方向にある可能性があります。撤退の判断は、商品が消える前に出願で現れます。
複数の競合を並べて比べると、業界全体の動きが見えます。同じ分野に複数社が集まっているなら、そこが競争の主戦場になります。
誰も出していない分野があれば、そこは空白かもしれません。もっとも、そもそも需要がない領域という可能性もあります。空白の理由を考える必要があります。
発明した人の名前も手がかりになります。同じ人の名前が並んでいれば、その人が中心の開発です。その人が別の会社の出願に現れたら、移籍した可能性があります。
経過情報で今の状態を知る
公報を読むだけでは、その出願が今どうなっているかは分かりません。そこで使うのが、審査の状況を示す情報です。
この情報からは、審査を請求したか、審査で何を指摘されたか、権利になったのか、それとも拒絶されたのかが分かります。
審査を請求していない出願は、本気度が高くない可能性があります。とりあえず出願だけしておく、という運用も存在します。件数だけを数えると、この差が見えません。
反対に、早く審査してほしいと申し出ている出願は、事業化が近い可能性があります。急いで権利にしたい事情がある、と読めます。
審査で拒絶されて、それでも争っている出願も注目です。手間と費用をかけて争うのは、その権利を重視しているからです。
権利になった後の情報も見られます。権利を維持するための費用を払い続けているか。払うのをやめれば権利は消えます。維持しているかどうかも、重視の度合いを表します。
調べる順番を決めておく
やり方が分かっても、毎回同じ順で進めないと見落としが出ます。手順にしておきます。
自社の製品名や技術の言葉で検索します。自社の出願でも構いません。1件見つかれば、そこから広げられます。
公報には、技術の分類が記されています。この分類が、以後の検索の軸になります。複数付いていることが多いので、すべて記録します。
その分類にどの会社が出しているかを一覧にします。件数の多い順に並べると、その分野の主要な出願人が見えます。
主要な数社に絞ります。年ごとの件数を並べると、投資の増減が読めます。この表が、以後の記録の土台になります。
要約と図面を見ます。全文を読む必要はありません。何を解決しようとしているかが分かれば十分です。
1つ目で自社の出願を起点にするのが、いちばん早く正しい分類に到達する方法です。言葉で探すと、業界特有の言い回しに引っかかります。
分類の読み方に慣れる
分類の体系は、最初は取っつきにくい。しかし、使い方は単純です。
記号は階層になっています。上の階層は大きな技術分野、下の階層は細かい技術。細かい階層まで指定すると絞れますが、取りこぼしも増えます。
実務では、少し広めの階層で見るほうが有効です。隣接する技術も含まれるため、予期しない方向からの参入が見つかります。
同じ技術に、複数の分類が付くこともあります。装置の構造としての分類と、用途としての分類。どちらから探すかで、見つかる出願が変わります。
分類の体系は改訂されます。古い出願と新しい出願で付いている分類が違うことがあります。年をまたいで件数を比べるときは、この点を頭に置きます。
慣れるまでは、分類を絞りすぎないことです。件数が多くて困るなら、出願人で絞ればよい。分類は広く、出願人で狭く。この組み合わせが扱いやすい。
分類が分からないときは、調べる仕組みの中に分類を検索する機能が用意されています。自社の事業を表す言葉を入れると、該当しそうな分類の候補が示されます。そこから当たりを付けるのも一手です。
何が分かって何が分からないか
期待しすぎないために、この方法の限界も押さえておきます。分かることと分からないことを整理します。
| 観点 | 読み取れるか |
|---|---|
| どの技術分野に投資しているか | 読み取れる。件数と分類の推移から |
| 開発の担当者が誰か | 発明した人の名前として出る |
| いつ商品になるか | 読み取れない。出願と商品化の間隔は事業によって違う |
| 価格や販売の戦略 | 読み取れない。技術の内容だけが書かれている |
| 直近1年半の動き | 読み取れない。公開までの期間がある |
| 出願していない開発 | 読み取れない。秘密として抱える選択もある |
最後の項目が重要です。あえて出願せず、秘密として抱える方針を取る会社もあります。その場合、公報には何も現れません。
だから、出願が少ないことを「開発していない」と読むのは危うい。方針として出願しない会社を、活動していないと誤読することになります。
この方法は、他の材料と組み合わせて使います。決算、求人、展示会、そして公報。複数の角度から見て、初めて像が結びます。
業界の団体が出す統計や、官庁の調査も合わせます。市場全体が伸びているのか縮んでいるのかが分かると、出願の増減の意味も違って読めます。市場が縮む中で出願が増えているなら、生き残りをかけた投資かもしれません。
マーケの打ち手につなげる
読み取った内容を、実際の打ち手にどうつなげるか。ここが実務の要点です。
いちばん直接的なのは、コンテンツの企画です。競合が投資している分野が分かれば、その分野の解説記事を先に出しておくという判断ができます。
次に、訴求の設計です。競合が近い将来に同じ機能を出してくると分かれば、今のうちに自社の強みを別の軸に置き換える準備ができます。
営業の資料にも使えます。「この領域は競合も注目している」という業界の動きとして示すと、検討を後押しする材料になります。ただし、特定の会社の出願を名指しで示すのは避けます。
採用の発信にも使えます。業界全体がどの技術に向かっているかを示せれば、その分野の技術者に届く発信ができます。
自社の技術部門との対話にも役立ちます。マーケの側から「この分野の出願が増えています」と伝えると、現場が知らない情報になることがあります。
技術部門は自社の技術に集中しているため、他社の動きを俯瞰する時間が取れないことがあります。俯瞰の情報を持ち込むのは、マーケの側が担える役割です。対話の材料としても、この調査は価値があります。
自社の出願も見られている
ここまでは調べる側の話でしたが、自社も同じように見られています。この視点を持つと、対応が変わります。
自社が出願した内容は、1年半後に競合に読まれます。何を考えているかが、その時点で明らかになります。
だから、発表の時期と公開の時期を合わせて考える必要があります。公開の後に商品を発表すると、競合に準備の時間を与えます。
反対に、公開の前に発表してしまうと、権利の面で不利になることがあります。自分で公開した内容が、新しさを否定する材料になり得ます。
この調整は、技術部門と知財の担当と一緒に行います。マーケの側が発表の時期を決めるとき、出願の状況を確かめる習慣を持つ。
展示会での実演も同じです。出願の前に公開すると、後から権利を取りにくくなる場合があります。例外の制度もありますが、手続きと期限があります。事前に専門家に確かめます。
記事や資料で技術を詳しく説明する場合も、同じ検討が要ります。オウンドメディアで技術の解説を出すとき、その内容が出願の前だと、後の権利に影響し得ます。技術に踏み込む記事は、公開の前に知財の担当に見せる工程を入れます。
公報の情報を記事や資料で使う
調べた内容を、記事や資料に載せることもあります。この場合の扱いを押さえます。
公報は公開されている文書ですが、使い方によっては配慮が要ります。特定の会社の出願を名指しで論評するのは、慎重に判断します。
業界全体の傾向として、件数の推移や分野の分布を示すのは比較的問題が少ない。誰が何を出したかを特定せず、傾向として示す形です。
出典は明記します。どの仕組みで、いつ調べた情報かを書く。件数は調べた時点のものなので、日付がないと後から検証できません。
技術の内容を解説する場合は、誤読の危険があります。権利として求める範囲の記述は、専門的な読み方が必要です。自信がなければ、内容には踏み込みません。
競合の出願を根拠に「あの会社はこういう製品を出す」と書くのは避けます。出願と商品化は別の話であり、誤った推測を公表することになりかねません。
続けるための運用
一度調べて終わりでは、動きは追えません。定期的に見る運用にします。
- 追う相手を決める(主要な競合3社から5社程度)
- 追う分類を決める(自社の事業に近いもの)
- 見る頻度を決める(四半期に1回で十分な場合が多い)
- 件数と分野の推移を同じ様式で記録する
- 気になる出願は、要約と図面だけ読んで所感を残す
- 技術部門と共有する場を作る
3つ目の頻度は、月ごとに見る必要はありません。公開までに1年半の時間差がある以上、月単位の変化を追う意味は薄い。
4つ目の「同じ様式で記録する」が要点です。毎回違う集計をすると、推移が比べられず、蓄積になりません。表の形を決めて、数字を入れていくだけにします。
6つ目の共有は、続けるための動機になります。誰かが見てくれる場があれば、調べる作業も続きます。誰も見ないなら、半年で止まります。
共有の場は、既にある会議に乗せるのが確実です。新しい会議を作ると、参加者を集める段階で止まります。四半期の振り返りの場に、1枚だけ足す形が続きます。
他の公報も合わせて見る
技術の出願だけでなく、見た目に関わる出願や、名前に関わる出願も公開されています。こちらのほうが、マーケの担当には読みやすい。
見た目に関わる出願は、図が中心です。製品の形や画面の見た目が、そのまま描かれています。技術の説明を読む必要がありません。
これが出ているなら、商品化はかなり近いと考えられます。見た目を守る出願は、量産の目処が立ってから出すのが通常です。
名前に関わる出願は、商品名や役務の名称です。どの分野で使う名前として出しているかも記されます。新しい事業に踏み出す前兆として現れます。
名前の出願は、発表の直前に出されることも多い。公開までの時間差が短いため、技術の出願より直近の動きを捉えられます。
3つを合わせて見ると、時系列が組み立てられます。技術の出願が数年前、見た目の出願が最近、名前の出願がごく最近。この並びなら、発表は近い。
やりがちな失敗
この方法を使うときに、陥りやすい誤りを挙げます。
- 件数だけを数えて、審査を請求していない出願も同じに扱う
- 出願が少ない会社を、開発していない会社だと判断する
- 出願の内容から商品の内容を断定し、資料や記事に書く
- 会社名の表記の揺れを考えず、1つの表記だけで調べる
- 調べた日付を記録せず、後から件数を検証できなくなる
- 権利として求める範囲の記述を、専門家に確かめずに解釈する
2つ目は、いちばん大きな読み違いにつながります。あえて出願しない方針の会社は存在します。秘密として抱えるほうが有利な技術もあります。
3つ目は、書いた側の信用を損ないます。出願と商品化の間には、何年もの隔たりがあることが普通です。出願を根拠に商品を予告するのは、推測を事実として語ることになります。
- 出願は原則として1年6か月を経た後に公開されるため、直近の動きは見えない
- 出願しない方針の会社もあるため、件数だけで活動を判断しない
- 技術的・法的な判断は、弁理士などの専門家に確かめる
よくある質問
専門知識がなくても使えますか
使えます。出願人と分類で絞り、件数と分野の推移を見るだけでも読み取れることがあります。技術の中身に踏み込むかどうかは、別の判断です。
費用はかかりますか
公開されている情報を調べる分には、無償の仕組みが用意されています。詳しい分析を外部に依頼する場合は、費用が発生します。
海外の出願も調べられますか
各国や地域の仕組みで調べられます。国内向けの仕組みでも、一部の外国の情報を扱っていることがあります。海外展開を検討するなら、そちらも見ておきます。
実用新案や意匠も同じですか
公開の仕組みや時期の扱いが異なります。意匠は見た目に関わるため、商品の姿を読むには有力な材料になります。同じ仕組みで調べられます。
競合に自社の調査が知られますか
公開されている情報を読むだけなら、相手に知られることはありません。情報を求める手続きを取る場合は、扱いが異なります。
外部の分析のサービスとの違いは
有償のサービスは、分類の整理や図表の作成まで自動で行ってくれます。件数を数えるだけなら無償の仕組みで足りますが、定期的に大量に見るなら有償のほうが時間の節約になります。
公報の情報はいつまで残りますか
公開された公報は残り続けます。権利が消えた後も、公開された事実は消えません。だから、過去に遡って推移を作ることもできます。
どのくらいの期間を見れば傾向が分かりますか
5年分から10年分を並べると、投資の方向の変化が見えます。1年や2年では、偶然の増減と区別がつきません。
まとめ
競合の動きを決算と求人だけで読むのには限界があります。既に事業になっていることか、これから人を採ろうとしている領域までしか見えません。特許の出願は原則として1年6か月を経た後に公開され、無償の仕組みで誰でも読めます。マーケの担当が使うべき入口は2つです。出願した会社の名前で調べる方法と、技術の分類で調べる方法。技術の中身をすべて理解する必要はありません。件数と分野の推移を見るだけで、どこに投資を集めているか、どこから手を引く方向にあるかが読めます。審査を請求しているか、早く審査してほしいと申し出ているか。こうした状況からは、本気度が読み取れます。一方で限界もあります。直近1年半の動きは見えず、あえて出願せず秘密として抱える会社もあります。だから、出願が少ないことを開発していないと読むのは危うい。他の材料と組み合わせて使います。そして、自社の出願も同じように見られています。発表の時期と公開の時期を合わせて考える視点を、マーケの側も持っておきます。技術的・法的な判断は、弁理士などの専門家に確かめてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
