名簿の持ち出しは防げるのか|退職時に確かめる備え

名簿の持ち出しは防げるのか|退職時に確かめる備え

「退職する社員が、顧客の名簿を持ち出していないか不安になる」「制限をかけたいが、業務が回らなくなるのではと踏み切れない」——人の入れ替わりがあるたびに浮上する問題です。持ち出しの多くは、悪意ではなく日常の運用の延長で起きます。業務のために手元へ写した控えが、そのまま残ります。この記事では、防ぐための備えと、退職時に確かめる点を整理します。


カメ先生カメ先生

名簿の持ち出しはね、悪意のある行為として構えられがちだが、多くは業務のために手元へ写したものが残るだけなんだ。


カメ子カメ子

禁止すれば、防げるのではないでしょうか。


カメ先生カメ先生

禁止だけだと、業務が回らずに抜け道が生まれる。写さなくても済む形にするほうが効く。


カメ子カメ子

使いやすさとの両立なのですね。何を備えておくべきか知りたいです。


この記事のポイント
  • 法律で守られるには、秘密管理性と有用性と非公知性の3要件を満たす必要がある
  • 秘密管理性は、秘密として扱う意思が従業員に明確に示されているかで判断される
  • 罰則は10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金で、実刑の判決も出ている

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目次

名簿は持ち出せてしまう

顧客の名簿は、業務のために多くの人が触れます。営業も、マーケも、支援の担当も、日常的に参照します。参照できる状態にあれば、書き出すこともできます。技術的に完全に防ぐことは、業務を止めない限り不可能です。

持ち出しは、悪意がなくても起きます。自宅で作業するために、控えを取る形が最も多くあります。引き継ぎの資料を作る過程でも、書き出しが発生します。本人には、違反しているという意識がありません。

問題になるのは、退職の後です。次の勤務先で、その名簿が使われる場合があります。同じ業界であれば、そのまま営業の対象になります。この時点で、被害が発生します。

そのときに問われるのが、法律で守られる状態にあったかです。守られていれば、差し止めや損害賠償を求められます。刑事の責任を問える場合もあります。守られていなければ、何もできません。

この差を分けるのが、管理の状態です。秘密として管理されていたかどうかが、決定的な要件になります。重要な情報だから守られる、という仕組みではありません。管理していたという事実が、要件になります。

この記事では、その要件から整理します。3つの要件、具体的な措置、退職時の手順の順に見ていきます

法律で守られる3つの要件

法律の保護を受けるには、条件があります。3つの要件を、すべて満たす必要があります

1つ目が、秘密として管理されていることです。秘密管理性と呼ばれる要件で、最も争われる部分になります。実務では、この要件を満たしていないために保護されない例が多くあります。後で詳しく確かめます。

2つ目が、事業活動のために有用な情報であることです。有用性と呼ばれる要件になります。ありふれたノウハウや、人員の配置の情報は対象外とされています。顧客の名簿は、通常この要件を満たします。

3つ目が、一般に知られていない情報であることです。非公知性と呼ばれる要件です。インターネットや書籍に掲載済みの情報は、除外されます。公開されている企業の一覧は、この要件を満たしません。

3つのうち、争いになるのはほぼ1つ目です。有用性と非公知性は、顧客の名簿であれば満たすことが多くなります。だから、対策も1つ目に集中します。秘密として管理していた証拠を、作っておく作業になります。

この整理を、先に理解しておきます。何を守るかではなく、どう管理していたかが問われます

要件内容顧客の名簿での扱い
秘密管理性秘密として管理されている最も争われる。措置の実施が必要
有用性事業活動のために有用通常は満たす
非公知性一般に知られていない公開されている一覧は該当しない
対象の例名簿、事業の計画、価格、手引きいずれも営業の情報として例示
罰則10年以下の拘禁刑か1000万円以下の罰金実刑の判決の例もある

秘密管理性という要件

最も重要な要件を、詳しく確かめます。秘密として管理されているという状態です

求められるのは、意思が伝わっていることです。秘密として扱う意思が、措置によって従業員に明確に示されている必要があります。そして、従業員がその意思を認識できる状態が確保されている必要があります。経営が心の中で重要だと思っているだけでは、足りません。

この考え方が、実務の判断を決めます。従業員から見て、秘密だと分かる状態かどうかです。誰でも自由に閲覧でき、何の表示もない情報は該当しません。重要な情報であっても、保護を受けられません。

だから、対策は表示と制限の2つになります。秘密であることを示す表示と、閲覧できる人の制限です。この2つが、意思を伝える手段になります。どちらか一方では、不十分とされる可能性があります。

実務では、この管理が抜けている例が多くあります。名簿が共有の場所に置かれ、全員が閲覧できる状態です。業務の効率のために、この状態が選ばれています。しかし、保護の面では大きな弱点になります。

効率と保護の均衡を、意識的に決めます。すべてを制限する必要はなく、対象を絞れば足ります

具体的にどう管理するか

秘密として管理する措置は、具体的に示されています。紙とデータで、それぞれ方法があります

紙の資料では、表示と保管が中心になります。文書に秘密である旨の表示を付け、施錠して保管します。持ち出しの記録を残す形も、措置として認められます。この2つで、意思は明確に伝わります。

データの場合は、方法が複数あります。ファイル名に秘密である旨を付記する形です。記録の媒体に、表示を貼る方法もあります。ファイルやフォルダに、パスワードを設定する形も挙げられています。

文書の冒頭に、表示を付記する方法もあります。開いた瞬間に、秘密であることが分かる形です。この方法は、印刷しても表示が残ります。書き出された後も、性質が伝わる利点があります。

制度の面での措置も、併せて必要です。秘密保持の誓約書の取得、就業規則の整備、管理の規程の策定です。これらが、会社としての意思を示す文書になります。個々の表示と、制度の両方が揃うのが理想です。

すべてを一度に整える必要はありません。最も重要な情報から、順に措置を適用します

対象の一覧も、作っておきます。どの情報を秘密として扱うかを、書面で列挙する形です。一覧があれば、新しく作られた情報にも同じ扱いを適用できます。一覧がないと、担当ごとに判断が分かれます。

罰則と実際の判決

違反した場合の責任も、確かめておきます。刑事と民事の両方の責任が生じます

刑事の罰則は、重く定められています。10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金です。軽い違反として扱われるものではありません。実際に、実刑の判決も出ています。

判決の例も、公表されています。大手の電機の会社の事件では、懲役5年と罰金300万円の判決が出ています。通信教育の会社の事件では、懲役2年6月と罰金300万円でした。いずれも、実刑の判決になっています。

民事の責任も、大きくなります。損害賠償の請求が可能とされています。大阪地裁の事例では、約1億3000万円の判決が出ています。福岡地裁の事例では、約4億円という金額もあります。

これらの金額は、抑止の材料になります。従業員への説明のときに、具体的な数字として示せます。抽象的な注意より、実際の判決のほうが伝わります。研修の資料に、この情報を含めます。

ただし、保護の要件を満たしていることが前提です。管理していなければ、これらの責任は問えません

会社の側の責任も、確かめておきます。従業員が他社の情報を持ち込み、それを使った場合です。使った側の会社も、責任を問われる可能性があります。中途で採用した人材が持参した資料には、特に注意が必要になります。

よくある質問

顧客の名簿は営業秘密になりますか

3つの要件を満たせば該当します。名簿は営業の情報の例として挙げられていますが、秘密として管理されていることが条件です。

誓約書を取っていれば十分ですか

十分ではありません。誓約書は措置の1つで、表示や閲覧の制限と併せて実施する必要があります。

公開されている企業の一覧は守られますか

守られません。一般に知られている情報は、非公知性の要件を満たさないためです。

罰則はどのくらいですか

10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金です。実際に、懲役5年と罰金300万円といった実刑の判決も出ています。

在職中の持ち出しも対象ですか

対象になります。在職時か退職後かを問わず、持ち出しの行為自体が問題になる可能性があります。

在職中の管理をどうするか

日常の管理から、確かめます。退職の時だけ対応しても、間に合いません

最初に行うのは、対象の絞り込みです。すべての情報を秘密として管理することは、現実的ではありません。顧客の名簿、価格の情報、事業の計画といった中心の情報に絞ります。絞ることで、管理が実行できる水準になります。

次が、閲覧できる人の制限です。業務に必要な人だけが見られる状態にします。全員が見られる状態は、秘密として管理しているとは言いにくくなります。権限の設定で、この制限は実現できます。

表示の付与も、併せて行います。対象のファイルに、秘密である旨の表示を付けます。ファイル名か、文書の冒頭のいずれかです。この作業は、対象を絞れば短時間で終わります。

書き出しの記録も、残せる場合があります。道具によっては、誰がいつ書き出したかの記録が残ります。この記録は、後から確かめる材料になります。設定を有効にしているかを、確認します。

これらは、日常の運用として続けます。一度整えるだけでは、新しい情報に適用されません

定期の点検も、組み込みます。権限の一覧を見て、不要になった権限が残っていないかを確かめます。部署の異動の後も、前の部署の情報に接続できる状態がよく残ります。年に1度の確認で、この状態は解消できます。

入社のときに確かめること

備えは、入社の時点から始まります。秘密保持の誓約書は、入社の手続の中で取得するのが基本です。後から求めると、拒否される場合もあります。

誓約書には、対象を具体的に書きます。業務上知り得た情報のすべて、という書き方では実効性が疑われます。顧客の名簿、価格の情報、事業の計画といった形で列挙します。列挙した対象には、表示と閲覧の制限も併せて適用します。

前の勤務先の情報についても、確かめます。持ち込まないという趣旨の確認です。他社の営業秘密を持ち込ませると、自社が加害の側になります。この確認は、自社を守るためにも必要になります。

研修の機会も、この時点で設けます。何が秘密として扱われるかを、具体的に伝えます。実際の判決の例を示すと、抽象的な注意より強く伝わります。10分の説明で足り、資料は使い回せます。

権限の付与も、この時点で設計します。必要な範囲だけを与える形が原則になります。最初に広く与えると、後から狭めるのは難しくなります。業務が広がったときに、追加で与える運用にします。

退職のときに確かめること

退職の手続では、確認の項目を決めておきます。この機会が、最後の確認の場になります

1つ目が、誓約書の取得です。退職の時点で、改めて秘密保持の誓約書を取得します。入社時の誓約書だけでは、退職後の義務が曖昧になる場合があります。退職の時にも取得する形が、実務では一般的です。

2つ目が、貸与した機器の返却です。端末、記録の媒体、書類のすべてを回収します。回収した機器の中身も、確認します。個人の領域に控えが残っている場合があります。

3つ目が、権限の削除です。各種の道具への接続の権限を、退職の日に削除します。この作業が遅れると、退職後も接続できる状態が続きます。削除の対象の一覧を、あらかじめ作っておきます。

4つ目が、書き出しの記録の確認です。退職の意向が示された後の、書き出しの記録を確かめます。通常より多い書き出しがあれば、内容を確認します。この確認は、疑うためではなく手順として行います。

これらを、退職の手続の一覧に組み込みます。人事の手続の中に、1項目として入れる形が確実です

STEP1
対象を絞る

顧客の名簿、価格の情報、事業の計画など中心の情報に絞る。

STEP2
閲覧を制限する

業務に必要な人だけが見られるよう、権限を設定する。

STEP3
表示を付ける

ファイル名か文書の冒頭に、秘密である旨の表示を付ける。

STEP4
制度を整える

誓約書、就業規則、管理の規程を自社に合わせて作り込む。

STEP5
退職時に確認する

誓約書の取得、機器の返却、権限の削除、記録の確認を行う。

誓約書だけでは足りない

よくある誤解を、確かめておきます。誓約書を取っていれば守られる、という理解です

誓約書は、措置の1つにすぎません。秘密管理性は、複数の措置の総合で判断されます。誓約書があっても、実際の管理が伴っていなければ足りません。誰でも自由に閲覧できる状態では、意思が伝わっていないためです。

特に問題になるのが、対象の特定です。何が秘密なのかが、誓約書に書かれていない場合があります。業務上知り得た情報のすべて、といった書き方です。この書き方では、対象が広すぎて実効性が疑われます。

だから、対象を具体的に示します。顧客の名簿、価格の情報といった形で列挙します。列挙した対象には、表示と閲覧の制限も適用します。文書と実態を、一致させる必要があります。

雛形の利用にも、注意が必要です。安易な雛形の利用は危険であり、自社に合わせた作り込みが必須とされています。業種や扱う情報によって、書くべき内容は変わります。1度は、専門家の確認を通します。

この確認は、1回で済みます。作った後は、自社で更新できるようになります

技術的な備えの限界

技術での対策も、併せて検討します。ただし、限界があることを理解しておきます

書き出しを制限する仕組みは、存在します。記録の媒体への書き出しを止める設定などです。一定の効果はありますが、完全ではありません。画面を撮影する形は、防げません。

外部への送信を制限する仕組みもあります。ただし、業務に必要な送信まで止まる場合があります。制限を強めるほど、業務の効率は落ちます。この均衡を、業務の実態から判断します。

記録を残す仕組みのほうが、現実的です。誰がいつ何を書き出したかを、記録として残す形です。抑止の効果があり、業務も止めません。後から確かめる材料としても使えます。

記録があることを、周知するのも有効です。記録が残ることを知っていれば、行動は変わります。隠して記録するより、明示するほうが抑止になります。監視ではなく、管理の措置として説明します。

技術は、補助の手段として位置づけます。中心になるのは、管理の状態を作ることです。

  • 誰でも閲覧できる場所に名簿を置いたまま、誓約書だけを取る
  • 業務上知り得た情報のすべて、という書き方で対象を特定しない
  • 雛形の誓約書を、自社の実態に合わせずそのまま使う
  • 退職の日を過ぎても、各種の道具への権限を削除しない
  • 技術的な制限だけに頼り、表示や規程を整えない

委託先と共有する場合

名簿は、社外にも渡ります。配信の代行や催しの運営で、委託先に名簿を預ける場面があります。この場合も、秘密として管理している状態を保つ必要があります。

契約に、秘密保持の条項を入れます。従業員に対する誓約書と、同じ趣旨の取り決めです。条項がないまま渡すと、秘密として管理していないと判断される可能性があります。委託の契約の雛形に、この条項を含めておきます。

渡す範囲も、絞ります。業務に必要な項目だけを渡す形です。全項目を渡す運用は、必要性の説明ができなくなります。項目を絞る作業は、渡す前の数分で終わります。

渡し方も、記録に残します。いつ、誰に、どの範囲を渡したかという記録です。後から漏えいが判明したときに、経路を特定する材料になります。記録がないと、どこから漏れたかを追えません。

終了時の削除も、取り決めます。委託の終了の時に、渡した情報を削除してもらう形です。控えを含む削除と、完了の報告を求める条項を入れておきます。この取り決めは、委託先の管理の項目とも重なります。

持ち出しに気づく仕組み

起きたことに気づく仕組みも、必要です。気づかなければ、対応もできません。

最も分かりやすいのが、記録の確認です。大量の書き出しがあった場合に、通知が届く設定があります。通常の業務とは違う量が、目安になります。この設定を有効にしておきます。

退職の意向が示された後は、特に確認します。この時期の書き出しは、通常より注意して見ます。引き継ぎのための正当な作業も含まれます。内容を確かめ、必要な範囲かを判断します。

外部からの情報も、材料になります。取引先から、元担当者の連絡があったという情報です。この情報が、持ち出しに気づく契機になることがあります。営業からの報告の経路を、作っておきます。

気づいた後の動きも、決めておきます。誰に報告し、誰が判断するかを事前に決めます。初動が遅れると、証拠の保全が難しくなります。記録の保存の期間にも、限りがあります。

この手順は、法務と一緒に作ります。法的な措置を取るかの判断が、含まれるためです。

マーケの名簿をどう守るか

マーケの現場で扱う名簿にも、この考え方が適用されます。むしろ、最も大きな名簿を扱う部門になります。

配信の名簿は、特に注意が要ります。数万件の連絡先が、1つのファイルに収まっている場合があります。書き出しの機能も、多くの道具に備わっています。この状態を、把握しておく必要があります。

対策は、権限の設定から始めます。書き出しの権限を、必要な人だけに限定します。閲覧はできても、書き出しはできない設定が可能な道具もあります。この設定を、確かめます。

表示も、可能な範囲で付けます。書き出したファイルの名前に、秘密である旨が自動で入る設定です。道具によっては、この設定ができます。手動で付ける運用は、続きません。

展示会で得た名刺の情報も、同じ扱いです。紙の名刺も、データ化した情報も、対象に含まれます。紙の名刺の保管の方法も、決めておきます。

マーケの担当が、この管理の中心になります。名簿を最も多く扱う部門としての責任があります。

  • 法律で守られるには、秘密管理性と有用性と非公知性の3要件をすべて満たす必要がある
  • 秘密管理性は、秘密として扱う意思が措置によって従業員に示されているかで判断される
  • 誓約書だけでは足りず、表示と閲覧の制限と規程を併せて整える必要がある

催しの名簿にも、同じ扱いを適用します。参加者の一覧は、書き出して共有される場面が多くあります。共有の範囲を決めずに配ると、管理の状態が失われます。渡す相手と目的を決めてから、必要な項目だけを渡します。

まとめ

名簿の持ち出しを、技術で完全に防ぐことはできません。できるのは、法律で守られる状態を作っておくことです。保護を受けるには、秘密管理性と有用性と非公知性の3要件が必要になります。争いになるのはほぼ秘密管理性で、秘密として扱う意思が従業員に伝わっているかが問われます。具体的には、表示の付与、閲覧の制限、誓約書と規程の整備を組み合わせます。罰則は10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金で、実刑の判決も出ています。退職の手続では、誓約書の取得と機器の返却と権限の削除と記録の確認を行います。雛形をそのまま使わず、自社の実態に合わせて作り込むことが前提になります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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