Agiloft Astraを現場に配る方法|仕分けはAI・判断は法務

Agiloft Astraを現場に配る方法|仕分けはAI・判断は法務

「無料で使える契約AIがあるなら、営業にも配って自分で契約を読ませたい」「購買で更新期限の近い契約を拾いたいが、法務に毎回頼むのは気が引ける」——契約AIの話題が出るたびに、営業企画や購買、経理の担当者から上がる声です。法務の手が足りない会社ほど、こうした要望は切実です。けれども、配る前に決めるべきことは道具の使い方ではありません。AIに任せるのは一次の仕分けまで、判断は法務に残す、という線を手順として組み込むことです。この記事では、米国の契約管理(CLM)の会社 Agiloft が2026年に一般提供を始めた契約AI Astra を例に、法務以外の部署に配るときの手順と、確かめるべき点を整理します。


カメ先生カメ先生

契約AIを現場に配るというと、営業が自分で契約を読めるようになって法務の負担が減る、と思われがちなんだけど、本当は、AIの指摘を誰が受けて法務に回すかを決めておかないと、法務への問い合わせはむしろ増えるんだ。


カメ子カメ子

AIが指摘してくれる分、現場が不安になって法務に聞く回数が増える、ということですか。


カメ先生カメ先生

そう。だから配る前に、どの契約を読ませてよいか、どの指摘なら現場で片づけてよいか、どこから法務に上げるかを決めておく。無料で始められる道具ほど、この手順を飛ばしやすいんだよ。


カメ子カメ子

道具が手軽なほど、配る側の決めごとが大事になるんですね。


この記事のポイント
  • Agiloft Astra は、契約の審査・修正案・条項の抽出・契約全体への質問を担う契約AI。2026年4月に無料版つきで公開し、7月14日に一般提供を始めた。無料版は利用者数の上限なし
  • 配る手順は、読ませてよい契約の種類、法務が書く審査の基準、指摘を法務に回す流れ、受付と台帳更新の範囲、プランごとの確認、小さく配って広げる、の六つ
  • 「顧客の契約を学習に使わない」という宣言は全プラン共通。ただし保存場所・保存期間・処理を委ねる先は宣言からは分からず、契約前に書面で確かめる

AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

目次

Agiloft Astra は、CLMの会社が出した契約AI

Agiloft は米国の契約ライフサイクル管理(CLM)の会社で、契約の作成から承認、締結後の管理までを一つの台帳で扱う製品を提供してきました。自社を「データを起点にした契約管理」の会社と説明しています。投資ファンドの KKR をはじめとする複数の投資会社が出資していると公表しており、KKR が過半を出資したのは2024年のことです。2026年に入ってからの買収や社名変更の発表はありません。

Astra は、そのCLMとは別に単独でも使える契約AIです。公式の製品ページによると、ワードのアドインの中での契約の審査と修正案の作成、自社の審査基準(プレイブック)や共有された審査の型に沿った確認、複数の契約の比較と分析、契約のリスクや義務、傾向について自然な文章で質問できるアシスタント、CLMと組み合わせた場合の締結後の義務の抽出や更新期限の通知などを担います。

特徴は、CLMを買っていない会社でも、無料版から個人や小さなチームで使い始められることです。これまでの契約管理の製品は、全社の導入計画と予算を通してから使うのが普通でした。Astra は、法務以外の部署が自分で登録して使い始められる入り口を用意した点で、配り方の設計が変わる製品です。

2026年の動き:4月の無料版と、7月の一般提供

報道によると、Agiloft は2026年4月に Astra を発表し、利用量に応じたクレジット制の無料版を用意しました。当初は先行利用の枠で提供し、法務・購買・営業・経理を対象にしていました。このとき同社は、顧客のデータはサービスの提供と法令の順守のためだけに使い、無料版の利用者にも有料の顧客と同じ保護を適用すると説明しています。

7月14日には一般提供を発表し、待機の列なしに誰でも無料版を使えるようにしました。無料版には利用者数の上限がなく、ワードのアドインも上限なしで使えると公表しています。あわせて、CLMの中のアシスタントから台帳の契約を探して Astra の分析に送る機能、アップロードした契約から項目を抜き出して台帳の記録を作る受付の機能、重要な日付や契約の状態、添付を対話で書き換える台帳更新の機能を、エージェント型の機能として追加しました。

発表では、購買が自動更新の近い契約を探して金銭的な影響を見積もる、経理が値上げ条項を探す、営業の管理部門が標準外の値引きを含む顧客契約を洗い出す、といった使い方が例として挙げられています。8月には Salesforce のエージェント向けの流通の場に自社の連携を出し、10月にも経営陣の人事を発表するなど、直近の更新は続いています。

法務以外に配るときに起きること

無料版を現場に配ると、最初の一か月で起きやすいことがいくつかあります。一つ目は、読ませてはいけない契約が読み込まれることです。顧客と結んだ秘密保持契約で第三者への開示が制限されている契約や、個人情報を多く含む雇用関係の書面が、担当者の判断で外部のAIに送られてしまうことがあります。

二つ目は、AIの指摘をどう扱えばよいか分からず、すべてを法務に転送する現場が出ることです。指摘が赤く表示されると、営業は自分で判断してよいのか分からず、念のため法務に送ります。法務からすると、AIの出力をそのまま貼った質問が増え、元の契約と照らし合わせる手間が増えます。三つ目は、各自が別々の基準で審査してしまうことです。無料版でも独自の審査基準を作れるため、部署ごとに違う基準が生まれます。

四つ目は、AIが作った修正案を、営業が相手方にそのまま送ってしまうことです。ワードのアドインでは修正履歴の形で修正案が作られるため、体裁が整っていて、法務が作ったものと見分けがつきません。相手方に修正案を送るのは、交渉を始めることと同じです。一度送った修正案は撤回しにくく、相手方との関係にも影響します。修正案は社内の検討用にとどめ、相手方に送る前に法務を通す、というルールが要ります。相手方との交渉そのものをAIに任せる話は、別の記事で扱っています。

どれも道具の不具合ではなく、配る側の決めごとがないことが原因です。配る前に手順を決め、その手順を道具の設定に写すという順番で進めると、こうした混乱を避けられます。次の節から、その手順を順に見ていきます。

配る手順の全体像:6つの手順

法務以外の部署に Astra を配る手順は、次の六つに整理できます。順番に意味があり、前の手順が決まらないうちに次へ進まないことが要点です。とくに手順1と手順2は法務が主導し、現場の部署はその決めごとを受けて使う側に回ります。

STEP1
読ませてよい契約の種類を決める

契約の種類ごとに、外部のAIに送ってよいか、匿名化が要るか、送らないかを表にする。

STEP2
審査の基準は法務が書く

現場が使う審査基準(プレイブック)は法務が作り、現場は作らない。

STEP3
指摘を法務に回す流れを決める

AIの指摘を現場で受ける人と、法務に上げる条件を決める。

STEP4
受付と台帳更新の範囲を決める

エージェント型の機能に台帳の記録を作らせる範囲と、人が確かめる項目を決める。

STEP5
プランごとの違いを確かめる

無料版・有料版・上位プランで、管理機能とデータの扱いを書面で確かめる。

STEP6
小さく配り、記録を見て広げる

一部署・一種類の契約から始め、一か月の記録を見て範囲を広げる。

この手順は、契約AIに限らず、外部のAIを現場に配るときに共通する骨格ですが、Astra の場合は無料版の存在によって、手順を飛ばして現場が先に使い始めてしまう危険が大きくなります。情報システム部門と法務で、無料版の登録を許可制にするかを最初に決めておくのも、手順の一部と考えてください。

手順1:読ませてよい契約の種類を決める

最初に決めるのは、どの契約なら外部のAIに読ませてよいかです。社内の契約を、送ってよいもの、匿名化してから送るもの、送らないものの三つに分けます。判断の材料は、契約の相手方との秘密保持の条項、個人情報の有無、そして契約の重要度です。

契約の種類扱い理由
自社のひな形による秘密保持契約送ってよい条件が定型で、相手方の秘密情報をほぼ含まない
仕入先との基本契約・個別契約送ってよい(購買の範囲で)更新期限や値上げ条項の確認に効く
顧客との販売契約条件付きで送る相手方の秘密保持の条項を先に確認する
雇用・業務委託の個人との契約送らない個人情報が多く、海外の事業者への提供になる
係争中・交渉中の重要案件送らない法務が直接扱う

表は一度作れば終わりではなく、法務が四半期ごとに見直します。現場に配るのはこの表と、「迷ったら送らずに法務に聞く」という一行のルールです。顧客との契約で、相手方が第三者への開示を制限している場合は、契約を処理する事業者への提供が、その制限に当たるかどうかを法務が判断します。現場に判断させない項目です。

匿名化して送る場合は、消す項目も決めておきます。担当者や署名者の氏名、メールアドレスや電話番号、振込先の口座、個人の住所は消します。一方で、金額・期間・更新の条件は残さないと審査になりません。相手方の会社名を消すかどうかは、相手方との秘密保持の条項次第です。消す作業を現場の担当者の手作業に頼ると漏れが出るので、消す項目の一覧を表と一緒に配り、送る前に一度読み返すことを手順に入れます。

手順2:審査の基準(プレイブック)は法務が書く

Astra は、自社の審査基準に照らして契約の文言を確かめ、リスクや基準に合わない条項を指摘します。基準は自分で作れ、無料版でも3つまで独自の基準を作れると公式の料金ページに書かれています。ここで大事なのは、現場の部署に基準を作らせないことです。

基準は、法務が自社のひな形と過去の交渉の記録から作ります。たとえば、損害賠償の上限、自動更新の有無と通知期限、支払条件、準拠法と管轄、再委託の可否といった項目ごとに、自社として受け入れられる範囲と受け入れられない範囲を書きます。基準に「なぜその線なのか」を一行添えておくと、現場が指摘を読んだときに、何が問題なのかを理解しやすくなります。たとえば「損害賠償の上限は契約金額の範囲まで。上限なしは、一件の事故で年間の利益を超える賠償を負いうるため受けない」のように、線と理由を対で書きます。

共有された審査の型を使う場合も、そのまま使わず、法務が自社の基準と照らして採用する項目を選びます。海外で作られた型は、日本法の契約や日本の商慣行に合わない項目を含むことがあります。基準の版は法務が管理し、変更したら現場に通知します。同じ契約に、部署ごとに違う基準が当たる状態を作らないことが、この手順の目的です。

手順3:AIのリスク指摘を誰が受け、どう法務に回すか

AIの指摘は、法務の判断ではなく、法務に回すかどうかを決めるための一次の仕分けです。現場の部署には、指摘を受ける担当を一人決めます。営業なら営業企画、購買なら購買の主任、といった、契約の実務に慣れた人です。

受ける担当は、指摘を三つに分けます。基準の範囲内で問題がないもの、基準から外れるが自社のひな形に戻せば済むもの、基準から外れて交渉や判断が要るもの、の三つです。法務に上げるのは三つ目だけとし、上げるときは、AIの出力を貼るのではなく、該当する条項の原文、基準のどの項目に当たるか、相手方の事情を添えます。

法務に上げるときの形式は、短く決めておくと続きます。たとえば、契約の相手方と種類、該当する条項の番号と原文、基準のどの項目から外れているか、相手方がその条件を求める理由、回答の期限、の五つを一つの依頼にまとめる、という形です。法務の側は、この五つがそろっていない依頼は差し戻してよいことにします。形式を決めること自体が、現場に条項の原文を読む習慣を付けることにもつながります。

この流れを決めておくと、法務への問い合わせは減り、質も上がります。逆に、AIの指摘をそのまま転送してよいことにすると、法務はAIの出力が正しいかの確認から始めることになり、負担はかえって増えます。AIの指摘は見落としや誤読もありうるため、指摘がなかったことを「問題がない」と扱わないというルールも合わせて伝えます。金額の大きい契約や新しい取引先の契約は、指摘の有無にかかわらず法務が読む、と決めておきます。

  • AIが問題なしと出したので、法務を通さずに署名した
  • AIの指摘の画面をそのまま法務に転送し、条項の原文を添えなかった
  • 営業が自分で作った基準で審査し、法務の基準と違う結論を相手方に伝えた

手順4:受付と台帳更新をエージェントに任せる範囲

Agiloft のCLMを使っている会社では、7月に加わったエージェント型の機能が関わってきます。受付の機能は、アップロードした契約から項目を抜き出して台帳の記録を作ります。台帳更新の機能は、重要な日付、契約の状態、添付を、自然な文章の指示で書き換えます。締結後の義務の抽出や更新期限の通知もCLMの機能として提供されています。

任せてよい範囲は、記録の下書きと通知の送信までです。抜き出された項目のうち、契約期間・更新の条件・通知期限・金額は、人が原文と照らしてから確定することにします。期限の読み違いは、自動更新を止め損ねる、解約の通知が間に合わない、といった実害に直結するからです。

台帳更新を対話で行う機能は便利ですが、誰がどの指示で何を書き換えたかが残ることが前提です。公式の説明では、CLMは役割ごとの権限と、閲覧・編集の記録を自動で残すとされています。現場の部署には、契約の状態を「締結済み」「解約済み」に変える操作は任せず、法務か契約管理の担当だけが持つようにします。通知の宛先は個人ではなく部署の共有の窓口にしておくと、担当者の異動で通知が届かなくなる事故を防げます。

更新期限の通知は、何日前に出すかも決めておきます。自動更新の契約で、解約の申し入れが期間満了の3か月前までと定められている場合、満了日の前に通知しても間に合いません。通知の基準日は満了日ではなく、解約の申し入れの期限にし、その期限のさらに1か月前に担当部署に届くように設定します。この基準日の設定も、抜き出された項目を人が確かめるときの確認項目に入れます。

手順5:無料版と有料版の違いを、データの扱いと管理機能で確かめる

公式の料金ページによると、プランは無料版、Pro、上位のプランの三つです。無料版は月1,000クレジット、独自の審査基準は3つまで、チームへの招待ができます。Pro は年払いで月120ドルからで、月2,500から4万クレジットまでの段があり、独自の審査基準は無制限です。上位のプランは個別見積もりで、シングルサインオン(SSO)と企業向けの管理機能、専任の導入支援が付くとされています。

法務以外に配るときに効いてくるのは、機能の多さより管理の違いです。シングルサインオンが上位のプランにしか書かれていないことは、退職者の利用停止や、会社の認証の方針を適用できるかに関わります。無料版を個人の登録で配ると、社員が辞めた後も個人の資格が残る、誰がどの契約を送ったかを会社が把握できない、といった状態になりかねません。

確かめる項目は、利用者の追加と削除を会社の管理者ができるか、利用の記録を会社が見られるか、送った契約がどこに保存され、いつ消えるか、の三つです。公式の製品ページには、保存の地域や第三者の認証の種類は書かれていません。書かれていないことは、ないと見なして商談で書面を求めるのが基本です。無料版での試用は、送ってよい契約の種類に絞り、全社に配るのは管理機能を確かめてからにします。

手順6:小さく配り、記録を見て広げる

最初に配るのは、一つの部署、一種類の契約に絞ります。おすすめは、購買の仕入先との基本契約です。ひな形が決まっていることが多く、更新期限や値上げ条項の確認という目的がはっきりしていて、AIの指摘の当たり外れを法務が評価しやすいからです。

一か月使ったら、送った契約の数、指摘の数、そのうち法務に上がった数、法務が見て指摘が正しかった割合、指摘がなかったのに法務が問題を見つけた件数を集計します。最後の数字がもっとも大事で、見落としの傾向が分かってから範囲を広げるのが安全です。

見落としを数えるには、AIが何も指摘しなかった契約の一部を、法務が抜き取りで読むしかありません。最初の一か月は、指摘のなかった契約の1割程度を法務が読み、AIが拾わなかった問題があれば、その条項の種類を記録します。見落としが特定の条項に偏っていれば、審査の基準にその条項を明記するか、その種類の契約は法務が必ず読む扱いに戻します。抜き取りの割合は、見落としが減れば下げていきます。

次に広げるのは、経理の値上げ条項の確認や、営業管理の標準外の値引きの洗い出しのような、検索に近い使い方です。営業の現場が顧客との契約を自分で審査する使い方は、指摘の扱いに慣れてから最後に広げます。クレジットの消費も一か月の記録で分かるので、無料版の上限で足りるか、有料版が要るかの判断材料になります。

「学習に使わない」宣言で確かめられること・確かめられないこと

Agiloft は、すべての Astra の契約者に、無料版も含めて、顧客の契約をAIモデルの学習に使わないと約束しています。4月の発表時には、顧客のデータはサービスの提供と法令の順守のためだけに使うとも説明しています。これは、契約AIを選ぶうえで大事な宣言です。

ただし、この宣言で確かめられるのは「学習に使わない」ことだけです。宣言からは、送った契約がどの国のどの設備に保存されるか、どれだけの期間残るか、処理をどの外部の事業者に委ねているかは分かりません。生成AIを使う製品は、多くの場合、外部のAIの事業者の処理を経由しますが、その事業者の名前とデータの扱いは公式の製品ページには書かれていません。

確かめる方法は、利用規約とデータ処理に関する契約の書面、処理を委ねる先の一覧、セキュリティに関する資料を商談で求めることです。無料版の利用規約と有料版の契約で、データの扱いが同じかどうかも確かめます。宣言は出発点で、社内の承認は書面で確かめた内容に基づいて出す、という順番を守ってください。

何が社外に出るか:契約の本文と個人情報

Astra に契約を送ると、契約の本文が米国の事業者に渡ります。契約には、相手方の会社名や取引条件だけでなく、担当者の氏名、連絡先、署名者の役職などの個人情報が含まれます。個人情報保護法では、外国にある第三者に個人データを提供する場合の規定があり、委託として扱えるか、本人の同意が要るか、相手国の制度をどう説明するかを整理する必要があります。

実務では、個人情報を多く含む契約を送らないことと、送る契約は担当者の氏名などを消してから送ることの二つで、多くの場面に対応できます。手順1の表で、雇用や個人との業務委託の契約を「送らない」に入れたのはこのためです。海外の事業者への委託の扱いは、社内の個人情報の担当と法務で一度決めておき、部署ごとに判断させないようにします。

もう一つ社外に出るのは、自社の審査基準そのものです。基準には、自社がどこまで譲れるかという交渉上の手の内が書かれています。基準を製品に登録することは、その手の内を外部の事業者に預けることでもあります。基準の正本は社内の文書で持ち、製品には必要な範囲だけを登録する、という持ち方を勧めます。

弁護士法との関係は一段で押さえる

契約の審査をAIで支援するサービスと弁護士法72条(弁護士でない者が報酬を得て法律事務を扱うことの禁止)との関係については、法務省が2023年8月に考え方を示しています。そこでは、サービスの提供の仕方や、利用者が自社の契約を自社の判断で確かめるために使う場合などに分けて整理されています。社内の部署が自社の契約を確かめるために Astra を使うこと自体は、自社の業務の範囲の話です。ただし、AIの出力を、社外の取引先への法的な助言として渡さないこと、最終的な判断を社内の法務や顧問の弁護士が持つことは守ります。グループ会社の契約を親会社の部署がまとめて審査するような場面は、法務に判断を仰いでください。法令の一般論は、契約審査のAIを扱った別の記事でまとめています。

費用の増え方と、やめ方

Astra の費用は、利用者数ではなく、クレジットの消費で増える設計です。公式の説明では、クレジットは分析の量と複雑さで消費され、簡単な質問は少なく済み、ワードのアドインでの審査はクレジットを使いません。増えるのは、多くの契約をまとめて分析する使い方です。購買が仕入先の契約をすべて送って更新期限を洗い出す、といった使い方を始めると、無料版の月1,000クレジットはすぐに足りなくなる可能性があります。

費用を見積もるには、手順6の一か月の記録で、どの使い方がどれだけクレジットを使ったかを見ます。そのうえで、まとめての分析は年に数回の棚卸しに絞るのか、日常的に使うのかを決めます。上位のプランが要るかどうかは、シングルサインオンと管理機能が必要かどうかで決まります。全社に配るなら、管理機能のないプランでは、社員の出入りの管理が追いつかなくなります。

社内の手間も費用に入れて考えます。審査の基準を法務が作る時間、指摘を受ける担当の時間、抜き取りで法務が読む時間は、道具の料金には現れません。最初の三か月は法務の時間がむしろ増えるのが普通で、減り始めるのは、基準が固まり、現場が五つの項目をそろえて依頼できるようになってからです。この見通しを、配る前に法務と現場の部署の責任者で共有しておきます。

やめ方も先に決めておきます。やめるときに必要なのは、送った契約のデータの削除の依頼と、その確認です。削除の手順と期間を、試用の段階で書面で確かめておきます。審査の基準は社内の文書に正本があれば、別の道具に移っても使えます。CLMの台帳に作らせた記録は、台帳の書き出しの形式と、AIが作った記録と人が確定した記録を区別できるかを確かめておくと、移行のときに困りません。

配る前のチェックリスト

最後に、法務以外の部署に配る前に確かめる項目をまとめます。すべてに答えが出てから配るのが原則ですが、答えが出ていない項目がある場合は、その項目に関わる使い方だけを止めて、範囲を絞って始めることもできます。

  • 読ませてよい契約・匿名化して送る契約・送らない契約の表を法務が作った
  • 現場が使う審査の基準は法務が作り、版を管理している
  • AIの指摘を受ける担当と、法務に上げる条件と形式を決めた
  • 指摘がないことを問題なしと扱わないこと、高額・新規の契約は法務が読むことを伝えた
  • 受付と台帳更新で、期限・金額・状態の確定は人が行うと決めた
  • 利用者の追加と削除、利用の記録を会社が管理できるプランか確かめた
  • 保存の場所と期間、処理を委ねる先を書面で確かめた
  • 個人情報を含む契約の扱いを、個人情報の担当と決めた
  • 最初に配る部署と契約の種類、一か月後に見る数字を決めた
  • やめるときの削除の依頼と、記録の書き出しの方法を確かめた
  • 無料版の登録を個人に任せると、上の項目のほとんどが確かめられないまま使われる。登録を許可制にするかを最初に決める
  • 公式の製品ページや料金は変わりうる。導入の判断の時点で最新の公式情報を確かめる

まとめ

Agiloft Astra は、無料版から始められ、利用者数の上限もないため、営業・購買・経理に配りやすい契約AIです。だからこそ、配る前に手順を決めておく必要があります。読ませてよい契約の種類を決め、審査の基準は法務が書き、AIの指摘は一次の仕分けとして受けて、判断が要るものだけを根拠を添えて法務に回す。受付と台帳更新は記録の下書きまでを任せ、期限と金額の確定は人が行う。学習に使わないという宣言は出発点にとどめ、保存の場所と期間、処理を委ねる先は書面で確かめる。小さく配って一か月の記録を見てから広げ、費用の増え方とやめ方も最初に決めておけば、契約AIは法務の負担を減らす道具として定着します。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

運営会社:株式会社デボノ

目次