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法律事務所で、依頼者から受け取ったメール・メモ・書面から時系列表の下書きを作り、出典と不明点を添える

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

依頼者から受け取ったメール、チャットの画面写真、手書きのメモ、契約書などから、日付のある出来事を抜き出して日付順の時系列表の下書きを作ります。各行に出典の資料と該当の文を付け、日付や当事者がはっきりしない点は依頼者への質問にします。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
n8n/Power Automate/Python
対象業界
士業
対象部門
法務
対象業務
書類作成/要約
主な課題
人手が足りない/情報が見つからない/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
要約
主な効果
品質標準化/工数削減/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
80h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
63%
年間削減
600h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 依頼者から届いた資料を、事件のフォルダに保存する
  2. 資料を1点ずつ開き、日付のある出来事を表計算の表に書き出す
  3. 画面写真や手書きのメモは、読み取りながら手で打ち込む
  4. 出来事ごとに、どの資料の何ページかを書く
  5. 日付順に並べ替え、同じ出来事が複数の資料に出ているものをまとめる
  6. 日付がはっきりしないもの、誰の発言か分からないものに印を付ける
  7. 印を付けたものを、依頼者への質問としてまとめる
  8. 担当の弁護士が表を読み、事件の方針を考える
導入後(After)
  1. 人依頼者から届いた資料を、事件のフォルダの「受領」に保存する
  2. 自動保存をきっかけに処理が動き、資料に番号を振り、形式ごとに読み込める形にそろえる
  3. 自動Claude API が、資料ごとに日付のある出来事を抜き出し、該当の文を写す
  4. 自動写した文が資料に本当にあるかを、プログラムで照合する
  5. 自動日付順に並べ、同じ出来事の候補をまとめる
  6. 自動日付・当事者・発言者が不明な点を、依頼者への質問の下書きにする
  7. 人パラリーガルが表を読み、出典を開いて確かめ、まとめ方を直す
  8. 人担当の弁護士が表と質問を読み、依頼者へ送る質問を決める
  9. 【人/自動】 追加の資料が届いたら、その資料の分だけ3番から6番を動かし、表に追記する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 依頼者から届いた資料を、事件のフォルダに保存する
  2. 資料を1点ずつ開き、日付のある出来事を表計算の表に書き出す
  3. 画面写真や手書きのメモは、読み取りながら手で打ち込む
  4. 出来事ごとに、どの資料の何ページかを書く
  5. 日付順に並べ替え、同じ出来事が複数の資料に出ているものをまとめる
  6. 日付がはっきりしないもの、誰の発言か分からないものに印を付ける
  7. 印を付けたものを、依頼者への質問としてまとめる
  8. 担当の弁護士が表を読み、事件の方針を考える

(a)読むだけで時間がかかる。 資料の多くは画面写真と手書きのメモで、文字として検索できません。依頼者が送ってきた順に1点ずつ開き、読みながら書き写すしかありません。

(b)出典があいまいになる。 急いでいると4番を省き、「メールより」とだけ書きます。後で弁護士が「この日の発言はどこに書いてあったか」と聞くと、作った本人も資料を探し直すことになります。

(c)日付の推測が混ざる。 「昨日」と書かれたチャットの日付を、写真の撮影日から逆算して書いてしまう。その日付が表の中で確定した事実のように見え、書面にそのまま写ります。 依頼者に確かめるべき点が、表の中で消えてしまいます。

(d)追加の資料で作り直しになる。 新しい資料が届くたびに5番の並べ替えとまとめをやり直します。更新のほうが初版より手間がかかることもあります。

  1. 【人】 依頼者から届いた資料を、事件のフォルダの「受領」に保存する
  2. 【自動】 保存をきっかけに処理が動き、資料に番号を振り、形式ごとに読み込める形にそろえる
  3. 【自動】 Claude API が、資料ごとに日付のある出来事を抜き出し、該当の文を写す
  4. 【自動】 写した文が資料に本当にあるかを、プログラムで照合する
  5. 【自動】 日付順に並べ、同じ出来事の候補をまとめる
  6. 【自動】 日付・当事者・発言者が不明な点を、依頼者への質問の下書きにする
  7. 【人】 パラリーガルが表を読み、出典を開いて確かめ、まとめ方を直す
  8. 【人】 担当の弁護士が表と質問を読み、依頼者へ送る質問を決める
  9. 【人/自動】 追加の資料が届いたら、その資料の分だけ3番から6番を動かし、表に追記する

7番目が、この設計の分かれ目です。 AIが作るのは下書きで、パラリーガルは全行の出典を開いて確かめます。 書き写す時間は減りますが、確かめる時間は残します。確かめないまま書面に使う運用にはしません。

9番目で「追加分だけ」を動かすのも意図してのことです。 表全体を作り直すと、人が直した箇所が消えます。新しい行は「追加」として印を付けて入れ、人が直した行には触りません。

02今回想定するシステム構成

構成図
依頼者からの資料(メール・画面写真・メモの写真・契約書・相手方の書面)
   │
   ▼【トリガー】事件フォルダの「受領」への保存
Python(事務所のサーバーで定時に動く)
   ├──▶ 資料番号の付与、形式の変換(メール→テキスト、Office文書→PDF)
   ├──▶ ページ・画像の数とサイズの確認
   ▼
Claude API ── 資料ごとに出来事を抜き出す(構造化出力でJSON)
   │   ① 日付と日付の確かさ   ② 出来事   ③ 当事者・発言者
   │   ④ 資料番号とページ     ⑤ 該当の文(写し)
   ▼
Python ── 写した文の照合、日付順の並べ替え、同じ出来事の候補のまとめ
   ▼
Claude API ── 不明点を依頼者への質問の下書きにする
   ▼
時系列表(事件フォルダ)と質問の下書き
   ▼
【パラリーガルが出典を確かめる → 弁護士が質問を決める】
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(出来事の抜き出し、質問の下書き。構造化出力)OpenAI API、Gemini API
連携Python(形式の変換、照合、並べ替え、表の書き出し)Power Automate、n8n
保管事務所のファイルサーバー(資料、時系列表、ログ)SharePoint、Box
事件の本体既存の事件管理のシステム各社の事件管理のシステム

事件管理のシステムは、新しく足すものではありません。 この構成は事件フォルダの資料を読み、同じフォルダに時系列表を置くだけです。事件管理のシステムには書き込みません。

土台は、Claude API が PDF と画像をそのまま読めることです。 公式の説明では、PDF はページごとに文字と画像の両方として扱われ、図や表も読めるとされています。上限は1リクエストあたり32MB、ページ数は600ページ(コンテキストが100万トークン未満のときは100ページ)で、パスワードや暗号化のかかったPDFは扱えません。 画像は JPEG、PNG、GIF、WebP で、API では1枚10MB、8000×8000ピクセルまでです。

出典の付け方には、2つの選び方があります。 Claude API には、回答の根拠になった資料の箇所を返す Citations の機能があり、PDF ならページ番号、テキストなら文字の位置を返します。ただし公式の説明では、Citations は構造化出力と一緒に使えず、併用すると400のエラーになります。 この構成は表に流し込むためにJSONで受けたいので、構造化出力を使い、該当の文をAIに写させて、プログラムで資料と照合するほうを選びます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

事件フォルダの「受領」に資料が置かれたことを起点にします。 事務所のサーバーで Python のスクリプトを15分ごとに動かし、新しく置かれた資料を見つけます。依頼者からの資料は数回に分けて届くことが多いため、最後の資料が置かれてから30分たったところで、その回の資料をまとめて処理します。

初版と更新を同じ仕組みで扱います。事件フォルダに時系列表がまだ無ければ初版を作り、あれば今回の資料の分だけを抜き出して追記します。 過去に処理した資料は、資料番号で記録しておき、二度読みしません。

処理が終わった資料は「処理済み」へ移します。移すのは、照合まで成功したときだけです。 「受領」に残っている資料が、まだ表に入っていない資料です。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
メール送信日時、送信者、宛先、本文、添付依頼者からの転送(.eml)かPDF
チャットの画面写真発言、表示された日付や時刻、発言者の名前依頼者が撮った画像
手書きのメモ手帳・ノートの記載依頼者が撮った画像
契約書・書面契約日、条項、相手方からの通知PDF
事件の基本情報依頼者、相手方、関係者の呼び方の一覧事件管理のシステムから手で写す

質を決めるのは、いちばん下の関係者の一覧です。 依頼者の資料では、同じ人が「部長」「Kさん」「あの人」と呼ばれます。呼び方の一覧が無いと、同じ人の発言が別人として並びます。 受任のときに聞き取った関係者を、呼び方ごと一覧にしておきます。

チャットの画面写真は、日付の確かさがいちばん低い資料です。 画面に日付の区切りが写っていない写真では、発言の日がその写真だけでは分かりません。ここが依頼者への質問のいちばん多い出どころになります。

Step3

データの取得方法を決める

資料はすべて事件フォルダから読みます。形式ごとに、読み込める形にそろえてから渡します。

形式そろえ方渡し方
.eml のメール送信日時・送信者・本文をテキストに取り出す。添付は別の資料として番号を振るテキスト
PDFそのままPDF
Word・表計算の文書PDFに変換する(そのままでは渡せない)PDF
画面写真・メモの写真向きを直し、長辺を縮める画像

Word や表計算の文書は、そのままでは渡せません。 公式の説明では、.docx や .xlsx のような形式は文書として渡せず、テキストかPDFに変換する必要があるとされています。事務所のサーバーでPDFに変換してから渡します。

メールは本文をテキストにして渡します。 送信日時をヘッダーから取り、本文の先頭に書き添えます。「昨日」「来週」のような言葉を日付に直すときの基準が、この送信日時です。 転送をくり返したメールでは、本文の中に元のメールの送信日時が引用されています。引用部分の日時と、転送した日時を取り違えないよう、引用の区切りごとに別の資料として扱います。

PDF と画像は、抜き出しとは別に、文字起こしを1回させておきます。 照合のときに「写した文が資料にあるか」を探す相手が要るからです。文字の層を持つPDFはその文字を使い、画面写真や手書きのメモは Claude API に「見えている文字をそのまま書き出す」だけの指示で文字起こしをさせ、資料番号と画像番号を付けて事件フォルダに保存します。 抜き出しと文字起こしを別の呼び出しにするのは、同じ呼び出しの中で両方をさせると、抜き出した文に合わせて文字起こしが整えられてしまうからです。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 資料番号の付与 … 届いた順に「D-001」のような番号を振り、ファイル名と受領日を台帳に記録します
  2. パスワード付きのPDFの確認 … 開けないものは処理せず、依頼者に解除して送り直してもらいます
  3. ページ数と大きさの確認 … 1回に送るページ数と大きさが上限に収まるよう、長い書面は分けて送ります
  4. 画像の向きと大きさ … 横倒しの写真を直します。1回の送信で画像が20枚を超えると1枚あたりの大きさの制限が厳しくなるため、長辺を2000ピクセル以下に縮め、1回は20枚までにします
  5. 関係者の呼び方の一覧の添付 … 事件の基本情報から作った一覧を、毎回いっしょに渡します
  6. 同じ資料の重複の除去 … 同じメールが転送で二重に届いたものは、内容の一致で1つにします

6番目の重複の除去は、内容が完全に同じものに限ります。 返信を重ねたメールは、前のやり取りを引用しているので中身が似ていますが、最後に足された1通分が違います。 似ているものを1つにまとめると、その1通分の発言が表から消えます。完全に一致しないものは別の資料として残し、同じ出来事の候補として後のまとめに任せます。

4番目を軽く見ないでください。 公式の説明では、200ピクセル未満のような小さい画像や、傾いた画像では読み違えが起きうるとされています。チャットの画面写真は文字が小さいので、縮めすぎにも注意します。 長辺を縮めた結果、文字がつぶれる写真は、縮めずに1枚ずつ送ります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、資料ごとに日付のある出来事を抜き出し、該当の文を写すことだけです。

抜き出す項目中身判断できないときの扱い
日付年月日。時刻があれば時刻も分からなければ空欄
日付の確かさ資料に明記/送信日から計算/月までしか分からない/不明迷えば低いほうを選ぶ
出来事何が起きたか、誰が何を言ったか資料の言葉に近い形で短く書く
当事者・発言者関係者の一覧の呼び方にそろえる一覧に無い人は「不明(資料の表記)」
出典資料番号とページ(画像なら画像番号)必須
該当の文根拠になった文を資料からそのまま写す必須。写せないものは出来事にしない

「日付の確かさ」が、この構成でいちばん大事な欄です。 送信日から計算した日付は、計算が合っていても依頼者の記憶と違うことがあります。資料に明記された日付とは別の扱いにし、表でも見分けがつくようにします。

させないこと理由
責任の所在や違法性を書く事実の認定と評価は弁護士の判断
資料に無い日付を推測で埋める推測が確定した事実に見えてしまう
依頼者の言い分を事実として書く「依頼者のメモによれば」の形を保つ
発言の言い換え・要約で意味を変える書面で引用するとき、元の言葉が要る
写真の撮影日から日付を決める撮影日は出来事の日ではない

2行目と最後の行が、いちばん起きやすい失敗です。 日付の無い画面写真を渡すと、AIは前後の資料から「おそらくこの日」と埋めます。その日付が表に入ると、確かめるべき点が消えます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは法律事務所で、依頼者から受け取った資料を読み、
時系列表の下書きを作る担当です。資料に書かれていることだけを扱ってください。

【抜き出すもの】
資料の中の、日付のある出来事(行為・発言・通知・契約・支払など)。

【日付の扱い】
- 資料に年月日が書かれていれば date_basis を explicit にする。
- 「昨日」「来週」などは、渡したメールの送信日時から計算し、
  date_basis を computed にする。計算に使った語を date_note に写す。
- 月までしか分からなければ date_basis を month_only にする。
- 分からなければ date を空にし、date_basis を unknown にする。
- 前後の資料から推し量って日付を埋めないでください。
- 画像の撮影日・ファイルの作成日を出来事の日付にしないでください。

【当事者の扱い】
- 関係者の呼び方の一覧にある名前にそろえてください。
- 一覧に無い人は「不明(資料の表記:○○)」としてください。

【厳守事項】
- quote には根拠の文を資料からそのまま写してください。
  言い換え・要約・補足をしないでください。
- quote を写せない出来事は出力しないでください。
- 依頼者のメモに書かれた評価(「ひどい」「違法だ」など)は、
  出来事ではなく「依頼者のメモの記載」として扱ってください。
- 責任・違法性・見通し・証拠としての価値は書かないでください。
- 判断に迷ったら、確かさの低いほうを選んでください。

【資料番号】{doc_id}
【資料の種類】{doc_type}
【メールの送信日時(メールの場合)】{sent_at}
【関係者の呼び方の一覧】{party_aliases}
【資料】(このあとに添付)

「撮影日を日付にしない」を明記しないと、画像の情報から日付を作ろうとします。 公式の説明では画像のメタデータは渡されませんが、画面に写った時計や通知の時刻を手がかりに日付を作ることはあります。写っている日付の区切りだけを根拠にするよう、禁じる形で書きます。

「評価をメモの記載として扱う」は、依頼者の資料に特有の指示です。 依頼者のメモには感情や評価が多く書かれています。それを出来事として並べると、表が依頼者の主張の一覧になります。 書面を書く弁護士にとっては、事実と評価が分かれていることが大事です。

Step7

出力形式を固定する

資料ごとに、次の形のJSONで受け取ります。

{
  "doc_id": "D-001",
  "events": [
    {
      "date": "2026-03-04",
      "time": "",
      "date_basis": "explicit | computed | month_only | unknown",
      "date_note": "",
      "event": "",
      "actor": "",
      "counterparty": "",
      "page_or_image": "",
      "quote": "",
      "is_client_opinion": false
    }
  ],
  "unclear_points": [
    { "kind": "date | actor | content", "quote": "", "question": "" }
  ]
}

1つ目の理由は、照合ができることです。 quote の文を、プログラムが資料のテキストの中から探します。PDF と画像は、Claude API に別に文字起こしをさせたテキストと照らします。見つからない行は「出典未確認」として表の最後に回します。

照合では、空白・改行・全角と半角の違いだけをそろえてから探します。それ以上のゆらぎ(送り仮名の違い、言い換え)は一致とみなしません。 ゆるく照合すると、AIが言い換えた文まで照合済みになり、照合の意味がなくなります。

2つ目は、日付の確かさで並べ方を変えられることです。 explicit と computed は日付順に並べ、month_only は月の終わりに、unknown は表の最後にまとめます。確かさの低い行が、確かな行の間に紛れ込みません。

3つ目は、unclear_points がそのまま質問の下書きの材料になることです。 資料ごとの不明点を集め、2回目の呼び出しで、依頼者に聞く質問の形に整えます。同じ日の出来事についての不明点は1つの質問にまとめ、依頼者の負担を減らします。

時系列表の列中身
日付日付と、確かさの印(明記/計算/月のみ/不明)
出来事短い記述
当事者関係者の一覧の呼び方
出典資料番号、ページか画像番号
該当の文写し
状態照合済み/出典未確認/追加(今回の更新で入った行)
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
事件フォルダファイルサーバーの読み書き資料を読み、時系列表と質問の下書きを置く
Claude APIMessages API を Python から呼ぶ出来事の抜き出し、文字起こし、質問の下書き
担当者への通知事務所のメール表ができた事件名だけを知らせる
事件管理のシステムなし書き込まない

依頼者への質問は、自動で送りません。 質問の下書きは事件フォルダに置くだけで、送るかどうか、どう聞くかは弁護士が決めます。 依頼者に何を聞くかは、事件の方針そのものだからです。

時系列表は、表計算のファイルで事件フォルダに書き出します。 列は第7章の出力形式の表のとおりで、出典の列には資料のファイルへのリンクを入れます。パラリーガルがリンクから資料を開き、そのまま確かめられるようにしておくと、確かめる時間がいちばん短くなります。通知のメールには事件名と件数だけを書き、資料の中身や依頼者の名前は書きません。

Step9

人が確認する

時系列表は、すべての行を人が確かめてから使います。

  1. パラリーガルが出典を開く … 全行について、資料番号とページを開き、該当の文があるかを見ます。照合済みの行も開きます。 照合が確かめるのは文があることで、読み取りが正しいことではないからです
  2. 日付の確かさを見直す … computed の行は、計算の元になったメールの送信日時を確かめます
  3. まとめ方を直す … 同じ出来事の候補としてまとめられた行が、本当に同じ出来事かを見ます
  4. 弁護士が質問を決める … 不明点の下書きから、依頼者に聞くものを選び、聞き方を直します

1番目の「照合済みの行も開く」を省かないでください。 手書きのメモでは、AIの文字起こしと抜き出しの両方が同じ読み違いをすることがあります。照合が通っても、元の画像と違う文字になっていることはありえます。

確かめる時間は1行あたり数十秒です。 書き写していたころの時間がそのまま確かめる時間に置き換わるのではなく、資料を開く場所が分かっているぶん、短くなります。

確かめた結果は、表の「状態」の列に残します。 パラリーガルが開いて確かめた行は「確認済み」とし、確かめた人の名前と日付を付けます。弁護士が書面に写してよいのは「確認済み」の行だけ、と事務所で決めておくと、下書きのまま書面に入る事故を防げます。依頼者の回答で日付が確かになった行は、回答のメールを新しい資料として番号を振り、その資料番号を出典に足します。

Step10

例外に対処する

起きること対応
パスワード付きのPDF処理せず、依頼者に解除して送り直してもらう
画像の文字が読めないunclear_points に入れ、依頼者に元の画面や原本を頼む
1回の送信の上限を超える書面をページで分け、画像は20枚ずつに分ける
写した文が資料に無い「出典未確認」として表の最後へ。パラリーガルが資料を見て直す
関係者の一覧に無い人が多く出る一覧の不足。弁護士に確かめて一覧を足す
同じ資料が二重に届く内容の一致で1つにし、資料番号の台帳に記録する
資料どうしで日付が食い違うどちらかに決めず、両方の行を残して unclear_points に入れる
外国語の資料が混ざる抜き出しは原文のまま写させ、訳は付けない。訳が要るかは弁護士が決める
APIが応答しない間を空けて再送し、だめなら「受領」に残して担当者に知らせる

2行目は、依頼者に頼むことで解決するものがほとんどです。 画面写真が読めないときは、元のチャットの画面をもう一度撮ってもらうか、書き出しの機能で文字のまま出してもらうほうが確実です。

Step11

記録を残す

  • 資料番号の台帳(ファイル名、受領日、形式、処理日)
  • 資料ごとに Claude API へ送った内容と、返ってきたJSON
  • 照合の結果(照合済み/出典未確認)
  • 人が直した行の記録(何をどう直したか)
  • 依頼者に送った質問と、その回答で直した行

4つ目は、指示を直す材料になります。 同じ型の直しがくり返されるなら、指示か関係者の一覧に足りないものがあります。たとえば「発言者の取り違え」が続くなら、チャットの画面写真で左右の吹き出しのどちらが依頼者かを、資料の種類と一緒に渡すことで減らせます。

指示の版も残します。 指示を直すと、同じ資料からでも抜き出される行が変わります。どの版の指示で作った表かが分からないと、後から行の差を説明できません。

ログは事件の記録として扱います。 依頼者の資料と同じ場所に、同じ期間置きます。事件フォルダの外にコピーを作りません。

04実装レベルの3段階

最小構成:資料をAIの画面に貼り、出来事と根拠の文を抜き出させる / 資料ごとの抜き出し
半自動化:上記+事件フォルダを起点に、形式の変換・抜き出し・照合・並べ替え・質問の下書きまでを自動で行う / 時系列表の下書きと質問の下書き
本格構成:上記+相手方の書面や準備書面の主張と時系列表を照らし、食い違う点を一覧にする / 事実の食い違いの洗い出し

最小構成では件数がさばけません。 資料を貼る作業が手で残り、出典の照合もできません。確かめるための段階です。 本記事の想定は半自動化です。 1件120分が45分になるのは、書き写しと並べ替えが自動になり、人の作業が出典を開いて確かめることに絞られるからです。 本格構成は、時系列表が信用できるようになってからにします。 相手方の主張との食い違いを出させるのは、表の行が正しいことが前提です。出典未確認の行が残る状態で進むと、食い違いの一覧そのものが誤ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
120 分
1件あたり導入後時間
45 分
現在  40件 × 120分 ÷ 60 = 80 時間/月
導入後 40件 × 45分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
50h
削減率
63%
年間削減時間
600h
年間金額換算(時間単価5,000円)
300万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 弁護士5〜15名ほどで、労働・不動産・離婚・取引の紛争など、依頼者の手元の資料から事実を組み立てる事件を多く受けている法律事務所。依頼者からメール・チャットの画面写真・メモ・書面がまとめて届き、パラリーガルや若手の弁護士が時系列表を手で作っている場合。追加の資料が届くたびに表を作り直している場合。
向いていない
  1. 資料が数点で、時系列表を作るまでもない事件が中心の場合。資料の多くが紙の手書きで、写真にしても読めない状態の場合。事件の見通しや主張の組み立てまでAIに任せたい場合。なお、事実の認定、主張の選択、依頼者への助言は弁護士の職務であり、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 終わった事件から、時系列表がすでにある事件を3件選ぶ(画面写真や手書きのメモが多い事件を1件入れる)
  2. 事務所で契約しているAIサービスの画面に、資料を数点ずつ貼り付ける
  3. 「この資料から日付のある出来事を抜き出し、根拠の文をそのまま写してください。日付が書かれていなければ空欄にし、推測で埋めないでください。責任や評価は書かないでください」と指示する
  4. 出てきた行を、当時作った時系列表と突き合わせる
  5. 当時の表に無い行と、当時の表にあってAIが出さなかった行を数える

3件で、写した文が資料にあるか、日付を推測で埋めていないかを見ます。

出てきた内容判断
当時の表と同じ出来事が、出典付きで出たフォルダからの自動処理に進む
日付の無い資料に日付を埋めた指示で直る。構成は有効
写した文が資料と違う写させ方を直し、照合の仕組みを必ず作る
手書きのメモがほとんど読めない依頼者に資料の出し方を頼む運用が先

2行目が出たら、指示を直してもう一度試します。 日付を推測で埋めることが直らないうちは、自動処理に進みません。

当時の表に無い行が出てくることもあります。 それが資料に本当に書かれていれば、当時の見落としです。AIの誤りか当時の見落としかは、資料を開けばすぐに分かります。 この比べ方そのものが、出典を付ける意味を確かめる練習になります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
日付の無い資料に日付を埋める推測を禁じ、date_basis で確かさを分ける
写した文が資料と違うプログラムで照合し、見つからない行を表の最後に回す
同じ人が別人として並ぶ関係者の呼び方の一覧を毎回渡す
依頼者の評価が出来事として並ぶis_client_opinion で分け、表でも見分けがつくようにする
「昨日」の計算を誤る送信日時をヘッダーから取り、計算に使った語を残す
画面写真の文字が小さくて読めない縮めすぎない。依頼者に文字のまま書き出してもらう
Word の文書が渡せないPDFに変換してから渡す
構造化出力と Citations を一緒に使ってエラーになる併用できない。 写しと照合で出典を付ける
更新で人の直しが消える追加分だけを処理し、人が直した行には触らない
質問を自動で依頼者に送ってしまう下書きまでにする。 送るかは弁護士が決める

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、資料に無いことが表に入るという同じ形をしています。日付の確かさの欄と、写した文の照合があるかどうかで、表を書面に使えるかが決まります。

最後の2行は、運用が慣れてきたころに起きます。 表の出来がよくなると、確かめる手順を省きたくなり、質問も下書きのまま送りたくなります。そこで省いた1件が、相手方の反論で崩れる1件になります。 「確認済み」の行だけを書面に使う決まりは、慣れた後こそ守る必要があります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 依頼者と相手方、関係者の氏名、やり取りの中身、健康や家庭の事情、金銭の事情など、事件の秘密のすべてです。

  1. 守秘義務を前提に、外部へ出す扱いを決める … 弁護士法第23条は、弁護士が職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定めています。外部のAIサービスに資料を渡すことを、事務所としてどう位置付けるかを先に決めます。 依頼者への説明が要るかも、事務所の方針として決めてください
  2. API の保持の扱いを確かめる … Claude API では、会話の内容は既定では保持されないとされていますが、30日の保持が必要なモデルがあり、Files API と Batch 処理は ZDR の対象外です。 資料はメッセージに直接入れて送り、Files API と Batch 処理は使わない設計にします
  3. 送る範囲を絞る … 事件に関係のない資料(依頼者が念のため送ってきた別件の書類など)は送りません。送る前に、資料番号の台帳で事件との関係を確かめます
  4. 時系列表を事実の認定として使わない … 表は資料の記載を並べたもので、事実の認定は弁護士が行います。 書面に写すときは、出典の資料を確かめてからにします
  5. 質問の送信は人が行う … 依頼者への質問は事件の方針に関わります。自動で送る経路を作らないでください
  6. ログを事件の記録として扱う … 送った内容と返ってきた内容は、事件フォルダの中に置き、事件の記録と同じ期間で管理します

誤りが起きた場合のリスクは、資料に無い出来事や日付が書面に入ることと、秘密の資料が意図しない先に渡ることの2つです。 前者は照合と日付の確かさの欄で防ぎ、後者は送る範囲の確認と保持の扱いで防ぎます。どちらも、仕組みを作る前に事務所で決めておくことです。

10まず何から始めるか

1週目:外部へ出す扱いを決める

事務所の弁護士で、外部のAIサービスに事件の資料を渡すことの扱いを話し合います。保持の扱い、依頼者への説明、対象にする事件の種類を決めます。 ここが決まらないうちは、終わった事件の資料でも試しません。

2週目:3件で試す

時系列表がある終わった事件を3件選び、AIの画面で出来事を抜き出させます。日付を推測で埋めていないか、写した文が資料にあるかを最優先で見ます。

3週目:関係者の一覧と表の形を決める

受任のときに関係者の呼び方の一覧を作る運用と、時系列表の列を決めます。日付の確かさの印を、事務所の全員が同じ意味で使えるようにします。

4週目:PDFとメールだけで自動処理を組む

Python で、事件フォルダの監視、メールの取り出し、Claude API の呼び出し、照合、表の書き出しを組みます。画像はこの時点では扱わず、手で処理します。

2か月目: 画像の扱いを足し、更新のときに追加分だけを処理する仕組みを入れます。3か月目以降: 人が直した行の記録を見て指示を直し、1件120分が何分になったかを実測します。パラリーガルが全行の出典を確かめる運用が定着した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-15
確認した内容情報源確認日
弁護士法第23条(秘密保持の権利及び義務)で、弁護士又は弁護士であった者が、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定められていることe-Gov 法令API: 弁護士法2026-10-14
Citations が PDF ではページ番号(1始まり)、テキストでは文字の位置を返すこと。cited_text が出力トークンに数えられないこと。Citations と構造化出力を併用すると400のエラーになることClaude Docs: Citations2026-10-14
構造化出力を output_config.format に type: "json_schema" で指定することClaude Docs: Structured outputs2026-10-14
PDF の上限が1リクエスト32MB、600ページ(コンテキストが100万トークン未満では100ページ)で、パスワードや暗号化のあるPDFは扱えないこと。ページごとに文字と画像として扱われること。.docx や .xlsx は文書として渡せず、テキストかPDFへの変換が要ることClaude Docs: PDF support2026-10-14
画像の形式が JPEG・PNG・GIF・WebP で、API では1枚10MB、8000×8000ピクセルまでであること。20枚を超えると1枚あたりの大きさの制限が厳しくなり、長辺2000ピクセル以下か20枚以下にするよう案内されていること。200ピクセル未満の画像や傾いた画像で誤りが起きうること。画像のメタデータは渡されないことClaude Docs: Vision2026-10-14
会話の内容が既定では保持されないこと。Covered Models は30日の保持が必要で ZDR の対象外であること。Files API と Batch 処理が ZDR の対象外であることClaude Docs: API and data retention2026-10-14

事実の認定と、資料を外部のサービスに渡すことの扱いは、事務所の弁護士が判断してください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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