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保険代理店が契約者へ毎月送るお知らせを、保険会社から届いた通知と代理店のメモから下書きする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

保険会社から届く通知と代理店のメモから、契約者に関係する項目を選び、平易な文章に書き直して毎月のお知らせの下書きにします。担当者は事実の確認と直しに集中できます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
保険/金融
対象部門
マーケティング/営業
対象業務
書類作成/要約
主な課題
人手が足りない/属人化している/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
生成
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
20h/月
AI導入後
6h/月
想定削減
70%
年間削減
168h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 保険会社からの通知のメールを、担当者が毎日開いて読む
  2. 契約者に関係しそうなものに、メールのラベルを付けておく
  3. 月の中旬に、ラベルの付いたメールとPDFを1件ずつ開き直す
  4. 通知の中から、契約者に関係する部分(いつから、どの商品で、何が変わるか)を拾う
  5. 代理店向けの言葉(「計上」「異動」「始期」など)を、契約者が読める言葉に直す
  6. 季節の注意を、前の年の版を見ながら書く
  7. 個人向けと法人向けの版に分けて並べ、所長に見せる
  8. 配信の仕組みに原稿を入れて送り、紙の版を印刷して郵送する
導入後(After)
  1. 人担当者が、契約者に関係しそうな通知のメールに「お知らせ候補」のラベルを付ける(迷うものも付ける)
  2. 自動ラベルの付いたメールをきっかけにワークフローが動き、本文と添付のPDFを取り出す
  3. 自動AIが、通知が契約者に関係するかを見分け、関係するものは契約者向けの文章に書き直す
  4. 自動書き直した文章、原文から写した日付と対象、根拠の箇所を、原稿の管理表に1行足す
  5. 人担当者が管理表の行を読み、採用・不採用を決め、文章を直す。商品の案内に当たるものは、保険会社に確認する
  6. 人代理店のメモ(季節の注意)を管理表に書く
  7. 自動毎月20日に、採用された行とメモから、個人向けと法人向けの版の下書きを作る
  8. 自動版の下書きを担当者と所長へ社内のメールで送る
  9. 人所長が版を読み、配信の仕組みに入れて送る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 保険会社からの通知のメールを、担当者が毎日開いて読む
  2. 契約者に関係しそうなものに、メールのラベルを付けておく
  3. 月の中旬に、ラベルの付いたメールとPDFを1件ずつ開き直す
  4. 通知の中から、契約者に関係する部分(いつから、どの商品で、何が変わるか)を拾う
  5. 代理店向けの言葉(「計上」「異動」「始期」など)を、契約者が読める言葉に直す
  6. 季節の注意を、前の年の版を見ながら書く
  7. 個人向けと法人向けの版に分けて並べ、所長に見せる
  8. 配信の仕組みに原稿を入れて送り、紙の版を印刷して郵送する

(a)通知を読み直す時間が長い。 2番目でラベルを付けたメールを、3番目で開き直して読み直します。1つの通知を2回読むことになり、PDFが10ページを超えるものは、契約者に関係する1段落を探すのに時間がかかります。

(b)書き方が保険会社ごとにばらばらになる。 通知の言い回しに引きずられて、A社の項目は硬い言葉、B社の項目はやわらかい言葉で書かれます。同じお知らせの中で、文体と日付の書き方がそろいません。

(c)代理店向けの言葉が残る。 5番目の書き直しで、「始期日」「異動手続き」「計上」のような言葉が、そのまま契約者向けの文章に残ることがあります。契約者から「始期日とは何ですか」と電話が来て、初めて気づきます。

(d)1人の担当者に頼っている。 どの通知を載せるかの判断と書き直しが、1名の頭の中にあります。判断の基準が書かれておらず、ほかの2名が代わりに作ると、載せる項目がまったく変わります。

  1. 【人】 担当者が、契約者に関係しそうな通知のメールに「お知らせ候補」のラベルを付ける(迷うものも付ける)
  2. 【自動】 ラベルの付いたメールをきっかけにワークフローが動き、本文と添付のPDFを取り出す
  3. 【自動】 AIが、通知が契約者に関係するかを見分け、関係するものは契約者向けの文章に書き直す
  4. 【自動】 書き直した文章、原文から写した日付と対象、根拠の箇所を、原稿の管理表に1行足す
  5. 【人】 担当者が管理表の行を読み、採用・不採用を決め、文章を直す。商品の案内に当たるものは、保険会社に確認する
  6. 【人】 代理店のメモ(季節の注意)を管理表に書く
  7. 【自動】 毎月20日に、採用された行とメモから、個人向けと法人向けの版の下書きを作る
  8. 【自動】 版の下書きを担当者と所長へ社内のメールで送る
  9. 【人】 所長が版を読み、配信の仕組みに入れて送る

5番目が、この設計の分かれ目です。 AIは通知を読んで書き直しますが、お知らせに載せるかを決めるのは担当者です。 管理表の行は、採用の印が付くまで版に入りません。

1番目のラベル付けを人に残しているのも、意図してのことです。 保険会社からのメールには、代理店の成績や手数料の連絡も混ざります。それらがAIに渡らないよう、入口で人が選びます。 迷うものはラベルを付けてかまいません。関係の無いものは、AIが「代理店の事務だけ」と返します。

02今回想定するシステム構成

構成図
保険会社からの通知のメール(本文・PDF)
   │  担当者が「お知らせ候補」のラベルを付ける
   ▼【トリガー】ラベルの付いたメール
Make(シナリオ1:通知ごと)
   ├──▶ Gmail:List email attachments and media(PDFを取り出す)
   ├──▶ Anthropic Claude:Upload a File(PDFを Files API へ)
   ├──▶ Anthropic Claude:Make an API Call(Messages API、構造化出力)
   │       ① 契約者に関係するか  ② 書き直した文章  ③ 原文から写した日付・対象
   ├──▶ Anthropic Claude:Delete a File
   ▼
Google Sheets:原稿の管理表に Add a Row
   ▼
【人】採用・不採用、直し、保険会社への確認
   ▼【トリガー】毎月20日(Make の Monthly の予定)
Make(シナリオ2:版ごと)
   ├──▶ Google Sheets:Search Rows(採用済みの行とメモ)
   ├──▶ Anthropic Claude:Make an API Call(版の並べ替えと前書き)
   ▼
Gmail:担当者と所長へ版の下書きを送る
   ▼
【人】所長が確認し、配信の仕組みで送る
役割想定する製品代替候補
ワークフローMakeZapier、n8n、Power Automate
生成AIClaude API(通知の見分けと書き直し、版のまとめ)OpenAI API、Gemini API
台帳Google スプレッドシート(原稿の管理表)Airtable
メールGmail(代理店の共有のアドレス)Outlook

配信の仕組みは、いま使っているものをそのまま使います。 この構成は版の下書きを担当者に送るところまでで、契約者へのメールは送りません。 新しく作るのは、原稿の管理表と、Make のシナリオ2つです。

通知の読み取りは、Claude API の PDF の読み取りを使います。 PDF の中の文字、図、表を読むことができ、PDF は URL、base64、Files API の file_id の3つの渡し方があります。パスワード付きや暗号化された PDF は扱えません。 1回の要求の大きさは 32MB まで、ページ数は 600 ページ(コンテキストウィンドウが100万トークン未満の場合は100ページ)までです。

PDF は Files API に上げてから file_id で渡します。 Make の Anthropic Claude のアプリには Upload a File と Delete a File のモジュールがあります。Files API はベータのヘッダーが要らなくなっており、上げたファイルはワークスペースの中のどの API キーからも参照できます。 お知らせ用のワークスペースを分け、読み終えたら削除します。読み取りと書き直しは、構造化出力を使うために Make an API Call で Messages API を呼びます。アプリの説明に、構造化出力の設定が書かれていないためです。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

シナリオ1は、「お知らせ候補」のラベルの付いたメールを起点にします。 Make の Gmail の Watch emails は、フォルダやラベル、送信元、件名、含む語で絞り込めます。ラベルで絞り、送信元を取扱う5社のドメインに限ります。 担当者が転送したメールも拾えるよう、代理店のドメインも送信元に加えます。

添付のあるメールだけに絞ることはしません。 保険会社の通知には、本文だけで完結するもの(システムの停止の予定など)が多くあります。添付があればPDFを、無ければ本文を読ませます。

シナリオ2は、毎月20日の朝に予定で動かします。 Make の予定の Monthly で日付と時刻を決めます。お知らせを月の下旬に送るので、所長が読んで直すのに2〜3日を取れる日付にしています。20日を過ぎて届いた通知は、翌月の版に回ります。急ぎのもの(台風の接近に伴う手続きの特例など)は、版を待たずに担当者が個別に案内します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
通知のメール件名、本文、送信元、受け取った日時代理店の共有の Gmail
通知のPDF商品の改定の案内、手続きの変更の案内、システムの停止の予定などメールの添付
代理店のメモ季節の注意、代理店の営業日の変更、窓口の案内(月に数行)原稿の管理表(担当者が書く)
書き直しの決まり言い換えの一覧(「始期日」→「保険が始まる日」など)、日付の書き方、使わない語業務部で用意する一覧
保険会社の一覧社名の正式な表記、問い合わせ先、契約者向けのページの案内業務部で用意する一覧

質を決めるのは、書き直しの決まりです。 言い換えの一覧が無ければ、AIは代理店向けの言葉を自分で言い換え、毎月違う言葉で書いてきます。 「始期日」「満期日」「異動」「解約返戻金」のように、通知によく出る語を30語ほど並べておくと、版ごとの言葉がそろいます。

使わない語の一覧も、同じくらい大事です。 「お得」「安心」「最適」「業界初」のような、商品の良さを強調する語を並べておきます。理由は第13章で書きます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどのモジュールで
本文と添付共有の GmailGmail の Watch emails と List email attachments and media
PDF の file_idFiles APIAnthropic Claude の Upload a File
見分けと書き直しMessages APIAnthropic Claude の Make an API Call
書き直しの決まり、保険会社の一覧別のシートGoogle Sheets の Search Rows
採用済みの行とメモ原稿の管理表Google Sheets の Search Rows(月と採用の印で絞る)

PDF を渡すときは、本文と一緒に1回の呼び出しで渡します。 本文に「添付のとおり」としか書かれていない通知もあれば、本文に要点があってPDFは詳細だけの通知もあります。どちらか片方だけを読ませると、日付や対象を取り違えます。

Upload a File について、Make のアプリの説明には受け付けるファイルの形式が書かれていません。 Files API 自体は PDF を document のブロックで扱えるので、最初に1件のPDFで上げて file_id が返るかを確かめてから組みます。 動かなければ、Make an API Call で /v1/files へ直接上げます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 送信元を確かめる … 取扱う5社と代理店のドメイン以外からのメールは、読ませずに担当者へ戻します
  2. 添付を PDF だけに絞る … Excel の一覧や画像が付いていることがあります。Excel は document のブロックでは扱えないので、PDF にしてから担当者がラベルを付け直します
  3. パスワードを確かめる … パスワード付きの PDF は読めません。保険会社の代理店向けのシステムから、パスワードの無い版を取り直します
  4. 転送の引用を落とす … 担当者が転送したメールは、転送の前の部分だけを本文とします
  5. 同じ通知の重複を確かめる … 保険会社は同じ通知を、件名を変えて再送することがあります。件名と通知の番号で管理表を引き、同じものがあれば印を付けます
  6. 代理店向けの情報を落とす … 本文の中の代理店コード、担当者の名前と内線、手数料の記載の段落を落としてから渡します

6番目を軽く見ないでください。 通知の本文には、代理店の担当者向けの連絡先や代理店コードが入っています。AIに渡せば、それを契約者向けの文章に入れてしまうことがあります。 落とす段落は、保険会社ごとの書き方に合わせて、見出しの語(「代理店各位」「ご担当者様」の後の署名欄など)で決めます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、通知が契約者に関係するかを見分けることと、関係するものを契約者向けの文章に書き直すことだけです。

させること中身判断できないときの扱い
関係の見分け契約者に関係する/代理店の事務だけ/判断できない判断できないは担当者が読む
対象の書き出しどの保険の、どの契約者に関係するか(全員、自動車保険の契約者、など)書かれていなければ「対象が不明」
日付の写しいつから、いつまで(原文の表記のまま)書かれていなければ空欄
書き直し契約者向けの3〜5文。何が変わるか、契約者がすることがあるか、問い合わせ先することが無ければ「お手続きは不要です」と書く
根拠の写し書き直しの根拠にした原文の文を、そのまま写す-
版の振り分け個人向け/法人向け/両方判断できないは「両方」にして担当者が決める

いちばん下から2つ目の「根拠の写し」が、この構成の安全装置です。 書き直した文章の1文ずつについて、原文のどの文をもとにしたかを並べさせます。 担当者は根拠と書き直しを横に並べて読み、原文に無いことが足されていないかを確かめます。

させないこと理由
商品を勧める、良さを強調するお知らせは事実の案内。強調の表現は誤解を招く表示になりうる
原文に無い日付や条件を足す「〇月頃」「一部の契約」を、具体的な日付や対象に言い換えない
保険料の増減の見込みを書く通知に金額が無ければ書かない。契約ごとに違う
代理店向けの情報を書く代理店コード、手数料、代理店の締切は契約者に関係がない
載せるかを決める担当者が管理表で決める

2行目が、いちばん起きやすい失敗です。 通知に「2027年1月以降始期の契約から」とあると、AIは「2027年1月から保険料が変わります」と書きます。正しくは「2027年1月以降に始まる契約から」で、いまの契約がすぐに変わるわけではありません。 契約者にとって意味がまったく違うので、日付は原文の表記のまま写させ、書き直しの文と並べて確かめます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは保険代理店の業務部で、保険会社から届いた通知を読み、
契約者へ毎月送るお知らせの原稿を作る立場です。
渡した通知のメール本文とPDFだけを使って、決まった形で返してください。

【1. 関係の見分け】
- customer:契約者に関係する(商品・補償・保険料の改定、契約者の手続きの変更、
  契約者向けのページやアプリの停止、契約者が使える窓口の変更)
- agency_only:代理店の事務だけに関係する(代理店の締切、代理店向けシステム、
  代理店の研修、手数料)
- unclear:どちらとも決められない
迷ったときに customer を選ばず、unclear を選んでください。

【2. customer のときに書くもの】
- 対象:どの保険の、どの契約者に関係するか。書かれていなければ「対象が不明」
- 日付:原文に書かれた日付を、原文の表記のまま写す。言い換えない
- 本文:3〜5文。何が変わるか/契約者がすることがあるか/問い合わせ先
- 根拠:本文の1文ずつについて、もとにした原文の文をそのまま写す
- 版:individual/corporate/both

【厳守事項】
- 原文に書かれていないことを書かないでください。日付・対象・条件を推測で補わないでください。
- 「〇月以降始期の契約」は「〇月以降に始まる契約」と書き、いまの契約が変わるように書かないでください。
- 保険料が上がる・下がる、得になる・損になる、と書かないでください。金額が原文にあれば、そのまま写してください。
- 次の語を使わないでください:{banned_words}
- 代理店の言葉は、次の一覧で言い換えてください:{glossary}
- 代理店コード、担当者の名前、内線、手数料、代理店の締切は書かないでください。
- 問い合わせ先は、保険会社の一覧にあるものだけを書いてください:{insurer_list}
- 文体は「です・ます」。1文は60字以内を目安にしてください。

【通知のメール本文】{mail_body}
【通知のPDF】(document ブロックで渡す)

「迷ったときに customer を選ばない」を明記しないと、ほとんどの通知が customer になります。 AIは「契約者にも関係があるかもしれない」と考えて広く拾います。unclear に寄せれば担当者が読むだけで済みますが、customer に寄せると、関係の無い項目の書き直しまで担当者が読むことになります。

「〇月以降始期の契約」の書き方を、例として直接書いているのも同じ理由です。 禁止の一般論だけでは、AIは自然な日本語に直そうとして意味を変えます。よく出る言い回しは、正しい書き方ごと指示に入れます。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 構造化出力のスキーマとして渡します。

{
  "insurer": "",
  "notice_title": "",
  "relevance": "customer | agency_only | unclear",
  "target": "",
  "dates": [{ "label": "", "value_as_written": "" }],
  "body": "",
  "evidence": [{ "sentence": "", "source_text": "" }],
  "edition": "individual | corporate | both",
  "banned_word_hit": false
}

1つ目の理由は、relevance で管理表の並びを分けられることです。 customer は担当者が書き直しを読む行、agency_only は件名だけを見て閉じる行、unclear は原文を読む行です。読む順番と読み方が、管理表を開いた時点で決まります。

2つ目は、evidence で書き直しと原文を並べられることです。 管理表の1行に、本文の1文と原文の1文を並べて書き出します。原文の欄が空の文があれば、それはAIが足した文です。

3つ目は、dates の value_as_written で日付を確かめられることです。 本文の日付と、原文のままの日付を並べます。「以降始期」が「から」になっていないかを、担当者が一目で見られます。

banned_word_hit はワークフローの側でも確かめます。 使わない語の一覧と本文を Make の側で照らし、1つでも当たれば管理表の行に印を付けます。AIの自己申告だけに頼りません。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有の GmailMake の Gmail(Watch emails、List email attachments and media)ラベルの付いた通知と添付を取る
Claude APIMake の Anthropic Claude(Upload a File、Make an API Call、Delete a File)見分けと書き直し、版のまとめ
原稿の管理表Make の Google Sheets(Add a Row、Search Rows)通知ごとの行を足し、採用済みの行を引く
社内のメールMake の Gmail(Send an email)版の下書きを担当者と所長へ送る
配信の仕組み人が原稿を入れる契約者へのメールと紙の版

契約者へのメールは、この構成からは送りません。 版の下書きは担当者と所長に社内のメールで届くだけで、配信の仕組みに入れるのは所長の確認のあとの人の操作です。

シナリオ2の版のまとめでも、AIは新しい事実を足しません。 採用済みの行の本文を、保険会社ごと・テーマごとに並べ、前書きと見出しを付けるだけです。前書きに入れてよいのは、代理店のメモに書かれた内容だけと指示します。

Step9

人が確認する

担当者は、管理表の customer と unclear の行を全件読みます。 agency_only の行は件名だけを流し見ます。

  1. unclear を先に読む … 原文を開いて、載せるかを決めます
  2. customer の書き直しと根拠を並べて読む … 原文の欄が空の文は消すか、原文で確かめて直します
  3. 日付と対象を確かめる … value_as_written と本文を見比べます。ここだけは原文のPDFを開いて確かめます
  4. 商品の案内に当たるかを確かめる … 補償の内容や保険料に触れる項目は、取扱う保険会社の決まりに従って確認を受けます
  5. 採用の印を付ける … 載せないものは、理由を1語入れます

所長は版の下書きを全文読みます。 版の中で文体と日付の書き方がそろっているか、前書きに代理店のメモに無いことが入っていないかを見ます。

目標は、40件をならして1件9分です。 agency_only は数十秒、customer は根拠との読み比べと原文での日付の確認で10分以上かかります。保険会社への確認が要る項目は、その返事を待つ時間が別にかかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
パスワード付きの PDF読めない。代理店向けのシステムからパスワードの無い版を取り直す
添付が Excel や画像Excel は PDF にしてから。画像はそのまま image のブロックで渡せる
1つの通知に複数の話題話題ごとに管理表の行を分けて返させる
同じ通知の再送件名と通知の番号で照らし、重複の印を付ける
20日を過ぎて届いた通知翌月の版に回す。急ぎのものは担当者が個別に案内する
原文に日付が無いdates を空にし、本文に日付を書かない
使わない語が本文にある管理表の行に印を付け、担当者が直す
AIの呼び出しが失敗する管理表に「失敗」の行を足し、担当者が手で書き直す
取扱いをやめた保険会社からの通知送信元の一覧から外し、読ませない

上から2行目までは、毎月必ず起きます。 どちらもAIの問題ではなく、保険会社の通知の出し方の問題です。 会社ごとに「PDFがパスワード付きで届く」「一覧がExcelで届く」という癖があるので、管理表に会社ごとの取り直し方を書いておきます。

Step11

記録を残す

  • 通知のメールの件名、送信元、受け取った日時と、添付のファイル名
  • AIに渡した本文(代理店向けの情報を落とした後のもの)
  • AIが返したJSONの全文(relevance、body、evidence、dates)
  • 担当者が採用・不採用を決めた記録と、直した後の本文
  • 保険会社に確認した日と、確認の結果
  • 送った版の全文と、送った日

4つ目の「直した後の本文」は、書き直しの決まりを育てる材料になります。 担当者が毎月同じ言葉を直しているなら、それは言い換えの一覧に足すべき語です。数か月分を並べると、一覧に足す語が見えてきます。

5つ目は、契約者から問い合わせがあったときに使います。 「お知らせに書いてあったことと違う」と言われたとき、どの通知を、いつ、どう書き直し、保険会社に確認したかを遡れるようにします。

04実装レベルの3段階

最小構成:通知を手で生成AIの画面に貼り、見分けと書き直しをさせる / 1件ごとの書き直し
半自動化:上記+ラベルの付いたメールで見分けと書き直しを動かし、管理表に行を足す。毎月20日に版の下書きを作る / 見分け、書き直し、版のまとめ
本格構成:上記+契約者の保険の種類に合わせて版を分け、季節の注意を過去の版から候補として出す / 版の出し分けと季節の項目

最小構成では、担当者の偏りが解消しません。 貼る作業と判断が同じ1名に残るからです。確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が9分程度になります。 通知を開き直して関係する部分を探す作業と、言葉の書き直しが自動になり、担当者は管理表を読んで直すだけになります。この段階が本記事の想定です。 管理表の行と採用の印があれば、ほかの2名も同じ基準で作業を分けられます。 本格構成は、版の出し分けが必要になってから進みます。 自動車保険の契約者と生命保険の契約者で版を分けるには、配信の仕組み側の対象の絞り込みが要ります。半自動化を数か月回し、採用された項目の偏りを見てから決めます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  40件 × 30分 ÷ 60 = 20 時間/月
導入後 40件 × 9分 ÷ 60 = 6 時間/月
月間削減時間
14h
削減率
70%
年間削減時間
168h
年間金額換算(時間単価3,000円)
50万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 損害保険・生命保険の複数の保険会社を扱う乗合の代理店で、契約者へ毎月メールや紙でお知らせを送っている場合。保険会社からの通知がメールとPDFで毎月数十件届き、契約者に関係するものを選んで書き直す作業が特定の担当者に偏っている場合。通知のメールが Gmail に集まり、お知らせの原稿をスプレッドシートで管理できる場合。
向いていない
  1. 取扱う保険会社が1社で、保険会社が用意した契約者向けのお知らせをそのまま転送すれば足りる場合。契約者へのお知らせを出しておらず、個別の連絡だけで回している場合。通知が保険会社の代理店向けシステムの画面にしか無く、メールやPDFで取り出せない場合。なお、商品の案内として保険会社の確認が要るか、どの表現なら使えるかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月届いた保険会社からの通知から15件を選ぶ(うち数件は、代理店の事務だけのものを入れる)
  2. その15件について、実際にお知らせに載せたかと、載せた文章を集める
  3. 通知の本文とPDFを、手元の生成AIの画面に1件ずつ貼る
  4. 第7章の指示を少し短くして渡し、見分けと書き直しをさせる
  5. 出てきた見分けと書き直しを、実際のお知らせと見比べる

15件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、「通知から契約者に関係する部分を正しく拾えるか」と「原文に無いことを足さないか」を確かめます。

出てきた内容判断
実際に載せたものと見分けが合い、書き直しも原文どおりワークフローに進む
「お得」「安心」などの語や、原文に無い日付が入った指示の書き方で直る。構成は有効
PDFの表や図を読み違えた通知の取り方を確かめる。 画像だけの PDF なら原本を取り直す

2行目は、ほぼ必ず出ます。 使わない語の一覧と「以降始期」の書き方を指示に足して、同じ15件で試し直してください。足した後に消えるかどうかで、指示の効き方が分かります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
原文に無いことが本文に足される根拠の写しを返させ、原文の欄が空の文を担当者が消す
「以降始期」が「から」に変わる正しい書き方を指示に直接書く。日付は原文のまま並べる
ほとんどの通知が customer になる迷ったら unclear を選ぶよう指示する
「お得」「安心」などの語が入る使わない語の一覧を指示に入れ、ワークフロー側でも照らす
代理店コードや担当者名が本文に入る渡す前に代理店向けの段落を落とす
パスワード付きの PDF で止まるパスワードの無い版を取り直す
Excel の一覧が読めないPDF にしてから渡す
同じ通知が2行になる件名と通知の番号で重複を照らす
書き方が毎月変わる言い換えの一覧を管理表の直しから育てる
版の前書きに事実が足される前書きは代理店のメモの内容だけと指示する
商品の案内を確認なしに出す補償や保険料に触れる項目は、保険会社の決まりに従って確認する

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIが「読みやすく」しようとして意味を変えることから起きます。根拠の写しと原文のままの日付を並べることで、意味が変わった箇所を人が見つけられる形にします。

下の行は、AIの問題ではありません。 お知らせが商品の案内に当たるかどうかは、AIを使う前から決めておくべきことです。 取扱う保険会社ごとに、確認の手順を問い合わせてから運用を始めてください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 保険会社から代理店への通知(商品の改定、手続きの変更、システムの予定)と、代理店のメモです。契約者の名前や契約の内容は扱いません。 ただし、通知の本文には代理店コード、保険会社の担当者の名前、代理店向けの内部の情報が含まれます。

  1. お知らせは表示の決まりに沿って作る … 金融庁の保険会社向けの総合的な監督指針は、保険会社に対して、募集用の資料等(広告も含む)について適正な表示を確保する措置と、表示内容の審査を漏れなく行う体制を求めています。「最高」「業界初」「割安」のような語を使う場合は根拠を示す必要があるともしています。代理店のお知らせが商品の案内に触れるなら、取扱う保険会社の決まりに従って確認を受けてください
  2. 商品の良さを強調させない … AIに使わない語の一覧を渡し、ワークフロー側でも照らします。誤解を招く表示の芽を、下書きの段階で摘みます
  3. メールで送るなら、特定電子メール法を確かめる … 自己の営業の広告・宣伝のために送るメールは特定電子メールに当たり、同意や取引関係などの要件、受信を拒む連絡への対応、送信者の名称と拒否の連絡先の表示が定められています。お知らせに商品の案内を含めるなら、配信の仕組みの側でこれらを満たしているかを確かめます
  4. 代理店向けの情報を外部へ渡さない … 代理店コードや手数料の記載は、渡す前に落とします。保険会社との契約で、通知を外部のサービスに渡してよいかも確かめます
  5. Files API のファイルを残さない … 上げたファイルはワークスペースのどの API キーからも参照できます。お知らせ用のワークスペースを分け、読み終えたら Delete a File で削除します
  6. 送る判断を人に残す … 版の下書きは所長が読み、配信の仕組みに入れるのは人の操作です

誤りが起きた場合のリスクは、契約者が誤った日付や対象で行動することと、商品の良さを誤って伝えることの2つです。 前者は原文のままの日付と根拠の写しで、後者は使わない語の一覧と保険会社の確認で防ぎます。どちらも、担当者が原文と並べて読める形にしておくことが土台です。

10まず何から始めるか

1週目:2つの一覧を作る

言い換えの一覧(30語ほど)と、使わない語の一覧を作ります。過去1年のお知らせと、契約者から言葉の意味を聞かれた電話の記録から拾います。あわせて、取扱う保険会社ごとに、商品の案内に当たる項目の確認の手順を問い合わせます。

2週目:15件で試す

先月の通知から15件を選び、手元の生成AIに貼って見分けと書き直しをさせます。実際に載せたお知らせと見比べ、原文に無いことを足していないか、日付の意味が変わっていないかを最優先で見ます。

3週目:原稿の管理表を作る

通知ごとの行、見分けの結果、本文、根拠、原文のままの日付、採用の印、確認の記録の列を持つ管理表を作ります。採用・不採用の基準を、いまの担当者に書き出してもらいます。 ここが、担当者の頭の中にあった判断を外に出す作業です。

4週目:通知から管理表までをつなぐ

Make のシナリオ1を作り、ラベルの付いたメールから管理表の1行までをつなぎます。この時点では版のまとめを作らず、管理表の行だけを担当者に読んでもらいます。

2か月目: シナリオ2を作り、毎月20日に版の下書きを担当者と所長へ送ります。ほかの2名にも管理表の読み方を覚えてもらいます。3か月目以降: 直した後の本文から言い換えの一覧を育て、1件30分が何分になったかを実測します。担当者が休んだ月にも、ほかの担当者が同じ基準でお知らせを出せた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-13/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
Watch emails がフォルダ・ラベル、送信元、件名、含む語で絞り込め、添付のあるメールだけに絞る設定もあること。List email attachments and media で添付を取り出せること。Send an email があることMake: Gmail modules2026-10-13
Anthropic Claude のアプリに Upload a File、Delete a File、Make an API Call などのモジュールがあり、接続に API キーを使うこと。アプリの説明に構造化出力と受け付けるファイルの形式が書かれていないことMake: Anthropic Claude2026-10-13
Search Rows が条件に合う行を返し、Add a Row が表の末尾に行を足すことMake: Google Sheets modules2026-10-13
PDF の文字・図・表を読めること。URL・base64・Files API の file_id で渡せること。要求の大きさが32MB、ページ数が600(100万トークン未満のコンテキストでは100)までで、パスワード付き・暗号化された PDF は扱えないこと。各ページが画像としても扱われることClaude: PDF support2026-10-13
Files API がベータのヘッダーなしで使えること。上げたファイルがワークスペースの中のどの API キーからも参照できること。DELETE /v1/files/{file_id} で削除できること。Excel や Word は document のブロックで扱えないこと。上げ下ろしと削除に料金がかからず、使った中身が入力のトークンとして数えられることClaude: Files API2026-10-13
保険会社向けの総合的な監督指針 II-4-10(適切な表示の確保)で、募集用の資料等(広告も含む)の適正な表示を確保する措置、最上級や優位性を意味する用語を使う場合の根拠の表示、表示内容の審査を漏れなく行う体制が求められていること金融庁: 保険会社向けの総合的な監督指針(II-4 業務の適切性)2026-10-13
特定電子メールの定義(自己又は他人の営業の広告・宣伝のための電子メール)、送信できる相手(同意した者、取引関係にある者など。第3条)、送信をしないよう求められたときの扱い、送信者の氏名・名称と拒否の連絡先の表示義務(第4条)e-Gov 法令API: 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律2026-10-13

お知らせが商品の案内に当たるか、どの表現なら使えるかは、取扱う保険会社の決まりと所長の判断で決めてください。 本記事は上の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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