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ECの注文のキャンセル・変更の依頼メールを、Make のAIエージェントが注文と出荷の状況に照らして、手続きできるものは処理し、出荷済みや判断の要るものを担当へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

注文のキャンセルや送り先の変更を頼むメールを、Make のAIエージェントが読みます。注文と倉庫の出荷の状況を調べ、規程の範囲で手続きできるものは処理し、出荷済みのものや判断の要るものを担当者へ回します。

サマリー
生成AI
Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
EC/小売/製造
対象部門
カスタマーサポート/物流
対象業務
内容確認・チェック/問い合わせ対応
主な課題
人手が足りない/問い合わせが多い/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
エージェント
主な効果
対応スピード向上/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
75%
年間削減
1,080h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 共有メールボックスを開き、依頼メールを読む
  2. 注文番号を探す。書かれていなければ、送り主のメールアドレスと名前で注文を検索する
  3. Shopify で注文の状態(支払い、出荷指示の有無)を見る
  4. 倉庫のCSVを開き、その注文がピッキング中か、出荷済みかを確かめる
  5. 出荷指示の前ならキャンセルや送り先の変更を行い、指示の後なら倉庫に電話かメールで止められるかを頼む
  6. 結果をお客さまに返信する
  7. 対応の記録を共有メールボックスのメモに残す
導入後(After)
  1. 自動共有メールボックスに依頼が届くと、シナリオが動き、本文と送り主をエージェントに渡す
  2. 自動エージェントが依頼の種類(キャンセル/送り先の変更/内容の変更/その他)と注文番号を読み取る
  3. 自動エージェントが「注文を調べる」道具で注文を引き、送り主と注文のメールアドレスが一致するかを確かめる
  4. 自動エージェントが「出荷の状況を調べる」道具で、出荷指示の前か、指示済みか、出荷済みかを確かめる
  5. 自動出荷指示の前のキャンセルと送り先の変更は、エージェントが道具で手続きし、決まった文面で完了を返信する
  6. 自動出荷指示の後は、「出荷を保留にする」道具でECの側の出荷を保留にし、物流の担当へ回す
  7. 自動出荷済み、内容の変更(サイズ・数量)、本人の確認が取れないもの、規程の外のものは、要点と調べた結果を付けて担当へ回す
  8. 人担当者が回されたものだけを開き、倉庫への連絡、返品の案内、内容の変更の手続きを行う
  9. 人担当者が、エージェントが処理したものを1日1回、一覧で流し見る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 共有メールボックスを開き、依頼メールを読む
  2. 注文番号を探す。書かれていなければ、送り主のメールアドレスと名前で注文を検索する
  3. Shopify で注文の状態(支払い、出荷指示の有無)を見る
  4. 倉庫のCSVを開き、その注文がピッキング中か、出荷済みかを確かめる
  5. 出荷指示の前ならキャンセルや送り先の変更を行い、指示の後なら倉庫に電話かメールで止められるかを頼む
  6. 結果をお客さまに返信する
  7. 対応の記録を共有メールボックスのメモに残す

(a)確認している間に出荷される。 3番と4番に時間がかかっているうちに15時の指示が出て、止めたはずの注文が出荷されてしまうことがあります。お客さまからは「キャンセルしたのに届いた」と連絡が来て、返品の送料と再度の連絡が発生します。

(b)締めの前後で扱いが変わることを、全員が覚えていない。 「11時を過ぎたら倉庫に連絡」「出荷済みなら返品の案内」という決まりはありますが、応援に入った人は知らずにShopifyでキャンセルだけして終わることがあります。倉庫は指示どおりに出荷します。

(c)本人の確認があいまい。 送り主のアドレスと注文のアドレスが違うメールでも、名前が合っていれば手続きしてしまうことがあります。送り先の変更は、なりすましの入口になります。

(d)簡単な依頼に時間を取られる。 900件のうち、出荷指示の前のキャンセルと送り先の変更が約6割を占めます。手順は決まっているのに、1件ごとに3つの画面を行き来しています。

  1. 【自動】 共有メールボックスに依頼が届くと、シナリオが動き、本文と送り主をエージェントに渡す
  2. 【自動】 エージェントが依頼の種類(キャンセル/送り先の変更/内容の変更/その他)と注文番号を読み取る
  3. 【自動】 エージェントが「注文を調べる」道具で注文を引き、送り主と注文のメールアドレスが一致するかを確かめる
  4. 【自動】 エージェントが「出荷の状況を調べる」道具で、出荷指示の前か、指示済みか、出荷済みかを確かめる
  5. 【自動】 出荷指示の前のキャンセルと送り先の変更は、エージェントが道具で手続きし、決まった文面で完了を返信する
  6. 【自動】 出荷指示の後は、「出荷を保留にする」道具でECの側の出荷を保留にし、物流の担当へ回す
  7. 【自動】 出荷済み、内容の変更(サイズ・数量)、本人の確認が取れないもの、規程の外のものは、要点と調べた結果を付けて担当へ回す
  8. 【人】 担当者が回されたものだけを開き、倉庫への連絡、返品の案内、内容の変更の手続きを行う
  9. 【人】 担当者が、エージェントが処理したものを1日1回、一覧で流し見る

5番目が、この設計の分かれ目です。 手続きまで任せるのは、出荷指示の前で、本人の確認が取れたキャンセルと送り先の変更だけです。 900件の約6割がここに入り、人の手を通らずに終わります。

6番目で保留を先にかけるのは、時間を稼ぐためです。 担当者が倉庫に連絡するまでの間に次の出荷指示が出ても、ECの側で保留になっている注文は指示に載りません。ただし、すでに倉庫が受け取った指示は止まりません。 そこは人が倉庫へ連絡します。

02今回想定するシステム構成

構成図
お客さまの依頼(フォーム・メール)
   ▼【トリガー】共有メールボックスへの受信
Make(受付のシナリオ)
   ▼
Make AI Agents ── Run an agent
   │  指示:依頼の扱いの規程
   │  道具(それぞれが Make のシナリオ)
   │   ├─ 注文を調べる ……… Shopify の注文を取得
   │   ├─ 出荷の状況を調べる … 倉庫のCSV/API
   │   ├─ 出荷を保留にする … Shopify の fulfillmentOrderHold
   │   ├─ キャンセルする …… 条件を確かめ直してから orderCancel
   │   ├─ 送り先を変える …… 条件を確かめ直してから注文を更新
   │   └─ 担当へ回す ……… 要点を付けてチャットと対応表へ
   ▼
返信(完了の定型文)/担当者の対応表
役割想定する製品代替候補
ワークフローMake(シナリオと Make AI Agents)n8n、Zapier、Power Automate
生成AIClaude(Make AI Agents の接続先として選ぶ)OpenAI、Gemini
ECの注文Shopify他のカートシステム
出荷の状況外部の倉庫のシステム(CSV または API)自社の倉庫管理の仕組み
対応表Google スプレッドシートMicrosoft 365 の表計算
通知SlackMicrosoft Teams、Google Chat

中心になるのは、Make のAIエージェントです。 エージェントには、仕事の内容とやり方を伝える指示(instructions)と、使う生成AIの提供元とモデルを設定します。提供元は Make's AI Provider、OpenAI、Anthropic Claude、Gemini から選べます。道具として、モジュール、シナリオ、MCP サーバー、ほかのエージェントを渡せます。 本構成では、道具をすべてシナリオにします。理由は第7章で書きます。

シナリオの中では、Run an agent のモジュールでエージェントを動かします。 入力と、会話を続けるための Conversation ID を渡すと、同じスレッドのやり取りを覚えた状態で動きます。応答の形は「テキスト」か、自分で定義した「データ構造」から選べます。 1ステップの待ち時間の既定は300秒です。

新しい Make AI Agents のアプリは、いまオープンベータとされています。 機能と料金は変わりうると明記されており、Make's AI Provider 以外の提供元をつなぐのは有料プランに限られます。 本番に入れる前に、その時点の画面と料金を確かめてください。

Shopify は、Make の Shopify アプリで注文の検索、取得、更新、出荷の取得ができます。 キャンセルと出荷の保留は、Shopify の Admin GraphQL API の orderCancel と fulfillmentOrderHold を API 呼び出しで使います。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

共有メールボックスへの受信を起点にします。 定時にまとめて処理すると、11時と15時の出荷指示に間に合わない依頼が出ます。この業務は、速さそのものが品質です。

受付のシナリオは、エージェントを呼ぶ前に2つだけ絞ります。 1つは件名と本文に「キャンセル」「取り消し」「変更」「住所」「送り先」などの語があるか、もう1つは送り主が自社のドメインや配送業者の自動通知でないかです。どちらにも当たらないものは、エージェントを呼ばずに通常の問い合わせの列に回します。 エージェントの利用料を、関係の無いメールで使わないためです。

出荷指示の直前の時間帯は、受付の頻度を上げます。 10時30分から11時、14時30分から15時は、受信を待たずに数分おきに未処理を確かめる設定を足します。締めの直前に届いた依頼ほど、間に合うかどうかの差が大きいからです。

同じお客さまから続けて届いたメールは、同じ会話として扱います。 受付のシナリオで、送り主と注文番号から Conversation ID を作って Run an agent に渡します。「さっきの件、やっぱりサイズ変更で」という2通目を、別の依頼として処理しないためです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
依頼メール送り主のメールアドレス、件名、本文、受信日時共有メールボックス
注文注文番号、注文のメールアドレス、支払いの状態、商品と数量、送り先、出荷の状態Shopify(道具の中で取得)
出荷の状況倉庫への出荷指示の有無と時刻、ピッキング中か、出荷済みか、送り状番号倉庫のシステム(道具の中で取得)
規程何を自動で手続きしてよいか、何を人へ回すか、返信の定型文エージェントの指示

エージェントに最初から渡すのは、依頼メールだけです。 注文と出荷の状況は、エージェントが道具を使って取りに行きます。最初に全部を渡さないのは、依頼に書かれた注文番号が正しいとは限らないからです。 注文番号の誤記を、エージェントが道具の結果を見て気づけるようにします。

規程は、エージェントの指示に文章で書きます。 ただし、手続きの可否を最終的に決めるのは、道具の側の条件です。 指示は「どの道具を使うか」の判断材料で、守らせる仕組みではありません。

Step3

データの取得方法を決める

道具中でしていることエージェントに返すもの
注文を調べるShopify の注文の検索・取得注文番号、注文のメールアドレスとの一致、支払いの状態、商品、送り先、出荷の状態
出荷の状況を調べる倉庫のCSVかAPIを注文番号で引くnot_sent(指示前)/sent(指示済み)/picking/shipped と時刻
出荷を保留にするfulfillmentOrderHold を呼ぶ保留にできたか
キャンセルする条件を確かめ直し、orderCancel を呼ぶ実行したか、しなかった理由
送り先を変える条件を確かめ直し、注文の送り先を更新する実行したか、しなかった理由
担当へ回す対応表に1行書き、チャットに通知する受付番号

「注文を調べる」は、メールアドレスそのものを返しません。 注文のメールアドレスと送り主が一致するかどうかだけを match / mismatch で返します。エージェントが別の注文の個人情報を読む経路を作らないためです。

出荷の状況は、Shopify の出荷の状態だけでは足りません。 Shopify の上でまだ出荷されていなくても、倉庫ではピッキングが始まっていることがあります。倉庫のデータを正とし、Shopify と食い違えば倉庫の状態を返します。

倉庫のCSVは15分ごとに更新されるので、道具の結果には「いつ時点の状態か」を必ず付けます。 出荷指示の直後の15分は、CSVの上ではまだ not_sent に見えることがあります。このため、11時と15時の直後の15分間は、not_sent でも自動の手続きをせずに担当へ回す規則を道具の側に置きます。CSVではなく倉庫のAPIで状態を引ける場合は、この待ちを短くできます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 自動の通知を外す … 配送業者や決済の自動通知、自社からの送信は、エージェントに渡しません
  2. 引用の除去 … 返信のメールに付いている過去のやり取りを外し、最新の本文だけを渡します
  3. 注文番号の候補を拾う … 本文から注文番号の形の文字列を拾い、候補として添えます。確定はエージェントが道具で行います
  4. 会話のまとめ … 送り主と注文番号から Conversation ID を作ります
  5. 添付の扱い … 添付ファイルはエージェントに渡さず、「添付あり」とだけ伝えます。画像の注文画面などは、人が見ます

2番目を省くと、エージェントが古い依頼を読みます。 「先日キャンセルをお願いした件ですが、やはり届けてほしい」というメールで、引用された古い本文の「キャンセルしたい」を読んでキャンセルするのが、いちばん困る誤りです。

Step5

AIに処理させる

エージェントにさせるのは、依頼を読み、道具をどの順で使うかを決め、結果を見て次を選ぶことです。

判断の場面エージェントがすること決め手
依頼の種類キャンセル/送り先の変更/内容の変更/その他に分ける本文
注文の特定注文番号の候補で注文を調べ、match を確かめる道具の結果
出荷の段階出荷の状況を調べる道具の結果
手続き条件に合えば、キャンセルか送り先の変更の道具を呼ぶ規程と道具の結果
保留指示済みなら保留の道具を呼び、担当へ回す道具の結果
回す上のどれにも当たらなければ、要点を付けて担当へ回す規程

自動で手続きしてよい条件は、次の4つがすべてそろうときだけです。

条件内容
本人の確認送り主と注文のメールアドレスが match
出荷の段階倉庫の状態が not_sent
依頼の種類注文全体のキャンセル、または送り先の変更
依頼の明確さ1通の中に依頼が1つだけで、取り消しや迷いの表現が無い
させないこと理由
一部の商品だけのキャンセル、サイズ・数量の変更在庫と差額が絡み、人の確認が要る
指示済み・出荷済みの注文のキャンセル倉庫での止め方や返品の扱いは、人が倉庫と決める
mismatch の依頼の手続きなりすましの入口になる
規程の外の返金や送料の扱いの約束店の方針の判断
依頼の文面に無い手続き「ついでに」を勝手に行わない

1行目を「させない」に置いているのは、エージェントにとって簡単に見えるからです。 「Mサイズを1点キャンセルしてLを1点追加」は道具を2回呼べば済むように見えますが、Lの在庫が無ければ、Mだけが消えた注文が残ります。

Step6

指示内容を固定する

あなたはECのカスタマーサポートで、注文のキャンセルと送り先の変更の
依頼を受け付ける担当です。道具を使って注文と出荷の状況を調べ、
規程の範囲だけを手続きします。

【手順】
1. 依頼の種類を cancel / address_change / item_change / other に分ける
2. 注文を調べる道具で注文を特定する。注文番号が無い・見つからない場合は、
   推測で別の注文を探さず、担当へ回す
3. owner_match が mismatch なら、手続きをせずに担当へ回す
4. 出荷の状況を調べる道具で段階を確かめる
5. 段階が not_sent で、種類が cancel か address_change なら、該当の道具を呼ぶ
6. 段階が sent か picking なら、出荷を保留にする道具を呼び、担当へ回す
7. 段階が shipped なら、手続きをせずに担当へ回す(返品の案内は担当が行う)
8. item_change と other は、手続きをせずに担当へ回す

【厳守事項】
- 依頼の本文に書かれていない手続きをしないでください。
- 1通に複数の依頼がある、または「やはり」「やめて」など迷いや取り消しの
  表現がある場合は、手続きをせずに担当へ回してください。
- 送り先の変更では、本文に書かれた住所をそのまま使ってください。
  住所を補ったり、表記を直したりしないでください。番地が欠けていれば担当へ回す。
- 道具が「実行しなかった」と返したら、同じ道具を呼び直さず担当へ回してください。
- 返金の時期、送料の扱い、ポイントの扱いを約束しないでください。
- 担当へ回すときは、依頼の要点、調べた結果、回す理由を書いてください。

【依頼メール】{email_body}
【送り主】{sender}
【注文番号の候補】{order_candidates}

「道具が実行しなかったら呼び直さない」を書いておきます。 書かないと、エージェントは理由を読んで引数を変え、通るまで試そうとします。 道具が断るのは規程の外だからで、言い方を変えて通すものではありません。

送り先の住所を補わせないのも同じ理由です。 番地の抜けた住所を、注文の元の住所から補って更新すると、お客さまが意図しない場所に届きます。

Step7

出力形式を固定する

Run an agent の応答は「データ構造」にして、次の形で受け取ります。

{
  "request_type": "cancel | address_change | item_change | other",
  "order_id": "",
  "owner_match": "match | mismatch | not_found",
  "shipping_stage": "not_sent | sent | picking | shipped | unknown",
  "action_taken": "cancelled | address_changed | held | none",
  "handoff": true,
  "handoff_reason": "",
  "summary_for_staff": "",
  "reply_template": "cancel_done | address_done | received | none"
}

1つ目の理由は、後段の分岐を機械で決められることです。 handoff が true なら対応表とチャットへ、false で action_taken が cancelled か address_changed なら完了の定型文で返信します。返信の文面はエージェントに書かせず、reply_template で定型文を選ばせるだけにします。

2つ目は、エージェントの申告と道具の記録を突き合わせられることです。 action_taken が cancelled なのに、キャンセルの道具の実行記録が無ければ、エージェントの申告が誤っています。 後段のシナリオでこの突き合わせを行い、食い違えば返信を止めて担当へ回します。

道具の中の条件は、エージェントの判断とは別に置きます。

道具呼ばれたときに確かめ直す条件合わないとき
キャンセルする本人の一致、倉庫の状態が not_sent、支払いの状態、返品の手続き中でない実行せず refused と理由を返す
送り先を変える本人の一致、倉庫の状態が not_sent、住所に都道府県から番地まである同上
出荷を保留にする倉庫の状態が sent か picking同上

キャンセルの道具では、Shopify の orderCancel に理由、在庫を戻すか、返金の方法を渡します。 理由は CUSTOMER、在庫は戻す、返金は元の支払い方法に戻す、を規程として固定します。orderCancel は非同期で動き、ジョブを返すので、道具の中でジョブの完了を確かめてから cancelled を返します。Shopify の資料では、支払いの承認が保留中のもの、返品が進行中のものなどはキャンセルできないとされています。こうした場合は道具が refused を返します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有メールボックスMake のトリガー受信を検知し、本文と送り主を取る
Make AI AgentsRun an agent依頼を渡し、データ構造で結果を受け取る
ShopifyMake の Shopify アプリ、Admin GraphQL API の呼び出し注文の取得・更新、キャンセル、出荷の保留
倉庫のシステムCSV の読み取りまたは API出荷の状況を返す
対応表Google スプレッドシート担当へ回したものと処理したものを1行ずつ
チャットSlack担当へ回したものと、締めの直前の保留を通知

倉庫のシステムには書き込みません。 倉庫が受け取った指示を止めるのは、倉庫の手順で人が行います。ECの側の保留は、次の出荷指示に載せないためのもので、倉庫の作業は止めません。 Shopify の fulfillmentOrderHold は、出荷の対象の注文を保留の状態にする操作で、ここを取り違えると「保留にしたから止まった」と思い込みます。

API の権限は、使う操作に絞ります。 キャンセルには注文の書き込みの権限、保留には出荷の対象の注文の書き込みの権限が要ります。商品や顧客の書き込みの権限は付けません。

Step9

人が確認する

人が開くのは、handoff が true のものだけです。 900件のうち約4割を想定しています。

  1. 締めの直前の保留を先に見る … held の注文は、倉庫に連絡して止められるかを確かめます。時間との勝負なので、チャットの通知で最優先にします
  2. mismatch を確かめる … 家族の名前で注文した、会社のアドレスから送った、といった正当な理由もあります。本人に確かめてから手続きします
  3. 内容の変更を手続きする … 在庫と差額を確かめ、お客さまに案内します
  4. 出荷済みの依頼に返品の案内をする … 規程に沿って案内します

エージェントが処理したものは、1日1回、対応表で流し見ます。 見るのは、依頼の要点と action_taken が合っているかです。合わないものが出たら、その日のうちに指示の書き方を見直します。

最初の1か月は、自動の手続きを止めて動かします。 道具の呼び出しはすべて「実行するつもりの内容」を返すだけにして、担当者がそのとおりに手で手続きします。エージェントの判断と担当者の判断が合う割合を見てから、キャンセルの道具だけを本当に動かします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
注文番号が無い・見つからない推測で探さず、担当へ回す
1人のお客さまに注文が複数あるどの注文か本文で特定できなければ担当へ回す
倉庫のCSVが古い(最終更新から30分以上)段階を unknown として担当へ回す
キャンセルのジョブが完了しないcancelled を返さず担当へ回す。完了の返信を送らない
エージェントが規定の時間内に終わらない受付のシナリオで検知し、担当へ回す
action_taken と道具の実行記録が食い違う返信を止め、担当へ回す
1時間に同じ送り主から何通も届く2通目以降は同じ会話に積み、最初の結果が出るまで手続きしない
道具が refused を返した呼び直さず担当へ回す

3行目の「CSVが古い」は、地味ですが重要です。 倉庫のデータが止まっていると、すべての注文が not_sent に見え、指示済みの注文まで自動でキャンセルされます。 最終更新の時刻を、道具が毎回確かめます。

Step11

記録を残す

  • 依頼メールの本文と受信日時、Conversation ID
  • エージェントが呼んだ道具の順と、それぞれの入力と結果
  • エージェントの応答(データ構造)の全文
  • 道具が実行した手続き(Shopify のジョブの結果を含む)と、断った理由
  • 担当へ回したものの対応の結果と、担当者がエージェントと違う判断をした記録
  • 送った返信の定型文と送信日時

2つ目の「道具の順」が、この構成でいちばん役に立つ記録です。 誤った手続きが起きたとき、エージェントがどの結果を見て次を選んだのかをたどれます。指示を直すのか、道具の条件を直すのかが、ここで分かれます。

5つ目は、自動の範囲を広げるかの材料です。 担当者がエージェントと同じ判断をし続けている種類の依頼は、次に自動に回す候補になります。

04実装レベルの3段階

最小構成:指示とメールと状態の表をAIの画面に貼り、判断だけを答えさせる / 判断の確かめ
半自動化:上記+エージェントに「調べる」道具だけを渡し、判断と調べた結果を対応表に書く。手続きは人 / 注文の特定、状況の確認、判断の下書き
本格構成:上記+キャンセル・送り先の変更・保留の道具を渡し、出荷指示の前のものを処理して完了を返信する / 規程の範囲の手続きと返信

半自動化だけでも、1件8分は4分程度になります。 注文の特定と2つの画面の見比べが自動になるからです。本格構成で2分になり、これが本記事の想定です。 差が出るのは、900件の約6割が人の手を通らずに終わるためです。 本格構成の先に、内容の変更を足すかは慎重に決めます。 サイズの変更は件数が多く、自動にしたくなる依頼です。しかし在庫の引当と差額の決済が絡み、一度失敗すると、元の注文も新しい注文も中途半端な状態で残ります。 足すとしても、同じ価格の同じ商品の色・サイズ違いで、在庫が十分にあるものに限るのが現実的です。 半自動化を必ず通ってください。 「調べる」道具だけのエージェントを1か月動かすと、エージェントの判断と担当者の判断が食い違う型が見えます。それを指示と道具の条件に戻してから、手続きの道具を渡します。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
900 件
1件あたり現在時間
8 分
1件あたり導入後時間
2 分
現在  900件 × 8分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 900件 × 2分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
90h
削減率
75%
年間削減時間
1,080h
年間金額換算(時間単価2,500円)
270万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. Shopify で自社ECを運営し、注文のキャンセルや送り先の変更の依頼がメールで月に数百件届くEC事業者。依頼を受けてから注文と倉庫の出荷の状況を見比べるまでに時間がかかり、その間に出荷されてしまう取り違えが起きている場合。倉庫への出荷指示の締めの時刻が決まっていて、その前なら止められることが分かっている場合。キャンセルと送り先の変更の扱いを規程にできる場合。
向いていない
  1. 依頼が月に数十件で、担当者が受信のたびに見られる場合。受注生産やオーダーメイドで、注文ごとにキャンセルの可否が違う場合。倉庫の出荷の状況を機械で読めず、電話で確かめるしかない場合。なお、規程の外の返金や、出荷済みの注文の返品の受付をどうするかは、この構成では判断しません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の依頼メールから50件を選ぶ(出荷済み、内容の変更、アドレスの違うものを必ず混ぜる)
  2. それぞれについて、当時の注文の状態と倉庫の段階を表にしておく
  3. 手元の生成AIのサービスに、第7章の指示と、メール1通と、その表の該当行を貼る
  4. 「どの手続きをするか、担当へ回すならその理由」を答えさせる
  5. 当時の担当者の対応と比べる

ここでは道具をつなぎません。 判断の手順が指示どおりに動くかだけを確かめます。

出てきた内容判断
当時の対応と同じ判断が9割以上Make で道具をつなぐ段階に進む
複数の依頼や迷いのあるメールを手続きに回した指示の書き方で直る。例を足す
引用された古い本文を読んで判断した前処理の引用の除去が先
当時の担当者の対応がばらばら規程が決まっていない。AIより先に決める

4行目が出たら、そこから始めてください。 エージェントに渡す規程は、担当者が共有している決まりを文章にしたものです。決まりが無ければ、エージェントにも渡せません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
エージェントが規程の外の手続きをする道具の側で条件を確かめ直す。 指示だけで守らせない
引用された古い本文で手続きする前処理で引用を外す
送り主と注文のアドレスが違うのに手続きする道具が match を確かめる
保留をかけたから止まったと思い込むECの保留は倉庫の作業を止めない。 指示済みは人が倉庫へ連絡
倉庫のデータが止まって全部が指示前に見える最終更新の時刻を毎回確かめる
キャンセルのジョブの完了前に返信するジョブの完了を確かめてから返信する
refused を受けて引数を変えて呼び直す呼び直しを禁じ、担当へ回す
住所を補って更新する本文の住所をそのまま使う。欠けていれば回す
一部キャンセルを道具の組み合わせで行う一部キャンセルと内容の変更はさせない
権限を広く付ける注文と出荷の対象の注文に絞る
出荷指示の直後にCSVが古い状態を返す指示の直後の15分は自動の手続きをしない
規程が担当者の頭の中にしかないエージェントの指示を書く前に、規程を文章にする

下の2行は、作ってから気づくことが多い問題です。 CSVの更新の間隔と出荷指示の時刻の関係は、倉庫の担当者に聞かないと分かりません。規程の読み替えも、ベテランの担当者に聞かないと出てきません。どちらも、エージェントを組む前の聞き取りで拾っておきます。

上の2行が、エージェントで組むときの失敗のほとんどです。 指示は判断の材料で、守らせる仕組みは道具の側に置きます。 エージェントがどう判断しても、道具の条件が規程の外の手続きを通しません。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: お客さまの名前、メールアドレス、住所、注文の内容と支払いの状態です。

  1. エージェントに渡す個人情報を絞る … 注文のメールアドレスは道具の中で照合し、一致したかだけを返します。エージェントが別の注文の住所を読める経路を作りません
  2. 本人の確認を道具で行う … 送り先の変更は、なりすましで商品を別の場所へ送らせる手口に使われえます。mismatch はどの道具も手続きしません
  3. 取り消せない手続きを段階的に任せる … 最初の1か月は実行しない運用にし、合う割合を見てからキャンセルの道具だけを動かします
  4. API の権限を最小にする … 注文と出荷の対象の注文の書き込みに限ります
  5. ベータの製品を本番に入れる前に確かめる … 新しい Make AI Agents のアプリはオープンベータで、機能と料金が変わりうるとされています
  6. 返金と送料の約束をさせない … 定型文の外の約束は、店の方針として人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、頼まれていない注文をキャンセルすることと、なりすましの依頼で送り先を変えることの2つです。 前者は引用の読み違いと複数依頼の取り違えから、後者は本人の確認の省略から起きます。どちらも道具の条件で止める設計にします。

10まず何から始めるか

1週目:規程を文章にする

何を自動で手続きしてよいか、何を担当へ回すかを、担当者5名で決めて書きます。出荷指示の締めの前後で扱いがどう変わるかを、時刻で書きます。

2週目:50件で試す

先月の依頼メール50件で、指示どおりの判断が出るかを確かめます。引用の読み違いと、複数の依頼の取り違えを最優先で見ます。

3週目:倉庫のデータを取り込む

倉庫のCSVかAPIを、注文番号で引ける形にします。最終更新の時刻を必ず持たせます。

4週目:「調べる」道具だけでつなぐ

Make でエージェントに「注文を調べる」「出荷の状況を調べる」「担当へ回す」の3つの道具を渡し、判断を対応表に書かせます。手続きは人が行います。

2か月目: 手続きの道具を「実行しない」設定で足し、担当者の判断と合う割合を数えます。3か月目以降: キャンセルの道具から順に本当に動かし、送り先の変更を足します。夜のうちに届いた依頼が、朝の出荷指示の前に処理されている状態になった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
Make のAIエージェントに指示と生成AIの提供元・モデルを設定すること。提供元に Make's AI Provider、OpenAI、Anthropic Claude、Gemini があること。道具としてモジュール、シナリオ、MCP サーバー、ほかのエージェントを渡せること。Run an agent に Conversation ID を渡すと同じスレッドを覚えること。応答の形をテキストか定義したデータ構造から選べること。1ステップの待ち時間の既定が300秒であることMake Help Center: Create your first AI agent2026-10-07
新しい Make AI Agents のアプリがオープンベータで、機能と料金が変わりうること。Make's AI Provider はすべてのプランで使え、ほかの提供元をつなぐのは有料プランに限られることMake Help Center: Meet the new Make AI Agents app2026-10-07
Make の Shopify アプリに、注文の検索・取得・作成・更新、出荷の対象の注文の取得などのモジュールがあることMake: Shopify2026-10-07
orderCancel に理由・在庫を戻すか・返金の方法を渡すこと。非同期でジョブを返すこと。注文の書き込みの権限が要ること。支払いの承認が保留中のもの、返品が進行中のものなどはキャンセルできないこと。理由の値に CUSTOMER などがあることShopify: orderCancel2026-10-07
fulfillmentOrderHold が出荷の対象の注文を保留の状態にすること。理由と補足を渡せること。出荷の対象の注文の書き込みの権限が要ることShopify: fulfillmentOrderHold2026-10-07

キャンセル・返品の扱いは、自社の規程と表示に沿って決めてください。 本記事は、依頼の受付と手続きを組み立てる構成例を扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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