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ECの自社ブランドに届く卸取引の希望を、販売先の業態・地域・希望数量で取引の基準と照らして一次判定し、取引条件の案内か見送りかの返信の下書きを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

ECの自社ブランドに届く卸取引の希望を、販売先の業態・地域・希望数量の3つで、社内の卸の取引基準と照らして一次判定します。取引条件の案内・見送り・要確認に分け、それぞれの返信の下書きまで作って担当者に渡します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
EC/小売/製造
対象部門
営業
対象業務
分類・仕分け/問い合わせ対応
主な課題
判断に時間がかかる/問い合わせが多い/属人化している
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
45h/月
AI導入後
15h/月
想定削減
67%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当者が回答のスプレッドシートを開き、新しい問い合わせを読む
  2. 店舗やサイトのURLを開き、業態と取り扱っている商品の雰囲気を確かめる
  3. 卸先の一覧を開き、同じ地域・同じ商業施設に既存の卸先が無いかを確かめる
  4. 希望数量が最低ロットに届くか、開業前か、転売の目的が無いかを見る
  5. 取引条件を案内するか、見送るか、上長に相談するかを決める
  6. 案内なら取引条件の説明を、見送りならお断りの文面を、一から書いて送る
導入後(After)
  1. 自動卸取引の問い合わせフォームに回答が届くと、Zap が動く
  2. 自動卸先の一覧と過去の問い合わせの記録を、店名・URL・メールのドメインで引く
  3. 【AI】 回答の内容を卸の取引基準と照らし、業態・地域・数量ごとに当てはまるかを判定し、根拠を書く
  4. 自動判定の組み合わせから、案内・見送り・要確認を規則で決める
  5. 【AI】 案内なら取引条件の説明、見送りならお断りの返信、要確認なら担当者への確認事項の下書きを書く
  6. 自動Gmail に返信の下書きを作り、問い合わせの一覧に判定と根拠を書く
  7. 人担当者が案内と要確認の相手のサイトを確かめ、下書きを直して送る
  8. 人見送りの下書きは、判定の根拠を確かめてから送る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当者が回答のスプレッドシートを開き、新しい問い合わせを読む
  2. 店舗やサイトのURLを開き、業態と取り扱っている商品の雰囲気を確かめる
  3. 卸先の一覧を開き、同じ地域・同じ商業施設に既存の卸先が無いかを確かめる
  4. 希望数量が最低ロットに届くか、開業前か、転売の目的が無いかを見る
  5. 取引条件を案内するか、見送るか、上長に相談するかを決める
  6. 案内なら取引条件の説明を、見送りならお断りの文面を、一から書いて送る

(a)返信が追いつかない。 1件15分で月180件、45時間です。案内する相手への返信を先にし、見送りの返信は後回しになります。 見送りの相手には、何週間も返事が届かないことがあります。

(b)基準が担当者で違う。 同じ「開業前の雑貨店」でも、ある担当者は案内し、別の担当者は見送ります。問い合わせた側から見ると、同じ条件なのに答えが違う、ということが起きます。

(c)判断の理由が残らない。 見送った理由がスプレッドシートに残らず、半年後に同じ相手からもう一度問い合わせが来たとき、前回なぜ見送ったかが分かりません。

(d)文面がばらばら。 取引条件の説明に、最低ロット、掛け率、支払の条件、配送の条件のどれを書くかが担当者で違い、後から「聞いていない」という行き違いが出ます。

  1. 【自動】 卸取引の問い合わせフォームに回答が届くと、Zap が動く
  2. 【自動】 卸先の一覧と過去の問い合わせの記録を、店名・URL・メールのドメインで引く
  3. 【AI】 回答の内容を卸の取引基準と照らし、業態・地域・数量ごとに当てはまるかを判定し、根拠を書く
  4. 【自動】 判定の組み合わせから、案内・見送り・要確認を規則で決める
  5. 【AI】 案内なら取引条件の説明、見送りならお断りの返信、要確認なら担当者への確認事項の下書きを書く
  6. 【自動】 Gmail に返信の下書きを作り、問い合わせの一覧に判定と根拠を書く
  7. 【人】 担当者が案内と要確認の相手のサイトを確かめ、下書きを直して送る
  8. 【人】 見送りの下書きは、判定の根拠を確かめてから送る

4番目を規則で決めるのは、意図してのことです。 AIに出させるのは項目ごとの当てはまりで、それをどう組み合わせて結論にするかは、営業部の決まりです。 基準が変わったときは、規則のほうを直します。

8番目の見送りも、人が送ります。 見送りの返信は、相手のブランドの評価にもつながります。誤った見送りは、相手から見れば取引を断られたという事実だけが残ります。

02今回想定するシステム構成

構成図
ECサイトの卸取引の問い合わせ(Google フォーム → 回答のスプレッドシート)
   │
   ▼【トリガー】Google Forms:New Form Response(Instant)
Zapier(Zap)
   ▼
Google Sheets ── 卸先の一覧・過去の問い合わせを引く(店名・URL・ドメイン)
   ▼
AI by Zapier(1回目:基準の項目ごとの判定。ナレッジ=卸の取引基準書)
   ▼
Paths(判定の組み合わせで分岐)
   ├── A:案内 ── AI by Zapier(取引条件の説明の下書き)→ Gmail の下書き
   ├── B:見送り ── AI by Zapier(お断りの下書き)→ Gmail の下書き
   └── C:要確認(Fallback)── 担当者への確認事項 → Gmail の下書き
   ▼
Google Sheets ── 問い合わせの一覧に判定と根拠を書く
   ▼
【担当者が確かめ、直して送る】
役割想定する製品代替候補
ワークフローZapier(Google Forms、Google Sheets、Paths、Gmail)Make、Power Automate、n8n
生成AIAI by ZapierChatGPT(OpenAI)、Claude、Gemini
保管Google スプレッドシート(回答、卸先の一覧、問い合わせの一覧)Airtable
書類Google ドキュメント(卸の取引基準書、取引条件の説明)Microsoft Word

フォームと卸先の一覧は、今あるものを使います。 新しく作るのは、卸の取引基準書と、Zapier の Zap と、問い合わせの一覧の列(判定、根拠、返信の日付)です。取引基準書を書くことが、この構成のいちばん大事な準備です。

トリガーは、Google Forms の New Form Response です。 Zapier の Google Forms の連携では、回答が届いたときに動く New Form Response が Instant(即時)のトリガーで、回答が Google スプレッドシートに保存されている必要があるとされています。卸のフォームはすでに回答をスプレッドシートに記録しているので、そのまま使えます。

判定は AI by Zapier で行います。 返してほしい項目を出力のフィールドとして定義でき、卸の取引基準書を Google ドキュメントにしてナレッジのソースとして付けられます(1つの手順に最大20、1つのソースは96,000語まで)。使えるのは Professional・Team・Enterprise のプランで、モデルの段階によって使うタスクの数が1倍から5倍まで変わり、既定は Premium(5倍)です。

Zapier を選ぶ理由は、フォーム・スプレッドシート・Gmail が今の窓口の道具だからです。 営業部の中で Zap を見て、基準や分岐を直せます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

卸取引の問い合わせフォームに回答が届いたことを起点にします。 Google Forms の New Form Response は Instant のトリガーで、回答の直後に動きます。判定と下書きが回答の数分後にでき、担当者はその日のうちに送れます。

1件ごとに動かします。 まとめて処理すると、案内する相手を先にする今の癖が、そのまま残ります。見送りの下書きも、案内と同じ時刻にできあがるようにします。 第3章の(a)は、ここで解きます。

フォームを作り直すときは、回答の記録先のスプレッドシートを変えないでください。 トリガーは回答の保存先を通して動くので、記録先が変わると Zap が動かなくなります。 Google の API の上限を超えると、429 のエラーになることもあります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
問い合わせ店名、業態、所在地、店舗・サイトのURL、取り扱いたい商品、希望数量、開業の時期、自由記述、メールアドレスフォームの回答
卸の取引基準書業態・地域・数量の基準、見送りの基準、要確認とする場合Google ドキュメント(ナレッジのソース)
卸先の一覧既存の卸先の店名、所在地、商業施設、取引の状態Google スプレッドシート
過去の問い合わせ店名、URL、前回の判定と理由、返信の日付問い合わせの一覧

質を決めるのは、2行目の卸の取引基準書です。 基準を、業態・地域・数量の見出しごとに、当てはまる例と当てはまらない例を並べて書きます。「世界観に合う店」のような言葉だけでは、AIも新しい担当者も同じ判断ができません。「実店舗がある、またはブランドの商品だけを集めたページを作れる自社サイトがある」のように、見て確かめられる言葉に直します。

基準書は、たとえば次のような形で書きます。

見出し当てはまる例当てはまらない例分からないとする例
業態実店舗の雑貨店・セレクトショップ。ブランドの商品をまとめて載せる自社サイト個人の転売、フリマアプリでの販売開業前で店舗もサイトも無い。SNSのアカウントだけ
地域同じ市区町村に既存の卸先が無い、または商業施設が違うブランドが出店する商業施設と同じ施設所在地が都道府県までしか書かれていない
数量初回の数量が最低ロット以上最低ロットの半分に満たない数量の記載が無い、「少量から」とだけある

右端の列を必ず書きます。 分からない例が書かれていないと、AIはどちらかに寄せます。

基準書を書くときに、入れてはいけない基準を確かめます。 流通・取引慣行に関する指針は、安売りを行うことを理由に取引しないようにさせることを、原則として違法としています。一方で、品質の保持や適切な使用の確保など消費者の利益の観点から合理的な理由に基づく基準を、希望する他の流通業者にも同等に当てはめる場合は、その結果として特定の安売り業者が基準を満たさなくても、通常は問題とならないとされています。基準は「どう売るか」ではなく、「どこで、どんな形で扱うか」で書きます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
回答フォームの回答New Form Response のフィールド
既存の卸先卸先の一覧Lookup Spreadsheet Row(店名、所在地の市区町村)
同じ地域の卸先卸先の一覧Lookup Spreadsheet Rows (Advanced)(市区町村で最大500行)
過去の問い合わせ問い合わせの一覧Lookup Spreadsheet Row(メールのドメイン、URL)
基準卸の取引基準書AI by Zapier のナレッジのソース

同じ地域の卸先は、複数の行をまとめて引きます。 Lookup Spreadsheet Row は1行を返す検索で、複数の行は Lookup Spreadsheet Rows (Advanced) で最大500行まで取れます。所在地の市区町村で引き、同じ商業施設の名前があるかどうかを AI に渡します。

過去の問い合わせは、見つからなければ続ける設定にします。 Lookup Spreadsheet Row は見つからないときに、行を作る・続ける・止めるを選べます。初めての相手が大半なので、「続ける」にします。 見つかった場合は、前回の判定と理由を AI に渡し、前回と違う判定になるときは要確認にします。

相手のサイトは、この構成では開きません。 AI by Zapier はWebサイトや URL を検索できないとされています。URLを渡しても、AIは中身を見ずにURLの文字から推し量ります。 サイトの確認は、人の仕事として残します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 所在地をそろえる … 都道府県と市区町村に分け、卸先の一覧と同じ書き方にします
  2. 希望数量を数字にする … 「各10個くらい」「まずは少量で」のような書き方は、数字にできなければ空にし、数量の判定を「分からない」にします
  3. メールのドメインを取り出す … フリーメールかどうかの印を付けます。フリーメールだけで見送りにはしません
  4. URLの形を確かめる … ECモールの店舗ページ、SNSのアカウント、自社のドメインのどれかに分けます。中身は見ず、URLの形だけで分けます
  5. 同じ相手の短い間の重複を除く … フォームを二度送った場合、同じ店名・同じメールの回答が数分の間に届きます

4番目でURLの形を分けるのは、業態の判定の材料にするためです。 ECモールの店舗ページなら「ECモールへの出店」、SNSのアカウントだけなら「実店舗・自社サイトの有無は不明」として、AIが中身を見たかのように判定することを防ぎます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、業態・地域・数量の3つの基準について、当てはまるかを判定し、根拠を書くことです。

基準判定の材料返すもの
業態フォームの業態、URLの形、自由記述、開業の時期fits / not_fits / unknown と根拠
地域所在地、同じ地域・同じ商業施設の既存の卸先同上
数量希望数量と、基準書の初回の最低ロット同上
確認事項unknown の項目担当者が確かめること、相手に聞くこと

unknown を必ず選べるようにしているのが、この構成の要です。 開業前の店、SNSのアカウントだけの店、数量が書かれていない相談は、フォームの回答だけでは判定できません。 当てはまる・当てはまらないのどちらかに寄せさせると、案内すべき相手を見送るか、見送るべき相手に条件を案内することになります。

させないこと理由
安売り・値引きの可能性を判定に使う安売りを理由に取引しないことは、流通・取引慣行に関する指針で原則として違法とされている
販売価格を守ることを条件として書く販売価格を拘束することは原則として違法。希望小売価格は参考として示すだけにする
相手のサイトを見たように書くAI by Zapier はWebサイトを検索できない
最終の可否を決める取引を始めるかは担当者が相手の店やサイトを見て決める
基準書に無い基準を足す「SNSのフォロワーが少ない」などを AI が自分で基準にしない

1行目と2行目がいちばん気をつける点です。 自由記述に「セールで売りたい」「価格は自由に決めたい」と書かれていると、生成AIはブランドを守る方向に気を回して、見送りの理由や、案内の文面の「販売価格はブランドの定める価格で」という一文に変えてしまうことがあります。指示で明示して止めます。

Step6

指示内容を固定する

1回目(基準の項目ごとの判定)の指示です。 卸の取引基準書をナレッジのソースとして付けます。

あなたは生活雑貨ブランドの営業部で、卸取引の問い合わせを、付けられた
卸の取引基準書と照らして一次判定する担当です。

【やること】
業態・地域・数量の3つについて、それぞれ fits/not_fits/unknown を選び、
根拠をフォームの回答と基準書の言葉で書いてください。

【厳守事項】
- 判定の根拠は、フォームの回答、既存の卸先の情報、基準書だけにして
  ください。相手の店やサイトの中身を見たように書かないでください。
- 基準書に書かれていない基準を足さないでください。
- 安売り・値引き・セール・価格の決め方に関する記述を、判定の根拠に
  使わないでください。
- 回答だけで判断できない項目は unknown にし、questions に、担当者が
  確かめることか、相手に聞くことを書いてください。
- 取引を始めるべきかの結論を書かないでください。
- 前回の問い合わせの判定が渡されたときは、前回と違う判定になる項目を
  changed_from_previous に書いてください。

【フォームの回答】{form}
【同じ地域・同じ商業施設の既存の卸先】{nearby_retailers}
【前回の問い合わせ】{previous}

2回目(返信の下書き)は、分岐ごとに指示を変えます。 案内の下書きには、基準書にある取引条件(初回の最低ロット、支払の条件、配送の条件、申込の手順)だけを書かせ、販売価格の指示を書かないこと、希望小売価格は参考として示すことを明記します。見送りの下書きには、判定の根拠のうち相手に伝えてよいもの(初回の数量、開業の時期など)だけを書かせ、地域の既存の卸先の名前は書かせません。

「サイトの中身を見たように書かない」が、この指示の要の1つです。 URLを渡すと、生成AIはドメインやパスの文字から「ナチュラルな雰囲気のセレクトショップ」のように書くことがあります。見ていないものを根拠にした判定は、担当者が確かめようがありません。

Step7

出力形式を固定する

AI by Zapier の出力のフィールドとして、次の項目を定義します。

{
  "business_type": { "judgment": "fits | not_fits | unknown", "evidence": "" },
  "area": { "judgment": "fits | not_fits | unknown", "evidence": "" },
  "quantity": { "judgment": "fits | not_fits | unknown", "evidence": "" },
  "url_kind": "own_site | marketplace | sns | none",
  "questions": [""],
  "changed_from_previous": [""]
}

1つ目の理由は、Paths の分岐を AI の結論ではなく、3つの判定の組み合わせで決められることです。

3つの判定分岐返信の下書き
すべて fitsA:案内取引条件の説明と申込の手順
どれかが not_fits、unknown なしB:見送り合わなかった点を伝えるお断り
どれかが unknown、または changed_from_previous ありC:要確認(Fallback)担当者への確認事項と、相手への質問の下書き

Paths は、Custom rules で A と B を作り、どれにも当たらないものを Fallback の C に落とします。 分岐は左から右へ1つずつ評価されます。判定の組み合わせが想定の外になったときも、必ず人が見る C に入ります。

2つ目は、evidence を問い合わせの一覧に残せることです。 半年後に同じ相手から問い合わせが来たとき、前回どの基準で見送ったかが一覧で分かります。第3章の(c)は、ここで解けます。

3つ目は、questions が要確認の返信にそのまま使えることです。 「開業の時期」「実店舗の所在地」「初回の数量」のように、相手に聞けば決まることを、聞く文面にして下書きに入れます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
卸取引のフォームGoogle Forms(New Form Response)回答を受け取る
卸先の一覧・問い合わせの一覧Google Sheets(Lookup Spreadsheet Row、Lookup Spreadsheet Rows (Advanced)、行の追加)既存の卸先と前回の判定を引き、結果を書く
AI by ZapierZap の手順(判定と下書き)基準の項目ごとの判定と、返信の下書き
返信Gmail(Create Draft)下書きを作る。送らない

Gmail は Create Draft までにします。 見送りの返信を自動で送ると、判定の誤りがそのまま相手に届きます。Gmail には送信の数の上限もあり、超えると停止のおそれがあります。 下書きにしておけば、担当者が1日の中でまとめて送れます。

問い合わせの一覧には、回答の行ごとに、3つの判定、根拠、分岐、下書きを作った時刻、送った時刻、覆した記録の列を足します。 回答のスプレッドシートとは別のシートにし、回答の行そのものは書き換えません。 フォームの回答の記録と、判断の記録を分けておくためです。

Step9

人が確認する

  1. 要確認(C)を先に見る … questions を見て、相手のサイトを開いて確かめるか、相手に聞く下書きを送ります
  2. 案内(A)の相手のサイトを確かめる … 実店舗や自社サイトがフォームのとおりかを、この段階で人が見ます
  3. 見送り(B)の根拠を確かめる … evidence がフォームの回答と合っているかを見ます。数量や開業の時期の読み違いが無いかを確かめます
  4. 下書きを直して送る … 案内の文面に販売価格の指示が入っていないか、見送りの文面に既存の卸先の名前が入っていないかを見ます
  5. 判定を覆したら記録する … どの項目を、どう変えたかを一覧に残します

2番目を省かないでください。 AI は相手のサイトを見ていません。案内に進める前に相手の店を見るのは、この構成では人の仕事です。

5番目の記録は、基準書を直す材料です。 同じ項目で同じ方向に覆している判定が続くなら、AIの誤りではなく、基準書の書き方が担当者の判断とずれています。 月に一度、覆した記録を項目ごとに数えます。

目標は、1件をならして5分です。 見送りの根拠の確認は1〜2分で済み、案内と要確認の相手はサイトの確認を含めて10分ほどかかる見込みです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
卸ではなく個人の購入の相談判定をせず、ECサイトの案内の返信の下書きを作る
法人の記念品・ノベルティの相談要確認にし、法人の担当に回す
海外からの問い合わせ要確認。基準書の海外の取引の項目に沿って担当者が判断する
既存の卸先からの追加の問い合わせ判定をせず、その卸先の担当者に回す
前回と違う判定になる要確認にし、前回の理由を添える
AI の出力が空・形式違い下書きを作らず、担当者に回答だけを知らせる
自由記述に価格・値引きについての質問がある判定は他の項目で行い、価格の質問への答えは担当者が書く。下書きには入れない
同じ相手が別の店名で問い合わせるメールのドメインとURLで前回の記録を引き、要確認にする

上から3行目までは、フォームの業態の選択肢を足すだけで減らせます。 「個人での購入」「法人の記念品」「海外からの卸」の選択肢があれば、AI を通す前に分岐させられます。

Step11

記録を残す

  • フォームの回答と受け取った時刻
  • 引いた既存の卸先と前回の問い合わせ
  • AI の判定(3つの判定、根拠、確認事項)と、そのときの基準書の版
  • 分岐(A/B/C)と、担当者が送った返信と時刻
  • 担当者が判定を覆した記録

3つ目で基準書の版を残すのは、基準が変わるからです。 最低ロットや対象の業態を見直すと、過去の見送りの意味が変わります。どの版の基準で判定したかが残っていないと、もう一度案内すべき相手を探せません。

04実装レベルの3段階

最小構成:基準の文書とフォームの回答を生成AIの画面に貼る / 1件ごとの一次判定
半自動化:上記+Zapier で、回答の到着から判定・分岐・返信の下書き・一覧への記録までを作る / 一次判定から下書きまで
本格構成:上記+案内した相手の申込を受け付け、与信の確認や卸先の一覧への登録の依頼まで流す / 一次判定から取引開始の手続きの依頼まで

本記事の想定は半自動化です。 1件15分が5分になり、担当者の手元に残るのは相手の店の確認と送信だけです。本格構成では与信や契約の手続きが加わり、営業部の外の仕組みとつなぐことになります。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2か月回し、担当者がどの判定を覆しているかを見て、基準書を直してから次に進みます。 半自動化の中でも、最初は判定だけを出す期間を置きます。 判定と担当者の判断を2〜3週間並べ、見送りの判定が担当者の判断と食い違わないことを確かめてから、見送りの下書きを足します。 案内の下書きより見送りの下書きを後にするのは、誤った見送りのほうが、相手にとっても自社にとっても取り返しにくいからです。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
180 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  180件 × 15分 ÷ 60 = 45 時間/月
導入後 180件 × 5分 ÷ 60 = 15 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
67%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価2,800円)
101万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 生活雑貨・インテリア・食品・コスメなどの自社ブランドをECで直販し、セレクトショップや雑貨店、ギフトの会社から卸取引の希望が月に百件以上届く会社。卸の可否を、業態・地域・初回の数量などの社内の基準で決めているが、基準が担当者の頭の中にあり、返信の文面も人によって違う場合。見送りの返信が後回しになり、問い合わせへの返事が届かないままになっている場合。Zapier の有料プランと Google フォーム・スプレッドシート・Gmail を使える場合。
向いていない
  1. 卸の問い合わせが月に十数件で、担当者が一つずつ判断しても負担にならない場合。卸の基準が文書になっておらず、毎回の相談で決めている場合(先に基準の文書化が要ります)。卸を代理店にすべて任せている場合。なお、取引を始めるかの最終の判断、与信、契約の条件の決定は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 卸の基準を、業態・地域・数量の見出しで1枚の文書に書き出す(当てはまる例と当てはまらない例を並べる)
  2. 過去3か月の問い合わせから20件を選ぶ(案内した相手、見送った相手、迷った相手を混ぜる)
  3. 生成AIの画面に基準の文書とフォームの回答を貼り、「業態・地域・数量ごとに当てはまる・当てはまらない・分からないを選び、根拠を書いてください。サイトを見たように書かず、価格に関する記述を根拠にしないでください」と指示する
  4. 出てきた判定を、当時の担当者の判断と比べる
出てきた内容判断
当時の判断とおおむね同じZap を組む段階に進む
価格の記述を根拠にした指示の書き方で直る。禁じる一文を足す
担当者どうしの判断がそもそも割れていた基準の文書が先。 営業部で基準を決め直す

3行目が出ることは珍しくありません。 20件を並べると、担当者ごとの基準の違いが見えます。AI を入れる前に、その違いを営業部で決めることが、この構成の最初の成果です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
安売りの可能性を見送りの理由にする指示で禁じ、基準書からも外す
案内の文面に販売価格の指示が入る指示で禁じ、送る前に人が確かめる
サイトを見たように判定するURLの形だけを渡し、サイトの確認は人が行う
分からない項目を当てはまるに寄せるunknown を選べるようにし、要確認に回す
見送りの文面に既存の卸先の名前が入る伝えてよい根拠だけを下書きに渡す
担当者ごとに判定を覆す方向が違う覆した記録を月に一度見て、基準書を直す
フォームを作り直して Zap が止まる回答の記録先のスプレッドシートを変えない
AI のタスクの消費が多い下書きの手順のモデルの段階を下げる

上の2行が、この構成でいちばん重い失敗です。 どちらも工数ではなく、取引のしかたそのものの問題になります。 基準書と指示の両方で、価格に触れない線を守ってください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 問い合わせた店の名前、所在地、担当者の氏名とメールアドレス、既存の卸先の一覧(店名と所在地)、卸の取引条件(掛け率、支払の条件)です。卸先の一覧と掛け率は、競合に知られたくない情報です。

  1. AIに渡す範囲を絞る … 判定に要るのは、フォームの回答と、同じ地域の既存の卸先の店名・商業施設だけです。卸先の一覧の全件と掛け率は、判定には渡しません
  2. 取引条件の文書の扱いを決める … 掛け率は、案内の下書きにだけ差し込みます。ナレッジのソースに掛け率の表を入れるかは、AI by Zapier の利用条件を確かめてから決めます
  3. 価格に関わる判定と文面を作らない … 流通・取引慣行に関する指針で、販売価格の拘束と、安売りを理由に取引しないことは原則として違法とされています。基準書・指示・下書きのどこにも入れないでください
  4. 最終の可否は人が決める … この構成が出すのは基準に照らした一次判定です。取引を始めるか、与信をどうするかは、営業の担当者と上長が決めます
  5. 既存の卸先の情報を外に出さない … 見送りの文面に、同じ地域の既存の卸先の名前を書かないようにします

誤りが起きた場合のリスクは、基準に合う相手を見送ることと、価格に関わる理由で取引を断ることの2つです。 前者は unknown を許さないと起き、後者は基準書と指示に価格の扱いを書かないと起きます。

10まず何から始めるか

1週目:卸の取引基準書を書く

3名の担当者で、業態・地域・数量の基準を書き出し、当てはまる例と当てはまらない例を並べます。 価格に関わる基準が入っていないかを、この段階で確かめます。

2週目:20件で試す

第8章の手順で、過去の問い合わせ20件を判定させ、担当者どうしの判断の違いと、価格の記述を根拠にしていないかを見ます。

3週目:判定と一覧への記録を Zap で動かす

New Form Response から、卸先の一覧の検索、判定、一覧への記録までを組みます。返信の下書きはまだ作らず、判定だけを担当者が見ます。

4週目:分岐と返信の下書きを足す

Paths で案内・見送り・要確認に分け、下書きを足します。担当者が覆した判定を毎週数えます。

2か月目以降: 問い合わせから返信までの日数と、覆した判定の数を毎月並べます。見送りの相手にも同じ日のうちに返事が届き、覆す判定が減ってきた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
事業者がどの事業者と取引するかは基本的には取引先選択の自由の問題であること。流通業者の販売価格を拘束することは原則として違法で、希望小売価格は単なる参考として示す限りは問題とならないこと。安売りを行うことを理由に小売業者へ販売しないようにさせることが原則として違法であること。選択的流通で、消費者の利益の観点から合理的な理由に基づく基準を他の流通業者にも同等に適用する場合は、特定の安売り業者が基準を満たさなくても通常は問題とならないこと(原文を取得して確認)公正取引委員会: 流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針2026-10-07
Google Forms の New Form Response と New or Updated Form Response が Instant のトリガーであること。回答が Google スプレッドシートに保存されている必要があること。Google の API の上限を超えると429のエラーになることZapier: How to get started with Google Forms on Zapier2026-10-07
AI by Zapier が Professional・Team・Enterprise で使えること。Standard(1倍)・Advanced(3倍)・Premium(5倍、既定)の段階があること。出力フィールドを定義できること。ナレッジのソースを最大20まで付けられ、Google ドキュメントに対応し、1つのソースが96,000語までであること。Webサイトや URL を検索できないことZapier: Use AI by Zapier to analyze and return data2026-10-07
Paths が Professional 以上で使えること。1つのグループに最大10の分岐を置けること。Custom rules・Always run・Fallback の規則があり、分岐が左から右へ1つずつ動くことZapier: Add branching logic to Zap workflows with Paths2026-10-07
Lookup Spreadsheet Row で検索する列と値を指定できること。見つからないときに行を作る・続ける・止めるを選べること。複数の行は Lookup Spreadsheet Rows (Advanced) で最大500行まで取れることZapier: Find and update spreadsheet rows in Google Sheets2026-10-07
Gmail の Create Draft などのアクションがあること。Gmail に1日の送信数などの上限があり、超えると停止のおそれがあることZapier: How to get started with Gmail on Zapier2026-10-07

卸の基準と取引条件が独占禁止法に照らして問題がないかは、必要に応じて弁護士に確かめてください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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