【2026年】公表前の情報とAI|入れる前に確かめる4点

【2026年】公表前の情報とAI|入れる前に確かめる4点

「決算発表の2週間前に、まだ外に出していない数字で広報文の下書きを作れないかと聞かれました」「提携の発表資料を、相手の社名を伏せないままAIに直させてしまった人がいます」——上場企業の広報や経営企画から、この半年で持ち込まれるようになった相談です。どちらも、情報が外に漏れた話ではありません。効いているのはまだ公にしていない、という属性そのものが情報に別の枠をかけるという事実です。公表前の重要な情報には、売買を禁じる規制も、特定の相手に伝えたら公表しなければならない決まりも、取引所への開示の時期の縛りもかかります。この記事では、公表前の情報をAIに渡そうとしたときに確かめる4点を、決算発表前の場面をたどりながら整理していきます。


カメ先生カメ先生

未公表の数字をAIに入れてよいか、という質問はよく来るね。ただ、たいていは漏れるかどうかの話として聞かれていて、そこが少しずれているんだ。公表前の情報は、漏れなくても扱いを間違えると問題になるからだよ。


カメ子カメ子

外に出ていなければ大丈夫、ではないということですか。


カメ先生カメ先生

そうなんだ。公表前かどうかというのは、会社が公表の時期を握っているという意味でね。誰かが先に知っている状態を作ってしまうと、その時期を握れなくなる。だから、入れたかどうかではなく、誰がいつ知る状態になるかで考えることになる。


カメ子カメ子

漏えいを防ぐ設定を入れてあるかどうかとは、別の物差しで見るということでしょうか。


この記事のポイント
  • 公表前の情報は、漏れるかどうかとは別に、公表の時期を会社が握っているという理由で扱いが縛られる
  • 渡す前に確かめるのは4点。公表前か/時期を誰が決めているか/中身が社外の目に触れる道が1本でもあるか/公表を待てない理由が本当にあるか
  • 公表前かどうかの判定をAIにさせない。材料を整理させるところまでにして、線を引くのは公表の時期を握っている人が行う

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目次

場面:決算発表の2週間前、広報の下書きに数字を渡そうとした

具体的な場面から始めます。四半期の決算発表まで2週間。経理からは、ほぼ固まった売上と利益の数字が広報に届いています。広報の担当者は、発表当日に出す文章の下書きを作らなければなりません。前年同期との比較、増減の理由、経営者の談話。分量があり、締め切りは近い。そこで、届いた数字をそのまま貼り付けて、要約と構成の案を作らせようとします。

この担当者に悪意はありません。会社が契約した法人向けの入り口を使っていて、入力が学習に使われない設定であることも確認しています。情報システムの承認も取っています。漏えい対策の観点では、ここまでで問題は見当たりません。それでもこの操作は、止めるべき場合があります。理由は、この数字が持っている別の属性にあります。

その属性とは、まだ公にされていない、ということです。数字そのものの機密度の話ではありません。同じ数字が2週間後には誰でも見られる状態になります。にもかかわらず、公表の前と後では、扱いの縛りがまったく違います。この違いを、以降のH2でほどいていきます。

この相談が「漏えい対策」の棚に入ると、答えが出ない

社内でこの相談が出たとき、多くの会社はまず情報システムか情報セキュリティの部署に回します。すると返ってくる答えは、契約の形態、学習利用の設定、保存期間、利用者の制限といった話になります。これらは全部正しいのですが、この相談の答えにはなりません。どれも「外に出るかどうか」を減らす手当てであって、公表の時期を誰が握るかとは無関係だからです。

実際、この棚に入れたまま進むと、結論はこうなります。法人向けの契約で、学習に使われない設定になっていて、承認を取っているのだから問題ない。この結論で決算の数字を渡し続けた会社が、四半期を3回ほど回したところで、監査か内部統制の側から指摘を受ける、というのがよくある流れです。指摘されるのは設定の不備ではなく、公表前の情報を扱う手続きが存在しないことのほうです

なぜこの棚に入ってしまうのか。理由は、相談する側の言葉にあります。担当者は「AIに入れてよいか」と聞きます。入れるという動詞が道具の話なので、道具を管理している部署へ回ります。ところが答えを持っているのは、その案件を発表する時期を決めている人です。相談の言葉を「この案件の数字を、公表の前に社外の仕組みへ渡してよいか」に言い換えるだけで、回る先が変わります。言い換えを申請の様式に書いておくと、担当者が毎回考えずに済みます。

入り口の安全をどう確保するか、契約のどの条項を読むか、管理側でどの設定を入れるかは、生成AIからの情報の漏れを扱った別の記事で整理しています。この記事では、その手当てがすべて済んでいる前提で、それでも残る問題だけを扱います

公表前という属性が、情報に3つの枠をかける

上場会社が持っている公表前の重要な情報には、少なくとも3つの枠がかかっています。第一に、その情報を知った人の売買を禁じる規制です。会社関係者が、その会社の業務等に関する重要事実を知りながら、公表される前に株式などを売買することは禁じられています(金融商品取引法166条)。知った人が増えるほど、この規制の対象になる人が増えます

第二に、特定の相手に先に伝えたら公表しなければならない決まりです。フェア・ディスクロージャー・ルールと呼ばれるもので、2018年4月に施行されました。上場会社等やその役員等が取引関係者に未公表の重要情報を伝えた場合、意図的な伝達なら同時に、意図的でない伝達なら速やかに、その情報を公表しなければならないとされています(金融商品取引法27条の36第1項)。ただし、相手が守秘義務と売買等をしない義務の双方を負う場合は、公表義務を免れます(同項ただし書)。

ここで誤解を避けておきます。この決まりでいう取引関係者は、証券会社や投資家など、投資判断や助言に関わる立場の人を指します。AIの提供元がそこに当たると言っているのではありません。挙げたのは、公表前の重要な情報は「誰に先に知られたか」で会社に義務が生じる種類の情報だ、という点です。第三の枠は取引所の適時開示で、会社は投資判断に重要な影響を与える情報を定められた形で開示することが求められます。3つに共通するのは、公表の時期と順番を、会社が管理していることが前提になっている点です。

「公表された」とは、いつのことを指すのか

確かめる4点に入る前に、言葉を固めておきます。社内で「もう出ているから大丈夫」と言われるとき、その「出ている」が何を指しているかが人によって違うからです。インサイダー取引規制における公表には、決まった意味があります。次の3つのいずれかに当たったときです。

  • 会社の代表者などが2以上の報道機関に重要事実を公開し、そこから12時間が経過した場合(金融商品取引法施行令30条1項1号。報道されたかどうかは問われません)
  • 会社が取引所へ通知し、取引所の開示の仕組みで誰でも見られる状態になった場合(同項2号。この場合は12時間の経過を待つ必要がありません)
  • 重要事実が記載された有価証券報告書や臨時報告書などが、公衆の縦覧に供された場合(金融商品取引法166条4項)

実務で効くのは2つ目です。多くの会社の発表は、取引所の開示の仕組みに載った時点で公表になります。ここから逆算すると、「もう記者に話した」「もう社内には共有した」「取材で聞かれて答えた」は、どれも公表ではありません。社内向けの説明会で全社員に話したとしても、公表にはなりません。むしろ、知っている人が一気に増えた状態です。

実務でもうひとつ迷うのが、会社が出す前に報道が先に出た場合です。取材で答えた覚えがなくても、観測記事として出ることがあります。このとき会社の側が何もしなければ、公表にはなりません。1つ目の方法は、会社の代表者やその委任を受けた人が自ら報道機関に公開した場合を指すからです。報道が出たので公表済みだと社内で判断してしまうと、いちばん危ない時期に線が外れます。報道が出た日は、むしろ問い合わせが増えて知る人が増える日です。

この定義を広報と経営企画で共有しておくと、以降の会話が短くなります。「それは公表済みですか」と聞かれたときに、開示の仕組みに載ったかどうかという1つの事実で答えられるようになるからです。社内の感覚で「もう知られているから」と判断する余地がなくなります。

確かめる4点の全体像

ここからが本題です。公表前の可能性がある情報をAIに渡そうとしたとき、渡す人が順に確かめる4点を示します。上から順で、どこかで止まったら渡しません。4点とも1分程度で答えられるもので、法務に照会しなければ進めないようには作っていません。照会が必要になる場面を減らすために、先に4点を用意しておきます

STEP1
その情報は公表前か

開示の仕組みに載って誰でも見られる状態になっているかを見ます。なっていれば、以降の3点は不要です。

STEP2
誰が公表の時期を決めているか

時期を握っている人の役職と名前が言えるかを確認します。言えないなら、その時点で渡しません。

STEP3
中身が社外の目に触れる道が1本でもあるか

1本でもあるなら渡しません。何本あるかを数える作業ではありません。

STEP4
公表を待てない理由が本当にあるか

待てない理由を、業務の期限として1行で書けるかを見ます。書けないなら待ちます。

4点の並び順には意味があります。1点目で多くが落ちます。2点目で、渡す人と決める人が分かれます。3点目で、道具の話ではなく人の話に戻ります。4点目は、急いでいるという感覚を、書ける形の理由に変換させるための問いです。

①その情報は公表前か:知らなかったで通らない場所がある

1点目は事実の確認です。手元の数字や文言が、すでに開示の仕組みに載っているかを見ます。載っていれば、この記事の話は終わります。公表済みの情報をAIに渡すことは、社内の一般的な取り扱いの範囲で判断すれば足ります。載っていなければ、以降に進みます。

問題は、渡そうとしている本人が公表前かどうかを判定できない場合です。よくあるのが、数字の一部だけが公表済みで、残りが未公表という状態です。前期の実績は出ている。今期の見込みは出ていない。この2つを並べた資料を渡すと、公表済みの部分から未公表の部分が推測できる形になっていることがあります。組み合わせて初めて意味を持つ情報を、個別に見て公表済みだと判断してしまう事故です。

この事故を減らす方法は1つです。資料の単位ではなく、案件の単位で見ること。決算という案件が公表前なら、その案件に関わる資料はすべて公表前として扱います。部分ごとに判定させると、必ず都合のよい側に倒れます。判定の単位を先に決めておくのが、渡す人を守ることにもなります。

②誰が公表の時期を決めているか

2点目は、人を特定する問いです。この情報を、いつ、どの形で外に出すかを決めている人は誰か。決算なら開示を担当する役員や経理の責任者、人事なら取締役会の事務局、提携なら経営企画の責任者、というように、案件ごとに決まっています。その人の名前を言えないなら、渡す判断をする立場にありません

この問いが効くのは、渡す人の立場を明確にするからです。広報の担当者は、下書きを作る仕事を持っていますが、公表の時期を決める権限は持っていません。持っていない人が、公表前の情報の扱いを一人で決めている状態そのものが、手続きの欠落です。確かめるべきは「渡してよいか」ではなく、時期を握っている人が、渡すことを知っているかです。

運用としては、案件ごとに1名を書いた一覧を作るのが早道です。案件名、時期を決める人、その人への連絡の窓口。3列で足ります。この一覧がないと、担当者は結局その場の上司に聞き、上司も分からないので慣習で通します。慣習で通した記録は残らないので、後から経緯を説明できません。

③中身が社外の目に触れる道が1本でもあるか

3点目は、経路を数える作業ではありません。1本でもあるかどうか、だけを見ます。ここで数えようとすると、経路ごとの対策の話に落ちてしまい、答えが出なくなります。経路をどう塞ぐか、契約で何を確認するか、管理側でどの設定を入れるかは、別の記事で整理しています。この記事で見るのは、塞いだかどうかではなく、公表前の情報を渡してよいかという線引きだけです

道が1本でもあるかを見るときの具体的な確認は3つです。入力した内容を、提供元の担当者が見る余地があるか。同じ会社の中で、この案件に関わっていない人が見られる場所に出力が保存されるか。作業を手伝っている外部の人が、その画面を見られる場所にいるか。1つでも当てはまるなら、渡しません。

3つ目を見落としがちです。制作会社の常駐者、派遣のスタッフ、業務委託で入っている人。会社の入り口を使っていても、画面を見ている人が誰かは別の問題です。公表前の案件については、席の配置と画面の向きまで見る必要があります。この確認は道具の話ではなく、部屋の話です。

④公表を待てない理由が、本当にあるか

4点目は、最後の関門です。ここまでで止まらなかった場合、渡す理由を1行で書いてもらいます。書く先は、案件の一覧でも、申請の様式でもかまいません。条件は1つ、業務の期限として書けることです。「発表当日の朝に配る資料を、前日の夕方までに作る必要がある」は書けます。「急いでいる」「時間がない」は書けません。

この問いを入れる理由は、待てない理由の大半が、実は待てるからです。下書きを作る作業のうち、公表前の数字が必要な部分は一部にすぎません。構成、前年との比較の枠組み、表現の統一、想定される質問の一覧。これらは数字が確定する前でも、公表済みの材料だけで作れます。数字を入れる作業だけを最後に人が行えば、全体の時間はほとんど変わりません。

冒頭の場面に戻ります。発表まで2週間ある広報の担当者が、その時点で数字を渡す必要は、実際にはありませんでした。必要だったのは、前年の発表文を材料にした構成の案と、想定される質問の一覧です。この2つは、公表済みの資料だけで作れます。数字が確定した後、担当者が手で入れる。所要時間は増えません。

待てないときに残っている3つの代わり

それでも本当に待てない場合があります。開示の直前に文章の点検が必要になった、海外向けの文面を同時に用意しなければならない、といった場面です。このときに残っている手は3つです。上から順に、実務で採りやすい順に並べています。

第一に、数字を伏せて形だけを作らせる方法です。実際の数字の代わりに、桁と単位だけを揃えた仮の値を置きます。文章の長さと構成は本物と同じになるので、点検の目的は果たせます。ただし、伏せた数字以外の記述から方向が読み取れないかを、渡す前に読み返してください。増収増益の文脈がそのまま残っていれば、数字を伏せた意味はほとんどありません。

第二に、公表済みの材料だけで組む方法です。前期の発表文、すでに開示している見通し、有価証券報告書の記載。これらを材料にして雛形を作り、確定した数字は人が入れます。第三に、社内に閉じた環境で行う方法です。会社が管理している環境の中だけで完結し、外部に送信されない形であれば、3点目の確認を通せる場合があります。ただしこの判断は、環境の作りによって変わるので、情報システムと法務の両方に確認が要ります

3つのうちどれを選ぶかは、点検したい対象で決まります。文章の長さと構成を見たいだけなら第一の方法で足ります。表現と用語の統一を見たいなら、第二の方法のほうが結果が安定します。数字を含めた通しの点検が要るなら、第三の方法しか残りません。ここで注意したいのは、第三を選ぶには環境の確認に日数がかかることです。発表の直前に決めることはできないので、使う可能性があるなら四半期の初めに確認を終えておいてください。

外注先・派遣・社外役員に、同じ線が伸びている

公表前の情報を扱う線は、社員だけで止まりません。インサイダー取引規制における会社関係者には、その会社と契約を締結している者や、締結の交渉をしている者が含まれます(金融商品取引法166条1項)。制作会社、広告代理店、監査法人、法律事務所、印刷会社は、契約関係にある立場としてこの線の内側にいます。さらに、会社関係者から重要事実の伝達を受けた第一次情報受領者も規制の対象になります(同条3項)。

実務で効くのは、発表資料の制作を外に出している場合です。デザインや翻訳のために、公表前の数字と文面が外注先に渡ります。その外注先の担当者が、作業を速くするために自分の判断でAIを使う。この経路は、自社の規程では止まりません。止めるには、発注の時点で書面に条件を入れておく必要があります。

入れる条件は2つで足ります。公表前の資料を外部の生成の仕組みに入力しないこと。作業に関わる担当者の範囲を事前に知らせること。加えて、自分で売買しなくても、他人に伝えて取引させる行為が規制の対象になる場面もあります。該当するかどうかは事案によるので、具体的な判断は、証券実務に詳しい専門家に確かめてください

もうひとつ、関係が終わった後の扱いがあります。退職した社員や、契約が終了した外注先の担当者も、会社関係者でなくなった後の一定の期間は同じ規制の対象として扱われます(金融商品取引法166条1項)。期間の数え方は条文で決まっているので、公表前の案件に関わっていた人が抜けるときは、抜ける時点で法務に確認してください。作業が終わったから関係が切れる、とはなりません。引き継ぎの資料に、案件が公表前であることを明記しておくのが実務的な手当てです。

決算以外で同じことが起きる4つの場面

公表前の情報というと決算が思い浮かびますが、実務で相談が来るのはむしろ決算以外です。時期を握っている人が部署をまたぐため、渡す人が誰に聞けばよいか分からなくなるからです。代表的な4つを並べます。

公表前の場面時期を握っているのは誰かAIに渡す前に効いてくる縛り
決算の数字と業績の見通し経理の責任者と開示を担当する役員確定前の数字でも、投資判断に響く水準なら扱いは同じ
人事の異動と役員の交代人事の責任者と取締役会の事務局本人への内示より前に、下書きの材料として外に出ない形にする
提携・買収の交渉経営企画の責任者と法務相手先の名前だけでも、ほかの情報と組み合わせると特定されることがある
製品の発表と価格の改定事業部の責任者と広報発表日を動かす判断が事業部だけで完結しないことがある
資金の調達と株主への還元財務の責任者と開示を担当する役員公表の順番が決まっており、先に知る人を増やせない

表の2列目を見てください。4つとも、時期を握っているのが広報ではありません。ところが下書きを作る作業は広報に来ます。作る人と決める人が分かれている構造そのものが、確認の抜けを生みます。だからこそ、2点目の問いを手順に入れておく価値があります。

表の3列目に共通しているのは、渡す人が案件の全体を見ていないという点です。人事の担当者は異動の一覧を見ていますが、同じ週に別の発表が予定されていることまでは知りません。事業部は製品の発表日を知っていますが、その週に決算があることは見ていません。案件ごとに責任者を書いた一覧が効くのは、こうした重なりを1枚で見られるようにするからです。重なった週は、どちらの案件も公表前として扱います。

もう1つ、表に出てこない場面があります。まだ社内でも決まっていない案の段階です。取締役会に上げる前の検討資料を、要約のためにAIへ渡す。この段階の情報は重要事実に当たらないことも多いのですが、検討が進んで重要事実になったとき、渡した記録だけが残ります。案件として扱う単位を早めに決めておくのが安全です。

規程に足すのは1行でよい

ここまでの内容を、社内の決まりにどう落とすか。長い条文は要りません。既存のAI利用規程に1行足すだけで足ります。書き方の骨格はこうです。「公表前の情報を外部の生成の仕組みに入力しない。公表前かどうかの判断は、当該案件の開示の時期を決めている責任者が行う」。前半が禁止、後半が判断の主体です。後半を省くと、現場が自分で判断することになります

この1行に添える運用は2つです。案件ごとの責任者の一覧を作ること。そして、渡すと決めた場合は、渡した人・渡した日・渡した範囲を残すこと。残す先は既存の申請の仕組みでかまいません。記録の目的は監視ではなく、後から経緯を説明できるようにすることです。監査や内部統制の側から聞かれるのは、たいてい「そのとき誰が判断したか」です。

規程の階層をどう分けるか、部門ごとのルールに何を書くかといった話は、別の記事で扱っています。ここで足すのは、既存の決まりの中に1行と、一覧1枚だけです。条文を増やすほど読まれなくなるので、足す量は最小にして、判断の主体を書くことに集中してください

AIに「これは公表前か」を判定させない

ここまで読んで、判定そのものをAIに任せられないかと考えた方もいると思います。結論は、任せられません。理由は3つあります。第一に、公表済みかどうかは外部の開示の状況で決まるもので、社内の文書だけを読んでも答えが出ません。第二に、案件の単位で見る必要があるのに、渡された資料の単位で答えが返ります。第三に、公表前ではないと答えたときに、その答えを誰も検証しません

任せてよいのは、判断の材料を整える作業です。手元の資料に未公表の可能性がある項目が含まれていないかを拾い上げる。案件名と責任者の一覧に照らして、該当しそうな案件を並べる。どちらも、人が確認するための下準備であって、線を引く行為ではありません。拾い上げさせるときは、どの記述を根拠にそう判断したかを必ず書かせてください。根拠のない指摘は採用しません。

人が確認する範囲も先に決めます。全案件を責任者が見るのか、決算と開示に関わる案件だけ責任者が見て、それ以外は部門長で足りるのか。件数が増えてから決めると、決める頃には誰も見ていません。そして、判断した人の名前と判断した日を残す。これが残っていれば、後から経緯を聞かれても答えられます。

これをやると、公表前の情報が止まらない

最後に、手続きがあるのに機能しなくなる進め方を5つ挙げます。どれも一度は現場で見る形で、やっている本人は手順を守っているつもりです。

  • 公表前かどうかを、渡す本人が一人で判断する:判断が業務の都合に寄り、後から誰も検証できない
  • 数字を伏せれば大丈夫だと考える:伏せた数字以外の記述から、時期と方向が読み取れることがある
  • 会社が契約した入り口なら何を入れてもよいと考える:入り口の安全と、公表の時期を握れているかは別の話
  • 広報の下書きだけを例外として通す:例外が1回通ると、翌四半期には誰も申請しなくなる
  • 発表が終わったので記録を消す:後から経緯を聞かれたときに、誰がいつ判断したかを示せない

4つ目が、いちばん壊れ方が速い項目です。締め切りに追われた1回の例外が、次の四半期には前例になります。例外を認めるなら、認めた人の名前と、その回に限ることを一緒に書いてください。書かずに通した例外は、翌期には手続きそのものとして扱われます。

5つ目も見落とされます。発表が終われば情報は公表済みになるので、記録を残す意味がないと考えてしまうからです。ところが、残す必要があるのは情報ではなく判断の経緯です。公表前の段階で誰が何を通したかは、公表後には再現できません。

公表前の情報を渡す前のチェックリスト

最後に、渡す直前に使う形にまとめます。印刷して手元に置くより、申請の様式に7行として埋め込むほうが実務では続きます。上から順に見て、答えがいいえになった時点で渡さない、という使い方です。

  • その情報は、取引所の開示の仕組みに載って誰でも見られる状態になっているか
  • なっていないなら、この案件の公表の時期を決めている責任者の役職と名前を言えるか
  • その責任者に、渡そうとしていることが伝わっているか。伝えた日付を書けるか
  • 中身が社外の人の目に触れる道が1本もないか。制作会社や派遣の担当者が画面を見られる位置にいないか
  • 公表を待てない理由を、業務の期限として1行で書けるか
  • 書けないなら、公表済みの材料だけで下書きを作る形に変えられないか
  • 渡すと決めたなら、渡した人・渡した日・渡した範囲を記録に残したか

7行のうち、実際に止まるのはほとんどが1行目と5行目です。1行目で止まるものは待てば解決します。5行目で止まるものは、仕事の順番を入れ替えれば解決します。どちらも、道具の設定を変えて解決する問題ではありません

まとめ

公表前の情報をAIに渡してよいかという問いは、漏れるかどうかの棚に置くと答えが出ません。置くべき棚は、公表の時期を誰が握っているか、です。確かめる4点は、公表前かどうか、時期を決めているのは誰か、社外の目に触れる道が1本でもあるか、待てない理由を書けるか。この4点で止まった案件は、待つか、公表済みの材料だけで組み直すかのどちらかになります。そして、公表前かどうかの線を引く役はAIではなく、時期を握っている人です。今週できることは2つです。案件名と責任者を並べた3列の一覧を1枚作る。既存のAI利用規程に、判断の主体を書いた1行を足す。この2つがあるだけで、次の決算発表の前に担当者が一人で悩む場面がなくなります

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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