掲載された記事は自社で使える?|許諾が要る使い方の線引き

「業界紙に取り上げてもらえたので、紙面をそのまま撮って自社サイトのお知らせに載せました。自社のことが書かれた記事ですし、宣伝になるので先方も喜ぶだろうと思っていました」「掲載された記事を提案書の最後のページに貼っています。営業が持ち歩く資料なので、社外に出しているという意識がありませんでした」。——掲載が決まった直後の広報と営業では、この2つはほとんど同時に起きます。手を抜いた結果ではありません。むしろ、掲載を成果として扱い、すぐ社内外に知らせたい会社ほど起きます。ずれているのは熱意ではなく、前提のほうです。本当は、取材を受けて記事に載っても、その記事の著作権が自社に来ることはありません。書いたのは記者で、権利は新聞社あるいは記者の側にあります。自社が主役として書かれていることと、その記事を自社が使えることは、別々に数えられます。この記事では、掲載された記事を自社サイト・営業資料・SNSでどこまで使えるのか、どの使い方に許諾が要り、どこに申し込むのかを整理します。
カメ先生掲載された記事は自社が主役なのだから自社で自由に使えると思われがちですが、記事の著作権は新聞社あるいは記者の側にあります。取材を受けた側に権利が移ることはありません。
カメ子自社について書かれた記事でも、他社の記事と同じ扱いになるということですか。
カメ先生使うという場面では、そうなります。書かれている内容が自社のことであることと、その記事という表現物を誰が作ったかは、別々に数えられるからです。だから使い方ごとに線を引き直すことになります。
カメ子許諾が要る使い方と、要らない使い方があるのでしょうか。
- 取材を受けて載った記事の著作権は新聞社あるいは記者の側にある。自社が主役でも、記事を複製して外に出す行為は他人の著作物の利用になる
- 実務でよくやる5つの使い方のうち、許諾なしで進めやすいのは見出しと掲載日を書いてリンクを張る形だけ。紙面画像の掲載、全文の転載、営業資料への貼り込み、SNSでの画像投稿は事前の申請が要る
- 申し込む先は掲載した新聞社。二次利用は原則有償で、許諾後は使わなくても料金が発生する社がある。AIには掲載一覧の作成と申請の下書きまでを任せ、使ってよいかの判断は人が持つ
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「自社が載った記事だから自社のもの」が最初のつまずき
掲載が決まってから広報がやることは、だいたい順番まで決まっています。紙面を写真に撮る、あるいは電子版の画面を保存する。それを自社サイトのお知らせに載せ、営業に配り、投稿で知らせる。掲載を成果として扱う会社ほど、この流れは手早く進みます。ところが、ここで起きているのは他人が作った著作物を複製して、送信して、社外に渡す行為です。
記事の著作権は、取材された企業の側にはありません。著作権の管理団体が出している解説でも、新聞記事の著作権は新聞社あるいは記者に帰属すると明記されています。取材に応じ、資料を出し、写真撮影にも協力した。それでも、記事という表現を作ったのは記者であり、見出しの付け方も紙面の構成も、掲載された写真も、新聞社の側の制作物です。自社が主役として書かれていることと、その記事を自社が使えることは、まったく別の話です。
気づくのが遅れる理由も共通しています。載せてもサイトは止まりませんし、提案書もそのまま配れます。誰からも何も言われない状態が何年も続きます。表に出るのは、媒体側の担当が偶然見つけたとき、同業で似た指摘が出て一斉に確認が始まったとき、あるいは上場や監査の準備で自社サイトを外部の目で洗ったときです。使えてしまうので、間違っていることに気づく機会がないという構造になっています。
ここで言いたいのは、掲載を紹介するなということではありません。第三者が自社を取り上げたという事実は、自社にとって価値のある事実であり、伝えてよい事実です。線が引かれているのは、その事実を伝えることと、記事という表現物をそのまま複製することの間です。次の章から、この線が具体的にどこにあるのかを、実務でよくやる5つの使い方に当てはめていきます。
「事実を伝えているだけだから著作物ではない」も外れる
もう1つ、社内でよく持ち出される理屈があります。著作権法には、事実の伝達にすぎない雑報および時事の報道は著作物に当たらないという趣旨の定めがあります。10条2項です。これを根拠に、報道には著作権が働かないのだから使ってよい、と説明されることがあります。
ただし、文化庁の見解として広く紹介されている整理は違います。そこでいう雑報とは、人事往来、死亡記事、火事や交通事故に関する日々のニュースなど、単に事実を羅列したにすぎない記事を指すのであって、一般の報道記事や報道写真はこれに該当せず、著作物として保護されるべきものだ、という読み方です。自社を取り上げた紹介記事は、まず後者に入ります。取材先の選び方、話のどこを拾うか、どの順で並べるか、見出しをどう付けるか。どれも記者が選んで作った表現だからです。
実務での使い方はこうなります。この記事は著作物か、を入口にしないこと。著作物かどうかの判定は、結局その記事の中身に踏み込む話になり、社内では決着しません。決着しないまま時間だけが過ぎ、最後は声の大きい人の意見で決まります。入口を自社の行為の側に置き換えると、話は一気に速くなります。複製するのか、送信するのか、社外の人に渡るのか。これなら自社がやることなので、確かめれば必ず分かります。
使い方を5つに分けると、答えが一度に出る
掲載記事で実際にやりたくなることは、数えると5つしかありません。紙面の画像を自社サイトに載せる、記事の全文を転載する、見出しと掲載日を書いてリンクを張る、営業資料や提案書に貼る、投稿で紹介する。この5つに、許諾が要るかどうかと申し込む先を当てはめたのが次の表です。
| やりたいこと | 許諾 | 申し込む先 | おさえどころ |
|---|---|---|---|
| 紙面の画像を自社サイトに載せる | 要る(有償が原則) | 掲載した新聞社 | 複製と送信の両方が起きる。切り抜きのデータが無いと紙面1ページ分の扱いになることがある |
| 記事の全文を自社サイトに転載する | 要る(通りにくい) | 掲載した新聞社 | 原本を読む必要がなくなる形なので条件が厳しい。要約も認めないと公表している社がある |
| 見出しと掲載日を書いてリンクを張る | 原則要らない | 条件の確認のみ | 媒体名を添える。本文の転載や要約は付けない。枠の中に記事を表示させない |
| 営業資料や提案書に貼る | 要る | 掲載した新聞社 | 社外の人に渡るので外部への提供。社内で回す枠組みでは足りない |
| 投稿で紙面の画像を紹介する | 要る(断られることもある) | 掲載した新聞社 | 外部への提供の典型。そもそも認めていないと公表している社がある |
表の読み方で1つだけ先に置いておきます。右に行くほど手間が増えるのではなく、3行目だけが性質の違う行です。1行目・2行目・4行目・5行目は、いずれも記事という表現物を自社の手で複製しています。3行目は複製していません。場所を指し示しているだけです。だから許諾の要否が分かれます。
もう1つ。許諾が要る行の「有償が原則」は、値段が付いているという意味にとどまりません。申請して審査を受け、条件の提示に同意して、そこで初めて許諾が出るという段取りを踏むという意味です。掲載の翌日に思い立って当日中に載せる、という進め方とは相性が悪い。ここを知らずに走ると、載せてから止めることになります。
紙面の画像を自社サイトに載せる:複製と送信が同時に起きる
いちばん多い形から見ます。紙面を写真に撮る、電子版の画面を保存する、切り抜きを読み取り機にかける。どれも複製です。著作権法21条は、著作者はその著作物を複製する権利を専有する、と定めています。撮り方が手元の端末か複写機かは関係ありません。元の紙面を手元に残さず撮っただけでも、複製は済んでいます。
自社サイトに置くと、ここに送信が重なります。誰でも見られる場所に置くので、複製とは別に、公衆への送信という行為が起きているという整理です。だから、社内のどこかに1枚保存しておくのと、サイトのお知らせに1枚貼るのとでは、必要な許諾の範囲が変わります。保存はしたが公開はしていない、という状態と、公開した状態は別の行為として数えられます。
料金の組み立てにも、知っておくと得な癖があります。ある地方紙が公表している条件では、記事の切り抜きのデータが無い場合は紙面の全ページのデータを使うことになり、全ページの料金をもらうと書かれています。つまり、自社が載った段落だけを使いたくても、切り抜きのデータが用意されていない記事なら、価格帯が1つ上がることがあるわけです。見積りは記事単位ではなく、出せるデータの単位で決まることがあります。
紙面に自社の建物や商品、社長の顔写真が載っている場合も同じです。被写体が自社であっても、撮影したのは新聞社の写真部であり、写真は写真で権利が働きます。自社が用意して提供した写真がそのまま使われている場合は事情が変わりますが、その場合でも紙面という形に組まれた状態で使うなら、紙面としての許諾の話になります。提供した写真を自社のサイトで使うのであれば、紙面ではなく元の写真を使えば話は簡単です。
記事の全文を転載する:いちばん通りにくい形
次に多いのが、記事の本文をまるごと自社サイトに書き写す形です。画像を貼るのは気が引けるが文字なら大丈夫だろう、という発想で行われます。実際には、これがいちばん通りにくい形です。全文が自社サイトにあれば、読者は元の媒体を見に行く理由がなくなります。媒体の販売や広告の収入に直接あたる形なので、条件は厳しくなります。
要約なら、と考えたくなりますが、ここにも段差があります。クリッピングを手がける事業者の著作権の解説では、見出しの文字列そのものに著作権はないとしたうえで、原本を読むのが不要になるほどの要約は翻案となり許諾が必要と整理されています。短くしたかどうかではなく、元を読まなくて済むかどうかが分かれ目だという読み方です。ある地方紙は、個別記事へのリンクの条件として、本文の転載も要約も認めないと明記しています。
引用という形なら、と考える人も必ず出ます。引用が認められるには、自社の部分が主で引用の部分が従であること、引用した箇所が明瞭に区別されていること、出典が明示されていることなどが求められます。要件そのものの解説はここでは立ち入りませんが、掲載記事の紹介では、この主従の条件でつまずくことが多いという一点だけ押さえてください。掲載を知らせたいという目的の性質上、自社の文章は数行の告知で、記事の側が大半を占める形になりがちだからです。伝えたいのが記事の中身ではなく載ったという事実なら、引用に頼らない書き方のほうが素直です。
見出しと掲載日を書いてリンクを張る:許諾なしで進む唯一の形
許諾を取らずに進めやすいのは、この形だけです。媒体名、掲載日、見出し、そして記事のページへのリンク。これだけを自社サイトに置きます。複製をしていないので、複製の許諾という話が出てきません。ある地方紙は、トップページへのリンクは申請不要、個別の記事ページへのリンクも申請は原則不要と公表しています。
ただし条件が付きます。同じ社の公表条件では、末尾に媒体名を添えて引用元を明記すること、本文の転載や要約を付けないこと、記事の全文や写真・動画を転載しないこと、そして枠の中に記事を表示させる形にしないことが挙げられています。最後の1つは見落とされがちです。自社サイトの中に窓を開けて、その中に相手のページを映す作りにすると、読者からは自社の中身のように見えるためです。
- 複製をしていないので、許諾の審査を待たずに掲載の当日から出せる
- 媒体側にとっても読者が誘導されるので、関係が悪くならない
- 有償の許諾を取る対象を、本当に紙面の画像が要るものだけに絞れる
- 掲載が増えても運用の手間がほとんど増えない
見出しそのものの扱いも触れておきます。2005年10月の知財高裁の判決では、報道の記事見出しは対象の内容を簡潔に正確に伝える性質があり、表現の選択の幅は広いとは言い難く、創作性を発揮する余地が比較的少ないとして、著作物性は否定されました。ただし表現いかんでは創作性を肯定し得る余地もあるとしたうえで、限度を超えた無断の反復利用には不法行為が成立すると判断されています。自社が載った1本を掲載実績として紹介するのと、他社の見出しを機械的に集めて並べ続けるのとでは、話が別だということです。
この形の弱点は1つだけで、リンクが切れることです。記事のページは数か月から数年で消えたり、有料の壁の内側に移ったりします。対策も1つで、媒体名・掲載日・見出しの3点は自社側に記録として残しておくこと。リンクが切れても、その日にその媒体に載ったという事実は消えません。実績の一覧としては、リンクが無くても十分に成り立ちます。
営業資料や提案書に貼る:社外に渡る時点で外部への提供
提案書の最後に掲載紙の写真を1枚、という使い方は、広報より営業のほうで静かに広がります。サイトに載せるわけではないので、公開しているという感覚が持ちにくいためです。ところが、提案書は社外の人に渡るための資料です。複製して社外に渡す行為なので、外部への提供として扱われます。
線の引きどころは、社内か社外かです。会議の資料として社内の人だけで見るのか、客先に持って行って置いてくるのか。ここで枠組みが変わります。データで送る、印刷して渡す、画面に映して見せるだけ。この3つの渡し方も別々に数えられます。申請では、どの渡し方で、どれくらいの相手に届くのかを書くことになるので、先に決めておかないと申請の欄が埋まりません。
展示会で配るチラシ、採用の案内、株主向けの資料、社史。どれも同じ扱いになります。1回だけ使うのか、当面ずっと使うのかでも条件が変わります。許諾には期間が付くのが普通なので、作ったら3年使い続ける類の資料ほど、期間の確認が要ります。刷ってしまった紙は、期間が切れても自動では回収されません。
実務では、掲載記事を貼るのをやめて、掲載の事実だけを書く会社も多くあります。媒体名と掲載日と見出しを1行ずつ並べ、画像は載せない。これなら複製がないので申請が要りません。紙面の画像が本当に必要なのは、記事の中身そのものが提案の根拠になる場面だけです。そこを見分けると、申請の対象はかなり絞れます。
投稿で紹介する:外部への提供の典型で、断られることもある
掲載の当日にいちばん起きやすいのが、紙面を撮って投稿する形です。速さが価値になる場なので、確認の前に手が動きます。ここは明確です。2024年度の文化庁の著作権セミナーで日本複製権センターの事務局長が示した資料には、外部への提供は原則としてクリッピング契約には含まれず、すべて事前申請による新聞社の許諾取得が必要と明記され、その例として投稿に記事を掲載する行為が挙げられています。
さらに、この使い方は申請しても通らないことがあります。ある地方紙は、利用を認めない場合の一覧に、事件・事故・裁判に関係する著作物などと並べて投稿での利用そのものを挙げています。画像が保存され、切り出され、別の文脈に貼り直されることを織り込んだ判断だと読めます。つまり、この形は許諾が要るだけでなく、そもそも枠の外に置かれていることがあります。
代わりの形は決まっています。自社サイトに掲載を知らせるページを1枚作り、そこには媒体名・掲載日・見出しと記事へのリンクだけを置く。投稿ではその自社ページを共有します。速さは落ちませんし、複製もしていません。掲載が積み上がれば、そのページ自体が実績の一覧になります。
もう1点、社員の個人の投稿も見ておいてください。会社が依頼して投稿してもらった、あるいは投稿を評価の対象にしている場合、会社の行為として見られる余地が出ます。掲載の連絡を社内に流すときに、紙面の画像は付けず、自社の告知ページのリンクだけを添えて回す。これだけで、善意で撮って投稿してしまう事故はほぼ止まります。
社内で回すための契約は、対外利用の許可にはならない
ここで、広報からいちばんよく出てくる反論を置いておきます。「うちは記事の利用について契約しているから大丈夫」というものです。この契約はたいてい2種類のどちらかで、いずれも組織の内部で回すための枠組みです。掲載記事を対外的に使う許可ではありません。
1つは、著作権を集中して管理している団体との包括の許諾です。この許諾の範囲は譲渡を目的としない複写、つまり組織内部での利用と説明されており、対象範囲も少範囲・少部数・小規模と条件が付いています。公表されている条件では、出版物全体の3割か60ページのいずれか少ないほう、紙への複写は20部以内、電子的な複製は30人までの共有とされています。もう1つは各新聞社との切り抜きの契約で、これは利用者と新聞社の個別契約です。期間は4月から翌年3月までの年間契約になることが多く、料金は利用の形と共有する人数を勘案して決まることが多いとされています。
どちらも、自社サイトに載せる、提案書に貼って客先に渡す、投稿するという行為には届きません。届かないことは、先ほどの文化庁のセミナー資料にはっきり書かれています。内部で回す契約があることは、外に出してよい理由にはならない。この1点を広報と営業と情報システムの3者で共有しておくだけで、事故の多くは防げます。
- 社内で回す複製そのものにも許諾の要否があり、業務目的の複製は私的使用のための複製にはあたらないというのが通説・判例の立場です。この記事はあくまで対外的な利用が主題なので、社内で回す運用の作り方には立ち入りません。自社の内部利用の枠組みがどうなっているかは、総務か情報システムの担当に確認してください
実際に表沙汰になった例もあります。先の資料では、ある鉄道の運行会社が新聞記事を読み取って社内の共有環境に掲載していた著作権侵害の事例として、2022年10月に地裁の判決が報じられ、2023年6月8日に知財高裁の判決も出ていることが紹介されています。また2023年2月には、ある市が地元紙の記事を許諾なく電子化してファイルの共有に置いていた疑いが報じられました。内部の運用ですら訴訟や報道になっているのですから、外に出す行為の扱いはなおさら慎重に見られます。
誰に、いつ、何を書いて申し込むか
申し込む先は、掲載した新聞社です。各社のサイトに著作物の利用申請の案内があり、申込用紙やフォームが用意されています。どこに問い合わせればよいか分からない場合は、新聞著作権協議会のサイトに各社の連絡先の一覧がまとまっているので、そこから当たるのが早道です。通信社が配信した記事や写真が紙面に載っている場合は権利者が異なることがあるため、まず掲載紙に尋ねて、どこに申し込むかを確かめます。
いつ動くかも決まっています。ある地方紙は、審査には日数がかかることがあり、急な問い合わせには応じかねる場合があると明記しています。つまり、掲載日から逆算するのでは間に合いません。取材を受けた時点、遅くとも掲載日が伝えられた時点で、使い道を決めて申請に入る。掲載の当日は、リンクの告知だけで済ませる前提にしておくと、待ち時間で困りません。
自社サイトか、提案書か、採用の案内か。渡し方は紙かデータか画面か。届く相手の数と、いつまで使うか。ここが決まらないと申請書の欄が埋まらない。
料金の考え方、認めない類型、リンクの条件、申し込みの方法。社ごとに違うので、毎回その社のページを見る。
配信の記事や写真は権利者が別のことがある。紙面に載っている図版や、他社が提供した写真も同様。掲載紙に尋ねて確かめる。
審査の後に条件と料金が提示され、同意して初めて許諾が出る。この段階までは使えない。
どの記事を、どの用途で、いつまで、どの範囲で使ってよいのか。許諾の文面を資料そのものと同じ場所に保管する。
期限の30日前に通知が飛ぶようにしておく。サイトの画像も、刷った資料も、期限が来たら自動では止まらない。
申請に書く内容は、どの社でもだいたい同じです。どの記事か(掲載日・朝夕刊の別・面・見出し)、何に使うか、どの形で使うか、どれだけの期間使うか、どれくらいの相手に届くか。この5つを先に決めるだけで、申請そのものは1時間もかかりません。時間がかかるのは、社内でこの5つが決まらないときです。
いくら見ておけばよいか:有償が原則という前提で組む
二次利用は原則として有償です。ある地方紙は、記事・写真・動画の二次利用は原則有償であり、実際に利用しなくても提示した料金を受け取ると明記しています。とりあえず申請しておいて、使うかどうかは後で決める、という進め方が成り立たないということです。使うと決めてから申請する。順番はこちらになります。
金額の感覚も持っておくと、社内の話が早くなります。2026年9月の時点で確認できた、ある地方紙の公表している基本料金は、1点あたりで次のようになっていました。自費出版・社内報・ホームページに使う場合は記事3,000円、写真3,000円、紙面の全ページなら10,000円。セミナーの資料や書籍に使う場合は記事5,000円、写真5,000円、全ページなら10,000円。放送で使う場合はこれより大きく上がります。1本の掲載を自社サイトに載せるだけなら、数千円の単位から始まるという感覚です。
- ここに挙げた金額は、2026年9月に1社の公表資料で確認した値です。料金の考え方も金額も新聞社ごとに異なり、改定もされます。自社が載った媒体の公表している条件を、そのつど確かめてください。全国紙と地方紙、業界紙でも組み立ては違います
予算の立て方には工夫が要ります。掲載がいつ何本出るかは事前に読めないので、案件ごとに稟議を起こしていると、そのたびに1週間が溶けます。前年に何本載ったかの実績から年間の枠を先に取っておき、1件あたりの上限を決めて広報の裁量で処理できるようにする。金額が小さいのに決裁が重いことが、申請せずに使ってしまう最大の理由だからです。
なお、社内で回すための枠組みの費用は、これとは別勘定です。参考までに、ある管理団体の包括の許諾では、2024年4月の時点で従業員1人あたり年間240円(電子的な複製を含む場合)、100円(複写のみの場合)という標準の単価が示されていました。こちらは内部利用の話なので、掲載記事を外に出す費用としては使えません。2つの財布があると理解しておくと、社内の説明で混乱しません。
お金を払っても断られる使い方がある
許諾は買えるとは限りません。ある地方紙は、利用を認めない場合として具体的な類型を公表しています。報道の自由を侵したり社の品位・信用を傷つけるおそれがある場合、事件・事故・裁判に関係する著作物、人権・肖像権・プライバシーの保護が必要な著作物、政治活動や訴訟を目的とする利用、そして投稿での利用です。広告に使いたいという申請ほど、審査は慎重になります。
- 記事の一部だけを切り出して、自社に都合のよい評価に読めるように並べる。品位・信用に関わる条項に触れる
- 訴訟や交渉の材料として記事を複製して相手方に示す。目的の段階で認められないことがある
- 許諾を取った記事を、後から別の資料や別の媒体に流用する。許諾は用途と期間を指定して出ている
- 許諾の条件を満たさないまま公開し、指摘されてから申請する。条件に反した場合は許諾の取り消しと損害賠償の請求があり得ると公表されている
- 掲載の記念に紙面の画像を投稿し、後から削除する。一度出た画像は保存され、削除しても回収できない
直し方は、どれも順番の問題です。使い道を決めてから申請する。申請の前に、その社が認めない類型に自分の用途が入っていないかを読む。許諾が出たら、用途と期間を資料そのものと一緒に記録する。流用したくなったら、そのつど申請し直す。後から許諾を取れば済む、という前提を捨てるのが出発点です。
断られたときの代替も、先に考えておくと慌てません。紙面が使えないなら、媒体名と掲載日と見出しとリンクだけを置く。記事の内容を伝えたいなら、記事を写すのではなく、取材で自社が話した内容を自社の言葉で書き直して、そこにリンクを添える。自社が話したことは自社の言葉で書けるので、これは許諾の対象になりません。
掲載の当日にやることと、使う前にやることを分ける
運用に落とすときのこつは、工程を2つに割ることです。掲載の当日にやるのは、記録と告知だけ。使うための申請は、別の工程として日を分けます。この分け方をしないと、掲載の高揚感のまま複製が始まります。
当日にやることは3つです。媒体名・掲載日・朝夕刊の別・面・見出しを記録する。記事のページのリンクを控える。自社サイトの掲載を知らせるページに1行追加する。ここまでは複製をしていないので、誰の許可も要りません。紙面を撮ること自体は止めなくてよいのですが、撮った画像を社内の誰でも見える場所に置くと、そこから流出が始まります。撮った画像は広報の管理下に置く、というだけの決めごとで足ります。
使う前にやることは、前の章の順番のとおりです。加えて、許諾には期間があるという一点を、資料の管理台帳のほうに書いておいてください。サイトに貼った画像も、刷ってしまった提案書も、期限が来たら自動では止まりません。期限の30日前に通知が飛ぶようにしておき、取り下げるか再申請するかをそこで決めます。
社内の窓口も一本化しておきます。広報、営業、人事の採用、経営企画がそれぞれに申請すると、同じ記事で重複した申請が出て、媒体側の心証も良くありません。申請は広報に集約し、使いたい部門は用途と期間を広報に伝える形が最も軽く回ります。どの部門がどの記事を使いたがるかは、半年も運用すれば見えてきます。
AIに任せてよい工程と、人が決める工程を作業名で分ける
この仕事は、読む資料の量に対して判断の量が少ない仕事です。媒体ごとの利用条件のページ、自社の掲載の履歴、申請の用紙。だからAIに任せられる部分はあります。ただし、最終的には人が確認する、という言い方では運用に落ちないので、作業の名前で分けます。
| 作業 | AIに渡すか | 理由と条件 |
|---|---|---|
| 掲載の履歴を媒体名・掲載日・見出し・リンクの一覧に整える | 渡せる | 転記の作業。出どころのページを必ず添えさせ、推測で埋めさせない |
| 各媒体の利用条件のページから、料金と申し込み方法の記載を抜き出す | 渡せる | 文字の抽出。どのページのどの見出しの下から取ったかを添えさせる |
| 申請書の下書きを作る | 渡せる | 用途・期間・範囲を人が決めたうえでの清書。文言の確定は人が行う |
| 社内向けの説明文や、部門への案内の下書きを作る | 渡せる | 言い回しの下書き。数値と条件は人が差し替える |
| 許諾の期限の一覧を作り、近い順に並べる | 渡せる | 並べ替えの作業。通知を出す判断と実行は人が持つ |
| この使い方に許諾が要るかどうかの判断 | 渡さない | 自社の行為の当てはめ。外すと公開したまま気づかない |
| この記事を対外的に出してよいかの決め | 渡さない | 媒体との関係と自社の評価に関わる。責任を負う人が決める |
| 申請の内容の確定と送信 | 渡さない | 相手に届く意思表示。誤りがそのまま条件になる |
渡すときの条件は2つです。1つめは、どの文書のどこを見てそう言ったのかを必ず添えさせること。媒体の名前とページの見出しがあれば、人の確認は数十秒で済みます。出どころの無い出力は、確かめる時間のほうが長くなるので結局は使われなくなります。
2つめは、空欄を空欄のまま残させることです。掲載の一覧を作らせると、リンクが切れている記事や、条件のページが見当たらない媒体の欄が必ず空きます。ここを埋めようとすると、他の媒体の記載から類推した内容が入ります。一覧としては見栄えが良くなり、判断の材料としては最も危ない形です。空欄は、その媒体にまだ確認できていないという事実を示す情報です。
人が読む範囲も先に決めます。全部読むという決め方は、忙しい週には何も読まないのと同じ結果になります。実務的な線は、許諾の要否に直接つながる欄だけを毎回人が読み、転記の欄は出どころの記載があるかだけを確かめる、という置き方です。掲載が増えても、人が読む量はほとんど増えません。
使う前に確かめる項目一覧と、半年で見る数字
ここまでを1枚にまとめます。掲載された記事を何かに使う前に、この一覧が埋まっているかを確かめてください。埋まらない欄があるなら、その欄が公開の日を決めます。
- どの記事か。媒体名・掲載日・朝夕刊の別・面・見出しが特定できているか
- 権利者は掲載紙か。配信の記事や、他社が提供した写真が含まれていないか
- 使い道は何か。自社サイトか、提案書か、採用の案内か、投稿か
- 複製が起きるか。紙面の画像や本文を自社の手で複製するのか、リンクで指し示すだけか
- 社外の人に渡るか。渡るなら、紙かデータか画面かと、届く相手のおおよその数
- いつまで使うか。期限が切れたときに、誰が取り下げるか
- 掲載紙が認めない類型に、自社の用途が入っていないか
- 申請から許諾までに何日かかるか。掲載日に間に合わない場合、当日は何を出すか
- 許諾の文面と条件を、その資料と同じ場所に保管できているか
よくある失敗も、5つに絞れます。どれも道具や文章の巧拙ではなく、順番と範囲の問題です。
- 掲載の当日に紙面を撮って、その日のうちにサイトと投稿に出す。申請の時間が構造的に取れない
- 社内で回すための契約があることを、対外的に使ってよい根拠だと思っている
- 営業が提案書に貼っているのを、広報が把握していない。社外に渡っていることに誰も気づかない
- 許諾を取ったが期間を記録していない。数年後に期限切れのまま公開が続く
- 掲載実績のページに紙面の画像だけを並べ、媒体名と掲載日を書いていない。許諾の対象が特定できず、後から確認もできない
効いているかどうかは、半年で4つの数字を見ます。1つめは、掲載のうち媒体名・掲載日・見出し・リンクが記録できている割合。2つめは、複製をともなう利用のうち許諾の文面が保管されている件数。3つめは、掲載日から告知までの日数。4つめは、期限切れで取り下げた件数です。
読み方も先に決めておきます。4つめの取り下げがゼロなら、うまくいっているのではなく、期限を管理していないか、そもそも許諾を取らずに使っているかのどちらかを疑います。3つめが1日なら速くて良いのではなく、複製をともなう使い方をしていないかを確かめる合図です。速さを褒める指標だけを置くと、申請を飛ばすことが最適な行動になります。見たいのは、記録が残っているかと、期限で止められているかの2つです。
まとめ
取材を受けて記事に載っても、その記事の著作権は自社に来ません。書いたのは記者であり、見出しも紙面の構成も掲載された写真も新聞社の側の制作物です。この前提に立つと、実務でやりたくなる5つの使い方は、きれいに2つに分かれます。紙面の画像を自社サイトに載せる、全文を転載する、営業資料や提案書に貼る、投稿で紙面を紹介する。この4つはいずれも記事を自社の手で複製して外に出す行為なので、掲載した新聞社への事前の申請と許諾が要ります。残る1つ、見出しと掲載日を書いてリンクを張る形だけが、複製をともなわないので許諾なしで進みます。媒体名を添える、本文の転載や要約を付けない、枠の中に記事を表示させない。この3つの条件を守れば、掲載の当日から出せます。社内で回すための契約を結んでいても、それは内部で回すための枠組みであって、外に出してよい根拠にはなりません。申し込む先は掲載した新聞社で、窓口が分からなければ新聞著作権協議会のサイトに各社の連絡先の一覧があります。二次利用は原則として有償で、審査には日数がかかり、認めない類型も公表されています。使うと決めてから申請する、という順番になります。
運用に落とすときは、工程を2つに割ってください。掲載の当日にやるのは記録と告知だけ。媒体名・掲載日・面・見出し・リンクを控えて、自社の掲載を知らせるページに1行足す。複製をともなう使い方は日を分けて、用途・渡し方・届く範囲・期間の4つを決めてから申請に入ります。許諾には期間があるので、資料の台帳に期限を書き、30日前に通知が飛ぶようにしておく。サイトの画像も刷った資料も、期限が来ても自動では止まりません。AIに任せられるのは、掲載の一覧を整えること、各媒体の利用条件から料金と申し込み方法を抜き出すこと、申請書や社内向けの説明の下書きを作ることまでです。出どころを必ず添えさせ、確認できていない欄は空欄のまま残させてください。この使い方に許諾が要るか、この記事を対外的に出してよいか、申請の内容を確定して送るか。この3つは人が持ちます。まずは自社サイトに掲載を知らせるページを1枚作り、媒体名と掲載日と見出しとリンクだけを積むところから始めてください。許諾が要る使い方は、そのうえで本当に必要なものだけに絞れます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
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