セキュリティチェックシートのAI設問|答え方と証跡の揃え方

セキュリティチェックシートのAI設問|答え方と証跡の揃え方

「取引先の確認票に生成AIの利用を問う欄が増えていて、そこから先が進みません」「利用ありと書いて返したら、追加の質問票が32問届きました」——AIを業務に入れた会社から、この一年で急に増えた相談です。相手の審査が厳しくなったから重くなった、という話ではありません。本当は、社内でのAIの把握が「使っています」で止まっていて、設問が求める細かさに答えが届いていないことから起きています。この記事では、AIの利用について実際に聞かれる項目、差し戻されない答え方の型、そして同じ様式を裏返して自社がベンダーへ確認するときの骨格までを整理します。


カメ先生カメ先生

確認票が埋まらないのは規程が足りないからだと思われがちだけれど、本当は答えを書く単位が食い違っているんだ。


カメ子カメ子

単位というのは、何と何の単位でしょうか。


カメ先生カメ先生

相手はサービス1つずつ、設定1つずつに聞いてくる。ところが社内では生成AIをひとまとめにして把握していることが多くてね。答えが一段粗いから、そのたびに追加で聞かれることになる。


カメ子カメ子

最初の答えが粗いせいで、往復が増えるということですね。


この記事のポイント
  • 確認票が重くなる原因は規程の不足ではない。社内の把握がサービスと設定の単位まで下りていないこと
  • AIについて聞かれる設問は9つの型に収れんする。該当・統制・証跡・例外の4欄で書くと差し戻しが止まる
  • 同じ様式は裏返して使える。ベンダーへ確認する骨格は、政府の調達チェックシートが21の要求事項として公開している

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目次

場面:利用ありと1か所に書いた後、締め切りを一度延ばした

具体的な場面を1つ置いて、記事の最後まで同じ題材で追います。業務用の計測機器を作り、大手の製造業に納めている従業員500人規模の会社です。取引先からのセキュリティ確認票は以前から毎年届いていました。ところが今年届いた様式には、生成AIの利用有無、利用しているサービスの名称、入力する情報の区分という3つの欄が新しく足されていました。様式そのものは同じ体裁なので、担当者は例年どおり30分で終わると考えていました。

窓口は営業部です。担当者は、社内で対話型のAIを試験的に使っていることを知っていたので、利用ありに丸を付けて返しました。2週間後、追加の質問票が届きます。設問は32問、回答期限は10日。ここから社内の往復が始まりました。営業は中身が分からず、情報システム部門は現場が何を入力しているかを知らず、実際に使っているマーケ部門は契約の条件を知らない。3つの部署がそれぞれ3分の1ずつしか答えを持っていない状態で、10日が過ぎていきました。

最後まで書けなかった欄は3つでした。どのサービスにどの区分の情報が入っているかの一覧、入力した内容が学習に使われない設定になっていることを示す資料、そして出力を人が確認した記録です。締め切りを一度延ばして提出し、その年の取引は続きました。ただし翌年の様式には、同じ3つがより細かい聞き方で戻ってきます。この記事は、この会社が翌年までに何を用意すればよかったのかという順番で進みます。

AIの設問が聞いているのは、規程ではなく設定と記録

多くの会社が最初に手を付けるのは規程の整備です。生成AIの利用ルールを作り、機密情報を入力してはならないと書く。これ自体は必要ですが、AIに関する設問は規程を聞いていません。聞かれているのは、入力していないことをどうやって確かめているのか、その確かめた跡がどこにあるのか、という2点です。規程は「決めたこと」であって、決めたとおりに動いた証拠ではありません。

もう1つの特徴は、AIの欄が設定値を尋ねてくることです。入力した内容が学習に使われない設定になっているか、履歴は何日残るか、保存先はどの国か、管理者は誰で退職時にどう外すか。これらは規程集のどこにも書いてありません。答えは管理画面の中にあります。つまり回答を作る作業は、文書を探す作業ではなく、契約書と管理画面の現況を突き合わせて書き写す作業です。ここを取り違えると、法務や総務だけで抱え込んで止まります。

この違いは、確認票の運用実務を解説した資料でも同じ形で指摘されています。マネーフォワードが運営する情報システムの管理サービスが公開した解説記事(2026年4月12日公開、2026年8月6日最終更新)は、確認票を「委託先や導入予定のクラウドサービスが十分な情報保護対策を講じているかを事前に確認・評価するための質問票」と定義したうえで、AI関連で標準的に追加されるようになった設問として、AIモデルによる入力データの学習有無、事実と異なる出力の制御、機密データの外部流出対策の3つを挙げています。いずれも規程ではなく実装と運用を問う設問です

原因1:社内の把握はツール単位、設問はサービスと設定の単位

最初の原因は、棚卸しの粒度です。社内で「生成AIを1種類使っています」と整理していても、実際に動いているものはもっと分かれています。ブラウザで開く対話サービス、表計算や文書作成ソフトに組み込まれた補助機能、画像や資料を作る制作ソフトの生成機能、問い合わせ対応の自動応答。提供元も契約の型も保存先も違うものが、社内では1つの言葉でまとめられています。確認票はこの1つずつに答えを求めます。

さらに厄介なのは、同じ提供元の同じ名前でも、契約の型が違えば入力の扱いが変わることです。個人が無料で使う形、部署が有料で使う形、会社が法人契約で自社専用の環境を用意する形。この3つは、学習への利用も履歴の保存も別の条件になります。棚卸しの単位を製品名ではなく契約と環境の単位に落とすと、確認票の設問と1対1で並ぶようになります。

実務では、表を1枚作るところから始めます。列は、サービス名、契約の型、使っている部署、入れてよい情報の区分、学習利用の設定、履歴の保存日数、保存先の国、管理者、最終確認日の9つ。行数は多くて構いませんが、最終確認日の空欄だけは許さないことが要点です。日付のない行は、確認票に転記した瞬間に根拠を失います。この表があれば、32問のうち半分は転記だけで埋まります。

原因2:AIの欄だけ、答える細かさが様式ごとに違う

従来のセキュリティ設問には長い蓄積があり、答えの型がほぼ決まっています。有か無か、規程の番号、認証の登録番号、直近の点検日。ところがAIの設問は歴史が浅く、聞き方が会社ごとにばらばらです。「生成AIを利用していますか」の1問で終わる様式もあれば、モデルの提供元、推論が行われる国、学習への利用可否、出力の確認手順、事故時の連絡先まで刻んでくる様式もあります。

この差に、そのつど手作業で合わせようとすると破綻します。1社ごとに社内を聞いて回ることになり、答えの中身も微妙に食い違うからです。食い違った回答が2社に渡ると、後で辻褄を合わせられなくなります。対処は逆向きです。相手の様式に合わせるのではなく、自社側で先に一番細かい粒度を決めておき、聞かれ方が粗ければ束ねて出す、細かければそのまま出す、という形にします。

一番細かい粒度は、前節の9列の表がそのまま基準になります。粗い聞かれ方をされたときは、表の行をまとめて「対話型の生成AIを2契約、文書作成の補助機能を1契約」と書けば足ります。逆に細かく聞かれたときは、行をそのまま渡します。台帳が1つあり、そこから切り出すだけという形にすると、往復の回数が目に見えて減ります。回答の速さより、社内で言うことが揃っていることのほうが効きます。

原因3:窓口と回答者が分かれ、社内で往復する

3つ目の原因は人です。確認票は取引の書類なので営業に届きます。ところが中身を知っているのは情報システム部門とAIの導入担当で、実際に入力しているのは現場です。届く場所と、答えを持っている場所と、事実が起きている場所が、全部違います。冒頭の場面で10日が溶けたのはこの構造のためで、担当者の怠慢ではありません。

直し方は単純です。回答責任者を1人置き、設問の束ごとに一次回答者を先に割り付けておきます。会社と体制の設問は総務、システムと設定の設問は情報システム部門、AIの利用実態の設問は導入担当、契約と再委託の設問は法務、というように、様式が届く前に割り付けを終えておくのが要点です。届いてから割り振ると、そこで3日使います。

ここで同時に決めておきたいのが、AIに判断させない範囲です。回答の下書きをAIに手伝わせることはできますが、該当するかしないかの判定と、証跡があると言い切る判断は人が行うと先に決めておきます。この線を引かないまま作業を始めると、後で回答の根拠を聞かれたときに誰も答えられません。確認票の回答は対外的な表明であって、社内メモではありません

AIの利用について実際に聞かれる9つの項目

ここまでの原因を踏まえて、聞かれる中身を整理します。様式は会社ごとに違いますが、AIに関する設問は下の9つの型に収れんします。左から、設問の型、相手が確かめたいこと、答えの出どころです。出どころの欄が空いている項目が、そのまま準備の宿題になります

設問の型相手が確かめたいこと答えの出どころ
利用の有無と範囲どの部署のどの業務で使っているか利用台帳
契約の形法人契約か、個人が無料で使っているか契約書と請求の記録
入れてよい情報顧客から預かった情報を入れていないか情報区分の定義と教育の記録
学習への利用入力が学習に使われない設定か管理画面の控えと契約条項
保存の場所と期間どの国に、何日残るか提供元の仕様書
権限と認証管理者は誰か、退職時にどう外すか権限一覧と手順書
出力の確認人が確かめる工程があるか確認記録の様式
事故時の連絡誰が何時間以内に知らせるか連絡体制の一覧
再委託外注先のAI利用をどう縛っているか業務委託契約の条項

9つのうち、多くの会社が最初に詰まるのは4番目と7番目です。学習への利用は、契約書に書いてあることと管理画面の設定が食い違っている場合があり、どちらか片方だけを見て答えると事実と違う回答になります。出力の確認は、実際にはやっているのに様式がないため記録が残っておらず、「やっています」としか書けません。この2つを先に潰すと、回答の質が大きく変わります。

9番目の再委託も見落としやすい項目です。記事や資料の制作を外部の会社に出している場合、その会社が生成AIを使っているかどうかまでが確認の対象になります。個人情報保護法は、個人データの取扱いを委託するときに委託先への必要かつ適切な監督を求めています。自社が使っていなくても、外注先が使っていれば答える義務は自社側に残ります

答えは4つの欄に分けて書く

設問の型が分かったら、次は書き方です。1つの設問に対して、4つの欄を必ず埋める形に固定します。1つ目は該当の有無、2つ目は該当する場合の統制、3つ目は証跡の名前と最終更新日、4つ目は例外とその補償措置です。この4欄のうち3つ目が抜けている回答が、最も差し戻されます

2つ目の統制の欄には、誰が、いつ、何をするかを書きます。「管理者が定期的に確認しています」は統制の記述になっていません。「情報システム部門の管理者が四半期ごとに管理画面の設定を確認し、確認日を台帳に記録している」であれば、相手はその通りかどうかを検証できます。検証できる形で書かれているかどうかが、回答の質そのものです

4つ目の例外の欄を用意しておくことには、実務上の意味があります。全社で完全に守られている統制はほとんど存在しないからです。「営業部の3名のみ、外出先での下書き作成に限り個人契約の利用を認めている。その端末には顧客情報を保存せず、月次で利用記録を提出させている」と書けば、例外があること自体は問題になりません。例外を隠して一律に守っていると書くほうが、後で見つかったときに致命的です

「対応しています」が差し戻される理由

差し戻される回答には共通の型があります。実際によく見る書き方を並べます。どれも嘘ではないのに、相手の側で確かめようがないため、追加の質問を呼びます。

  • 「社内規程で禁止しています」——禁止したことと、守られていることは別。守られている確かめ方が書かれていない
  • 「適切に管理しています」——誰が何をいつやるのかが1つも書かれておらず、検証できない
  • 「今後対応予定です」——期日も担当も書かれていない。予定は統制ではない
  • 「該当なし」——本当に該当しないのか、把握していないだけなのかが読み取れない
  • 「ベンダーが対応しています」——自社の責任範囲との境目が書かれておらず、事故時に宙に浮く

同じ内容を4欄で書き換えると、追加の質問が来なくなります。たとえば学習への利用の設問であれば、該当の欄に「法人契約の対話型サービス1件を利用」、統制の欄に「情報システム部門の管理者が学習利用をオフに設定し、四半期ごとに設定を確認して台帳に記録」、証跡の欄に「AI利用台帳、最終更新2026年7月31日/管理画面の設定控え、取得日2026年7月31日」、例外の欄に「なし」と書きます。4行で済み、相手は追加で聞く必要がありません

書き換えのときに効く小さな工夫が2つあります。1つは、証跡の欄に日付を必ず入れること。もう1つは、回答の中に相手の様式で使われている言葉をそのまま使うことです。相手が「入力データの二次利用」と書いているなら、こちらも「二次利用」で答えます。言い換えると、読む側が同じ話かどうかを判断する手間が生まれ、それが追加の質問になります。

実務仕様:先に用意する6点と、揃える順番

確認票が届いてから作れる資料はほとんどありません。届く前に用意しておく資料は6点です。AI利用台帳、情報区分の定義、管理画面の設定控え、出力確認の記録様式、事故時の連絡体制、教育の実施記録。この6点で、AI関連の設問のおおむね8割が埋まります

STEP1
使っているものを契約の単位で洗い出す

部署ごとに申告してもらい、請求書と突き合わせます。申告漏れが必ず出るので、申告と請求の両方から寄せるのが要点です。ここで作った表が9列の台帳になります。

STEP2
入れてよい情報の区分を3段で定義する

入れてよい、条件付きで入れてよい、入れてはならないの3段で足ります。区分の名前は既にある情報管理規程の言葉に合わせ、新しい言葉を作らないようにします。

STEP3
管理画面の設定を画面ごと控える

学習への利用、履歴の保存日数、保存先、管理者の一覧の4か所を控えます。控えには取得日を書き込みます。日付のない控えは証跡になりません。

STEP4
出力を確認した記録の様式を1枚作る

確認した人、日付、対象、直した箇所の4欄で足ります。全件を確認する運用は必ず崩れるので、外に出るもの、数字が入るもの、人の評価に関わるものに範囲を絞ります。

STEP5
回答の雛形を4欄で作り、責任者を決める

9つの設問の型ごとに雛形を作り、一次回答者を割り付けます。責任者は1人、差し戻しはその人に集約します。

  • 設定の控えは取得日が命。半年前の控えを出すと、その半年で仕様が変わっていないことを別途聞かれる
  • 教育の記録は受講者名簿だけでなく、教えた内容の版と日付まで残す。内容が分からないと有効性を判断できない
  • 台帳は共有の表計算で足りる。専用の道具を入れるより、更新が続く場所に置くほうが優先

6点のうち最も後回しにされやすいのが、出力確認の記録様式です。確認そのものは現場でやっているのに、様式がないので残らない。結果として、確認票では「目視で確認しています」としか書けなくなります。様式がない記録は、存在しない記録と同じ扱いになります

答えられない項目に、どう答えるか

すべての設問に丸を付けられる会社はありません。問題は、答えられないときの書き方です。空欄、非該当、対応予定の3つは、いずれもほぼ確実に差し戻されます。空欄は読み飛ばしと区別がつかず、非該当は把握していないだけかもしれず、対応予定は期日がなければ何も約束していないのと同じだからです。

代わりに、4つの要素で書きます。現状はどうなっているか、なぜそうなっているか、その代わりに何をしているか、いつまでに誰が何をするか。たとえば履歴の保存日数を提供元が公開していない場合、「提供元が保存日数を公表していないため回答できない。代替として、入力してよい情報を機密度の低い区分に限定し、月次で入力内容の抽出点検を行っている。2026年12月末までに情報システム部門が提供元へ照会し、回答を台帳に追記する」と書きます。答えられないことより、答えられないと分かっていないことのほうが不安を与えます

もう1つ実務で効くのは、答えられない項目を社内で数えておくことです。今年答えられなかった項目が翌年も同じなら、それは統制が動いていないという意味になります。確認票は年次の自己点検表としても使えます。回答を提出したら控えを残し、答えられなかった項目に期日を付けて次年度の宿題にする。この回し方にすると、確認票が負担から点検の道具に変わります。

物差しを外から借りる:10大脅威と、動き始めた評価制度

なぜ確認票が急に重くなったのかを、社内で説明する必要が出ることがあります。相手の気まぐれではないことは、公的な資料で示せます。IPAが2026年1月29日に公開した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの1位がランサム攻撃による被害(11年連続11回目)、2位がサプライチェーンや委託先を狙った攻撃(8年連続8回目)、そして3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出で入りました。組織編の解説書は2026年3月12日に公開されています。

2位と3位が並んだことの意味は、実務的にはこう読めます。取引先を経由した侵入が長年の上位にあり、そこにAIという新しい経路が加わった。だから相手は、自社の取引先である読者の会社に対して、AIの経路を尋ねるようになりました。設問が増えたのは審査担当者の趣味ではなく、社内で説明を求められる側になったからです。

同じ流れの中で、業界共通の物差しも動き始めています。経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室の監督のもとでIPAが運営する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」は、制度構築方針が2026年3月27日に公表されました。評価は段階に分かれ、3段階目は専門家の確認を付けた自己評価で要求事項が26件、4段階目は第三者による実地審査と技術検証で要求事項が43件、その上の段階は検討中とされています。申請の受付開始は令和8年度末頃、つまり2027年の1月から3月頃が予定されています。共通の物差しが動けば往復は減りますが、それまでは自社の台帳で受けるほかありません

裏返して使う:ベンダーへ確認する21の骨格

ここから後半です。同じ様式は、自社がAIの道具を入れるときにそのまま裏返して使えます。しかも骨格を1から考える必要はありません。デジタル庁が2026年6月に公表した「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」の2.0版が、調達チェックシートとして事業者への要求事項を21項目、3つの束に整理して公開しています。2.0版の内容は2026年9月1日から施行され、AIガバナンスの枠組みの対象は2026年7月1日から適用されています。もとは政府調達の文書ですが、民間が確認する項目としてそのまま読めます。

  • ガバナンスの束(6項目):AI事業者ガイドライン共通の指針の遵守/リスクを統制する体制の構築/業界と最新技術の動向把握/事故と生成AI特有のリスクケース発生時の対応手順/従事者への教育とリテラシー向上/入出力データの取扱いの管理
  • 開発と運用の束(5項目):期待品質を満たすための取組/特定の提供元への固定化の回避/モデルの更新への考慮/文化的および言語的な考慮/環境への配慮
  • システムの要件の束(10項目):有害情報の出力制御/偽りや誤りの情報の出力と誘導の防止/公平性と包摂性/目的外利用の防止/個人情報とプライバシーと知的財産/セキュリティ確保/説明可能性/出力の安定性/データ品質/検証可能性

21項目を全部聞く必要はありません。同じガイドラインには高リスクかどうかを判定する軸が3つ示されています。業務の性格、利用範囲、そして出力結果を人の判断を経てから使うかどうかです。この3つで重さを変えます。社内の下書きに使うだけなら、ガバナンスの束と入出力データの取扱いを聞けば足ります。顧客に直接返る場面で使うなら、システムの要件の束まで踏み込みます。

民間で使うときの読み替えも1点だけ添えます。同じガイドラインの利活用ルールの雛形には、約款型のクラウドサービスは原則として要機密情報を扱えないこと、国外のサーバを利用する場合に現地政府によるデータの検閲や接収を受ける可能性があることを利用者が理解しておくべき事項として挙げています。これは政府に限った話ではありません。約款で契約した安価な形と、個別契約の形では、扱える情報の区分が変わります。

契約の側で取り決める5つの事項

同じガイドラインは、調達チェックシートとは別に契約チェックシートも示しています。こちらは「契約書で取り決めるべき項目を整理」したもので、束は5つです。入力に関する取り決め(学習の有無、データの保存方法など)、出力に関する取り決め(出力の一定の保証、権利の帰属)、契約上の取り決め(期待品質を満たす取組の履行または完成させる義務)、成果物の取り決め(成果物の定義と権利の帰属)、そして事故が発生した場合の対応義務とその範囲です。

5つのうち、実務で後から効いてくるのは最後の1つです。原文は、事故時の対応義務の範囲に「被害を最小限に食い止めるため、また、原因を特定するための情報やデータの提供を含む」と書いています。原因の特定に必要な記録を出してもらえる約束があるかどうかで、事故後の説明の質が決まります。出してもらえなければ、自社の取引先への説明が「調査中」で止まったままになります。

なお、この記事は契約条項の中身そのものを解説する記事ではありません。ここで押さえたいのは、確認するべき事項が5つの束にまとまっていて、抜け漏れを目視で点検できるという点だけです。実際の条項の作り込みは法務と進めるとして、担当者は5つの束が発注の仕様書に反映されているかを確かめれば足ります。

返ってきた回答は、適用範囲と日付から読む

ベンダーへ確認票を出すと、回答が返ってきます。ここで見るべきは、書かれた内容よりも先に2つあります。適用範囲と日付です。第三者認証の証明書が添付されていても、その認証が会社全体を対象にしているのか、特定のサービスと拠点だけを対象にしているのかで意味がまったく違います。認証の登録証には対象範囲の記載欄があるので、必ずそこを読みます

日付は3種類あります。認証の有効期限、回答書の作成日、そして根拠となった点検の実施日です。回答書が今月作られていても、根拠の点検が2年前であれば、その2年間の変更は誰も見ていないことになります。回答の有効期間を1年と決め、更新月を契約の更新月に合わせておくと、確認が年次の作業として回り始めます。

そして、返ってきた回答は自社の確認票の回答材料にもなります。取引先から「再委託先のAI利用をどう管理しているか」と聞かれたときに、ベンダーからの回答書の要旨をそのまま引用できるからです。聞く側の作業と、聞かれる側の作業は、同じ台帳の表と裏になります。別々の書式で管理すると、この転用ができなくなります。

回答づくりをAIに手伝わせるときの線引き

最後に、回答作成そのものにAIを使う話です。実務での効果は小さくありません。前掲のマネーフォワードの解説記事は、自動で回答する仕組みを導入した事例として、営業担当者が手作業で数日かけていた回答時間を平均15分に短縮し、回答作成の工数を最大で9割削減したケースを紹介しています。ただしこれは下書きを出す工程の短縮であって、判断の代行ではありません

線引きは3つで足ります。任せてよいのは、過去の回答から近い設問を探すこと、設問と社内資料を突き合わせて候補を出すこと、4欄の文面を整えること。任せないのは、該当するかしないかの判定と、証跡があると言い切ることです。そして回答の1行ごとに、どの資料の何ページを根拠にしたかを書かせ、人がその資料を開く。開かない運用にするなら、根拠を書かせる意味はありません。

もう1つ、見落としやすい注意があります。相手から届いた確認票そのものが、相手の社名と審査基準を含む文書だという点です。受け取った様式を、そのまま外部の対話サービスに貼り付けるのは避けます。設問文だけを抜き出して使う、あるいは自社専用の環境で扱う。確認票の回答を作るためにAIを使い、その過程で情報の扱いを間違えるのでは、本末転倒になります。

まとめ

確認票が埋まらない原因は、規程の不足ではありませんでした。AIに関する設問は規程ではなく設定と記録を聞いており、社内の把握がサービスと契約の単位まで下りていないと、答えが一段粗くなって往復を招きます。まず9列の台帳を1枚作り、聞かれる9つの型に対して、該当・統制・証跡・例外の4欄で書く形に固定する。答えられない項目は、現状と理由と代替の統制と期日を書く。ここまでが前半でした。

後半は同じ様式の裏返しでした。ベンダーへ確認する骨格は、デジタル庁の調達チェックシートが21項目を3つの束で公開しており、2026年9月1日から2.0版の内容が施行されています。契約側の取り決めは5つの束にまとまり、事故時に原因特定のための情報を出してもらえるかが後から効きます。返ってきた回答は適用範囲と日付から読む。そして回答づくりをAIに手伝わせるときは、判定と断定を人に残し、根拠の資料を必ず開く。この2つを守れば、確認票は負担ではなく年次の点検表になります

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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