そのメールは本人以外にも読まれる|転送される前提で書く

そのメールは本人以外にも読まれる|転送される前提で書く

商談の後に送ったメールが、社内で転送される。上長に、関連する部門に、そして購買の担当に。その過程で、こちらが説明した前提や経緯は抜け落ちます。残るのは、書いた文章そのものだけです。会ったことのない人が読む前提で書けているか。その一点で、通る提案と止まる提案が分かれます。


カメ先生カメ先生

先方に送ったメールが、社内で転送されているそうだね。


カメ子カメ子

はい。窓口の方が、上長に回してくださったようです。


カメ先生カメ先生

その上長は、こちらと会ったことがない。文章だけで判断することになる。


カメ子カメ子

……そう考えると、あの書き方では伝わらないかもしれません。


この記事のポイント
  • BtoBの検討は、窓口の担当者だけでは決まらない
  • 転送されると、口頭で伝えた前提が失われる
  • 1通で完結する形にすると、転送されても意味が通る

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目次

誰が読んでいるか分からない

BtoBの取引では、窓口の担当者が単独で決めることはほとんどありません。上長の承認が要り、関連する部門の意見が入り、購買の部門が条件を確かめます。

この過程で、こちらが送ったメールは転送されます。そして、転送先の人はこちらと会ったことがありません。商談で何を話したかも知りません。

つまり、文章だけで判断されます。口頭で補足した内容も、その場の空気も、転送されたメールには残りません。

それなのに、多くのメールは窓口の担当者だけを想定して書かれています。「先日お話しした件です」「ご相談いただいた内容について」。転送された先では、意味が通じません。

この差が、成果に効いてきます。転送先で理解されないメールは、そこで止まります。窓口の担当者が改めて説明する手間が生じ、その手間を嫌って検討が進まなくなります。

逆に、単体で読んでも分かるメールは、そのまま社内を回ります。窓口の担当者にとっても、転送するだけで済むので楽になります。

以下では、転送される前提でどう書くかを整理します。

転送で失われるもの

問題の所在が分かったところで、具体的に何が抜け落ちるのかを見ます。抜け落ちるものが分かれば、補うべき内容も自動的に決まります

転送そのものは、歓迎すべきことです。社内で検討が進んでいる証拠だからです。問題は、転送に耐える形になっていないことのほうです

何が失われるのかを、具体的に見ていきます。失われるものが分かれば、何を補えばよいかも決まります。

ひとつめが、前提です。どういう課題があって、どういう相談を受けて、この提案に至ったのか。商談で共有した文脈は、メールには書かれていません。

ふたつめが、口頭の補足です。資料の数字について、「これは特定の条件での値です」と説明した。その説明は、資料にも本文にも残っていません。

みっつめが、こちら側の情報です。どの会社の誰なのか。何をしている会社なのか。署名だけでは、判断の材料になりません

よっつめが、緊急度と期限です。いつまでに返事が要るのか。その理由は何か。口頭で伝えた期限は、転送先には届きません。

いつつめが、次に何が起きるかです。この後どう進むのか。相手は何をすればよいのか。ここが書かれていないと、読んだ人は何もしません。

この5つを本文に含めるだけで、転送されても意味が通る形になります。追加する分量は、数行で足ります

1通で完結させる書き方

失われるものが分かったので、それを補う書き方に移ります。難しい技術は要りません。数行を足すだけで、伝わり方が変わります

目安は、そのメールを初めて読む人が理解できるかどうかです。書き終えたら、その視点で読み返してみてください。

具体的な書き方を見ていきます。基本は、その1通だけで意味が通ることです。

冒頭に、前提を1行から2行で置きます。「先日、貴社の営業部門における顧客情報の管理についてご相談をいただきました」。この一文があるだけで、転送先の人が状況を理解できます。

次に、こちらの立場を明示します。会社名と、何をしている会社かを短く。署名の情報とは別に、本文の中に置くのが効きます。

そして、要点を先に書きます。経緯から順に説明するのではなく、結論と、その根拠と、次の行動。この順序にすると、途中まで読んだ人にも要点が伝わります。

期限がある場合は、期限と理由をセットで書きます。「今月中にご判断いただけますと、来期の開始に間に合います」。理由があると、転送先でも優先度が判断できます。

最後に、次の行動を書きます。誰が何をすればよいのか。「ご不明な点があれば、下記までご連絡ください」で終わらせない。具体的な次の一手を提示します。

件名で判断される

本文を整えたら、次は件名です。本文がどれだけ良くても、開かれなければ意味がありません。転送された人は、件名だけを見て開くかどうかを決めます

そして、転送のときの件名はこちらが決めたものがそのまま使われます。窓口の担当者が書き直すことは、あまりありません。

転送されるメールで、意外と効くのが件名です。転送された人は、まず件名を見て開くかどうかを決めます。

避けたいのが、「Re: Re: Re:」が続く件名です。何度もやり取りした後の件名は、元の話題を表さなくなっています。

転送されることを想定するなら、節目のメールでは件名を書き直します。「顧客情報の管理に関するご提案(お見積り添付)」。この形なら、開く前に内容が分かります。

会社名を入れておくのも有効です。転送先の人は、どこからの連絡かを最初に知りたがります。件名に会社名があれば、本文を開く前に判断できます。

ただし、件名が長すぎると後半が表示されません。重要な語を前に置いてください。

節目のメールとは、提案書を送るとき、見積りを送るとき、そして返事を求めるときです。この3つでは、件名を作り直す価値があります。

添付と本文の使い分け

次に考えるのが、情報をどこに置くかです。資料に入れるか、本文に書くか。転送を前提にすると、この判断が変わります

社内で完結する連絡なら、資料にまとめたほうが読みやすくなります。しかし、転送される前提だと資料が開かれない可能性を考える必要があります。

提案の内容を、添付する資料に入れるか、本文に書くか。転送を考えると、判断が変わります。

添付する資料は、転送の過程で外れることがあります。また、端末によっては開きにくいこともあります。そして、開く手間そのものが障壁になります。

だから、要点は本文に書きます。資料を開かなくても、何の提案で、いくらで、いつからかが分かる形にする。

資料は、詳細を確かめたい人のために添えます。本文と資料の役割を分けると、転送されても情報が失われません。

資料の中身を本文に全部書く必要はありません。3行から5行の要約で足ります。「提案の内容」「費用」「開始の時期」この3点があれば、判断の入口には立てます。

なお、資料の容量が大きいと、転送の途中で止まることがあります。受信の側の制限に引っかかるためです。軽くしておくことも、転送への配慮になります。

転送しやすい形にする

ここまでは、転送された先で伝わるかの話でした。もうひとつ考えたいのが、そもそも転送してもらえるかどうかです。転送に手間がかかるメールは、転送されません

窓口の担当者は、忙しい中で判断しています。そのまま回せるなら回す。手を入れる必要があるなら、後回しになる。この差は大きいものです。

窓口の担当者の立場で考えると、転送しやすいメールとしにくいメールがあります。

転送しにくいのは、個人的なやり取りが混ざっているメールです。雑談、前回の別件への言及、こちらの都合の説明。転送するには、削る作業が必要になります。

削る手間があると、転送されません。そのまま回せる形にしておくことが、実は最大の配慮です。

方法のひとつが、メールを分けることです。個人的な連絡と、社内で共有される内容を、別のメールにする。

もうひとつが、共有用の部分を明示することです。「以下、社内でのご検討にそのままお使いいただけます」と書いて、区切りを入れる。この一言があると、転送のハードルが下がります。

窓口の担当者が社内を説得する立場にあることを忘れないでください。その説得を助ける材料を渡すのが、こちらの仕事です。

決裁者が知りたいこと

転送の先には、複数の立場の人がいます。それぞれ、知りたいことが違います。全員を1通で満たそうとすると、長すぎて誰にも読まれません

だからこそ、本文に要点、資料に詳細という分担が効きます。誰が何を知りたいかを整理しておくと、どちらに何を書くかが決まります。

転送の先にいるのは、多くの場合、決裁の立場の人です。その人が知りたいことは、窓口の担当者とは違います。

立場知りたいこと書くべき内容
窓口の担当者自分の業務がどう楽になるか具体的な機能と使い方
上長部門の目標にどう効くか改善される指標と、その根拠
購買の部門条件は妥当か、他に選択肢はあるか費用の内訳、契約の条件、比較の材料
決裁の立場投資に見合うか、危険はないか費用対効果、導入の実績、支援の体制

この表を見ると、1通のメールで全員を満たすのは難しいと分かります。だからこそ、本文に要点、資料に詳細という分け方が効きます。

要点には、決裁の立場が知りたいことを入れます。費用、期間、期待できる効果。この3点は、本文の見える位置に置いてください。

窓口の担当者向けの詳細は、資料に回します。本文が長くなると、転送先で読まれなくなるためです。

購買の部門が入る段階では、比較の材料を求められます。他の選択肢との違いを説明できる資料を用意しておくと、検討が止まりません。

書き方の型

STEP1
件名を、内容が分かる形にする

節目のメールでは件名を作り直します。会社名と用件を、前半に置きます。

STEP2
冒頭に前提を1行から2行で書く

どういう相談を受けて、この連絡に至ったか。転送先が状況を理解できる形にします。

STEP3
要点を先に書く

何の提案で、費用はいくらで、いつから始められるか。3行から5行にまとめます。

STEP4
根拠と詳細を続ける

なぜその提案なのか。詳細は資料に譲り、本文には要点だけを書きます。

STEP5
期限と次の行動を明示する

いつまでに、誰が、何をすればよいか。期限には理由を添えます。

この型に沿って書くと、本文は15行から20行程度に収まります。長すぎず、単体で意味が通る長さです。

2番目と5番目が、転送への配慮の核心です。この2つがあるかどうかで、転送先での理解がまったく変わります。

やってはいけない書き方

  • 「先日はありがとうございました」だけで始め、何の件か書かない
  • 「ご相談の件」とだけ書いて、内容を資料に丸投げする
  • 個人的なやり取りと、共有すべき内容を1通に混ぜる
  • 件名を「Re: Re:」のまま、節目のメールを送る
  • 期限だけを書き、その理由を書かない
  • 本文に費用を書かず、資料を開かないと分からない形にする

1番目は、日本のビジネスの慣習として自然に出ます。しかし、転送された先では何の話か分からない書き出しになります。

6番目は、意外と多い形です。費用は資料に書いてあるから、と本文では触れない。転送先の人は、費用を知るために資料を開く手間をかけません。

5番目も効いてきます。「今月中にお願いします」とだけ書かれても、転送先の人には理由が分かりません。こちらの都合に見えて、優先度が下がります。

資料の側も転送を想定する

メールの書き方を整えたら、添付する資料にも同じ視点を入れます。資料も、そのまま転送されるためです。商談で口頭で補った内容は、資料には残っていません

この作業は、資料を送る直前に行うのが効率的です。商談で説明した内容を思い出しながら、足りない一文を書き足します。

メールだけでなく、添付する資料も転送されることを想定して作ります。

表紙に、いつ、誰宛に作った資料かを書きます。日付がないと、古い資料と混同されます。

提案の前提も書いておきます。「貴社の現在の運用を前提とした試算です」といった一文があると、数字の読み方が伝わります。

口頭で補足した内容は、資料に書き足します。商談で「この数字は特定の条件での値です」と説明したなら、その説明を資料に反映してから送る。

問い合わせ先も明記します。転送先の人が疑問を持ったとき、直接聞ける状態にしておくと、検討が止まりません。

資料の中でも、要点は前のほうに置きます。最後まで読まれない前提で作ると、構成が変わります。

窓口の担当者を助ける

ここまでの工夫を、別の角度から捉え直しておきます。転送への配慮は、相手の会社の窓口の担当者を助ける行為でもあります

この視点を持つと、何を足すべきかの判断が変わります。自分が伝えたいことではなく、相手が社内で説明するときに必要なものを渡す。

視点を変えると、この工夫の本質が見えてきます。転送への配慮は、窓口の担当者を助ける行為です。

窓口の担当者は、社内で説得する立場にあります。上長に説明し、他部門の疑問に答え、購買の質問に対応する。

その説明の材料が足りなければ、自分で作ることになります。その手間が大きいほど、検討は後回しにされます

だから、材料をそろえて渡すのが最も効く支援です。社内での説明に使える形の資料。想定される質問への回答。そして、そのまま転送できるメール。

この観点で自分のメールを読み返すと、直すべき箇所が見えてきます。「この人が上長に転送するとして、そのまま回せるか」。

回せないなら、何が足りないかを考える。この習慣が、成約の率に効いてきます。

配信するメールにも同じ発想が使える

ここまでは、個別に送るメールの話でした。同じ発想は、一斉に配信するメールにも使えます。配信したメールも、社内で転送されているためです

転送された先の人は、そもそも登録していません。こちらの会社を知らない可能性もあります。この前提で書けているかを確かめてください。

ここまでは個別のメールの話でしたが、一斉に配信するメールにも同じ考え方が使えます。

配信したメールも、社内で転送されます。「これ、うちに関係あるかも」と、受け取った人が同僚に回す。

その転送先の人は、そもそも登録していません。こちらの会社を知らない可能性もあります。

だから、配信するメールにも自己紹介が要ります。冒頭か末尾に、何の会社が何のために送っているかを短く書く。

記事や資料への案内も、1行の説明を添えます。「新着記事のお知らせ」だけでは、転送先の人には何も伝わりません。

転送されたメールから登録が生まれることもあります。その入口を用意しておくと、配信が広がります。登録の案内を、見つけやすい位置に置いてください。

返信を受け取る設計

転送が進むと、思わぬところから連絡が来ることがあります。その受け皿を用意していないと、せっかくの接点を逃します

特に、配信するメールでは返信できない連絡先から送っている会社があります。この形だと、転送された先の人が連絡する手段がありません。

転送された先の人が、直接こちらに連絡してくることがあります。その受け皿も考えておきます。

返信できない連絡先から送っていると、この機会を逃します。個別のメールでは通常ありませんが、配信するメールでは起きがちです。

返信先を、実際に読まれる連絡先にしてください。誰も見ていない共有の連絡先だと、問い合わせが放置されます。

転送先から連絡が来た場合の対応も決めておきます。窓口の担当者に伝えるべきか。そのまま対応してよいか。

原則としては、窓口の担当者に一報を入れるのが安全です。社内の事情を知らないまま動くと、関係を壊すことがあります。

ただし、緊急の質問には直接答えて構いません。その場合も、後から窓口の担当者に共有してください。

既存のメールを見直す

ここまでの内容を、実際の業務に落とし込みます。新しいメールから意識するのも大事ですが、雛形を直すほうが確実に効きます

雛形を直せば、その後に送るすべてのメールに反映されます。個人の意識に頼らないぶん、担当者が変わっても続きます。

いま使っているメールの雛形を、この観点で見直してみてください。

確かめるのは3点です。冒頭に前提が書かれているか。要点が本文にあるか。そして、期限と次の行動が明示されているか。

多くの雛形は、窓口の担当者だけを想定して作られています。転送を想定した記述は、入っていません。

直すのは、冒頭の1行と末尾の2行だけで足ります。全部を書き直す必要はありません。

提案書を送るときの雛形、見積りを送るときの雛形、返事を求めるときの雛形。この3つから着手してください。

直したら、他部門の人に読んでもらいます。その案件を知らない人が読んで理解できれば、転送されても通じます。

  • 雛形は、提案書・見積り・催促の3つから着手する
  • 直すのは冒頭の1行と末尾の2行が中心
  • 案件を知らない人に読んでもらい、通じるかを確かめる

効果の確かめ方

最後に、この改善が効いているかをどう確かめるかに触れておきます。文言の改善は費用がかからないぶん、効果を示さないと次の改善に進みにくくなります

この改善は、数字で測りにくい種類のものです。それでも、確かめる方法はあります。

ひとつめが、返信の内容です。「社内で共有しました」「上長からこういう質問が出ています」。こうした返信が増えれば、転送されている証拠です。

ふたつめが、質問の質です。転送先から出てくる質問が的を射たものになっていれば、内容が伝わっています。

みっつめが、検討の速度です。提案から返答までの日数が短くなれば、社内での説明がスムーズに進んでいます。

いずれも、明確な数字にはなりません。しかし、営業の担当者に聞けば感触として分かります。

「最近、社内での話が早くなった」という声が出れば、この改善は効いています。

よくある質問

毎回、前提を書くと文章が長くなりませんか

1行から2行で足ります。「先日ご相談いただいた顧客情報の管理の件です」という程度です。この1行があるかないかで、転送先での理解がまったく変わります。

窓口の担当者が転送しない場合はどうしますか

転送しやすい形にしても、回してもらえないことはあります。その場合は、社内での説明の予定を聞いてみてください。説明の場に同席する提案ができることもあります。

資料に書いてあることを本文にも書くのは重複ではありませんか

重複しますが、必要な重複です。転送先の人は、資料を開かないことがあります。本文だけで判断の入口に立てる形にしておくと、検討が止まりません。本文には要点だけ、詳細は資料へ、という分担にしてください。

配信するメールでも、毎回自己紹介が要りますか

末尾に短く置いておけば足ります。何の会社が、何の目的で送っているか。この2点が分かる2行程度で構いません。転送された先の人が、そこから登録できる案内も添えておくと効果的です。

まとめ

BtoBの検討は、窓口の担当者だけでは決まりません。送ったメールは社内で転送され、会ったことのない人が文章だけで判断します。その前提で書けているかが、通る提案と止まる提案を分けます。

転送で失われるのは5つです。前提、口頭の補足、こちら側の情報、期限とその理由、そして次に何が起きるか。これらを本文に含めるだけで、単体で意味が通る形になります。

直す箇所は多くありません。件名を内容が分かる形にする。冒頭に前提を1行から2行。要点は資料ではなく本文に。そして、期限と次の行動を明示する。既存の雛形の冒頭と末尾を直すだけで、大半は整います。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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