Media > AI活用ユースケース > カスタマーサポート > 印章店が店頭で書く手書きの注文票から書体・材質・寸法・彫る文字を読み取り、工房への彫刻の指示書と注文の台帳を作る

印章店が店頭で書く手書きの注文票から書体・材質・寸法・彫る文字を読み取り、工房への彫刻の指示書と注文の台帳を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

店頭で書いた手書きの注文票を読み取り、注文の台帳に登録して、工房の職人が見る彫刻の指示書を作ります。チェックの付け漏れや寸法の読み違いは、彫る前に店頭の担当へ戻します。

サマリー
AIサービス
Azure AI/Google Document AI
連携・自動化
Power Automate
対象業界
その他/小売
対象部門
カスタマーサポート/生産
対象業務
データ入力・転記/書類作成
主な課題
入力作業が多い/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
読み取り(OCR)
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
48h/月
AI導入後
18h/月
想定削減
63%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 店頭で、お客様と一緒に注文票を書く
  2. 閉店後、店長が注文票の工房の控えを見ながら、工房向けの指示書を手で書く
  3. 同じ内容を、注文の台帳のスプレッドシートに転記する
  4. 指示書と工房の控えを、翌朝の便で工房に送る
  5. 工房の段取り役が、指示書をお渡しの日の順に並べ、チェックの抜けや読めない字を見つけたら店に電話する
  6. 店長がお客様に電話して確かめ、結果を工房に伝える
導入後(After)
  1. 人店頭で、お客様と一緒に注文票を書く(これまでどおり)
  2. 人閉店後、店の控えを複合機でスキャンし、店ごとのライブラリに保存する
  3. 自動保存をきっかけに Power Automate が動き、Azure AI Document Intelligence のカスタム テンプレート モデルで注文票を読み取る
  4. 自動チェック欄の状態と信頼度から、用途・材質・寸法・書体・彫り方を1つずつ決める。決められない欄は「要確認」にする
  5. 自動寸法と用途の組み合わせ、彫る文字の数と彫り方、気をつける字の一覧を照らす
  6. 自動注文の台帳(SharePoint のリスト)に1件を登録し、票の画像へのリンクを付ける
  7. 自動「要確認」の注文を、その店の店長に知らせる
  8. 人店長が要確認の欄だけを票の画像で確かめ、台帳を直す。必要ならお客様に電話する
  9. 人工房の段取り役が、台帳の「彫刻待ち」のビューをお渡しの日の順に開き、指示書として職人に渡す
  10. 人職人は、指示書の票の画像の「彫る文字」のマスを見て彫る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 店頭で、お客様と一緒に注文票を書く
  2. 閉店後、店長が注文票の工房の控えを見ながら、工房向けの指示書を手で書く
  3. 同じ内容を、注文の台帳のスプレッドシートに転記する
  4. 指示書と工房の控えを、翌朝の便で工房に送る
  5. 工房の段取り役が、指示書をお渡しの日の順に並べ、チェックの抜けや読めない字を見つけたら店に電話する
  6. 店長がお客様に電話して確かめ、結果を工房に伝える

(a)同じ内容を3回書いている。 注文票、指示書、台帳。書き写すたびに、寸法の「13.5」が「15」に、書体の「印相体」が「篆書体」になる余地があります。 指示書は工房の控えと一緒に送るので、職人は両方を見比べることになり、食い違うとどちらが正しいかで手が止まります。

(b)チェックの抜けが工房で見つかる。 書体の欄が空いている、寸法に二つ印がある、縦彫りか横彫りかが書かれていない。工房で見つかるのは注文の翌日で、店からお客様に電話がつながるのはさらに後です。 お渡しの日が近い注文ほど、この往復が重くなります。

(c)確かめ方が店長ごとに違う。 実印なのに寸法が小さすぎないか、法人印の文字数が寸法に収まるか。ベテランの店長は書くときに気づきますが、新しい店長は気づきません。 決まりが紙にも台帳にも書かれていません。

  1. 【人】 店頭で、お客様と一緒に注文票を書く(これまでどおり)
  2. 【人】 閉店後、店の控えを複合機でスキャンし、店ごとのライブラリに保存する
  3. 【自動】 保存をきっかけに Power Automate が動き、Azure AI Document Intelligence のカスタム テンプレート モデルで注文票を読み取る
  4. 【自動】 チェック欄の状態と信頼度から、用途・材質・寸法・書体・彫り方を1つずつ決める。決められない欄は「要確認」にする
  5. 【自動】 寸法と用途の組み合わせ、彫る文字の数と彫り方、気をつける字の一覧を照らす
  6. 【自動】 注文の台帳(SharePoint のリスト)に1件を登録し、票の画像へのリンクを付ける
  7. 【自動】 「要確認」の注文を、その店の店長に知らせる
  8. 【人】 店長が要確認の欄だけを票の画像で確かめ、台帳を直す。必要ならお客様に電話する
  9. 【人】 工房の段取り役が、台帳の「彫刻待ち」のビューをお渡しの日の順に開き、指示書として職人に渡す
  10. 【人】 職人は、指示書の票の画像の「彫る文字」のマスを見て彫る

8番目が、店で済む時点に動いたことが、この設計の要点です。 これまで工房で翌朝に見つかっていた抜けが、スキャンした夜のうちに、注文を受けた店長に戻ります。 お客様に電話するのも、注文を受けた本人です。

10番目で、職人が読み取りの文字を見ないのも意図してのことです。 指示書に読み取りの文字を大きく出すと、職人はそれを見て彫ります。読み取りの文字は台帳の検索用として小さく出し、彫る字は画像で示します。

02今回想定するシステム構成

構成図
注文票の店の控え(複写の1枚目。チェック欄と、彫る文字のマス)
   │  閉店の後に複合機でスキャン(1枚1ファイル)
   ▼【トリガー】SharePoint のライブラリへの保存(店ごと)
Power Automate
   ├─ ファイル コンテンツの取得
   ▼
Azure AI Document Intelligence(カスタム テンプレート モデル。コネクタで呼ぶ)
   │   票番号・受付日・氏名・電話番号・お渡しの予定日
   │   用途・材質・寸法・書体・彫り方のチェック欄
   │   彫る文字のマス(1字ずつの領域)
   ▼
Power Automate ── チェックの数・信頼度・寸法と用途・気をつける字を照らす
   │              → SharePoint のリスト(注文の台帳)に登録
   ▼
【要確認の欄だけ店長が画像で確かめる】
   ▼
注文の台帳の「彫刻待ち」のビュー(お渡しの日の順)= 工房の指示書
役割想定する製品代替候補
OCRAzure AI Document Intelligence(カスタム テンプレート モデル)Google Document AI(Form Parser)
連携Power Automate(Document Intelligence のコネクタと SharePoint のコネクタ)Azure Logic Apps
台帳SharePoint のリスト(注文の台帳。ビューを工房の指示書に使う)Microsoft Lists
照合の表SharePoint のリスト(気をつける字の一覧、用途ごとの寸法の範囲)―
保管SharePoint のライブラリ(店の控えのスキャン)―

Document Intelligence のコネクタは、Power Automate で Standard の区分です。 操作は「Analyze Document for Prebuilt or Custom models (v4.x API)」を使い、学習したモデルの ID とファイルの中身を渡します。 受け付けるのは PDF か画像(JPG、PNG、BMP、TIFF)で、1つの接続あたり60秒に1,200回の呼び出しが上限です。

SharePoint のコネクタも Standard の区分です。 トリガーには「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」を使い、続けて「ファイル コンテンツの取得」で中身を取ります。「フォルダーにファイルが作成されたとき」は非推奨で、サブフォルダーへの追加では動かないと書かれています。

カスタム テンプレート モデルは、決まった見た目の様式から、ラベルを付けた値・選択マーク・表・署名・選んだ領域を取り出します。 注文票はどの店でも同じ様式なので、この型が合います。手書きの文字の対応言語には日本語(ja)が含まれます。

新しく足すのは、照合の表の2つです。 1つは「気をつける字」の一覧で、旧字体・異体字のある字(高・崎・辺・沢・斉 など)を並べます。もう1つは用途ごとの寸法の範囲の表です。どちらも店長が直せるリストにし、決まりを店長の頭の中から出します。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

店ごとのライブラリに、注文票のスキャンが保存されたことを起点にします。 閉店後にまとめてスキャンしますが、処理は1枚ずつ動かします。どの店の注文かは、保存したライブラリで決めます。 票に印刷した店名を読むより確かです。

スキャンは 1枚1ファイルにします。複合機でまとめて1つの PDF にすると、1回の読み取りに何件もの注文が混ざり、どのチェックがどの注文のものか分からなくなります。

処理が終わったファイルは、処理済みのフォルダーへ移します。 移すのは台帳への登録が成功したときだけにします。店のライブラリに残っている数が、そのまま未処理の数になります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
注文票のスキャン店の控えの画像(PDF または JPG)店ごとのライブラリ
読み取り結果欄ごとの値、チェック欄の状態、字のマスの文字、それぞれの信頼度Document Intelligence
気をつける字の一覧旧字体・異体字のある字と、その組SharePoint のリスト
寸法の範囲の表用途ごとの寸法の選択肢と、確かめる範囲SharePoint のリスト
工房の受け枠お渡しの日ごとの、彫れる件数の目安注文の台帳から数える

質を決めるのは、学習に使う見本です。 カスタム テンプレート モデルは、様式ごとに少なくとも5枚の見本を用意するよう案内されています。見本には、きれいに書かれた票だけでなく、書き直しの跡のある票や、チェックが二つ付いた票を混ぜます。 実際に起きる崩れ方を学ばせておかないと、本番でそれが来たときに信頼度が下がります。

彫る文字のマスは、1字ずつ別の領域としてラベルを付けます。 マスをまとめて1つの欄にすると、どの字の信頼度が低いのかが分かりません。字ごとの信頼度が分かれば、「3字目だけ読めていない」という形で店長に伝えられます。 店長はその1字だけをお客様の控えと見比べれば済みます。

Step3

データの取得方法を決める

読み取りは、Power Automate からコネクタの操作を呼ぶだけです。ロケールは指定しません。 Document Intelligence の言語の案内には、文書の言語が確かでないかぎり言語の指定を渡さないこと、渡すと不完全な文字が返ることがあると書かれています。法人のゴム印などで、ローマ字や数字を彫る注文があるため、日本語に固定しません。

取るものどこから何に使うか
票番号・受付日・氏名・電話番号・お渡しの日ラベルを付けた欄の値台帳の項目
用途・材質・寸法・書体・彫り方選択マークの欄の状態(selected/unselected)1つに決められるかの判定
彫る文字1字ずつの領域の文字台帳の検索用と、気をつける字の照合
信頼度欄の信頼度、単語の信頼度、選択マークの信頼度要確認の判定

信頼度は1種類ではありません。 欄の信頼度は「値の位置が正しいか」の確からしさで、文字が正しく読めたかは単語の信頼度で見ます。 2024-11-30 の版から、カスタムモデルの欄の信頼度に単語の信頼度が含まれるようになりました。選択マークの欄は、欄の信頼度とチェックの信頼度を合わせて見るよう案内されています。

文書の種類の信頼度も見ます。 これが低いのは、学習した様式と違う見た目の票が来たということです。古い様式の注文票が残っていて、それを使った店があれば、ここで分かります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … PDF か画像(JPG、PNG、BMP、TIFF)であることを確かめます
  2. 1枚1ファイルの確認 … 2ページ以上の PDF は、ページごとに分けるか、店に戻します
  3. 向きと傾き … 複合機の自動の傾き補正を使い、票の上下が逆のものは店に戻します
  4. 解像度の確認 … 文字の高さの下限は、1024×768の画像で12ピクセル(150 DPI で約8ポイント)です。彫る文字のマスの字は大きいので問題になりにくく、問題は電話番号やお渡しの日の小さい字です
  5. 複写の濃さ … 店の控え(1枚目)をスキャンします。2枚目以降の複写は字が薄く、チェックの印がかすれます

5番目を軽く見ないでください。 工房の控えを工房に送る運用を変えずに済むよう、スキャンするのは店に残す1枚目にします。複写の下の紙ほど、チェックの印が「付いていない」と読まれやすくなります。

Step5

AIに処理させる

AIにさせるのは、決まった欄の文字とチェックの状態を、信頼度とともに返すことだけです。 1つに決められるか、要確認にするかは、Power Automate の条件で決めます。

読み取るもの決め方決められないときの扱い
用途(実印・銀行印・認印・法人印・ゴム印)selected がちょうど1つ0個か2個以上なら「要確認」
材質selected がちょうど1つ同上
寸法selected がちょうど1つ。用途ごとの範囲の表と照らす範囲の外なら「要確認」
書体selected がちょうど1つ0個か2個以上なら「要確認」
彫り方(縦・横、姓のみ・名のみ・フルネーム)selected がちょうど1つ同上
彫る文字マスごとの文字。字数を彫り方と照らす信頼度にかかわらず、彫る字は画像で示す
お渡しの予定日日付として解釈でき、受付日より後解釈できなければ「要確認」

照らす決まりの例です。 どれも店長が表で直せるようにします。

照らすこと要確認にする条件
実印の寸法寸法の範囲の表の外。読み違いで「13.5」が「135」になっていないか
字数と彫り方「姓のみ」なのに字のマスが4字以上、「フルネーム」なのに1字だけ
気をつける字彫る文字に、気をつける字の一覧の字が含まれる
実印の文字の種類実印でローマ字のマスがある。市区町村の決まりを確かめる
工房の受け枠お渡しの日の件数が、その日の目安を超える

実印の大きさと文字の決まりは、市区町村が決めています。 たとえば東京都中央区の印鑑登録の案内では、印影の一辺の長さが8ミリの正方形より大きく25ミリの正方形より小さいものが登録でき、8mm以下・25mm以上のものは登録できないとされています。氏名の振り仮名で登録する場合はカタカナで表したものに限ること、沢(澤)・辺(邊)など一般に同字として常用される字体は登録できることも書かれています。決まりは市区町村ごとに違うので、表には「お客様の住む市区町村で確かめる」とだけ書き、登録できるかの判断はこの構成ではしません。

させないこと理由
彫る文字の字体の直し新字体に寄せると、お客様の選んだ字が消える
チェックの推測書体が空欄のとき、用途から「実印なら篆書体」と埋めない
寸法の補正「135」を「13.5」に直さない。直さずに要確認にする
実印として登録できるかの判断市区町村の窓口の判断

1行目がこの構成のいちばん大きな落とし穴です。 読み取りの文字は、手書きの旧字体を見慣れた新字体で返すことがあります。それを台帳の「彫る文字」として指示書に大きく出せば、職人はそれを彫ります。 だから指示書では、読み取りの文字は検索用の小さな欄に置き、彫る字は画像で示します。

Step6

指示内容を固定する

この構成の読み取りはカスタム テンプレート モデルで、生成AIへの文章の指示はありません。指示にあたるのは、ラベルの付け方と、Power Automate の条件の設定です。

【ラベルの付け方(Document Intelligence Studio でモデルを作るとき)】
- order_no, received_date, customer_name, phone, delivery_date … 欄の値
- use_jitsuin, use_ginko, use_mitome, use_hojin, use_gomu … 選択マーク
- mat_tsuge, mat_kuro_suigyu, mat_titan, … … 選択マーク(材質ごと)
- size_105, size_120, size_135, size_150, size_165, size_180 … 選択マーク
- font_tensho, font_inso, font_koin, font_reisho, font_kaisho … 選択マーク
- dir_tate, dir_yoko, name_sei, name_mei, name_full … 選択マーク
- char_01 〜 char_08 … 彫る文字のマス(1字ずつの領域)
  領域のラベルには、マスの枠や周りの印刷の文字を含めない。
- 見本は少なくとも5枚。書き直しの跡がある票、チェックが二つ付いた票、
  チェックの無い欄がある票を混ぜる。

【Power Automate の条件】
1. 文書の種類の信頼度が 0.80 未満 → 票ごと「要確認(様式違い)」
2. 選択マークのグループごとに selected を数える
   - 1つ → その値を台帳へ
   - 0個・2個以上 → その欄を「要確認」、値は空のまま
   - selected の信頼度が 0.80 未満 → 「要確認」
3. 寸法 × 用途を「寸法の範囲の表」と照らし、範囲の外なら「要確認」
4. char_01〜08 の空でないマスを数え、彫り方と照らす
5. char_01〜08 の文字を「気をつける字の一覧」と照らし、
   含まれていれば「字体を画像で確かめる」の印を付ける
6. 値を直さない。読めた値をそのまま台帳へ入れ、要確認の欄は空のまま残す
7. 「要確認」が1つでもあれば、その店の店長に知らせる

「値を直さない」を条件の最後に置いているのは、親切な補正が誤りを隠すからです。 寸法の欄から「135」が返ったとき、「13.5の書き間違いだろう」と直して登録すると、本当に何が書かれていたかを誰も見なくなります。 直さずに要確認にすれば、店長が票を見て確かめます。

信頼度の基準の「0.80」は例です。 最初の1か月は、要確認に回る件数が多くても全部確かめ、どの欄でどの程度の信頼度のときに誤りが出たかを数えてから決めます。

Step7

出力形式を固定する

次の形で、注文の台帳に1件ずつ登録します。

{
  "order_no": "",
  "store": "駅前店",
  "received_date": "2026-10-28",
  "delivery_date": "2026-11-04",
  "customer_name": "",
  "phone": "",
  "use": "jitsuin | ginko | mitome | hojin | gomu | null",
  "material": "",
  "size_mm": null,
  "font": "",
  "layout": { "direction": "tate | yoko | null", "name_part": "sei | mei | full | null" },
  "chars_read": ["", ""],
  "chars_count": 0,
  "check_glyph": true,
  "flags": ["font_not_selected", "size_out_of_range"],
  "status": "ready | needs_check",
  "image_link": ""
}

1つ目の理由は、決められなかった欄を null のまま残せることです。 チェックの無い欄に、もっともらしい値を入れません。空であることが、店長が見るべき場所の印になります。

2つ目は、flags で、なぜ要確認なのかを店長が票を開く前に読めることです。 「書体の選択なし」「寸法が範囲の外」と分かっていれば、票の画像のその欄だけを見ます。

3つ目は、chars_read と check_glyph を分けて持つことです。 chars_read は検索用の読み取りの文字で、check_glyph が付いた注文は、指示書で字体の確認を目立たせます。 職人が彫る字は、image_link の票の画像で見ます。

工房の指示書は、この台帳の「彫刻待ち」のビューです。 列は、お渡しの日・店・材質・寸法・書体・彫り方・字体の確認の印・票の画像のリンクの順に並べ、status が ready のものだけを出します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
SharePoint のライブラリ「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」スキャンの保存を検知し、「ファイル コンテンツの取得」で中身を取る
Document Intelligence「Analyze Document for Prebuilt or Custom models (v4.x API)」モデルの ID とファイルの中身を渡す
照合の表「項目の取得」気をつける字の一覧、寸法の範囲の表
注文の台帳「項目の作成」「項目の更新」1件を登録し、店長が直したら更新する
店長への知らせTeams かメール要確認の注文の票番号と flags

お客様への連絡は自動にしません。 要確認の注文について電話するかどうかは、店長が票を見てから決めます。チェックの抜けの多くは店頭の書き方の問題で、店長が票を見れば分かることも多いからです。

Step9

人が確認する

  1. 店長が、要確認の注文の flags の欄だけを票の画像で確かめる … 台帳を直し、status を ready にします
  2. お客様に確かめる必要があれば電話する … 書体の抜け、寸法の二重のチェックなど
  3. 字体の確認の印の付いた注文は、彫る前に職人が画像を見る … マスの字形と、お客様の控えに書いた字形が同じかを確かめます
  4. 工房の段取り役が、「彫刻待ち」のビューを毎朝開く … お渡しの日の近い順に職人に渡します

3番目は、check_glyph の有無にかかわらず、すべての注文で職人がマスの画像を見ます。 印を付けるのは、特に注意する注文を目立たせるためです。印の無い注文を読み取りの文字で彫ってよい、という意味ではありません。

目標は、360件をならして1件3分です。 要確認に回るのは2割前後という想定で、それより多い月は、ある店の書き方か、スキャンの濃さに理由があります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
文書の種類の信頼度が低い古い様式の票の恐れ。票ごと店長へ戻し、様式を店でそろえる
2ページ以上の PDFまとめてスキャンされた。ページで分けるか店に戻す
チェック欄の selected が0個・2個以上その欄を空のまま要確認にする
寸法が範囲の外直さずに要確認。票の画像で店長が確かめる
彫る文字のマスが全部空要確認。彫る文字の無い注文は工房に回さない
お渡しの日が受付日より前日付の読み違いか書き間違い。要確認
同じ票番号が二度登録される二重にスキャンされた。2件目を登録しない
法人印で、会社名の字数が寸法に対して多い要確認。収まるかは職人が決め、店長がお客様と寸法を相談する
注文の後にお客様から変更の電話が来た店長が台帳を直し、直した記録を残す。票の画像と台帳が食い違うので、指示書に「変更あり」の印を出す
読み取りが失敗するファイルを店のライブラリに残す。処理済みへ移すのは成功時だけ

上の3行が、この構成の要確認の大半を占めます。 どれも読み取りの誤りではなく、店頭での書き方とスキャンのしかたの問題です。 店ごとの要確認の件数を毎週見て、多い店から書き方をそろえます。

Step11

記録を残す

  • 注文票のスキャンと、保存した日時・店
  • 読み取りの結果の全文(欄の値・選択マーク・字のマスの文字・信頼度)
  • 台帳に登録した値と flags、そのときの照合の表の内容
  • 店長が直した記録 … どの欄を、何から何に直したか
  • お客様に電話した日時と、確かめた内容

3つ目で照合の表の内容を残すのは、表が後から変わるためです。 気をつける字を足したり寸法の範囲を変えたりすると、過去の要確認の意味が変わります。

4つ目は、見本を足す材料になります。 同じ欄で直しが続くなら、その崩れ方の票を見本に足して、モデルを作り直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:Studio で票を1枚ずつ読み取り、結果を見比べる / 読み取りの確かめ
半自動化:上記+ライブラリへの保存を起点に読み取り、照合して台帳に登録し、要確認を店長に知らせる / 書き写し・転記・抜けの検出
本格構成:上記+台帳から工房の受け枠を毎朝数え、お渡しの日が詰まる日を店頭に知らせる / 受付の段階での納期の調整

半自動化で、1件8分が3分程度になります。 これが本記事の想定です。指示書を書く作業と台帳への転記がなくなり、人の時間は要確認の注文の確認と、職人が画像を見る時間に絞られます。 本格構成で受け枠を足すと、店頭で「その日は詰まっています」と言えるようになります。 ただし、受け枠の目安は職人の数と材質で変わるので、半自動化の台帳を数か月見て、実際に彫れた件数から決めます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
360 件
1件あたり現在時間
8 分
1件あたり導入後時間
3 分
現在  360件 × 8分 ÷ 60 = 48 時間/月
導入後 360件 × 3分 ÷ 60 = 18 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
63%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価2,200円)
79万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 実印・銀行印・認印・法人印などの注文を、店頭で手書きの複写式の注文票で受けている印章店。複数の店で受けた注文を1か所の工房で彫っていて、注文票を工房向けの指示書に書き写す作業と、注文の台帳への転記が店長の手元に集まっている場合。Microsoft 365 を使っていて、SharePoint のリストを台帳にできる場合。
向いていない
  1. 注文が月に数十件で、注文票をそのまま工房に回せば足りる場合。注文を店頭のタブレットや通販のフォームで受けていて、手書きの票が無い場合(読み取りが要りません)。なお、どの字体で彫るか、印影の配置、実印として登録できるかの判断は、お客様と職人と市区町村の窓口で決めることで、この構成は関わりません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の注文票から20枚を選ぶ(チェックの抜けがあったもの、旧字体を彫ったもの、法人印を混ぜる)
  2. その20枚について、工房で何が問題になり、店に何を問い合わせたかを書き出す
  3. Document Intelligence Studio で、店の控えの見本を5枚以上使ってカスタム テンプレート モデルを作る
  4. 残りの票を読み取り、チェック欄の状態と字のマスの文字を、票と見比べる
  5. 結果を、当時工房で問題になったことと突き合わせる

20枚は必ずやってください。 Power Automate を組む前に、「チェックの状態がどれだけそのまま読めるか」と「複写の濃さで印がかすれないか」を確かめます。

出てきた内容判断
チェックの状態がほぼそのまま読めるPower Automate との連携に進む
二つ付いたチェックが1つと読まれる見本に二重のチェックの票を足す。構成は有効
印がかすれて「付いていない」と読まれるスキャンする控えと濃さの見直しが先。 読み取りの問題ではない

3行目は珍しくありません。 複写の2枚目をスキャンしていたり、ボールペンの筆圧が弱かったりします。それが分かったこと自体が、工房で抜けが見つかっていた理由の1つです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
読み取りの新字体で彫ってしまう彫る字は票の画像で示す。 読み取りの文字は検索用
複写の2枚目でチェックがかすれる店の控え(1枚目)をスキャンする
寸法の「13.5」が「135」になる範囲の表と照らし、直さずに要確認
チェックの無い欄を推測で埋める空のまま要確認にする
ロケールを日本語に固定する指定しない。ローマ字の注文で字が欠ける
古い様式の票が混ざる文書の種類の信頼度で拾い、様式をそろえる
字のマスをまとめて1つの欄にする1字ずつ領域を分け、字ごとの信頼度を見る
まとめスキャンで注文が混ざる1枚1ファイルにする
実印として登録できるかを判断してしまう市区町村の窓口の判断。 構成では範囲の外を知らせるだけ
要確認が特定の店に偏るその店の書き方かスキャンの設定を見直す。モデルを疑うのは後
注文の後の変更が台帳に残らない店長が台帳を直したら、指示書に「変更あり」を出す

上の1行目が、この構成で最も重い失敗です。 彫った印鑑は作り直すしかなく、お客様が選んだ字体を間違えたという失敗は、値引きでは済みません。 読み取りの文字を指示書の主役にしないでください。

下の2行は、運用が始まってから効いてきます。 要確認の偏りは、モデルの精度より先に店頭の書き方を映します。注文の後の変更は、票の画像が古いまま残るので、台帳と画像のどちらを信じるかを指示書の上で示しておかないと、職人が迷います。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: お客様の氏名・電話番号・注文の内容、そして実印として登録する予定の印の文字と寸法です。

  1. 台帳を見られる人を絞る … 実印の注文は、お客様にとって重要な情報です。台帳のリストとスキャンのライブラリは、店長と工房の段取り役と職人だけが見られるようにします
  2. 票の画像を外へ出さない … 指示書は社内の台帳のビューで見ます。票の画像を個人のスマートフォンで撮って職人に送る運用をやめることも、この構成の目的の1つです
  3. 印影の画像は扱わない … この構成が読むのは注文票だけです。彫り上がった印の印影を撮って保存する仕組みは足しません
  4. 登録できるかの判断をしない … 実印として登録できるかは市区町村の決まりで、店は「お住まいの市区町村で確かめてください」と案内するまでにします
  5. 保存の期間を決める … 注文票のスキャンと台帳を何年残すかを、店の決まりとして先に決めます

誤りが起きた場合のリスクは、違う字や違う寸法で彫ることです。 前者は読み取りの文字で彫ると起き、後者は読み違いを補正すると起きます。どちらも「読み取りを、彫る根拠にしない」という決まりで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:注文票の様式をそろえる

3店で使っている注文票の様式を確かめ、古い様式が残っていれば回収します。 あわせて、スキャンするのは店の控え(1枚目)と決め、複合機の設定(1枚1ファイル、解像度、傾き補正)をそろえます。

2週目:20枚で試す

先月の注文票で、Document Intelligence Studio でモデルを作り、チェックの状態と字のマスがどれだけそのまま読めるかを確かめます。

3週目:照合の表を作る

気をつける字の一覧と、用途ごとの寸法の範囲の表を、ベテランの店長に聞きながら作ります。ここで、店長の頭の中にあった確かめ方を表に出します。

4週目:保存から台帳までをつなぐ

Power Automate で、ライブラリへの保存から読み取り、台帳への登録までを作ります。この時点では店長への知らせを出さず、台帳の flags を毎朝見るだけにします。

2か月目: 店長への知らせと、工房の「彫刻待ち」のビューを足し、指示書を手で書くのをやめます。3か月目以降: 1件8分が何分になったかを実測し、店ごとの要確認の件数を見て書き方をそろえた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-29/最終更新:2026-10-29
確認した内容情報源確認日
コネクタが Power Automate・Logic Apps で Standard の区分であること。操作「Analyze Document for Prebuilt or Custom models (v4.x API)」でモデルの ID・ファイルの中身・ロケールなどを渡すこと。入力が PDF か画像(JPG、PNG、BMP、TIFF)であること。1つの接続あたり60秒に1,200回の上限Microsoft Learn: Azure AI Document Intelligence (form recognizer) connector2026-10-29
「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」と「ファイル コンテンツの取得」。「フォルダーにファイルが作成されたとき」が非推奨でサブフォルダーで動かないこと。「項目の作成」「項目の取得」「項目の更新」Microsoft Learn: SharePoint connector2026-10-29
カスタム テンプレート モデルが、ラベルを付けた値・選択マーク・表・署名・選んだ領域を取り出し、決まった見た目の様式に向くこと。様式ごとに少なくとも5枚の見本を用意すること。サイズが S0 で500MB・F0 で4MB、文字の高さの下限が1024×768の画像で12ピクセルであることMicrosoft Learn: Custom template document model2026-10-29
2024-11-30(GA)から、カスタムモデルの欄の信頼度に単語の信頼度が含まれること。欄の信頼度が値の位置の確からしさであること。選択マークの欄は欄とチェックの信頼度を合わせて見ること。文書の種類の信頼度が低いのは様式の違いを示すこと。領域のラベルに周りの文字を含めないことMicrosoft Learn: Interpret and improve model accuracy and confidence scores2026-10-29
手書きの文字の対応言語に日本語(ja)が含まれること。言語が確かでないかぎり言語の指定を渡さないこと(不完全な文字が返ることがある)Microsoft Learn: Language and locale support for Read and Layout2026-10-29
印影の一辺の長さが8ミリの正方形より大きく25ミリの正方形より小さいものが登録でき、8mm以下・25mm以上は登録できないこと。氏名の振り仮名はカタカナで表したものに限ること。沢(澤)・辺(邊)など同字として常用される字体は登録できること(東京都中央区の例)東京都中央区: 印鑑登録について2026-10-29

実印として登録できる印の決まりは、市区町村ごとに違います。 本記事は中央区の案内を例として挙げただけで、お客様には住んでいる市区町村で確かめるよう案内してください。照合の表の字と寸法は例示です。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-2235)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次