マンション管理会社のフロント担当が、毎月の理事会に出す収支・修繕・苦情対応の報告を記録から組み立て、報告文の下書きを作る
担当する管理組合ごとに、前月の収支・修繕と点検・苦情と対応の記録をスプレッドシートから集め、毎月の理事会に出す報告文の下書きを作ります。フロント担当は下書きを読んで直し、理事長に送ります。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Make/Power Automate
- 対象業界
- 不動産
- 対象部門
- 総務
- 対象業務
- 書類作成/要約
- 主な課題
- 人手が足りない/属人化している/書類作成に時間がかかる
- AIで行う処理
- 要約
- 主な効果
- 品質標準化/属人化解消/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 理事会の1週間ほど前に、担当者が組合の収支の月次をスプレッドシートから開き、前月・予算と比べて目立つ科目に印を付ける
- 修繕の記録から、その組合の前月の点検・見積・工事を拾い、報告の文にする
- 苦情の受付の記録から、その組合の前月の苦情を拾い、部屋番号を伏せて件数と対応をまとめる
- 前回の理事会の宿題(管理会社が調べる・見積を取る等)の進み具合を書く
- 去年の同じ月の資料を開いて体裁をそろえ、文書にまとめる
- 理事長にメールで送り、意見があれば直して、理事会の日に印刷して持っていく
- 自動毎朝 Apps Script が理事会の日程を見て、8日後に理事会がある組合を拾う
- 自動その組合の前月の収支・修繕と点検・苦情・前回の宿題を各シートから集める
- 自動収支は科目ごとに前月との差と予算との差を計算し、決めた幅を超えた科目に印を付ける
- 自動苦情の記録から部屋番号と氏名の列を外し、本文の中の部屋番号らしい文字列も伏せる
- 自動組合ごとの材料を Claude API に渡し、4つの節の報告文を JSON で受け取る
- 自動部屋番号や伏せるべき言葉が報告文に無いかを検査する
- 自動ひな形の文書をコピーして報告文を差し込み、担当者のフォルダに置いて知らせる
- 人担当者が下書きを読み、直して、収支状況の書面と合わせて理事長に送る
各工程の詳しい説明を読む
- 理事会の1週間ほど前に、担当者が組合の収支の月次をスプレッドシートから開き、前月・予算と比べて目立つ科目に印を付ける
- 修繕の記録から、その組合の前月の点検・見積・工事を拾い、報告の文にする
- 苦情の受付の記録から、その組合の前月の苦情を拾い、部屋番号を伏せて件数と対応をまとめる
- 前回の理事会の宿題(管理会社が調べる・見積を取る等)の進み具合を書く
- 去年の同じ月の資料を開いて体裁をそろえ、文書にまとめる
- 理事長にメールで送り、意見があれば直して、理事会の日に印刷して持っていく
(a)毎月80件の資料づくりが残業になる。 1件90分で月120時間です。理事会そのものに出る時間は別で、資料は理事会と理事会の間の夜に作ることになります。
(b)書き方が担当者ごとに違う。 ある担当者は苦情を1件ずつ細かく書き、別の担当者は件数だけを書きます。担当替えのたびに、理事会から「前の人のほうが分かりやすかった」「前は書いてあったことが今は無い」と言われます。
(c)部屋が分かる書き方が混ざる。 3番目で部屋番号は伏せても、「最上階の角部屋からの苦情」「ペットを飼っている2階の方」のように、書きぶりで部屋が分かってしまうことがあります。忙しい月ほど、記録の言葉をそのまま写してしまいます。
(d)前回の宿題が抜ける。 4番目は、前回の議事録を読み直さないと書けません。宿題が報告から抜けると、理事会で「あの件はどうなったか」と聞かれ、その場で答えられません。
- 【自動】 毎朝 Apps Script が理事会の日程を見て、8日後に理事会がある組合を拾う
- 【自動】 その組合の前月の収支・修繕と点検・苦情・前回の宿題を各シートから集める
- 【自動】 収支は科目ごとに前月との差と予算との差を計算し、決めた幅を超えた科目に印を付ける
- 【自動】 苦情の記録から部屋番号と氏名の列を外し、本文の中の部屋番号らしい文字列も伏せる
- 【自動】 組合ごとの材料を Claude API に渡し、4つの節の報告文を JSON で受け取る
- 【自動】 部屋番号や伏せるべき言葉が報告文に無いかを検査する
- 【自動】 ひな形の文書をコピーして報告文を差し込み、担当者のフォルダに置いて知らせる
- 【人】 担当者が下書きを読み、直して、収支状況の書面と合わせて理事長に送る
8番目は省きません。 理事会に出す資料の文責は管理会社にあります。担当者が読むのは、白紙から書く代わりに、4つの記録がすでにまとまった下書きです。
3番目を AI の外に置いているのが、この設計の要です。 「電気料金が予算より大きい」という判断は、計算と決めた幅で機械的に出せます。AIに収支の表を読ませて差を見つけさせると、計算を誤った説明が下書きに入ります。
担当者の仕事の順番も変わります。 これまでは理事会の直前に資料を作り始めていましたが、8日前に下書きが届くので、確認待ちと「理由は確認中」の科目を先に片づけてから、提案を考える時間が取れます。
02今回想定するシステム構成
収支の月次・修繕と点検の記録・苦情の受付の記録・理事会の日程と宿題 (Google スプレッドシート) │ ▼【トリガー】毎朝(時間主導型のトリガー)→ 8日後に理事会がある組合 Google Apps Script ├──▶ 組合ごとに前月の記録を集める ├──▶ 収支の差を計算し、決めた幅を超えた科目に印を付ける ├──▶ 苦情の記録から部屋番号・氏名を外す ▼ Claude API ── 4つの節(収支・修繕と点検・苦情と対応・前回の宿題)の報告文を JSON で返す ▼ Google Apps Script ├──▶ 部屋番号や伏せる言葉が無いかを検査 └──▶ ひな形の文書をコピーして差し込み、担当者のフォルダへ ▼ 【人】担当者が直す ──▶ 収支状況の書面と合わせて理事長へ
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 実行環境 | Google Apps Script | Power Automate、Make |
| 生成AI | Claude API(Messages API、構造化出力) | OpenAI API、Gemini API |
| 保管 | Google スプレッドシート(収支の月次、修繕と点検、苦情の受付、日程と宿題、処理ログ) | - |
| 文書 | Google ドキュメント(報告のひな形) | - |
新しく足すのは、Apps Script と、報告のひな形・処理ログだけです。 記録のシートは今のものを読むだけで、この構成からは書き込みません。 管理員と点検業者が入れている記録の運用は変わりません。
収支状況の書面は、この構成で作りません。 標準管理委託契約書のコメントでは、毎月の収支状況の書面の交付は「適正化法施行規則第87条第5項に基づく書面の交付」であり、施行規則の規定に従って交付する必要があるとされています。会計の仕組みから出した書面をそのまま使い、報告文は理事が読むための説明として添えます。 AIが書いた文を、法令で決まった書面の代わりにはしません。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
毎朝、時間主導型のトリガーで動かし、8日後に理事会がある組合だけを処理します。 Apps Script の時間主導型のトリガーは毎分から月1回までの間隔で動かせますが、理事会の日は組合ごとにばらばらなので、月に1度まとめて作るより、毎朝その日の分だけ作るほうが合います。公式のページでは、毎朝の決まった時刻に設定してもその時刻から1時間のあいだのどこかで動くことがあるとされているので、担当者の出勤前に終わる時刻に置きます。
8日前にしているのは、担当者が直して理事長に送り、理事長の意見を受けて直す時間を取るためです。 理事長に資料を送るのは理事会の5日前、という決まりの会社なら、3日を担当者の手直しに使えます。
記録がそろっていないと止まります。 収支の月次は月初の数日で確定するので、前月の収支が「確定」になっていなければ、その組合は作らずに担当者へ知らせ、翌朝もう一度見ます。 修繕と苦情の記録は日々入るので、作った時点までのものを使います。
トリガーは担当者個人のアカウントではなく、部署で共有しているアカウントで作ります。 公式のページでは、インストール型のトリガーは作成者のアカウントで実行されるとされています。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 収支の月次 | 組合、月、会計(管理費・修繕積立金)、科目、実績、予算、確定の印 | 収支の月次のシート |
| 修繕と点検の記録 | 組合、日付、区分(法定点検・定期点検・修繕の見積・発注・完了)、内容、業者、金額、次の予定 | 修繕と点検のシート |
| 苦情の受付の記録 | 組合、受付日、部屋番号、申出者、分類(音・水漏れ・ごみ・駐車・ペット・その他)、内容、対応、状態 | 苦情の受付のシート |
| 理事会の日程と宿題 | 組合、理事会の日、前回の宿題、担当、進み具合のメモ | 日程と宿題のシート |
| 組合ごとの決まり | 報告に入れる節、科目の説明を付ける幅、理事長の名前 | 組合の設定のシート |
質を決めるのは、苦情の記録の「分類」と「状態」と、宿題の「進み具合のメモ」です。 分類と状態が入っていれば、報告文の骨組み(何の苦情が何件、うち何件が対応済み)はスクリプトでも作れます。AIに任せるのは、その骨組みに対応の要点を添える部分です。 進み具合のメモが空の宿題は、報告文に「進み具合の記録なし」と出し、担当者が書き足します。
部屋番号と申出者の列は、取得はしても AI には渡しません。 同じ部屋から同じ苦情が続いているかを数えるためにスクリプトの中でだけ使い、報告文の材料からは外します。
データの取得方法を決める
すべて同じスプレッドシートの別のシートにあるので、Apps Script から範囲をまとめて読み、組合と月で絞ります。
| 取るもの | どう取るか | 何に使うか |
|---|---|---|
| 前月の収支 | 組合と月で絞り、確定の印を確かめる | 差の計算と説明の材料 |
| 前々月の収支 | 同じ組合の1つ前の月 | 前月との差 |
| 前月の修繕と点検 | 組合と日付で絞る | 修繕と点検の節 |
| 前月の苦情 | 組合と受付日で絞る。状態が「対応中」の過去の苦情も含める | 苦情と対応の節 |
| 前回の宿題 | 組合で最新の理事会の行 | 宿題の節 |
苦情は、前月に受けたものに加えて、それより前に受けて「対応中」のままのものも取ります。 理事会が気にするのは、先月の件数より片づいていない苦情がいくつ残っているかです。
差の計算はスクリプトで行います。 科目ごとに「前月との差」「予算との差」「予算に対する比率」を出し、組合の設定のシートにある幅(たとえば予算比で10%、かつ金額で5万円)を超えた科目に印を付けます。AIに渡すのは、印の付いた科目の名前、計算済みの差、その科目の前月の修繕と点検の記録だけです。
AIへ渡す前に整形する
- 確定の印を確かめる … 前月の収支が確定していなければ作りません
- 苦情の列を外す … 部屋番号と申出者の列を材料から外します
- 本文の中の部屋番号を伏せる … 「305号室」「3階の東側」のような文字列を、決まった記号に置き換えます
- 件数を数える … 苦情の分類ごとの件数、対応済みと対応中の件数をスクリプトで数えます
- 同じ部屋からの続く苦情に印を付ける … 部屋番号は渡さず、「同じ申出が3か月続いている」という印だけを付けます
- 差の大きい科目に修繕の記録を結ぶ … 修繕費が予算を超えたなら、前月の修繕の完了の記録を並べます
- 組合の決まりを読む … 節の順番、入れない節(小規模で苦情の節を設けない組合など)を設定から読みます
3番目は、AIの指示と別に持つ防ぎです。 管理員の記録には「305の方から」のように部屋番号が書かれていることが多く、列を外しただけでは本文に残ります。 渡す前に伏せ、さらに第7章の出力の検査で、報告文に部屋番号らしい文字列が無いかをもう一度見ます。
5番目の印は、理事会が知るべきことです。 同じ申出が何か月も続いているのは、対応の方法を理事会で決める必要がある合図です。どの部屋かは出さず、「続いている」ことだけを伝えます。
AIに処理させる
させるのは、4つの節それぞれを、理事が数分で読める報告文に縮めることです。
| 節 | 書くこと | 材料 |
|---|---|---|
| 収支 | 印の付いた科目について、差の理由として記録から分かることを1〜2文 | 計算済みの差、関連する修繕と点検の記録 |
| 修繕と点検 | 前月に行った点検・見積・工事と、次の予定 | 修繕と点検の記録 |
| 苦情と対応 | 分類ごとの件数、主な対応、続いている申出 | 伏せた後の苦情の記録、件数、続いている印 |
| 前回の宿題 | 宿題ごとの進み具合と、次の理事会までの予定 | 宿題と進み具合のメモ |
収支の節では、差の理由を記録から探すだけにします。 修繕費が予算を超えた月に、修繕の完了の記録に「給水ポンプの部品交換」があれば、それを理由として書きます。記録に理由が見当たらなければ、「理由は確認中」と書かせます。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 金額・差・比率を書く・計算する | 計算済みの値をスクリプトが差し込む。AIは記号で書く |
| 部屋番号・氏名・部屋が分かる言い回しを書く | 理事会の資料は理事全員に配られる |
| 苦情の申出者や相手を評価する | 「迷惑な住人」などの書き方は、理事会で争いのもとになる |
| 理事会への提案・判断を書く | 何を決めるかは理事会が決める。管理会社の提案は担当者が書く |
| 記録にない経緯を補う | 報告は管理会社の記録に基づくもの |
2行目と3行目が、この題材で特に気を付けるところです。 苦情の記録には、申出者の感情的な言葉や、相手の住人についての推測が書かれていることがあります。それをそのまま縮めると、理事会の資料に一方の言い分だけが載ります。 指示で、事実(何の申出が、いつ、何件)と対応(管理会社が何をしたか)だけを書かせます。
指示内容を固定する
あなたはマンション管理会社のフロント担当で、管理組合の理事会に出す
月次の報告文を書く立場です。以下の材料だけを使い、4つの節の報告文を
それぞれ数文で書いてください。理事が数分で読める長さにしてください。
【節ごとの書き方】
- finance:「差の大きい科目」の各科目について、関連する記録から分かる
理由を1〜2文で書く。金額・差・比率は【差1】のような記号で書き、数字を
直接書かない。記録から理由が分からなければ「理由は確認中」と書く。
- maintenance:前月の点検・見積・工事の内容と、次の予定を書く。
- complaints:分類ごとの件数は【件数_音】のような記号で書く。主な対応と、
「続いている申出」がある場合はそのことを書く。
- followups:前回の宿題ごとに、進み具合と次の予定を書く。
進み具合のメモが空なら「進み具合の記録なし」と書く。
【厳守事項】
- 部屋番号、階と方角、氏名、家族構成、ペットの種類など、
部屋や人が分かる表現を書かないでください。
- 苦情の申出者・相手方を評価する言葉を書かないでください。
書くのは申出の内容と、管理会社が行った対応だけです。
- 理事会への提案や、理事会が決めるべきことの結論を書かないでください。
- 材料にない経緯・理由・予定を補わないでください。
- 金額・件数・日付以外の数字も、材料にあるものだけを使ってください。
- used_tokens には、本文で使った記号をすべて並べてください。
【組合名】{association}(材料の中の固有名は書いてよいのは組合名と業者名のみ)
【差の大きい科目】{finance_flags}
【修繕と点検の記録】{maintenance}
【苦情の記録(伏せた後)】{complaints}
【前回の宿題】{followups}
「階と方角」を書き足しているのは、部屋番号を伏せても残るからです。 管理員の記録には「5階の北側」「角部屋」のような書き方がよく出てきます。小さなマンションでは、これだけで部屋が分かります。
「評価する言葉を書かない」も外せません。 何も言わないと、記録の中の「何度言っても改善しない」を「改善の意思が見られない」と縮めることがあり、管理会社がその住人を評価した文になります。
出力形式を固定する
Claude API の構造化出力で、次の形の JSON を受け取ります。 公式のページでは、output_config.format に json_schema を指定し、オブジェクトには additionalProperties: false を付けることとされています。
{
"association_id": "M-0213",
"finance": "",
"maintenance": "",
"complaints": "",
"followups": "",
"used_tokens": ["【差1】", "【件数_音】"],
"unknown_reasons": ["修繕費"],
"needs_review": ""
}
1つ目の理由は、節ごとにひな形へ差し込めることです。 ひな形の文書には節ごとの見出しと差し込みの記号を置いておき、本文の replaceText で記号を置き換えます。 公式のページでは、replaceText は検索の文字列を正規表現として扱い、文字のまとまりごとに照合するとされているので、ひな形の記号は書式を変えずに1度で入力しておきます。
2つ目は、記号の使い方を検算できることです。 本文の記号が used_tokens と一致するか、すべてが渡した記号かを確かめてから、スクリプトが記号を計算済みの値に置き換えます。
3つ目は、unknown_reasons で担当者の手を向けられることです。 「理由は確認中」と書いた科目が並ぶので、担当者は会計の担当に問い合わせる科目がすぐ分かります。
出力の検査は、置き換えの前にまとめて行います。
| 検査 | 結果が合わないとき |
|---|---|
本文の記号と used_tokens が一致し、渡した記号だけを使っている | 確認待ち |
| 記号を除いた本文に、金額らしい数字が無い | 確認待ち |
| 「号室」「階の」など、部屋が分かる言い回しの一覧に当たらない | 確認待ち。担当者が該当箇所を書き換える |
needs_review が空 | 確認待ち |
3行目の言い回しの一覧は、運用で育てます。 担当者が書き換えた箇所を処理ログに残し、同じ言い回しが続けば一覧に足します。構造化出力は文字列の長さの制約に対応していないため、節の長さもスクリプトで数え、長すぎれば確認待ちにします。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 記録のシート | Apps Script の読み取り | 組合と月で絞って集める |
| Claude API | UrlFetchApp.fetch | 組合ごとに報告文を受け取る |
| Google ドキュメント | ひな形の makeCopy と replaceText | 報告文の下書きを作る |
| Google ドライブ | 担当者のフォルダ | 下書きを置き、担当者に知らせる |
| 会計の仕組み | 既存の出力 | 収支状況の書面は従来どおり出す |
下書きは組合ごとのフォルダに置きます。 ドライブのファイルの makeCopy は、名前を付けて指定のフォルダにコピーを作るので、「2026-10 理事会報告(下書き)」のような名前で組合のフォルダに作ります。 理事長に送るときは、担当者が直した後で getAs('application/pdf') で PDF にするか、文書の共有で送ります。
記録のシートにも会計の仕組みにも書き込みません。 この構成が出すのは下書きまでです。
知らせは、担当者ごとにまとめて送ります。 同じ朝に複数の組合の下書きができた担当者には、1通のメールに組合名と下書きへのリンク、確認待ちの節を並べます。組合ごとに1通ずつ送ると、確認待ちの知らせが埋もれます。
人が確認する
- 確認待ちを先に見る … 検査で止まった下書きは、該当の節に印が付いています。多くは部屋が分かる言い回しの書き換えです
- 苦情と対応の節を読む … 部屋や人が分かる書き方が無いか、一方の言い分だけになっていないかを見ます
- 収支の節を収支状況の書面と見比べる … 差し込まれた数字が書面と一致するか、「理由は確認中」の科目を調べて書き足します
- 宿題の節を直す … 進み具合の記録が無い宿題を書き足します
- 管理会社からの提案を書き足す … 理事会で決めてほしいことは、担当者が自分の言葉で書きます
- 理事長に送る … 収支状況の書面と合わせて送ります
1件30分を目安にします。 白紙から90分かけて書いていたものを、30分で読んで直す形です。5番目の提案は、AIに書かせていない分、担当者の時間が残ります。 理事会で何を決めてほしいかを考えることは、フロント担当の仕事の中心だからです。
理事長から返ってきた意見も、次の月の材料にします。 「苦情はもっと短くてよい」「修繕は金額も並べてほしい」のような意見は組合ごとに違います。担当者が組合の設定のシートに一言書いておけば、翌月から指示に足して渡せます。 担当替えのときも、この欄を読めば、その理事会が何を求めているかが分かります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 前月の収支が確定していない | その組合は作らず担当者へ知らせ、翌朝もう一度見る |
| 理事会の日程が変わった | 日程のシートを直せば、翌朝から新しい日で数える。作った下書きは残す |
| 苦情の記録の分類が空 | 「分類なし」として件数に含め、担当者の確認に回す |
| 部屋が分かる言い回しが残る | 確認待ちにし、担当者が書き換える。言い回しを一覧に足す |
| 記録に理由が無い差の大きい科目 | 「理由は確認中」と書き、unknown_reasons に並べる |
| 進み具合のメモが空の宿題 | 「進み具合の記録なし」と書き、担当者が書き足す |
| API が応答しない・混み合い | その組合を翌朝に回す。続けて失敗したら担当者へ知らせる |
| 1回の実行が時間切れになる | 処理済みの印を見て、次の実行で続きを作る |
最後の行は、Apps Script の上限から来ます。 公式の上限の表では、スクリプトの実行時間は1回あたり6分です。1日に理事会が重なる組合は数組合なので普段は収まりますが、月初の土日に理事会が集中する週は、組合ごとに処理済みの印を付けながら作ります。 作成できる文書は Google Workspace のアカウントで1日1,500なので、下書きの数で困ることはありません。
記録を残す
- 組合ごとに、作った日時、使った記録の範囲(月、行の番号)
- 差の計算の結果と、印を付けた科目と幅
- AIに渡した材料(伏せた後のもの)と、返ってきた JSON の全文
- 検査の結果と、確認待ちにした理由
- 担当者が書き換えた箇所(部屋が分かる言い回しを書き換えたものは必ず)
- 理事長に送った日と、送った版
3つ目で「伏せた後の材料」を残すのは、伏せ方の漏れを後から見つけるためです。 報告文に部屋が分かる書き方が出たとき、材料の段階で残っていたのか、AIが書き足したのかを分けられます。材料の段階なら前処理の伏せ方を、AIなら指示を直します。
6つ目の「送った版」は、理事会の後に効きます。 理事会で「資料にこう書いてあった」と言われたとき、担当者が直す前の下書きか、直した後の版かをすぐに確かめられます。
04実装レベルの3段階
最小構成では80組合をさばけません。 書き出しに時間がかかるので、確かめるための段階です。 本記事の想定は半自動化です。 担当者は理事会の8日前に下書きを受け取り、直して送ります。1件90分が30分になるのはこの段階です。 差が大きいのは、4つの記録を行き来して拾う作業がなくなるからです。 本格構成で足すのは、宿題の更新です。 いまは日程と宿題のシートの「前回の宿題」を担当者が手で入れていますが、議事録の下書きから宿題を拾えば、その手間も減ります。議事録を作る仕組みと同じ表に宿題を書くように合わせてから足してください。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2〜3か月回すと、確認待ちになりやすい組合と、書き換えの多い言い回しが分かります。伏せる言い回しの一覧が育ってから本格構成に進むほうが、理事長とのやり取りまでつないだときに、部屋が分かる書き方が外に出る心配が減ります。
05工数削減シミュレーション
導入後 80件 × 30分 ÷ 60 = 40 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- フロント担当1人が10前後の管理組合を受け持ち、毎月の理事会の資料づくりが担当者の残業になっているマンション管理会社。収支・修繕・点検・苦情の記録が Google スプレッドシートにあり、Google Workspace を使っている会社。報告文の書き方が担当者ごとに違い、担当替えのたびに理事会から「前の人のほうが分かりやすかった」と言われる場合。
- 担当する組合が少なく、理事会が年に数回の会社。記録が紙の日報や管理システムの中にしかなく、表として取り出せない場合。理事会の資料を管理システムの帳票機能でそのまま出せている場合。なお、管理事務の報告や収支状況の書面の交付そのものは、法令と管理委託契約に沿って別に行います。
07最小構成で試す方法
- 担当する組合から3組合を選び、先月の記録を書き出す(苦情の多い組合を1つ入れる)
- 部屋番号と氏名を手で消し、収支は差の大きい科目と計算済みの差だけを書き出す
- 手元の Claude の画面に、第7章の指示と材料を貼る
- 出てきた報告文を、実際に理事会に出した報告と並べて読む
- 部屋が分かる書き方が無いか、数字を直接書いていないかを確かめる
苦情の多い組合は必ず入れてください。 この構成の難しさは、苦情の節に出ます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 実際の報告と遜色ない | スクリプトでつなぐ段階に進む |
| 部屋が分かる言い回しが残る | 指示の禁止の例を足し、前処理で伏せる言葉を増やす |
| 苦情の申出者や相手を評価する | 指示で禁じる。直らなければ苦情の節は件数と対応の一覧にとどめる |
| 収支の理由をこしらえる | 「記録に無ければ確認中」を強める |
試すときは、担当者を2人以上入れてください。 同じ下書きでも、どこを直したくなるかは担当者で違います。2人が同じ箇所を直すなら指示の問題、1人だけなら書き方の好みと分けられます。
3行目が直らない場合でも、構成をやめる必要はありません。 苦情の節だけをスクリプトの集計(分類ごとの件数と対応の状態)にして、収支と修繕と宿題の節だけを AI に書かせる形でも、工数の大半は減ります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 部屋番号を伏せても階と方角が残る | 指示で禁じ、言い回しの一覧で検査する |
| 苦情の記録の感情的な言葉をそのまま縮める | 事実と対応だけを書かせる。評価の言葉を禁じる |
| 収支の差を AI に計算させてしまう | 差はスクリプトで計算し、記号で差し込む |
| 収支の理由をこしらえる | 記録に無ければ「理由は確認中」と書かせる |
| 確定前の収支で作ってしまう | 確定の印を見てから作る |
| 報告文を収支状況の書面の代わりにする | 書面は会計の仕組みから従来どおり出す |
| ひな形の記号が置き換わらない | 記号の途中で書式を変えない |
| 担当者のアカウントでトリガーを作る | 作成者のアカウントで動く。部署の共有アカウントで作る |
| 対応中の古い苦情が報告から抜ける | 前月より前の「対応中」も取る |
| 提案まで AI に書かせる | 提案は担当者が書く。理事会が何を決めるかは管理会社の判断の領域 |
| 別の組合の記録が混ざる | 組合の番号で絞った後、材料の組合の番号がすべて同じかを確かめる |
| 理事長の好みが反映されない | 組合の設定のシートに意見を書き、指示に足して渡す |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、理事会の資料を通じて特定の住人について書いてしまう失敗です。マンションの中の関係に長く残るので、件数が少なくても重く扱ってください。
6行目は、仕組みの位置づけの問題です。 報告文がよくできていても、法令と契約で決まった書面の交付は別です。担当者が「下書きを送ったから足りる」と考えない運用にしてください。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 管理組合の収支、修繕と点検の内容と業者、苦情の内容と対応、そして記録の中にある部屋番号と申出者の氏名です。
- 外部へ渡す範囲を、報告文に必要なものまでに限る … Claude API に渡すのは、伏せた後の苦情の記録、計算済みの差、修繕と点検の記録、宿題です。部屋番号と氏名の列は渡しません
- 部屋が分かる書き方を二重に止める … 前処理で伏せ、出力を検査します。最後は担当者が読みます
- 理事会への提案を AI に書かせない … 管理会社として何を提案するかは担当者の責任で書きます
- 法令と契約で決まった書面を置き換えない … 収支状況の書面と、年1回の管理事務の報告は従来どおり行います
- API キーをスクリプトに直接書かない … スクリプトのプロパティに置き、スクリプトを編集できる人を限ります
- 組合ごとの共有の範囲を守る … 下書きは組合ごとのフォルダに置き、担当外の組合の記録が混ざらないようにスクリプトで組合の番号を確かめます
- API の利用の条件を確かめる … 渡したデータの保存の期間や学習への利用の扱いを、Anthropic の利用条件と自社の契約の形で確かめ、管理委託契約の秘密保持の決まりと食い違わないかを社内で確かめてから本番の記録を流します
誤りが起きた場合のリスクは、特定の住人が分かる報告を理事会に出すことと、誤った収支の説明を出すことの2つです。前者は伏せる処理と検査と人の確認で、後者は差をスクリプトで計算し、書面と見比べることで防ぎます。どちらも、理事長に送る前に担当者が読む形にしておけば、理事会に届く前に止められます。
10まず何から始めるか
1週目:苦情の記録の書き方をそろえる
苦情の受付の記録に、分類と状態の列が必ず入るようにします。管理員に、本文に部屋番号を書く場合は決まった形(「305号室」など)で書いてもらうと、伏せる処理が当たりやすくなります。
2週目:3組合で試す
苦情の多い組合を含む3組合で、手元の Claude の画面で報告文を作らせ、実際の報告と並べて読みます。部屋が分かる書き方と、数字の直書きを最優先で見ます。
3週目:ひな形と組合ごとの設定を作る
報告のひな形の文書を作り、節の見出しと差し込みの記号を置きます。組合ごとに、説明を付ける幅と入れる節を設定のシートに書きます。
4週目:1人の担当者の組合だけでつなぐ
Apps Script で8日前に記録を集め、報告文を作り、ひな形に差し込むところまでを、1人の担当者の10組合だけで動かします。
2か月目: 全担当者に広げ、書き換えた言い回しを一覧に足していきます。3か月目以降: 1件あたりの確認時間を測り、30分を超える組合の理由を見て、設定と指示を直します。担当替えのあった組合で、理事会から報告の書き方について何も言われなくなった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 標準管理委託契約書の第10条で、管理業者が毎月末日までに前月の収支状況に関する書面を交付するとされていること。コメントで、その交付が適正化法施行規則第87条第5項に基づく書面の交付とされていること。管理業者管理者方式への対応などで標準管理委託契約書の改正が進められていること | 国土交通省: マンション標準管理委託契約書の改正(各論) | 2026-10-14 |
| 時間主導型のトリガーが毎分から月1回まで動かせ、時刻が少しずれうること。インストール型のトリガーが作成者のアカウントで動くこと | Google: Installable triggers | 2026-10-14 |
| 実行時間が1回6分、文書の作成が Workspace で1日1,500であること | Google: Quotas for Google Services | 2026-10-14 |
replaceText が検索の文字列を正規表現として扱い、文字のまとまりごとに照合すること | Google: Class Body | 2026-10-14 |
makeCopy が指定のフォルダに名前を付けてコピーを作ること。getAs で PDF に変換できること | Google: Class File | 2026-10-14 |
構造化出力を output_config.format の json_schema で指定し、additionalProperties: false が必要なこと。文字列の長さの制約に対応しないこと | Claude: Structured outputs | 2026-10-14 |
管理事務の報告と収支状況の書面の交付は、マンション管理適正化法と管理委託契約に沿って行ってください。 本記事は、理事会の報告文の下書きづくりに絞って公式の資料で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
このユースケース(UC-1544)についてのご相談はこちらから。
