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市役所の生活保護のケースワーカーが家庭訪問・面談のメモから、Azure OpenAI でケース記録の下書きと次回の訪問で確かめる事項を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

家庭訪問や所内面談でケースワーカーが取ったメモと、その世帯の援助方針から、Azure OpenAI でケース記録の下書きを作ります。事実とケースワーカーの所見を分けて書き、次回の訪問で確かめる事項も添えます。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Power Automate
対象業界
自治体
対象部門
総務
対象業務
要約/記録・議事録作成
主な課題
人手が足りない/引き継ぎができていない/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
要約
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
200h/月
AI導入後
80h/月
想定削減
60%
年間削減
1,440h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 訪問の前に、業務システムで世帯の援助方針と前回の記録を読み、確かめることをメモに書く
  2. 家庭訪問・面談を行い、本人・世帯員の話と見たこと、伝えたことを紙のメモに書き留める
  3. 帰庁後、業務システムのケース記録の画面を開き、前回の記録と援助方針を並べる
  4. メモを見ながら、訪問の目的、把握した事実(健康状態、社会生活、家計・住環境、就労など)を書く
  5. ケースワーカーの所見と、援助方針の進み具合、今後の対応を書く
  6. 次回の訪問で確かめることを、自分の手帳や記録の末尾に書く
  7. 記録を確定し、査察指導員の決裁に回す
導入後(After)
  1. 人訪問の前に、下書き画面で世帯番号を入れ、援助方針と前回の確認事項を確かめる
  2. 人家庭訪問・面談を行い、いまと同じようにメモを取る。所見にあたる一言を「所見:」で始めて書く
  3. 人帰庁後、下書き画面にメモを打ち込み、訪問の種類と目的を選んで送る
  4. 自動Azure Functions が、業務システムの書き出しから援助方針と前回の確認事項を引く
  5. 自動Azure OpenAI が、項目ごとの事実、所見、援助方針の進み具合、次回の確認事項を下書きする
  6. 自動プログラムが、援助方針の項目のうちメモが触れていないものを「確かめていない項目」として足す
  7. 人ケースワーカーが下書きを読み、所見を書き足し、事実と違うところを直す
  8. 人直した文を業務システムのケース記録に貼り付けて確定し、決裁に回す
  9. 人査察指導員が、いまと同じく記録を読んで決裁する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 訪問の前に、業務システムで世帯の援助方針と前回の記録を読み、確かめることをメモに書く
  2. 家庭訪問・面談を行い、本人・世帯員の話と見たこと、伝えたことを紙のメモに書き留める
  3. 帰庁後、業務システムのケース記録の画面を開き、前回の記録と援助方針を並べる
  4. メモを見ながら、訪問の目的、把握した事実(健康状態、社会生活、家計・住環境、就労など)を書く
  5. ケースワーカーの所見と、援助方針の進み具合、今後の対応を書く
  6. 次回の訪問で確かめることを、自分の手帳や記録の末尾に書く
  7. 記録を確定し、査察指導員の決裁に回す

(a)事実を文章にする作業に時間がかかる。 メモは「通院月2→1、本人『足が痛い』、長女同居継続、冷蔵庫空き目立つ」のような断片で、これを項目ごとの文章に直すのに1件10分前後かかります。判断の数行を書くために、清書に長い時間を使っています。

(b)事実と所見が混ざる。 「冷蔵庫の中身が少なく、食費のやりくりに困っていると思われる」のように、見たことと推し量ったことが1文に入りがちです。 研修教材が分けて書くよう求めているのはこの点で、後から読む人が、どこまでが確かめた事実かを区別できなくなります。

(c)次回の確認事項が引き継がれない。 手帳に書いた確認事項は、担当が交代すると消えます。前任の記録を何十件も読み返して、何を確かめ続けていたかを拾い直すことになります。

(d)書き方がケースワーカーごとに違う。 項目の立て方も長さも人によって違い、査察指導員が決裁のときに読み取るのに時間がかかります。

  1. 【人】 訪問の前に、下書き画面で世帯番号を入れ、援助方針と前回の確認事項を確かめる
  2. 【人】 家庭訪問・面談を行い、いまと同じようにメモを取る。所見にあたる一言を「所見:」で始めて書く
  3. 【人】 帰庁後、下書き画面にメモを打ち込み、訪問の種類と目的を選んで送る
  4. 【自動】 Azure Functions が、業務システムの書き出しから援助方針と前回の確認事項を引く
  5. 【自動】 Azure OpenAI が、項目ごとの事実、所見、援助方針の進み具合、次回の確認事項を下書きする
  6. 【自動】 プログラムが、援助方針の項目のうちメモが触れていないものを「確かめていない項目」として足す
  7. 【人】 ケースワーカーが下書きを読み、所見を書き足し、事実と違うところを直す
  8. 【人】 直した文を業務システムのケース記録に貼り付けて確定し、決裁に回す
  9. 【人】 査察指導員が、いまと同じく記録を読んで決裁する

7番目が、この設計の分かれ目です。 下書きはそのまま記録になりません。ケースワーカーが自分の見聞きしたことと照らし、所見を自分の言葉で書いてから確定します。 記録の責任はいまと変わりません。

2番目の「所見:」の一言も、意図して置いた手順です。 メモに所見の目印があれば、AIはそこだけを所見の欄に入れ、それ以外のメモはすべて事実の欄に入れます。 事実と所見を分ける作業を、メモを取る段階で済ませておく形です。

02今回想定するシステム構成

構成図
家庭訪問・所内面談
   │  ケースワーカーが紙のメモ(所見は「所見:」で始める)
   ▼【トリガー】下書き画面からの送信
Azure Functions ── 世帯番号で引く
   ├──▶ 業務システムの書き出し:援助方針、前回の確認事項、世帯の構成(続柄のみ)
   ▼
Azure OpenAI(構造化出力)
   │   ① 訪問の目的   ② 項目ごとの事実   ③ 所見(メモにあるものだけ)
   │   ④ 援助方針の進み具合   ⑤ 次回の確認事項   ⑥ 記載の欠け
   ▼
Azure Functions ── 援助方針の項目との照合、氏名らしい文字列の検知
   ▼
下書き画面に表示
   ▼
【ケースワーカーが所見を書き、事実を直す】
   ▼
業務システムのケース記録に貼り付けて確定 → 査察指導員の決裁
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API
連携Azure Functions(下書き画面の受付、援助方針の取得、照合、表示)Power Automate
保管Azure Blob Storage(入力、下書き、確定までの記録)庁内のファイルサーバー
記録の本体既存の生活保護の業務システム-

業務システムのケース記録には、この構成から書き込みません。 確定するのはケースワーカーで、貼り付けるかどうか、どこを直すかはケースワーカーが決めます。 業務システムとのつなぎは、援助方針と前回の確認事項を毎晩書き出してもらうところだけです。

Azure OpenAI を選ぶ理由の1つ目は、構造化出力です。 公式の説明では、構造化出力は指定した JSON スキーマに従うもので、Chat Completions API と Responses API の両方で使えるとされています。事実の項目と所見を別のフィールドで受けられるので、 所見の欄が空かどうかをプログラムが確かめられます。

2つ目は、データの扱いです。 公式のページでは、プロンプトと応答は他の顧客や OpenAI に提供されず、基盤モデルの学習に使われないとされています。住民の生活の状況という重い情報を扱うので、 自治体として契約と権限の管理を一つにまとめられる Azure の中に置きます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

ケースワーカーが下書き画面からメモを送ったときに動かします。 訪問から戻った順に1件ずつ送り、まとめて夕方に送る運用にはしません。 時間がたつほどメモの断片の意味を思い出せなくなり、下書きの直しが増えるからです。

下書き画面は、庁内の業務用パソコンからだけ開けるようにします。 職員の認証を通った人だけが使え、送った人の職員番号が入力と一緒に残る作りにします。どの職員がどの世帯の下書きを作ったかを、後から追えるようにするためです。

どのネットワークの区分から Azure へつなぐかは、自治体の情報セキュリティポリシーに沿って情報政策の部署と決めます。 この部分は自治体ごとに違い、本記事では前提を置きません。つなげる区分が決まらないうちは、第8章の最小構成で試すにとどめてください。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
訪問のメモ本人・世帯員の話、見たこと、伝えたこと、「所見:」で始まる一言ケースワーカーが下書き画面に打ち込む
訪問の種類と目的計画に基づく訪問、臨時訪問、所内面談、入院入所者の訪問のどれか。訪問の目的下書き画面の選択欄
援助方針援助の目標と、確かめ続ける項目(通院、就労、家計など)業務システムの毎晩の書き出し
前回の確認事項前回の記録の末尾に書いた「次回確かめること」業務システムの毎晩の書き出し
世帯の構成世帯員の続柄と年代だけ(世帯主、長女・10代など)業務システムの毎晩の書き出し
記録の書き方の決まり項目の立て方、言い回し、略語Azure Functions の設定に置く

質を決めるのは、援助方針と前回の確認事項です。 これが無いと、AIは「何を確かめるはずだったか」を知りません。援助方針に「通院の継続」とあり、メモが通院に触れていなければ、 それが次回の確認事項の先頭に来ます。

氏名・住所・生年月日・保護の決定額は渡しません。 下書きに要るのは、続柄と年代、援助方針、メモの中身だけです。世帯は世帯番号で扱い、メモの中でも人は続柄で書く決まりにします(「長女」「元夫」「主治医」)。

子どもの世帯員の情報は、特に絞ります。 学校名、学級、部活動の名前、友人の名前は、続柄と年代だけでも世帯を特定する手がかりになります。メモには「長女・中学生、通学継続」のように書き、固有の名前を書かない決まりにします。医療機関や勤め先も同じで、「主治医」「勤め先」と書けば記録の役目は果たせます。固有の名前が要る場面は、確定のときにケースワーカーが業務システムの画面で書き足します。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから取り方
援助方針と前回の確認事項業務システム毎晩、担当中の世帯の分を書き出してもらい、Azure Blob Storage に置く
世帯の構成(続柄と年代)業務システム同じ書き出しに含める。氏名の列は含めない
メモと訪問の種類下書き画面ケースワーカーの送信で受け取る

業務システムの書き出しは、提供元に確かめて決めます。 多くの業務システムには帳票や一覧の書き出しの機能がありますが、項目や形式は製品ごとに違います。書き出しの列に氏名を含めないよう、最初の段階で指定してください。 含まれてしまうと、プログラムの側で消す手間と、消し忘れの危険が生まれます。

書き出しは前の晩の時点のものです。 当日の午前に援助方針を見直した世帯は、下書きに古い方針が使われます。下書き画面に、書き出しの日時を必ず表示します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 世帯番号で引く … 送られた世帯番号が、送った職員の担当の世帯かを確かめます。担当外なら送信を止めます
  2. 援助方針を項目に分ける … 援助方針の「確かめ続ける項目」を、1行1項目の一覧にします
  3. メモの「所見:」を切り出す … 「所見:」で始まる行を、所見の候補として印を付けます
  4. 氏名らしい文字列を検知する … 「〇〇さん」「〇〇様」のような形や、書き出しにある世帯員の氏名の文字列(照合のためだけに使い、AIには渡さない)が含まれていないかを見ます。見つかれば送信を止め、続柄に直すよう画面に出します
  5. 略語をそろえる … 「通院月2→1」「就労✕」のような略記の意味を、決まりの略語の一覧で添えます
  6. 1回に1世帯だけ … 複数の世帯のメモを混ぜて送れない作りにします

4番目は、AIの前に置く安全装置です。 メモに氏名を書かない決まりを作っても、急いでいると書いてしまいます。送る前に止めることで、 氏名が Azure に送られること自体を防ぎます。

1番目で担当外の世帯を止めるのは、必要な人だけが情報を扱うためです。 下書きの仕組みが、担当以外の世帯の援助方針を引ける抜け道にならないようにします。

Step5

AIに処理させる

させるのは、メモを項目ごとの事実と所見に振り分けて文章にし、援助方針の進み具合と次回の確認事項を挙げることだけです。

欄AIがすることメモに無いときの扱い
訪問の目的選ばれた訪問の種類と目的を1文にする選択欄から書く
事実:健康状態通院・服薬・介護サービスについて、話されたことと見たことを書く「記載なし」
事実:社会生活就労・通学・通所・地域とのつながりについて書く「記載なし」
事実:家計・住環境家計のやりくり、住まいの状態について書く「記載なし」
事実:世帯員の状況続柄ごとに、話されたことと見たことを書く「記載なし」
事実:本人の希望本人が話した将来の希望を、話した言葉に近い形で書く「記載なし」
所見「所見:」で始まる行だけを文章に整える「【ケースワーカーが記入】」
援助方針の進み具合援助方針の項目ごとに、メモに関係する事実があるかを書く「今回確かめていない」
次回の確認事項確かめていない項目、前回からの持ち越し、メモで新たに出た事柄-

事実の項目は、研修教材が訪問調査で確認すべきこととして挙げる健康状態、社会生活、将来に向けた希望、世帯の家計や住環境をもとに立てています。 研修教材は、居宅訪問では年間を通じて世帯員全員と面接し、援助方針の進み具合を確かめることも大切だとしています。世帯員の状況の欄を独立させているのはこのためです。

させないこと理由
所見をメモに無いところから作る判断はケースワーカーのもの。考えていない所見が記録に残る
事実の欄に推し量りを書く「困っていると思われる」は所見。事実の欄には見聞きしたことだけ
保護の要否や程度、指導・指示の要否に触れる福祉事務所の判断で、下書きの役割ではない
援助方針を書き換える提案方針の見直しはケースワーカーと査察指導員が決める
「記載なし」の欄を一般的な文で埋める「特に変わりなし」は確かめた結果であって、書いていないこととは違う
本人や世帯員の人柄を評する記録の対象は生活の状況で、人の評価ではない

2行目が、いちばん起きやすい失敗です。 メモに「冷蔵庫空き目立つ」とあれば、AIは「食費に困っている様子」と書きたくなります。事実の欄に書けるのは「冷蔵庫の中の食品が少なかった」までです。 困っているかどうかは、ケースワーカーが所見として書くことです。

Step6

指示内容を固定する

あなたは福祉事務所の生活保護のケースワーカーが、ケース記録を書くのを
手伝う立場です。入力の【メモ】【訪問の種類と目的】【援助方針】
【前回の確認事項】【世帯の構成】だけを根拠に、下書きを作ってください。

【書き方】
- 事実の欄には、本人・世帯員が話したことと、ケースワーカーが見たことだけを
  書いてください。話したことは「〜と話す」、見たことは「〜であった」の形にします。
- 事実の欄に、推し量りや評価を書かないでください。
  「〜と思われる」「〜の様子」「〜が心配される」は事実ではありません。
- 所見の欄には、【メモ】の「所見:」で始まる行の内容だけを、文章に整えてください。
  「所見:」の行が無ければ、所見の欄は「【ケースワーカーが記入】」とだけ書いてください。
- 人は続柄で書いてください(本人、長女、主治医など)。
  入力に氏名らしいものがあっても写さず、warnings に書いてください。
- 本人が話した希望は、話した言葉に近い形で残してください。

【厳守事項】
- メモに書かれていないことを書かないでください。推測で補わないでください。
- メモが触れていない事実の項目は「記載なし」としてください。
  「特に変わりなし」「問題なし」で埋めないでください。
- 保護の要否、保護の程度、指導・指示が必要かどうかに触れないでください。
- 援助方針を変えるべきかどうかを書かないでください。
- 【援助方針】の項目ごとに、メモに関係する事実があれば progress に要点を、
  無ければ「今回確かめていない」と書いてください。
- 【前回の確認事項】のうち、メモが触れていないものは、
  next_checks の先頭に carried_over を true にして挙げてください。

【訪問の種類と目的】{visit}
【世帯の構成】{household}
【援助方針】{policy}
【前回の確認事項】{prev_checks}
【メモ】{memo}

「〜と思われる」を名指しで禁じているのは、事実と所見を分けるためです。 「推測しない」とだけ書くと、AIは「〜の様子」を推測とは考えません。禁じる言い回しを具体的に書くことで、 推し量りが事実の欄に混ざるのを止めます。

「特に変わりなし」で埋めないことも同じ理由です。 メモが健康状態に触れていないとき、「特に変わりなし」と書かれた記録は、確かめて変わりが無かったという意味に読まれます。 確かめていないなら「記載なし」です。

Step7

出力形式を固定する

{
  "case_ref": "",
  "visit_purpose": "",
  "facts": {
    "health": "",
    "social_life": "",
    "household_budget_and_housing": "",
    "household_members": "",
    "wishes": ""
  },
  "cw_findings": "",
  "cw_findings_needed": true,
  "policy_progress": [ { "policy_item": "", "progress": "" } ],
  "next_checks": [ { "item": "", "carried_over": true } ],
  "warnings": [ "" ]
}

構造化出力では、すべてのフィールドを必須にし、オブジェクトには additionalProperties: false を設定するとされています。スキーマのプロパティは最大100個、入れ子は最大5段です。この形は2段の入れ子で収まります。

JSON にする1つ目の理由は、事実と所見を別の欄で受けられることです。 下書き画面では、事実の欄と所見の欄を色を分けて表示し、所見の欄が「【ケースワーカーが記入】」なら確定のボタンを押せない作りにします。所見を書かないまま記録が確定することを防ぎます。

2つ目は、policy_progress をプログラムが照合できることです。 AIが援助方針の項目を1つ落としても、前処理で作った項目の一覧と突き合わせ、返ってこなかった項目を「今回確かめていない」として足します。 確かめていない項目の挙げ漏れを、AIの出来に頼らずに防ぎます。

3つ目は、next_checks を次回の訪問の前に表示できることです。 確定したときの確認事項を保存しておき、次にその世帯番号を入れたとき、下書き画面の最初に出します。 担当が交代しても同じものが出ます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
業務システム(書き出し)毎晩のファイルの書き出し援助方針、前回の確認事項、世帯の構成(続柄と年代)
下書き画面庁内のパソコンのブラウザメモの入力と下書きの表示
Azure OpenAIAPI呼び出し下書きの作成
業務システム(ケース記録)ケースワーカーが貼り付けて確定直した文を記録する

業務システムへの書き込みの経路は作りません。 ケース記録は、保護の決定の根拠や不服申立ての際の根拠資料にもなる記録です。ケースワーカーが読んで確かめていない文が、そのまま記録に入る経路を作らないでください。

下書き画面に残るのは、確定までの下書きだけです。 記録の正本は業務システムにあり、下書きは確定から一定の期間で消す決まりにします(第7章の保存・ログ)。

Step9

人が確認する

下書きは全件、ケースワーカーが読んでから記録します。

  1. 事実の欄をメモと照らす … 話していないことが「〜と話す」になっていないか、見ていないことが「〜であった」になっていないかを見ます
  2. 所見を書く … 「【ケースワーカーが記入】」なら自分で書きます。整えられた文なら、自分の考えと同じかを確かめます
  3. 援助方針の進み具合を見る … 「今回確かめていない」の項目は、次回の確認事項に残っているかを確かめます
  4. 次回の確認事項を直す … 不要なものを消し、足りないものを足します
  5. 業務システムに貼り付けて確定し、決裁に回す

1番目の「話していないことが話したことになっていないか」を、最も丁寧に見てください。 ケース記録は不服申立ての際の根拠資料にもなります。本人が言っていないことが「〜と話す」と残ると、 後から記録の信頼そのものが問われます。

査察指導員の決裁は、いまと同じです。 この構成は決裁の手順を変えません。査察指導員は、月に1回、各ケースワーカーの下書きと確定した記録を数件見比べ、 下書きのまま確定している記録が続いていないかを見ます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
メモに氏名が含まれていた送信を止め、続柄に直すよう画面に出す
担当外の世帯番号が入力された送信を止める。担当の変更が反映されていなければ書き出しを確かめる
「所見:」の行が無い所見の欄は「【ケースワーカーが記入】」。確定のボタンは押せない
援助方針の書き出しが届いていない下書きを作らず、「援助方針の書き出しなし」と表示する
メモがごく短い事実の多くが「記載なし」で返る。それで正しい
安否の確認が要る状況がメモにある下書きとは別に、査察指導員へすぐ報告する手順に従う。下書きは後でよい
AIが応答しないいまと同じく手で書く。下書きが無くても業務は止まらない
臨時訪問で援助方針と関係のない事柄が中心援助方針の項目は「今回確かめていない」が並ぶ。次回の確認事項に回すかを判断する

6行目は、この構成の外に置いてください。 研修教材では、長期間不在が続き連絡が取れないような場合、ケースワーカーは1人で対応せず、まず査察指導員に報告し、組織的な対応を検討することが求められるとされています。下書きを作る手順が、急ぎの報告を遅らせてはいけません。

Step11

記録を残す

  • 確定した記録 … いまと同じく業務システムのケース記録に残します
  • 入力と下書き … メモ、援助方針の書き出しの日時、AIの下書きを、確定から一定の期間(例:3か月)だけ残して消します
  • 操作の記録 … 誰が、いつ、どの世帯番号の下書きを作ったか。送信を止めた記録(氏名の検知、担当外)
  • 次回の確認事項 … 確定したときの next_checks を世帯番号ごとに残し、次の訪問の前に表示します
  • 決まりの版 … 指示の文、略語の一覧、事実の項目の立て方を、変更のたびに日付付きで残します

下書きを長く残さないのは、正本と重ならないようにするためです。 下書きと確定した記録が両方残ると、どちらが記録なのかが分からなくなります。 下書きは確定までの作業の材料として扱います。

操作の記録は、長く残します。 担当外の世帯の情報を引こうとした記録や、氏名を送りかけた記録は、安全管理の見直しの材料になります。

04実装レベルの3段階

最小構成:置き換えたメモと援助方針を、庁内で認められたAIサービスに貼って下書きさせる / 1件ずつの整理
半自動化:上記+下書き画面と Azure Functions で、援助方針と前回の確認事項を書き出しから引き、Azure OpenAI で下書きを作る / 材料の取り込み、事実と所見の分離、確認事項の引き継ぎ
本格構成:上記+業務システムの提供元が用意する連携の仕組みで、確定前の下書きをケース記録の画面に表示する / 貼り付けの手間

最小構成では、援助方針を毎回手で写すことになります。 前回の確認事項の引き継ぎもできず、確かめるための段階です。 半自動化が本記事の想定です。 援助方針と前回の確認事項が自動で入り、1件20分が8分になるのはこの段階です。 所見を書き、事実を確かめる時間は残る前提で置いています。 本格構成は、業務システムの提供元に連携の仕組みがあるかで決まります。 提供されていない場合は、半自動化のまま運用してください。貼り付けの手間が消えても、ケースワーカーが読んで所見を書く時間は変わりません。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
20 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
8 分
現在  600件 × 20分 ÷ 60 = 200 時間/月
導入後 600件 × 8分 ÷ 60 = 80 時間/月
月間削減時間
120h
削減率
60%
年間削減時間
1,440h
年間金額換算(時間単価3,500円)
504万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 被保護世帯が千世帯を超え、ケースワーカーが十数名から数十名いる市の福祉事務所。家庭訪問や所内面談のあと、ケース記録の作成が訪問の当日に終わらず、決裁が遅れがちな場合。担当の交代のたびに、前任の記録から援助方針の進み具合を読み取るのに時間がかかっている場合。自治体として Azure を使える契約と、情報セキュリティポリシー上の整理がある場合。
向いていない
  1. 被保護世帯が数百世帯で、ケース記録の作成が負担になっていない場合。外部のクラウドで住民の個人情報を扱うことを、自治体の情報セキュリティポリシーが認めていない場合。訪問のメモを取らず、記憶をもとに記録を書く運用を変えられない場合。なお、保護の要否や程度の判断、指導・指示を行うかの判断、援助方針の決定は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去の訪問の記録から20件を選ぶ(うち数件は、担当の交代があった世帯を入れる)
  2. その20件について、当時のメモが残っていればそれを、無ければ記録から短いメモを作り直す
  3. 氏名・住所を続柄と地区名に置き換え、援助方針の要点と一緒に、庁内で利用が認められているAIサービスに1件ずつ貼り付ける
  4. 「事実と所見を分けてケース記録の下書きを作ってください。所見はメモの『所見:』の行だけから作り、無ければ空けてください。『〜と思われる』を事実の欄に書かないでください」と指示する
  5. 出てきた下書きを、当時確定した記録と見比べる

20件は、ケースワーカー2名と査察指導員1名で見てください。 査察指導員が入ることで、決裁で読みやすいかどうかを同じ場で確かめられます。

出てきた内容判断
当時の記録と同じ事実が、項目に分かれて出た下書き画面と書き出しの連携に進む
事実の欄に「〜と思われる」が混ざった指示の書き方で直る。構成は有効
所見がほとんど空で返ったメモの取り方が先。 AIの問題ではない

3行目はよく出ます。 いまのメモに所見の一言が書かれていないということで、メモを取る段階で事実と所見を分けていなかったことが分かります。 「所見:」で始める書き方を1週間試し、同じ20件の形で見直してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
事実の欄に推し量りが混ざる「〜と思われる」「〜の様子」を名指しで禁じる
所見がAIの作文になる「所見:」の行だけから作らせ、無ければ空けて確定できない作りにする
「特に変わりなし」で埋まる「記載なし」と書かせ、確かめていない項目は次回の確認事項へ
メモに氏名を書いてしまう前処理で検知して送信を止め、続柄に直させる
担当外の世帯の情報を引ける送った職員の担当の世帯かを前処理で確かめる
援助方針が古い書き出しの日時を下書き画面に表示する
援助方針の項目の挙げ漏れプログラムが項目の一覧と照合して足す
下書きのまま確定する査察指導員が月に1回、下書きと確定した記録を見比べる
下書きと記録が両方残る下書きは確定から一定の期間で消す
急ぎの報告が下書きの後回しになる安否の確認が要る状況は、下書きと別の手順で先に報告する

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「事実と所見を分ける」という一つの決まりから出ています。記録の価値は、後から読む人がどこまでが確かめた事実かを区別できることにあります。 そこを崩す下書きなら、作らないほうがましです。

最後の行は、運用の初めに必ず全員で確かめてください。 新しい手順が入ると、手順どおりに進めることが優先されがちです。安否に関わる状況では、下書きの手順は待たせてよいものです。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 被保護世帯の生活の状況、健康状態、通院、就労、家計、世帯員の状況、本人の希望です。住民の生活に深く関わる情報で、漏えいしたときの影響が大きい情報です。

  1. 安全管理措置を整える … 個人情報保護法では、行政機関の長等は、保有個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならないとされています。この構成を入れる前に、どの情報をクラウドで扱い、誰が使えるかを情報セキュリティポリシーに沿って決めてください
  2. 氏名と識別子を送らない … 世帯は世帯番号で扱い、人は続柄で書きます。前処理で氏名らしい文字列を検知し、送信を止めます
  3. 処理の場所を確かめる … 公式のページでは、プロンプトと応答は顧客が指定した地域で処理されるが、Global と DataZone のデプロイではそれぞれの範囲で処理されうるとされています。日本の地域で処理するデプロイの種類を選んでください
  4. 不正利用の監視の扱いを確かめる … 公式のページでは、不正利用の兆候が検知されるとプロンプトと応答の一部が確認の対象になり、必要に応じて人が確認するとされています。監視の扱いの変更は申請できるとされているので、自治体の規程に照らして検討してください
  5. 履歴を残す機能を使わない … Responses API はメッセージの履歴を保存するとされています。この構成は1回ごとの下書きで足りるので、履歴を残す必要はありません
  6. 判断を下書きに入れない … 保護の要否や程度、指導・指示の要否、援助方針の見直しは、ケースワーカーと査察指導員、福祉事務所の判断です。 下書きはその材料を整えるだけです

誤りが起きた場合のリスクは、本人が言っていないことが記録に残ることと、ケースワーカーが考えていない所見が記録に残ることの2つです。 どちらも、ケース記録が保護の決定の根拠や不服申立ての根拠資料になることを考えると重い誤りです。事実と所見を分けて受け、所見を空けて返す設計で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:メモの取り方を決める

訪問のメモで、人を続柄で書くこと、所見を「所見:」で始めることを決めます。あわせて、ケースワーカーが使っている略語を集めて一覧にします。

2週目:20件で試す

氏名を置き換えた20件のメモと援助方針で下書きを作らせ、ケースワーカー2名と査察指導員1名で当時の記録と見比べます。事実の欄に推し量りが混ざっていないか、所見がメモから作られているかを最優先で見ます。

3週目:情報政策の部署と整理する

どのネットワークの区分から Azure へつなぐか、どの情報を送ってよいかを、情報セキュリティポリシーに沿って決めます。業務システムの提供元に、援助方針と前回の確認事項の書き出しができるかを確かめます。

4週目:書き出しの項目を決める

書き出しの列を、世帯番号、続柄と年代、援助方針の項目、前回の確認事項に絞ります。氏名の列を含めないことを、提供元と書面で確かめます。

2か月目: 下書き画面と Azure Functions を作り、ケースワーカー3名で1か月使います。3か月目以降: 全員に広げ、1件20分が何分になったかを実測します。所見の欄が空で返る割合が下がり、査察指導員が決裁で読みやすくなったと感じた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-15/最終更新:2026-10-15
確認した内容情報源確認日
令和6年度社会福祉推進事業「生活保護ケースワーカー等の研修のあり方に関する調査研究事業」で、福祉事務所や都道府県・指定都市本庁が活用できるケースワーカー向けの研修教材が作成されたこと厚生労働省: 生活保護ケースワーカー向け研修教材2026-10-15
ケース記録が保護決定の根拠や保護実施の過程を明示し、担当が交代しても一貫した支援を行うために必要で、不服申立て等の際の重要な根拠資料になること。訪問後すみやかに作成し決裁を得る必要があること。面接や訪問の目的を記すこと、得られた情報に項目を付けて整理すること、事実とケースワーカーの所見を分けて書くこと、援助方針の変更を記録すること厚生労働省 研修教材: 生活保護の基本的な実務 No.2-12026-10-15
家庭訪問は世帯の状況に応じて必要な回数、少なくとも1年に2回以上行うこと(一定の条件のもと1年に1回以上の場合がある)。年間訪問計画を策定し、状況の変化があれば随時に訪問すること。訪問調査で確認すべきこととして健康状態、社会生活、将来に向けた希望、世帯の家計や住環境が挙げられ、年間を通じて世帯員全員と面接し援助方針の進捗を確かめること。不在が続き連絡が取れない場合は、1人で対応せず査察指導員に報告し組織的な対応を検討すること厚生労働省 研修教材: 訪問調査 No.3-22026-10-15
行政機関の長等が、保有個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならないこと(第66条)e-Gov 法令API: 個人情報の保護に関する法律2026-10-15
構造化出力が指定した JSON スキーマに従い、Chat Completions API と Responses API の両方で使えること。すべてのフィールドを必須にし、additionalProperties: false を設定すること。最大100個のプロパティと最大5段の入れ子Microsoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-15
プロンプトと応答が他の顧客や OpenAI に提供されず、基盤モデルの学習に使われないこと。顧客が指定した地域で処理され、Global と DataZone のデプロイではそれぞれの範囲で処理されうること。Responses API がメッセージの履歴を保存すること。不正利用の監視で、兆候が検知されるとプロンプトと応答の一部が確認の対象になり、必要に応じて人が確認すること。監視の扱いの変更を申請できることMicrosoft Learn: Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure2026-10-15

保護の要否や程度の判断、指導・指示を行うかの判断、援助方針の決定は、福祉事務所が行ってください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。訪問の基準と記録の様式は、実施要領と各福祉事務所の定めに従ってください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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