AI研修の内容に入れるべき項目一覧|業務で使える状態にする

総務省が2026年7月に公表した令和8年版の情報通信白書では、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた企業が86.4%にのぼりました。前年度の55.2%から一年で30ポイント以上伸びた計算になります。ところが帝国データバンクが同じ2026年の3月に1万社超から回答を得た調査では、生成AIを業務で活用していると答えた企業は34.5%にとどまっています。——同じ年に取られた二つの数字が、これだけ離れています。前者は試したことがある段階を含み、後者は業務に載っているかを問うています。この差を埋めるのは熱意でも予算でもありません。研修が足りないのではなく、研修に入れている項目が「触ってみる」で止まっているのです。この記事では、AI研修の内容に入れるべき項目を、対象者の分け方から扱う業務、時間配分、演習の作り方、持ち帰る成果物、受講後に測るものまで一覧で整理します。
カメ先生AI研修って、生成AIの使い方を教える場だと思われがちなんだけど、本当は『受講者が自分の業務を一つ、AIで回せる形に作り替えて帰る場』なんだ。
カメ子使い方を教えるのと、業務を作り替えるのとでは、何が違うのでしょうか。
カメ先生持ち帰るものが違ってくる。使い方だけなら知識が残る。業務を作り替えると、翌日から使う手順が残る。だから研修に入れる項目のほうも変わるんだ。
カメ子何を教えるかより、何を持って帰らせるかが先に来るんですね。
- 研修の項目は「受講後に何ができていればよいか」から逆に引く。項目を先に並べると講義の寄せ集めになる
- 対象者・扱う業務・使ってよい範囲・指示の型・演習・持ち帰る成果物の6つが最低限の柱
- 受講後に測るのは理解度テストではなく、部署別の利用率・削減時間・業務品質・ユースケースの数
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「使っている」と「業務で使えている」の間にある差
最初に、研修に何を入れるかを決める前提となる数字を押さえます。令和8年版の情報通信白書によれば、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた企業は86.4%でした。ただしこの割合は、活用方針を「わからない」と答えた企業を除いた母数で計算されています。全企業を分母にした数字ではない点は、社内で引用するときに添えておくべきところです。米国の90.9%、ドイツの91.6%、中国の98.1%との差は、以前に比べればかなり縮まりました。
差がはっきり出るのは、その先の項目です。同じ白書で、生成AIを業務変革に使うための組織的な取組はないと答えた企業が27.0%あり、大企業では18.1%、中小企業では45.6%に開きます。米国の同じ数字は1.4%です。さらに、社員がスキルを学ぶ環境を整えていると答えた割合は日本が39.9%で、米国の62.7%、中国の71.7%と離れています。社内のデータを整備している割合にいたっては日本24.5%に対し米国57.2%、中国73.0%でした。導入の入口では追いついたが、学ぶ場と使うための土台の整備で置いていかれているという形です。
帝国データバンクが2026年3月17日から31日に実施し、10,312社から回答を得た調査では、生成AIを業務で活用している企業は34.5%でした。規模別では大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%です。一方で、活用している企業のうち86.7%が効果ありと答えています。効果が出ないのではなく、業務に載るところまで到達した企業が3社に1社という状況です。研修が問われているのは、まさにこの到達の手前の部分になります。
項目は「受講後の状態」から逆に引く
研修の項目を決めるとき、いきなり内容の一覧を書き始めると失敗します。講義したい話題は無限に出てくるからです。先に決めるのは受講後の状態で、書き方は「誰が」「どの業務を」「どこまで自分でやれるか」の3点に絞ります。この3点が決まると、そこに必要な項目だけが自然に残ります。
- 営業企画の担当者が、月次の商談報告の要約を、事実確認の手順つきで自分で作れる
- コンテンツ担当が、既存資料からウェビナーの告知文の草案を3案出し、社内確認に回せる
- 部門長が、自部門の業務のうちAIに渡してよいものと渡してはいけないものを線引きできる
逆に「生成AIを理解する」「AIリテラシーを高める」といった目標では、項目が決まりません。理解したかどうかを誰も判定できないため、当日の中身が講師の得意な話題で埋まります。目標を上のように書いてみると、事実確認の手順が要る、下書きの型が要る、線引きの基準が要る、というように必要な項目が向こうから決まってくるのが分かります。
もう一つの原則は、1回の研修に置く目標を一つに絞ることです。全社員の底上げと推進役の育成を同じ回に詰めると、時間が割れて両方が中途半端になります。半日の研修で扱える目標は、現実には一つです。目標を二つ書きたくなったら、それは回を分ける合図だと考えるとよいでしょう。
入れるべき項目の一覧(6つの柱)
受講後の状態が決まったら、そこに向けて研修へ入れる項目を組みます。実務で使える状態にするために最低限必要なのは、次の6つの柱です。個々の講義テーマではなく、柱ごとに「受講後に手元へ残るもの」を決めているのがこの表の要点になります。
| 柱 | 研修に入れる中身 | 受講後に手元へ残るもの |
|---|---|---|
| 1 対象者の切り分け | 全社員・職種別・管理職・推進役で回を分ける | 自分がどの層で何を期待されているかの理解 |
| 2 扱う業務の限定 | 自部門の業務を棚卸しし、対象を3つに絞る | 対象業務の一覧と、選んだ理由 |
| 3 使ってよい範囲 | 入力してよい情報・AIに判断させない線・確認の手順 | 自分の業務での確認手順を書いた1枚 |
| 4 指示の型 | ひな形を配り、その場で自分の業務に当てはめる | 自業務向けに書き換えた指示文が3本 |
| 5 演習 | 自社の実物を題材に手を動かし、失敗も記録する | 実物で作った成果と、うまくいかなかった例 |
| 6 持ち帰る成果物 | 手順書を研修中に書き上げ、読み合わせる | 翌営業日から使える1枚の手順書 |
外部の研修プログラムで抜けやすいのは3と6です。3は座学の注意喚起で済まされがちですし、6は「持ち帰って各自で」と受講者に投げられがちです。提案書を受け取ったら、まずこの2つが当日の時間割に入っているかを確かめると、中身の実質が見えます。1から5までが充実していても、6がなければ翌週には何も残りません。
柱1:受講者を4層に分ける
研修設計の実務では、受講者を階層で分けるのが定石になっています。分け方はおおむね全社員・職種別・管理職・推進役の4層です。全社員向けは安全な使い方と最低限の型、職種別は自分の業務での具体的な使い方、管理職は方針の判断と投資の見方、推進役は業務そのものの設計と社内展開を扱います。同じ「AI研修」という名前でも、層が違えば入れる項目はほとんど重なりません。
層を混ぜると何が起きるかは、想像しやすいはずです。初めて触る人に合わせれば、すでに毎日使っている人は3時間を無駄にします。逆に使っている人に合わせれば、初めての人は最初の30分で置いていかれます。帝国データバンクの調査では、課題として使いこなし格差の拡大を挙げた企業が18.8%ありました。層を混ぜた研修は、この格差を縮めるどころか、当日その場で広げてしまいます。
分けるための材料は、事前アセスメントで取ります。大がかりな試験は要りません。「業務で週に何回使っているか」「どの業務で使ったことがあるか」「困ったことは何か」の3問を、開催の2週間前に配るだけで分布が見えます。回答の分布を見てから当日の中身を決める、という順番にできるかどうかが、既製の研修と自社向けの研修の分かれ目です。回答が集まらない場合でも、部署と職種の名簿から粗い層分けはできます。
柱2:扱う業務を3つに絞る
研修で扱う業務は、絞らないと薄まります。生成AIを導入している企業の管理職1,008名に2026年1月に聞いた調査では、実際に使われている業務は文書作成が63.1%、情報収集と要約が51.4%、アイデア出しが37.4%でした。この3つは研修をしなくても自然に始まる領域です。研修の時間を全部ここに使うと、すでにやっていることの確認で終わります。
扱う業務を選ぶ条件は3つあります。ひとつ目は頻度が高いこと。月に一度の作業を練習しても、次に使うのが一か月後では手が忘れます。ふたつ目は答え合わせができること。正解が分からない作業では、出力が良いのか悪いのか受講者自身が判断できません。みっつ目は失敗しても取り返せること。社外に出る前に必ず人の目が入る工程を選べば、演習で失敗しても実害がありません。この3条件で自部門の業務を並べ替えると、扱うべき3業務はたいてい絞れます。
同じくらい大事なのが、扱わない業務を明示することです。人事評価、与信の判断、採用の合否、価格の最終決定のように、判断そのものを渡してはいけない業務は、研修の場で名指しして外します。AIに渡してよいのは判断の材料づくりまでで、判断そのものは渡さない、という線を業務名で示す。この線引きを研修の中で言葉にしておくと、受講者が職場に戻ってから迷いにくくなります。帝国データバンクの調査で活用業務範囲の不明確さを課題に挙げた企業が40.0%あったことを踏まえると、この項目は省けません。
柱3:使ってよい範囲と、人が確認する手順
同じ調査で最も多くの企業が挙げた課題は、情報の正確性で50.4%でした。情報漏洩リスクも33.5%あります。この2つは「気をつけましょう」と座学で伝えても残りません。研修の項目にするなら、受講者が自分の業務について手を動かして書く形に変える必要があります。書く対象は3つです。
- AIに判断させない範囲:この業務でAIに任せるのは下書きまでか、案の列挙までか、を業務名と工程名で書く
- 根拠を書かせる指示:出力に対して、どの資料のどこを根拠にしたかを併記させる一文を、指示の型に組み込む
- 人が確認する範囲:数字・固有名詞・日付・相手先の名称のうち、どれを誰が何分かけて確かめるかを先に決める
3つ目の「人が確認する範囲を先に決める」は、実務でいちばん効きます。範囲を決めずに「全部確認する」としてしまうと、確認の手間が作成の手間を上回り、結局使われなくなるからです。逆に、確認する項目を数字と固有名詞と日付の3種類に限定し、それ以外は元の資料と照らさない、と決めておけば、確認は数分で終わります。確認の範囲を狭く決めることが、使い続けるための条件になります。
入力してよい情報の線引きも、抽象語で書かせないことが肝心です。「機密情報は入れない」では判断できません。「顧客の氏名と連絡先」「見積書の金額」「未公表の製品名」のように、自分の手元にある書類の名前で列挙させます。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインでも、AIに関わる者が十分なレベルのAIリテラシーを確保するための措置と、従業者への教育機会の提供が位置づけられています。第1.1版が2025年3月、第1.2版が2026年3月に公表されており、研修はこの求めに応える具体的な場として説明できます。
柱4:指示の出し方は「型の配布」にする
指示文の書き方を1時間かけて講義しても、翌週には忘れられます。コツを10個並べる形式は特に残りません。研修に入れるべきなのは講義ではなく、1枚のひな形を配って、その場で自分の業務に当てはめさせることです。ひな形は次のように、項目名だけの素朴な形で十分です。
役割:あなたは(自部門の業務)を担当する立場です
目的:この作業で最終的に必要なもの
材料:渡す資料と、その資料が何であるか
守る条件:文字数・形式・使ってはいけない表現
出す形:箇条書きか本文か、いくつ出すか
根拠:どの資料のどこを使ったかを併記すること
この型を配ったら、演習は3本立てにします。1本目は講師が画面を見せながら全員で同じ業務を書く。2本目は各自が自分の業務で書く。3本目は隣の人と交換し、相手の指示文を読んで足りない項目を指摘し合う。3本目の交換が、型を自分のものにする工程です。他人の指示文を読むと、自分が省略していた前提に気づきます。
指示文の管理をどうするか、版をどう更新するかといった話は研修の外に置きます。当日は「書き上げた3本を、職場に戻って誰に渡すか」を決めるところまでで区切るのが現実的です。持ち帰り先を決めずに終わると、せっかく書いた3本が個人のメモ帳の中で終わります。渡す相手を紙に書かせるだけで、その先が変わります。
柱5:演習は自社の実物を持ち込ませる
研修の設計で繰り返し指摘されているのが、自社の実務課題を題材にした演習を組み込むことです。汎用のサンプル文で練習すると、その場ではうまくいきます。ところが翌日、自分の手元にある資料は前提も分量も形式も違うため、同じようには動きません。演習の題材は、受講者が来週も再来週も触る実物であること。ここが妥協できない一線です。
実物は事前課題として集めます。何を持ってくるかは、粒度まで指定します。「先週の商談メモを1本」「実際に来た問い合わせのメールを3通」「自部門の説明資料を1つ」といった具合です。あわせて、個人名と取引先名を伏せてから持参する条件も事前に通知します。マスキングの作業自体が、入力してよい情報を考える予習になります。集まらなかった受講者のために、講師側で予備の題材を用意しておくのも実務上の必須事項です。
演習1本の時間配分は、説明10分・作業20分・見せ合い10分の40分を基本形にすると組みやすくなります。ここで大事なのが、うまくいかなかった出力を捨てさせないことです。事実と違う内容が出た例、指示が曖昧で的外れになった例を手元に残し、なぜそうなったかを書き添えさせます。生成AIの限界を知る材料は、失敗した出力そのものにしかありません。成功例だけを持ち帰ると、職場で最初に外したときに使うのをやめてしまいます。
柱6:持ち帰る成果物を決める
研修が「やって終わり」になるかどうかの分かれ目は、終了時に手元へ何が残るかです。知識だけを持ち帰らせると、翌週には薄まります。研修の最後の1時間を使って、1枚の手順書を書き上げさせるのがもっとも確実です。書き上げるまでを研修の中に入れるのが要点で、持ち帰って各自でとすると提出率が落ちます。
演習で試した3業務のうち、翌週から実際に使う1つを選びます。選ばなかった2つは理由を書き添えておくと、後で見直すときの材料になります。
配ったひな形の項目を自分の言葉で埋め、実際に動かして手直しした状態のものを貼り付けます。
出力のどこを誰が確かめるかを、数字・固有名詞・日付といった単位で具体的に書きます。所要時間の目安も入れます。
翌週のどの作業から使い始めるかを日付で書きます。曜日と業務名まで書くと、実行率が上がります。
手順書に入れる欄は、対象業務・指示文・確認する項目・確認する人・使う頻度の5つで足ります。項目を増やすほど埋まらなくなるため、A4で1枚に収める前提で設計します。研修中に書き上がらなかった受講者には、1週間後を期限にして提出先を伝えます。期限と提出先が決まっていない宿題は返ってこないので、この2つは当日中に告知します。
半日と1日、それぞれの時間割
発注のときに最初に決まるのは、たいてい時間です。半日なのか1日なのかで、入れられる項目は大きく変わります。ここでは実際に組める時間割の形を示します。半日は3時間、1日は昼休みを除いて6時間として計算しています。
| 進行 | 半日(3時間) | 1日(6時間) |
|---|---|---|
| 導入 | 目的と受講後の状態の共有(20分) | 同左に、自社の現状データの共有を追加(40分) |
| 安全に使う範囲 | 入力してよい情報と確認手順の記入(40分) | 同左に、失敗例の分析と部門の線引き討議を追加(80分) |
| 業務の棚卸し | 省略し、対象業務を主催者が事前に指定 | 自部門の業務を並べ、3つに絞る作業(50分) |
| 指示の型 | ひな形の配布と説明(20分) | ひな形の配布、説明、書き換えの実演(40分) |
| 演習 | 1本のみ(40分) | 3本立て。個人・交換・応用(120分) |
| 成果物 | 手順書の下書きまで(30分) | 手順書の完成と読み合わせ(60分) |
| 締め | 測る指標の説明(10分) | 測る指標と、部門ごとの実施計画(30分) |
半日で削るのは、業務の棚卸しと演習の本数です。棚卸しを削るぶん、対象業務は主催者が事前に1つ指定しておく必要があります。指定がないまま半日をやると、最初の30分が「何を題材にするか」の相談で消えます。演習が1本になるぶん、交換して読み合う工程は残す価値があります。10分でも他人の指示文を読むと、自分の型の穴が見えるためです。
90分の枠しか取れない場合は、成果物を求めない別の位置づけにします。経営層向けの説明会や、全社導入前の共通認識づくりであれば90分でも成立しますが、業務で使える状態にするのは無理です。時間が足りないときは項目を薄く広げるのではなく、対象者と対象業務を狭めて濃さを保つ。これが現実的な判断になります。
もう一つ有効なのが分割開催です。半日を2回に分け、間を2週間空けます。1回目で手順書を書き、2週間職場で使ってから2回目に持ち寄る形です。2回目の冒頭に「使ってみてどこで詰まったか」を出させると、質問の質が変わります。1回で6時間取るより、この形のほうが実務に載りやすいという実感を持つ担当者は少なくありません。
調査に出ている課題を、そのまま項目に翻訳する
研修の中身を決めるときに使える近道があります。公的な調査で企業が挙げている課題を、そのまま研修の項目に翻訳するやり方です。自社で課題を洗い出す時間がない場合でも、大きく外れない項目一覧が作れます。帝国データバンクと管理職向け調査の上位項目を、翻訳するとこうなります。
- 情報の正確性(50.4%)→ 事実確認の手順づくりと、うまくいかなかった出力の分析
- 専門人材・ノウハウ不足(41.3%)→ 推進役向けの回を分け、業務設計と社内展開を扱う
- 活用業務範囲の不明確さ(40.0%)→ 自部門の業務棚卸しと、扱わない業務の名指し
- 情報漏洩リスク(33.5%)→ 入力してよい情報を、手元の書類名で列挙する作業
- 活用アイデア不足(26.0%)→ ユースケースの出し方と、他部門の事例の読み方
- 使いこなし格差の拡大(18.8%)→ 職種別に回を分け、共通の指示の型を配る
この翻訳表は、研修会社の提案を読むときの物差しにもなります。提案書の目次を左の列に当ててみて、対応する項目がひとつも見当たらない課題があれば、そこは自社で補うか、追加を依頼する箇所です。目次の見た目の充実ではなく、課題との対応で読むと、判断が速くなります。
なお、自社の課題は事前アンケートで取るのが理想です。全社調査の平均値と自社の順位は、必ずしも一致しません。3問程度の設問でも、上位の課題が全社平均とずれていれば、そこに時間を寄せる判断ができます。翻訳表はあくまで、自社データがないときの出発点として使います。
講師と教材に求める条件
研修を外部に頼む場合、比較の軸は受講料の単価ではありません。同じ3時間でも、何が残るかがまったく違うためです。発注前に確認する条件を並べます。すべて提案書の段階で答えが出せる質問にしてあります。
- 当日の題材に、自社が用意した実物を使えるか(サンプル固定でないか)
- 全体時間のうち、受講者が手を動かす時間が何割を占めるか
- 配布物に、手順書のひな形と指示の型が含まれているか
- リスクの扱いが座学だけでなく、受講者が書く作業になっているか
- 受講後に測る指標を、こちらと一緒に決めてくれるか
- 受講者の層ごとに、中身を変えた実績があるか
見積もりを比べるときは、1人あたり単価だけを見ないようにします。事前アセスメントの設計、題材の事前確認、当日の運営人数、受講後のフォローの有無で、含まれるものが大きく違うためです。同じ条件に揃えてから金額を並べることが、比較の前提になります。安い提案が実は当日の講義だけ、というのはよくある形です。
内製で講師を立てる選択肢もあります。その場合の条件は、業務を知っていることと、失敗例を持っていることの2つです。生成AIに詳しいことより、自部門の業務でうまくいかなかった経験を語れるほうが受講者に効きます。外部と内製を組み合わせ、リスクと型の説明は外部、演習の題材と講評は内製、という分担にする形も現実的です。
受講後に測るもの
研修の効果を理解度テストで測っても、業務で使えるようになったかは分かりません。設計の段階で決めておくべき指標は、次の4つです。指標は研修が終わってから考えるのでは遅く、企画の時点で決めます。測るために必要な準備が、当日の運営に影響するためです。
- 部署別・職種別の利用率:全社平均ではなく分けて見る。平均だけでは、使っている部署と使っていない部署が打ち消し合う
- 削減できた時間:対象業務1件あたりの所要時間を、研修前に測っておく。事後だけでは比較できない
- 業務品質の評価:出力をそのまま使えた割合と、手直しが必要だった割合を、対象業務ごとに数える
- ユースケースの数:受講者が新しく見つけた使い方の件数。研修で扱った3業務以外に広がったかを見る
測るタイミングは、2週間後と3か月後の2回にします。2週間後は使い始めたかどうか、3か月後は続いているかどうかを見ます。測定のために必要なのが、受講者名簿を部署別・職種別に取っておくことです。名簿が個人名の羅列だと、後から分けられません。当日の受付でひと手間かけるだけで、後の分析が成立します。
注意したいのは、他社の公表値をそのまま自社の目標にしないことです。研修サービスの事例では、文書の草案作成が数時間から5分になった、生産性が20%向上した、月間で約295人日分の業務時間を削減した、といった数字が公表されています。ただし対象業務も測り方も企業ごとに違うため、そのまま自社の目標値にはできません。他社の数字は「そこまで変わり得る」という参考にとどめ、自社の基準線は研修前に自分で測る。基準線がなければ、効果が出たかどうかは永遠に分かりません。
研修の設計でやりがちな失敗
最後に、内容を詰める段階でつまずきやすい点を挙げます。いずれも当日の進行ではなく、企画の時点で決まってしまうものです。
- 全社員を1回で集める:層が混ざり、初めての人にも使っている人にも合わない中身になる
- ツールの機能紹介に時間を使う:機能は数か月で変わる。翌年には内容がまるごと古くなる
- 汎用サンプルだけで演習する:その場ではうまくいくが、自分の資料に当てはめられない
- リスクを座学の注意喚起で済ませる:確認手順を自分で書いていないので、職場で判断できない
- 成果物を決めずに終える:手元に何も残らず、翌週には研修そのものが記憶から消える
- 測る指標を後から考える:研修前の基準線を取り損ね、効果を説明できなくなる
この6つのうち、発注側が事前に防げるのは1番目と5番目と6番目です。研修会社は依頼された対象と時間の枠内で組むしかないため、層の分け方と成果物の指定は発注側の仕事になります。提案を待つのではなく、依頼の段階で「この層に、この成果物を持ち帰らせたい」と伝えるほうが早く決まります。
実施前に社内で整えておくこと
中身が決まっても、当日の環境が整っていないと演習が止まります。実施の2週間前までに片づけておく項目を挙げます。
- 受講者全員が当日に使えるアカウントと権限を確保する(当日発行は間に合わない)
- 研修に持ち込んでよい情報の範囲を、事前課題の案内文に具体的に書いて通知する
- 事前課題(実物の題材)の回収期限を1週間前に置き、集まらない場合の予備題材を用意する
- 会場の通信と、生成AIサービスへの社内ネットワークからの接続可否を事前に確かめる
- 受講者名簿を部署別・職種別の形で作り、受講後の測定に使えるようにしておく
- 情報システム部門に開催日と使うサービスを事前共有し、当日の問い合わせ先を決めておく
最後の項目は見落とされがちです。管理職向けの調査では、定着の課題として情報システム部門の非協力を挙げた回答が22.4%ありました。研修の企画段階で共有しておけば、当日の接続トラブルも、受講後の環境整備も進めやすくなります。逆に事後報告になると、せっかく書いた手順書が「その使い方は認められていない」で止まることがあります。
まとめ
AI研修の内容を決める作業は、講義テーマを並べることではなく、受講後の状態を先に書き、そこから対象者・扱う業務・使ってよい範囲・指示の型・演習・持ち帰る成果物の6つを逆に引くことです。触ってみる場で終わらせないために、確認の手順は受講者自身に書かせ、演習は自社の実物で行い、最後の1時間で1枚の手順書を書き上げさせる。時間が足りなければ項目を薄めるのではなく、対象者と対象業務を狭めます。そして受講前に基準線を測り、2週間後と3か月後に部署別の利用率と削減時間を見る。研修会社の提案を評価するときも、この6つの柱と時間割の実物が示されているかを物差しにしてください。まずは、次の研修で誰に何を持ち帰らせるのかを、一文で書いてみるところから始まります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
