AIはどの国のものを選ぶのか|主権という新しい判断軸

AIはどの国のものを選ぶのか|主権という新しい判断軸

「使いたい生成AIサービスがあるのですが、提供元が海外だという理由で情報システム部門が止めています」「取引先から届いた確認票に、利用するAIの提供事業者名とデータの保管国を書く欄がありました」。この半年ほどで急に増えた形の質問です。ここで問われているのは、性能でも価格でもありません。そのAIがどの国の事業者のもので、どの国の設備で動いているのか、という今まで検討項目に無かった軸です。「ソブリンAI」「ソブリンクラウド」「国産AI」といった言葉が同時に出回り始め、意味が人によってずれたまま会議だけが進みます。この記事では、この言葉が実際には何層に分かれているのか、どの層をどこまで気にすればよいのか、そして「国産」と名乗るサービスの中身をどう確かめるのかを整理します。


カメ先生カメ先生

ソブリンAIって、国産のAIを使いましょうという話だと思われがちなんだ。でも本当に問われているのは、そのAIにどの国の決まりが及ぶか、という一点なんだよ。


カメ子カメ子

作った国ではなく、効いてくる法律の国を見るということですか。


カメ先生カメ先生

見るのは決まりが及ぶ国のほうだね。しかも、データの置き場所、設備の持ち主、モデルの出どころ、運用する人の所属と、確かめる層が分かれている。国産という一言では、どの層のことなのかが決まらないんだ。


カメ子カメ子

一つの言葉に見えて、確かめる場所は層ごとに別々にあるということですね。


この記事のポイント
  • ソブリンAIは、データの置き場所・設備の所有と管理・モデルの出どころ・運用する人の所属という少なくとも4つの層に分かれる
  • 設備が国内にあっても事業者の本国の法律が及ぶ場合があるため、保管国だけを確かめても足りない
  • 全社一律で決めず、扱う情報の種類で線を引く。使い分けが現実解になるが、窓口の増加と品質差という代償がある

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目次

この言葉は1つのことを指していない

まず、言葉の側から始めます。ソブリンAIには、広く使われている定義がいくつかあります。半導体大手のエヌビディアは「各国が自国のインフラ、データ、労働力、事業網を活用してAIを生産する能力」と説明し、調査会社のガートナーは「国家が独自の主権目的を達成するために、自国のAI開発とAI活用に投資する取り組み」と定義しています。どちらも国家の側から見た説明で、企業が何を確かめればよいかは書かれていません

会議が噛み合わない原因は、ここにあります。ある人は保管されるデータの場所の話をしていて、別の人は日本語で作られたモデルを使いたいという話をしている。3人目は、障害が起きたときに日本語で連絡が取れるかを気にしている。三者とも「ソブリン」という同じ単語を使っているのに、見ている層が違います。用語をそろえないまま結論を出すと、決めたつもりの条件が後で崩れます。

この記事では、対象を1つの軸に限定します。どの国の事業者が提供し、どの国の設備で動くサービスを社内で認めるか、という選択の軸です。AIを自社の機械の中に置くか外部の役務として借りるかという置き場所の議論とも、顧客の個人情報を海外へ渡すときの手続の議論とも別の話です。それぞれ別の判断が必要なので、混ぜずに扱います。

用語のミニ解説。この記事に出てくる言葉

以降で使う言葉を先に固定します。片仮名のまま流通していて、社内資料に写した時点で意味が変わりやすい領域です。日本語で何を指すのかを、ここで決めておきます。

  • ソブリンAI……国や企業が、自分たちの決めた方針のもとでAIを開発し運用できる状態を指す考え方。特定の製品名ではない
  • ソブリンクラウド……どの国の法律のもとでデータが管理されるかを重視した、クラウドの提供形態を指す言葉
  • 国産AI……日本の事業者が関わって作られたAIを広く指す言い方。どの層が国内なのかは、この言葉だけでは決まらない
  • 域外適用……ある国の法律が、その国の外にある設備や情報にも及ぶこと。本記事で最も重要な言葉
  • 保管国の指定……データを物理的にどの国の設備に置くかを、契約で指定できる仕組み
  • 運用の自律性……日常の運用、保守、障害対応を、自分たちの側で把握し制御できている状態

この中で実務上いちばん効いてくるのは、4番目の域外適用です。他の言葉が「どこに置くか」の話であるのに対して、これだけが「誰の決まりが及ぶか」の話だからです。置き場所を国内にそろえても、この一点が残っていれば要件を満たさない、という判断になる場面があります。

4つの層に分けて見る。確かめる質問は層ごとに違う

ソブリンクラウドの解説では、主権を4つに分けて説明する整理が使われています。データ主権、システム主権、運用主権、技術主権の4つです。データが国内に保管され自国の法律で管理されること、システムの設計と運用の制御権を自分たちの側が持つこと、日常の運用と保守と障害対応を国内の信頼された人員が行うこと、そして基盤となる技術で海外の事業者に過度に依存しないこと。AIについても、これとほぼ同じ分け方が使えます。

そこで決まること確かめる質問「国産」の表示だけでは分からないこと
データの置き場所入力した情報が物理的にどの国の設備に残るか保管される設備は、どの国にありますか国内保管でも、開示要求が届く経路が別にあるかどうか
設備の所有と管理その設備を止めたり調べたりできるのは誰か設備を所有し運用しているのは、どの国に本社がある会社ですか国内の設備を海外の会社が所有している場合がある
モデルの出どころ答えを作っている仕組みが誰の手で作られたか自社で作ったモデルですか、外部の基盤モデルを組み込んでいますか国内の会社の画面の裏で海外のモデルが動く形がある
運用する人の所属障害や問い合わせに誰が対応するか日常の運用と保守を行う人は、どの国に所属していますか日本語の窓口があっても、作業する人は国外の場合がある
鍵の管理暗号化された情報を実際に読める人が誰か暗号鍵を管理しているのは、どちら側ですか国内保管でも鍵を事業者が持てば実質的に読める
契約の準拠法揉めたときにどの国の裁判所で争うか契約の準拠法と管轄の裁判所はどこですか日本語の契約書でも準拠法が国外のことがある

この表の使い方は単純です。宣伝文句を読むのではなく、6つの質問を投げて、返ってきた答えを層ごとに書き留めます。全部が国内でそろっているサービスは、実際にはそれほど多くありません。どこが国内でどこが国外かが並んだ時点で、自社の要件と照らせる状態になります。

もう1つ、別の整理も知っておくと会話が通じやすくなります。AIの側からは、データ、計算資源、モデルの3つに分ける説明も広く使われています。学習と推論に使うデータを国内で管理すること、計算する設備を自国の管理下に置くこと、そしてモデルそのものを自ら開発し制御すること。3分割でも4分割でも、要点は「一枚岩ではない」という点で共通しています。相手がどちらの分け方で話しているかを、最初に確かめてください。

なぜ2026年になって話が増えたのか

この話題が急に増えた理由は3つに整理できます。各国が国家の政策として計算基盤へ投資し始めたこと、国内でも基盤の整備が具体的な事業として動き出したこと、そしてその流れが企業の調達要件にまで降りてきたことです。順に見ます。

国内では、基盤モデルの開発を支援する枠組みが2024年から動いています。大学や国内の情報通信企業が参加し、モデルそのものを国内で作る取り組みが続いてきました。計算基盤の側では、産業技術総合研究所が次世代の人工知能向けスーパーコンピューターの構築を進めています。モデルと計算基盤の両方を国内に持つ、という方向がはっきりしてきた期間です

2026年に入ってからの動きも具体的です。ロボットや物理世界を扱うAIを見据えた基盤モデルの開発事業が2026年6月30日に採択され、実施期間は2026年度から2030年度とされています。契約は2026年度と2027年度の分のみ先行して結ばれる形です。同じ2026年6月30日には、関連する国の戦略の改訂版も公表されました。政策の側が数年単位の計画に落とし込み始めた、というのが2026年の局面です

海外は国ごとに違う形で進んでいる

海外の動きを見ると、目的が国ごとに違うことがわかります。ここを揃えて考えると誤解します。同じ「主権」という言葉でも、守りたいものが違うからです。

たとえばイタリアでは、2024年7月以降にイタリア語の大規模言語モデルの開発が進みました。自国語で高い性能を出せるモデルを持つこと自体が目的です。デンマークでは2024年10月末に主権対応のスーパーコンピューターが導入されました。こちらは計算資源を自国に確保することが主眼です。フランスでは2023年秋から計算基盤の整備が始まり、インド、シンガポール、タイ、ベトナムでも同様の整備が進んでいます。インドは国を挙げた5年間の公的投資という形を取っています。

規制の側からの動きもあります。EUの個人データ規則は、域外への個人データの移転を厳しく制限しています。また国によっては、重要と位置づけたデータの国外への移転を原則として認めない制度を持つ場合があります。投資の話と規制の話は別々に進んでいて、企業に効いてくるのは後者です。海外の事例を社内資料に引くときは、投資の話なのか規制の話なのかを分けて書いてください。混ぜると、対応が必要な話とそうでない話が同じ重さで並びます。

国内の選択肢はどこまで揃ってきたか

国内側の供給の状況も押さえておきます。主権対応を掲げたクラウドは、複数の国内事業者が提供しています。総合電機の系列、独立系のクラウド事業者、通信事業者の系列などが、それぞれ異なる形で参入しています。数年前と比べて、選択肢が無いという状態ではなくなりました

時期の目安を挙げると、通信事業者が2025年9月に物理世界を扱うAIの構想を公表し、独立系のクラウド事業者が2025年10月に生成AI向けの提供を開始し、総合電機が2025年12月に主権対応の基盤を発表しています。資金の面でも、国内のAI開発会社が2025年11月17日に金融グループなどから約200億円の調達を発表し、日本独自のソブリンAIの開発を加速すると伝えられました。

ただし注意が必要です。選択肢が増えたことと、4つの層すべてが国内で揃うことは別です。クラウドの層は国内でそろっていても、その上で動くモデルが海外製という組み合わせは普通にあります。逆にモデルは国内製でも、動かしている計算基盤が海外の事業者ということもあります。供給が増えたいまこそ、層ごとに確かめる作業の価値が上がっています

「国産」と名乗るサービスの中身を確かめる

ここからが実務の中心です。カタログに「国産」「国内完結」と書かれていても、どの層のことかは書かれていません。次の順番で聞くと、5分から10分の会話で中身が判定できます。

STEP1
入力した情報がどの国の設備に残るかを聞く

入力した文章と、それに対する回答の両方について聞く。回答の側は保存されていない、という答えが返ってくることもあり、そこも記録に残す

STEP2
その設備を所有し運用している会社の本社所在国を聞く

設備の場所と、設備を持っている会社の国籍は別の話。国内のデータセンターを海外の会社が所有している構成は珍しくない

STEP3
モデルの出どころを聞く

自社で一から作ったのか、公開されている基盤モデルを土台にしたのか、他社のサービスを裏側で呼んでいるのか。3つ目の場合は、その呼び先の国籍も聞く

STEP4
日常の運用と保守を行う人の所属を聞く

窓口の言語ではなく、実際に設定を触り障害に対応する人の所属を聞く。ここが国外だと、運用の層は国内で完結していない

STEP5
暗号鍵を誰が管理しているかを聞く

事業者が鍵を持っている構成では、保管国が国内でも事業者側から中身が読める。自社側だけで鍵を持てる形があるかを確かめる

STEP6
契約の準拠法と管轄の裁判所を確かめる

契約書の末尾に書かれている。日本語で書かれた契約書でも、準拠法が国外に設定されていることがある

6つの答えが出そろったら、先ほどの表に書き込みます。ここで大事なのは、全部が国内であることを求めないことです。求めるのは、どこが国外なのかを把握した状態です。把握できていれば、扱う情報の種類に応じて使ってよい範囲を決められます。把握していなければ、使ってよいかどうかの判断そのものが成立しません。

設備が国内にあっても、外国の法律が及ぶことがある

ここが、この記事でいちばん誤解の多い部分です。「国内のデータセンターに保管しています」という説明は、答えの半分でしかありません。事業者の本国の法律が、国外にある設備にも及ぶ制度があるからです。

よく引かれるのが、米国のクラウド法です。米国政府が米国のクラウド事業者に対して、データが国外にあってもその開示を要求できる法律だと説明されています。この制度がある以上、米国に本社がある事業者の日本国内のデータセンターに置いた情報についても、開示要求が届く経路が理屈のうえでは残ります。だから設備の場所だけを確かめても、要件の判定にはならないのです。

同じ構造は米国だけの話ではありません。EUの個人データ規則が域外への移転を制限しているのも、自国の法の効力を域外の取り扱いにまで及ばせる考え方です。見るべきは設備の緯度経度ではなく、その事業者に及ぶ法域です。実務では、契約書に書かれた事業者の本社所在国と、その国が持つ開示制度の有無を確かめるところまでを一組にしてください。

主権対応をうたうサービスは、実際に何をしているのか

では、域外適用の問題に対して、主権対応を掲げるサービスはどう手を打っているのでしょうか。ここを知っておくと、宣伝文句の中身を判定しやすくなります。

取られている手立ては、おおよそ次の4つです。運用にあたる会社を、対象の国に本社を置く別法人にすること。データセンターと運用要員を、対象の地域内で完結させること。暗号鍵の管理を、現地の主体だけに委ねること。そして運用の方針と監査を、その地域の規制の基準に合わせること。いずれも「法域を切る」ための工夫で、設備の場所を移すだけの対応とは考え方が違います

欧州では、大手クラウド事業者のEU向けの主権対応クラウドが2026年1月14日に提供を開始しました。欧州系の事業者や、米国大手の主権対応版も並んでいます。参考になるのは、こうしたサービスがどこまでを切り離しているかを明示している点です。逆に言えば、どこまで切り離しているかを説明できないサービスは、主権対応という表示の中身が薄いということになります。聞くべきは表示の有無ではなく、切り離しの範囲です。

全社一律で決めない。扱う情報の種類で線を引く

ここまでの話を、社内の運用に落とします。よくある失敗は、全社で1つの結論を出そうとすることです。海外のサービスを全面的に禁止すれば現場が困り、全面的に許可すれば要件を満たせない案件が出ます。決めるべきは事業者の可否ではなく、情報の種類ごとの線引きです

扱う情報どこまで気にするか運用の目安
公開済みの情報の要約や下書きほとんど気にしなくてよい汎用の海外サービスで足りる。速さと性能を優先する
社内の一般文書。議事録や手順書保管国と、入力内容の再学習の有無を確認契約で学習に使わせない条件を取る
顧客の個人情報保管国と、越境して渡すときの手続を確認個人データの越境の決まりに沿った手続を別途踏む
取引先から預かった情報契約書の再委託と第三者提供の条項を確認相手の許可なく外部のAIへ入れない
未公開の技術情報や原価の情報事業者の本国と、運用する人の所属まで確認国内で完結する形を選ぶ候補になる
官公庁や規制業種向けの案件情報発注元が示す要件に従う選択の自由が無い場合がある。要件を先に取り寄せる

この表の下2行が、判断が分かれるところです。上4行は多くの会社で同じ結論になりますが、下2行は業種と取引先によって変わります。だから全社一律ではなく、情報の種類で線を引きます。線を引いたら、その線を現場が判別できる形にしてください。「機密情報は入れない」という書き方では、何が機密かの判断が各自に委ねられます。文書の分類記号や保存場所で判別できる形にすると、迷いが減ります。

要件は取引先の側から降りてくる

自社で方針を決めるより先に、外から要件が届くことがあります。実際、この話が社内で急に立ち上がるきっかけは、取引先からの一枚の確認票であることが少なくありません。

背景として、政府は金融機関や政府機関に向けた主権対応のクラウドの整備を進めており、国内のクラウド事業者の育成やデータセンターの国内設置が政策として進められています。この流れが、発注元から受注側への要件として降りてきます。官公庁の調達、金融機関からの委託、医療に関わる情報を扱う案件では、選択の自由が最初から限られていることがあります。

実務で起きるのは、確認票に「業務で利用するAIサービスの提供事業者名」「入力した情報の保管国」「再学習に使われるかどうか」といった欄が加わる形です。答えられないと、案件が止まります。だから先に、社内で使っているAIサービスの一覧と、それぞれの層ごとの答えを作っておきます。聞かれてから調べ始めると、回答までに数週間かかることがあります。

使い分けが現実解になる理由

では、国内で完結する形にすべて寄せればよいのか。実務ではそうなりません。性能と費用の面で、無視できない差があるからです。

解説記事では、広く公開されている大規模なモデルとの性能差は大きい状況だと率直に指摘されています。大手コンサルティング会社が2026年3月に公開した論考でも、世界規模の汎用モデルが広く使える答えを安く出すのに対し、主権対応や業種特化のモデルは専門的な答えを高く提供する、という対比で整理されています。役割が違うので、置き換えの関係ではありません

同じ論考には、日本企業の温度感を示す数字もあります。ソブリンAIの価値を重要だと評価した割合は、日本企業で2割、世界全体では4割強でした。認知はあるが検討にとどまっている割合は、世界と比べて高いとされています。関心はあるが動いていない、という段階の会社が多いということです。だからこそ、リスクの低い領域は汎用のサービスを使い、中核の競争領域や規制のかかる領域は国内で完結する形を使う、という併用が現実的な出発点になります。

使い分けの落とし穴。代償を先に見積もる

併用が現実的だと書きましたが、代償なしに実現できるわけではありません。2つ以上の系統を社内に持つと、次のような負担が発生します。始める前に見積もっておく項目です。

  • 窓口が増える——契約、請求、問い合わせ先、障害連絡が系統ごとに分かれ、情報システム部門の手間が単純に増える
  • 品質差が業務に出る——同じ依頼をしても系統によって答えの質が違い、現場が使い分けを覚えないまま片方に寄る
  • 入力した情報が両方に分散する——どちらに何を入れたかが追えなくなり、後から棚卸しができない
  • 費用が二重に乗る——利用料だけでなく、教育、権限管理、監査の手間もそれぞれに必要になる
  • 運用できる人が足りない——国内で完結する形は自社で見る範囲が広く、人材の確保が課題として繰り返し挙げられている
  • 互換性の無い仕組みが並ぶ——各国が別々に整備を進めた結果、連携が難しくなるという分断の指摘がある
  • 世界的なツール連携から取り残される——外部の道具との接続が前提の業務では、国内完結の側だけ機能が遅れることがある

並べてみると、共通点があります。どれも技術の問題ではなく、運用と体制の問題です。だから使い分けを決めるときは、どちらのサービスを使うかと同時に、誰が両方を面倒見るのかを決めてください。この担当を置かずに併用を始めると、半年後に片方が事実上使われなくなり、契約だけが残ります。

「国産だから安全」と決めない。確かめる項目の一覧

最後の落とし穴が、これです。国内の事業者を選んだ時点で確認を終える判断です。国籍は、安全性の代わりにはなりません。確かめるべき項目は、国内外を問わず同じです。

  • 入力した情報と、返ってきた回答の保存期間が書かれている
  • 入力した情報が、モデルの再学習に使われないことが契約で確認できる
  • 暗号鍵を自社側で管理する選択肢があるか、無い場合はその理由が説明されている
  • 設備を所有し運用している会社の本社所在国が確認できている
  • 日常の運用と保守を行う人の所属国が確認できている
  • モデルの出どころが確認できている。外部の基盤モデルを使う場合は、その提供元の国も確認できている
  • 障害時の連絡経路と、復旧の目標時間が書かれている
  • サービスが終了する場合の予告期間と、データの持ち出し方法が書かれている
  • 契約の準拠法と管轄の裁判所が確認できている
  • 第三者による監査や認証の状況が確認できている。認証の有無だけでなく対象範囲まで見る

この10項目のうち、2番目と8番目は国籍と無関係に効いてきます。再学習に使われるかどうかは事業者の方針で決まり、国内の事業者でも条件は分かれます。サービス終了時の持ち出しは、規模の小さい事業者ほど重要になります。国内の事業者を選んだからといって、確認の手間が減るわけではありません。むしろ、規模が小さい分だけ丁寧に見る項目が増えることもあります。

AIに判断させない範囲は、どの国のものを選んでも変わらない

最後に、この記事の主題と切り離せない一点を書きます。事業者の国籍を選び直しても、AIが間違えなくなるわけではありません。主権の議論は、情報がどの法域に置かれるかの問題であって、出力の正しさとは別の話です

だから、どの国のサービスを選ぶかとは別に、次の3つを先に決めておく必要があります。AIに判断させない範囲を決めること。出力には根拠を書かせ、参照した元の資料まで戻れる形にすること。そして人が必ず確認する範囲を、作り始める前に決めておくこと。この3つは、国内で完結する形を選んでも省略できません。

むしろ、国内で完結する形を選ぶと、責任が自社側に寄る場面が増えます。挙動が不透明なままだと規制への対応と責任の切り分けが難しくなる、という指摘もあります。追加の学習で自社の暗黙知を使う場合には、その学習データをどこに預けるのかという問題が新たに立ち上がります。主権を確保する取り組みは、確認の仕事を減らすのではなく、確認の相手を自分たちに変える取り組みです。この点を最初に共有しておくと、導入後の期待外れが起きにくくなります。

まとめ

ソブリンAIという言葉は、1つのことを指していません。データの置き場所、設備の所有と管理、モデルの出どころ、運用する人の所属という少なくとも4つの層に分かれ、さらに鍵の管理と契約の準拠法まで加えると6つの確認点になります。会議が噛み合わないのは、参加者が違う層の話をしているからです。カタログの表示を読むのではなく、層ごとに質問を投げて、どこが国内でどこが国外かを書き出す。ここから始めてください。

最も注意が必要なのは、設備の場所だけを見ると判定を外すという点です。事業者の本国の法律が国外の設備にも及ぶ制度があり、米国のクラウド法がその代表として挙げられています。だから「国内保管です」という説明は答えの半分です。主権対応を掲げるサービスが取っている手立て、つまり運用会社を国内法人にする、設備と運用要員を域内で完結させる、鍵の管理を現地側に委ねる、監査を地域の基準に合わせるという4点まで確かめると、中身の濃さが見えてきます。

実務としては、全社一律で決めないことです。公開情報の要約なら気にしなくてよく、未公開の技術情報や規制業種向けの案件情報なら事業者の本国まで確かめる。扱う情報の種類で線を引き、必要に応じて使い分けます。ただし窓口が増え、品質差が業務に出て、情報が両方に分散するという代償は先に見積もってください。そして、どの国のものを選んでも変わらないことが1つあります。AIに判断させない範囲を決め、根拠を書かせ、人が確認する範囲を先に決めるという3点です。主権を確保する取り組みは、確認の相手を自分たちに変える取り組みであって、確認そのものを減らす取り組みではありません。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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