メディアミックスの予算配分はどう決める?|媒体ごとの役割で組む

「媒体ごとの予算は、毎年前年の数字を少し足し引きして決めているだけです」「成果の良い媒体に寄せたら、半年後に全体の件数が落ちました」——配分を決める側からは、この2つが順番に届きます。前半で迷い、後半で痛い目を見る。順序まで揃うのは偶然ではありません。成果の良し悪しだけで媒体を並べると、必ず刈り取りの媒体が上位に来る仕組みがあるからです。配分は、媒体の優劣を決める作業ではありません。本当は、媒体ごとに違う役割を割り当て、その役割に見合った数字で評価する枠を先に作る作業です。この記事では、配分の決め方を3つ並べて比べ、動かしてよい幅と頻度、検証のための枠の切り出し方、そして生成AIに任せてよい工程と任せてはいけない判断までを整理します。
カメ先生予算配分は、成果の良い媒体に寄せていけば全体も良くなると思われがちなんだ。でも実際には、寄せるほど全体の伸びが先に止まる場面のほうが多いね。
カメ子成果が良い媒体に多く配ることが、間違いだということですか。
カメ先生間違いというより、見ている数字が「その媒体が増やした分」ではなく「その媒体が受け取った分」になっている。受け取るのがうまい媒体に寄せても、受け取る中身のほうは増えないからね。
カメ子増やした分と、受け取った分は、別々に見る必要があるのですね。
- 成果の順に並べると必ず刈り取りに寄る。刈り取りの数字が良いのは、もともと買う気のある相手に当たっているから。増やした分と受け取った分を分けて見る
- 配分は媒体の優劣ではなく役割で決める。知ってもらう/思い出してもらう/いま動く相手を拾う。この3つの枠を先に置き、枠は固定して中身を動かす
- 生成AIに任せるのは、数字の形を揃える工程と、案を複数出させて前提を書かせる工程まで。どの案を採るかは、前提が崩れていないかを見た人が決める
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媒体を成果の良し悪しだけで並べると、必ず刈り取りに寄る
配分を見直す会議は、たいてい同じ表から始まります。媒体ごとの費用、獲得件数、1件あたりの単価。この表を単価の良い順に並べ替えると、上位には決まって同じ顔ぶれが来ます。会社名で検索してきた人に出す広告、一度サイトに来た人へ再び出す広告、資料をすでに請求した相手への追いかけ。どれも、こちらが働きかける前から動く気配のあった相手に当たっている媒体です。
並べ替えの結果に従って予算を移すと、翌月の表はさらにきれいになります。単価が下がり、件数あたりの費用が改善したように見える。ところが数か月後に全体の件数が伸びなくなる。指名で検索してくる人の数が増えなくなり、追いかける相手の在庫が減っていくからです。刈り取りの媒体は、需要を作る媒体ではなく、すでにある需要を受け取る媒体です。
この構造は、媒体の善し悪しの問題ではありません。評価の物差しを1本にしたことの問題です。1本の物差しで並べれば、その物差しに強い媒体が勝つ。単価という物差しは、需要を受け取る側に有利にできています。だから並べ替えの前に、媒体を同じ列に並べてよいかどうかを問い直す必要があります。役割の違うものを1列に並べた時点で、結論はもう決まっています。
刈り取りの数字が強く見えるのは、増えた分ではなく取り分を見ているから
広告の効果を測るときに、増えた分と取り分は別の量です。増えた分とは、広告を出した場合の成果から、広告を出さなくても発生していたはずの成果を引いたものを指します。ある解説では、配信中に100件の成果があっても、配信を止めた状態で80件が起きるなら、広告が生んだ増分は20件にすぎないと説明されています。表に載っているのは100件のほうです。
取り分が大きく出やすいのは、最後に触れた接点へ成果を丸ごと割り当てる数え方を使っているときです。同じ解説では、指名の検索広告や再接触の広告は、もともと購入意欲の高い層に当たりやすいため、見かけの単価が実態より良く出ると指摘されています。買う気だった人が最後に広告を1回押しただけでも、その売上は広告の成果として計上されます。
配分の議論に持ち込むべきなのは、増えた分のほうです。ただし増えた分は、測るのに手間と条件が要ります。だから実務では、まず取り分の数字を配分の根拠に使わないと決めるところから始めます。使うのは、順位ではなく役割です。順位を使ってよいのは、同じ役割の媒体どうしを比べるときだけに限ります。役割が違う媒体を単価で比べた表は、作った時点で判断を誤らせます。
刈り取りに寄せ切ると、刈り取る対象そのものが枯れる
寄せ切った先で何が起きるかは、順を追うと見えます。まず、認知の媒体を止めます。翌月は何も起きません。3か月目あたりから、会社名や商品名で検索してくる人の数が横ばいになります。半年たつと、再接触の広告に載せる相手の在庫が減り始めます。1年たつと、指名の広告に投じたい金額を投じられなくなります。上流を止めた影響は、下流の数字に半年遅れで出ます。
厄介なのは、この間の月次報告がずっと良く見えることです。認知の媒体を止めた月は、費用が減って単価が改善します。改善したので、判断は正しかったという結論になる。次の四半期も同じ判断を繰り返す。短い期間で見るほど、上流を削る判断が正しく見えるという性質があります。ある解説でも、短期成果の出やすい施策に予算を寄せると、同じ層への配信が濃くなって飽和すると指摘されています。
戻すときの費用も知っておく必要があります。止めた認知の媒体を再開しても、指名の検索が元の水準に戻るまでには、止めた期間と同じか、それ以上かかることが多いものです。積み上がるのに時間がかかったものは、崩れたあとに積み直すのにも時間がかかる。だから上流の枠は、成果が悪く見える月でも触らない前提で置きます。触ってよい枠と触らない枠を先に分けておくことが、配分設計の第一歩になります。
配分は成果の順位ではなく、媒体に割り当てる役割から決める
役割は3つに分けると扱いやすくなります。知ってもらう役割、思い出してもらう役割、いま動く相手を拾う役割です。1つ目は、まだこちらを知らない相手に届ける枠。2つ目は、知ってはいるが今は検討していない相手の記憶に残し続ける枠。3つ目は、いま情報を集めている相手を確実に受け止める枠です。同じ媒体でも、出す相手と内容が違えば役割は変わります。
役割を先に置く利点は、評価の物差しが役割ごとに分かれることにあります。知ってもらう枠を単価で評価すれば必ず負けます。負けるのが当然の物差しで評価している限り、その枠は毎回削られます。役割を宣言した時点で、その枠に何を期待し、何は期待しないかが決まる。枠は固定して、枠の中身だけを動かす。この形にすると、媒体の入れ替えが配分の議論を壊さなくなります。
実際の運用では、媒体名ではなく役割名で予算を持ちます。表計算の1列目は媒体名ではなく役割にする。その下に媒体を並べる。こうしておくと、新しい媒体を試すときも「どの役割の枠から出すのか」という問いが先に立ちます。役割を決めずに始めた出稿は、成果が出ても何が効いたのか分からず、成果が出なくても何を直せばよいのか分かりません。
役割ごとに見る数字を変える
役割を分けたら、次は見る数字を分けます。ここを分けずに全部の枠を件数と単価で見ると、結局もとの順位表に戻ります。実務で取りやすい数字に限って並べると、次の形になります。表の右端は、その枠で見てはいけない数字です。見てはいけない数字を明記しておくことが、会議で枠が削られるのを防ぎます。
| 枠の役割 | この枠に期待すること | 主に見る数字 | この枠で見てはいけない数字 |
|---|---|---|---|
| 知ってもらう | まだこちらを知らない相手に届く | 届いた人数、動画や記事を最後まで見た割合、会社名での検索数の推移 | 1件あたりの獲得単価 |
| 思い出してもらう | 検討していない期間も記憶に残る | 指名の検索数、再訪問の割合、資料の再ダウンロード数 | その月の獲得件数 |
| いま動く相手を拾う | 情報を集めている相手を取りこぼさない | 獲得件数、獲得単価、商談化した割合 | 認知の広がり |
| 実験の枠 | 次に伸びる媒体を見つける | 判定できたかどうか、次に進めるかの可否 | 投じた費用に対する回収 |
この表で最も揉めるのは、知ってもらう枠の行です。獲得単価で見ないと決めると、何をもって良し悪しを判断するのかという話になります。答えは、その枠の成果は下流の数字の推移で受け取るという形です。会社名での検索数が四半期ごとに増えているか、指名の広告に使える相手の在庫が減っていないか。上流の枠は、上流の数字ではなく下流の変化で評価します。
実験の枠だけは、費用に対する回収を最初から見ません。この枠の成果は「判定できたかどうか」です。回してみたが件数が少なすぎて判定できなかった、という結果が最も費用の無駄になります。だから実験の枠に置く条件は、金額の小ささではなく、判定に足りる量を確保できるかどうかで決めます。少額を撒くのは、実験ではなく浪費です。
配分の決め方を3つ並べて比べる
配分の作り方は、実務では3つに整理できます。前年の実績から積む方法、役割ごとに枠を先に決める方法、検証の枠を切り出して残りを配る方法です。どれが正しいということはなく、事業の段階と、手元にある数字の量で向き不向きが変わります。3つを混ぜて使うこともありますが、その場合も土台をどれにするかは決めておく必要があります。
| 決め方 | 手順の要点 | 向く状況 | 向かない状況 |
|---|---|---|---|
| 前年の実績から積む | 媒体ごとの前年費用に増減率を掛け、目標に合わせて総額を調整する | 媒体構成と市場が安定していて、去年と今年で商材が変わらない | 前年に偏りがあった/新商材を出す/媒体側の仕様が変わった |
| 役割ごとに枠を先に決める | 3つの役割に総額を割り、枠の中で媒体を選び直す | 媒体を入れ替えたい/上流を守りたい/複数商材を横断して見たい | 役割ごとの成果を受け取る数字が社内に無い |
| 検証の枠を切り出す | 総額の一部を実験に固定し、残りを実績で配る | 有望な新媒体が複数ある/判断材料が不足している | 全体の予算が小さく、実験枠が判定に足りる量にならない |
前年の実績から積む方法の弱点は、前年の偏りをそのまま今年に固定してしまうことです。去年たまたま刈り取りに寄っていたなら、今年はもっと寄ります。この方法を使うなら、積む前に「去年の配分は役割ごとに何割だったか」を一度出しておきます。出してみると、上流が想定よりずっと薄いことが多いものです。
役割ごとに枠を決める方法は強いのですが、役割の成果を受け取る数字が社内に無いと、半年で形骸化します。指名の検索数を毎月記録していない会社が上流の枠を作っても、評価できないので次の期に削られます。枠を作る前に、その枠を評価する数字を毎月取れる状態にしておく。順番を逆にすると、枠だけが宙に浮きます。
外にある配分の目安は、最初の枠を置くときだけ使う
枠を最初に置くとき、手がかりが何も無いと決められません。公開されている目安をいくつか知っておくと、出発点にはなります。2013年に英国の広告実務家団体の応募事例(およそ1,000件)を分析して発表された研究では、ブランドを育てる側に6割、いま刈り取る側に4割という配分が最も効果が高いと示されました。ここで言うブランドを育てる側が、上の表の1つ目と2つ目の枠にあたります。
同じ研究者らが2019年に、法人向け商材の事例だけを取り出して分析したところ、比率は46対54へと刈り取りの側に寄りました。購買の検討期間が長く、決めるまでに関わる人が多いことが理由として挙げられています。もう1つよく使われるのが、実績のある媒体に7割、伸びしろのある媒体に2割、新規の実験に1割という置き方です。既存顧客の生涯価値を伸ばす段階なら、6割・3割・1割にする整理もあります。
これらの数字は、自社の配分を正当化する根拠には使えません。事業の段階も、商材の単価も、いま持っている認知の量も違うからです。外の目安は、最初の枠を置く出発点として1回だけ使い、2回目からは自社の前の期と比べる。翌期からは、外の数字ではなく自社の前期との差が判断材料になります。目安を毎期持ち出す会社は、いつまでも自社の数字を作れません。
BtoBで配分が難しい理由は、件数の少なさと検討の長さにある
法人向けの商材では、教科書どおりに配分を回そうとすると2か所で詰まります。1つは件数です。月の成果が数十件しかない事業では、媒体ごとに分けた瞬間に1媒体あたり数件になります。増分を測る解説でも、月の成果が数十件程度だと統計的な有意差が出にくいと指摘されています。差が出ないのではなく、差を判定できるだけの量が無いという状態です。
もう1つは検討の長さです。最初に商品名を知ってから発注までに半年から1年かかる商材では、今月の獲得件数は半年前の出稿の結果です。今月配分を変えても、その影響が数字に出るのは半年後になる。ところが会議は毎月あります。短い期間で判断すると、効いている媒体を止めることになります。研究の側でも、6か月以上の期間で測ることの重要性が指摘されています。
この2つに対する現実的な答えは2つあります。1つは、判定の周期を数字の出方に合わせて延ばすこと。毎月は状況の共有だけにして、配分の変更は四半期に1回に固定します。もう1つは、件数で判定できない枠を、件数以外の数字で受け取ることです。指名の検索数、資料の再ダウンロード、既存顧客からの紹介の件数。母数が小さいときほど、先に動く数字を見つけておくことが効いてきます。
動かしてよい幅と、動かす頻度を先に決める
配分を毎月大きく振り直すと、どの媒体も評価できなくなります。ある解説では、予算の変更は小さく段階的に行うのが基本で、いきなり倍にすると学習が崩れ「改善したのに悪化した」が起きると説明されています。媒体側の配信の仕組みは、直近の実績をもとに調整されるため、金額を急に変えると調整がやり直しになるからです。
実務で置きやすい決めごとは3つです。1つ、枠どうしをまたぐ移動は四半期に1回だけ行う。2つ、枠の中の媒体間の移動は月1回まで、1回あたりの変更幅は前月比で2割以内に収める。3つ、変更したら最低4週間は触らない。この3つを紙に書いて共有しておくと、期の途中で「今月だけ試しに寄せてみよう」という話が出なくなります。
- 変更の記録を残す:いつ、どの枠から、どの枠へ、いくら動かしたかを1行で残す。残していないと、数字が動いた原因を後から特定できない
- 季節の影響を分けて記録する:展示会の月、決算の月、長期休暇の月は数字が動く。配分の効果と季節の効果を混ぜない
- 媒体側の仕様変更も同じ欄に書く:配信の仕組みや管理画面の指標定義が変わった日を記録しておかないと、自社の変更の結果だと誤読する
動かす幅を決めておくもう1つの効果は、社内の議論が短くなることです。幅が決まっていれば、議論の対象は「動かすかどうか」ではなく「どの枠から動かすか」になります。枠と幅と頻度を先に決めることは、判断の回数を減らすための仕掛けです。毎回ゼロから配分を議論する会社は、議論の時間だけが増えて、配分そのものは前年とほぼ同じになります。
検証のための枠を切り出す手順
新しい媒体を試す枠は、通常の配分から切り離して持ちます。切り離さないと、成果が出ない月に真っ先に削られるからです。切り出す量は、全体の1割前後を目安に置く整理がよく使われます。ある解説では、実験の枠を全体の5〜10%で始め、最低4〜6週間のデータを溜めてから配分の変更を判断するという進め方が示されています。
媒体を試すのではなく、問いを試します。「この媒体からの問い合わせは商談になるか」「この媒体は指名の検索を増やすか」。問いを書かずに始めた出稿は、数字が出ても解釈できません。書いた問いは、判定するまで変えません。
その問いに答えるのに、何件の成果が要るのかを先に出します。必要量に届かない金額しか出せないなら、その実験は今期やらない。少額で回して判定できないまま終えるのが、実験枠の最大の無駄になります。
何週間回すか、どうなったら途中で止めるかを先に決めます。途中で止める条件は、成果が悪いことではなく、判定が成立しないと分かったこと(配信量が想定の半分に届かない等)に置きます。
期間中に入札や訴求を変えると、何を測っていたのか分からなくなります。改善したい点は記録だけしておき、次の実験に回します。触りたくなるのが普通なので、触らないことを先に宣言しておきます。
進める、条件を変えてもう1回、やめる。この3つのどれかに必ず落とします。保留は作りません。判定の結果は、媒体名ではなく問いと答えの形で残すと、翌期に読み返せます。
実験の枠を守るコツは、その枠の金額を年間で先に確定し、四半期ごとの割り当てまで決めてしまうことです。枠が残っているかどうかを毎回確認する形にすると、忙しい四半期には必ず使われないまま消えます。使い切ることを前提に置き、使わなかった分は繰り越さない。この運用にすると、実験が止まらなくなります。
増えた分を測る4つのやり方と、それが使えない条件
配分を根拠のあるものにするには、どこかの時点で増えた分を測る必要があります。測り方は大きく4つに整理されています。1つ目は対象を無作為に2群に分け、片方に配信しない方法。2つ目は地域を配信ありと無しに分ける方法。3つ目は時系列の統計モデルで各媒体の寄与を推計する方法。4つ目は経路のデータを重み付けで補正する方法です。
ある解説では、1つ目と2つ目は精度が高く費用は中から高め、3つ目は精度が中で費用が高い、4つ目は精度が低から中で費用が低いと整理されています。実務での進め方としては、まず1媒体で対照群を作る実験を行い、規模が大きくなってから統計モデルに広げるのが現実的とされています。いきなり全媒体を一度にモデル化しようとすると、必要なデータ量と期間で詰まります。
使えない条件も明記されています。月の成果が数十件程度だと有意差が出にくいこと、月の広告費が数十万円以下で単一の媒体しか使っていないなら従来の管理で十分なこと。測れない規模のときは、測ろうとせずに枠の運用で守るほうが現実的です。測れる規模になったら、四半期ごとに主要な媒体の増分を測り直し、増分の落ちた媒体から予算を移す運用に切り替えます。
生成AIに任せてよい3つの工程
配分の作業には、機械に向いた工程がはっきりあります。1つ目は、媒体ごとにばらばらな数字を同じ形に揃えることです。媒体によって、成果の定義も、集計の単位も、期間の区切りも違います。管理画面から出した表をそのまま並べても比べられません。定義の違いを洗い出し、同じ列に揃え直す作業は、手作業でやると必ず抜けが出ます。
2つ目は、配分を変えたときの見込みを複数案で出させることです。1案だけ作らせると、その案が正しいかどうかの議論になります。3案から5案を並べさせると、議論は「どの前提を信じるか」に移ります。このとき必ず、それぞれの案がどの前提のうえで成り立つのかを併記させます。前提が書かれていない案は、比べようがないので使いません。
3つ目は、実績と乖離した媒体を毎週拾わせることです。想定した水準から一定以上ずれた媒体を、理由の候補とあわせて挙げさせる。ここで求めるのは判断ではなく、見落としの発見です。人が毎週すべての媒体の数字を見るのは現実的ではないので、見るべき場所を絞り込む用途に限って使うと、手間が減ったぶんだけ判断に時間を回せます。
配分の最終判断を生成AIに渡してはいけない理由
材料が揃うと、そのまま「最適な配分を出して」と頼みたくなります。返ってくる文章は、配分の案と、その理由らしきものの組み合わせです。判断の形をしていますが、判断の責任は負っていません。理由は3つあります。1つ目は、どの前提を採用したのかが見えないこと。渡した数字のうち、何を重く見て何を捨てたのかが分かりません。
2つ目は、渡していない情報が配分に効くことです。来期の商材の切り替え、競合の値下げ、営業の人員計画、展示会の出展予定。これらは数字に出ていないので、渡さない限り考慮されません。3つ目は、配分の判断が、どの部署の予算を減らすかという決定と一組になっていることです。社内の合意を取る責任を負えない相手に、その決定は渡せません。
使い方を1つ変えるだけで、この危険は消えます。案を選ばせるのではなく、選んだ案が崩れる条件を書かせる。この配分が想定どおりに働かないとしたら、どの前提が外れたときかを列挙させます。出てきた条件のうち、社内の数字で監視できるものを毎月の確認項目に入れます。判断は人が持ったまま、見落としだけを拾える形になります。
媒体を減らす条件は、始める前に決めておく
配分の議論で最も進まないのが、やめる判断です。始めるときは前向きな話なので通りますが、やめるときは誰かの提案を否定することになるので止まります。この非対称を避ける方法は1つしかありません。始める時点で、やめる条件を書いておくことです。撤退の条件は、その媒体を推した人が自分で書く形にすると機能します。
条件は数字で書きます。四半期の獲得件数が何件を下回ったら、商談化した割合が何%を下回ったら、判定に必要な配信量が2四半期続けて確保できなかったら。書き方の要点は、期限を必ず入れることです。期限の無い条件は「もう少し様子を見よう」に吸収されます。書いた条件は、四半期ごとの会議の議題に固定で載せます。
減らしたあとの扱いも決めておきます。完全に止めるのか、最小の金額で残して数字だけ取り続けるのか。上流の枠にあたる媒体は、止めると再開の費用が高くつくため、最小の金額で残すほうが合理的な場合があります。やめる判断は、続けるか止めるかの二択ではなく、どの水準まで下げるかの判断です。二択にすると、決められずに現状維持が続きます。
やりがちな失敗の一覧
配分が崩れるとき、始まりは大きな判断の誤りではありません。どれも1つずつは小さな判断ですが、重なると配分そのものが評価できない状態になります。四半期の会議の前に読み返す用途で使えるように、症状と直し方を対にしました。
- 媒体ごとに違う指標で比べる:ある媒体は資料請求、別の媒体は問い合わせを1件として数えている。同じ列に並べる前に、何を1件と数えるかを揃える
- 季節と施策の効果を混ぜる:展示会をやった月の数字を、配分変更の成果として読む。行事のあった月は別に印を付け、前年の同じ月と比べる
- 新しい媒体を毎回少額で試す:どれも判定に足りる量に届かず、全部が「よく分からなかった」で終わる。試す本数を減らし、1本あたりの量を確保する
- 単価の良い順に並べて上から配る:役割の違う媒体を1列に並べた時点で、刈り取りに寄る結論しか出ない。役割ごとに列を分ける
- 毎月配分を振り直す:媒体側の調整がやり直しになり、どの月の数字も途中経過になる。枠をまたぐ移動は四半期に1回に固定する
- 上流の枠を獲得単価で評価する:必ず負ける物差しで測っているので、毎回削られる。指名の検索数など下流の推移で受け取る
- 実験の枠を余りで作る:忙しい四半期には必ず消える。年間の金額を先に確定し、四半期ごとの割り当てまで決めておく
この一覧のうち、最も費用に効くのは3つ目です。少額の試行を並べると、費用は使い切っているのに判定は1つも残らない。1年で5本の中途半端な実験を回すより、2本を判定できる量で回すほうが、翌年の配分の根拠が増えます。実験の本数を減らすことに抵抗が出るなら、判定できなかった実験の費用を1年分合計してみると話が早くなります。
よくある質問
予算の総額そのものは、何を基準に決めればよいですか
公開されている参考値としては、前年の売上の3%程度、前年の粗利の8%程度といった置き方が紹介されています。ただしこれは出発点で、実務では必要な商談件数から逆算する形と併用します。先に必要な受注件数を決め、そこから商談件数、問い合わせ件数、必要な費用の順にさかのぼる。両方を出して、桁が大きく離れていないかを確かめる使い方が現実的です。予算の1〜2割を余裕として持つ整理もあります。
媒体を何本まで持つのが適切ですか
本数の正解はありませんが、判定できる本数が上限になります。1媒体あたり、四半期で判定に足りる成果件数を確保できるかで決めます。月の成果が数十件の事業で媒体を8本持てば、1本あたり数件になり、どれも評価できません。持てる本数は、予算の大きさではなく成果の件数で決まります。本数を増やしたいなら、先に総量を増やす順番になります。
認知の枠は、全体の何割を置けばよいですか
外の目安としては、法人向け商材でブランドを育てる側が46%という研究結果があります。ただしこれは平均の話で、自社の状況では変わります。実務的には、まず現状の配分を役割ごとに集計してみることを勧めます。多くの場合、上流の枠は想定よりずっと薄くなっています。次の四半期で1割動かし、指名の検索数の推移を半年見る。この繰り返しで自社の水準を見つけます。
配分の見直しを、どのくらいの粒度で報告すればよいですか
月次は状況の共有に留め、配分の変更提案は四半期ごとにまとめます。月次の資料には、役割ごとの枠の消化率と、枠を評価する数字の推移だけを載せます。獲得単価の媒体別順位表は、月次の資料に載せないほうが会議が短くなります。順位表があると、必ずその場で寄せる話が出るからです。順位表は、同じ役割の枠の中を比べるときに限って使います。
生成AIに配分案を出させるとき、何を渡せばよいですか
渡すのは、揃えた数字と、社内の制約です。数字は、媒体ごとの費用、成果件数、成果の定義、集計期間を同じ形にしたもの。制約は、動かせない枠、契約で決まっている最低金額、来期の商材の予定など、数字に出ていない事情です。そのうえで、案を複数出させ、それぞれが成り立つ前提を必ず併記させます。前提の書かれていない案は使わないと決めておくと、扱いが安定します。
まとめ
媒体の予算配分でつまずく原因は、配分の巧拙ではなく、媒体を1本の物差しで並べたことにあります。獲得単価という物差しは、需要を受け取る媒体に有利にできているため、順位に従うと必ず刈り取りに寄ります。寄せ切った先で起きるのは、指名の検索が伸びなくなり、追いかける相手の在庫が減り、刈り取る対象そのものが枯れることです。しかもこの過程では、月次の数字が良く見え続けます。だから配分は、順位ではなく役割から組み立てます。知ってもらう枠、思い出してもらう枠、いま動く相手を拾う枠。枠は固定し、枠の中身だけを動かす形にします。
枠を作ったら、枠ごとに見る数字と、見てはいけない数字を決めます。上流の枠は下流の推移で評価し、実験の枠は判定できたかどうかで評価します。動かしてよい幅と頻度も先に決め、枠をまたぐ移動は四半期に1回に固定します。法人向けの商材では件数が少なく検討も長いため、短い期間で判断すると効いている媒体を止めることになります。生成AIに任せるのは、数字の形を揃える工程と、案を複数出させて前提を書かせる工程と、乖離した媒体を毎週拾わせる工程まで。どの案を採るかは、その前提が崩れていないかを確かめ、社内の合意を取る責任を負う人が決めます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
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