ネット経由のテレビ広告はBtoBに効く?|測り方を先に決める

ネット経由のテレビ広告はBtoBに効く?|測り方を先に決める

「テレビの画面に出せる広告を試してみたいが、法人向けの商材で意味があるのか分からない」「出したとして、誰に届いたのかをどう報告すればいいのか」——予算の枠は取れそうなのに、稟議の一行が書けずに止まっている、という相談です。前提として、視聴の場は確実に動いています。総務省の令和7年版情報通信白書は、オンデマンド型の動画配信サービスについて、2024年時点で50歳代までの各年代で利用率が8割を超え、60歳代でも7割以上に達したと整理しています。ただし、受像機で見るネット配信の枠は、地上波の枠が安くなったものではありません。届く範囲の決め方と、測れる範囲が、どちらもほかの枠と別物です。この記事では、3つの枠の違いを整理したうえで、法人向けで成り立つ条件、測れるものと測れないもの、最小で試す形を順にまとめます。


カメ先生カメ先生

受像機で見るネット配信の枠って、テレビの広告が安く出せるようになったものだと思われがちなんだけど、本当は『誰に出すかは条件で指定できるのに、誰が見たかは世帯までしか分からない』枠なんだ。


カメ子カメ子

地上波の枠と、パソコンや携帯で見る動画の枠とは、何が違うのでしょうか。


カメ先生カメ先生

地上波は、地域と時間帯から視聴者像を推し量って買う。手元の画面は、個人の使い方に近い形で届く。受像機は、その中間でね。配信の条件は細かく決められるのに、受け取った先は個人まで割れないんだ。


カメ子カメ子

買い方と測り方が、そもそも一致していないということですか。


この記事のポイント
  • 受像機の配信枠は、配信の条件を細かく指定できる一方、受け取った側は世帯や機器の単位までしか分からない
  • 法人向けで成り立つのは、狙う相手が地域や業種で固まっている場合。散らばっていると配信の大半が対象外に届く
  • 出す前に、測る指標・比べる相手・やめる基準の3つを紙に書いてから始める

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目次

まず、3つの枠を言葉として分ける

この話がこじれるのは、3つの違うものが同じ「テレビ広告」「動画広告」という言葉で語られるからです。分けるべきは、地上波の枠、受像機でネット配信を見るときに挟まる枠、パソコンや携帯で動画を見るときの枠の3つです。この3つは、買い方も、届き方も、測り方も違います。

地上波の枠は、番組と時間帯を単位に買います。誰が見たかは調査で推し量る形で、個々の視聴者を指定することはできません。受像機の枠は、配信の事業者が持っている条件(地域、時間帯、番組の種類、機器の種類など)で配信先を絞れます。手元の画面の枠は、その機器を使っている人の行動に近い情報で絞れる場合があります。絞り込みの細かさは、この順で上がっていきます

一方で、届いた先の分かりやすさは、その順番とは一致しません。受像機は居間に置かれ、複数人で見ることが前提の機械です。だから配信の記録は、機器や世帯の単位までしか残りません。細かく絞って出せるのに、誰が見たのかは粗くしか分からない。この非対称が、法人向けで使うときの一番の癖です。

もう一つ、出稿先を選ぶ前に押さえておきたいのが、受像機がネットにつながる経路は一つではない、ということです。受像機そのものが通信の機能を持っている場合もあれば、外付けの再生機器を差している場合、録画機やゲーム機を経由している場合もあります。経路が違えば、そこで見られている配信サービスも、広告の枠を売っている事業者も変わります。受像機に出す、と一口に言っても、どの経路のどの配信サービスの枠を買うのかで、届く相手も報告の形も変わります。見積りを取るときは、枠の呼び名ではなく、どの配信サービスのどの面に出るのかまで確かめてください。

買い方と測り方で、3つの枠を並べる

違いを言葉で説明すると混乱するので、買い方と測り方を並べて見たほうが早いです。ここでの記述は、枠ごとの一般的な性質で、配信先の事業者によって条件は変わります。実際に出す前には、必ず出稿先の仕様書で確かめてください。

見るところ地上波の枠受像機のネット配信の枠手元の画面の動画枠
買う単位番組と時間帯配信の回数配信の回数や表示の回数
絞り込み地域と時間帯が中心地域・時間帯・番組の種類・機器利用者の行動に近い情報を使える場合がある
届いた先の粒度調査で推し量る機器や世帯の単位機器や利用者の単位
最後まで見られたか分からない分かる場合が多い分かる
押して次に進めるかできないできないことが多いできる
その後の行動の追跡できない難しい条件が整えばできる

表の下2行が、法人向けで使うときに効いてきます。受像機の枠は、見た人がその場で押して申し込みに進む形をとりにくい。配信の直後に成果が立たない前提で、測り方を設計する必要があるということです。ここを地上波の枠と同じだと思っていると、報告の段階で数字が出せず、翌期の予算が消えます。

見られ方が違うことが、素材の作り方を変える

枠の性質だけでなく、見られ方も違います。受像機は画面が大きく、音が出る状態で使われることが多く、視聴者は座って見ています。手元の画面のように、音を消して指で送りながら見る状況とは前提が違います。最初の1秒で止められる前提の作りは、この枠では過剰になります。

一方で、複数人が同じ画面を見ている可能性があります。決裁者の隣に家族がいる、という状況が普通に起こります。法人向けの商材で、業界内でしか通じない言い方を並べると、その場の大半の人には意味の分からない時間になります。誰が見ても意味の通る言い方に落とせるかどうかが、この枠を使えるかの分かれ目になります。

もう一つの制約が、押せないことです。多くの配信先では、見た人がその場で詳細を確認する動線を作れません。だから素材の中で、社名を覚えて後で調べてもらう形か、覚えやすい言葉を残す形にするしかありません。覚えて検索してもらうところまでが素材の役目だと割り切ると、作りが決めやすくなります。

素材の本数と一緒に決めておきたいのが、同じ機器に何回まで出すかの上限です。この枠は在庫が限られることがあり、条件を絞るほど同じ機器へ繰り返し配信されやすくなります。同じ内容が短い期間に何度も流れると、覚えてもらう効果よりも、うるさいという印象のほうが勝ちます。上限を設定できるかどうか、設定できるならどの単位(機器か世帯か、1日か期間全体か)で数えるのかは、配信先によって扱いが違います。ここは仕様書で確かめ、確かめられないなら初回は配信の量を抑えて様子を見ます

法人向けで成り立つ条件と、成り立たないときに起きること

この枠が法人向けで成り立つのは、条件が2つそろったときです。1つは、狙う相手が地域か業種で固まっていること。もう1つは、その人たちが受像機の前にいる時間帯を説明できることです。どちらかが欠けると、配信の大半が対象外の人に届きます。

固まっている例は分かりやすいものです。特定の県の製造業の工場長に届けたい、といった商材なら、地域で絞る意味があります。逆に、全国の情報システム部門の課長、という狙い方だと、絞り込みの条件が地域と時間帯しかない中で、対象者の密度が極端に低くなります。この場合、同じ予算を検索や業界の媒体に回したほうが、届く人数あたりの効率は高くなります。

成り立たないまま出すと、報告の段階で困ります。配信の回数と最後まで見られた割合は出るのに、それが商談にどうつながったのかを説明できない。数字は出るが意味を持たない、という報告がいちばん危険です。次の予算の議論で「効果が分からなかった施策」として扱われ、動画の枠そのものが社内で禁じ手になることがあります。

この枠で測れるもの

測れるものは、配信の側の数字です。何回配信されたか、そのうち最後まで再生されたのが何回か、どの地域・どの時間帯に配信されたか、どの種類の機器に配信されたか。多くの配信先で、この程度は報告として受け取れます。最後まで見られた割合が分かるのは、地上波の枠にはない利点です。

この数字は、素材の改善には十分に使えます。30秒の版と15秒の版で最後まで見られた割合を比べる、冒頭の言い方を変えた2版を比べる、といった使い方です。素材の良し悪しは、この指標で相対的に判断できます。ただし、素材の良し悪しと、商材が売れるかどうかは別の話です。

注意したいのは、これらの数字が配信した側の記録であって、人の記録ではないことです。1台の機器に10回配信されたとき、それが1人に10回なのか、5人に2回ずつなのかは分かりません。「何人に届いた」と報告に書くときは、その根拠がどこから来ているのかを必ず確かめてください。推定値なら、推定であることと前提を添えて書きます。報告を受け取る前に、次の4つの定義を配信先に確かめておくと、後から数字の意味を聞かれても答えられます。

  • 「配信された回数」の定義(画面に出たら数えるのか、一定の秒数を超えたら数えるのか)
  • 「最後まで見られた」の定義(どこまで再生されたら完了とみなすのか)
  • 同じ機器への重複の数え方(延べの回数なのか、機器の数なのか)
  • 報告に出る数字が実測か推計か。推計ならその前提は何か

この枠で測れないもの

測れないものは3つあります。1つ目は、世帯の中の誰が見たかです。機器の単位までしか記録が残らないため、決裁者に届いたのか、家族が見ていただけなのかは分かりません。2つ目は、見たあとの行動です。押して進む動線がないので、見た人と、その後に自社サイトへ来た人を直接つなぐことができません。

3つ目は、見ていない人との比較です。同じ人が配信を受けなかった場合にどうなっていたかは、原理的に観測できません。だから「配信を見た人の申込率が高かった」という数字を見ても、それが配信の効果なのか、もともと関心の高い人に配信が寄っていたのかを、その数字だけでは切り分けられません。差があることと、配信が差を作ったことは別です。

この3つは、道具の設定で解決できる種類の問題ではありません。枠の構造から来ています。だから対処は、測り方の設計でしか行えません。次の2つの章が、その設計の話になります。

補足しておくと、世帯と機器も同じものではありません。1つの家に受像機が2台あれば、機器としては2つに数えられます。逆に1台の受像機を家族全員が使っていれば、機器は1つでも見た人は複数です。報告に出てくる数字が、機器を数えたものなのか、世帯を推し量ったものなのかで、意味がまったく変わります。到達した世帯数、という言葉が出てきたら、それが機器の数なのか、何らかの推計を経た値なのかを必ず確かめてください。ここを曖昧にしたまま社内に報告すると、前提を聞かれたときに答えられなくなります。

測る方法その1、出す地域と出さない地域を分ける

直接つなげないなら、比較する相手を作ります。もっとも素直なのが、配信する地域と配信しない地域をあらかじめ決めておき、両方の指標の動きを比べるやり方です。同じ期間に、同じ商材で、片方だけに配信する。差が出れば、配信が要因の候補に上がります。

設計で決めることは4つあります。どの地域を配信する側にし、どの地域を配信しない側にするか。どの指標を比べるか。いつからいつまでを比較の期間にするか。そして、配信以外に両地域で違う施策を打たないと約束できるか。最後の1つが崩れると、比較そのものが成立しません。営業の訪問回数や展示会の出展が片方に偏っていると、差はそちらの説明でついてしまいます

限界も先に書いておきます。地域を分ける方法は、両地域の性質が近いことを前提にしています。人口の規模、産業の構成、既存顧客の数がかけ離れていると、差が出ても読めません。また、比べられるだけの件数が両方で立つ必要があります。もともと月に数件しか問い合わせのない商材では、差が偶然の範囲に埋もれます。試す前に、比べる指標の月次の件数を確認してください。

測る方法その2、指名検索と直接流入の差を見る

もう一つは、社名や商品名での検索と、自社サイトへの直接の流入を、配信の前後で比べる方法です。この枠は押せないため、見た人が動くとしたら「後で名前を調べる」経路になります。だから指名の検索と直接流入は、この枠でいちばん反応の出やすい指標になります。

見方の手順は決めておきます。配信開始の4週間前から当日までを基準の期間とし、配信期間と、配信終了後の2週間を並べます。曜日の影響を消すため、週単位で見ます。前年の同じ時期の動きも横に置きます。季節性のある商材だと、配信と無関係に伸びる時期があるからです。ここまで用意して、初めて「配信の前後で動いたかどうか」を議論できます。

限界も明確です。指名の検索は、広報の発表、展示会、営業の活動、他社の話題など、いくらでも別の要因で動きます。指名検索が増えたことは、配信が効いた証明にはなりません。増分を数字で言い切るには、前の章の地域分割のような比較の設計が要ります。指名検索の推移は、あくまで「効いていそうか」を早い段階で見るための目安として扱ってください。

直接の流入を見るときには、もう一つ注意があります。解析上の直接流入には、実際に社名を打ち込んで来た人だけでなく、参照元が判別できなかった訪問も混ざります。配信とは関係のない事情で、この数字は膨らんだり縮んだりします。だから直接の流入は単独で読まず、指名の検索と並べて同じ向きに動いているかを見ます。片方だけが動いているなら、計測側の事情を疑ったほうが早いことが多いはずです。あわせて、計測の設定を配信の期間中に変更しないことも、関係者に伝えておきます。

配信条件の案を、AIに複数作らせる

ここからがAIの出番です。最初の使いどころは、配信の条件を決める前の案出しです。届けたい相手像を文章で渡し、地域・時間帯・番組の種類の組み合わせを複数案作らせます。1案しか手元にない状態で議論すると、その案の良し悪しではなく好き嫌いの話になります。3案並べると、比較の議論に変わります。

渡す材料は、相手像だけでは足りません。既存顧客の所在地の分布、商談が生まれた月の偏り、問い合わせが入る時間帯。この3つを添えると、案が現実に寄ります。逆に、この材料を渡さずに作らせた案は、どの会社にも当てはまる一般論になります。案の質は、渡した材料の質でほぼ決まります。

そのうえで、選ぶのは人です。AIが出した案には、根拠として何を見たのかを1案ずつ書かせてください。根拠が「一般に決裁者は夜に視聴する傾向がある」といった出所不明の一般論しかない案は、その場で落とします。自社の材料に紐づいた根拠がある案だけを、比較の対象に残します。

出稿の前後を並べ、変化の要因の候補をAIに挙げさせる

2つ目の使いどころは、出したあとです。指名の検索、直接の流入、問い合わせの件数を週単位で並べ、配信の期間と重ねた表をAIに読ませて、変化の要因として考えられるものを、配信以外も含めて列挙させます。目的は、配信の効果を認めさせることではありません。逆に、配信以外の説明を洗い出すことです。

この使い方が効くのは、報告を作る人が無意識に配信の効果に寄せて読んでしまうからです。人が書くと、自分が担当した施策の説明が優先されます。AIに「配信以外の要因を10個挙げてください」と指示すると、広報の発表、営業の訪問、季節性、他社の動き、検索順位の変動、といった候補が並びます。そのうえで、どれが実際に起きていたかを人が消し込みます。

残った候補が配信だけになったとき、初めて「配信が要因である可能性が高い」と書けます。それでも言い切らずに、前提を添えて書きます。比較した期間、除外した要因、比べた地域。この3つを書かない増分の数字は、社内で一度でも疑われたら守れません。

短い動画素材の版を、AIで複数作る

3つ目の使いどころは、素材の版づくりです。この枠では、素材の良し悪しが最後まで見られた割合として数字に出ます。だから版を複数作って比べる価値があります。尺の違い、冒頭の言い方の違い、社名を出す位置の違い。1本だけ作って出すと、結果が良くても悪くても次に活かせません

AIに任せられるのは、台本の草案と、言い換えの案です。同じ内容を、業界の言葉を使わずに言い換える、という作業は特に速く進みます。逆に、映像の演出、音の設計、出演者の手配は人と制作会社の仕事です。ここを飛ばして完成品を求めると、どの枠にも合わない素材ができます。

版を作るときの注意は、比べられる形にすることです。冒頭の言い方だけを変えた2本、というように変える箇所を1つに絞る。2か所も3か所も変えた版を比べても、何が効いたのかが分かりません。素材の権利関係と、出稿先の審査基準も、作り始める前に確かめておきます。審査で通らない表現があると、作り直しで期間が溶けます。

AIに判断させない線を、先に決める

AIに決めさせないことを、出稿の前に書き出しておきます。出稿するかどうかの可否予算の額途中で止めるかどうかの判断の3つです。この3つは、数字だけでは決まりません。営業体制が受けきれるか、他の施策との兼ね合いはどうか、といった社内の事情が絡むからです。

もう一つ線を引くのが、増分の推定です。「配信によって問い合わせが何件増えた」という形の数字は、比較の期間、除外した要因、比べた対象を人が先に書いてからでないと出させません。前提を書かずに出した増分の数字は、必ず一人歩きします。前提が付いていれば、読んだ人が自分で妥当性を判断できます。

加えて、AIが出した数字や固有名詞は、そのまま報告に載せません。配信先の名称、最低出稿金額、審査の基準といった情報は、出稿先の資料か営業担当への確認で裏を取ります。相場や仕様を尋ねる用途では、古い情報や別の国の情報が混ざることがあります。確かめられなかった項目は、報告に「未確認」と書いて残すほうが安全です。

最小で試す形を、どう組むか

初回は、効果を出すためではなく、測り方が機能するかを確かめるために組みます。決めるのは4つです。期間、地域、素材の本数、そして費用です。期間は、配信の期間に加えて、前後の観測期間を含めて設計します。配信だけを2週間見ても、前の水準が分からなければ比べられません。

地域は、配信する側と配信しない側の2つを、性質の近いところで選びます。素材は最低2本、変える箇所を1つに絞った版で用意します。費用については、この記事では目安の金額を書きません。配信先ごとに最低の出稿金額も課金の形も違い、公開されていないことも多いためです。見積りは、狙う地域と期間を伝えたうえで、複数の配信先から取ってください。

STEP1
観測の期間を先に確保する

配信の前に4週間、配信の後に2週間の観測期間を取ります。前の水準が分からないと、配信中の数字を比べる相手がありません。

STEP2
配信する地域と、配信しない地域を決める

性質の近い2つの地域を選び、比較の期間中は両方で別の施策を動かさないことを、営業と広報にも伝えておきます。

STEP3
素材を2本作り、審査に出す

変える箇所を1つに絞った2本を用意します。差し戻しに備えて、配信開始日の手前に予備の日を置きます。

STEP4
配信し、週単位で観測する

初週に、配信の記録が想定した形で受け取れているかを確かめます。条件は期間の途中で変えません。

そのうえで、初回の予算は「失っても翌期の議論に影響しない額」に収めます。初回の目的は、配信の記録が想定した形で受け取れるか、比較の指標が動くだけの件数が立つか、報告の形が作れるかを確かめることです。最初の1回は、効果ではなく測り方を確かめる回だと社内で合意しておくと、結果が出なかったときに施策そのものが否定されずに済みます。

やめる基準を、出す前に決める

試す前に決めるべきものの中で、いちばん飛ばされやすいのが、やめる基準です。何を、何週間見て、どうなったら止めるのか。これを出稿の前に紙に書き、決裁の資料に含めておきます。始めたあとに基準を決めると、必ず続ける方向に基準が動きます

基準は2段階で持つと運用しやすくなります。1段目は、配信そのものが想定どおりか。予定した地域と時間帯に配信されているか、最後まで見られた割合が想定の範囲か。ここが崩れているなら、素材や設定の問題なので、直して続けます。2段目は、比較の指標が動いたか。指名の検索も直接の流入も、配信地域と非配信地域で差が出ないまま予定の期間が終わったら、いったん止めます。

  • やめる基準を決めずに始める:数字が出ないまま「もう少し様子を見る」で予算だけが減る
  • 途中で条件を変えながら続ける:地域や素材を入れ替えると、比較の前提が壊れて何も言えなくなる
  • 配信の数字だけで良し悪しを判断する:最後まで見られた割合が高くても、商談が動かなければ意味がない
  • 比べる相手を用意しないまま出す:前後の増減しか手元に残らず、要因の切り分けができない

止めた場合も、記録は残します。どの条件で、どの指標を、どれだけの期間見て、どうだったか。この記録があれば、次に別の条件で試すときの出発点になります。「効果がなかった」とだけ書いて終わると、数年後に同じ議論を最初からやり直すことになります。

タクシーや音声の枠と、何を比べるのか

同じ「新しい接点」として並べられる枠が、ほかにもあります。移動空間に出す枠や、耳に届く枠です。それぞれの運用はここでは扱いませんが、比較の観点だけは持っておくと、社内の議論が短くなります。比べるのは、届く相手の絞り方、見られ方や聞かれ方、そして測り方の3点です。

届く相手の絞り方でいえば、移動空間の枠は場所と経路で絞ります。耳に届く枠は、配信の場と時間帯で絞ります。受像機の枠は、地域と時間帯と番組の種類です。どれも、会社名や役職で直接絞ることはできません。だから「決裁者に届くか」は、どの枠でも確率の話になります。この点で3つは同じ性格を持っています。

違うのは、素材の作り方と、測り方の難しさです。耳に届く枠は音だけなので、社名の言い方が結果を大きく左右します。移動空間の枠は、短い時間に繰り返し目に入る性質があります。受像機の枠は、最後まで見られた割合が数字で残る一方、その後の行動は追えません。どの枠を選ぶかより、その枠で何をどう測るかを先に決めるほうが、結果として判断が速くなります

試す前に決める項目の一覧

最後に、出稿の前に埋めておく項目をまとめます。この一覧が埋まらないうちは、見積りを取る段階に進まないほうが安全です。埋まらない項目があるということは、その部分を出稿後に決めることになり、比較の前提が途中で動くからです。

  • 誰の予算か:どの部署のどの費目から出すか、期中の追加が可能かどうか
  • 決裁の範囲:いくらまでを誰が決められるか、追加出稿の判断は誰がするか
  • 素材の権利:出演者・音楽・映像素材の使用範囲と期間、二次利用の可否
  • 出稿先の審査:表現の基準、提出の期限、差し戻しがあった場合の予備日
  • 配信の条件:地域・期間・時間帯・番組の種類、配信しない地域をどこにするか
  • 測る指標:指名の検索、直接の流入、問い合わせの件数のうち、どれを主に見るか
  • 観測の期間:配信前・配信中・配信後をそれぞれ何週間見るか
  • 報告の頻度:週次か隔週か、誰に何の形式で出すか
  • やめる基準:何を何週間見て、どうなったら止めるか
  • 止めたあとの扱い:記録をどこに残し、次に試す条件をどう決めるか

この10項目のうち、実務でいちばん抜けやすいのは素材の権利と出稿先の審査です。出演者の使用範囲が配信の期間より短いと、途中で素材を差し替えることになります。審査で差し戻された場合の予備日を持っていないと、配信の開始が後ろにずれ、比較の期間ごと組み直しになります。どちらも、決まっていれば防げる種類の失敗です。

項目が埋まったら、そのまま決裁の資料になります。稟議の一行が書けずに止まっていた状態から抜けるには、効果の見込みを書こうとするより、何をどう測り、どうなったら止めるかを書くほうが早いことが多いはずです。測り方が書かれた資料は、結果が出なかった場合の説明まで含んでいるからです。

まとめ

受像機で見るネット配信の枠は、地上波の枠の安い代わりではなく、絞り込みは細かいのに届いた先は粗くしか分からない、という癖のある枠です。法人向けで成り立つのは、狙う相手が地域か業種で固まっていて、受像機の前にいる時間帯を説明できるときに限られます。測れるのは配信の側の数字で、世帯の中の誰が見たか、その後どう動いたかは測れません。だから、出す地域と出さない地域を分ける、指名の検索と直接の流入を前後で比べる、という設計を先に決めます。AIには配信条件の案出し、変化の要因の洗い出し、素材の版づくりを任せ、出稿の可否と予算と停止の判断、そして増分の推定の前提は人が書く。この記事の最後に挙げた10項目を実際に埋めてみて、埋まらない欄が残るなら、そこがまだ出稿を決められる状態にない箇所です。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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