AIエージェントの作り方と進め方|小さく作って広げる

「うちでも作れるものなんですか、と役員に聞かれて答えられませんでした」「作りたい気持ちはあるのですが、何から手を付ければいいのか分からないんです」——AIエージェントを検討し始めた部署から、ほぼ同じ順番で出てくる2つの声です。結論から言えば作れます。ただし、作れるかどうかを決めているのは開発の腕前ではなく、任せようとしている業務の側の条件です。腕の問題だと思っている限り、話は「書ける人がいない」で止まってしまいます。この記事では、最初の1体を作って動かすまでの工程を、業務の選び方、指示の起こし方、道具の渡し方、採点の置き方、失敗したときの戻し方の順に整理します。
カメ先生AIエージェントを作るというのは、プログラムを書くことだと思われがちなんだけど、本当は「任せる仕事の輪郭を決めること」のほうが工数の大半なんだ。
カメ子書ける人が社内にいないと、そもそも始められないということですか。
カメ先生いや、書かずに設定だけで組める道もあるよ。ただ、どの道を通っても「どうなったら終わりか」と「どこから先は人が決めるか」は人間が書くことになる。
カメ子作り始める前に決めておくことのほうが、多そうですね。
- 作る価値がある業務は3つの条件で絞れる。判断が入り組む、規則が維持できない、文書や会話が相手。どれにも当てはまらないなら決まった手順の自動化で足りる
- 中身は3つしかない。モデルと道具と指示。難しいのは書くことではなく、道具ごとの危険度と終わる条件を先に決めること
- 1体で伸ばし、詰まってから分ける。広げる順番は件数、隣の業務、権限の3段。権限から上げるのが最も事故になる
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その仕事は、エージェントで作る価値があるか
作り方を調べる前に、作る価値があるかを判定します。2025年4月に公表された34ページの実務向けの手引きは、エージェントが向く仕事を3つに絞っています。判断が入り組む仕事、規則が維持できなくなった仕事、文書や会話が相手の仕事です。1つ目は例外や文脈で結論が変わるもの、2つ目は条件分岐が増えすぎて更新のたびに費用と誤りが出るもの、3つ目は自然言語を読み解く必要があるものを指します。
同じ手引きは、着手する前にこの条件を明確に満たすかを確かめよ、満たさないなら決まった動きをする解で足りる、とはっきり書いています。ここを飛ばすと、形が決まっている作業にわざわざ判断の余地を持ち込むことになり、待ち時間と費用だけが増えて、できることは変わらないという結末になります。
具体で確かめます。情報システム部に1日30件届く申請を例にします。中身はアカウントの発行、権限の追加、ソフトの購入。1件あたり15分ほどかけて、規程に照らして区分を判定し、決裁が要るかを決め、決裁者への説明文を書いています。規程の条文が細かく、申請文の書きぶりで結論が変わるため、1つ目と3つ目の条件に当てはまります。
逆に当てはまらない例も挙げておきます。毎週月曜に決まった3つの数字を1つの表に集める作業は、形が完全に決まっているので対象外です。2024年12月に公表された設計指針も、最も単純な解を探し、必要になったときだけ複雑さを増やすこと、多くの用途では1回の呼び出しに検索と例示を足すだけで足りることを勧めています。3条件を満たさない案件は、着手前に自動化で足りますと返せるようにしておくと、後の工数がまるごと減ります。
道筋を回す自動化と、進め方を自分で決める仕組みの違い
作り方の難度は、この線をどちら側に置くかで変わります。2024年12月の設計指針は2つを分けています。あらかじめ書いた道筋に沿って道具とモデルを動かす形と、進め方と道具の使い方を実行中に自分で決め、達成の仕方を自分で制御する形です。前者は何周するかを書いた側が知っており、後者は知りません。
2025年4月の手引きも同じ線を引き、モデルを組み込んでいても進行の制御をモデルにさせていないものはエージェントではないと明記しています。挙げられているのは、単純な対話窓口、1回のやり取りで終わる呼び出し、感情の分類器の3つです。呼び名が広がっているぶん、社内で同じ言葉を使っていても、指しているものが別ということが起こります。
この違いは試験のやり方に直結します。道筋型は作った時点で通る道が決まるので、経路ごとに1件ずつ確かめれば足ります。自分で決める型は、同じ入力でも通る道が変わることがあるため、1件で確かめても意味がありません。20件流して何件が合格したかという確かめ方に変える必要があり、この材料をそろえる作業が後の工程で効いてきます。
実務では説明の仕方も変わります。稟議の場で経路図を出して「この順に動きます」と説明できるのは道筋型までです。自分で決める型では、代わりに「何をさせないか」と「どこで人が引き取るか」で説明することになります。作る前にどちら側で作るかを決め、決裁の説明もそれに合わせて用意しておきます。
作り方は3通り。書けるかどうかで選ばない
作り方には3通りの道があります。既にある業務システムに組み込まれている機能を設定して使う道、画面上で処理を線でつないで組む道、自分で書いて作る道です。多くの検討が「書ける人がいるか」で道を決めてしまいますが、それは判断の材料としては弱い部類です。
| 作り方 | 立ち上がりの早さ | 変えやすさ | つなぐ先の広げ方 | 向く場面 |
|---|---|---|---|---|
| 業務システムの機能を設定する | 早い | 設定の範囲内 | 同じ製品の中は容易、外は不可のことが多い | 1つの業務システムの中で完結し、変更が少ない |
| 画面上で処理をつないで組む | 中くらい | 現場でも直せる | 用意された接続の範囲 | つなぐ先が2つか3つで、担当者が自分で直したい |
| 自分で書いて作る | 遅い | 何でも変えられる | 制限なし | 月に何度も条件が変わり、つなぐ先が3つ以上ある |
選び分けの材料は2つです。変える頻度と、つなぐ先の数。月に何度も条件が変わり、つなぐ先が3つ以上あるなら、最初は遅くても書いて作る道のほうが結局は安く済みます。逆に1つの業務システムの中で完結し、変更が四半期に1度程度なら、設定だけの道で十分です。
画面上でつないで組む道を選ぶときは、1つ注意があります。2025年4月の手引きは、あらかじめ全ての分岐と繰り返しを図として定義させる方式について、見通しが良い反面、動きが複雑になるほど扱いにくくなり、専用の書き方を覚える必要が出てくると指摘しています。最初は現場でも直せたのに、半年後には誰も触れない図になっているという詰まり方が実際に起きます。図が1画面に収まるうちは良い、という目安を置いておくと安全です。
中身は3つしかない。モデルと道具と指示
最も基本的な形では、エージェントは3つの部品でできています。考えて決める部分であるモデル、外の仕組みに働きかけるための道具、そして振る舞いと歯止めを定めた指示です。2025年4月の手引きはこの3つを中核として挙げており、どの作り方を選んでもこの3つは必ず出てきます。
モデルの選び方には順番があります。同じ手引きが勧めているのは、まず最も能力の高いモデルで試作して成績の基準を作り、そこから小さいモデルへ差し替えて許容できるかを見るという順です。安いモデルから始めると、うまくいかない原因がモデルなのか指示なのか道具なのか切り分けられなくなります。原則としては、評価を用意して基準を作り、良いモデルで正確さの目標を満たし、そのうえで置き換えられるところだけ小さいモデルにして費用と待ち時間を下げる、という3段です。
3つのうち工数が集中するのは指示です。ここが薄いまま動かすと、判断のたびに勝手な補完が入ります。指示の作り方として手引きが挙げているのは4点で、既にある運用手順や規程から起こすこと、密度の高い資料は小さな手順に割ること、各手順を具体的な動作か出力に対応させること、情報が欠けたときの例外を分岐として書いておくことです。
道具については、2024年12月の設計指針が示す考え方が実務に効きます。人向けの画面設計にどれだけ労力を払っているかを思い出し、機械向けの受け渡し面にも同じだけ払うこと。使い方の例、境界の事例、入力の形式、できることの範囲を書けているかを、モデルの立場に立って読み返すこと。道具の説明文の粗さが、そのまま誤った呼び出しの回数になって返ってきます。
最初の1体に選ぶ業務は、4つの問いで絞る
作る価値がある業務が複数見つかったとき、どれを最初の1体にするかで進み方が変わります。判定は4つの問いで足ります。週に何件あるか、間違えたとき取り消せるか、正解が後から確かめられるか、担当者が判断の理由を説明できるかです。
件数から見ます。週に20件を下回る業務を1体目にすると、直すための材料が集まりません。エージェントは作った時点では完成しておらず、実際の入力に当てながら指示と道具を直していく前提なので、材料が来ない業務では改善の周期が止まります。逆に、月に数件しかない重い業務も1体目には向きません。
取り消せるかは、外に出る操作が最終工程にあるかで見ます。送信、登録、支払といった操作で終わる業務は、1体目としては危険が大きすぎます。下書きを作るところまでで止められる業務を1体目に選ぶと、間違えても削除で済みます。先の情報システム部の例なら、決裁者への説明文の下書きまでが1体目の範囲になります。
残り2つは材料の有無です。正解が確かめられるかは、過去の処理結果が記録として残っているかどうか。説明できるかは、担当者が「なぜこの区分にしたのか」を言葉にできるかどうかです。言葉にできない判断は指示に落とせません。ここで詰まる場合、作る前に業務側の言語化を先に済ませる必要があります。この確認だけで、着手後の手戻りがかなり減ります。
指示は白紙から書かない。既にある手順書から起こす
指示を新規の文章として書き始めると、ほぼ必ず現場の運用と食い違います。2025年4月の手引きが勧めているのは、既にある運用手順、応対の台本、規程からモデルが読める形に起こすやり方です。粒度の目安として、社内の手順書1本が1つの手順に対応するくらい、という表現が使われています。
起こす作業の実際を見ます。情報システム部の例で、規程に「権限追加の申請は、対象の権限が第3種以上であれば部長の承認を得る」という条文があるとします。これを動作に置き換えると、申請文から対象の権限の名称を取り出す、名称を規程の区分表と突き合わせて区分を判定する、区分が第3種以上なら承認依頼の文面を作る、の3つに割れます。1つの条文が3つの動作になるのが普通で、割らないまま渡すと途中を飛ばした結果が返ってきます。
例外の書き込みが、ここでの分かれ目になります。「権限の名称が申請文から読み取れない場合は、判定せずに人の待ち行列に入れる」という1行を書くかどうかで、勝手な推測が入るかどうかが決まります。手引きも、情報が欠けているときや想定外の依頼が来たときの分岐を、あらかじめ書いておくよう求めています。読み取れないという結果を、正当な結末として認めておくのがこつです。
運用に入ってからも指示は文書として扱います。規程が変わったら指示も変える必要があるので、版を記録し、いつ何を変えたかを残します。ここを口頭で運用すると、半年後に「なぜこの判定になっているのか」を誰も説明できなくなります。
道具は3種類に分け、危険度を付けて渡す
道具は無造作に渡すものではありません。2025年4月の手引きは3種類に分けています。文脈や情報を取ってくるもの、外の仕組みに働きかけるもの、そして別のエージェントを道具として呼ぶものです。1体目で渡すのは基本的に1種類目だけ、必要なら2種類目のうち取り消せるものまで、と決めておきます。
| 道具の種類 | すること | 情報システム部の例 | 1体目で渡すか |
|---|---|---|---|
| 取ってくるもの | 判断に必要な情報を読む | 申請台帳を読む、規程の区分表を読む | 渡す |
| 働きかけるもの | 外の仕組みに書き込む、送る | 説明文を下書きとして保存する | 取り消せるものだけ渡す |
| 働きかけるもの(危険度が高い) | 取り消せない操作をする | 権限を実際に付与する、利用者に通知する | 渡さない |
| 別のエージェントを呼ぶもの | 専門の別の1体に任せる | 該当なし | 渡さない |
渡してよいかの判定には、手引きが示す4つの観点を使います。読むだけか書き込むか、取り消せるか、どの権限が必要か、金額に影響するか。この4つで低、中、高の格付けを付け、高いものは実行前に検査を挟むか、人に判断を上げる仕組みにします。格付けは道具を足すたびに付け直します。
この作業には副産物があります。道具ごとに権限を並べていくと、エージェントに渡している資格が、担当者本人の権限より広くなっていることに気づく場合があります。手引きも、止める仕組みは認証と権限の管理、接続の制御、通常のソフトの安全対策と組み合わせて初めて働くと明記しています。渡す資格は担当者本人の権限を超えないことを、着手時の原則にします。
終わる条件を、動かす前に文章で書く
どの作り方を選んでも、実行という単位が必要になります。2025年4月の手引きは、実行を「抜ける条件に達するまで動かし続ける繰り返し」として説明しています。よくある抜ける条件として挙げられているのは、特定の道具が呼ばれたこと、決められた形の出力が返ったこと、誤りが起きたこと、回数の上限に達したことの4つです。
4つのうち3つは機械の側の事情ですが、決められた形の出力だけは人が書きます。情報システム部の例なら、区分、承認が要るかどうか、説明文の下書きという3つの欄がすべて埋まった状態を終わりとする、と文章にします。この文章が無いまま動かすと、機械の側には終わる根拠が回数の上限しか残りません。
満たせないときの終わりも、同じ場所に書きます。「区分が読み取れない場合は、読み取れなかったという結果を返して終わる」。不明という結末を用意しないと、埋まらない欄を埋めようとして回り続けます。あわせて、1件あたりの回数の上限と費用の上限を置き、上限で止まったのか条件を満たして止まったのかを記録に残します。
この3つ、つまり満たしたときの形、満たせないときの形、上限で止まったときの扱いを書くのに、実際にかかるのは数時間です。作る工程の中では最も安く、抜けたときに最も高くつく部分だと考えてください。
採点の材料を20件そろえてから動かす
2025年4月の手引きは、モデルを選ぶ原則の1つ目に「基準を作るための評価を用意する」を置いています。順番が逆になっている現場が多く、動かしてから良し悪しを語り始めるため、直した効果が測れなくなります。動かす前に材料をそろえます。
材料の作り方には型があります。過去の処理から、うまくいった典型を10件、例外を5件、担当者どうしで判断が割れたものを5件選びます。合計20件です。このうち最も価値があるのは判断が割れた5件で、ここが人にとっても難しい部分なので、機械に任せる範囲の境目を教えてくれます。
合否の付け方も先に決めます。出力された文章の巧拙で採点すると、採点者によって結果が変わります。決めた項目が正しいかどうかで採点してください。情報システム部の例なら、区分、承認の要否、宛先の3項目が過去の処理と一致したら合格、という形です。採点の基準が数えられる形になっていないと、直した効果が数字で言えません。
使い方は単純です。モデルを差し替えたとき、指示を直したとき、道具を足したときに、同じ20件を流して合格数を比べます。点が下がった原因を1つに絞れるのは、材料が固定されているときだけです。材料を毎回作り直すと、比較にならなくなります。
- 20件は着手時の最低量。運用に入ったら、人が引き取った件をそのまま材料に足していく
- 材料に個人名や取引先名が含まれる場合は、伏せる範囲を先に決めてから保存する
- 合格数だけでなく、どの項目で外したかを記録する。項目ごとに直す場所が違う
- 採点を人が毎回手作業でやると続かない。3項目の突き合わせは自動で判定できる形にしておく
人が引き取る合図は2つだけ決める
人の関与は、多く置けば安全になるものではありません。2025年4月の手引きは、人の介入を安全装置として位置づけたうえで、引き金は主に2つだとしています。失敗の上限を超えたときと、危険度の高い動作をしようとしたときです。前者は再試行や動作の回数に上限を置き、超えたら人へ渡すこと。後者は取り消せない操作や影響の大きい操作を、信頼が育つまで人の監督下に置くことを指します。
制度の側も同じ方向を向いています。2026年3月31日に総務省と経済産業省が公表したAI事業者ガイドライン第1.2版は、AIエージェントやフィジカルAIは自律的に動作するため、提供する側は人間の判断を介在させる仕組みを構築することが重要だという留意事項を加えました。第1.0版が2024年4月、第1.1版が2025年3月ですから、エージェントを名指しで扱ったのはこの版が最初です。ガイドラインであり、これ自体が直ちに新たな義務を課すものではありませんが、社内審査の物差しとして参照される場面は増えます。
実務で気をつけるのは数です。引き取る合図を3つ以上にすると、現場は結局すべての件を見るようになり、確認が形だけになります。2つに絞り、見る材料を決めてください。情報システム部の例では、区分が読み取れなかった件と、第3種以上と判定した件の2つに絞りました。これで1日30件のうち人が見るのは4件から6件で、確認は15分で終わります。
誤解を1つ正しておきます。人を挟むことは自動化の失敗ではありません。挟む場所を決めていない状態のほうが、後で全件の差し戻しという最も高い形の人手に化けます。挟む場所を狭く決めることが、任せられる量を増やす手順です。
止める仕組みは1枚では足りない。層で重ねる
2025年4月の手引きは、止める仕組みを層の防御として説明しています。1つでは十分な守りにならず、複数を重ねて初めて丈夫になるという考え方です。挙げられている型は7つで、話題から外れた入力をはじくもの、指示の乗っ取りを狙う入力を検出するもの、個人情報が出ていないか出力を検査するもの、有害な表現を検出するもの、道具ごとの危険度で止めるもの、禁止語や長さの上限といった単純な規則、そして出力が方針に沿うかを確かめるものです。
最初から全部を作る必要はありません。手引きが示す経験則は3段で、まず個人情報と内容の安全に絞って作り、実際に起きた例外と失敗を見ながら足し、安全と使い勝手の両方を見て調整していく、という順です。先回りして作った歯止めは外れやすく、事故から作った歯止めは残ります。
接続を増やすほど守る面が広がる点にも注意が要ります。AI事業者ガイドライン第1.2版は、AIエージェントやフィジカルAIは多様な入力経路と外部連携先を持つため、被攻撃対象が拡大し得ると追記しました。つなぐ先の数は、便利さの量であると同時に入口の数です。1体目でつなぐ先を絞る理由はここにあります。
2024年12月の設計指針も、隔離した環境での十分な試験と適切な歯止めを勧めています。本番の台帳に直接書き込む形で試すのではなく、写しの環境で20件を流し、その結果を人が見てから本番に移す。この一段を挟むだけで、最初の事故のほとんどは表に出ません。
1体で伸ばす。分けるのは詰まってからでよい
複数のエージェントに分ける設計は魅力的に見えますが、1体目では急ぎません。2025年4月の手引きの一般的な推奨は、まず1体の能力を最大まで伸ばすことです。分けると概念の切り分けは直感的になる一方、複雑さと手間が増えるため、道具を足していくやり方で足りることが多いとされています。
分ける目安は2つ挙げられています。指示の中の条件分岐が多くなりすぎて、ひな型として保てなくなったとき。もう1つは道具が多すぎるときですが、ここに読み違えやすい注意があります。問題は数ではなく似ているかどうかで、明確に区別された道具なら15個を超えても回る実装がある一方、重なりのある道具では10個未満でも崩れると書かれています。
つまり道具が増えてきたときの一手は、分けることではなく、名前と引数と説明を書き直して重なりを消すことです。それでも成績が上がらないときに初めて分割を考えます。道具を10個渡して混乱したなら、まず似た2つを1つにまとめるほうが、分けるより安く効きます。
分けるときの形も知っておくと判断が早くなります。中央の1体が専門の複数体を道具として呼ぶ形と、対等な複数体が仕事を受け渡していく形の2つです。前者は利用者との窓口を1つに保ちたいとき、後者は受けた側が完全に引き取ってよいときに向きます。ただしどちらも、分けた瞬間に受け渡しの失敗という新しい不具合が増えます。1体目の段階でここに工数を割く必要はありません。
失敗したときの戻し方を、動かす前に決める
作る工程で最後まで残りがちなのが切り戻しです。動かす前に決めておくのは3つ、出した結果をどう取り消すか、どこまで影響したかをどう数えるか、止めている間の仕事を誰がやるかです。3つとも、事故が起きてから考えると必ず時間がかかります。
取り消しは、下書きまでなら削除で済みます。問題は台帳に書き込む形にしたときで、人が入力した行と区別が付かないと、後から選び出せません。対策は単純で、エージェントが作った行に印を付ける欄を、動かす前に台帳へ足しておくこと。1列足すだけの作業ですが、後から遡って付けることはできません。
影響の数え方は記録で決まります。実行の記録に、何件処理して、そのうち何件が外に出たかを残しておきます。これが無いと、事故の報告が「たぶん先週の水曜あたりから」という形になり、確認のための工数が本体より大きくなります。件数を数えられる状態にしておくことが、報告の速さをそのまま決めます。
止めている間の代替も1枚書いておきます。手作業に戻す段取り、誰が引き取るか、いつまでに戻すか。1体目は必ずどこかで止まる前提で設計してください。止まったときに業務が止まる設計にしていると、次の1体に進む承認が下りなくなります。
小さく作って広げる。着手から広げるまでの順番
ここまでの決めごとを、着手からの順番に並べ直します。上から順に埋めれば、1体目の設計としては足ります。決めること自体は関係者がそろえば数日で終わり、時間がかかるのはむしろ、採点の材料を過去の処理から集める作業のほうです。
判断が入り組む、規則が維持できない、文書や会話が相手。どれにも当てはまらないなら、ここで自動化に切り替えます。この判定を飛ばした案件が、後で費用の問題として戻ってきます。
週に20件以上あるか、取り消せるか、正解が確かめられるか、担当者が判断の理由を説明できるか。4つとも満たすものを1つだけ選びます。
条文を動作に割り、例外の分岐を書き込みます。読み取れないという結末を正当なものとして認める行を必ず入れます。
読むだけか書き込むか、取り消せるか、どの権限が要るか、金額に影響するか。高いものは1体目では渡しません。
満たしたときの形、満たせないときの形、回数と費用の上限。材料は典型10件、例外5件、判断が割れたもの5件。
失敗の上限を超えたときと、危険度の高い動作をしようとしたとき。本番の台帳ではなく写しで確かめます。
順番を飛ばして権限から上げるのが、最も事故につながります。広げる方向は1度に1つだけにします。
広げる順番について補足します。まず同じ業務のまま件数を増やし、扱える入力の幅を確かめます。次に隣接する業務へ広げ、指示と道具がどこまで使い回せるかを見ます。権限を上げるのは最後です。件数も業務も広げていない段階で権限だけ上げると、確かめる材料が無いまま取り消せない操作を任せることになります。
誰が持ち、いくらかかり、どう報告するか
最後は体制と決裁です。2025年6月25日に公表された調査会社の予測では、エージェント型AIの案件の4割超が2027年末までに中止される見込みとされています。理由として挙げられているのは費用の増大、事業価値が不明確であること、危険の管理が不十分であることの3つで、いずれも作る腕の話ではありません。持ち主と物差しと歯止めが決まっていないという話です。
投資の実態も見ておきます。同じ調査会社が2025年1月に3,412名へ行った調査では、大規模な投資をしていると答えたのが19%、控えめな投資が42%、投資していないが8%、残る31%は様子見または不明でした。多数派は控えめな投資と様子見です。1体目に大きな予算を付ける必要はなく、むしろ付けないほうが判断が速くなります。
費用の見え方には癖があります。エージェントは1件の処理の内側で呼び出しを何度も繰り返すため、件数だけでは見積もれません。写しの環境で20件を流したときの1件あたりの費用を測り、それに月の件数をかけて概算を出します。あわせて実行単位の費用の上限を置き、上限の8割で通知が飛ぶようにしておきます。
報告は3つの数字に絞ります。処理した件数、人が引き取った件数、そして20件を流したときの合格数です。この3つを週次で並べるだけで、伸びているのか止まっているのかが決裁の場で判断できます。
- 書ける人がいないからという理由で検討をやめる。作り方は3通りあり、業務の条件のほうが先に効く
- 作る価値の3条件を確かめずに着手する。形が決まっている作業では費用と待ち時間だけが増える
- 指示を白紙から書く。既にある手順書と規程から起こさないと、現場の運用と食い違う
- 取り消せない操作をする道具を1体目から渡す。下書きまでで止められる範囲から始める
- 採点の材料をそろえずに動かす。直した効果が数字で言えず、うまくいっている気がするで止まる
- 人が引き取る合図を3つ以上置く。現場は全件を見るようになり、確認が形だけになる
- 件数も業務も広げていない段階で権限だけ上げる。確かめる材料が無いまま取り消せない操作を任せることになる
よくある質問
書ける人が社内にいなくても作れますか
作れます。業務システムに組み込まれた機能を設定する道と、画面上で処理をつないで組む道は、書かずに進められます。ただしどの道でも、終わる条件、渡す道具の範囲、人が引き取る合図は人間が決めます。この3つは書ける人がいても代わりに決めてはくれません。逆に、月に何度も条件が変わり、つなぐ先が3つ以上ある業務では、最初は遅くても書いて作る道のほうが結局は安く済みます。
最初の1体はどのくらいの期間で動きますか
一般の目安を出すより、何に時間がかかるかで見たほうが正確です。決めごと、つまり3条件の判定、4つの問い、道具の格付け、終わる条件、引き取る合図は、関係者がそろえば数日で決まります。時間がかかるのは、採点の材料20件を過去の処理から集める作業と、業務側の判断を言葉にする作業です。この2つが済んでいる会社は速く、済んでいない会社は道具を選ぶ前の段階で止まります。
社内のデータにつながないと意味がないのではないですか
1体目については、そうとは限りません。つなぐ先を増やすほど入口が増え、審査も長くなります。まずは読むだけの接続に限り、書き込みは下書きの保存までにとどめる形で成立する業務を選んでください。読むだけでも、規程との突き合わせや文書の判定は成立します。つなぐ先を広げるのは、合格数が安定してからで十分です。
途中でやめることになった場合、何が残りますか
残るものは3つあります。業務の判断を言葉にした指示の文書、採点の材料20件、そして道具ごとの危険度の格付けです。いずれも特定の製品に依存しないので、別の作り方へ移るときにそのまま使えます。逆に言えば、この3つを作らずに動かした場合、やめたときに何も残りません。作る工程の価値の半分は、動くものではなく、この3つの文書のほうにあります。
まとめ
AIエージェントを作れるかどうかは、開発の腕ではなく業務の条件で決まります。判断が入り組む、規則が維持できない、文書や会話が相手。この3つのどれにも当てはまらない業務では、決まった手順の自動化のほうが安く確実です。当てはまる業務が見つかったら、週に20件以上あるか、取り消せるか、正解が確かめられるか、担当者が判断の理由を説明できるか、という4つの問いで最初の1体を1つだけ選びます。
作るものの中身は、モデルと道具と指示の3つしかありません。工数が集中するのは指示で、白紙から書かずに既にある手順書と規程から起こします。道具は取ってくるもの、働きかけるもの、別の1体を呼ぶものに分け、読むだけか書き込むか、取り消せるか、どの権限が要るか、金額に影響するかの4観点で格付けします。1体目では高い格付けの道具を渡しません。そして終わる条件と、満たせないときの結末を文章で書きます。
動かす前にそろえるのは、採点の材料20件と、人が引き取る2つの合図です。制度の側でも、2026年3月31日に公表されたAI事業者ガイドライン第1.2版が、自律的に動作するからこそ人間の判断を介在させる仕組みが重要だという留意事項を加えました。2027年末までに4割超の案件が中止されるという予測も、腕ではなく費用と価値と歯止めが理由に挙がっています。件数、隣の業務、権限の順に、1度に1方向だけ広げてください。小さく作って広げるというのは慎重さの話ではなく、直せる状態を保ったまま任せる量を増やすための、いちばん速い順番です。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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