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靴・鞄の修理店が手書きの預かり票を Azure AI Document Intelligence で読み取り、修理の進み具合の台帳と仕上がりの連絡の一覧を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

靴・鞄の修理店で、お客様から品物を預かるときに手書きする預かり票の店の控えを読み取り、修理の進み具合の台帳に登録します。台帳から、仕上がった品物の連絡の一覧と、予定日を過ぎた品物・引き取りの無い品物の一覧を毎日作ります。

サマリー
AIサービス
Azure AI/Google Document AI
連携・自動化
Power Automate
対象業界
その他/小売
対象部門
カスタマーサポート
対象業務
データ入力・転記/台帳・マスタ管理
主な課題
入力作業が多い/問い合わせが多い/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
読み取り(OCR)
主な効果
入力漏れ削減/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
40h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
75%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 店頭の担当が、お客様と話しながら預かり票を書き、お客様に1枚目を渡す
  2. 3枚目の札を品物に付け、工房へ送る箱に入れる
  3. 閉店の後、2枚目の控えを見ながら、台帳に票番号・氏名・電話番号・品物・修理の内容・予定日を打ち込む
  4. 工房から「仕上がった」と電話が来たら、台帳の状態を変える
  5. 毎朝、台帳を見て仕上がった品物のお客様に電話かSMSで連絡する
  6. お客様から「できていますか」と電話が来たら、台帳を探し、分からなければ工房に電話する
  7. 引き取りの無い品物を、月に1回台帳から探して連絡する
導入後(After)
  1. 人店頭の担当が、電話番号を1桁ずつの枠に変えた預かり票を書く
  2. 人閉店の後、店の控えを複合機でスキャンし、店ごとの SharePoint のライブラリに保存する(1枚1ファイル)
  3. 自動保存を起点に Power Automate のフローが動く
  4. 自動Document Intelligence のコネクタで、学習したカスタム テンプレート モデルを呼び、欄・チェック・信頼度を受け取る
  5. 自動電話番号の桁数、票番号の重なり、信頼度を確かめ、台帳(SharePoint のリスト)に登録する。確かでない欄があれば「要確認」にする
  6. 人翌朝、店頭の担当が「要確認」の票だけを控えと見比べて直す
  7. 人工房の担当が、仕上がった品物の状態を台帳の画面で「仕上がり」に変える
  8. 自動毎朝、別のフローが台帳から、仕上がって連絡していない品物、予定日を過ぎた品物、引き取りの無い品物の一覧を店ごとに作る
  9. 人店頭の担当が一覧を見て連絡し、台帳に連絡した日を付ける
  10. 人お客様からの問い合わせは、票番号か電話番号で台帳を引いて答える
各工程の詳しい説明を読む
  1. 店頭の担当が、お客様と話しながら預かり票を書き、お客様に1枚目を渡す
  2. 3枚目の札を品物に付け、工房へ送る箱に入れる
  3. 閉店の後、2枚目の控えを見ながら、台帳に票番号・氏名・電話番号・品物・修理の内容・予定日を打ち込む
  4. 工房から「仕上がった」と電話が来たら、台帳の状態を変える
  5. 毎朝、台帳を見て仕上がった品物のお客様に電話かSMSで連絡する
  6. お客様から「できていますか」と電話が来たら、台帳を探し、分からなければ工房に電話する
  7. 引き取りの無い品物を、月に1回台帳から探して連絡する

(a)打ち込みが閉店の後に残る。 1日20〜30枚の控えを打ち込むと、閉店の後に30分〜1時間かかります。 忙しい日は翌日に回し、そのあいだの預かりは台帳に無い状態になります。

(b)仕上がりの連絡が漏れる。 4番で工房から電話を受けた担当と、5番で連絡する担当が違うと、台帳の状態が変わっていないまま、品物が店に戻ってきていることがあります。 お客様は連絡を待ち続けます。

(c)「できていますか」の電話が多い。 連絡が来ないお客様が電話をかけてきます。店頭の担当は接客の途中で電話を受け、台帳を探し、工房に確かめて、かけ直します。 1件ごとに数分かかります。

(d)引き取りの無い品物が積み上がる。 7番が月1回なので、仕上がって何か月もたった品物が棚に残ります。 店には預かった品物の保管の期間の決まりがありますが、期間を過ぎた品物を見つけるのが遅れます。

  1. 【人】 店頭の担当が、電話番号を1桁ずつの枠に変えた預かり票を書く
  2. 【人】 閉店の後、店の控えを複合機でスキャンし、店ごとの SharePoint のライブラリに保存する(1枚1ファイル)
  3. 【自動】 保存を起点に Power Automate のフローが動く
  4. 【自動】 Document Intelligence のコネクタで、学習したカスタム テンプレート モデルを呼び、欄・チェック・信頼度を受け取る
  5. 【自動】 電話番号の桁数、票番号の重なり、信頼度を確かめ、台帳(SharePoint のリスト)に登録する。確かでない欄があれば「要確認」にする
  6. 【人】 翌朝、店頭の担当が「要確認」の票だけを控えと見比べて直す
  7. 【人】 工房の担当が、仕上がった品物の状態を台帳の画面で「仕上がり」に変える
  8. 【自動】 毎朝、別のフローが台帳から、仕上がって連絡していない品物、予定日を過ぎた品物、引き取りの無い品物の一覧を店ごとに作る
  9. 【人】 店頭の担当が一覧を見て連絡し、台帳に連絡した日を付ける
  10. 【人】 お客様からの問い合わせは、票番号か電話番号で台帳を引いて答える

5番目と6番目が、この設計の分かれ目です。人が見るのは「要確認」の票だけです。 確かな票はそのまま台帳に入り、全部の控えを見直す設計にすると、①の2分はほとんど減りません。

7番目を工房に任せるのも意図してのことです。 状態を変えるのは、品物を手にしている工房の担当です。店に電話で伝えて、店が台帳を変える流れをやめることで、 第3章の(b)の漏れの元が消えます。

02今回想定するシステム構成

構成図
預かり票の店の控え(複写の2枚目。手書き+チェック欄)
   │  閉店の後に複合機でスキャン(1枚1ファイル)
   ▼【トリガー】SharePoint のライブラリへの保存(店ごと)
Power Automate
   ├─ ファイル コンテンツの取得
   ▼
Azure AI Document Intelligence(カスタム テンプレート モデル。コネクタで呼ぶ)
   │   票番号・日付・氏名・電話番号・品物・修理の内容・予定日・金額・連絡の方法
   │   欄・単語・チェックの信頼度
   ▼
Power Automate ── 桁数・重なり・信頼度の確認 → SharePoint のリスト(台帳)に登録
   ▼
工房が状態を更新(預かり → 修理中 → 仕上がり → 店に戻った → 引き渡し済み)
   ▼【トリガー】毎朝の定時
Power Automate ── 連絡の一覧・予定日を過ぎた一覧・引き取りの無い一覧・票番号の抜け
   ▼
【店頭の担当が連絡し、連絡した日を付ける】
役割想定する製品代替候補
OCRAzure AI Document Intelligence(カスタム テンプレート モデル)Google Document AI(Form Parser)
連携Power Automate(Document Intelligence のコネクタと SharePoint のコネクタ)Azure Logic Apps
台帳SharePoint のリスト(修理の進み具合の台帳)Microsoft Lists
保管SharePoint のライブラリ(店の控えのスキャン)―

Document Intelligence のコネクタは、Power Automate で Standard の区分です。 操作は「Analyze Document for Prebuilt or Custom models (v4.x API)」を使い、学習したモデルの ID を指定して、ファイルの中身を渡します。 受け付けるのは PDF か画像(JPG、PNG、BMP、TIFF)です。

SharePoint のコネクタも Standard の区分です。 トリガーには「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」を使います。「フォルダーにファイルが作成されたとき」は非推奨で、サブフォルダーへの追加では動かないと公式に書かれています。 プロパティのみのトリガーはファイルの中身を返さないので、続けて「ファイル コンテンツの取得」でファイルの中身を取ります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

店の控えのスキャンが、店ごとの SharePoint のライブラリに保存されたことを起点にします。 複合機のスキャンの保存先をライブラリにし、店ごとにライブラリを分けます。ライブラリの名前が、そのまま店を表します。 票番号は店ごとの連番なので、店を取り違えると連番の確かめが成り立たなくなります。

使うトリガーは「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」です。店ごとに1つのフローにせず、 ライブラリを変えたフローを3つ作るか、1つのライブラリに店ごとの列を持たせます。どちらにするかは、店の担当がどこまで他店の控えを見てよいかで決めます。

もう1つのトリガーは、毎朝の定時(繰り返し)です。 開店の前に、台帳から連絡の一覧などを作ります。一覧は、新しい預かりの読み取りとは別の流れで作ります。 仕上がりや引き取りは、預かり票の保存とは関係なく毎日起きるからです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
店の控えのスキャン1枚1ファイルの PDF か画像。保存の日時、店SharePoint のライブラリ
読み取り結果票番号、預かり日、氏名、電話番号、品物と修理の内容のチェック、手書きの補足、予定日、金額、前金、連絡の方法、各欄・単語・チェックの信頼度、文書の種類の信頼度Document Intelligence
修理の台帳票番号、店、状態、予定日、連絡した日、引き渡した日SharePoint のリスト
店の決まり店ごとの票番号の範囲、保管の期間、連絡の文面のひな形自社で用意する一覧

質を決めるのは、修理の台帳の「状態」の列です。 預かり → 修理中 → 仕上がり → 店に戻った → 引き渡し済み の5つに決め、工房と店頭のどちらが、どの状態に変えるかを決めておきます。 状態の付け方が人によって違うと、毎朝の一覧が当てになりません。

店の決まりの「保管の期間」は、引き取りの無い品物の一覧のために持ちます。 仕上がりから何日で連絡をし直すか、何日を過ぎたら店の決まりに沿って扱うかを、店の規約に合わせて入れます。

Step3

データの取得方法を決める

Document Intelligence のコネクタの操作に、次の値を渡します。

パラメーター値理由
Document Intelligence API version2024-11-30カスタムモデルの欄の信頼度に単語の信頼度が含まれる版
Model Identifier学習したモデルの ID(例 repair-ticket-v1)自社の預かり票の様式で学習したモデル
Document/Image File Content「ファイル コンテンツの取得」の結果スキャンしたファイル
Localeja手書きの日本語を読む

モデルの学習は、Document Intelligence Studio の画面で行います。 店の控えのスキャンを集め、欄ごとにラベルを付けて学習させます。カスタム テンプレート モデルは、ラベルを付けたキーと値、チェック欄、表、署名の欄を取り出せます。 手書きの文字の対応言語に日本語が含まれています。

取るもの何に使うか
票番号台帳の主キー。連番の抜けと重なりの確かめ
預かり日・予定日予定日を過ぎた品物の一覧
氏名連絡のときの本人の確かめ(台帳には読み取ったまま入れ、要確認なら直す)
電話番号仕上がりの連絡
品物・修理の内容のチェック台帳の品物と修理の内容
連絡の方法のチェック電話・SMS・連絡不要の区別
欄・単語・チェックの信頼度「要確認」にするかの判定
文書の種類の信頼度古い様式・別の書類の検知

コネクタの結果は JSON で返るので、Power Automate の「JSON の解析」で欄ごとの値・チェックの選択の状態・信頼度を取り出します。 解析のスキーマは、学習したモデルで1枚読み取った結果の見本から作ります。ラベルを足したり名前を変えたりしたら、スキーマも作り直します。 古いスキーマのままだと、新しい欄が黙って空になります。

チェック欄の確かさは、欄の信頼度とチェックの信頼度を合わせて見ます。 公式の説明では、チェック欄の欄は、欄の選択とチェックの信頼度を合わせたものが全体の確からしさをよく表すとされています。文字の欄も同じで、 欄の信頼度は値の位置の確からしさを表すため、単語の信頼度と合わせて見ます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 様式の改訂 … 電話番号の欄を、11桁の1桁ずつの枠に変えます。続けて書いた数字より、読み違いが大きく減ります
  2. 複写の濃さ … 2枚目の控えは文字が薄くなります。店頭の担当には、ボールペンで強めに書くことを決まりにします
  3. スキャンの設定 … 文字の高さの下限は、1024×768の画像で12ピクセル(150 DPI で約8ポイント)です。複合機の解像度を、店ごとにそろえます
  4. 1枚1ファイル … 束で1つの PDF にすると、1枚の読み取りの失敗が束全体に及びます
  5. 画像の寸法とサイズ … 画像は50×50〜10,000×10,000ピクセル、ファイルは有料(S0)のレベルで500MBまでです。1枚の預かり票なら十分に収まります
  6. 学習の見本 … 様式ごとに少なくとも5枚、店ごと・複合機ごとに、薄い控えと濃い控えを混ぜて集めます
  7. 1枚1品物の決まり … 靴1足と鞄1つを一緒に預かるときも、預かり票を品物ごとに分けて書きます。 1枚に2つの品物を書くと、片方だけ仕上がったときに台帳の状態が付けられません
  8. 控えの向き … 複合機に控えの向きをそろえて置く決まりにします。テンプレートのモデルは位置の手がかりで値を取るため、上下が逆の控えは文書の種類の信頼度が下がり、 全欄が要確認になります

1番目の様式の改訂を、学習の前に済ませます。 テンプレートのモデルは見た目の様式に頼るため、様式を変えると精度が下がり、学習し直すことになります。 刷り直す預かり票の在庫に合わせて、切り替えの日を決めます。

Step5

AIに処理させる

Document Intelligence にさせるのは、決まった欄から値を取り出し、それぞれに信頼度を付けることだけです。 取り出した後の確かめは、Power Automate の条件で行います。

確かめること条件当てはまったときの扱い
電話番号の桁数数字だけで10桁か11桁、0で始まる外れたら「要確認」
電話番号の信頼度欄と単語の信頼度が基準以上下回ったら「要確認」
票番号の重なり台帳に同じ店・同じ票番号が無いあれば二重のスキャンとして登録しない
票番号の範囲店ごとの票番号の範囲に入っている外れたら「要確認」(店の取り違え)
チェックの数品物のチェックが1つ以上、連絡の方法のチェックが1つ0個か2個以上なら「要確認」
予定日預かり日より後の日付前なら「要確認」
文書の種類の信頼度基準以上下回ったら全欄「要確認」

させないことも決めておきます。

させないこと理由
読めない電話番号を、氏名から過去の台帳を引いて埋める同じ名前のお客様に連絡が届く
予定日を修理の内容から決める予定日は職人と相談して書いたもの
見積の金額を修理の内容から決める金額は店頭で伝えたもの
連絡の方法のチェックが無いときに電話を選ぶ「連絡不要」のお客様に電話することになる

1行目がいちばん起きやすい失敗です。 常連のお客様なら、氏名で過去の台帳を引けば電話番号が出てきます。しかし、同じ名字のお客様は珍しくなく、 番号を変えた人もいます。読めない番号は、控えを見て直すか、お客様の控えの票番号で問い合わせを待ちます。

Step6

指示内容を固定する

この構成には生成AIへのプロンプトがありません。AIへの指示にあたるのは、カスタム テンプレート モデルに付けるラベルの定義と、Power Automate の確かめの条件です。

【ラベルの定義(Document Intelligence Studio で付ける)】
ticket_no ...... 欄:票番号(印刷済みの連番。6桁)
received_date .. 欄:預かり日
due_date ....... 欄:仕上がりの予定日
customer_name .. 欄:氏名(手書き)
phone .......... 欄:電話番号(11桁の枠をまとめて1つの欄にする)
item_* ......... チェック欄:紳士靴/婦人靴/ブーツ/スニーカー/鞄/財布/その他
repair_* ....... チェック欄:かかと/つま先/ソール/中敷き/ファスナー/持ち手/
                 縫い/色/クリーニング/その他
repair_note .... 欄:修理の内容の手書きの補足
estimate ....... 欄:見積の金額
deposit ........ 欄:前金
contact_* ...... チェック欄:電話/SMS/連絡不要
staff_sign ..... 署名の欄(周りの印刷の文字を含めずに囲む)

【学習の見本の集め方】
- 3店舗それぞれから、少なくとも5枚ずつ
- 薄い控え、濃い控え、補足の欄が長い控えを混ぜる
- 電話番号の枠に変えた新しい様式だけで学習する

【確かめの条件(Power Automate の条件)】
1. phone を数字だけにして、10桁か11桁で 0 から始まる → でなければ要確認
2. phone の欄の信頼度と単語の信頼度が基準以上 → でなければ要確認
3. 同じ店・同じ ticket_no が台帳にある → 登録せず、重なりとして記録する
4. ticket_no が店の票番号の範囲にない → 要確認
5. item_* のチェックが0個、contact_* のチェックが0個か2個以上 → 要確認
6. due_date が received_date より前 → 要確認
7. 文書の種類の信頼度が基準より低い → 全欄を要確認
8. 読めない欄を、ほかの欄や過去の台帳から埋めない

8番の「埋めない」が、この条件の中でいちばん大事です。 Power Automate では、過去の台帳から値を引いて埋める流れも簡単に作れます。作れるからこそ、作らない決まりとして書いておきます。

基準の値は、最初の1か月で決めます。 最初は低めの基準から始めて「要確認」を多めに出し、店頭の担当が直した欄と、そのときの信頼度を並べて、 誤りが出なくなる信頼度を探します。

Step7

出力形式を固定する

台帳(SharePoint のリスト)の1行に、次の列を持たせます。

列中身書く人
店・票番号読み取った票番号と店フロー
預かり日・予定日読み取った日付フロー
氏名・電話番号読み取った値フロー(要確認なら店頭の担当が直す)
品物・修理の内容チェックの付いた項目と補足フロー
見積の金額・前金読み取った金額フロー
連絡の方法電話・SMS・連絡不要フロー
読み取りの状態確か/要確認(理由)フロー
状態預かり/修理中/仕上がり/店に戻った/引き渡し済み工房・店頭の担当
連絡した日・引き渡した日日付店頭の担当
控えのファイルスキャンへのリンクフロー

「読み取りの状態」と「状態」を別の列にしているのが、この形の要です。 読み取りの確かさと、修理の進み具合は別のことです。要確認の票でも修理は進むので、 工房は状態を変えられ、店頭の担当は空いたときに読み取りを直します。

毎朝の一覧は、台帳を絞り込んで店ごとに作ります。

一覧絞り込みの条件使い方
仕上がりの連絡状態が「店に戻った」で、連絡した日が空。連絡の方法が「連絡不要」でない電話か SMS で連絡する
予定日を過ぎた品物予定日が今日より前で、状態が「預かり」か「修理中」工房に確かめ、お客様に遅れを伝える
引き取りの無い品物連絡した日から店の決まりの日数を過ぎ、引き渡した日が空連絡をし直す
票番号の抜け店ごとの連番の中で、台帳に無い番号控えの束を探し、スキャンし直す
要確認の票読み取りの状態が「要確認」控えと見比べて直す

票番号の抜けの一覧が、預かったのに台帳に無い品物を見つけます。 書き損じで破棄した票は、店頭の担当が台帳に「破棄」として登録しておき、抜けから外します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
SharePoint のライブラリトリガー「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」と「ファイル コンテンツの取得」スキャンの保存を検知し、中身を取る
Document Intelligenceコネクタ「Analyze Document for Prebuilt or Custom models (v4.x API)」欄・チェック・信頼度を返す
SharePoint のリスト「項目の作成」「項目の取得」「項目の更新」台帳への登録、一覧の絞り込み、重なりの確かめ
店頭のメール・Teams毎朝の一覧の送付店ごとの一覧を届ける

お客様への連絡は、この構成から自動で送りません。 一覧は店頭の担当に届き、電話か SMS は担当が送ります。 仕上がりの連絡は、品物が本当に店に戻っているかを棚で確かめてから出すものだからです。

Document Intelligence のコネクタには、1つの接続あたり60秒に1,200回という呼び出しの上限があります。 1日20〜30枚の預かり票なら届きませんが、溜まった控えをまとめてスキャンし直すときは、 間をあけて保存します。

Step9

人が確認する

  1. 翌朝、「要確認」の票を見る … 台帳の行から控えのファイルを開き、理由の欄を直します。電話番号は、控えの枠を1桁ずつ見て直します
  2. 票番号の抜けを見る … 控えの束を探し、スキャンし直すか、破棄として登録します
  3. 仕上がりの連絡の前に、棚の品物を確かめる … 状態が「店に戻った」でも、棚に無ければ連絡しません
  4. お客様から問い合わせが来たら、票番号で台帳を引く … 状態と予定日で答えます

1番目の電話番号の直しを省かないでください。 読み取りが確かでない番号のまま連絡すると、別の人に「修理が仕上がりました」と届きます。 店の信用に直接響く失敗です。

4番目の問い合わせは、電話番号でも引けるようにします。 お客様が控えをなくしていても、電話番号で台帳の行が見つかれば、状態と予定日をその場で答えられます。 工房に電話して確かめ、かけ直す流れがなくなり、接客の途中で受けた電話も短く済みます。台帳の検索の画面で電話番号の列を探せるよう、リストの表示を店頭向けに1つ作っておきます。

目標は、600枚をならして1枚1分です。 「要確認」になる票が1割前後という想定で、それより多い店は、複写の濃さかスキャンの設定がそろっていません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
文書の種類の信頼度が低い古い様式の票や別の書類の疑い。全欄を要確認にする
文字が薄くて読めない1024×768の画像で12ピクセルが下限。書き方とスキャンの設定を見直す
同じ票番号が二度保存された二度目は登録せず、重なりとして記録する
票番号が店の範囲に無い別の店のライブラリに保存した疑い。要確認にする
書き損じで破棄した票店頭の担当が台帳に「破棄」として登録する
コネクタの呼び出しが失敗するフローの実行の履歴に残る。ファイルはライブラリに残したまま、翌朝の一覧に「未処理」として出す
修理の途中で内容や金額が変わる職人と相談したうえで、店頭の担当が台帳を直す。控えには追記する

上の2行は、運用を始めて最初の数週間によく出ます。 古い様式の票が残っていることと、複写の2枚目が薄いことが理由です。どちらも用紙と書き方の問題で、 様式の切り替えが終わると減っていきます。

Step11

記録を残す

  • 店の控えのスキャン(ライブラリに残す)
  • 読み取りの結果と、使ったモデルの ID
  • 台帳の各行の変更の記録(SharePoint のリストの版の履歴)
  • 店頭の担当が「要確認」の票で直した記録 … どの欄を、何から何に直したか
  • 連絡した日と方法、引き渡した日
  • 店ごとの「要確認」の割合の推移

4つ目の記録が、信頼度の基準を決める材料になります。 直した欄と、そのときの信頼度を並べると、どの信頼度より下で誤りが出ているかが分かります。

04実装レベルの3段階

最小構成:Studio で読み取りを試し、結果を見ながら手で台帳に打ち込む / 読み取りの確かめ
半自動化:上記+保存を起点に Power Automate で読み取り、台帳に登録し、毎朝の一覧を作る / 読み取りから台帳と一覧まで
本格構成:上記+台帳と顧客の管理の仕組みをつなぎ、SMS の送信の仕組みと連携する / 連絡の送信の準備まで

この記事の想定は、半自動化です。 読み取り・台帳への登録・毎朝の一覧づくりまでを Power Automate で行い、連絡は店頭の担当が送ります。 店の規模なら、ここで十分に効果が出ます。 半自動化で、1枚4分が1分になります。 打ち込みが「要確認」の票の直しだけになり、仕上がりの連絡の対象を探す作業と、問い合わせのたびに工房に確かめる作業がなくなります。 本格構成は、店舗が増えてからで足ります。 SMS の送信まで自動にすると、棚の品物を確かめる前に連絡が出る流れになりやすく、 第7章「人間の確認」の3番目が抜けます。進むときは、送信の前に担当が承認する手順を残します。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
4 分
1件あたり導入後時間
1 分
現在  600件 × 4分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 600件 × 1分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
75%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価2,200円)
79万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 駅ビルや商業施設に数店舗を持ち、靴・鞄・革小物の修理の預かりを複写式の手書きの票で受けている修理店。店の控えを見ながら台帳に打ち直しており、仕上がりの連絡の漏れや「もうできていますか」という電話が多い場合。Microsoft 365 を使っていて、SharePoint のリストを台帳にできる場合。
向いていない
  1. 受付をタブレットの画面で入力できている場合(読み取りが要らない)。預かりが1日に数件で、手で台帳をつけても負担にならない場合。預かり票の様式が店ごとにばらばらで、そろえる見込みがない場合。なお、修理ができるかどうかや料金の判断は職人が行うもので、この構成は関わりません。

07最小構成で試す方法

  1. 電話番号を1桁ずつの枠に変えた預かり票を、1店舗で2週間使う
  2. その間の店の控えから、薄いもの・濃いものを混ぜて30枚選ぶ
  3. Document Intelligence Studio で、そのうち10枚にラベルを付けて学習させる
  4. 残りの20枚を Studio で読み取り、欄ごとの値と信頼度を見る
  5. 読み取った値を、これまでどおり手で打ち込んだ台帳と突き合わせる

5番目で見るのは、誤った欄が信頼度の低い側に集まっているかです。 集まっていれば、信頼度で「要確認」を絞る設計が成り立ちます。

出てきた内容判断
誤った欄が信頼度の低い側に集まったPower Automate のフローづくりに進む
電話番号の読み違いが多い枠の大きさを見直すか、書き方を決め直す
薄い控えで読めない欄が多いボールペンで強めに書く決まりにしてから続ける
チェック欄の読み違いが多いチェックの書き方(✓か塗りつぶしか)をそろえる

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
電話番号の読み違いで別の人に連絡する枠に変え、桁数と信頼度で確かめ、要確認は控えで直す
読めない電話番号を過去の台帳から埋める埋めない決まりを条件に書く
非推奨のトリガーを使う「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」と「ファイル コンテンツの取得」を使う
束で1つの PDF にスキャンする1枚1ファイルにする
複写の2枚目が薄くて読めないボールペンで強めに書く。スキャンの設定をそろえる
欄の信頼度だけで判定する単語・チェックの信頼度と合わせて見る
様式を変えたら読めなくなった新しい様式で5枚以上の見本を集め、学習し直す
預かったのに台帳に無い品物がある票番号の連番の抜けを毎朝の一覧に出す
工房の更新が漏れる状態を変える人を決める。店に電話で伝える流れをやめる
棚に無い品物の連絡を出す連絡の前に棚を確かめる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも電話番号から始まり、別のお客様に連絡が届くという同じ結果になります。 枠の様式と「埋めない」の決まりで、起きる場所を限ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: お客様の氏名、電話番号、預かった品物と修理の内容、金額です。

  1. 台帳と控えを見られる人を絞る … 店ごとのライブラリとリストに、その店の担当と工房の担当だけが入れるようにします。本部で全店を見る人を決めておきます
  2. 連絡を自動で送らない … 一覧は担当に届け、送るのは担当です。 連絡の誤りは、別のお客様に電話番号と品物が知られることになります
  3. 控えのスキャンを残す期間を決める … 引き渡しの後、いつまで控えと台帳の行を残すかを、店の規約と合わせて決めます
  4. 読み取った電話番号を別の用途に使わない … 預かり票の電話番号は、修理の連絡のために書いてもらったものです。販売の案内などに使うなら、別に了解を取ります
  5. 修理の可否と料金は職人が決める … この構成は書かれた内容を読むだけで、修理の内容や金額を変えることはしません

誤りが起きた場合のリスクは、別のお客様に連絡が届くことと、預かった品物が台帳から漏れることの2つです。 前者は電話番号の読み違いで、後者は読み取りの失敗やスキャンのし忘れで起きます。桁数と信頼度の確かめと、票番号の連番の確かめで、どちらも一覧に出るようにしています。

10まず何から始めるか

1週目:預かり票の様式と台帳の状態を決める

電話番号の欄を11桁の枠に変えた預かり票を作り、1店舗で使い始めます。台帳の「状態」の5段階と、誰がどの状態に変えるかを、工房と店頭で決めます。

2週目:控えを集める

新しい様式の店の控えを、薄いもの・濃いものを混ぜて30枚集めます。

3週目:Studio で学習と読み取りを試す

10枚にラベルを付けて学習させ、残りの20枚を読み取ります。誤った欄が信頼度の低い側に集まっているかを確かめます。

4週目:保存から台帳までをつなぐ

SharePoint のライブラリへの保存で Power Automate のフローを動かし、読み取った値を台帳に登録するところまで作ります。この時点では、店頭の担当がこれまでどおり打ち込みながら、台帳の行と見比べます。

2か月目: 確かめの条件と「要確認」、毎朝の一覧を足し、工房が台帳の状態を変える運用を始めます。3か月目以降: 残りの2店舗に広げ、1枚4分が何分になったかを実測します。仕上がりの連絡の一覧が毎朝そろい、「できていますか」の電話が減った時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-28/最終更新:2026-10-28
確認した内容情報源確認日
Document Intelligence のコネクタが Power Automate・Logic Apps で Standard の区分であること。操作「Analyze Document for Prebuilt or Custom models (v4.x API)」で API の版・モデルの ID・ファイルの中身・ページ・ロケールなどを渡すこと。入力が PDF か画像(JPG、PNG、BMP、TIFF)であること。1つの接続あたり60秒に1,200回の呼び出しの上限Microsoft Learn: Azure AI Document Intelligence (form recognizer) connector2026-10-28
SharePoint のコネクタが Power Automate で Standard の区分であること。「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」がライブラリの列のプロパティだけを返し、「ファイル コンテンツの取得」で中身を取ること。「フォルダーにファイルが作成されたとき」が非推奨で、サブフォルダーへの追加では動かないこと。「項目の作成」「項目の更新」の操作Microsoft Learn: SharePoint connector2026-10-28
カスタム テンプレート モデルが、ラベルを付けたキーと値・選択マーク・表・署名・指定した領域を取り出し、決まった見た目の様式に向くこと。様式が変わると精度が下がり、様式ごとに少なくとも5枚の見本を用意すること。サイズが S0 で500MB・F0 で4MBであること。画像が50×50〜10,000×10,000ピクセル、文字の高さの下限が1024×768の画像で12ピクセル(150 DPI で約8ポイント)であることMicrosoft Learn: Custom template document model2026-10-28
カスタム テンプレート モデルの手書きの文字の対応言語に日本語(ja)が含まれることMicrosoft Learn: Language and locale support for custom models2026-10-28
2024-11-30(GA)の版から、カスタムモデルの欄の信頼度に単語の信頼度が含まれること。欄の信頼度は値の位置の確からしさで、文字・選択マークの信頼度と合わせて見ること。文書の種類の信頼度が低いのは様式の違いを示すこと。署名のラベルに周りの文字を含めないことMicrosoft Learn: Interpret and improve model accuracy and confidence scores2026-10-28

預かった品物の保管の期間や、引き取りの無い品物の扱いは、店の規約によります。 本記事は製品の公開仕様で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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