Media > AI活用ユースケース > 品質管理 > 海外の仕入先から届く英文のISO認証書(品質・環境)を読み取り、認証範囲・登録番号・有効期限を仕入先台帳に転記して、期限切れ間近と範囲外の品目を拾う

海外の仕入先から届く英文のISO認証書(品質・環境)を読み取り、認証範囲・登録番号・有効期限を仕入先台帳に転記して、期限切れ間近と範囲外の品目を拾う

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

海外の仕入先から届く英文のISO認証書を読み取り、規格・登録番号・認証範囲・有効期限を仕入先台帳への転記の案にします。有効期限の近いもの、購入している品目が認証範囲に入っていない疑いのあるもの、台帳と食い違うものを拾います。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
AWS Textract/Azure AI/Google Document AI
連携・自動化
Python
対象業界
商社/製造
対象部門
品質管理/購買
対象業務
内容確認・チェック/台帳・マスタ管理
主な課題
入力作業が多い/期限・対応漏れが起きる/確認ミスが多い
AIで行う処理
読み取り(OCR)
主な効果
入力漏れ削減/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
15h/月
AI導入後
5h/月
想定削減
67%
年間削減
120h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 仕入先から届いた認証書のPDFを、仕入先ごとのフォルダに保存する
  2. 認証書を開き、規格と版・登録番号・認証機関・有効期限を仕入先台帳に写す
  3. 組織名と住所が台帳の仕入先と同じかを見比べる
  4. 余裕があれば、認証範囲の文を読み、その仕入先から買っている品目が入っているかを見る
  5. 表計算のファイルで有効期限を並べ、期限の近い仕入先に更新した認証書を英文のメールで頼む
  6. 届かない仕入先には催促し、期限を過ぎたものを品質保証部に知らせる
導入後(After)
  1. 人担当者が、届いた認証書のPDFを仕入先ごとの受け取りの場所(Amazon S3)に保存する
  2. 自動保存をきっかけに、AWS Textract が問い合わせによる項目の読み取りを非同期で始める
  3. 自動プログラムが日付を認証機関ごとの設定の順で読み、有効期限までの日数を出す
  4. 自動プログラムが登録番号・組織名・規格を仕入先台帳と照らし、食い違いを拾う
  5. 自動Claude API が、認証範囲の文と、その仕入先から買っている品目の区分・出荷元の事業所を見比べ、範囲外の疑いを根拠の一文付きで挙げる
  6. 自動有効期限が近いものと範囲外の疑いのあるものについて、Claude API が仕入先への依頼の英文の下書きを作る
  7. 人担当者が、転記の案と拾われた事項を確かめ、台帳に登録する。新規の仕入先と疑いのあるものは IAF CertSearch で登録番号を確かめる
  8. 人依頼の下書きを直して送り、範囲外の疑いが残るものを品質保証部に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 仕入先から届いた認証書のPDFを、仕入先ごとのフォルダに保存する
  2. 認証書を開き、規格と版・登録番号・認証機関・有効期限を仕入先台帳に写す
  3. 組織名と住所が台帳の仕入先と同じかを見比べる
  4. 余裕があれば、認証範囲の文を読み、その仕入先から買っている品目が入っているかを見る
  5. 表計算のファイルで有効期限を並べ、期限の近い仕入先に更新した認証書を英文のメールで頼む
  6. 届かない仕入先には催促し、期限を過ぎたものを品質保証部に知らせる

(a)写すだけで時間がかかる。 認証書の書式は認証機関ごとに違い、登録番号と有効期限の位置がばらばらです。 発行日と有効期限と初回の発行日が並んでいて、取り違えることがあります。

(b)日付の書き方がそろわない。 「03/04/2027」が3月4日か4月3日かは、認証機関の国で変わります。月の名前で書かれたものと数字だけのものが混ざり、期限を1か月取り違えると、催促が遅れます。

(c)認証範囲を確かめていない。 範囲の文は長い英文で、品目マスタと見比べるには時間がかかります。4番目の手順は、忙しい月にはまず省かれます。

(d)期限切れに気づくのが遅れる。 期限の管理は表計算のファイルで、見るのは担当者が思い出したときです。期限が過ぎた後に品質保証部の監査の準備で気づく、ということが起きます。

  1. 【人】 担当者が、届いた認証書のPDFを仕入先ごとの受け取りの場所(Amazon S3)に保存する
  2. 【自動】 保存をきっかけに、AWS Textract が問い合わせによる項目の読み取りを非同期で始める
  3. 【自動】 プログラムが日付を認証機関ごとの設定の順で読み、有効期限までの日数を出す
  4. 【自動】 プログラムが登録番号・組織名・規格を仕入先台帳と照らし、食い違いを拾う
  5. 【自動】 Claude API が、認証範囲の文と、その仕入先から買っている品目の区分・出荷元の事業所を見比べ、範囲外の疑いを根拠の一文付きで挙げる
  6. 【自動】 有効期限が近いものと範囲外の疑いのあるものについて、Claude API が仕入先への依頼の英文の下書きを作る
  7. 【人】 担当者が、転記の案と拾われた事項を確かめ、台帳に登録する。新規の仕入先と疑いのあるものは IAF CertSearch で登録番号を確かめる
  8. 【人】 依頼の下書きを直して送り、範囲外の疑いが残るものを品質保証部に回す

5番目が、この設計の分かれ目です。 範囲の文と品目の区分の見比べは、言葉の意味を扱う作業で、規則では書き切れません。ただし、AIに「範囲内です」と言わせて確定させず、「範囲外の疑い」「判断できない」を拾う役に留めます。 範囲内と出たものも、根拠の一文を台帳に残します。

7番目で IAF CertSearch を使うのは、認証書そのものが正しいかは読み取りでは分からないからです。 ISO の公式のページでは、認定された認証の確かめ方として IAF CertSearch を使うよう勧め、認証機関・認定機関・IAF に直接確かめる方法も挙げています。

02今回想定するシステム構成

構成図
ISO認証書(英文のPDF。仕入先からメールで届く)
   │  担当者が仕入先ごとの場所へ保存
   ▼【トリガー】Amazon S3 への保存
AWS Lambda ── StartDocumentAnalysis(FeatureTypes:QUERIES、FORMS)
   ▼
AWS Textract(非同期の文書分析)── 完了の通知(Amazon SNS)
   ▼
AWS Lambda ── GetDocumentAnalysis
   ├──▶ Python:日付の読み方の設定、期限までの日数、台帳との照合
   ├──▶ Claude API:認証範囲と購入品目・事業所の見比べ(疑いの抽出)
   └──▶ Claude API:更新・確認の依頼の英文の下書き
   ▼
台帳の転記の案と確認事項の一覧(担当者が確認・登録)
   ├──▶ IAF CertSearch(新規と疑いのあるものを担当者が確かめる)
   ▼
仕入先台帳/仕入先への依頼(担当者が送る)/品質保証部へ
役割想定する製品代替候補
OCRAWS Textract(StartDocumentAnalysis/GetDocumentAnalysis。QUERIES と FORMS)Azure AI Document Intelligence、Google Document AI
生成AIClaude API(認証範囲の見比べ、依頼の英文の下書き)OpenAI API、Gemini API
差異計算Python(日付の読み方、期限までの日数、台帳との照合)購買の仕組みの期限の通知の機能
連携AWS Lambda(保存と完了の通知を起点に処理を動かす)AWS Step Functions
確認IAF CertSearch(認定された認証の確かめ)認証機関の登録の検索
保管Amazon S3(認証書の原本、読み取り結果、確認の記録)社内のファイルサーバー

土台は、AWS Textract の問い合わせの機能です。 認証書は表より文の書類で、項目の位置が認証機関ごとに違います。「What is the certificate number?」のように英語で問いかけ、答えを受け取る形なら、書式ごとの位置の設定が要りません。 付属書のページがあるので、非同期の StartDocumentAnalysis を使います。

Textract を選べるのは、認証書が英文だからです。 公式の対応言語は英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・ポルトガル語・スペイン語で、問い合わせは英語の文書でだけ使えます。欧州の認証機関がドイツ語と英語を併記した認証書も、英語の部分に問い合わせます。

購買の仕組みの仕入先マスタには書き込みません。 転記の案は担当者が確かめてから登録します。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

仕入先ごとの受け取りの場所(S3 のフォルダ)にPDFが保存されたことを起点にします。 フォルダは iso/<仕入先コード>/<規格>/ の形にし、どの仕入先の認証書かを、保存した場所で決めます。 認証書の組織名から仕入先を探すと、グループ会社や旧社名で取り違えます。

読み取りを始めるとき、ClientRequestToken に「仕入先コード+規格+受領日」を入れます。 公式のページでは、同じトークンで StartDocumentAnalysis を呼ぶと同じ JobId が返り、同じジョブを誤って二度始めるのを防げるとされています。同じ認証書を2人が保存しても、読み取りは1回で済みます。

完了は Amazon SNS の通知で受け、JobTag に入れた仕入先コードでどの仕入先かを知ります。 JobId は7日間だけ有効なので、結果は受け取ったその場で S3 に保存します。

期限の確認は、届いた認証書とは別に、毎週月曜に台帳の全件で行います。 届いたときだけ期限を見ると、届かない仕入先の期限切れに気づけません。 毎週、有効期限まで90日を切った仕入先を拾い、依頼の下書きを作ります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
ISO認証書規格と版、登録番号、認証機関、認定機関の印、組織名、認証の対象の事業所と住所、認証範囲の文、初回の発行日、今回の発行日、有効期限、付属書仕入先から届くPDF
読み取り結果問い合わせの答えと信頼度、キーと値の組AWS Textract
仕入先台帳仕入先コード、正式名・旧社名、事業所の住所、求める規格、現在の登録番号と有効期限購買の仕組みの仕入先マスタ
購入品目の一覧その仕入先から買っている品目の区分(樹脂成形品、切削加工品、電子部品など)と、出荷元の事業所品目マスタと発注の記録から書き出す
認証機関ごとの設定日付の順(月日年か日月年か)、登録番号の形自社で用意する設定表

質を決めるのは、購入品目の一覧の「品目の区分」と「出荷元の事業所」です。 品目の区分が「部品」のように粗いと、範囲の文と見比べても疑いを拾えません。範囲の文に出てくる程度の粒度(成形・切削・板金・組立・設計の有無など)で区分を持たせます。

出荷元の事業所は、発注の記録の出荷元の住所から取ります。 仕入先台帳の住所は本社のことが多く、実際に品物を作って出荷している工場が認証の対象に入っているかは、出荷元で見ないと分かりません。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
規格・登録番号・認証機関QUERIES の QUERY_RESULT台帳との照合、CertSearch での確かめ
組織名・事業所の住所QUERIES の QUERY_RESULT、キーと値の組台帳の仕入先と出荷元の事業所との照合
認証範囲の文QUERIES の QUERY_RESULT と、そのページの LINE のブロック購入品目との見比べ
発行日・有効期限・初回の発行日QUERIES の QUERY_RESULT期限までの日数
付属書の事業所と範囲2ページ目以降の LINE のブロック事業所ごとの範囲の確認

項目は、問い合わせで取ります。 公式のページでは、問い合わせの答えは QUERY_RESULT として信頼度付きで返り、答えが見つからなければ空のまま返るとされています。非同期では1ページあたり30件までです。

問い合わせ(Text)Alias
Which ISO standard and version is certified?STANDARD
What is the certificate number or registration number?CERT_NO
Which certification body issued this certificate?CERT_BODY
What is the name of the certified organization?ORG_NAME
What is the scope of certification?SCOPE
What is the expiry date of the certificate?EXPIRY
What is the date of issue of this certificate?ISSUE_DATE
What is the original certification date?ORIGINAL_DATE

範囲の文は、問い合わせの答えだけに頼りません。 範囲の文は数行に及ぶことがあり、答えが途中で切れることがあります。答えの位置のページの LINE のブロックから、範囲の見出しの後の行をつなげて全文を取り、答えと照らします。 結果は NextToken が返る限り呼び続け、全ページ分をそろえてから組み立てます。

キーと値の組は、問い合わせの答えが空のときの予備に使います。 GetDocumentAnalysis は、「Certificate No.: 12345」のような組を KEY と VALUE の2つのブロックで返すとされています。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … JPEG、PNG、PDF、TIFF のどれかであることを確かめます。XFA の形式のPDFは扱えないとされています
  2. パスワードの確認 … パスワードで保護されたPDFは扱えません。 仕入先に送り直してもらいます
  3. 日付の読み方 … 認証機関ごとの設定で日付の順を決め、月の名前で書かれたものはそのまま読みます。設定の無い認証機関で数字だけの日付が来たら、日が12以下のものは人に回します
  4. 3つの日付の取り違えの確かめ … 初回の発行日 ≦ 今回の発行日 < 有効期限 の順になっているかを確かめます
  5. 登録番号の整え … 前後の空白と記号をそろえ、認証機関ごとの番号の形に合うかを確かめます
  6. 組織名の照らし … 「Co., Ltd.」「GmbH」「Inc.」などの会社の種類の表記を外して、台帳の正式名・旧社名と照らします

3番目と4番目を軽く見ないでください。 期限の日付を1か月取り違えると、依頼が1か月遅れます。日が12以下の数字だけの日付は、どちらの順でも日付として成り立つので、機械では決められません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、言葉を扱う2つの仕事だけです。 項目の読み取りは Textract、日付と照合はプログラムが行います。

させること中身できないときの扱い
認証範囲と購入品目の見比べ品目の区分ごとに、範囲の文に当たる記述があるかを見て、covered/not_covered_suspected/unclear を付け、根拠の一文を範囲の文から写す。出荷元の事業所が対象の事業所に入っているかも同じ形で見る判断できなければ unclear
依頼の下書き期限の近いもの、範囲外の疑い、台帳との食い違いごとに、仕入先に送る英文のメール理由ごとの定型の文に限る

1行目の結果は、確定ではなく疑いの印です。 not_covered_suspected と unclear が付いたものだけを人が読み、covered のものは根拠の一文を台帳に残して流し見ます。

させないこと理由
認証が有効かどうかの結論有効かは認証機関と CertSearch で確かめる
日付の読み方の判断と期限の計算認証機関ごとの設定とプログラムで決める
範囲の文を言い換えて広げる「部品の製造」を「すべての部品」に読み広げない
範囲外の品目を買い続けるかの判断購買と品質保証の担当者が決める
仕入先の評価認証の有無だけで仕入先を評価しない

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 範囲の文が「Manufacture of metal components」なら、AIは切削も板金も鋳造も「金属の部品」として covered にしがちです。指示で「範囲の文に書かれた工程や製品の言葉で判断し、読み広げない」と縛り、迷えば unclear にさせます。

Step6

指示内容を固定する

認証範囲の見比べの指示です。

あなたはメーカーの調達部で、海外の仕入先のISO認証書の認証範囲が、
自社が買っている品目に及んでいるかを見る担当者を手伝います。
渡された「認証範囲の文」「認証の対象の事業所」「購入品目の区分と出荷元の事業所」だけを見てください。

【やること】
- 品目の区分ごとに、範囲の文に当たる記述があるかを見て、次のどれかを付けてください。
  covered ................ 範囲の文に、その品目の工程や製品がはっきり書かれている
  not_covered_suspected .. 範囲の文に当たる記述が無い
  unclear ................ 当たるかどうかを範囲の文から決められない
- 出荷元の事業所が、認証の対象の事業所に入っているかも、同じ3つで付けてください。

【厳守事項】
- 根拠として、範囲の文の該当する部分をそのまま evidence に写してください。
  covered のときは evidence を必ず埋めてください。
- 範囲の文に書かれた工程や製品の言葉で判断してください。
  「metal components」を切削・板金・鋳造のすべてに読み広げないでください。
- 「design」の語が範囲に無いときは、設計を含む品目を covered にしないでください。
- 迷ったときに covered を選ばないでください。
- 認証が有効かどうか、仕入先の良し悪しを書かないでください。

「design の語が無いときは設計を含む品目を covered にしない」を入れるのは、ISO 9001 の範囲で設計の有無がよく分かれるからです。 仕入先に設計を任せている品目(仕様だけを渡して設計から頼む部品)なのに、範囲が「Manufacture of ...」だけなら、設計の工程は認証の外かもしれません。 ここは品質保証部が最も気にする点です。

依頼の下書きの指示は短くします。「理由(expiring/scope_check/data_mismatch)ごとに、仕入先名・規格・登録番号・有効期限を渡された値のまま書き、更新した認証書の送付か範囲の確認をお願いする形にする。取引への影響に触れない」とします。

Step7

出力形式を固定する

転記の案は、プログラムがJSONで出します。 範囲の見比べも、Claude API の構造化出力で形を決めて受けます。公式のページでは、output_config.format に JSON スキーマを渡すと、スキーマに合う JSON が返るとされ、正式提供の機能です。

{
  "supplier_code": "S-3021",
  "certificate": {
    "standard": "ISO 9001:2015", "cert_no": "", "cert_body": "",
    "org_name": "", "org_name_match": "matched | former_name | mismatch",
    "original_date": "2015-06-12", "issue_date": "2024-06-10", "expiry_date": "2027-06-09",
    "date_order_check": "ok | failed", "days_to_expiry": 238
  },
  "scope_text": "",
  "scope_check": [
    { "item_class": "injection_molded_parts", "result": "covered", "evidence": "Manufacture of injection molded plastic parts" },
    { "item_class": "machined_aluminum_parts", "result": "not_covered_suspected", "evidence": "" }
  ],
  "site_check": { "ship_from": "Plant 2", "result": "unclear", "evidence": "" },
  "ledger_diff": [ { "field": "cert_no", "ledger": "", "certificate": "" } ],
  "actions": [ "scope_check" ],
  "min_confidence": 95.2
}

1つ目の理由は、範囲の確認を品目の区分ごとに持てることです。 同じ仕入先でも、成形品は covered、切削品は not_covered_suspected のように分かれます。台帳に品目の区分ごとの結果を残せば、範囲外の品目だけを品質保証部に回せます。

2つ目は、evidence を台帳に残せることです。 covered と判断した根拠の一文が残っていれば、監査のときに「なぜ範囲内と判断したか」を説明できます。

actions決め方(プログラム)
expiringdays_to_expiry が90日以下
scope_checkscope_check か site_check に not_covered_suspected か unclear がある
data_mismatchledger_diff がある、または org_name_match が mismatch
verify新規の仕入先、または登録番号が台帳から変わった
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Amazon S3保存の通知で Lambda を動かす仕入先と規格をフォルダで決める
AWS TextractStartDocumentAnalysis/GetDocumentAnalysis問い合わせの答え・キーと値の組・行・信頼度
Amazon SNS完了の通知JobTag で仕入先を知る
購買の仕組み仕入先マスタと購入品目の一覧を書き出して読む読み取りだけ
Claude APIAPI呼び出し(構造化出力)範囲の見比べ、依頼の下書き
IAF CertSearch担当者が画面で確かめるverify の付いたもの
担当者転記の案と確認事項の一覧を共有の場所に置き、チャットで知らせる確認、台帳への登録、依頼の送信

仕入先マスタには書き込みません。 転記の案を確かめて登録するのは担当者です。読み取りの誤りで有効期限が延びたまま登録されると、期限切れに誰も気づかなくなります。

IAF CertSearch は、まず担当者が画面で使います。 ISO の公式のページでは、認証は1件ずつ、まとめて、または API で確かめられるとされています。件数が増えたら、まとめての確認を検討します。

Step9

人が確認する

担当者が全件の転記の案を確かめます。 見る順を決めておきます。

  1. date_order_check が failed のもの、日付を人に回したものを先に見る … 原本で3つの日付を確かめます
  2. data_mismatch を確かめる … 組織名の違いが旧社名か、別の会社の認証書かを見ます
  3. verify の付いたものを IAF CertSearch で確かめる … 登録番号と認証機関、有効かを確かめます
  4. scope_check の根拠を読む … not_covered_suspected と unclear の品目を、範囲の文の原文で確かめ、疑いが残るものを品質保証部に回します
  5. 依頼を直して送る … 送信は担当者が行います

3番目で見つからなかったものは、すぐに偽物と決めつけません。 CertSearch に載るのは認定された認証だけで、認定されていない認証機関の認証書は載りません。 取引の条件が認定された認証を求めているかを確かめ、認証機関に直接問い合わせます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
パスワード付き・XFA のPDF読めない。仕入先に送り直してもらう
有効期限の答えが空原本で確かめる。期限の無い書類は認証書でない可能性
3つの日付の順がおかしい取り違えの疑い。人が原本で確かめる
規格が求める規格と違うdata_mismatch。品質保証部に回す
付属書で事業所ごとに範囲が違う事業所ごとに scope_check を付ける
期限が過ぎても更新の認証書が届かない毎週の確認で拾い、催促し、品質保証部に知らせる

最後の行が、この構成で最も防ぎたいことです。 期限の確認を届いたときだけでなく毎週全件で行うのは、届かないことに気づくためです。

Step11

記録を残す

  • 認証書の原本と、保存した場所(仕入先・規格・受領日)
  • Textract が返した結果の全文と、組み立てた範囲の文
  • 転記の案(certificate、scope_check、site_check)と、範囲の判断の根拠の一文
  • 担当者が直した箇所 … どの項目を、どう直したか
  • IAF CertSearch で確かめた日と結果
  • 仕入先への依頼と催促、届いた認証書

3つ目の根拠の一文は、仕入先の監査と顧客の監査の両方で使います。 範囲内と判断した理由を後から説明できるようにしておきます。

04実装レベルの3段階

最小構成:コンソールで認証書を読み取り、範囲の見比べを手元のAIサービスで行う / 項目を写す手作業
半自動化:上記+保存を起点に自動で読み取り、日付の確かめ・台帳との照合・範囲の見比べ・期限の確認と依頼の下書きまで出す / 転記の案と確認事項の洗い出し
本格構成:上記+購買の仕組みのサプライヤー管理と連携し、確認済みの値を登録し、CertSearch でのまとめての確認と発注の画面への警告まで行う / 台帳の更新と発注の前の確認

半自動化で、1件15分が5分になり、この段階が本記事の想定です。 写す作業と期限の管理は無くなり、人は日付と範囲の疑いのあるものを確かめ、台帳に登録します。 本格構成は、仕入先の数が多い会社で検討します。 発注の画面に「この品目は仕入先の認証範囲の外の疑い」と出せれば、購買の担当者が発注の前に気づけます。ただし、警告を出すには範囲の判断を台帳に正しく持つことが先です。 半自動化で半年回し、範囲の判断がそろってから進みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  60件 × 15分 ÷ 60 = 15 時間/月
導入後 60件 × 5分 ÷ 60 = 5 時間/月
月間削減時間
10h
削減率
67%
年間削減時間
120h
年間金額換算(時間単価3,500円)
42万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 海外の仕入先を数百社持ち、取引の条件として品質や環境のマネジメントシステムの認証を求めているメーカー・商社の購買と品質保証の部署。仕入先から英文の認証書のPDFが届くたびに、担当者が登録番号と有効期限を仕入先台帳に手で写し、期限の管理を表計算のファイルで行っている場合。期限切れに気づくのが遅れる、認証範囲に自社が買っている品目が入っているかを確かめていない、といったことが起きている場合。
向いていない
  1. 認証を持つ仕入先が数社で、目で見れば足りる場合。仕入先の認証の情報をサプライヤー管理の仕組みで仕入先自身に入力してもらえる場合(読み取りは要らず、入力された値を確かめれば足ります)。認証書が日本語で届く国内の仕入先が中心の場合(この構成で使う読み取りのサービスは英語など6言語に対応します)。なお、認証が有効かどうかの最終の確認、範囲外の品目を買い続けるかの判断、仕入先の評価は購買と品質保証の担当者が行います。この構成は確かめるべき点を拾うまでです。

07最小構成で試す方法

  1. 先月届いた認証書から、認証機関の違う10件を選ぶ(うち数件は、付属書の付いたものと、日付が数字だけのものを入れる)
  2. AWS のコンソールで Textract の文書分析を開き、問い合わせに上の8つの問いを入れて読み取る
  3. 答えを、当時担当者が台帳に写した値と並べる
  4. 手元のAIサービスに、範囲の文と、その仕入先から買っている品目の区分を貼り、範囲に入っているかを根拠付きで答えさせる
  5. 結果を品質保証部の担当者に見てもらう

範囲の見比べは、品質保証部の目で確かめてください。 AIが covered とした品目に品質保証部が疑問を持つなら、品目の区分の粒度か、指示の縛り方を直す必要があります。

出てきた内容判断
項目が取れ、範囲の見比べも品質保証部の見方と合った台帳との照合と期限の確認に進む
範囲の文が途中で切れた行のブロックから全文を取る手順で直る。構成は有効
AIが範囲を読み広げた指示の縛りと品目の区分で直す。構成は有効

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが範囲の文を読み広げて covered にする範囲の文の言葉で判断させ、迷えば unclear にさせる
月と日を取り違えて期限がずれる認証機関ごとの設定で日付の順を決め、日が12以下の数字だけの日付は人へ
発行日と有効期限と初回の発行日を取り違える3つの日付の順を確かめる
範囲の文が途中で切れる行のブロックから全文を取って答えと照らす
本社の住所で照らして工場の対象漏れを見逃す発注の記録の出荷元で事業所を照らす
届かない仕入先の期限切れに気づかない毎週、台帳の全件で期限を確かめる
CertSearch で見つからないものを偽物と決めつける認定されていない認証は載らない。認証機関に確かめる
Bedrock で構造化出力が使えないClaude API を直接使うか、対応を先に確かめる

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 1行目は範囲の確認を形だけにし、2行目と3行目は期限の管理を崩します。範囲は疑いを拾う役に留め、日付は設定と順の確かめで守る設計にしておけば、台帳の値を信頼できるものにできます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 仕入先の会社名と事業所の住所、認証の登録番号と範囲、自社が買っている品目の区分です。個人情報はほとんど含みませんが、どの仕入先から何を買っているかは、自社の調達の情報です。

  1. 生成AIに渡す範囲を絞る … 範囲の見比べには、範囲の文、対象の事業所、品目の区分と出荷元だけを渡します。単価や数量は渡しません
  2. 受け取りの場所の権限を絞る … S3 のフォルダは調達部・品質保証部と処理のプログラムだけが読めるようにし、結果は KMSKeyId を指定した暗号化で保存します
  3. 台帳を自動で更新しない … 有効期限と範囲の判断は、担当者が確かめてから登録します
  4. 依頼を自動で送らない … 下書きまでです
  5. 認証の有効性の判断に使わない … 認証が有効かは、IAF CertSearch か認証機関で確かめます。 読み取った認証書の見た目だけで有効と扱いません
  6. 仕入先の評価に直結させない … 範囲外の疑いは確かめる点で、取引を続けるかは購買と品質保証の担当者が決めます

誤りが起きた場合のリスクは、期限切れや範囲外の品目を「認証あり」として台帳に残すことと、範囲内の品目を誤って範囲外と仕入先に伝えて関係を損ねることの2つです。 前者は期限の全件の確認と unclear の扱いで、後者は依頼を確認をお願いする形に留め、品質保証部が確かめてから伝えることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:品目の区分を整える

品質保証部と一緒に、主要な仕入先から買っている品目に、範囲の文と見比べられる粒度の区分(成形・切削・板金・組立・設計の有無など)を付けます。件数の多い上位50社から始めます。

2週目:10件で読み取りを試す

認証機関の違う10件をコンソールで読み取り、台帳の値と並べます。日付の取り違えと範囲の文の切れを最優先で見ます。

3週目:範囲の見比べを品質保証部と確かめる

手元のAIサービスで10件の範囲を見比べ、品質保証部の見方と合うかを確かめます。読み広げがあれば、指示の縛りを直します。

4週目:保存から転記の案までをつなぐ

保存を起点に読み取り、日付を確かめ、台帳と照らし、範囲の見比べを出すところまで作ります。毎週の期限の確認もここで動かします。

2か月目: 依頼の下書きを足し、scope_check と expiring の件数を毎週数えます。3か月目以降: 1件15分が何分になったかを実測し、仕入先台帳に範囲と事業所の列を足します。範囲外の疑いのある品目の一覧を品質保証部が監査の計画に使い始めた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
対応する形式が JPEG・PNG・PDF・TIFF で XFA の形式のPDFは扱えないこと。パスワードで保護されたPDFは扱えないこと。対応言語が英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・ポルトガル語・スペイン語であること。問い合わせは英語の文書だけで、非同期で1ページ30件までであることAWS: Set Quotas in Amazon Textract2026-10-14
StartDocumentAnalysis の FeatureTypes に TABLES・FORMS・QUERIES・SIGNATURES・LAYOUT があること。文書を S3 に置くこと。完了の状態が SNS に通知されること。ClientRequestToken で同じジョブの二重の開始を防げること。JobTag が通知に含まれること。KMSKeyId で結果を暗号化できること。JobId が7日間だけ有効であることAWS: StartDocumentAnalysis2026-10-14
GetDocumentAnalysis がキーと値の組を KEY と VALUE の KEY_VALUE_SET のブロックで返すこと。行と単語を LINE・WORD のブロックで返すこと。問い合わせを QUERY と QUERY_RESULT のブロックで返すこと。NextToken でページを送ることAWS: GetDocumentAnalysis2026-10-14
問い合わせの答えが QUERY_RESULT として信頼度付きで返り、答えが見つからなければ空のまま返ることAWS: Queries(Amazon Textract)2026-10-14
output_config.format に JSON スキーマを渡すとスキーマに合う JSON が返ること。正式提供の機能であること。Amazon Bedrock では旧来の連携でだけ使え、Claude in Amazon Bedrock では使えないことClaude Docs: Structured outputs2026-10-14
認定された認証の確かめ方として IAF CertSearch を勧め、認定された認証だけを載せること。ISO 自体は認証も認定も行わないこと。認証は1件ずつ、まとめて、または API で確かめられること。認証機関・認定機関・IAF に直接確かめる方法もあることISO Help: How to verify an accredited certification2026-10-14

認証が有効かどうか、範囲外の品目の扱い、仕入先の評価は、購買と品質保証の担当者が決めてください。 本記事は公開されている製品の仕様と資料で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-1433)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次