信用金庫の営業店から本部に届く事務ミスの報告を、ミスの種類・原因・影響の大きさで分類し、月次の事務指導の資料に使える一覧にする
営業店から本部に届く事務ミスの報告を Gemini API に読ませ、行内の区分表に沿ってミスの種類・原因・影響の大きさに分類し、根拠の一文を添えて返させます。事務部は分類を確かめ、月次の事務指導の資料に使える一覧にします。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Power Automate/Python
- 対象業界
- 保険/金融
- 対象部門
- 総務
- 対象業務
- 分類・仕分け/集計・分析
- 主な課題
- データ分析に時間がかかる/人手が足りない/属人化している
- AIで行う処理
- 分類
- 主な効果
- 判断支援/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 営業店から届いた報告のファイルを、事務部の共有フォルダで開く
- 経緯と原因の欄を読み、区分表に照らしてミスの種類と原因を決める
- 顧客への影響の有無、金額、顧客への説明の状況から影響の大きさを決める
- 集計表に、店名、発生日、種類、原因、影響を1行ずつ入力する
- 取引時確認に関わるものや、重大と思われるものは、事務部長とコンプライアンスの担当に別に知らせる
- 月初に、集計表から種類ごと・店ごとの件数を出し、指導に使う事例を選んで要約を書く
- 人営業店がこれまでどおり報告の様式を書き、店長の確認を経て事務部の受付フォルダへ送る
- 自動毎日18時に処理が動き、その日に届いた報告を拾う
- 自動報告の様式から必要な欄を取り出し、顧客の氏名・口座番号などを伏せ字にする
- 自動Gemini API が、ミスの種類・原因・影響を区分表に沿って分類し、根拠の一文と印を返す
- 自動同じ店・同じ種類の過去3か月の件数を数え、再発の印を付ける
- 自動取引時確認に関わるものと、重大のおそれの印が付いたものを、事務部長とコンプライアンスの担当への通知の一覧に載せる
- 人事務指導の担当が翌朝、一覧の分類と根拠を確かめ、印の付いた報告は原本を読む
- 人原因の記載が浅いと印の付いた報告について、営業店に聞き取る
- 自動月初に、確定した分類から種類ごと・原因ごと・店ごとの集計と、事例の候補の一覧を作る
- 人担当が事例を選び、指導の資料に仕上げる
各工程の詳しい説明を読む
- 営業店から届いた報告のファイルを、事務部の共有フォルダで開く
- 経緯と原因の欄を読み、区分表に照らしてミスの種類と原因を決める
- 顧客への影響の有無、金額、顧客への説明の状況から影響の大きさを決める
- 集計表に、店名、発生日、種類、原因、影響を1行ずつ入力する
- 取引時確認に関わるものや、重大と思われるものは、事務部長とコンプライアンスの担当に別に知らせる
- 月初に、集計表から種類ごと・店ごとの件数を出し、指導に使う事例を選んで要約を書く
(a)報告を1件ずつ読んで分類する時間が長い。 経緯の欄は数行から十数行で、誰が、どの取引で、どの手順を飛ばしたかを読み取るのに時間がかかります。 月420件を2名で読むと、1人あたり毎日10件以上になります。
(b)担当者によって分類が揺れる。 区分表の言葉は短く、境目の報告をどちらに入れるかの決まりがありません。担当者が替わると、同じ種類のミスの件数が月ごとに不自然に増えたり減ったりします。 集計の変化が、営業店の変化なのか分類の揺れなのかが分かりません。
(c)原因が「確認不足」ばかりで指導に使えない。 営業店が書く原因の欄は、「確認不足」「不注意」で終わっていることが多く、何を確認しなかったのか、なぜ確認を飛ばしたのかが書かれていません。 経緯の欄を読めば分かることもありますが、読み込む時間がありません。
(d)取引時確認に関わるミスが、ほかのミスに埋もれる。 本人確認の書類の写しの取り忘れや確認記録の不備は、現金の過不足と同じ「軽微な事務ミス」として集計表に並びがちです。 別に知らせるかどうかは、担当者がその場で気づくかにかかっています。
- 【人】 営業店がこれまでどおり報告の様式を書き、店長の確認を経て事務部の受付フォルダへ送る
- 【自動】 毎日18時に処理が動き、その日に届いた報告を拾う
- 【自動】 報告の様式から必要な欄を取り出し、顧客の氏名・口座番号などを伏せ字にする
- 【自動】 Gemini API が、ミスの種類・原因・影響を区分表に沿って分類し、根拠の一文と印を返す
- 【自動】 同じ店・同じ種類の過去3か月の件数を数え、再発の印を付ける
- 【自動】 取引時確認に関わるものと、重大のおそれの印が付いたものを、事務部長とコンプライアンスの担当への通知の一覧に載せる
- 【人】 事務指導の担当が翌朝、一覧の分類と根拠を確かめ、印の付いた報告は原本を読む
- 【人】 原因の記載が浅いと印の付いた報告について、営業店に聞き取る
- 【自動】 月初に、確定した分類から種類ごと・原因ごと・店ごとの集計と、事例の候補の一覧を作る
- 【人】 担当が事例を選び、指導の資料に仕上げる
7番目が、この設計の分かれ目です。 担当は報告を一から読むのではなく、分類と根拠の一文が合っているかを一覧で確かめます。 全件を読み直す設計にすると、時間はほとんど減りません。ただし、印の付いた報告は必ず原本を読みます。
6番目を規則で決めているのも、意図してのことです。 取引時確認に関わるかどうかの分類は AI にさせますが、誰に知らせるかは規則で決め、AI の判断に任せません。 知らせる先や基準は、行内の規程が変わると変わるからです。
02今回想定するシステム構成
営業店の事務ミスの報告(行内の様式) │ 店長の確認を経て事務部の受付フォルダへ ▼【トリガー】毎日18時の定時の実行 Python ├──▶ 必要な欄の取り出しと、顧客の情報の伏せ字 ▼ Gemini API ── 報告の経緯と原因を読む │ ① ミスの種類 ② 原因 ③ 影響の大きさ │ ④ 根拠の一文 ⑤ 印(取引時確認/重大のおそれ/原因の記載が浅い) ▼ Python ── 再発の照合(同じ店・同じ種類の過去3か月) ├──▶ 通知の規則(事務部長・コンプライアンスの担当) ▼ 分類の一覧(翌朝、事務指導の担当が確かめる) ▼ 【確定した分類】 ──▶ 月初の集計と事例の候補 ──▶ 指導の資料
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | Gemini API(報告の種類・原因・影響の分類と、根拠の一文と印) | Claude API、OpenAI API |
| 連携 | Python(報告の取り込み、伏せ字、再発の照合、通知の規則、月次の集計) | Power Automate、Google Apps Script |
| 保管 | 事務部の共有フォルダ(受付・処理済み・一覧) | 行内の文書管理の仕組み |
行内の勘定系や営業店の端末には、この構成からつながりません。 読むのは営業店が書いた報告の様式だけで、取引のデータそのものは扱いません。 報告に書かれた範囲で分類し、足りなければ営業店に聞きます。
受け取りの形は、構造化出力で決めます。 /v1beta/interactions に送るリクエストの response_format に mime_type: "application/json" とスキーマを入れると、JSONで返ります。スキーマでは enum で区分の候補を固定し、required で必ず返す項目を決められます。 区分表の言葉を enum に並べておけば、区分表に無い言葉が返ることはありません。
ただし公式のページは、JSONとして正しくても値が誤っていることがあるので、アプリケーションの側で値を検証するよう案内しています。 形がそろっていることと、分類が正しいことは別です。根拠の一文を報告の原文の中から探して照合し、見つからない行に印を付けるのは、そのためです。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
毎日18時の定時の実行を起点にします。 営業店の報告は、窓口を閉めた後の夕方にまとまって届きます。18時に1日分をまとめて分類しておけば、事務指導の担当は翌朝、一覧を開いた時点で前日の報告をすべて見られます。
取引時確認に関わるものと重大のおそれの印が付いたものは、18時の実行の直後に事務部長とコンプライアンスの担当へ通知の一覧を送ります。 翌朝まで待たせないのは、顧客への連絡や事実の確認を早く始める必要がある報告だからです。
月次の集計は、毎月の第1営業日の朝に動かします。 前月分の分類がすべて「確定」になっているかを確かめ、未確定が残っていれば、その件数を担当に知らせて集計を止めます。未確定のまま集計すると、AI の分類のままの件数が資料に載ります。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 事務ミスの報告 | 店名、発生日、発見日、取引の種類、経緯、原因、顧客への対応、再発防止策 | 事務部の受付フォルダ(行内の様式) |
| 区分表 | 種類・原因・影響の区分と、それぞれの定義、境目の例 | 事務部の区分表 |
| 過去の分類 | 店名、発生日、確定した種類・原因・影響 | 事務ミスの集計表 |
| 通知の基準 | どの印の報告を、誰に知らせるか | 事務部の運用の決まり |
質を決めるのは、区分表の「境目の例」です。 区分の名前と短い定義だけでは、振込の誤りを「振込・送金」に入れるか「端末の操作」に入れるかが決まりません。「振込先の口座番号を打ち間違えた → 種類は振込・送金、原因は端末の操作」のように、迷いやすい組み合わせを例で書いておくと、AI の分類も担当者の分類もそろいます。
| 報告の書き方の例 | 種類 | 原因 |
|---|---|---|
| 振込先の口座番号を打ち間違え、組戻しになった | 振込・送金 | 端末の操作 |
| 二人目の検印を待たずに払戻しを処理した | 預金の入出金 | 確認の手順の省略 |
| 本人確認の書類の写しを取らずに口座を開設した | 取引時確認 | 確認の手順の省略 |
| 改訂された手引の手順を知らずに旧い手順で処理した | 該当する事務の種類 | 手順の誤解・知識不足 |
最後の行のように、原因は種類と別に決まります。 種類は何の事務か、原因はなぜ起きたかで、同じ「手引を知らなかった」が、預金でも融資でも起きます。
過去の分類は AI に渡しません。 再発の照合は Python が店名と種類で数えます。AI に同じ店の過去の報告を見せると、過去の分類に引きずられて、今回の報告の経緯を読まずに同じ区分を返すことがあります。 今回の報告の分類と、過去との照合を分けておくと、どちらが誤ったかを後から切り分けられます。
データの取得方法を決める
Python が受付フォルダの報告のファイルを開き、様式の決まった欄を読みます。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 経緯・原因・顧客への対応・再発防止策の欄 | 報告の様式 | 分類と根拠の一文 |
| 取引の種類の欄(営業店の選択) | 報告の様式 | AI の分類との食い違いの確認 |
| 店名・発生日・発見日 | 報告の様式 | 再発の照合と集計(AI には渡さない) |
| 区分表 | 事務部の区分表 | 分類の候補と定義 |
AI に渡すのは、文章の欄だけです。 店名や日付は分類に要らないので渡しません。渡す情報が少ないほど、伏せ字の漏れが起きる場所も減ります。
営業店が選んだ取引の種類は、AI には渡さず、後で突き合わせます。 営業店の選択を見せると、AI はそれに合わせて分類しがちです。別々に出して食い違えば、どちらかを人が確かめるほうが、分類の揺れを見つけられます。
AIへ渡す前に整形する
- 様式の確認 … 行内の様式の版と欄の並びを確かめます。古い版や欄の欠けた報告は処理から外し、担当に戻します
- 欄の取り出し … 経緯・原因・顧客への対応・再発防止策の4つの欄の文を取り出します
- 伏せ字 … 顧客の氏名、口座番号、電話番号、住所、生年月日を、決まった形の文字列(〔顧客〕〔口座番号〕など)に置き換えます
- 伏せ字の検査 … 置き換えた後の文に、数字の連なりや「様」「殿」の前の語が残っていないかを規則で調べ、残っていれば処理を止めて担当に戻します
- 職員名の置き換え … 報告に書かれた職員の氏名を〔担当者A〕〔担当者B〕に置き換えます
- 重複の検知 … 同じ店・同じ発生日・同じ経緯の報告が二重に届いていないかを確かめます
3番目と4番目を軽く見ないでください。 経緯の欄には、顧客の氏名や口座番号がそのまま書かれていることがあります。伏せ字の規則を通った後にもう一度調べ、少しでも残っていれば送らない、という二重の仕組みにします。
5番目は、分類を人の評価に結びつけないためです。 職員の氏名が分類の結果に残ると、集計表が誰がミスをしたかの一覧として読まれます。事務指導の資料は、手順と仕組みを直すための材料です。
AIに処理させる
させるのは、報告ごとに種類・原因・影響を区分表から1つずつ選び、それぞれに報告の原文の一文を根拠として写し、決まった印を付けることだけです。
| 見るもの | 判定の仕方 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| ミスの種類 | 区分表の種類(現金、預金の入出金、振込・送金、手形・小切手、融資の書類、取引時確認、諸届・変更、通帳・証書・印鑑、顧客情報の取扱い、税公金、その他)から1つ | 決められなければ other と根拠 |
| 原因 | 区分表の原因(確認の手順の省略、手順の誤解・知識不足、規程・手引の不明確、端末の操作、繁忙・人員、引継ぎ、顧客の申出の誤り)から1つ | 経緯からも読み取れなければ unclear |
| 原因の記載の深さ | 原因の欄が「確認不足」「不注意」だけで、何を確認しなかったかが経緯にも無いか | 当てはまれば shallow_cause の印 |
| 影響 | 顧客への影響(あり/なし/不明)、金額の記載の有無、顧客への説明が済んだか | 書かれていなければ unknown |
| 取引時確認 | 本人確認の書類、確認記録、取引の目的の確認などに関わる記載があるか | 当てはまれば kyc_related の印 |
| 重大のおそれ | 顧客の情報の外部への流出、現金の行方が分からない、意図的な操作をうかがわせる記載があるか | 当てはまれば escalation_check の印と、その一文 |
原因の行が、この構成でいちばん手間のかかる部分です。 原因の欄に「確認不足」とあっても、経緯の欄に「二人目の検印を待たずに処理した」と書かれていれば、原因は「確認の手順の省略」です。 原因の欄ではなく経緯の文から判断させ、その文を根拠として写させます。経緯からも分からないときは、営業店に聞くための印を付けます。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 不祥事件に当たるかの判断 | 事実を確かめたうえで事務部とコンプライアンスの担当が決める |
| 外部への報告の要否の判断 | 行内の規程に沿って人が決める |
| 職員の責任や処分への言及 | 事務指導の資料は手順と仕組みを直すためのもの |
| 再発防止策の評価・作成 | 営業店と事務部が話し合って決める |
| 書かれていない事実の補完 | 金額や顧客への影響を推測で埋めない |
1行目がいちばん大事です。 escalation_check は「人が報告の全体を読むべき」という印で、不祥事件に当たるという判断ではありません。 出力の項目にも判断の言葉を置かず、印と根拠の一文だけを返させます。
指示内容を固定する
あなたは信用金庫の本部の事務部で、営業店から届いた事務ミスの報告を
行内の区分表に沿って分類する補助をします。
報告に書かれていることだけを根拠にしてください。推測で補わないでください。
【区分表】{category_table}(種類・原因・影響の区分、定義、境目の例)
【報告】
経緯:{course}
原因:{cause}
顧客への対応:{customer_action}
再発防止策:{prevention}
【返すこと】
- type:区分表の種類から1つ。type_quote に根拠にした報告の一文をそのまま
- cause:区分表の原因から1つ。cause_quote に根拠にした報告の一文をそのまま
原因の欄だけでなく、経緯の文から判断してください
- impact:customer_impact(yes/no/unknown)、amount_stated(true/false)、
explained_to_customer(yes/no/unknown)
- flags:当てはまるものだけ
kyc_related(取引時確認・本人確認・確認記録に関わる)
escalation_check(顧客の情報の外部への流出、現金の行方不明、意図的な操作をうかがわせる記載)
shallow_cause(原因が「確認不足」「不注意」などだけで、何を確認しなかったかが経緯にも無い)
- flag_quotes:印ごとに根拠にした報告の一文
- case_summary:指導の事例に使うための、何の事務で何が起きたかの要約(60字以内)
【厳守事項】
- type と cause は、区分表にある区分だけから選んでください。
- quote には報告の原文をそのまま写してください。言い換えないでください。
- 不祥事件に当たるか、外部への報告が要るかを書かないでください。
- 職員の責任、処分、評価に触れないでください。
- 金額や顧客への影響が書かれていないときは、unknown や false にしてください。推測しないでください。
- 〔顧客〕〔口座番号〕〔担当者A〕などの伏せ字を、元に戻そうとしないでください。
- case_summary に伏せ字の中身や、店を特定できる記載を書かないでください。
「原因の欄だけでなく、経緯の文から判断する」を明記しないと、原因の欄の言葉どおりに分類します。 原因の欄が「確認不足」なら、AI はそのまま「確認の手順の省略」を選び、根拠に原因の欄の「確認不足」を写します。 それでは担当者の分類と同じ深さにしかなりません。
「不祥事件に当たるかを書かない」を独立した行にしているのは、AI が書き添えがちだからです。 現金の行方が分からない報告を渡すと、「不祥事件に該当する可能性があります」と書き添えることがあります。その一文が一覧に残ると、判断が済んだもののように読まれます。
出力形式を固定する
次の形のJSONで受け取ります。
{
"report_id": "",
"type": "cash | deposit | transfer | bill_check | loan_doc | kyc | notification | passbook_seal | customer_info | public_fund | other",
"type_quote": "",
"cause": "skipped_check | misunderstanding | unclear_rule | operation | workload | handover | customer_error | unclear",
"cause_quote": "",
"impact": { "customer_impact": "yes | no | unknown", "amount_stated": false,
"explained_to_customer": "yes | no | unknown" },
"flags": ["kyc_related | escalation_check | shallow_cause"],
"flag_quotes": [ { "flag": "", "quote": "" } ],
"case_summary": ""
}
スキーマでは type・cause・customer_impact・explained_to_customer・flags の要素を enum にし、type・type_quote・cause・cause_quote を required にします。
1つ目の理由は、印と通知を規則で決められることです。 Python は次の規則で、報告ごとの扱いを決めます。AI の出力が揺れても、誰に知らせるかの決め方は表のとおりです。
| 規則 | 扱い |
|---|---|
flags に kyc_related がある | コンプライアンスの担当への通知の一覧に載せる |
flags に escalation_check がある | 事務部長とコンプライアンスの担当への通知の一覧に載せる |
flags に shallow_cause がある | 「営業店に聞き取り」の印 |
type と営業店が選んだ取引の種類が食い違う | 「種類の確認」の印 |
| quote が報告の原文に見つからない | 「原文の確認」の印 |
同じ店・同じ type が過去3か月に3件以上 | 「再発」の印 |
1行目と2行目が要です。 取引時確認に関わるミスと重大のおそれのある報告を、件数の集計とは別の流れで、その日のうちに人の目に届けます。
2つ目は、根拠の一文で確認が速くなることです。 一覧には type_quote と cause_quote が並ぶので、担当は報告を開く前に、どの文で分類されたかを読めます。根拠の一文がずれていれば、分類も疑えます。
3つ目は、月次の集計にそのまま使えることです。 確定した type・cause・impact を数えれば、種類×原因の表と店ごとの件数が出ます。case_summary は、指導の資料の事例の候補として並べます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 受付フォルダ | Python がファイルを読む | 報告を拾い、処理済みへ移す |
| Gemini API | API呼び出し(/v1beta/interactions) | 伏せ字にした文章の欄を渡し、構造化出力で受け取る |
| 分類の一覧 | 表計算のファイルに書く | 1行1件。担当が確定の印と修正を入れる欄を持つ |
| 事務ミスの集計表 | Python が書く | 確定の印が入った行だけを書き写す |
| 通知の一覧 | 行内のメールで送る | 取引時確認・重大のおそれの報告の店名と根拠の一文 |
集計表に書き写すのは、担当が確定の印を入れた行だけです。 AI の分類のまま集計表に入れると、確かめていない分類が月次の資料の件数になります。集計表は事務部の判断の記録なので、判断した人の後に書きます。
人が確認する
事務指導の担当が見るのは、一覧の全行の分類と根拠の一文と、印の付いた報告の原本です。
- 通知の一覧に載った報告を先に見る … 原本を読み、事務部長・コンプライアンスの担当と、事実の確認の段取りを決めます
- 「種類の確認」「原文の確認」の行を開く … 原本で経緯を読み、分類を直します
- 「営業店に聞き取り」の行をまとめる … 店ごとにまとめて、何を確認しなかったのかを聞きます。聞き取った内容で原因を直します
- 印の無い行を流し見て確定の印を入れる … 根拠の一文と分類が合っていれば確定します
- 分類を直した記録を残す … どの区分を、どの区分に直したかを残します
5番目を省かないでください。 同じ境目で直しが続くなら、区分表の「境目の例」が足りていません。直しの記録が、区分表を育てる材料になります。
目標は、420件をならして1件2分です。 印の無い報告は数十秒で確定でき、通知の一覧に載った報告は原本を読むので10分以上かかります。印の付く報告が全体の2割を大きく超える月は、区分表の境目の例が足りないか、営業店の書き方が変わっています。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 様式の版が古い、欄が欠けている | 処理から外し、担当に戻す。営業店に新しい様式での再提出を頼む |
| 伏せ字の検査で顧客の情報が残っている | 送らずに処理を止め、担当に戻す。伏せ字の規則を直す |
| 経緯の欄が空、または1行だけ | 分類せず「営業店に聞き取り」の印を付ける |
| 1つの報告に複数のミスが書かれている | 主なミスで分類し、ほかのミスを case_summary に書く。担当が分割するかを決める |
| 同じ報告が二重に届いた | 店・発生日・経緯で照合し、2件目を処理しない |
| Gemini API が応答しない、エラーを返す | 受付に残して翌日の実行で再試行。通知の一覧に載るはずの種類(取引時確認など)は、営業店の選択を見て担当が手で拾う |
最後の行で、API が止まっても取引時確認に関わる報告が埋もれないようにします。 分類の自動化が止まっても、知らせるべき報告を知らせる流れは止めません。
記録を残す
- 元の報告のファイルと、伏せ字にした後に送った文
- Gemini API から返ってきたJSONの全文
- 規則で付けた印と、通知の一覧に載せた日時・宛先
- 担当が確定した分類と、AI の分類から直した記録
- 営業店への聞き取りの内容と、それで直した原因
- 伏せ字の検査で止めた件数と理由
6つ目の記録は、伏せ字の規則を直す材料になります。 止めた件の多くが同じ書き方(口座番号の区切り方など)なら、規則の側に足します。
04実装レベルの3段階
最小構成では件数がさばけません。 1件ずつ伏せ字にして貼るので、読む時間が伏せ字の時間に変わるだけです。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件6分が3分程度になります。 分類の案は一覧になりますが、再発の照合、通知の判断、集計表への入力が手作業で残ります。本格構成で2分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、集計表への入力と月次の集計が、件数に比例する手作業だからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1か月見ると、伏せ字で止まる書き方、shallow_cause の多い店、境目で直しが続く区分が先に分かります。そこを直してから通知の規則と集計を足すほうが、印の空振りが減ります。
05工数削減シミュレーション
導入後 420件 × 2分 ÷ 60 = 14 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 営業店が数十あり、事務ミスの報告が本部の事務部に月に数百件届く信用金庫・地域の金融機関。報告の分類と集計を事務指導の担当が手で行い、担当者によって分類が揺れている場合。月次の事務指導の資料づくりに、報告を読み返す時間がかかっている場合。報告の様式が行内で決まっていて、経緯と原因が文章で書かれている場合。
- 事務ミスの報告が月に数十件で、担当者が読んで分類しても負担にならない場合。報告がすでに選択式の項目だけで集められ、文章の記載がほとんど無い場合。外部のAIサービスに行内の報告を送ることを、内部の規程や外部委託・クラウド利用の手続きがまだ認めていない場合。なお、不祥事件に当たるかどうか、外部への報告が要るかどうかの判断は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 先月の報告から30件を選ぶ(うち数件は、取引時確認に関わるもの、原因の欄が「確認不足」だけのもの、分類に迷った報告を入れる)
- その30件について、当時の担当が付けた分類を集める
- 顧客の氏名・口座番号・職員の氏名を手で伏せ字にし、区分表と一緒に、組織で利用を認められたAIの画面に貼る
- 「区分表の区分から種類と原因を1つずつ選び、根拠にした報告の一文を写してください。原因は経緯の文から判断してください。取引時確認に関わるものには印を付けてください」と指示する
- 出てきた分類を、当時の分類と並べて見る
30件は、分類の揺れを見るためのものです。 AI の分類が当時の分類と違ったとき、どちらが区分表に照らして正しいかを、担当の2名で話し合ってください。 話し合いが割れる報告こそ、区分表の境目の例に足すべき報告です。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 「確認不足」の報告の原因が経緯から具体的に分かれた | 分類の一覧の作成に進む |
| 区分表に無い言葉で分類した | スキーマの enum で直る。構成は有効 |
| 担当の2名でも分類が割れる報告が多い | 区分表の境目の例を作るのが先。 AI の問題ではない |
3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、これまでの集計の揺れがどこから来ていたかが分かったということです。 割れた報告を例として区分表に書き足してから、同じ30件で試し直してください。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 原因が報告の「確認不足」のまま分類される | 経緯の文から判断させ、根拠に経緯の一文を写させる |
| 区分表に無い言葉で分類される | スキーマの enum に区分表の区分を並べる |
| 境目の報告で分類が揺れる | 区分表に「境目の例」を書き足す |
| 不祥事件の可能性を AI が書き添える | 判断の言葉を出力の項目に置かず、指示で禁じる |
| 取引時確認のミスが件数に埋もれる | kyc_related の印で別の通知の流れに乗せる |
| 伏せ字から顧客の情報が漏れる | 伏せ字の後に検査の規則を通し、残れば送らない |
| 職員の氏名が集計表に残る | 〔担当者A〕に置き換えてから渡す |
| 営業店の選択に分類が引きずられる | 営業店の選択は渡さず、後で突き合わせる |
| AI の分類のまま月次の資料に載る | 集計表には確定の印の入った行だけを書く |
| API が止まって通知が遅れる | 営業店の選択から取引時確認などを手で拾う手順を決めておく |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「報告の言葉をそのまま区分に置き換える」ところから起きます。経緯の文を根拠にさせ、区分を enum で固定する設計で、まとめて防げます。
中ほどの3行は、情報の扱いの問題です。 顧客の情報、職員の氏名、判断の言葉のどれかが出力や送信に残ると、事務指導の資料が別の目的で読まれるようになります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 営業店の事務ミスの報告の経緯・原因・顧客への対応・再発防止策の文です。元の報告には顧客の氏名や口座番号、職員の氏名が含まれます。
- 送る前に伏せ字にし、検査する … 顧客の情報と職員の氏名を置き換え、検査の規則で残りを調べます。残っていれば送りません
- 有料の枠で使う … Gemini API の追加利用規約では、無料の枠では送った内容が製品の改善に使われ、人が読むことがあり、機密や個人の情報を送らないよう書かれています。有料の枠ではプロンプトと応答を製品の改善に使わず、違反の検知などのために限った期間だけ記録するとされています。どの国でも一時的に保存・キャッシュされうるとも書かれているので、処理の地域について行内の条件がある場合は、それを満たす提供形態かを契約の前に確かめます
- 事務リスクの管理態勢の中に置く … 監督指針は、事務部門が営業店における事務リスク管理態勢をチェックする措置を講じているかを着眼点に挙げています。この構成はその作業の一部を助けるもので、管理態勢そのものを AI に任せるものではありません
- 判断を AI に寄せない … 不祥事件に当たるか、外部への報告が要るか、職員の処分は、事務部とコンプライアンスの担当が事実を確かめて決めます。 AI の印は読むべき報告を示すだけです
- 指導の資料を人の評価に使わない … 職員の氏名を伏せ、店ごとの件数も手順の見直しの材料として扱います。評価に使うと、営業店が報告を出さなくなります
誤りが起きた場合のリスクは、知らせるべき報告が埋もれることと、顧客の情報が外へ出ることの2つです。 前者は取引時確認や重大のおそれの印を規則で通知に結びつけないと起き、後者は伏せ字の検査を省くと起きます。印と通知の規則、伏せ字の二重の仕組みで守ります。
10まず何から始めるか
1週目:区分表に境目の例を書き足す
事務指導の担当の2名で、過去に分類に迷った報告を持ち寄り、区分表の種類と原因ごとに「境目の例」を2〜3個ずつ書き足します。 取引時確認に関わるとみなす記載の範囲も決めます。
2週目:30件で試す
先月の報告から30件を選び、手で伏せ字にして、組織で利用を認められたAIの画面で分類させます。当時の分類と並べ、原因を経緯から判断できているか、区分表に無い言葉を使っていないかを最優先で見ます。
3週目:伏せ字の規則と行内の手続きを進める
伏せ字の規則と検査の規則を作り、過去の報告100件に当てて漏れを数えます。並行して、外部のAIサービスを使うための行内の手続きを始めます。
4週目:受付フォルダから分類の一覧までをつなぐ
Python で受付フォルダを定時に読み、伏せ字にして Gemini API に渡し、分類の一覧に書き出すところまで作ります。この時点では通知の規則と集計表への書き写しを入れず、一覧を担当が見るだけにします。
2か月目: 根拠の一文の照合、再発の照合、通知の規則を足し、印の付く件数を週ごとに数えます。3か月目以降: 確定した行の集計表への書き写しと月次の集計を足し、1件6分が何分になったかを実測します。分類を直した記録から区分表の境目の例を育て、直しがほとんど出なくなった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和8年10月版)のⅡ-3-3 事務リスクで、事務リスクを役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こすことにより損失を被るリスクとしていること。主な着眼点に、取引時確認事務、疑わしい取引の届出事務等の重要な法務コンプライアンス問題を単なる事務処理の問題と捉えるにとどまらず全行的な法務コンプライアンスの問題として処理しているか、事務部門が営業店における事務リスク管理態勢をチェックする措置を講じているかが挙げられていること。Ⅴ-3-6で信用金庫等に準用され、「銀行」を「信用金庫」と読み替えること | 金融庁: 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針(本編) | 2026-10-13 |
構造化出力を /v1beta/interactions の response_format に mime_type: "application/json" とスキーマを入れて指定すること。enum と required が使えること。JSONとして正しくても値はアプリケーションの側で検証するよう案内されていること | Gemini API: Structured output | 2026-10-13 |
| 無料の枠では送った内容が製品の改善に使われ、人が読むことがあり、機密や個人の情報を送らないよう書かれていること。有料の枠では製品の改善に使わず、限った期間だけ記録すること。どの国でも一時的に保存・キャッシュされうること | Gemini API Additional Terms of Service | 2026-10-13 |
不祥事件の該当や外部への報告の要否は、行内の規程に沿って事務部とコンプライアンスの担当で判断してください。 本記事は上記の公式情報で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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