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グループ会社から届く資金の申請メールから金額・時期・使途・返済の予定を読み取り、グループの資金計画表に転記して、規程の上限を超える申請を財務担当に示す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

グループ会社から届く資金の申請のメールと申請書から、金額・通貨・実行の希望日・使途・返済の予定を読み取り、グループの資金計画表に「申請中」として書き込みます。資金管理規程の上限と貸付の残高に照らして超える申請と、項目の足りない申請を財務担当に示します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Make/Power Automate/Zapier
対象業界
商社/小売/物流/製造
対象部門
経営企画/財務
対象業務
データ入力・転記/内容確認・チェック
主な課題
入力作業が多い/判断に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
抽出
主な効果
入力漏れ削減/判断支援/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
25h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
60%
年間削減
180h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 共有メールボックスに届いた申請のメールを開き、本文と添付の申請書を読む
  2. 会社名、申請の種類(新規の借入/期日延長/返済の変更)、金額、通貨、実行の希望日、使途、返済の予定を拾う
  3. グループの資金計画表のファイルを開き、申請の行を足して写す
  4. 貸付の残高の表で、その会社の今の残高を引く
  5. 資金管理規程の別表で、その会社の区分の上限を引き、残高と申請の合計が上限を超えないかを計算する
  6. 返済の予定や使途が書かれていなければ、子会社に問い合わせのメールを書く
  7. 上限を超える申請は、決裁に回す資料に印を付ける
導入後(After)
  1. 人子会社は、これまでどおり申請をメールで共有メールボックスへ送る
  2. 自動着信をきっかけにフローが動き、送り主が登録された子会社の担当かを確かめる
  3. 自動添付の申請書を取り、本文とあわせてプロンプトに渡す
  4. 自動プロンプトが、申請の項目と書かれていない項目をJSONで返す
  5. 自動フローが外貨を社内のレートで円に直し、貸付の残高と申請中の分を足して、規程の上限と比べる
  6. 自動グループの資金計画表のリストに「申請中」で1行書き込む
  7. 自動上限を超える申請と、項目の足りない申請を、財務部の Teams チャネルに流す
  8. 人財務担当が、読み取った項目を申請書と照らし、「確認済み」にする
  9. 人足りない項目は子会社に問い合わせ、上限を超える申請は決裁の資料に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 共有メールボックスに届いた申請のメールを開き、本文と添付の申請書を読む
  2. 会社名、申請の種類(新規の借入/期日延長/返済の変更)、金額、通貨、実行の希望日、使途、返済の予定を拾う
  3. グループの資金計画表のファイルを開き、申請の行を足して写す
  4. 貸付の残高の表で、その会社の今の残高を引く
  5. 資金管理規程の別表で、その会社の区分の上限を引き、残高と申請の合計が上限を超えないかを計算する
  6. 返済の予定や使途が書かれていなければ、子会社に問い合わせのメールを書く
  7. 上限を超える申請は、決裁に回す資料に印を付ける

(a)写すだけで時間がかかる。 申請の書き方が会社の数だけあるので、どこに金額が書いてあり、どれが希望日かを探すところから始まります。 本文と申請書で金額が違う申請もあります。

(b)上限の照合を見落とす。 上限は「1件あたり」と「1社あたりの残高」の2つがあり、残高のほうは申請中の分も足して見る必要があります。 同じ会社から月に2件の申請が届くと、1件ずつは上限の中でも、合わせると超えることがあります。2件目を見るときに1件目を足し忘れるのが典型です。

(c)返済の予定が書かれていない申請に、後から気づく。 「運転資金として」とだけ書かれ、いつどう返すかが無い申請は、規程上は受け付けられません。計画表に写した後、決裁の資料を作る段階で気づいて問い合わせるので、子会社の支払いの日に間に合わなくなることがあります。

(d)外貨建ての申請を円に直す手間。 海外の子会社の申請は米ドルやユーロで届きます。上限は円で決まっているので、社内のレートで直してから比べます。 直し忘れると、桁の違う数字で上限と比べることになります。

  1. 【人】 子会社は、これまでどおり申請をメールで共有メールボックスへ送る
  2. 【自動】 着信をきっかけにフローが動き、送り主が登録された子会社の担当かを確かめる
  3. 【自動】 添付の申請書を取り、本文とあわせてプロンプトに渡す
  4. 【自動】 プロンプトが、申請の項目と書かれていない項目をJSONで返す
  5. 【自動】 フローが外貨を社内のレートで円に直し、貸付の残高と申請中の分を足して、規程の上限と比べる
  6. 【自動】 グループの資金計画表のリストに「申請中」で1行書き込む
  7. 【自動】 上限を超える申請と、項目の足りない申請を、財務部の Teams チャネルに流す
  8. 【人】 財務担当が、読み取った項目を申請書と照らし、「確認済み」にする
  9. 【人】 足りない項目は子会社に問い合わせ、上限を超える申請は決裁の資料に回す

8番目が、この設計の分かれ目です。 計画表の行は、財務担当が申請書と照らして「確認済み」にするまで、資金計画の集計に入れません。 AIの読み違いが、そのまま資金計画の数字になることを防ぐためです。

5番目の計算に、AIを使っていないのも意図してのことです。 上限の比較は、残高、申請中の分、為替のレート、上限の表という決まった数字の足し算と比較です。AIに計算させると、どの残高を足したかが記録に残りません。

02今回想定するシステム構成

構成図
子会社の申請(メール本文、申請書のPDF)
   ▼【トリガー】財務部の共有メールボックスへの着信
Power Automate(クラウド フロー)
   ├──▶ 送り主が子会社の登録済みの担当かを確かめる
   ├──▶ Get Attachment (V2) で申請書を取る
   ├──▶ AI Builder のプロンプト(プロンプトを実行する)
   │       本文と申請書から申請の項目を JSON で返す
   ├──▶ 社内のレートで円に直す(フローの式)
   ├──▶ SharePoint のリストで残高・申請中の分・上限を引く
   ├──▶ 上限との比較(フローの条件)
   ├──▶ グループの資金計画表のリストに「申請中」で1行
   └──▶ 超過・不足を財務部の Teams チャネルへ
   ▼
【財務担当が申請書と照らして「確認済み」にする】
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウド フロー、Office 365 Outlook コネクタ)Make、Zapier
生成AIAI Builder のプロンプト(「プロンプトを実行する」アクション、ドキュメント入力と JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude
保管SharePoint のリスト(資金計画表、貸付の残高、規程の上限、子会社の一覧、社内のレート)Dataverse
通知Microsoft Teams のチャネルOutlook のメール

新しく足すのは、フローと、規程の上限と社内のレートの2つのリストです。 これまでスプレッドシートのファイルで持っていた資金計画表と貸付の残高を、SharePoint のリストに移すのが最初の準備作業です。 フローから1行ずつ読み書きし、担当が手で直した履歴も残るようにするためです。

トリガーには、Office 365 Outlook コネクタの「When a new email arrives in a shared mailbox (V2)」を使います。 コネクタの説明では、多くのメールが同時に届くと、まれにトリガーがメールを取りこぼすことがあるとされています。月末に申請が集中するので、第7章で毎朝の突き合わせを足します。

申請書のPDFは、プロンプトの画像またはドキュメントの入力で渡します。 対応するのは PNG、JPG、JPEG、PDF で、渡すファイルの合計は25MB未満、ページ数は50ページ未満、処理は最大100秒とされています。申請書は1〜3ページなので収まります。大きな文書では、特に表の行の情報が不正確または不完全になる可能性があるとも書かれており、返済の予定を長い表で付けてくる会社には注意が要ります。

OCR の製品は置きません。 申請書は子会社の会計システムや文書作成のソフトから出力した、文字のあるPDFがほとんどで、プロンプトのドキュメント入力で読めます。紙に押印してスキャンした申請書が多い会社が出てきたら、そのときに文字認識の製品を前に足すかを考えます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

財務部の共有メールボックスに、件名に「資金申請」を含むメールが届いたことを起点にします。 子会社には、件名の先頭に「【資金申請】」と会社コードを付けて送ってもらいます。件名の決まりが無いと、子会社からの普通の問い合わせまで申請として読むことになります。

添付は、トリガーで一緒に取らずに、Get Attachment (V2) で取ります。 コネクタの説明では、トリガーで添付を含める設定にすると、添付のある多くのメールが同時に届いたときに添付のダウンロードで時間切れになることがあるとされ、添付を含めずに Get Attachment (V2) で取る方法が示されています。

取りこぼしに備えて、毎朝8時に別のフローで突き合わせます。 前日に共有メールボックスに届いた「【資金申請】」のメールと、資金計画表のリストにある申請のメールの識別子を比べ、リストに無いものを本体のフローに回し直します。 月末の集中日に1件落としても、翌朝には拾えます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
申請のメール件名(会社コード)、送り主、受信日時、本文共有メールボックス
申請書会社名、申請の種類、金額、通貨、実行の希望日、使途、返済の予定、担当者添付のPDF
子会社の一覧会社コード、会社名、規程の区分、申請してよい担当のメールアドレスSharePoint のリスト
規程の上限区分ごとの1件あたりの上限、1社あたりの残高の上限、貸付の期間の上限SharePoint のリスト
貸付の残高会社ごとの貸付の残高、返済の期日SharePoint のリスト
資金計画表の申請中の行同じ会社の、まだ実行していない申請の金額SharePoint のリスト
社内のレート通貨ごとの、その月の社内のレートSharePoint のリスト

質を決めるのは、規程の上限のリストです。 資金管理規程の別表を、区分ごとに数字の列で持たせます。規程の文書をそのままAIに渡して「上限はいくらか」と読ませる作りにはしません。 規程を改定したときは、このリストを直すだけで判定が変わります。

申請中の行を足して見るのが、第3章の(b)への答えです。 同じ会社から月に2件届いたとき、2件目の比較には、1件目の申請中の金額が自動で入ります。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
メールの本文と送り主共有メールボックス着信のトリガーの出力
申請書のPDF共有メールボックスGet Attachment (V2)
子会社の区分と担当子会社の一覧Get items(会社コードで絞る)
区分ごとの上限規程の上限Get items(区分で絞る)
今の残高貸付の残高Get items(会社コードで絞る)
申請中の金額資金計画表Get items(会社コード、状態が「申請中」「確認済み」)
社内のレート社内のレートGet items(通貨と月で絞る)

リストの読み取りは、すべて SharePoint コネクタの Get items で、OData のフィルター クエリで絞ります。 書き込みは Create item で行い、財務担当の「確認済み」と、実行後の「実行済み」は Update item で状態を変えます。

社内のレートは、申請を受けた月のものを使います。 実行の希望日が翌月でも、比較の時点では受けた月のレートで直し、どの月のレートで直したかを行に残します。 決裁の時点でレートが動いていれば、決裁の資料を作るときに直し直します。比較の目的は、上限に近い申請を早く見つけることで、円に直した金額を確定させることではありません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 件名の確認 … 「【資金申請】」と会社コードがあるかを見ます。無ければ申請として扱いません
  2. 送り主の確認 … 子会社の一覧で、その会社の申請してよい担当のアドレスかを確かめます。違えば読まずに財務担当へ回します
  3. 添付の確認 … PDF・画像以外の添付(表計算のファイルなど)は、プロンプトに渡さずに財務担当へ回します
  4. 本文の整理 … 引用された過去のやり取りと署名を除き、今回のメールで新しく書かれた部分だけを残します
  5. 同じ申請の再送の確認 … 同じ会社・同じ金額・同じ希望日の行が直近にあれば、「再送の疑い」として印を付けます

2番目を省かないでください。 資金の申請は、なりすましのメールで振り込ませる手口と同じ形をしています。 登録の無いアドレスからの申請は、内容を読む前に人へ回します。

3番目は、プロンプトの入力の制限によるものです。 ドキュメント入力は通常 PNG、JPG、JPEG、PDF に限られ、Word・Excel・PowerPoint のファイルは、プロンプトの設定でコード インタープリターを有効にしたときに対応するとされています。最初はPDFにそろえてもらうよう、子会社に頼みます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、本文と申請書から決まった項目を拾い、書かれていない項目を「不明」と示すことだけです。

拾う項目拾い方書かれていないときの扱い
申請の種類新規の借入/期日延長/返済の変更決められなければ「不明」
金額と通貨書かれた数字と通貨をそのまま本文と申請書で違えば両方を返す
実行の希望日日付として「来月末」は書かれたまま写し、日付にしない
使途書かれた文をそのまま短く。区分(運転資金/設備資金/借入の返済/その他)も選ぶ無ければ「不明」
返済の予定期日、回数、返済の原資無ければ「不明」
期日延長の元の期日延長の申請のとき無ければ「不明」

「来月末」を日付にさせないのは、どの月の末かの基準がメールの受信日か申請書の日付かで変わるからです。 書かれたまま写させ、日付に直すのはフローの式で、受信日を基準に行います。 直した結果は、元の文と並べて計画表に残します。

させないこと理由
上限を超えるかの判断上限と残高の比較はフローの式で行う
為替の換算社内のレートでフローが行う
貸し付けてよいかの意見決めるのは財務部と決裁
書かれていない返済の予定の補完「回収で返す」と推し量って埋めない
金額の桁の補正「3億」と「300,000,000」が違えば違うまま返す

4行目が、いちばん起きやすい失敗です。 「運転資金として」とだけ書かれた申請を渡すと、AIは「売掛金の回収により返済」とそれらしい返済の予定を書きます。その瞬間、子会社に問い合わせるべき不足が消えます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは親会社の財務部で、グループ会社から届く資金の申請を受け付ける担当です。
メールの本文と申請書を読み、決まった項目を拾ってください。
書かれていないことを推測で埋めないでください。

【拾う項目】
- request_type:新規の借入 / 期日延長 / 返済の変更 / 不明
- amount と currency:書かれた金額と通貨
- desired_date_text:実行の希望日として書かれた文をそのまま
- purpose_text:使途として書かれた文を60字以内で
- purpose_category:運転資金 / 設備資金 / 借入の返済 / その他 / 不明
- repayment:返済の期日、回数、返済の原資
- original_due_date:期日延長の場合の元の期日

【厳守事項】
- 記載が無い項目は「不明」としてください。他の記載から推し量って埋めないでください。
- 返済の予定が書かれていないときに、回収や利益から返すと推測して書かないでください。
- 金額は書かれたとおりに返してください。単位(億・千円・百万円)を数字に直すときは
  amount_text に元の書き方も残してください。
- 本文と申請書で金額・日付が違うときは、両方を conflicts に入れてください。
  どちらが正しいかを選ばないでください。
- 「来月末」「月内」などは日付に直さず、desired_date_text にそのまま写してください。
- 外貨を円に直さないでください。
- 規程の上限を超えるか、貸し付けてよいかの意見を書かないでください。
- 資金の申請ではない書類・メールと判断したときは、項目を拾わず document_type に種類を書いてください。
- 回答に JSON マークダウンを含めないでください。

【メールの受信日】{received_date}
【メールの本文】{mail_body}
【申請書】{application_pdf}

「両方を conflicts に入れ、どちらが正しいかを選ばない」を書かないと、本文の金額か申請書の金額のどちらかを黙って選びます。 選ばれたほうが正しい保証はありません。食い違いがあること自体が、子会社に確かめる理由です。

プロンプトの温度は既定の0のまま使います。 公式の説明では、温度は0から1の範囲で、低いほど予測可能な出力になるとされています。同じ申請書の読み取りが実行のたびに変わらないことを優先します。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 プロンプトの出力を JSON にし、形式をカスタムで保存します。

{
  "document_type": "funding_request",
  "company_code": "SG03",
  "request_type": "新規の借入",
  "amount": "2500000",
  "amount_text": "USD 2.5 million",
  "currency": "USD",
  "desired_date_text": "来月末",
  "purpose_text": "",
  "purpose_category": "運転資金",
  "repayment": { "due_text": "", "installments": "", "source": "不明" },
  "original_due_date": "",
  "conflicts": [ { "field": "amount", "mail": "", "document": "" } ],
  "missing": [ { "field": "repayment.source" } ]
}

JSONで受け取る1つ目の理由は、フローの式で計算に回せることです。 amount と currency を社内のレートで円に直し、残高と申請中の分を足して、区分ごとの上限と比べます。 比較の結果は、次の3つの印になります。

印条件
1件の上限超過円に直した申請額 > 区分の1件あたりの上限
残高の上限超過今の残高 + 申請中の分 + 申請額 > 区分の1社あたりの上限
期間の上限超過実行の希望日から返済の期日までが、区分の期間の上限を超える

2つ目は、missing と conflicts で問い合わせの先が決まることです。 どちらかに要素があれば、計画表の行に「要問い合わせ」の印を付け、何が足りないか、何が食い違うかを Teams のメッセージに並べます。 返済の予定が「不明」なら、期間の上限の比較はできないので、それも印に出します。

3つ目は、形式が変わらないことです。 公式の説明では、プロンプトを保存すると形式が固定され、フローで使うときは保存された形式が使われるとされています。missing と conflicts をキーを持つ要素の配列にしているのは、キーの無い配列の形式がサポートされないためです。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有メールボックスOffice 365 Outlook コネクタ申請を受け、申請書を取る
AI Builder のプロンプトプロンプトを実行する申請の項目を JSON で返す
子会社の一覧・規程の上限・残高・レートSharePoint コネクタ(Get items)比較に使う数字を引く
資金計画表SharePoint コネクタ(Create item/Update item)「申請中」で書き込み、確認・実行で状態を変える
財務部の Teams チャネルMicrosoft Teams コネクタ超過と不足の申請を流す

子会社へは何も送りません。 受付の返信も、問い合わせも、財務担当が書いて送ります。送り主の確認を通った申請でも、返信を自動にすると、なりすましのメールに「受け付けました」と返すことになります。

貸付の実行の仕組みと会計システムにも書き込みません。 この構成が出すのは計画表の「申請中」の行までで、貸付を実行するのは決裁の後の別の手順です。

Step9

人が確認する

財務担当は、届いた申請のすべてについて、計画表の行を申請書と照らして「確認済み」にします。 ただし、時間をかけるのは印の付いた申請です。

  1. 印の無い申請は、金額・通貨・希望日・返済の期日の4つを申請書と照らす … 一致していれば「確認済み」にします
  2. conflicts のある申請は、子会社に確かめる … 本文と申請書のどちらが正しいかを聞きます
  3. missing のある申請は、足りない項目を問い合わせる … 返済の予定が無い申請は、規程上は受け付けない旨も伝えます
  4. 上限超過の申請は、決裁の資料に回す … 超過の印と、比較に使った残高・レート・上限を資料に添えます
  5. 送り主の確認で回ってきたメールは、電話で子会社に確かめる … メールの返信では確かめません

1番目の4項目を省かないでください。 印が無いことは、規程の上限を超えず、項目がそろっているということで、読み取りが正しいということではありません。桁の読み違いは、印の無い申請の中に紛れます。

5番目は、メールで確かめると、なりすましの相手に確かめることになるからです。 子会社の一覧に、担当の電話番号の列を持たせておきます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
登録の無いアドレスから届いた読まずに財務担当へ。電話で子会社に確かめる
件名の決まりが無い申請として扱わない。毎朝の突き合わせで、子会社の担当から届いたメールを一覧に出す
添付が表計算のファイルプロンプトに渡さず財務担当へ。PDFで送り直してもらう
申請書が25MB以上・50ページ以上プロンプトの入力の上限を超える。財務担当へ
処理が100秒を超えた時間切れで止まる。1回だけやり直し、だめなら財務担当へ
本文と申請書で金額が違うconflicts に両方。子会社に確かめるまで「確認済み」にしない
社内のレートに無い通貨円に直せない。上限の比較をせず「レート未登録」の印
1通に複数の申請自動で分けずに財務担当へ
申請の取り下げのメール申請として読まず、財務担当が計画表の行を「取り下げ」にする
着信のトリガーの取りこぼし毎朝の突き合わせで拾う

上の3行で、例外のほとんどを占めます。 どれもAIの精度ではなく、申請の送り方の決まりの問題です。 子会社向けの申請の手引きに、件名の書き方、PDFで送ること、送ってよい担当の登録を1枚にまとめて配ります。

Step11

記録を残す

  • 申請のメールの受信日時、送り主、件名、本文と申請書の原本
  • プロンプトが返した JSON の全文
  • 比較に使った数字(残高、申請中の分、社内のレート、区分の上限)と比較の結果
  • 計画表の行の状態の変化(申請中、確認済み、要問い合わせ、実行済み、取り下げ)と、変えた人と日時
  • 財務担当が読み取りを直した項目と、直す前の値

3つ目の「比較に使った数字」を残すのは、決裁の場で「なぜ超過なのか」を説明するためです。 残高もレートも日々変わるので、判定したときの数字が残っていないと、同じ計算を後からやり直せません。

5つ目は、読み取りの癖を見つけるためです。 特定の会社の申請書で同じ項目が毎回直されているなら、申請書の書式か指示の書き方を直す材料になります。

04実装レベルの3段階

最小構成:申請の本文と申請書を手でAIの画面に貼り、項目を拾わせる / 1件ごとの読み取り
半自動化:上記+フローで申請を受け、計画表のリストに書き込み、残高と上限との比較と印を付けて Teams に流す / 受付から計画表と超過の指摘まで
本格構成:上記+「確認済み」の申請から決裁の資料の下書きを作り、決裁の後の実行の予定を資金繰りの表に反映する / 決裁の資料と資金繰りへの反映まで

本記事の想定は半自動化です。 1件15分が6分になる見込みは、この段階で置いています。計画表の行を「確認済み」にするのは財務担当のままです。 本格構成は、半自動化で計画表のリストの運用が3か月回ってから考えます。 決裁の資料は会社の決裁の規程に合わせた書式が要り、資金繰りの表への反映は、実行の日付が確定してからでないと意味がありません。 申請の段階の数字を資金繰りに流すと、取り下げや減額のたびに表が揺れます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
100 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  100件 × 15分 ÷ 60 = 25 時間/月
導入後 100件 × 6分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
15h
削減率
60%
年間削減時間
180h
年間金額換算(時間単価4,000円)
72万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 国内外に20〜30社の子会社を持つ商社・メーカー・小売などで、親会社の財務部がグループ内の貸付で子会社の資金を賄い、子会社からの借入・期日延長・返済の変更の申請をメールと申請書で受けている場合。申請を1件ずつ読んでグループの資金計画表に写し、資金管理規程の上限と貸付の残高に照らす作業が担当者の手作業になっている場合。Microsoft 365 を使い、資金計画表と貸付の残高を SharePoint のリストで持てる場合。
向いていない
  1. 子会社が数社で、申請が月に数件の場合。グループの資金をキャッシュ・マネジメント・システムで一元化しており、子会社の申請がシステムの画面から決まった項目で入る場合。申請書がすべて紙で届き、スキャンの画質がそろわない場合(受け取り方の見直しが先)。なお、貸し付けるかどうか、金利と条件をどうするかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の申請から20件を選ぶ(うち数件は、返済の予定が無かったものと、外貨建てのものを入れる)
  2. 20件の申請のメールの本文と申請書を手元に集める
  3. 手元のAIサービスに、第7章のプロンプトと、1件分の本文と申請書を貼る
  4. 返ってきた項目を、当時計画表に写した値と見比べる
  5. 返済の予定が無かった申請を「不明」と返したかを数える

見るべきは、正しく拾えた数より、埋めてはいけないものを埋めなかったかです。

出てきた内容判断
項目が当時の計画表と一致し、不足は「不明」で返ったフローの作成に進む
返済の予定をそれらしく補った指示の書き方で直る。構成は有効
億と百万円の単位を取り違えたamount_text を必ず残させ、照合の4項目に入れる
申請書の書式がばらばらで、項目がそろわない申請の手引きが先。 AIの問題ではない

4行目が出たら、子会社に配る申請書の様式から直します。 様式がそろえば、読み取りの精度より先に、照合の時間が短くなります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
返済の予定をAIがそれらしく補う「不明」で返させ、missing に入れる
本文と申請書の金額のどちらかを黙って選ぶconflicts に両方を入れさせる
億・百万円・千円の単位を取り違えるamount_text を残し、照合の4項目に金額を入れる
同じ会社の2件目で1件目を足し忘れる申請中の行を Get items で引き、比較の式に必ず足す
外貨を円に直さずに上限と比べる社内のレートのリストで直し、無ければ比較しない
登録の無いアドレスからの申請を読む送り主の確認を前処理の最初に置く
表計算のファイルの添付で止まるPDFで送ってもらう。表計算は財務担当へ回す
月末の集中日に取りこぼす毎朝の突き合わせで拾う
印の無い申請を照らさずに確認済みにする4項目の照合を必須にする
規程を改定しても判定が変わらない規程の上限をリストで持ち、改定のときにリストを直す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIが「足りない」「食い違う」という状態を、もっともらしい値で消してしまうことから起きます。不足と食い違いを、値ではなく missing と conflicts という場所に出させると、問い合わせるべき申請が見えるようになります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 子会社ごとの借入の金額と時期、使途、返済の予定、貸付の残高です。グループの資金繰りと、子会社ごとの業況が読み取れる情報です。

  1. なりすましの申請を、読む前に止める … 送り主の確認を前処理の最初に置き、登録の無いアドレスからの申請は電話で確かめます。メールの返信で確かめないことを決まりにします
  2. AIに渡すのは、申請のメールと申請書だけにする … 残高・上限・レートは渡しません。比較はフローの側で行い、グループ全体の残高の一覧をAIに渡しません
  3. モデルの処理の場所を確かめる … 公式の説明では、日本で GPT-4.1 mini などが「GA(クロスジオ)」とされ、クロスジオのモデルはリージョン外でデータを処理する可能性があるとされています。グループの資金の情報を扱ってよいかを、社内の規程と照らしてから使います
  4. 貸し付けるかどうかは判断させない … この構成が出すのは、規程の上限に照らした印までです。貸付の可否、金利、条件は財務部と決裁が決めます
  5. 子会社へ自動で返信しない … 受付の返信も問い合わせも、財務担当が送ります
  6. 入力に指示を含めない … 公式の説明では、セキュリティ上の理由により、プロンプトの入力に指示を含めることは禁止されています。申請のメールの本文は「データ」として渡し、その中の文を指示として扱わない作りにします

誤りが起きた場合のリスクは、上限を超える申請を見落とすことと、読み違えた金額が資金計画に載ることの2つです。 前者は申請中の分の足し忘れと為替の換算漏れで起き、後者は単位の読み違いで起きます。比較をフローの式に置くことと、計画表の行を財務担当の照合の後でしか集計に入れないことの2つを、設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:リストを作る

資金計画表と貸付の残高を、スプレッドシートのファイルから SharePoint のリストに移します。資金管理規程の別表を、区分ごとの1件あたりの上限、1社あたりの残高の上限、期間の上限の数字のリストにします。子会社の一覧に、区分と申請してよい担当のアドレスと電話番号を入れます。

2週目:20件で試す

第8章のとおり、先月の申請20件を手元のAIサービスに貼り、当時の計画表と見比べます。返済の予定を補っていないか、本文と申請書の食い違いを黙って選んでいないかを最優先で見ます。

3週目:申請の手引きを配る

件名の書き方、PDFで送ること、送ってよい担当の登録を1枚の手引きにまとめ、25社に配ります。ここが決まらないうちにフローを動かすと、例外の一覧がいちばん長くなります。

4週目:受付から計画表までをつなぐ

共有メールボックスの着信から、送り主の確認、プロンプト、計画表のリストへの書き込みまでを作ります。この時点では、上限との比較を入れません。 読み取りと照合の質をまず見ます。

2か月目: 社内のレートと残高・上限との比較を足し、超過と不足を Teams に流します。毎朝の突き合わせも動かします。3か月目以降: 1件15分が何分になったかと、財務担当が直した項目の傾向を実測します。子会社の申請が手引きどおりにそろい、印の付いた申請だけに時間を使えるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
「When a new email arrives in a shared mailbox (V2)」のトリガーと「Get Attachment (V2)」のアクションがあること。多くのメールが同時に届くとまれにトリガーがメールを取りこぼすことがあること。トリガーで添付を含める設定にすると添付のダウンロードで時間切れになることがあり、添付を含めずに Get Attachment (V2) で取る方法が示されていることMicrosoft Learn: Office 365 Outlook connector2026-10-08
フローの中で「プロンプトを実行する」アクションでプロンプトを使えること。Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があることMicrosoft Learn: Power Automate でプロンプトを使用する2026-10-08
画像またはドキュメントの入力が通常 PNG・JPG・JPEG・PDF に限られ、Word・Excel・PowerPoint はコード インタープリターを有効にしたときに対応すること。合計25MB未満、50ページ未満、処理は最大100秒であること。大きな文書では特に表の行で不正確・不完全になりうること。セキュリティ上の理由により入力に指示を含めることが禁止されていることMicrosoft Learn: プロンプトに入力を追加する2026-10-08
プロンプトの出力を JSON にでき、保存した形式がフローで使われること。「回答に JSON マークダウンを含めないでください」を加える対策。フィールドのキーの無い JSON 形式がサポートされないことMicrosoft Learn: JSON 出力2026-10-08
日本で GPT-4.1 mini などが「GA(クロスジオ)」とされ、クロスジオのモデルはリージョン外でデータを処理する可能性があることMicrosoft Learn: リージョンと更新プログラムによるモデルの可用性2026-10-08
Power Automate でプロンプトを使うとプロンプト ビルダーのクレジットが使われること。温度が0から1の範囲で、低いほど予測可能な出力になり、既定が0であることMicrosoft Learn: モデルのバージョンと設定を変更する2026-10-08
SharePoint コネクタに Get items(OData のフィルター クエリ)、Create item、Update item のアクションがあることMicrosoft Learn: SharePoint connector2026-10-08

グループ内の貸付の条件と上限は、自社の資金管理規程と、税務・法務の確認に従ってください。 本記事は公式の説明で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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