自社特許の請求項と他社製品の公開資料を構成要件ごとに対比したクレームチャートの下書きを作り、根拠の箇所と足りない資料を知財担当に示す
検討に上がった他社製品のカタログ・取扱説明書・Webページを、自社特許の請求項の構成要件ごとに読み、対応する記載を資料名とページ付きで引用したクレームチャートの下書きを作ります。記載の有無の区分と、足りない資料の一覧も付けて知財担当に渡します。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Python
- 対象業界
- IT・SaaS/士業/製造
- 対象部門
- 法務/知財
- 対象業務
- 書類作成/比較検討
- 主な課題
- 人手が足りない/判断に時間がかかる/属人化している
- AIで行う処理
- 判定
- 主な効果
- 判断支援/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★★★☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 必須
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 担当者が特許公報を開き、対比する請求項を構成要件に分けて(分説して)ひな形の左の列に書く
- 明細書を読み、構成要件の用語がどう定義・説明されているかをメモする
- 製品資料をすべて開き、構成要件ごとに対応しそうな記載を探す
- 見つけた記載を、資料名とページを添えてひな形の右の列に写す
- 構成要件ごとに「記載あり」「記載なし」などの区分と、所見を書く
- 記載が見つからない構成要件について、何をすれば確かめられるかを書く
- グループ長が読み、次の動きを決める
- 人担当者が、受付の一覧に特許番号・請求項の番号・製品名を登録し、製品資料を案件のフォルダに保存する
- 自動プログラムが、請求項の分説の案と、明細書の中から構成要件の用語の説明の候補を出す
- 人担当者が、分説と用語の説明を確かめて確定する(ここで止める)
- 自動構成要件ごとに、Claude API に製品資料を渡し、Citations を有効にして対応する記載を探させる
- 自動プログラムが、返ってきた引用(資料名・ページ・原文)を構成要件ごとに集める
- 自動構成要件ごとに、集めた引用だけを材料に、区分と確認事項と足りない資料を構造化出力で返させる
- 自動プログラムが、クレームチャートの下書きと、足りない資料の一覧を作る
- 人担当者が、引用を原文のページで確かめ、区分と所見を直す
- 人グループ長が読み、次の動きを決める
各工程の詳しい説明を読む
- 担当者が特許公報を開き、対比する請求項を構成要件に分けて(分説して)ひな形の左の列に書く
- 明細書を読み、構成要件の用語がどう定義・説明されているかをメモする
- 製品資料をすべて開き、構成要件ごとに対応しそうな記載を探す
- 見つけた記載を、資料名とページを添えてひな形の右の列に写す
- 構成要件ごとに「記載あり」「記載なし」などの区分と、所見を書く
- 記載が見つからない構成要件について、何をすれば確かめられるかを書く
- グループ長が読み、次の動きを決める
(a)資料を読む時間がいちばん長い。 3番目では、数十〜百数十ページの資料を、構成要件の数だけ繰り返し読みます。構成要件Aを探しながら読んだページを、構成要件Dのためにもう一度読むことになります。
(b)根拠の書き方がばらつく。 4番目で、ある担当者は原文をそのまま写し、別の担当者は要約して書きます。要約された根拠は、グループ長が原文を開き直さないと確かめられません。 ページ番号が抜けていることもあります。
(c)足りない資料が最後に分かる。 6番目は、5番目まで終えてから初めて書かれます。現物の分解が要ると分かるのが、作業の最後です。そこから購入の手続きを始めると、検討が1か月延びます。
(d)担当者によって構成要件の読み方が違う。 2番目の用語の確認は、担当者の経験に左右されます。明細書で広く定義されている用語を狭く読むと、記載があるのに「記載なし」と書くことになります。
- 【人】 担当者が、受付の一覧に特許番号・請求項の番号・製品名を登録し、製品資料を案件のフォルダに保存する
- 【自動】 プログラムが、請求項の分説の案と、明細書の中から構成要件の用語の説明の候補を出す
- 【人】 担当者が、分説と用語の説明を確かめて確定する(ここで止める)
- 【自動】 構成要件ごとに、Claude API に製品資料を渡し、Citations を有効にして対応する記載を探させる
- 【自動】 プログラムが、返ってきた引用(資料名・ページ・原文)を構成要件ごとに集める
- 【自動】 構成要件ごとに、集めた引用だけを材料に、区分と確認事項と足りない資料を構造化出力で返させる
- 【自動】 プログラムが、クレームチャートの下書きと、足りない資料の一覧を作る
- 【人】 担当者が、引用を原文のページで確かめ、区分と所見を直す
- 【人】 グループ長が読み、次の動きを決める
3番目で一度止めるのが、この設計の分かれ目です。 分説と用語の確認は、チャート全体の物差しです。ここが誤っていると、その後の引用と区分がすべてずれます。 AIに案を出させ、担当者が確定してから先に進みます。
4番目と6番目を分けているのは、仕様の制約でもあります。 Claude API では、Citations と構造化出力を同時に使うと400のエラーになります。引用を取る呼び出しと、区分をJSONで返させる呼び出しを分けます。 結果として、区分の判定は「仕組みで取った引用」だけを材料にすることになり、AIが資料に無いことを根拠にする余地が狭まります。
02今回想定するシステム構成
受付の一覧(特許番号・請求項・製品名)+案件のフォルダ(製品資料のPDF・Webページの保存) ▼ Python ── 公報から請求項と明細書を取り出す ▼ Claude API ── ① 分説の案と、用語の説明の候補(構造化出力) ▼ 【担当者が分説と用語を確定】 ▼ Claude API ── ② 構成要件ごとに資料の記載を探す(Citations 有効) │ PDF … ページ番号付きの引用 / Webページ … 文字位置付きの引用 ▼ Python ── 引用を構成要件ごとに集める ▼ Claude API ── ③ 構成要件ごとの区分・確認事項・足りない資料(構造化出力) ▼ Python ── クレームチャートの下書き、足りない資料の一覧 ▼ 【担当者が原文で確かめて直す → グループ長】
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | Claude API(分説の案、記載の引用、区分と確認事項) | OpenAI API、Gemini API |
| 連携 | Python(取り出し、呼び出し、引用の集約、チャートの作成) | Google Apps Script |
| 受付 | 知財の案件管理システムの受付の一覧 | 共有の表 |
| 保管 | 共有フォルダ(公報、製品資料、チャート) | 文書管理システム |
新しく作るのは、呼び出しと集約のプログラムと、チャートのひな形の差し込みです。 案件管理システムと共有フォルダは今までのものを使います。
引用は Claude API の Citations で取ります。 公式の説明では、Citations を有効にすると、文書に基づく回答に、根拠になった文書の箇所が付きます。PDFの文書は文単位に分けられ、引用の場所は1から始まるページ番号で返ります。 引用した原文は cited_text に入り、出力のトークンに数えられません。API が引用を解析して原文を取り出すので、引用は渡した文書を必ず指すとされています。
ただし、文字を取り出せないPDFは引用できません。 公式の説明では、PDFからの画像の引用は現在対応しておらず、文字を含まないスキャンのPDFは引用の対象になりません。 紙のカタログをスキャンしたものは、文字を取り出してから渡すか、引用なしで扱います(第7章の前処理)。
PDFは1回のリクエストで32MB、600ページまでとされ、コンテキストが100万トークン未満の場合は100ページまでです。各ページは文字と画像の両方として扱われ、文字のトークンは1ページあたり1,500〜3,000程度です。資料が多い件は、資料ごとに分けて呼び出します。
区分はJSONで受け取ります。 構造化出力では、output_config.format に JSON スキーマを渡すと、返答がスキーマに沿った形になります。Citations とは同時に使えないので、区分の呼び出しでは資料そのものを渡さず、②で集めた引用の文を材料にします。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
受付の一覧に案件が登録され、担当者が「資料そろった」の印を付けたときに動かします。 依頼が届いた時点ではなく、製品資料が案件のフォルダにそろった時点です。資料が足りないまま動かすと、足りない資料の一覧が「資料をもっと集めて」だけになります。
動かすのは2回に分けます。 1回目は分説の案と用語の説明の候補を作るところまでで、担当者が確定の印を付けると2回目が動きます。2回目は、構成要件の数×資料の数だけ呼び出しがあり、件によっては数十回になります。夜間にまとめて動かし、翌朝に担当者が下書きを見る形にします。
同じ特許で別の製品を対比するときは、確定した分説を使い回します。 分説と用語の説明は特許ごとに一度確定すればよく、2件目からは1回目を飛ばします。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 特許公報 | 請求の範囲、明細書、図面の説明(PDF) | 共有フォルダ(知財の案件管理システムの公報) |
| 対比する請求項 | 番号(独立項と、対比したい従属項) | 受付の一覧 |
| 製品資料 | カタログ、取扱説明書、仕様書(PDF) | 案件のフォルダ |
| Webページ | 製品ページの本文(文字)と、URL・取得日時 | 案件のフォルダ(保存したもの) |
| 確定した分説 | 構成要件の記号と文、用語の説明の箇所 | 担当者の確定(1回目の結果を直したもの) |
| 過去のチャート | 同じ特許で以前作ったもの | 共有フォルダ |
質を決めるのは、確定した分説の「用語の説明の箇所」です。 特許法第70条第2項は、用語の意義は明細書の記載と図面を考慮して解釈するとしています。明細書で「固定部材とは、ボルト、クリップ、接着剤等を含む」と書かれていれば、製品資料の「クリップで留める」は固定部材の記載として探す必要があります。 用語の説明を渡さないと、AIは言葉の字面で探し、記載を見落とします。
要約書は渡しません。 同条第3項は、技術的範囲を定める際に要約書の記載を考慮してはならないとしています。公報のPDFから要約書の部分を外してから渡します。
Webページは、保存したときの文字とURL・取得日時を1組にします。 製品ページは後から書き換わります。いつの、どのページの記載かが分からない引用は、チャートの根拠として使えません。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 請求の範囲と明細書 | 公報のPDFから文字を取り出す | 分説の案、用語の説明の候補 |
| 製品資料の文字 | PDFのまま渡す(文字を含むもの) | 記載の引用(ページ番号付き) |
| Webページの文字 | 保存した本文を文字の文書として渡す | 記載の引用(文字位置付き) |
| 引用の一覧 | ②の応答の citations | 区分の材料、チャートの右の列 |
製品資料はPDFのまま、文書のブロックとして渡します。 PDFは文字と各ページの画像の両方として扱われるので、表や図の中の文字もある程度読めます。 ただし、引用できるのは文字として取り出せた部分だけで、図の中だけに書かれた記載は引用になりません。
Webページは、文字の文書として渡します。 公式の説明では、文字の文書も文単位に分けられ、引用の場所は文字の位置で返ります。PDFに印刷して渡すより、本文を文字で保存して渡すほうが、どの文を引用したかがはっきりします。
同じ製品資料を構成要件の数だけ渡すので、Files API を使えば送る量を減らせます。 公式の説明では、大きなPDFは Files API で上げて file_id で参照できます。ただし、Files API のファイルは削除するか期限が来るまで残り、ゼロデータ保持の対象外とされています(第13章)。案件が終わったら、上げたファイルを消す処理を入れます。
AIへ渡す前に整形する
- 公報から要約書を外す … 第70条第3項のとおり、技術的範囲の解釈に要約書を使わない
- 製品資料の文字の有無を確かめる … 文字を取り出せないページが多いPDFは、文字認識をかけてから渡すか、引用の対象外として印を付ける
- パスワードと暗号化を外す … PDFはパスワードや暗号化の無い標準のものが対象
- 大きさを確かめる … 1回のリクエストで32MB、ページ数の上限を超える資料は分ける
- Webページを保存する … 本文の文字、URL、取得日時を1つのファイルにする
- 資料に番号を振る … 「資料1 カタログ 2026年版」のように、チャートに書く名前を決めて文書の
titleに入れる - 分説を確定する … 1回目の結果を担当者が直し、構成要件ごとに用語の説明の箇所(段落番号)を付ける
2番目を軽く見ないでください。 製品のカタログは、デザインのために本文を画像で作っていることがあります。文字の無いページは引用が返らず、「記載なし」に見えてしまいます。 前処理の段階で、文字の無いページの一覧を作り、チャートの「確認できなかった資料」に載せます。
6番目の名前は、チャートにそのまま出ます。 引用には文書の番号が付いて返るので、番号と名前の対応をプログラムの側で持ち、チャートには名前とページで書きます。
AIに処理させる
させるのは3つの段階に分けた仕事です。
| 段階 | させること | 使う機能 |
|---|---|---|
| ① | 請求項を構成要件に分ける案、各構成要件の用語を説明している明細書の段落の候補 | 構造化出力 |
| ② | 構成要件1つについて、製品資料から対応しそうな記載を探し、短い説明と引用で返す | Citations |
| ③ | 構成要件1つについて、②の引用だけを材料に、区分・確認事項・足りない資料を返す | 構造化出力 |
③の区分は4つです。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
described | 構成要件の全部に対応する記載が、引用として見つかった |
partially | 構成要件の一部に対応する記載はあるが、残りが見つからない |
not_found | 対応する記載が見つからない |
unclear | 記載はあるが、用語の解釈によって対応するかどうかが変わる |
not_found は「その構成が無い」ではありません。 指示にも、チャートの凡例にも明記します。ここを混ぜると、記載が無いだけの構成要件を、グループ長が「非充足」と読みます。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 侵害かどうかの結論 | 技術的範囲の解釈と充足の判断は、知財担当と弁理士・弁護士の仕事 |
| 均等の検討 | 同じ理由。記載の有無から一歩も出ない |
| 引用に無い記載を根拠にする | ③では資料を渡さず、②の引用だけを材料にする |
| 資料の記載を言い換えて根拠にする | 根拠の列は cited_text の原文だけ |
| 用語の意味を一般の辞書で広げる・狭める | 用語の説明は、確定した明細書の段落だけを使う |
3行目のために、③では資料そのものを渡しません。 資料を渡すと、AIは引用に無い箇所も読んで区分を決めます。チャートの根拠に出ない理由で区分が決まると、担当者が確かめられません。
指示内容を固定する
②の呼び出し(Citations を有効にした文書を、資料ごとに渡す)の指示です。
あなたは知財部の担当者を補助して、他社製品の公開資料から、
自社特許の構成要件に対応しそうな記載を探します。
【構成要件】{element_id}:{element_text}
【用語の説明(明細書)】{term_notes}
【してほしいこと】
- 渡した資料の中から、この構成要件に対応しそうな記載を探してください。
- 見つけた記載ごとに、その記載が構成要件のどの部分に対応しそうかを1文で書き、
必ず資料の該当箇所を引用してください。引用の無い説明は書かないでください。
- 用語は、上の「用語の説明」の範囲で読んでください。一般的な意味で広げたり
狭めたりしないでください。
- 対応する記載が見つからなければ、「見つからない」とだけ書いてください。
見つからないことを、その構成が製品に無いという意味で書かないでください。
【してはいけないこと】
- 特許を侵害しているか、技術的範囲に入るかを書かない。
- 資料に書かれていない製品の構造や動作を推測で補わない。
③の呼び出し(構造化出力。資料は渡さない)の指示です。
次の構成要件について、【集めた引用】だけを材料に区分を決めてください。
資料そのものは渡していません。引用に無いことを根拠にしないでください。
【構成要件】{element_id}:{element_text}
【用語の説明(明細書)】{term_notes}
【集めた引用】{citations} ← 資料名・ページ・原文の一覧
【区分】
- described …… 構成要件の全部に対応する記載が引用にある
- partially …… 一部に対応する記載はあるが、残りが引用に無い
- not_found …… 対応する記載が引用に無い
- unclear …… 記載はあるが、用語の解釈によって対応するかが変わる
迷ったときに described を選ばないでください。
not_found は「その構成が無い」という意味ではありません。
【書くこと】
- 区分の理由(どの引用のどの語が、構成要件のどの語に対応するか)
- 担当者が確かめるべき点(用語の解釈の幅、図だけに書かれている可能性など)
- 足りない資料(何を入手・調査すれば確かめられるか。例:現物の分解、通信の解析、
保守マニュアルの取り寄せ)
侵害の有無、技術的範囲に入るかどうかは書かないでください。
②で「引用の無い説明は書かない」を明記するのは、Citations を有効にしても、引用の付かない文を書くことがあるからです。 引用の無い文はプログラムの側で捨てますが、指示で減らしておくと、捨てる文が少なくなり、チャートの抜けが減ります。
③で「迷ったときに described を選ばない」と書くのは、described がいちばん強い区分だからです。 チャートを読む人は、described の行を見て次の動きを決めます。弱い根拠で described になった行が1つあると、チャート全体の信頼が落ちます。
出力形式を固定する
③は次の形のJSONで受け取ります。
{
"element_id": "1B",
"category": "described | partially | not_found | unclear",
"reason": "",
"matched_citations": [
{ "doc_title": "", "page": 0, "cited_text": "", "maps_to": "" }
],
"check_points": [""],
"missing_materials": [
{ "what": "", "why": "", "how": "purchase | teardown | analysis | request_document | other" }
]
}
category の値は小文字・大文字を区別せずに比べます。 公式の説明では、構造化出力は列挙の値の大文字・小文字を保証しないとされています。described が Described で返っても同じものとして扱います。
matched_citations は、②で集めた引用の中から選ばせます。 プログラムの側で、cited_text が②の引用の一覧にそのまま存在するかを照らし、無ければその行を捨てて担当者に印を付けます。③のAIが引用の文を書き換えていないかを、機械で確かめます。
チャートの下書きは、次の形の表にします。
| 構成要件 | 製品の対応箇所(原文の引用) | 出典 | 区分 | 確認事項 |
|---|---|---|---|---|
| 1A 本体と、本体に着脱可能なカートリッジと | 「カートリッジはワンタッチで交換できます」 | 資料1 カタログ p.4 | described | 「着脱可能」と「交換」の対応 |
| 1B 前記カートリッジの残量を検出する検出部と | (見つからない) | - | not_found | 内部の構造。カタログに記載なし |
表の下に、足りない資料の一覧を付けます。 missing_materials を構成要件をまたいで集め、「現物の分解で確かめられるもの」「保守マニュアルの取り寄せで確かめられるもの」のように、やり方ごとにまとめます。 グループ長は、この一覧で次の動きを決めます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 受付の一覧 | 読み取りと、状態の書き戻し | 案件の登録、「資料そろった」「分説確定」の印、処理の状態 |
| 共有フォルダ | 読み取りと書き込み | 公報と製品資料を読み、チャートの下書きを置く |
| Claude API | API呼び出し | ①分説の案、②引用、③区分 |
| 知財の案件管理システム | 担当者が登録 | 確定したチャートと、グループ長の判断 |
案件管理システムへは、プログラムから書き込みません。 書き込むのは担当者が確かめて直したチャートだけです。下書きが案件の正式な記録に混ざると、後から誰が確かめたものかが分からなくなります。
人が確認する
担当者が全件を確かめます。 引用は仕組みで取っていても、その引用が構成要件に対応しているかは、担当者が読んで判断します。
- 分説と用語の説明を確定する … 1回目の結果を直す。ここで止めて、確定の印を付けるまで2回目を動かさない
- 引用を原文のページで確かめる … 出典の資料名とページを開き、前後の文脈を読む。引用だけを読んで判断しない
- 区分を直す … 特に
describedの行とunclearの行。not_foundの行は、図や写真に書かれていないかを見る - 足りない資料の一覧を確かめる … 実際に手に入るか、費用がかかるかを書き足す
- グループ長に渡す … 区分を直した行と、その理由を残す
2番目の「前後の文脈」が大事です。 引用は文単位で返るので、「〜の場合は」という条件の付いた文の、条件の部分が引用から外れていることがあります。条件付きの記載を無条件の記載として読むと、区分を誤ります。
3番目の図や写真の確認は、引用の仕組みの外です。 図の中だけに書かれた記載は引用されないので、not_found の行こそ、担当者が資料の図を見ます。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 文字を取り出せないページが多い | 文字認識をかけて渡す。かけられないものは「確認できなかった資料」として一覧に載せる |
| PDFがパスワード付き・暗号化されている | 外してから渡す。外せないものは同じく一覧に載せる |
| 資料が大きく、1回で渡せない | 資料ごと、または章ごとに分けて呼び出す |
| Citations と構造化出力を同時に指定してしまう | 400のエラーになる。②と③で呼び出しを分ける |
③の cited_text が②の引用に無い | その行を捨て、担当者に印を付ける |
③が stop_reason: "max_tokens" で終わる | 出力がスキーマに合わないことがある。max_tokens を上げてやり直す |
③が stop_reason: "refusal" で終わる | 出力がスキーマに合わないことがある。担当者に回す |
| 区分の値の大文字・小文字が違う | 小文字にそろえて比べる |
| Webページの取得日時が無い | その資料からの引用には「取得日不明」と付け、グループ長に知らせる |
| 同じ記載が複数の資料にある | 版の新しい資料を先に、古い資料を後に並べる |
上の2行が、実際にはいちばん多く起きます。 どちらもAIの問題ではなく、資料の集め方の問題です。カタログはWebのPDFを使い、紙のスキャンは最後の手段にします。
記録を残す
- 案件ごとの入力(請求項、確定した分説、資料の一覧とファイルのハッシュ値、Webページの取得日時)
- ②の応答の全文と、引用の一覧(資料名・ページ・原文)
- ③の応答のJSON
- プログラムが捨てた行と、捨てた理由
- 担当者が区分を直した行と、直した理由
- グループ長の判断(分解する、調査を頼む、鑑定に回す、見送る)と日付
ファイルのハッシュ値を残すのは、同じ資料かどうかを後から確かめるためです。 製品資料は版が変わります。チャートを交渉や鑑定に使う段階で、根拠のページが別の版のものだったと分かると、作り直しになります。
5つ目は、指示を直す材料です。 described を partially に直した行が多ければ、③の指示の「迷ったときに described を選ばない」が効いていません。直した理由を月に1回数えて、多いものから指示を直します。
04実装レベルの3段階
最小構成は確かめるための段階です。 構成要件の数だけ画面でやり取りするので、月12件には使えません。 半自動化で、②の180分の大半がなくなります。 引用がページ付きで並ぶので、担当者は探す時間ではなく、読む時間に使えます。ただし、区分と足りない資料の書き出しは担当者に残ります。 本格構成で1件120分になり、この段階が本記事の想定です。 区分と足りない資料の下書きまで出ることで、グループ長に渡すまでの時間が短くなり、現物の購入などの次の動きを早く始められます。
05工数削減シミュレーション
導入後 12件 × 120分 ÷ 60 = 24 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 特許を数百件以上持つ製造業・IT企業の知財部門で、他社製品が自社特許を使っていないかの検討依頼が事業部や見張りの仕組みから毎月届き、クレームチャートを担当者が手で作っている場合。製品のカタログ・取扱説明書・Webページを集めて保管する手順がある場合。社内で Python の簡単なプログラムを動かせる場合。クライアントから同じ作業を受ける特許事務所。
- 侵害しているかどうかの結論をAIに出させたい場合(この構成は記載の有無と根拠の箇所までを扱います)。他社製品の資料が紙のスキャンしかなく、文字を取り出せない場合。検討の件数が年に数件で、担当者が資料を読み込める場合。訴訟の証拠として出す対比表を、そのまま作りたい場合。
07最小構成で試す方法
- 過去に担当者が手で作ったクレームチャートから3件を選ぶ(
not_foundの構成要件を含むものを入れる) - その3件の特許公報と製品資料を、そのまま用意する
- 担当者が Claude の画面で、構成要件を1つずつ書き、製品資料のPDFを添えて「この構成要件に対応する記載を、資料名とページを添えて原文のまま抜き出してください。見つからなければ見つからないと書いてください」と頼む
- 出てきた記載を、手で作ったチャートの右の列と並べる
- 手のチャートにあってAIに無い記載、AIにあって手に無い記載を数える
画面で試す段階では、Citations の仕組みは使えません。 引用が原文どおりかは、担当者がページを開いて確かめます。確かめるのは「探す力」で、引用の仕組みは次の段階で入れます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 手のチャートと同じ記載が見つかった | API と Citations の構成に進む |
| 手のチャートに無い記載が見つかった | 担当者が見落としていた可能性。原文で確かめる |
| 用語の字面でしか探していない | 用語の説明を渡す。分説の確定の段階を必ず入れる |
| 原文と違う文を「引用」として出した | 画面の段階では起きうる。Citations で取る理由がここにある |
最後の行が出たら、それが本格構成に進む理由です。 引用を仕組みで取れば、渡した文書の文がそのまま返ります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| Citations と構造化出力を同じ呼び出しで使って400になる | ②と③で呼び出しを分ける |
| 文字の無いPDFから引用が返らない | 前処理で文字の有無を調べ、「確認できなかった資料」に載せる |
not_found が非充足と読まれる | 凡例と指示の両方に、記載が無いだけだと書く |
| 用語を字面で探して記載を見落とす | 分説の確定で、明細書の用語の説明を構成要件ごとに付ける |
| 要約書を材料に用語を読む | 公報から要約書を外して渡す |
| ③が引用を書き換える | cited_text を②の一覧と照らし、合わない行を捨てる |
| 条件付きの記載を無条件と読む | 担当者が原文の前後を読む |
| Webページの記載が後から変わる | 取得日時と本文を1組で保存する |
| 図だけに書かれた記載を見落とす | not_found の行は担当者が図を見る |
| Files API のファイルが残り続ける | 案件の終わりに削除する処理を入れる |
| 区分の値の大文字・小文字がずれる | 比べる前に小文字にそろえる |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 1行目は動かした初日に分かりますが、2行目と3行目はチャートの見た目では気づけません。 文字の無いページの一覧と、凡例の書き方を、最初の1件から入れておきます。
「③が引用を書き換える」は、照合を作らないと見えません。 書き換えは数文字のこともあり、目で読んでも気づきにくいので、機械で照らします。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 自社の特許公報(公開情報)、他社製品の公開資料、そしてどの特許をどの他社製品と対比しているかという検討の事実です。資料は公開されていますが、検討していること自体が、交渉や紛争の前の機密です。
- 検討の事実を外に出す範囲を決める … API に渡すのは公報と公開資料だけでも、組み合わせが検討の中身を表します。API の利用は会社として契約した組織で行い、個人のアカウントを使いません
- 保存の扱いを確かめる … 公式の説明では、保存されたデータは明示の許可なくモデルの学習に使われず、会話の内容は既定では保存されないとされています(一部のモデルを除く)。一方で、Files API のファイルは削除するか期限が来るまで残り、ゼロデータ保持の対象外です。資料を Files API で上げるなら、案件の終わりに削除します
- 下書きを結論として使わない … 区分は記載の有無の整理で、侵害の判断ではありません。チャートを相手方に出す、警告に使う、といった判断は、弁理士・弁護士とグループ長が行います
- 間接侵害などの論点は人が拾う … 特許法第101条は、物の生産にのみ用いる物の生産・譲渡などを侵害とみなす行為として定めています。製品が部品や消耗品の場合、直接の対比だけでは足りないことがあります。 この構成は請求項と製品の記載を並べるだけなので、その種の論点は担当者が拾います
- 下書きを案件の正式な記録に混ぜない … 担当者が確かめて直したものだけを案件管理システムに登録します
- 他社の資料の入手の仕方を守る … 公開されている資料と、正規に購入した製品の資料だけを使います
誤りが起きた場合のリスクは、記載が無いだけの構成要件を非充足と読んで見送ることと、弱い根拠を described として交渉に進むことの2つです。 前者は凡例と not_found の扱いで、後者は「迷ったら described にしない」指示と担当者の確認で止めます。どちらも、チャートを読む人の誤読から起きるので、凡例の書き方が設計の一部です。
10まず何から始めるか
1週目:過去のチャート3件で試す
第8章のとおり、過去に手で作ったチャート3件で、画面から記載を探させます。手のチャートとAIの記載を並べ、見落としと余計な記載を数えます。
2週目:分説と用語の確定のひな形を作る
構成要件の記号、構成要件の文、用語の説明の段落番号を書く欄を持つひな形を作ります。同じ特許で以前作ったチャートがあれば、その分説をひな形に移しておきます。
3週目:②の呼び出しを作る
Citations を有効にして、構成要件ごとに資料を渡し、引用を資料名・ページ・原文の表に並べるプログラムを作ります。この時点で、文字の無いページの一覧も出します。
4週目:③の呼び出しと照合を作る
構造化出力で区分を返させ、cited_text を②の引用と照らす処理を入れます。チャートの凡例に、not_found の意味を明記します。
2か月目: 新しく届いた依頼で動かし、担当者が区分を直した行と理由を記録します。3か月目以降: 1件あたりの時間を測り、直した理由の多いものから指示を直します。足りない資料の一覧が、グループ長の次の動きを決める材料として毎回使われるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
Citations が文書に基づく回答の根拠の箇所を返すこと。PDFは文単位に分けられ、引用の場所が1から始まるページ番号で返ること。文字の文書は文字の位置で返ること。cited_text が出力トークンに数えられないこと。引用が渡した文書を必ず指すこと。PDFからの画像の引用に対応しておらず、文字を含まないスキャンのPDFは引用できないこと。Citations と構造化出力を同時に使うと400のエラーになること | Claude Docs: Citations | 2026-10-08 |
PDFが1回のリクエストで32MB、600ページまで(コンテキストが100万トークン未満のときは100ページ)であること。パスワードや暗号化の無い標準のPDFが対象であること。各ページが文字と画像の両方として扱われ、文字は1ページあたり1,500〜3,000トークン程度であること。大きなPDFは Files API で上げて file_id で参照できること | Claude Docs: PDF support | 2026-10-08 |
output_config.format に JSON スキーマを指定すると返答がスキーマに沿うこと。列挙の値の大文字・小文字が保証されないこと。拒否(refusal)や上限(max_tokens)ではスキーマに合わない出力になりうること | Claude Docs: Structured outputs | 2026-10-08 |
| 保存されたデータが明示の許可なくモデルの学習に使われないこと。会話の内容が既定では保存されないこと(一部のモデルを除く)。Files API のファイルが削除するか期限が来るまで保存され、ゼロデータ保持の対象外であること | Claude Docs: API and data retention | 2026-10-08 |
| 特許権者が業として特許発明の実施をする権利を専有すること(第68条)。特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定め、用語の意義は明細書の記載と図面を考慮して解釈し、要約書の記載を考慮してはならないこと(第70条)。差止請求権(第100条)。侵害とみなす行為(第101条) | e-Gov 法令API: 特許法 | 2026-10-08 |
他社製品が自社特許の技術的範囲に入るかどうか、どう権利を行使するかは、知財の責任者と弁理士・弁護士が判断してください。 本記事は上の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。API の料金と上限は変わることがあるため、Anthropic の最新の案内を確認してください。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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