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銀行の相続の窓口で、亡くなった方の取引の状況と相続人の申出から、必要書類と手続きの流れを相続人ごとに案内する文書の下書きを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

相続の申出を受けた後、亡くなった方の取引の状況と相続人の申出をもとに、相続人ごとに「何を用意し、どの順で手続きが進むか」を書いた案内文書の下書きを作ります。担当者は下書きを確かめて直し、相続人へ送ります。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
n8n/Power Automate
対象業界
保険/金融
対象部門
カスタマーサポート
対象業務
問い合わせ対応/書類作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
生成
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
200h/月
AI導入後
75h/月
想定削減
63%
年間削減
1,500h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 店舗から相続の受付の連絡が届き、相続センターの担当者が割り当てられる
  2. 担当者が勘定系で、亡くなった方の口座の一覧と残高を見る
  3. 投資信託・融資・貸金庫・口座振替の有無を、各システムの画面で順に確かめる
  4. 店舗の聞き取りのメモから、遺言書・遺産分割協議書・調停調書の有無を読み取る
  5. ひな形を選び、取引の状況に応じて段落を足し、必要書類を書き込む
  6. 相続人が複数いれば、代表の相続人あてに1通を作る
  7. 上席が内容を見て、郵送する
導入後(After)
  1. 人店舗が相続の受付の台帳に、相続人の一覧と申出の内容を入力する
  2. 自動台帳への登録をきっかけに、勘定系と各業務のシステムから亡くなった方の取引の一覧を集める
  3. 自動申出の内容を、遺言書/遺産分割協議書/調停調書・審判書の有無に整理する。あいまいなものは「未確認」とする
  4. 自動規則の表で、場合と取引の種類ごとに必要書類を決め、相続人の役割ごとに振り分ける
  5. 自動生成AIが、相続人ごとの案内文書と手続きの流れの下書きを作る
  6. 自動下書きに書かれた書類が、規則が決めた一覧と一致するかを照合する
  7. 人担当者が下書きと照合の結果を確かめ、直す
  8. 人上席が確認し、相続人ごとに郵送する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 店舗から相続の受付の連絡が届き、相続センターの担当者が割り当てられる
  2. 担当者が勘定系で、亡くなった方の口座の一覧と残高を見る
  3. 投資信託・融資・貸金庫・口座振替の有無を、各システムの画面で順に確かめる
  4. 店舗の聞き取りのメモから、遺言書・遺産分割協議書・調停調書の有無を読み取る
  5. ひな形を選び、取引の状況に応じて段落を足し、必要書類を書き込む
  6. 相続人が複数いれば、代表の相続人あてに1通を作る
  7. 上席が内容を見て、郵送する

(a)取引ごとの案内が漏れる。 3番目で見る画面が多く、口座振替の案内や貸金庫の手続きの案内が抜けます。 相続人は預金の手続きで来店した後に、貸金庫のことを別に聞かされ、もう一度来ることになります。

(b)相続人ごとに用意するものが違うのに、1通で済ませている。 代表の相続人あての1通に全員分の書類を書き込むため、ほかの相続人は自分が何を出せばよいかを代表の相続人から聞くことになります。 遠方の相続人の印鑑証明書が揃わず、手続きが止まる原因になります。

(c)申出の内容があいまいなまま案内する。 店舗の聞き取りでは「遺言はたぶん無い」「兄弟で話し合い中」のような内容が多く、どのひな形を使うかを担当者が推し量って決めています。 外れると、相続人は使わない書類を集め、必要な書類は集めていない状態になります。

(d)書き方が担当者ごとに違う。 同じ場合でも、ある担当者は手続きの流れを番号付きで書き、別の担当者は書類の一覧だけを送ります。相続人からの問い合わせの多さが、担当者によって違います。

  1. 【人】 店舗が相続の受付の台帳に、相続人の一覧と申出の内容を入力する
  2. 【自動】 台帳への登録をきっかけに、勘定系と各業務のシステムから亡くなった方の取引の一覧を集める
  3. 【自動】 申出の内容を、遺言書/遺産分割協議書/調停調書・審判書の有無に整理する。あいまいなものは「未確認」とする
  4. 【自動】 規則の表で、場合と取引の種類ごとに必要書類を決め、相続人の役割ごとに振り分ける
  5. 【自動】 生成AIが、相続人ごとの案内文書と手続きの流れの下書きを作る
  6. 【自動】 下書きに書かれた書類が、規則が決めた一覧と一致するかを照合する
  7. 【人】 担当者が下書きと照合の結果を確かめ、直す
  8. 【人】 上席が確認し、相続人ごとに郵送する

3番目で「未確認」を作るのが、この設計の分かれ目です。 店舗の聞き取りがあいまいなときに、どの場合かを推し量って決めると、第3章の(c)がそのまま自動化されます。未確認の場合は、案内文書の冒頭で「遺言書の有無を確かめていただき、ある場合はご連絡ください」と分岐を案内し、両方の場合の書類を並べます。

4番目と6番目で、書類を決めるのは規則、確かめるのも規則です。 生成AIは文章を書くだけで、書類を足したり減らしたりしません。書類が1つでも違えば、下書きは担当者の手元で止まります。

02今回想定するシステム構成

構成図
店舗(死亡の連絡、相続人の聞き取り)
   ▼【トリガー】相続の受付の台帳への登録
Azure Functions(取引の収集と規則の適用)
   ├──▶ 勘定系(口座の一覧、残高、口座振替)
   ├──▶ 投資信託・融資・貸金庫の各システム
   ├──▶ 申出の整理(遺言書/協議書/調停調書・審判書:あり・なし・未確認)
   └──▶ 必要書類の規則の表(場合 × 取引の種類 × 相続人の役割)
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)── 相続人ごとの案内文書と流れの下書き(構造化出力)
   ▼
Azure Functions ── 書類の一覧の照合
   ▼
【担当者が確認・修正 → 上席が確認】──▶ 相続人ごとに郵送
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)の Standard デプロイClaude、Gemini
連携Azure Functions(取引の収集、規則の適用、照合)Power Automate、n8n
保管Azure Blob Storage(入力の写し、下書き、照合の結果)相続の受付の台帳の添付の機能
規則必要書類の規則の表(相続センターが管理)―

勘定系と各業務のシステムには書き込みません。 この構成は取引の一覧を読むだけで、口座の停止や解約は従来どおり担当者が行います。

生成AIに Azure OpenAI を選ぶ理由は、データの扱いが公開されていることです。 Microsoft Learn のデータとプライバシーのページは、プロンプトと応答が他の顧客にも OpenAI にも提供されず、提供元がモデルの改善に使わないこと、モデルはステートレスで、プロンプトと応答をモデルの中に保存しないことを示しています。モデルは Microsoft の Azure 環境でホストされ、OpenAI が運営するサービスとはやり取りしないとされています。

デプロイの種類は、処理の場所で選びます。 同じページによると、プロンプトと応答は顧客が指定した地域(ジオグラフィ)の中で処理されますが、Global と付くデプロイでは、そのモデルが展開されているどの地域でも処理されうるとされ、DataZone と付くデプロイでは定められたデータゾーンの中で処理されます。亡くなった方と相続人の情報を扱う本記事では、地域指定の Standard デプロイを前提にします。 使いたいモデルがその地域で提供されているかは、導入時に確かめてください。

出力は構造化出力で受け取ります。 公式のページでは、構造化出力は呼び出しのときに渡した JSON Schema にモデルを従わせる機能で、Chat Completions API でも Responses API でも使えます。以前の JSON モードは正しい JSON であることは保証しても、スキーマへの厳密な準拠は保証しなかったとされています。書類の一覧を照合するには、毎回同じ形で返ってくることが前提です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

相続の受付の台帳に、店舗が相続人の一覧と申出の内容を登録したときに動かします。 店舗は死亡の連絡を受けた日に口座を止めますが、その時点では相続人の連絡先も遺言の有無も分からないことが多くあります。相続人の一覧が入った時点を起点にするのは、案内文書のあて先が決まらないと作れないからです。

申出の内容が更新されたときにも動かします。 「遺言は未確認」だった相続人から「公正証書遺言があった」と連絡があれば、店舗か担当者が台帳を更新し、案内文書を作り直します。 作り直した版は前の版と並べて担当者に見せ、どの書類が増え、どれが不要になったかを差分で示します。

1件ずつ動かし、まとめて夜間に処理することはしません。 相続人は葬儀の後の慌ただしい時期に手続きを始めることが多く、案内が1日遅れると、その分だけ書類集めの開始が遅れます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
亡くなった方顧客番号、氏名、死亡日、取引店相続の受付の台帳
取引の一覧預金の口座(種類・残高)、口座振替の契約、投資信託の口座、融資の残高、貸金庫の契約勘定系、各業務のシステム
相続人の一覧氏名(符号化)、続柄、連絡先、受け取る予定の有無、遺言執行者か相続の受付の台帳
申出の内容遺言書・遺産分割協議書・調停調書・審判書の有無(あり/なし/未確認)、遺言の種類、払戻しを急ぐ事情店舗の聞き取り
必要書類の規則の表場合 × 取引の種類 × 相続人の役割ごとの書類と、書類の説明文相続センターが管理
手続きの流れの表場合ごとの手続きの段階と、それぞれで相続人がすること相続センターが管理

質を決めるのは、下の2つの表です。 生成AIは、規則の表に書かれた書類の名前と説明文を使って文章にします。表の説明文が分かりにくければ、案内も分かりにくくなります。 表を作るときに、書類ごとに「どこで取るか」「何通要るか」「いつまでのものか」を1行の説明として持たせます。

規則の表は、たとえば次のような行の集まりです。

場合取引の種類役割doc_code書類説明文の要点
協議書あり預金全員D010遺産分割協議書法定相続人全員の署名・捺印があるもの
協議書あり預金全員D020印鑑証明書取得先・有効期間は自行の取り決めの値
協議書あり預金受け取る方D030払戻しの依頼書銀行所定の用紙。同封する
共通貸金庫受け取る方K010開扉の立会いの予約来店の日時を相談して決める

行は「誰が出すか」の単位で持ちます。 同じ印鑑証明書でも、相続人全員が出すのか、受け取る方だけが出すのかは場合によって違います。役割の列があるから、相続人ごとの書き分けが規則の側で決まります。

規則の表の土台は、全国銀行協会が示す4つの場合です。 遺言書がある場合は遺言書、検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)、亡くなった方の戸籍謄本、預金を相続する方の印鑑証明書など。遺産分割協議書がある場合は、法定相続人全員の署名・捺印がある協議書、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明書。協議書が無い場合と、調停調書・審判書がある場合も、それぞれ書類が示されています。ただし同協会は、相続の方法や内容、金融機関により必要な書類が異なる場合があるとしています。 表は自行の取り決めで作り、この4つの場合は分類の枠として使います。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどうやって
口座の一覧・残高・口座振替勘定系既存の照会の仕組みで、顧客番号をもとに読み取る
投資信託・融資・貸金庫各業務のシステム顧客番号で照会。照会できないシステムは担当者の確認欄を作る
相続人と申出の内容相続の受付の台帳登録・更新の通知で読む
規則の表と流れの表相続センターの管理する表版の番号と一緒に読む

勘定系への照会は、既存の照会の仕組みを使います。 勘定系に新しい接続口を作るのは大きな工事になるため、担当者がふだん画面で見ている情報を、同じ経路で読み出す形にします。どの経路が使えるかは行内のシステムによって違い、この部分は個別の実装が必要です。

照会できないシステムがあることを前提にします。 貸金庫の台帳が紙のままなど、自動で取れない取引は「確認欄」として下書きに残し、担当者が確かめるまで案内文書を完成させません。 取れなかったものを「無い」として扱うと、第3章の(a)がそのまま起きます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 取引の種類の振り分け … 取引の一覧を、規則の表の取引の種類(普通・定期預金、口座振替、投資信託、融資、貸金庫)に振り分けます
  2. 場合の判定 … 申出の内容から、4つの場合のどれかを決めます。遺言書が「未確認」なら、遺言書がある場合と無い場合の両方を候補に残します
  3. 相続人の役割の付与 … 預金を受け取る予定の方、遺言執行者、それ以外の相続人、に分けます。受け取る方が決まっていなければ「未定」とします
  4. 必要書類の決定 … 規則の表を引き、場合 × 取引 × 役割ごとに書類を決めます。ここで決まった書類のコードの一覧が、後の照合の正解になります
  5. 符号化 … 相続人の氏名と住所を符号に置き換えます。生成AIには、続柄と役割と書類のコードだけを渡します
  6. 払戻しを急ぐ事情の印 … 葬儀費用や当面の生活費のために遺産分割の前の払戻しを希望しているかを、印として渡します

6番目は、民法の規定に関わります。 民法第909条の2は、各共同相続人が、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に、その相続人の法定相続分を乗じた額(金融機関ごとに法務省令で定める額が限度)について、単独で権利を行使できると定めています。額を計算するのは生成AIではなく、担当者です。 生成AIには、この制度があることと相談の窓口を案内させるだけにします。

Step5

AIに処理させる

させるのは、規則が決めた書類と流れを、相続人ごとの文章にすることだけです。

させること内容
あいさつと要旨お悔やみの言葉と、この文書で案内することの要旨
相続人ごとの書類の案内その相続人が用意する書類を、規則の表の説明文に沿って書く
手続きの流れ流れの表の段階を、その相続人がすることに絞って書く
未確認の場合の分岐遺言書が未確認なら、確かめていただくことと、ある場合・無い場合の違いを書く
取引ごとの補足貸金庫の開扉、投資信託の移管や解約など、取引ごとの手続きを書く
確認欄照会できなかった取引について「担当者が確認中」と書く
させないこと理由
書類の追加・削除書類は規則の表が決める。生成AIが「念のため」と足すと、相続人の負担が増える
場合の判定未確認を推し量って決めない
払戻しの額の計算法定相続分と省令の限度額で決まる。担当者が計算する
遺言や協議書の内容の解釈誰が何を受け取るかは書類で確かめる
期限の断定手続きの期限を、規則の表に無いのに書かない

いちばん起きやすいのは1行目です。 生成AIは丁寧に書こうとして、「住民票もあるとお手続きがスムーズです」のような書類を足します。足された1通のために、相続人は役所にもう一度行くことになります。 書類は規則の表にあるものだけ、と指示し、照合でも確かめます。

5行目も同じです。 相続税の申告期限のような一般的な期限を書き添えると、銀行の手続きの期限であるかのように読まれます。 期限は流れの表にあるものだけにします。

Step6

指示内容を固定する

あなたは銀行の相続センターの担当者として、相続人あての案内文書の下書きを書きます。
下の「規則が決めた書類」と「手続きの流れ」だけを使ってください。

【書くこと】
1. お悔やみの言葉(1文)と、この文書で案内することの要旨(2文以内)
2. この相続人に用意していただく書類(規則が決めた書類のコードごとに、説明文に沿って)
3. この相続人にしていただく手続きの流れ(流れの表の段階のうち、この相続人の役割に関係するものだけ)
4. 場合が「未確認」のときは、確かめていただきたいことと、ある場合・無い場合で書類がどう変わるか
5. 取引ごとの補足(貸金庫、投資信託など。取引の一覧にあるものだけ)
6. 確認中の取引があれば、担当者が確認していること

【厳守事項】
- 書類は「規則が決めた書類」にあるものだけを書いてください。
  念のための書類、あると便利な書類を足さないでください。
- 書類ごとに doc_code を必ず付けてください。説明文を言い換えるのはかまいませんが、
  通数・取得先・有効期間の数字は説明文のまま書いてください。
- 場合が未確認のとき、どちらかに決めて書かないでください。
- 遺産分割前の払戻しの印があるときは、制度があることと相談窓口だけを書き、
  払い戻せる額を書かないでください。
- 期限は「手続きの流れ」に書かれたものだけを書いてください。
  相続税の申告など、ほかの手続きの期限を書かないでください。
- 遺言書や遺産分割協議書の内容を解釈しないでください。
- 符号(H01 など)は符号のまま書いてください。氏名は後で差し込みます。
- 相続人が読んで分かる言葉にしてください。「被相続人」は「お亡くなりになった方」と書いてください。

【相続人の役割】{heir_role}
【場合】{case}(will / partition_agreement / no_agreement / court_document / unconfirmed)
【取引の一覧】{accounts}
【規則が決めた書類】{required_docs}
【手続きの流れ】{flow_steps}
【確認中の取引】{pending_checks}
【払戻しを急ぐ事情の印】{early_withdrawal_flag}

「通数・取得先・有効期間の数字は説明文のまま」を明記しないと、言い換えの中で数字が動きます。 表に書いた「発行後○か月以内」が「最近のもの」になると、相続人は古い印鑑証明書を持ってきます。言い換えてよいのは文の形だけ、と区切ります。

「被相続人は、お亡くなりになった方と書く」のような言葉の指定は、相続センターで一覧にして渡します。 遺産分割協議書、検認、遺言執行者のように言い換えられない言葉は、初めて出てくるところで1文の説明を添えるように指示します。

Step7

出力形式を固定する

構造化出力で、次の形のJSONを受け取ります。

{
  "case_no": "",
  "heir_code": "",
  "heir_role": "recipient | executor | other_heir | undecided",
  "case": "will | partition_agreement | no_agreement | court_document | unconfirmed",
  "greeting": "",
  "summary": "",
  "documents": [
    { "doc_code": "", "text": "" }
  ],
  "flow": [
    { "step_code": "", "text": "" }
  ],
  "branch_note": "",
  "account_notes": [
    { "account_type": "", "text": "" }
  ],
  "pending_note": ""
}

1つ目の理由は、documents の doc_code を規則の一覧と照合できることです。 規則が決めたコードの集合と、下書きに書かれたコードの集合が一致しなければ、下書きを担当者の手元で止めます。 多すぎても少なすぎても止めます。

2つ目は、相続人ごとに同じ形で並べられることです。 相続人が3人いれば3つのJSONができ、担当者は書類の欄だけを横に並べて、全員分で漏れが無いかを確かめられます。

スキーマには制約があります。 公式のページでは、すべての項目を required に入れる必要があり、省略してよい項目は null との組み合わせの型で表すとされています。オブジェクトには additionalProperties: false を必ず付け、スキーマ全体で項目は最大100、入れ子は5段までです。minItems や maxItems などのキーワードは使えないため、書類の数の確認はスキーマではなく照合の処理で行います。 出力の項目の順はスキーマの順に従うとされているので、案内文書の段落の順に項目を並べておきます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
相続の受付の台帳登録・更新の通知相続人の一覧と申出の内容を受け取る
勘定系既存の照会の仕組み口座の一覧、残高、口座振替を読む
各業務のシステム照会(取れないものは確認欄)投資信託、融資、貸金庫を読む
規則の表・流れの表読み取り版の番号と一緒に読む
Azure OpenAIAPI呼び出し(構造化出力)相続人ごとの下書きを作る
文書作成のひな形差し込みJSONの各項目と氏名・住所を差し込み、印刷用の文書にする

氏名と住所は、文書にするときに差し込みます。 生成AIには符号のまま渡し、下書きができてから、相続の受付の台帳の値で置き換えます。 実名を生成AIに渡さずに済み、差し込み先の取り違えも台帳の値で防げます。

Step9

人が確認する

案内文書は、すべて担当者と上席が確かめてから送ります。 自動で郵送する経路は作りません。

  1. 照合の結果を見る … 書類のコードが一致しない下書きは、まず規則の表の側を疑います。新しい取引の種類が表に無いことが多いためです
  2. 確認欄を埋める … 照会できなかった取引を担当者が確かめ、規則の表を引き直して下書きを作り直します
  3. 相続人ごとの書類を横に並べる … 全員分で、印鑑証明書を出す人、署名する人が揃っているかを見ます
  4. 未確認の分岐を確かめる … 分岐の書き方が相続人を迷わせないかを読みます
  5. 上席の確認 … 送る前に、場合の判定と書類の一覧を確かめます

3番目が、1通で済ませていたときに起きていた漏れ(第3章の(b))を防ぐ場所です。 1人分ずつ読むと漏れに気づきません。横に並べて、役割と書類の組み合わせが表どおりかを見ます。

目標は、300件をならして1件15分です。 預金だけで相続人が1人なら数分、取引が多く未確認の項目がある相続では30分を超えます。15分を大きく超える月は、規則の表の行が足りないか、照会できない取引が増えています。 下書きを直す時間ではなく、表と照会の側を見直します。

Step10

例外に対処する

起きること対応
申出の内容が未確認両方の場合の書類を並べ、分岐を案内する。推し量って決めない
受け取る相続人が未定役割を undecided とし、全員に共通の書類と、決まった後の流れを案内する
照会できない取引がある確認欄に残し、担当者が確かめるまで完成させない
規則の表に無い取引の種類下書きを作らず担当者へ。表に行を足してから作り直す
書類のコードが規則と一致しない下書きを止める。生成AIの出力は使わない
相続人が海外に住んでいる印鑑証明書の代わりの書類は表の別の行で扱う。行が無ければ担当者へ
相続人に未成年者・判断能力に不安のある方がいる下書きを作らず担当者へ。代理の手続きは個別に案内する
構造化出力が拒否・途中終了で返る下書きを作らず担当者へ
申出の更新で場合が変わった作り直し、前の版との書類の差分を担当者に示す

下から3行目は、規則の表では扱いきれない場面です。 未成年者の相続人には特別代理人の選任が要る場合があるなど、家庭裁判所の手続きが絡むものは、定型の案内に乗せません。 担当者が電話で事情を聞いてから案内します。

Step11

記録を残す

  • 相続の受付番号、取引の一覧の写し、申出の内容
  • そのときの規則の表と流れの表の版の番号
  • 生成AIに渡した入力(符号化したもの)と、返ってきたJSON
  • 照合の結果(一致・不一致、不一致のコード)
  • 担当者が直した箇所と、上席の確認の記録
  • 送った案内文書の写しと、送付日、あて先の相続人

2つ目の版の番号が最も大事です。 規則の表は、取引の種類が増えたり行内の取り決めが変わったりするたびに直します。「なぜこの書類を案内したのか」を後から問われたときに、当時の表の版が分からないと答えられません。

5つ目は、表を良くする材料になります。 担当者が毎回同じ書類を足しているなら、表に行が足りません。同じ説明文を毎回直しているなら、説明文が分かりにくいのです。

04実装レベルの3段階

最小構成:規則の表を手で引き、書類の一覧をAIの画面に貼って下書きを作る / 文書の下書き
半自動化:上記+台帳の登録を起点に規則の表を自動で引き、相続人ごとの下書きをAPIで作る / 書類の決定と相続人ごとの下書き
本格構成:上記+勘定系と各業務のシステムから取引の一覧を集め、照合し、差し込みまで行う / 取引の確認から印刷用の文書まで

最小構成では件数がさばけません。 1件ずつ表を引いて貼るので、300件には使えません。規則の表を作り、確かめるための段階です。 半自動化で、1件40分が25分程度になります。 書類の決定と下書きは自動になりますが、取引の状況を各システムで確かめる①が残ります。本格構成で15分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、①の画面の巡回が無くなるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で2か月回すと、規則の表に足りない行と、照会できない取引が分かります。そこを直してから勘定系との連携に進むほうが、確認欄だらけの下書きになりません。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
10 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
40 分
1件あたり導入後時間
15 分
現在  300件 × 40分 ÷ 60 = 200 時間/月
導入後 300件 × 15分 ÷ 60 = 75 時間/月
月間削減時間
125h
削減率
63%
年間削減時間
1,500h
年間金額換算(時間単価3,500円)
525万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 相続の手続きを本部の相続センターなどに集約している地方銀行・信用金庫・信用組合で、月に数百件の相続の申出があり、案内の文書を担当者が取引の状況を見ながら手で作っている場合。預金だけでなく投資信託・貸金庫・融資・口座振替など複数の取引を持つ方の相続が多く、書類の案内漏れで相続人に二度三度と来店してもらっている場合。Azure の契約があり、顧客の情報を自社のテナントの中で扱う構成を取れる場合。
向いていない
  1. 相続の申出が月に数十件で、担当者が1件ずつ書いて足りる場合。必要書類の取り決めが行内で文書になっておらず、担当者の経験で案内している場合(先に取り決めを表にする必要がある)。相続の手続きをすでに専用のシステムで受け付け、案内の文書も定型で出せている場合。なお、遺言や遺産分割協議書の内容の解釈、相続人の確定、払戻しに応じるかの判断は担当者と本部が行い、この構成はそれを代わりに行いません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の相続の案件から、4つの場合と取引の多い少ないが混ざるように20件を選ぶ
  2. その20件について、実際に送った案内文書と、後から追加で案内した書類を集める
  3. 規則の表の最初の版を、手元の表計算ソフトで作る(場合 × 取引の種類 × 役割と、書類の説明文)
  4. 1件ずつ、表を引いて決めた書類の一覧と取引の種類を、手元のAIサービスの画面に貼る(氏名・口座番号は貼らない)
  5. 「この一覧の書類だけを使い、預金を受け取る相続人あての案内文書を書いてください。書類を足さないでください」と指示し、実際に送った文書と並べる

20件は必ず実際の案件で作ってください。 見るのは文章の上手さではなく、後から追加で案内した書類が、表と下書きで最初から入るかです。

出てきた内容判断
追加で案内した書類が最初から入った規則の表と連携の構築に進む
表に無い書類を生成AIが足した指示の書き方で直る。照合で止まるので構成は有効
表で決めた書類が実際と違った規則の表が先。 行内の取り決めを表にし直す

3行目が出ることは珍しくありません。 担当者の頭の中にあった取り決めを表にすると、人によって案内していた書類が違っていたことが分かります。 これは失敗ではなく、第3章の(d)が見えたということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
生成AIが「念のため」書類を足す規則の表にある書類だけと指示し、コードの集合で照合する
有効期間の「○か月以内」が「最近の」に言い換えられる数字は説明文のまま書かせる
未確認の申出を推し量って場合を決める未確認を前処理で作り、両方の書類を並べる
照会できない取引が「無い」扱いになる確認欄に残し、担当者が確かめるまで完成させない
規則の表に無い取引の種類で止まる止めるのが正しい。表に行を足して作り直す
相続税の期限などを書き添える期限は流れの表にあるものだけ
払戻しの額を書いてしまう制度と窓口だけを案内し、額は担当者が計算する
スキーマで書類の数を縛ろうとするminItems などは使えない。照合の処理で確かめる
1通にまとめて送ってしまう相続人ごとに作り、横に並べて確かめる
実名を生成AIに渡している符号で渡し、文書にするときに差し込む

上の2行が、生成AIの文章で最も起きやすい失敗です。 どちらも親切に書こうとして起きます。照合と言葉の指定で、親切の範囲を区切ってください。

5行目は、止まることを失敗と考えないでください。 新しい取引の種類が出たときに止まらずに下書きができるほうが危険です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 亡くなった方の取引と残高、相続人の氏名・続柄・住所、遺言や遺産分割の有無です。家族の事情に深く関わる情報です。

  1. 生成AIに実名と口座番号を渡さない … 渡すのは続柄、役割、取引の種類、書類のコードです。氏名と住所は文書にするときに差し込みます
  2. 処理の場所が国内に収まるデプロイを使う … Global や DataZone のデプロイでは、処理がほかの地域で行われうるとされています。地域指定の Standard デプロイを使います
  3. 案内文書を自動で送らない … 書類を誤って案内すると、相続人は不要な書類のために役所へ行き、必要な書類が揃わないまま来店します。担当者と上席が確かめてから送ります
  4. この構成は相続の判断を代替しません … 相続人の確定、遺言や遺産分割協議書の解釈、払戻しに応じるかは、担当者と本部が書類を確かめて決めることです。 この構成が作るのは案内の下書きだけです
  5. 法定相続情報一覧図の写しを案内に入れる … 法務局の案内では、法定相続情報証明制度は、戸除籍謄本等の束とともに一覧図を提出し、登記官が確認したうえで認証文を付けた写しを無料で交付する制度で、被相続人名義の預金の払戻し手続きにも使えるとされています。相続人が戸籍の束を何度も出し直す負担を減らせるので、規則の表の説明文で選択肢として案内します
  6. ログの保管期間を決める … 入力の写しと下書きには家族の事情が残ります。行内の文書の保管の規程に合わせて期間を決めます

誤りが起きた場合のリスクは、必要な書類を案内し忘れることと、不要な書類を案内することの2つです。 前者は照会できない取引を「無い」とすることから、後者は生成AIが書類を足すことから起きます。どちらも、書類を決めるのを規則に置き、照合で確かめる設計で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:規則の表を作り始める

全国銀行協会が示す4つの場合を縦に、取引の種類を横に置き、相続センターで実際に案内している書類を書き出します。 担当者ごとに違っていた書類は、ここで1つにそろえます。

2週目:20件で試す

先月の案件20件で、表を引いて決めた書類と、実際に送った案内と、後から追加した書類を突き合わせます。後から追加した書類が表で最初から入るかを最優先で見ます。

3週目:説明文と言葉の一覧を作る

書類ごとに「どこで取るか」「何通要るか」「いつまでのものか」の説明文を書き、言い換えない言葉と、言い換える言葉の一覧を作ります。

4週目:台帳から下書きまでをつなぐ

相続の受付の台帳の登録を起点に、規則の表を引き、Azure OpenAI で相続人ごとの下書きを作るところまでを組みます。この時点では取引の一覧は担当者が入力します。

2か月目: 書類のコードの照合と、差し込みを足します。照合で止まった件数と理由を毎週数えます。3か月目以降: 勘定系と各業務のシステムへの照会を足し、1件40分が何分になったかを実測します。照合で止まる理由が「表に行が無い」から「申出が未確認」だけになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
預金の相続の手続きに必要な書類が、遺言書がある場合/遺産分割協議書がある場合/協議書が無い場合/家庭裁判所の調停調書・審判書がある場合で示されること。遺言書がある場合の検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)。協議書は法定相続人全員の署名・捺印があるもの、戸籍は出生から死亡までの連続したもの。相続の方法や内容、金融機関により必要書類が異なる場合があること全国銀行協会: 預金相続手続の必要書類について2026-10-07
法定相続情報証明制度が、一覧図と戸除籍謄本等の束を提出し、登記官が確認したうえで認証文を付した写しを無料で交付する制度であること。被相続人名義の預金の払戻し手続きなどにも使えること法務局: 「法定相続情報証明制度」について2026-10-07
民法第909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使):相続開始の時の債権額の3分の1に法定相続分を乗じた額(金融機関ごとに法務省令で定める額を限度)について、各共同相続人が単独で権利を行使できることe-Gov 法令API: 民法2026-10-07
プロンプトと応答が他の顧客や OpenAI に提供されず、提供元のモデル改善に使われないこと。モデルがステートレスであること。Global と DataZone のデプロイでの処理の場所Microsoft Learn: Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure2026-10-07
構造化出力が渡した JSON Schema にモデルを従わせること。Chat Completions API と Responses API の両方で使えること。すべての項目を required にすること、additionalProperties: false、項目は最大100・入れ子は5段まで、minItems・maxItems などが使えないこと、出力の順がスキーマの順に従うことMicrosoft Learn: How to use structured outputs with Azure OpenAI2026-10-07

どの書類を求めるか、相続人をどう確定するかは、自行の取り決めと担当者の確認によります。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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