Media > AI活用ユースケース > 品質管理 > 化学物質の規制(毒物劇物の指定・化審法・労働安全衛生法のラベル表示とSDS交付の対象)の改正情報をエージェントが毎月見回り、社内の化学物質台帳と照らして対応が要る物質を拾う

化学物質の規制(毒物劇物の指定・化審法・労働安全衛生法のラベル表示とSDS交付の対象)の改正情報をエージェントが毎月見回り、社内の化学物質台帳と照らして対応が要る物質を拾う

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

毒物劇物の指定、化審法の指定、労働安全衛生法のラベル表示・SDS交付の対象について、官公庁のページに出た改正情報をエージェントが毎月見回ります。改正の資料から対象物質と施行日を取り出し、社内の化学物質台帳と照らして、対応が要る物質の候補を拾います。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
医療/商社/建設/製造
対象部門
品質管理/研究開発
対象業務
内容確認・チェック/情報検索
主な課題
属人化している/情報が見つからない/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
エージェント
主な効果
属人化解消/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
30h/月
AI導入後
8h/月
想定削減
73%
年間削減
264h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 月初に、担当者が決まったページを順に開き、前月から増えた項目を探す
  2. 新しい政令・省令・告示・通達の資料(PDF)を開き、対象物質、施行日、何が義務になるかを書き出す
  3. 書き出した物質を、台帳でCAS番号と物質名で検索する
  4. 該当した物質について、含有する製品と含有率、取扱い場所を確かめる
  5. 影響のメモを作り、研究所・工場・営業(SDSの改訂が要る場合)に回す
  6. 施行日までの対応(ラベル、SDS、保管、届出など)を、関係部署と決める
導入後(After)
  1. 自動毎月1日と15日にワークフローが動き、決まったページを取りに行く
  2. 自動ページの中のリンクと見出しを前回と比べ、新しい項目を拾う
  3. 自動ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の一覧(Excel)が更新されていれば、前回の一覧とCAS番号で比べ、増えた物質と施行日を出す
  4. 自動新しい政令・告示・報道発表の資料(PDF)から文字を取り出す
  5. 【AI】 エージェントが資料から対象物質・施行日・規制の種類を取り出し、台帳を引いて該当の候補を挙げる
  6. 【AI】 グループ名・濃度・製剤の条件が付くものは、台帳の物質名と含有率を引いて、確かめるべき点を整理する
  7. 自動影響の一覧を、施行日の近い順に品質保証部のチャットへ出す
  8. 人担当者が候補を確かめ、該当するかを判断し、台帳に判断を記録する
  9. 人研究所・工場・営業に対応を回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 月初に、担当者が決まったページを順に開き、前月から増えた項目を探す
  2. 新しい政令・省令・告示・通達の資料(PDF)を開き、対象物質、施行日、何が義務になるかを書き出す
  3. 書き出した物質を、台帳でCAS番号と物質名で検索する
  4. 該当した物質について、含有する製品と含有率、取扱い場所を確かめる
  5. 影響のメモを作り、研究所・工場・営業(SDSの改訂が要る場合)に回す
  6. 施行日までの対応(ラベル、SDS、保管、届出など)を、関係部署と決める

(a)見回りが担当者に依存している。 どのページの、どの見出しの下に新しい項目が出るかを、担当者が覚えています。担当者が休んだ月は見回りが遅れ、異動すると見るページが変わります。 引き継ぎの資料に「毎月このページを見る」と書いても、どこまで見たかは残りません。

(b)資料から物質を拾うのに時間がかかる。 政令の改め文や告示の別表は、物質名が化学名で長く書かれ、CAS番号が付いていないこともあります。PDFを読みながら、1つずつ台帳の検索に打ち込んでいます。

(c)グループ名で指定された物質を見落とす。 「無機亜鉛塩類」のように指定されたものは、CAS番号で検索しても台帳の物質に当たりません。台帳の物質名を見て、担当者が「これは無機亜鉛塩に当たるか」を考える必要があります。 忙しい月は、ここが後回しになります。

(d)施行日までの時間が見えにくい。 公布から施行まで数か月から数年の幅があり、改正を見つけた日と、対応を始めた日と、施行日の関係が、どこにもまとまっていません。

  1. 【自動】 毎月1日と15日にワークフローが動き、決まったページを取りに行く
  2. 【自動】 ページの中のリンクと見出しを前回と比べ、新しい項目を拾う
  3. 【自動】 ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の一覧(Excel)が更新されていれば、前回の一覧とCAS番号で比べ、増えた物質と施行日を出す
  4. 【自動】 新しい政令・告示・報道発表の資料(PDF)から文字を取り出す
  5. 【AI】 エージェントが資料から対象物質・施行日・規制の種類を取り出し、台帳を引いて該当の候補を挙げる
  6. 【AI】 グループ名・濃度・製剤の条件が付くものは、台帳の物質名と含有率を引いて、確かめるべき点を整理する
  7. 【自動】 影響の一覧を、施行日の近い順に品質保証部のチャットへ出す
  8. 【人】 担当者が候補を確かめ、該当するかを判断し、台帳に判断を記録する
  9. 【人】 研究所・工場・営業に対応を回す

3番目をAIにさせないのは、意図してのことです。 一覧のファイルはCAS番号の付いた表なので、前回との差は機械の比較で確実に出せます。 数百物質をAIに読ませると、取りこぼしの有無を確かめる手段がなくなります。

8番目の判断は、すべて人が行います。 エージェントが出すのは「この物質が該当する可能性がある」という候補と、その根拠です。

02今回想定するシステム構成

構成図
厚生労働省・環境省の化学物質の規制のページ(決まったURLの一覧)
   │
   ▼【トリガー】Schedule Trigger(毎月1日・15日 8時、Asia/Tokyo)
n8n のワークフロー
   ├──▶ HTTP Request でページを取り、HTML ノードでリンクと見出しを取り出す
   ├──▶ Compare Datasets で前回のリンクの一覧と比べ、新しい項目を拾う
   ├──▶ 一覧のExcelが更新されていれば、Extract From File(XLSX)で読み、
   │      Compare Datasets で前回の一覧とCAS番号で比べる
   ├──▶ 新しいPDFは Extract From File(PDF)で文字を取り出す
   ▼
AI Agent ノード(Tools Agent)+ Claude
   │  改正情報1件ごとに、道具を選んで引く
   │   ・台帳をCAS番号で引く(Postgres)  ・台帳を物質名・別名で引く
   │   ・グループ名の対応表を引く        ・過去の判断の記録を引く
   │  Structured Output Parser で決まった形のJSONを返す
   ▼
影響の一覧(データベースの別の表)→ 品質保証部のチャットへ通知
   ▼【人】該当の判断・台帳への記録・関係部署への回付
役割想定する製品代替候補
ワークフローn8nMake、Power Automate、Zapier
生成AIClaude API(n8n の Anthropic Chat Model ノード)OpenAI API、Gemini API
連携PostgreSQL(化学物質台帳の写しと影響の一覧)MySQL
通知社内チャットメール

新しく足すのは、n8n のワークフローと、台帳の写しと影響の一覧だけです。 化学物質台帳の本体には書き込みません。毎晩、台帳の本体から写しを作り、エージェントはその写しを引きます。

ページの変化は、リンクの一覧の比較で拾います。 n8n の Compare Datasets ノードは、2つの入力を比べ、Aにだけあるもの、同じもの、違うもの、Bにだけあるものの4つに分けて出します。前回取ったリンクの一覧と今回の一覧を比べ、今回にだけあるリンクが新しい改正情報です。

一覧のExcelは、そのまま表として読みます。 厚生労働省の「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」のページには、労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の一覧がExcelで置かれています。2026年10月6日に見たときは、令和8年3月31日付け公布・令和10年4月1日施行の改正まで含む版(令和8年6月5日更新)で、施行済みのもの、令和9年4月1日施行のもの、令和10年4月1日施行のもの、未施行を含む全物質の一覧がシートに分かれていると書かれていました。Extract From File ノードには Extract From XLSX の操作があります。

台帳は、エージェントの道具として PostgreSQL のノードで引きます。 公式の説明では、Postgres ノードをAIエージェントの道具として使うと、多くのパラメーターを自動で、またはAIの指示した情報で設定できるとされています。この構成では Select と、パラメーター付きの Execute Query だけを道具にします。

n8n を選ぶ理由は、改正1件ごとに照合の仕方が変わるからです。 CAS番号の付いた改正は台帳をCAS番号で引けば済み、グループ名の指定は対応表と物質名で引き、濃度の条件が付くものは含有率まで引きます。Tools Agent は、道具の機能を理解し、タスクに応じてどの道具を使うかを決めるとされ、少なくとも1つの道具をつなぐ必要があります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎月1日と15日の朝8時に、Schedule Trigger で動かします。 題材は毎月の見回りですが、月に2回にするのは、月初に公布された改正を翌月まで知らないままにしないためです。 工数の試算は月の件数で数えているので、回数を増やしても件数は変わりません。

Schedule Trigger は、ワークフローのタイムゾーンが無ければ n8n のインスタンスのタイムゾーンを使い、セルフホストの既定は America/New York とされています。ワークフローのタイムゾーンを Asia/Tokyo にし、保存して公開(有効化)します。公開しないと、Schedule Trigger は動かないとされています。見回りの対象のページはURLの一覧として表に持ち、追加・削除は表を直すだけで済むようにします。 ワークフローの中にURLを書き込むと、担当者が替わったときに見るページが分からなくなります。第3章の(a)は、この表で解きます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
見回りのページの一覧URL、法令の区分、見る見出し自社で作る表
前回のリンクの一覧ページごとのリンクと見出しの文字前回の実行の記録
一覧のExcelラベル表示・SDS交付等の義務対象物質(CAS番号、物質名、施行日のシート)厚生労働省のページ
改正の資料政令・省令・告示・報道発表・通達のPDFとページ本文各ページのリンク先
化学物質台帳の写しCAS番号、物質名、別名、構造の分類、含有する製品と含有率、取扱い場所台帳の本体から毎晩写す
グループ名の対応表「無機亜鉛塩類」などのグループ名と、台帳の構造の分類の対応品質保証部が作る
過去の判断の記録物質ごとに、どの改正で該当・非該当と判断したか、その理由影響の一覧

質を決めるのは、下から2行目のグループ名の対応表です。 厚生労働省の毒物劇物のページでは、「有機シアン化合物」や「無機亜鉛塩類」などグループ名で規制されているものがあると注意が書かれています。台帳の物質に「無機亜鉛塩」という分類が付いていなければ、エージェントは物質名から推し量るしかありません。台帳に構造の分類の列を足し、対応表でグループ名とつなぎます。

過去の判断の記録は、同じ判断のくり返しを止めるために持ちます。 「この物質は製剤の濃度で非該当」と一度判断したものは、次の改正でも同じ根拠が使えることが多く、エージェントがそれを引いて「前回の判断」として添えます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
ページのHTML見回りのページの一覧のURLHTTP Request(GET)
リンクと見出し取ったHTMLHTML ノードで a 要素の文字とリンク先を取り出す
新しい項目前回と今回のリンクの一覧Compare Datasets(今回にだけあるもの)
一覧のExcel新しいリンクのうち .xlsx のものHTTP Request でファイルとして取り、Extract From XLSX
改正の資料新しいリンクのうち .pdf のものHTTP Request でファイルとして取り、Extract From PDF

リンクの比較は、リンク先のURLと見出しの文字の組で行います。 官公庁のページでは、同じ資料の版が上がると、URLが変わって見出しの日付だけが変わることがあります。URLだけで比べると「新しい資料」として拾い、見出しだけで比べると版の更新を見落とします。両方を持っておき、片方だけ変わったものは「更新」として拾います。

一覧のExcelは、シートごとに前回と比べます。 Compare Datasets の比べる項目をCAS番号にし、今回にだけある物質が追加、前回にだけある物質が削除、施行日の列が違うものが変更です。この差分は、エージェントを通さず、そのまま影響の照合に回します。

ページの取得は月に2回、決まったURLだけです。 サイト全体を巡回しません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. ページの共通部分を外す … メニュー、検索、フッターのリンクは毎回同じなので、比較から外します。見る見出しの下のリンクだけを残します
  2. PDFの文字が取れたかを確かめる … 画像だけのPDFは文字が取れません。取れた文字数が極端に少なければ、人に回します
  3. 一覧のExcelの列をそろえる … 版によって列名や並びが変わることがあります。CAS番号、物質名、施行日の列が見つからなければ、比較を止めます
  4. CAS番号の書き方をそろえる … 全角・半角、ハイフンの有無。台帳の側も同じ規則でそろえます
  5. 台帳の写しを確かめる … 前夜の写しが作られていなければ、照合を止めます。古い台帳で照合すると、先月登録した原料が漏れます

3番目と5番目は、止めることを選んでいます。 列がずれた一覧で比べると、全物質が「追加」に見えます。誤った大量の候補を出すより、止めて人に知らせるほうが安全です。

Step5

AIに処理させる

させるのは、改正の資料1件ごとに、対象物質と施行日と規制の種類を取り出し、台帳を引いて該当の候補を挙げることです。

させること使う道具返すもの
対象物質を取り出す-物質名、CAS番号(書かれていれば)、グループ名かどうか
施行日と規制の種類を取り出す-公布日、施行日、規制の種類(毒物・劇物の指定、第一種特定化学物質の指定、ラベル・SDSの対象の追加など)
条件を取り出す-濃度・製剤・用途などの条件の文言
台帳をCAS番号で引く台帳をCAS番号で引く一致した物質と含有する製品
台帳を物質名で引く台帳を物質名・別名で引く名前が近い物質
グループ名を照合するグループ名の対応表を引く対応する構造の分類と、その分類の物質
前回の判断を添える過去の判断の記録を引く同じ物質の前回の判断と理由

取り出しの段階では、資料に書かれた文言をそのまま写させます。 化審法の改正の報道発表では、たとえば令和6年12月13日の発表で、「UV―三二八」「メトキシクロル」「デクロランプラス」の3物質を第一種特定化学物質に指定し、使われている製品のうち輸入を禁じる製品を定める、とされています。物質名の表記も、規制の中身も、資料の言葉のまま一覧に載せます。

させないこと理由
該当・非該当の結論濃度・製剤・用途の条件の当てはめは、化学物質管理の担当者が行う
CAS番号の補完資料に無いCAS番号を記憶から書かない。誤ると別の物質を照合する
対応の決定ラベル・SDS・保管・届出のどれをどうするかは、担当者と関係部署が決める
施行日の推測資料に書かれていなければ「記載なし」
台帳の書き換え道具は読み取りだけ

2行目がいちばん起きやすい失敗です。 物質名だけが書かれた資料を渡すと、生成AIは知っているCAS番号を書き添えます。合っていることも多いのですが、異性体や塩の違いで別の番号を書くと、台帳の別の物質に当たり、本当の該当を見落とします。

Step6

指示内容を固定する

AI Agent ノードの System Message に、次のように書きます。

あなたは化学メーカーの品質保証部で、国内の化学物質の規制の改正情報を、
社内の化学物質台帳と照らす担当です。入力は、新しく見つかった改正の資料
1件(ページの本文またはPDFから取り出した文字)です。

【やること】
1. 資料から、対象物質(物質名、CAS番号、グループ名かどうか)、公布日、
   施行日、規制の種類、濃度・製剤・用途などの条件を取り出す。
2. CAS番号が書かれている物質は、台帳をCAS番号で引く。
3. CAS番号が無い物質は、台帳を物質名・別名で引く。
4. グループ名で指定されたものは、グループ名の対応表を引き、対応する
   構造の分類の物質を台帳から引く。
5. 台帳で見つかった物質は、過去の判断の記録を引き、前回の判断を添える。

【厳守事項】
- 物質名、条件、施行日は、資料に書かれた文言をそのまま写してください。
- 資料にCAS番号が書かれていないとき、CAS番号を補わないでください。
  cas_no は空にし、cas_in_source を false にしてください。
- 施行日が資料に無いときは「記載なし」としてください。推測しないでください。
- 該当する・しないの結論を書かないでください。match_basis に、
  どの道具で何が一致したかだけを書いてください。
- 濃度・製剤の条件があるときは、台帳の含有率を添え、check_points に
  担当者が確かめるべき点を書いてください。判断はしないでください。
- 化学物質の規制に関係のない資料(会議の開催案内など)と判断したときは、
  relevant を false にして、物質の取り出しをしないでください。

【出力】指定のJSONの形で返してください。

「CAS番号を補わない」と「cas_in_source」を組にしているのが、この指示の要です。 補わないよう指示するだけだと、資料にあった番号と、補った番号の区別が出力から消えます。 資料にあったかどうかを項目として持たせれば、後段の規則で、資料にCAS番号が無い物質は必ず人が見る、と決められます。

「該当の結論を書かない」も同じ考えです。 毒物劇物のページには、指定令に載っている物質の中にも、濃度等・製剤・塩などによって毒物・劇物に該当しないものがあると書かれています。この当てはめは、台帳の含有率と製品の形を知っている担当者の仕事です。

Step7

出力形式を固定する

Structured Output Parser で、次の形のJSONを返させます。

{
  "source_url": "",
  "title": "",
  "relevant": true,
  "regulation_type": "poison_deleterious | kashin_class1 | ish_label_sds | other",
  "promulgated": "", "effective": "",
  "substances": [
    {
      "name_in_source": "", "cas_no": "", "cas_in_source": true,
      "is_group": false, "conditions": "",
      "ledger_hits": [
        { "ledger_id": "", "name": "", "cas_no": "", "match_basis": "cas | name | group",
          "products": [ { "product": "", "content_pct": "" } ],
          "previous_judgment": "" }
      ],
      "check_points": [""]
    }
  ],
  "unverified": [""]
}

1つ目の理由は、match_basis で確からしさを分けられることです。 cas で一致したものは確度が高く、name と group は人が確かめる前提です。通知では、cas の一致と、それ以外を分けて出します。

2つ目は、cas_in_source で補った番号を締め出せることです。 false の物質は、ledger_hits があっても無くても、人が資料と台帳を見比べます。

3つ目は、effective で施行日の近い順に並べられることです。 第3章の(d)は、ここで解けます。

並べ順中身
1施行日まで6か月以内で、ledger_hits があるもの
2match_basis が group または name のもの
3cas_in_source が false のもの
4該当の候補が無かったもの(件数だけ)

4行目も消さずに残します。 「台帳に該当なし」も、見回りをした記録だからです。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
官公庁のページHTTP Request(GET)ページ、Excel、PDFを取る
化学物質台帳の写しPostgres ノード(Select、パラメーター付きの Execute Query)CAS番号・物質名・構造の分類で引く
Claude APIAnthropic Chat Model ノード資料からの取り出しと照合の整理
影響の一覧Postgres ノード(Insert)エージェントの出力と人の判断
社内チャット通知並べ順のとおりに一覧を出す

影響の一覧への書き込みは、ワークフローの側で行います。 エージェントの道具には Insert を含めず、台帳の写しを引く Select と Execute Query だけを渡します。Execute Query では、$1 のようなパラメーターに値を渡す形を使います。公式の説明では、クエリパラメーターのデータは n8n が無害化し、SQL インジェクションを防ぐとされています。資料の文字をそのまま問い合わせに埋め込まないでください。

Step9

人が確認する

  1. 施行日の近いものから見る … 6か月以内のものは、その日のうちに該当を判断します
  2. cas の一致を確かめる … 台帳の物質と資料の物質が同じかを、CAS番号と名前の両方で見ます
  3. name と group の候補を判断する … 濃度・製剤・塩の条件を、台帳の含有率と製品の形に当てはめます。ここが担当者の仕事の中心です
  4. cas_in_source が false の物質を、資料で確かめる … 資料の物質名から、台帳の物質と同じかを見ます
  5. 判断を記録する … 該当・非該当と理由を、影響の一覧に残します。次の改正で、エージェントが前回の判断として引きます
  6. 関係部署に回す … 研究所・工場・営業に、施行日と対応の要否を伝えます

3番目を省かないでください。 グループ名の照合は、エージェントが候補を広めに挙げる作りです。候補に挙がったことは、該当することを意味しません。

目標は、1件をならして20分です。 取り出しと照合の結果の確認に8分、グループ名・濃度の条件の判断に8分、メモの確認と回付に4分という見込みです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
ページが取れないそのページを「本日取得なし」として通知。前回の一覧を今回とみなさない
ページの作りが変わり、リンクが大量に「新しい」と出る新しいリンクが決めた件数を超えたら比較を止め、人に回す
PDFが画像だけで文字が取れない人に回す。資料の題名だけを一覧に載せる
一覧のExcelの列が見つからない比較を止め、人に回す
台帳の写しが古い照合を止める
資料が規制に関係ないrelevant が false。件数だけ記録する
同じ物質が複数の資料に出る物質ごとにまとめ、どの資料に出たかを並べる
エージェントの出力がスキーマに合わない資料の題名とURLだけを一覧に載せ、人に回す

上から2行目は、官公庁のページの模様替えのときに起きます。 メニューや見出しの作りが変わると、すべてのリンクが新しく見えます。件数の上限を決めておき、超えたら止めるのが、誤った候補を大量に出さないための仕組みです。

Step11

記録を残す

  • 実行ごとの、ページのリンクの一覧と、取得の成否
  • 新しく拾った項目と、取ったExcel・PDFのファイル
  • 一覧のExcelの、前回との差分(追加・削除・施行日の変更)
  • エージェントのJSON出力と、呼んだ道具の順番
  • 担当者の判断 … 物質ごとの該当・非該当と理由、判断した日
  • 改正を見つけた日と、施行日と、対応を終えた日

最後の行が、この構成の物差しです。 施行日の何か月前に見つけ、何か月前に対応を終えたかを並べると、見回りが遅れているのか、社内の対応が遅れているのかが分かれて見えます。

04実装レベルの3段階

最小構成:資料と台帳の行を生成AIの画面に貼る / 1件ごとの取り出しと照合の候補
半自動化:上記+n8n でページの変化を拾い、一覧のExcelを前回と比べ、台帳とCAS番号で照合する / 見回りと、CAS番号での照合
本格構成:上記+エージェントによる資料からの取り出し、物質名・グループ名の照合、前回の判断の添付 / 見回りから照合の候補まで

半自動化だけでも、①の見回りの時間はほぼ無くなります。 ページの比較と一覧のExcelの差分は、AIを使わずに組めます。残るのは、PDFの資料を読んで物質を拾う②と、名前とグループ名での照合です。 本格構成で減るのは、その②と③です。 段階を飛ばさず、半自動化の見回りを2〜3か月回して、拾った項目に漏れが無いかを担当者のこれまでの見回りと比べてから、エージェントを足してください。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
24 件
1件あたり現在時間
75 分
1件あたり導入後時間
20 分
現在  24件 × 75分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 24件 × 20分 ÷ 60 = 8 時間/月
月間削減時間
22h
削減率
73%
年間削減時間
264h
年間金額換算(時間単価4,000円)
106万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 原料・試薬・製品の成分として数千の化学物質を扱い、CAS番号付きの化学物質台帳を持っている化学・樹脂・塗料・接着剤などのメーカーや、化学品を扱う商社。毒物劇物の指定、化審法の指定、労働安全衛生法のラベル表示・SDS交付の対象の追加を、品質保証や研究所の担当者が官公庁のページを見て追いかけている場合。担当者が1〜2名に限られ、その人の休みや異動で見回りが止まる心配がある場合。
向いていない
  1. 扱う化学物質が数十種類で、改正のたびに担当者が台帳を全部見ても負担にならない場合。化学物質台帳が無い、またはCAS番号が入っていない場合(先に台帳の整備が要ります)。規制情報の配信サービスを契約し、台帳との照合まで提供を受けている場合。なお、ある物質が規制に該当するかの最終の判断や、どの対応を取るかの決定は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去1年の改正の資料から、5件を選ぶ(グループ名で指定されたものと、濃度の条件が付いたものを1件ずつ入れる)
  2. 台帳から、関係しそうな物質の行を書き出す(CAS番号、物質名、別名、含有率)
  3. 生成AIの画面に、資料の本文と台帳の行を貼り、「資料から対象物質・施行日・条件を書かれたまま取り出し、台帳の行と照らして一致の候補を挙げてください。CAS番号を補わず、該当の結論は書かないでください」と指示する
  4. 出てきた候補を、当時の担当者の判断と比べる
出てきた内容判断
当時の判断と同じ候補が出たワークフローを組む段階に進む
CAS番号を補った指示の書き方で直る。cas_in_source を持たせる構成で進める
グループ名の候補が出ない台帳に構造の分類が無い。 対応表と分類の列が先

3行目が出ることは珍しくありません。 その場合は、扱いの多いグループ名から、台帳に分類の列を足してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
エージェントがCAS番号を補う指示で禁じ、cas_in_source を持たせる
グループ名の指定を見落とす台帳に構造の分類の列と、グループ名の対応表を持たせる
該当の結論をAIに出させてしまうmatch_basis だけを書かせる。結論は人
ページの模様替えで全リンクが新しく見える新しいリンクの件数に上限を置き、超えたら止める
資料の版の更新を見落とすURLと見出しの両方で比べる
一覧のExcelの列が版で変わる列が見つからなければ止める
画像だけのPDFで文字が取れない文字数で判定し、人に回す
古い台帳で照合する写しが作られていなければ止める
資料の文字をSQLに埋め込むパラメーター付きの Execute Query を使う
月1回では公布から知るまでが長い月2回動かす。件数の数え方は変えない

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「照合の候補」と「該当の判断」の境目の問題です。AIが拾い、人が決める、の線を出力の形で守ってください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 化学物質台帳(どの製品にどの物質が何%含まれるか)、取扱い場所、過去の判断です。製品の配合は、自社の技術そのものです。

  1. AIに渡す範囲を絞る … 照合に要るのは、CAS番号、物質名、構造の分類と、該当の候補になった物質の含有率だけです。台帳の全件を一度に渡さず、道具で必要な行だけを引かせます
  2. 配合の情報を外部の生成AIへ渡してよいかを先に決める … 生成AIのAPIの利用条件と、自社の情報管理の規程で確かめます
  3. 該当の判断と対応は人が行う … この構成が出すのは候補と根拠です。最終の判断は、化学物質管理の担当者が、法令と行政の資料に照らして行ってください
  4. 台帳に書き込ませない … エージェントの道具は読み取りだけにし、判断の記録はワークフローの側で書きます
  5. 官公庁のページへの負荷を抑える … 決まったURLだけを月2回取ります

誤りが起きた場合のリスクは、該当する物質を見落とすことと、該当しない物質で対応を急ぐことの2つです。 前者はCAS番号の補完とグループ名の見落としで起き、後者は候補を結論として扱うと起きます。

10まず何から始めるか

1週目:見回りのページの表を作る

担当者3名に、毎月見ているページと見出しを書き出してもらい、1つの表にします。この表ができた時点で、第3章の(a)の半分は解けています。

2週目:5件で試す

第8章の手順で、過去の改正5件の取り出しと照合をさせます。CAS番号を補っていないかと、グループ名の候補が出るかを見ます。

3週目:台帳を整える

台帳の写しを毎晩作る仕組みを用意し、扱いの多い原料から構造の分類の列を埋め、グループ名の対応表を作ります。

4週目:見回りと一覧のExcelの差分を n8n で動かす

ページの比較と一覧のExcelの差分、CAS番号での照合までを組みます。エージェントはまだ入れず、拾った項目を担当者の見回りと2〜3か月比べます。

それ以降: エージェントを足し、改正を見つけた日・施行日・対応を終えた日を毎月並べます。施行日の6か月前までに対応を終えられる改正が大半になった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の一覧がExcelで公開され、令和8年3月31日付け公布・令和10年4月1日施行の改正まで含む版(令和8年6月5日更新)で、施行済み・令和9年4月1日施行・令和10年4月1日施行・全物質の一覧がシートに分かれていること。改正政令・省令・告示・通達の資料がページに並んでいること(原文を取得して確認)厚生労働省: 化学物質による労働災害防止のための新たな規制について2026-10-06
毒物・劇物の定義。指定令に載っている物質でも濃度等・製剤・塩などによって該当しないものがあること、「有機シアン化合物」「無機亜鉛塩類」などグループ名で規制されているものがあること。物質名またはCAS番号で検索できるシステムが案内されていること厚生労働省: 毒物劇物の定義、検索、有害性情報2026-10-06
令和6年12月13日の発表で、「UV―三二八」「メトキシクロル」「デクロランプラス」を化審法の第一種特定化学物質に指定し、使われている製品のうち輸入を禁じる製品を定めるとされたこと。第一種特定化学物質に、製造・輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入禁止等が規定されていること厚生労働省: 化審法施行令の一部を改正する政令の閣議決定2026-10-06
Schedule Trigger が、ワークフローのタイムゾーンかインスタンスのタイムゾーン(セルフホストの既定は America/New York)を使うこと。保存して公開しないと動かないこと。月単位の間隔を指定できることn8n Docs: Schedule Trigger2026-10-06
HTML ノードの Extract HTML content が、CSS セレクターで属性・テキストなどを取り出せることn8n Docs: HTML2026-10-06
Compare Datasets ノードが2つの入力を比べ、Aにだけあるもの・同じもの・違うもの・Bにだけあるものに分けて出すことn8n Docs: Compare Datasets2026-10-06
Extract From File ノードに Extract From XLSX と Extract From PDF の操作があることn8n Docs: Extract From File2026-10-06
Postgres ノードの操作(Delete、Execute Query、Insert、Insert or Update、Select、Update)。AIエージェントの道具として使えること。クエリパラメーターのデータが無害化され SQL インジェクションを防ぐことn8n Docs: Postgres2026-10-06
Tools Agent が道具の機能を理解して使う道具を決めること。少なくとも1つの道具をつなぐ必要があることn8n Docs: Tools Agent2026-10-06

ある物質が規制に該当するかは、法令と行政の資料、必要に応じて都道府県の窓口で確かめてください。 本記事は確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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