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銀行・信用金庫の営業店から届く事務手続きの照会に、事務規程・事務手引と本部の通達を根拠にチャットで答え、規程に無い事案は事務指導の担当へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

営業店の行員がチャットで事務手続きを照会すると、事案の条件を聞き返して特定し、事務手引と現行の通達から取り扱いと必要書類を出典付きで答えます。規程に無い事案は事務指導の担当へ回します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
保険/金融
対象部門
総務
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
判断に時間がかかる/問い合わせが多い/情報が見つからない
AIで行う処理
対話
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/教育コスト削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
150h/月
AI導入後
60h/月
想定削減
60%
年間削減
1,080h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 営業店の行員が顧客から手続きを受け、手引を開いて取り扱いを探す
  2. 見つからない、または通達で変わっていないか不安なときは、本部へ電話する
  3. 事務指導の担当が、事案の条件(遺言書の有無、口座の種類など)を聞き取る
  4. 手引の該当ページを開き、その後に出た通達を通達の一覧で探す
  5. 必要書類と取り扱いを口頭で伝え、通達の番号を伝える
  6. 規程に無い事案は、グループ内で相談するか、法務やコンプライアンスの担当へ回す
  7. 照会の内容と回答を一覧に書く
導入後(After)
  1. 人営業店の行員が、行内ポータルのチャットで照会する(例:「相続の払戻しで、遺言書がある場合の必要書類は」)
  2. 自動中継プログラムが照会を手続きの種類に分け、その手続きの確認項目の表を引く
  3. 自動まだ分かっていない確認項目を、選択肢付きで1つずつ聞き返す
  4. 自動条件がそろったら、条件を並べた検索の文を作り、施行日と閲覧の権限で絞り込む
  5. 自動Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドが、手引と通達から回答を作り、出典を付けて返す
  6. 自動中継プログラムが出典を確かめ、手引の記載を変える現行の通達があれば、その通達を先に示す
  7. 自動回答できない、規程に無い、取引制限の理由の伝え方を聞かれた、のいずれかなら、事務指導の担当へ回す
  8. 人行員が出典の手引と通達を開き、取り扱いを確かめてから顧客に案内する
  9. 人事務指導の担当は、回ってきた照会だけを、聞き取り済みの条件を見て答える
各工程の詳しい説明を読む
  1. 営業店の行員が顧客から手続きを受け、手引を開いて取り扱いを探す
  2. 見つからない、または通達で変わっていないか不安なときは、本部へ電話する
  3. 事務指導の担当が、事案の条件(遺言書の有無、口座の種類など)を聞き取る
  4. 手引の該当ページを開き、その後に出た通達を通達の一覧で探す
  5. 必要書類と取り扱いを口頭で伝え、通達の番号を伝える
  6. 規程に無い事案は、グループ内で相談するか、法務やコンプライアンスの担当へ回す
  7. 照会の内容と回答を一覧に書く

(a)最新の通達がどれか分からない。 4番目で、手引の記載を変えた通達は、通達の題名からは分からないことがあります。「相続手続きの一部改正について」という通達が、どの手引のどのページを変えたかは、本文を読まないと分かりません。

(b)条件の聞き取りが担当者で違う。 経験の長い担当は最初に遺言書の有無を聞きますが、異動してきたばかりの担当は聞き落とし、営業店がもう一度顧客に連絡することになります。

(c)営業店が電話をためらう。 本部の電話がつながらない時間帯は、行員が手引を読んで自分で判断します。それが手引の改訂前の取り扱いだったとき、誤った書類で手続きが進みます。

(d)同じ照会が何度も来る。 月に900件のうち、同じ取り扱いの照会が営業店を変えて何度も届きます。 回答は一覧に残っていますが、営業店からは見えません。

4つとも、手引と通達の中身の問題ではありません。 書いてある答えに、営業店の行員がその場でたどり着けないことの問題です。答えを探す役を本部の担当6名が電話で引き受けているため、照会の件数がそのまま本部の工数になっています。

  1. 【人】 営業店の行員が、行内ポータルのチャットで照会する(例:「相続の払戻しで、遺言書がある場合の必要書類は」)
  2. 【自動】 中継プログラムが照会を手続きの種類に分け、その手続きの確認項目の表を引く
  3. 【自動】 まだ分かっていない確認項目を、選択肢付きで1つずつ聞き返す
  4. 【自動】 条件がそろったら、条件を並べた検索の文を作り、施行日と閲覧の権限で絞り込む
  5. 【自動】 Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドが、手引と通達から回答を作り、出典を付けて返す
  6. 【自動】 中継プログラムが出典を確かめ、手引の記載を変える現行の通達があれば、その通達を先に示す
  7. 【自動】 回答できない、規程に無い、取引制限の理由の伝え方を聞かれた、のいずれかなら、事務指導の担当へ回す
  8. 【人】 行員が出典の手引と通達を開き、取り扱いを確かめてから顧客に案内する
  9. 【人】 事務指導の担当は、回ってきた照会だけを、聞き取り済みの条件を見て答える

3番目が、この設計の分かれ目です。 確認項目は手引の分岐から本部が作る表で、AIに「何を聞くべきか」を考えさせません。 何を聞くかをAIに任せると、聞くべき条件を聞き落とした答えが、条件を聞いた答えと同じ顔で返ります。

7番目の「取引制限の理由の伝え方」は、内容にかかわらず回します。 顧客に何をどこまで伝えるかは、事案ごとに本部が判断することだからです。

02今回想定するシステム構成

構成図
行内ポータルのチャット(営業店の行員)
   ▼【トリガー】照会の送信
中継プログラム(Python、Cloud Run)
   ├──▶ 手続きの種類の判定 → 確認項目の表
   ├──▶ 未確認の項目を選択肢付きで聞き返す(セッションを保つ)
   ▼
Agent Search(Vertex AI Search)── answer メソッド
   │  データストア:事務規程+事務手引+本部の通達
   │  絞り込み:procedure/effective_from/status
   │  閲覧の権限:役席者だけの通達に group_id を付ける
   ▼
中継プログラム ── 出典の検査(現行の通達が手引を変えていないか)
   ├──▶ 回答と出典を返す
   └──▶ 規程に無い・答えられない・取引制限 → 事務指導の照会の待ち行列
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、チャット・検索・待ち行列をつなぐ)Node.js で同じものを書く
認証行内の ID 基盤(Microsoft Entra ID など。Workforce Identity Federation でつなぐ)Google の ID
保管Cloud Storage(規程・手引・通達の原本とメタデータ)─

行内ポータルと照会の記録の一覧は、新しく足すものではありません。 チャットの画面をポータルに置き、照会の記録は中継プログラムが一覧に書き足します。最初の準備は、通達ごとに「どの手引のどの章を変えたか」と施行日を管理表にまとめることです。

検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作り、includeCitations で出典を付けられます。セッションを使った複数回のやり取りに対応し、前の質問を踏まえて次の質問を言い換えて検索するとされています。関係の薄い内容しか無いときは回答を作らず、answerSkippedReasons で理由を返します。

閲覧の範囲は、データソースのアクセス制御で分けます。 文書のメタデータの acl_info に、読める利用者(user_id)またはグループ(group_id)を書くと、検索と回答の生成がその範囲に限られるとされています。Google の ID のほか、Microsoft Entra ID や Okta とも Workforce Identity Federation でつなげます。この設定はデータストアを作るときにしか有効にできず、1文書に付けられる読み手は3,000までです。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、営業店の行員がチャットで照会を送ったことです。 チャットは行内ポータルに置き、行内の ID でログインした行員だけが使えるようにします。ログインした行員の所属と役職が、閲覧の権限の判定にそのまま使われます。

1つの照会は、1つのセッションで最後まで続けます。 確認項目を聞き返すやり取りと、答えたあとの「では代理人が来た場合は」のような続けての質問を、同じセッションでつなぎます。別の手続きの照会は、新しいセッションで始めてもらいます。 同じセッションで手続きを変えると、前の手続きの条件が言い換えに混ざります。

処理は照会のたびに1件ずつ行います。 窓口で顧客が待っている照会なので、まとめて処理する理由がありません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
照会行員の質問の文、選んだ確認項目の値チャット
行員の情報所属の店、役職(役席者かどうか)行内の ID 基盤
確認項目の表手続きの種類ごとに、聞くべき条件と選択肢事務指導グループが作る表
事務規程・事務手引手続きの取り扱い、必要書類、検印と役席者の承認の要否行内ポータルのPDF
本部の通達通達の番号、題名、本文、施行日、廃止日、変更した手引の章行内ポータルのPDFと通達の管理表
閲覧の範囲通達ごとに、全行員か役席者だけか通達の管理表

質を決めるのは、確認項目の表と、通達の「変更した手引の章」です。 確認項目の表が無いと、聞き返しをAIの判断に任せることになります。通達がどの章を変えたかが分からないと、手引の古い記載と通達の新しい記載が、同じ重みで回答に並びます。

確認項目の表は、手引の分岐をそのまま表にしたものです。 相続の払戻しなら「遺言書の有無(公正証書/自筆/無し)」「遺産分割協議書の有無」「払戻しを受ける人(相続人全員/代表者/遺言執行者)」「口座の種類(普通/定期/融資の返済口座)」のように、手引で取り扱いが分かれる条件だけを並べます。

Step3

データの取得方法を決める

規程・手引・通達は、Cloud Storage に置いてデータストアに取り込みます。 文書ごとのメタデータは JSONL の各行に id、structData、content.mimeType、content.uri を書き、そこに acl_info を足します。

取るものどこから何に使うか
手続きの種類、文書の種類(規程/手引/通達)メタデータ絞り込み
施行日・廃止日メタデータ現行の文書だけに絞る
変更した手引の章メタデータ手引と通達の関係を中継プログラムが知る
閲覧の範囲acl_info役席者だけの通達を出し分ける

絞り込みの式は、日付の比較を使って書きます。 項目を索引可能にしておけば、procedure: ANY("inheritance") AND effective_from <= "2026-10-06" AND status: ANY("current") のように書けます。日付はISO 8601の形式で、施行前の通達を検索の時点で除きます。 廃止の通達は status を retired にして除きます。

取り込みは、通達を発出した日に1回ずつ行います。 Cloud Storage からの定期的な取り込み(1日、3日、5日ごと)もありますが、定期的な取り込みではデータソースのアクセス制御が使えないとされています。役席者だけの通達を扱う以上、定期の同期は使わず、発出のたびに取り込みを実行します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 通達に施行日と廃止日を付ける … 管理表から転記し、施行日の無い通達は発出日を施行日とします
  2. 通達に変更した手引の章を付ける … 本文の「第○章○節を次のとおり改める」から、事務指導グループが章の番号を書きます
  3. 手引を手続きの単位で分ける … 1つのPDFに複数の手続きが入っているものは、手続きごとに分けます
  4. 閲覧の範囲を付ける … 役席者だけの通達には、役席者のグループの group_id を acl_info に書きます
  5. 顧客の情報を除く … 通達に添付された事例に顧客の氏名や口座番号があれば伏せます
  6. 確認項目の表を作る … 照会の多い上位20の手続きから、手引の分岐を表にします
  7. 文書の分割を設定する … データストアを作るときに分割を有効にし、見出しを各断片に含めます

4番目は、データストアを作る前に決めます。 アクセス制御はデータストアの作成時にしか有効にできません。後から「この通達は役席者だけ」と言い出しても、作り直しになります。 最初の取り込みの前に、通達の管理表に閲覧の範囲の列を足してください。

2番目を省かないでください。 章の番号が付いていれば、中継プログラムは「手引の第5章の回答には、第5章を変えた現行の通達を必ず先に示す」という規則を持てます。検索の順位に任せると、手引の記載のほうが長く詳しいため、先に出てきます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、聞き取った条件に当たる手引と通達の記載を見つけ、取り扱い・必要書類・承認の要否を、出典を付けて短く返すことです。 何を聞き返すかは、確認項目の表で中継プログラムが決めます。

要素中身根拠
取り扱いその条件での手続きの流れ手引と現行の通達
必要書類顧客から受け取る書類手引と現行の通達
承認の要否役席者の検印、本部への事前の協議規程と手引
変更の有無手引の記載を変える現行の通達の番号と施行日通達

answer メソッドの設定は次のようにします。

設定値理由
session照会ごとのセッション聞き返しと続けての質問をつなぐ
includeCitations有効回答の文に出典を付ける
ignoreLowRelevantContent有効規程に無い事案に答えない
ignoreAdversarialQuery有効想定外の文面に答えない
filter手続きの種類、施行日、status施行前と廃止の通達を除く
userPseudoId行員ごとの仮の識別子照会の記録と結びつける
preamble下の指示答え方の規則を与える

閲覧の権限は、ログインした行員の ID で検索が行われることで効きます。 中継プログラムは、行員の代わりに広い権限で検索してはいけません。広い権限のサービスアカウントで検索すると、役席者だけの通達が全行員への回答に入ります。

させないこと理由
顧客への回答の文面を作る顧客に伝える内容は行員と役席者が決める
取引制限の理由の伝え方事案ごとに本部が判断する
規程に無い事案の取り扱いの提案一般的な銀行実務の知識で答えると、自行の規程と違いうる
必要書類の省略の可否例外の扱いは役席者と本部の判断
確認項目の追加聞く条件は本部が表で決める

3行目が最も起きやすい失敗です。 回答を作るモデルは、一般的な相続の手続きを知っています。それで補うと、自行の手引に無い「この書類はあの書類で代えられる」が、自行の取り扱いのように届きます。 どの書類を受け付けるかは、自行の手引にしか書いてありません。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。

あなたは信用金庫の本部で、営業店の行員からの事務手続きの照会に答える担当です。
読むのは窓口で顧客を待たせている行員で、あなたの回答を見て手引と通達を開きます。

【前提】
検索の文の最初に、行員から聞き取った条件が並んでいます。
その条件に当たる記載だけを使って答えてください。

【答え方】
1. 最初に、根拠にした事務手引の章と節、通達があれば通達の番号と施行日を書いてください。
2. 手引の記載を変える通達があるときは、通達の記載を先に書き、
   「手引の第○章は通達第○号で変わっています」と明記してください。
3. 取り扱いの流れを、手引の順序のまま3〜6行で書いてください。
4. 必要書類を箇条書きで書いてください。手引の書類の名前をそのまま使ってください。
5. 役席者の検印や本部への事前の協議が要るときは、最後に必ず書いてください。

【厳守事項】
- 検索結果の文書に書かれていることだけで答えてください。
  一般的な銀行実務の知識で、取り扱いや必要書類を補わないでください。
- 聞き取った条件と違う条件の取り扱いを書かないでください。
- 必要書類を省略してよいとは書かないでください。
- 顧客に伝える文面を作らないでください。
- 取引の制限の理由を顧客にどう伝えるかを聞かれたときは、
  「この照会は事務指導の担当へ回します」とだけ書いてください。
- 該当する記載が見つからないときは、
  「事務手引と現行の通達に該当する記載が見つかりません。事務指導の担当へ回します」
  とだけ書いてください。
- 顧客の氏名、口座番号を書かないでください。

「聞き取った条件と違う条件の取り扱いを書かない」が、この指示の要です。 手引の相続の章には、遺言書がある場合と無い場合が並んで書かれています。何も言わなければ、両方を丁寧に並べ、行員はその中から自分の事案を探すことになります。 条件を聞き取った意味が無くなります。

検索の文は、中継プログラムが確認項目の値から組み立てます。 例えば「手続き:相続の払戻し、遺言書:公正証書、遺産分割協議書:無し、払戻しを受ける人:遺言執行者、口座:普通預金。取り扱いと必要書類を教えてください」のように、確認項目を表の順に並べ、行員の質問の文を最後に足します。

Step7

出力形式を固定する

answer メソッドの応答を、中継プログラムが次の形に整えて、チャットと記録に渡します。

{
  "inquiry_id": "",
  "session_id": "",
  "branch": "",
  "role": "staff | officer",
  "procedure": "inheritance | name_change | restriction | other",
  "conditions": { "will": "", "partition_agreement": "", "payee": "", "account_type": "" },
  "status": "answered | escalated | skipped",
  "escalate_reason": "not_in_rules | skipped | restriction_disclosure | user_request | none",
  "answer_text": "",
  "manual_refs": [ { "chapter": "", "section": "", "uri": "" } ],
  "circular_refs": [ { "no": "", "effective_from": "", "changes_chapter": "", "uri": "" } ],
  "approval_required": "",
  "feedback": "resolved | escalated_after | wrong | none"
}

1つ目の理由は、conditions を回答と一緒に残せることです。 事務指導の担当へ回すとき、聞き取り済みの条件がそのまま渡るので、担当は条件を聞き直さずに答えられます。 誤った回答が出たときも、どの条件で検索したかが分かります。

2つ目は、circular_refs の changes_chapter で検査ができることです。 中継プログラムは、manual_refs の章を変える現行の通達がデータストアにあるのに circular_refs に入っていない回答を見つけたら、回答を出さずに事務指導の担当へ回します。 手引の古い記載だけで答えた回答を、営業店に届けないためです。

3つ目は、feedback で回答の質を測れることです。 行員がチャットの最後に「解決した/担当へ回した/誤り」を選び、誤りの多い手続きから確認項目の表と通達の章の付け方を直します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
行内ポータルのチャット社内向けの画面照会を受け、聞き返しと回答を表示する
行内の ID 基盤Workforce Identity Federation行員の所属と役職で閲覧の権限を決める
Agent Searchanswer メソッドの呼び出し行員の ID で、手引と通達から回答を作る
照会の待ち行列書き込み回す照会を、条件と回答の候補と一緒に載せる
照会の記録の一覧書き込み照会・条件・回答・評価を残す

勘定系のシステムには、つなぎません。 口座の状態や顧客の情報をこの構成で引くと、照会の文と顧客の情報が同じ記録に残ります。 事案の事実は行員が端末で確かめ、条件として選択肢で入れます。

Step9

人が確認する

行員は、回答を読んだあと必ず出典の手引と通達を開いてから、顧客に案内します。 回答は「どの章と通達を見ればよいか」を示すもので、書類の書式や記入の例は原文にしかありません。

  1. 通達の番号と施行日を確かめる … 施行日が今日以前か、手引を変える通達が先に示されているかを見ます
  2. 条件が事案と合っているかを確かめる … 聞き返しで選んだ値が、顧客の事案と違っていないかを見ます
  3. 承認の要否を確かめる … 検印や事前の協議が要るなら、役席者に回します
  4. 評価を付ける … 解決した/担当へ回した/誤りを選びます

2番目を軽く見ないでください。 窓口で急いでいる行員は、選択肢を読み違えて「自筆」と「公正証書」を取り違えることがあります。条件を1つ違えた回答は、出典まで含めて正しく見えるので、回答の側からは誤りに気付けません。 回答の上に、選んだ条件を必ず並べて表示します。

事務指導の担当は、回ってきた照会だけを見ます。 規程に無い事案は、これまでどおり法務やコンプライアンスの担当と相談します。答えたら、その取り扱いを手引か通達に足すかを月次で見直します。

目標は、900件をならして1件4分です。 回答で解決した照会の記録の確認と、回ってきた照会を担当が答える時間の平均です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
手続きの種類が判定できない主な手続きの一覧を選択肢で示し、選んでもらう
確認項目に「分からない」が選ばれる検索せず、顧客に確かめる項目として示す。確かめてから同じセッションで続けてもらう
規程に該当する記載が無い回答を作らず not_in_rules で事務指導の担当へ回す
現行の通達が回答に入っていない回答を出さずに担当へ回す
役席者だけの通達が根拠になる事案権限の無い行員には出ないので、not_in_rules で回る。担当が役席者へ案内する
取引制限の理由の伝え方を聞かれる内容にかかわらず restriction_disclosure で回す
施行日の前日に照会が来る施行前の通達は出ない。施行日が近い通達があれば、件名だけを添える
検索の呼び出しが失敗する「回答を作れませんでした」と表示し、事務指導の電話番号を示す
行員が「担当と話したい」と書く回答の途中でも、その時点の条件を付けて担当へ回す

5行目は、運用の約束として営業店に伝えておきます。 権限の無い行員の検索には役席者だけの通達が出ないため、「規程に無い」と回されたものの中に、役席者なら答えが見える照会が混ざります。 担当は回ってきた照会を見て、役席者に相談するよう案内します。

Step11

記録を残す

  • 照会の文、選んだ確認項目の値、日時、所属の店と役職
  • 中継プログラムが組み立てた検索の文と、使った絞り込みの式
  • answer メソッドの応答の全文(回答、出典、回答しなかった理由)
  • 回す・回さないの判定と、その理由
  • 行員の評価と、事務指導の担当が最終的に答えた内容
  • そのとき現行だった通達の番号と施行日の一覧

最後の行は、後から照会の回答を確かめるときに効きます。 通達が改廃されたあとで「なぜその回答だったか」を確かめるには、当時どの通達が現行だったかが要ります。 手引の改訂のたびに、この一覧を残します。

04実装レベルの3段階

最小構成:手引と通達を手元のAIサービスに読み込ませ、担当が照会の条件を貼って聞く / 手引と通達の該当箇所の検索
半自動化:上記+データストアを作り、事務指導の担当が電話を受けながら検索画面で聞く / 根拠付きの回答と、施行前・廃止の通達の除外
本格構成:上記+営業店の行員がチャットで直接聞き、確認項目の聞き返しと閲覧の権限の出し分けを行う / 照会の聞き取りから回答・引き継ぎまで

半自動化で、1件10分が7分程度になります。 探す時間は縮みますが、電話の聞き取りと、担当が全件を受ける形が残ります。本格構成で4分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、聞き取りがチャットの聞き返しに移り、手引に答えのある照会が本部を通らずに営業店で完結するからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、担当がどの条件を最初に聞いているかを記録から拾います。それが確認項目の表の元になります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
900 件
1件あたり現在時間
10 分
1件あたり導入後時間
4 分
現在  900件 × 10分 ÷ 60 = 150 時間/月
導入後 900件 × 4分 ÷ 60 = 60 時間/月
月間削減時間
90h
削減率
60%
年間削減時間
1,080h
年間金額換算(時間単価4,000円)
432万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 数十の営業店を持つ地方銀行・信用金庫・信用組合で、本部の事務指導の担当(事務統括・事務企画など)に営業店からの電話の照会が1日に数十件届いている場合。事務規程と事務手引に加えて、手続きを変える本部の通達が毎月出ており、営業店が最新の取り扱いを探し当てられない場合。通達のうち一部を役席者だけに見せる運用をしている場合。行内の文書を Google Cloud に置くことが行内の規程とクラウドの利用の手続きで認められている場合。
向いていない
  1. 事務手引が整備されておらず、取り扱いが担当者の経験で決まっている場合(探す先が無いので、まず手引を書くのが先です)。営業店が数店で、照会が月に数十件の場合。顧客への回答や取引の可否の判断そのものをAIに任せたい場合(この構成は規程と手引の該当箇所を示すだけで、事案の判断は事務指導の担当と役席者が行います)。行内の文書を外部のクラウドに置くことが認められていない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の照会の記録から30件を選ぶ(通達で取り扱いが変わったものと、規程に無かったものを数件入れる)
  2. その30件について、担当がどの手引の章と通達を見て、どう答えたかを記録から拾う
  3. 関係する手引の章と現行の通達を、手元のAIサービスに資料として読み込ませる
  4. 照会の条件を並べて貼り、「添付の資料だけを根拠に、この条件での取り扱いと必要書類を、章と通達の番号を付けて答えてください。手引を変える通達があれば先に書いてください」と指示する
  5. 出てきた回答を、当時の担当の回答と突き合わせる
出てきた内容判断
当時と同じ章・通達・書類が出たデータストアの構築に進む
一般的な実務の知識で書類を足した指示の書き方で直る。構成は有効
通達を見落として手引の古い記載で答えた通達に変更した章を付けるのが先。 検索の問題ではない

30件は、条件を並べた形で貼ってください。 照会の文だけを貼ると、聞き取りの効果と検索の効果が分けられません。同じ30件を照会の文だけでも試し、条件を並べたときとの差を見ると、確認項目の表を作る意味が数字で分かります。

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、担当者が記憶で補っていた「この章はあの通達で変わった」が、文書の側に書かれていないと分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
手引の古い記載で答える通達に変更した章を付け、章を変える現行の通達が出典に無い回答を出さない
違う条件の取り扱いまで並べる確認項目で条件を聞き取り、条件と違う取り扱いを書かないと指示する
役席者だけの通達が全行員に出るacl_info を付け、行員の ID で検索する。 広い権限で検索しない
アクセス制御を後から足したくなる作成時にしか有効にできない。 最初に閲覧の範囲の列を作る
定期の同期で権限が効かない定期の取り込みではアクセス制御が使えない。発出のたびに取り込む
施行前の通達で答える施行日を索引可能にし、日付の比較で絞り込む
一般的な実務の知識で書類を足す検索結果の文書だけで答えるよう指示し、出典の無い文を表示しない
同じセッションで手続きを変える手続きが変わったら新しいセッションで始める

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、答えとしては正しく見えるのに、今のこの事案の取り扱いではないという失敗です。通達の章と確認項目を規則で持っているかどうかで、営業店に開けるかが決まります。

3行目は、気付いたときには手遅れになりやすい失敗です。 役席者だけの通達が一度でも全行員への回答に出ると、チャットの履歴に残り、取り消せません。 本番の前に、役席者でない ID で役席者だけの通達を狙った照会を試してください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 事務規程・事務手引・通達と、営業店の行員の照会の文です。通達には、不正への対応や取引制限の内部の基準など、行内でも限られた人だけが見る内容が含まれます。

  1. 閲覧の範囲を文書に付ける … 役席者だけの通達には acl_info を付け、検索は行員の ID で行います
  2. 顧客の情報を照会の文に書かせない … チャットの画面に「顧客の氏名・口座番号を書かないでください」と表示し、条件は選択肢で入れさせます
  3. 顧客への案内をAIに作らせない … 顧客に何を伝えるかは行員と役席者が決めます。この構成が出すのは、手引と通達の該当箇所と取り扱いの要点だけです
  4. 取引制限の照会は必ず人へ回す … 理由の伝え方を誤ると、顧客との関係と行の義務の両方に関わります
  5. 行内の規程とクラウドの利用の手続きを先に通す … 行内の文書を外部のクラウドに置くことが、行のシステムの管理の規程で認められているかを先に確かめます
  6. 照会の記録の保存の期間を決める … 照会の文と回答は、事務の検証に使う期間だけ残し、期間を過ぎたら消します

誤りが起きた場合のリスクは、改訂前の取り扱いで手続きが進むことと、見せてはいけない通達が見えることの2つです。 前者は通達の章の検査で、後者は ID による検索で防ぎます。どちらも規則と設定で守り、AIの回答の文に頼りません。

10まず何から始めるか

1週目:通達の管理表を作る

現行の通達について、番号、施行日、廃止日、変更した手引の章、閲覧の範囲を表にします。照会の多い相続、名義変更、取引制限の3つの手続きに関係する通達から始めます。

2週目:30件で試す

先月の照会から30件を選び、手元のAIサービスに手引と通達を読み込ませて、条件を並べて聞きます。通達を見落として手引の古い記載で答えていないかを最優先で見ます。

3週目:確認項目の表を作る

3つの手続きについて、手引の分岐を確認項目の表にします。この表は、異動してきた担当が電話で何を聞くべきかの手引きとしても、そのまま使えます。

4週目:データストアを作る

アクセス制御を有効にし、分割と見出しの設定を決めて、3つの手続きの手引と通達を取り込みます。事務指導の担当が検索画面で使い、自分の回答と比べます。

2か月目: 中継プログラムとチャットの画面を作り、5店の営業店で試します。行員の評価を毎週数えます。3か月目以降: 全店に広げ、手続きの種類を増やし、1件10分が何分になったかを実測します。評価の「誤り」が3つの手続きで月に数件以下に収まった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドがセッションによる複数回のやり取りと質問の言い換えに対応すること。includeCitations、ignoreLowRelevantContent、ignoreAdversarialQuery、answerSkippedReasons、preamble、filter、userPseudoIdGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-06
データソースのアクセス制御で、acl_info の readers に user_id/group_id を書いて閲覧の範囲を限れること。Google の ID と、Microsoft Entra ID・Okta・Ping を Workforce Identity Federation でつなげること。作成時にしか有効にできず、1文書の読み手が3,000までであることGoogle Cloud: Use data source access control2026-10-06
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR/NOT、項目を索引可能にする必要があること、日付をISO 8601で書くことGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-06
Cloud Storage から取り込むときのメタデータの JSONL(id、structData/jsonData、content.mimeType、content.uri)。定期的な取り込みが1日・3日・5日ごとで、その場合はデータソースのアクセス制御が使えないことGoogle Cloud: Create a search data store2026-10-06
預金の相続の手続きで、相続人の戸籍謄本等が法定相続人の確認のために原則として必要とされること。詳しくは取引の金融機関に問い合わせるよう案内されていること全国銀行協会: 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書2026-10-06

相続や取引制限の具体的な取り扱いは、自行の事務規程・事務手引と、本部の法務・コンプライアンスの担当の判断に従ってください。 本記事は Google Cloud と全国銀行協会の公開ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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