As-Is/To-BeでAI後の業務を描く|差し込む前に消す工程

As-Is/To-BeでAI後の業務を描く|差し込む前に消す工程

「AI導入の計画で今の業務の流れを全部書き出したのに、どこにAIを入れればよいか決まらない」「To-Beを描けと言われても、今の流れにAIの箱を足した図しか出てこない」。業務の組み替えを任された経営企画や導入担当から、こうした声が聞こえてきます。詰まるのはAIの時代に限った話ではありません。情報処理推進機構が公開している「ユーザのための要件定義ガイド 第2版」(2019年)の解説資料は、よく起きる問題として「現行業務やシステムが分からない」と並べて、「要求が膨らみ、捨てる判断が難しい」を挙げています。To-Beで大事なのは、AIを置く場所を探すことではありません。本当は、AIがある前提で要らなくなる工程を先に消し、残った工程にだけAIを差し込むことです。この記事では、To-Beを描く順番と、消す工程を誰が決めるかを整理します。


カメ先生カメ先生

今の姿とあるべき姿の2枚を描く考え方は、昔からある業務の組み替えの基本なんだ。AIが入ると、あるべき姿の前提が大きく変わるんだよ。


カメ子カメ子

前提が変わるなら、今の工程のどこにAIを入れるかを考えればよいのではないですか。


カメ先生カメ先生

そこが落とし穴でね。入れる場所を先に探すと、AIがあればもう要らない工程まで残ってしまう。先に消せる工程を消してから、残りに任せる所を決めるんだ。


カメ子カメ子

その消すかどうかの判断は、AIに任せてもよいものなのでしょうか。


この記事のポイント
  • 今の工程にAIの札を付けただけの図は、組み替えではなく差し込み。先に「その工程はAIがあっても要るか」を問う
  • 工程を消す・まとめる・AIに任せる・人に残すの順に仕分ける。消す検討を最初に置き、消せない工程だけを先へ回す
  • To-BeをAIに描かせない。どの工程を消すかは、図を描く前に決めた決裁者が承認し、理由と一緒に記録に残す

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目次

As-Is(今の姿)とTo-Be(あるべき姿)を、AIの前提で置き直す

As-Isは今の姿、To-Beはあるべき姿を指し、2つの差から取り組む課題を見つける考え方です。業務の組み替え(ビーピーアール)の進め方として、長く使われてきました。業務の組み替えは、今の手順を少しずつ直す改善とは違い、仕事の流れそのものを作り直すことを指します。

先の解説資料にある成果物の関連図では、業務フローや業務の構成表といった同じ種類の成果物で、今の姿とあるべき姿の両方を描く形が示されています。同じ書式で2枚を描くから、差が1行ずつ比べられるわけです。書式がそろっていないと、何が消えて何が増えたのかを読み取れません。

AIの導入でこの考え方を使うときに変わるのは、あるべき姿の前提です。これまでのTo-Beは、人が手で処理する前提で、手順を短くしたり道具を入れ替えたりする絵でした。AIがあると、読む・書き写す・要約する・照らし合わせるといった作業の手間が小さくなります。手間の前提が変われば、その手間のためにあった工程の存在理由も変わるのです。

この記事で扱うのは、1つの業務の工程の粒度に限ります。会社全体をAI前提で作り替える構想や、中期の計画書への落とし方は扱いません。1つの業務の今の姿を描いたあと、あるべき姿をどの順番で描き、どの工程を消すかを誰が決めるか、に絞って進めます。

課題1:今の工程にAIを載せただけで終わる

よく見かけるのは、今の姿の図をそのまま写し、いくつかの工程に「AIで要約」「AIで下書き」と札を付けたものがTo-Beとして出てくる形です。図の形は今の姿と同じで、工程の数も変わりません。これは組み替えではなく、今の流れにAIを差し込んだだけの図です。

差し込んだだけでも、個々の作業は速くなるかもしれません。しかし、工程の数と受け渡しの回数が変わらなければ、仕事の流れは同じ形のまま残ります。承認の順番、確認の回数、書類の往復はそのままです。人が関わる場面が減らないので、担当者の負担の感じ方も大きくは変わりません。

差し込み先を見分ける条件や、差し込んではいけない工程の見分け方は、業務フローへのAIの差し込み方を扱った別の記事で整理しています。差し込みは、今の流れを前提にする進め方として筋が通っています。この記事が扱うのは、その前に「そもそもこの工程は、AIがあっても要るのか」を問う一段です。

生成AIを入れても業務の効率化が頭打ちになる原因と、その測り方は、効率化の頭打ちを扱った別の記事に譲ります。ここでは、図を描く段階で、工程そのものを減らせる機会を見落とさないことに集中します。図の段階で見落とした工程は、あとから道具を替えても消えません。

課題2:消えるはずの工程が、AIの下ごしらえとして残る

差し込むだけの図には、もう1つの落とし穴があります。AIに渡すために、新しい工程が増えることです。たとえば、紙やメールで届いた依頼を表に書き写し、その表をAIに読ませて要約させる、という流れです。書き写しの工程は、もともと人が読みやすくするためにあったものでした。

AIが紙の写しやメールの本文をそのまま読めるなら、書き写しの工程は要りません。それでも今の姿を前提に描くと、「書き写したものをAIに渡す」という形で残ります。AIのための下ごしらえが、前からあった工程を延命させることになります。

同じことは、中継ぎの確認にも起きます。担当者が作った書類を係長が確かめて課長に回す流れで、係長の確認の目的が誤字や数字の転記ミスを見つけることだったとします。AIが転記ミスの候補を出せるなら、係長の確認は目的を変えるか、なくすかを決める必要があります。決めないまま残すと、AIの確認と人の確認が二重になるだけです。

報告のための報告も、残りやすい工程です。上司に状況を伝える週報を、AIが下書きするようにしたとします。ところが週報の中身は、顧客管理の記録を読めば分かることだった、という場合があります。この場合、速く書けるようになった週報は、そもそも要らなかったのかもしれません。

原因1:今の姿を描いた目で、あるべき姿も描いている

差し込むだけの図になる1つ目の原因は、今の姿を丁寧に描いた人が、そのままの目であるべき姿を描いていることです。今の姿を聞き取って書き出す作業は、今の手順を正確に写すことが目的です。写すことに慣れた目で次の図を描くと、今の手順を前提にした小さな直しが並びます。

解説資料は、今の姿が分からないという問題と並べて、「要求に基づき新たな業務としてうまく具体化できない」ことも挙げています。今の姿が描けても、あるべき姿に移る段で止まるのは、AIの前から知られていた問題です。AIが加わると、あるべき姿の選択肢が広がる分、止まりやすさはむしろ増します。

対策は、描く順番を分けることです。今の姿を描き終えたら、いったん図から離れ、この業務が何のためにあるのかを1行で書きます。「顧客からの問い合わせに、翌営業日までに正しい答えを返す」のような形です。目的の1行から逆にたどると、今の工程の中で目的に効いていない工程が見えてきます。

描く人を分けるのも1つの手です。今の姿を聞き取った担当者と、あるべき姿を描く担当者を別にすると、今の手順への思い入れが図に入りにくくなります。ただし、描く人を分けても今の姿の図は必ず共有します。現場の事情を知らずに描いたあるべき姿は、例外の処理で崩れます。

原因2:工程ごとに「なぜあるか」が書かれていない

2つ目の原因は、今の姿の図に工程の名前と担当者は書いてあっても、その工程がなぜあるのかが書かれていないことです。「係長が確認」「経理に回付」とだけ書かれた工程は、消してよいかを判断できません。理由が分からない工程は、誰も消せないまま残ります。

工程の存在理由は、多くの場合、次のどれかに当てはまります。前の工程の誤りを見つけるため、次の担当者が読める形にするため、責任者が状況を知るため、規程や監査で求められているため、昔の事故の再発を防ぐため。理由がどれに当たるかで、AI後に消せるかどうかの見込みが決まります。

理由を集めるには、担当者に「この工程をやめたら、何が困りますか」と聞くのが早道です。「困らない」「前の人から引き継いだだけ」という答えが返る工程は、消す候補の筆頭です。「監査で見られる」という答えなら、規程を読んで本当に求められているかを確かめます。

理由は、今の姿の図の各工程の横に1行で書き足しておきます。聞き取りの記録から理由の候補を書き出す作業はAIに向いていますが、理由が正しいかどうかは、工程を持つ部署の人が確かめるようにします。AIは、記録に残っていない昔の事故の経緯までは知りません。

原因3:消す工程を決める人が決まっていない

3つ目の原因は、工程を消すと決める権限を、誰が持つかが決まっていないことです。業務の組み替えを任された担当者は、図を描くことはできても、他部署の確認の工程をなくすとは言えません。そのため、図の上で消したい工程に印を付けても、最終版では残ります。

消しにくい工程の多くは、別の部署のために置かれています。営業部の業務の中にある、経理部に回すための確認の工程などです。工程を持っている部署と、その工程で助かっている部署が違うと、どちらも自分からは消そうとしません。

決裁者があいまいなまま進むと、あるべき姿は、関係する全員が反対しない範囲の図になります。反対が出ない図は、たいてい今の姿に近い図です。AIを入れた効果も、個々の作業の速さにとどまります。消す工程の決裁者は、図を描き始める前に決めておきます。決め方は後の節で述べます。

ここまでの原因をまとめると、描く目が今の手順に引っ張られていること、工程の理由が書かれていないこと、消す権限が決まっていないことの3つです。どれもAIの性能とは関係がありません。図の描き方と決め方の問題なので、AIを入れる前に直せます。

対策:To-Beを描く順番を5つに固定する

ここからは、あるべき姿を描く順番です。順番を固定しておくと、担当者が変わっても同じ質の図が出てきます。中心になるのは、今の姿の工程を1つずつ取り出し、消す・まとめる・AIに任せる・人に残すの4つに仕分ける作業です。

STEP1
業務の目的を1行で書く

この業務が誰に何を、いつまでに届けるためにあるのかを1行で書く。目的に効かない工程を見つけるための物差しになる。

STEP2
工程ごとに存在理由を書く

今の姿の図の各工程に、なぜあるのかを1行ずつ書き足す。理由が分からない工程には印を付け、工程を持つ部署に聞く。

STEP3
工程を4つに仕分ける

AIがある前提で、各工程を消す・まとめる・AIに任せる・人に残すのどれかに仕分ける。仕分けの案を出すのは担当者、決めるのは決裁者。

STEP4
残った工程で流れを描き直す

消した工程を除き、まとめた工程を1つにして、あるべき姿の図を今の姿と同じ書式で描く。受け渡しの回数も数えて横に書く。

STEP5
消す工程を決裁者が承認する

消す・まとめる工程の一覧を、工程を持つ部署の責任者と決裁者に見せて承認を取る。承認の記録は図と一緒に残す。

大事なのは仕分けの順番です。先に「消す」を検討し、消せない工程だけを「まとめる」「AIに任せる」「人に残す」に回します。最初にAIに任せる工程を探すと、本当は消せる工程まで、任せる側に入ってしまいます。

仕分けは一度で決めきる必要はありません。迷う工程には保留の印を付けて先に進み、全体を描いたあとで戻ります。全体の図を見てから判断したほうが、前後の工程とのつながりの中で、消せるかどうかが見えやすくなります。

仕分けの結果は、今の姿の図の各工程の横に、理由の1行と並べて書き込みます。「消す:転記ミスの確認は、AIの候補出しと課長の確認に移るため」のように、仕分け先と、そう決めた理由を1行で対にして残すのが形です。理由を書けない仕分けは、まだ決め切れていない印として扱い、保留に戻します。

仕分け1:消す。理由がAI後に無くなる工程

最初に見るのは、存在理由がAIの前提で無くなる工程です。代表的なのは、書き写し、中継ぎの確認、報告のための報告の3つです。どれも、人が読む・写す・まとめる手間が大きかったころには意味のあった工程です。

書き写しは、読みにくい形の情報を読みやすい形に移す工程です。AIが元の形のまま読めるなら、理由は消えます。ただし、書き写した表が別の部署の集計に使われている場合は、その集計が元の形から取れるかを確かめてから消します。

中継ぎの確認は、目的によって扱いが分かれます。誤字や転記ミスを見つける確認は、AIが候補を出し、最後の責任者が見る形にまとめられることがあります。一方で、内容の妥当さを見る確認は消しません。同じ「確認」でも、何を見ているかで仕分け先が変わるのです。

報告のための報告は、報告を受ける人が別の記録を見れば分かる場合に、消す候補になります。週報の代わりに、顧客管理の記録をAIに要約させて責任者が読む、という形に替えられることがあります。このとき、要約の元になった記録の場所を必ず添えさせます。

仕分け2:まとめる。同じ目的の工程を1つにする

消せない工程の中には、同じ目的の工程が複数の場所に散っているものがあります。たとえば、受付で顧客の情報を確かめ、処理の途中でもう一度確かめ、発送の前にまた確かめる、という流れです。それぞれに理由はありますが、目的が同じなら1か所にまとめられます。

まとめる判断は、確かめている内容が同じかどうかで決めます。受付の確認と発送前の確認が、どちらも宛先の正しさを見ているなら、1回にしても品質は落ちにくいはずです。見ている内容が違うなら、名前が同じ確認でもまとめません。

まとめると、受け渡しの回数が減ります。受け渡しのたびに、待ちと説明の手間が生まれます。書類が机を移るたびに、前の担当者に質問が戻ることもあります。まとめた工程の数だけ、人と人の間で起きていた問い合わせの往復が減ることになります。

まとめた工程は、責任が1か所に集まる分、担当者の負担が増えることがあります。まとめた工程にAIの下ごしらえを付けるか、担当の人数を見直すかは、次の仕分けと一緒に考えます。まとめた結果を、担当者1人の頑張りで支える形にしないことが大切です。

仕分け3:AIに任せる。任せる形と確かめる人を決める

消せず、まとめられない工程のうち、読む・書く・照らし合わせる作業が中心のものが、AIに任せる候補です。問い合わせの分類、書類の不備の候補出し、過去の事例の検索、返信の下書きなどです。ここで決めるのは、任せるかどうかだけではなく、任せたあと誰が何を確かめるかです。

任せる工程では、AIの出力に何を添えさせるかを決めておきます。分類なら根拠にした文の箇所、不備の候補なら規程のどの項目に当たるか、といった形です。根拠を書かせておけば、人が確かめる時間が短くなり、誤りにも気づきやすくなります。

任せる範囲の線も、この段階で引きます。金額が一定を超える案件、初めての取引先、苦情を含む問い合わせなど、AIの出力をそのまま使わずに人が判断する条件を、あるべき姿の図の中に書き込みます。人が確認する範囲を、流れを描くときに一緒に決めるのが要点です。

どの道具で任せるかは、この段階ではまだ決めません。定型の操作の自動化とAIの判断をどう組み合わせるかといった道具の選び分けは、別の記事で扱っています。あるべき姿の図には、工程の中身と、任せたあとの確かめ方だけを書きます。

仕分け4:人に残す。判断と責任と例外

最後に残るのは、人が持つべき工程です。代表は、決める工程、責任を負う工程、例外に対応する工程の3つです。値引きを認めるか、契約を結ぶか、苦情にどう謝るか、といった判断は、AIが材料をそろえても、最後は人が持ちます。

人に残す工程は、AIの前と中身が変わることがあります。材料を集める手間がAIに移る分、人は判断そのものに時間を使えます。残す工程の説明には「何を判断するか」を書き、「何を集めるか」は書かないようにすると、AIの下ごしらえとの境目がはっきりします。

例外の処理は、あるべき姿の図から抜けやすい工程です。今の姿の聞き取りでは、よくある流れが中心になり、年に数回の例外は話に出てきません。しかし、例外を人がどう受けるかが描かれていないと、AIに任せた工程で想定外の案件が出たとき、流れが止まります。

例外の受け皿として、AIが判断できない案件を人に回す先を、図の中に1つ書いておきます。回す先の担当者と、回すときに添える情報まで決めておけば、例外が出るたびに担当者が迷うことは減ります。回す先が1つ書いてあるだけで、図は現場で使えるものになるのです。

消す工程の決裁者は、図を描く前に決める

仕分けの案を作るのは担当者ですが、消す・まとめる工程を決めるのは決裁者です。決裁者は、工程を持つ部署の責任者と、その工程の結果を使う部署の責任者の両方に話を通せる人にします。1つの部署で閉じる業務なら部長、部署をまたぐ業務なら両方の部署の上に立つ役員が目安です。

決裁者を先に決めておくと、仕分けの案の質が変わります。最後に誰が決めるかが分かっていると、担当者は消す候補を遠慮せずに出せます。決める人がいない状態では、担当者は反対されそうな工程を、最初から候補に入れなくなります。

規程や監査に関わる工程は、決裁者だけで決めず、規程を持つ部署の確認を取ります。規程が求めているのが工程そのものなのか、記録を残すことなのかで扱いが変わります。記録を残すことが目的なら、工程は消して、AIの処理の記録と責任者の確認で代えるという選択肢もありえます。

仕分け判断の目安決める人残す記録
消す存在理由がAIの前提で無くなる。結果を使う部署が他から取れる工程を持つ部署と、結果を使う部署の両方に話を通せる決裁者消した工程・理由・承認者・日付
まとめる複数の工程が同じ内容を確かめている工程を持つ部署の責任者まとめる前の工程と、確かめる内容
AIに任せる読む・書く・照らし合わせる作業が中心で、根拠を添えさせられる業務の責任者(道具の選定は情シスと相談)添えさせる根拠と、人が判断する条件
人に残す判断・責任・例外への対応が中心業務の責任者判断する内容と、例外を回す先

承認の記録には、消した工程の名前、消した理由、承認した人と日付を書きます。半年後に「なぜあの確認をやめたのか」と聞かれたとき、記録がなければ、元に戻す議論が一から始まります。記録があれば、戻すかどうかも理由に沿って判断できます。

AIの使いどころは、聞き取りの整理と抜けの指摘まで

ここまでの流れの中で、AIが役に立つ場面は主に3つです。聞き取りの記録を工程ごとに整理すること、今の姿の工程の一覧を下書きすること、描いた図の抜けを指摘させることです。いずれも、人が読んで直す前提の下書きです。

抜けの指摘は特に効きます。あるべき姿の図と今の姿の図をAIに渡し、今の姿にあって、あるべき姿では行き先がなくなった情報がないかを問います。消した工程が別の部署に渡していた情報が、図のどこからも出ていない、といった抜けを見つけやすくなります。

一方で、あるべき姿そのものをAIに描かせることはしません。今の姿を渡してあるべき姿を頼めば、それらしい図は返ってきますが、どの工程を消すかという判断を、根拠の分からないまま引き受けることになるからです。消す判断には部署の事情や過去の事故の経緯が関わり、それは記録の中にありません。

ばらつきのある仕事を揃える手順は、業務の標準化を扱った別の記事に譲ります。揃える前に消すか作り直すかを決め、残った工程を揃える、という順番で考えると、2つの作業がぶつかりません。消す予定の工程を丁寧に揃えるのは、手間の無駄になります。

  • AIに渡す聞き取りの記録からは、個人名や顧客名を外すか、社内の規程で渡してよい範囲を先に確かめる
  • AIが出した工程の一覧には、聞き取りのどの発言から書いたかを添えさせ、担当者が照らし合わせる
  • 抜けの指摘は、指摘の数ではなく、指摘された情報の行き先を人が1つずつ決めたかで終わりにする

やってはいけないTo-Beの描き方

ここまでを裏返すと、避けたい描き方が見えてきます。どれも、最初は効率がよさそうに見える進め方です。自分たちの図に当てはまるものがないか、点検に使ってください。

  • 今の姿の図を写し、工程にAIの札を付けただけのものをあるべき姿として報告する
  • AIに任せる工程を最初に探し、消せる工程まで任せる側に入れてしまう
  • 工程の存在理由を書かないまま、印象で消す・残すを決める
  • 消す工程の決裁者を決めずに図を描き始め、最終版で全部元に戻る
  • 今の姿を渡してAIにあるべき姿を描かせ、そのまま承認に回す
  • 消した工程の理由と承認者を残さず、半年後にやめた経緯が分からなくなる

中でも起きやすいのは、2つ目の「任せる工程を先に探す」ことです。AIの導入が目的になっている計画では、任せた工程の数が成果に見えやすいからです。任せた工程の数より、消した工程の数を先に報告すると決めておくと、この偏りを防げます。

5つ目も注意が要ります。AIが描いた図は、書式が整っていて説得力があります。整った図ほど、読む人は中身を疑わなくなります。AIが下書きした部分があるなら、図のどこがAIの案で、どこを誰が決めたのかを図の横に書いておきます。

点検は、あるべき姿の図を承認に回す前に1回、新しい流れで1周回したあとにもう1回行うと効果があります。1回目は描き方の偏りを、2回目は現場で戻ってきた工程がないかを見ます。承認のあとに黙って元に戻った工程は、消す理由が現場に伝わっていなかった合図です。

よくある質問

Q. 今の姿の図は、どこまで細かく描けばよいですか。

この記事の目的なら、工程ごとに存在理由を1行で書ける粒度で十分です。細かく描くほど時間がかかり、あるべき姿に移る前に疲れてしまいます。理由が1行で書けない工程は、2つに分けて描き直します。逆に、理由が同じ工程が続いている場合は、1つにまとめて描いてもかまいません。粒度はそろえるより、理由が書けるかどうかで決めます。

Q. 消す工程が1つも見つからないときは、どうすればよいですか。

工程の理由が「規程で決まっている」「昔からやっている」で埋まっていないかを見直します。規程が求めているのが記録なのか工程なのかを確かめると、消せる工程が見つかることがあります。それでも無ければ、差し込みの進め方に切り替えてかまいません。

Q. 決裁者が決まらない場合は、どう進めますか。

部署の中で閉じる工程だけを対象にして、先に1周回します。部署をまたぐ工程は、消す候補の一覧として残し、決裁者が決まってから判断します。候補の一覧があるだけでも、上の人に決裁者を立ててもらう材料になります。

Q. AIにあるべき姿の案を出させるのも、やめたほうがよいですか。

案を出させること自体は、選択肢を広げる材料として使えます。ただし、案をそのまま採らず、案の中で消された工程ごとに理由を書かせ、工程を持つ部署の人が確かめます。どの工程を消すかを決めるのは、決裁者です。

Q. あるべき姿を描いたあと、見直しはいつしますか。

新しい流れで1周回した時点と、担当者や道具が変わった時点が目安です。見直しでは、消した工程の記録を読み直し、理由がまだ当てはまるかを確かめます。例外を回す先に案件がたまっているなら、その例外を図に描き足します。

まとめ

As-IsとTo-BeでAI後の業務を描くときは、今の工程にAIを載せる前に、AIがある前提で要らなくなる工程を先に消します。業務の目的を1行で書き、工程ごとに存在理由を書き足し、消す・まとめる・AIに任せる・人に残すの順に仕分けて、同じ書式であるべき姿を描き直す。AIに任せるのは聞き取りの整理と工程の書き出しの下書き、抜けの指摘までで、To-BeをAIに描かせず、どの工程を消すかもAIに決めさせない。消す工程は図を描く前に決めた決裁者が承認し、理由と一緒に残す。この順番を守れば、AIを入れた後の業務を、今の流れの延長ではない形で描けます。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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