社史の制作をAIで進める方法|資料の山を年表にする

社史の制作をAIで進める方法|資料の山を年表にする

「周年に社史を出すことになったが、資料が段ボールに入ったまま、どこから手を付ければいいか分からない」「AIで年表や原稿を作れるなら、制作会社に頼まずに内製できないか」。周年事業を任された広報や総務、経営企画の担当者から、こうした声が聞かれます。資料の量に圧倒されるのは、多くの会社に共通する出発点です。ただ、社史の制作で重いのは文章を書くことではありません。本当は、資料の山から事実を拾い、年表の形に確かめながら並べることです。この記事では、資料を集める段階から、読み取りと年表化、聞き取り、下書き、事実確認と関係者の確認、そして残し方まで、AIに任せる所と人が持つ所を手順で整理します。


カメ先生カメ先生

社史の制作は、書く前の工程が長いんだ。資料を探して、読んで、年表に並べて、ようやく原稿に入れる。AIが一番役に立つのは、この前半の量の多い作業なんだよ。


カメ子カメ子

資料を読ませれば、AIが年表まで作ってくれるということですか。


カメ先生カメ先生

下書きまでは作れる。でも、AIはもっともらしい年号や人名を作ってしまうことがある。だから年表の1行ごとに、元の資料を指させる形にしておくんだ。


カメ子カメ子

では、どの事実を載せて、どれを載せないかは、誰が決めるのでしょう。


この記事のポイント
  • 社史の制作で時間がかかるのは、資料の収集と年表づくり。紙の読み取りと年表の下書きをAIに任せると、この工程の量を減らせる
  • 年表の1行ごとに出典の資料番号を持たせ、AIが作る年号・人名の誤りを人が元の資料で裏取りする
  • 載せない事実の判断と関係者の確認は人が持つ。紙の本で終わらせず、年表と資料を社内で引ける形に残すかも決める

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目次

社史・周年史・記念誌、どれを作るかを先に決める

最初に決めたいのは、何を作るかです。制作会社各社の解説では、社史は会社のあゆみをもれなく記録し、歴史を残す資料としての意味合いが強いものとされています。記念誌は周年などの出来事を記念し、お祝いや関係者への感謝に重点を置くもので、歴史の記述は必ずしも必要ではありません。周年史(年史)は、会社に限らず学校や団体も含めた呼び名として使われることがあります。

どれを作るかで、AIの使い方も変わります。社史なら、創業からの事実を漏れなく集めて並べる工程が中心になり、資料の読み取りと年表の下書きにAIの出番が多くなります。記念誌なら、関係者の寄稿や写真の比重が大きく、年表は簡略なもので足りることもあります。作る物の性格によって、集める資料の量が何倍も変わるので、ここを曖昧にしたまま資料集めに入らないようにします。

周年事業全体の企画、記念品や報道への働きかけは、周年の企画を扱った別の記事に譲ります。この記事は、社史や記念誌という制作物を1つ作る手順に絞ります。周年事業の中で社史をどう位置づけるかは企画の段階で決まっている前提で、制作の担当者が何をするかを追っていきます。

もう1つ先に決めておきたいのが、読み手です。社員に配るのか、取引先や株主にも配るのか、採用の場で使うのか。読み手によって、載せる事実の選び方も、言葉の硬さも変わります。読み手が決まっていないと、AIに下書きを頼んでも、誰に向けた文章なのかがぶれた原稿が出てきます。

AIで進むのは量の工程、進まないのは決める工程

社史の制作をAIで進めるときの基本は、工程を「量の工程」と「決める工程」に分けることです。量の工程とは、紙の資料を読み取る、読み取った文から日付と出来事を抜き出す、聞き取りの録音を文字にする、年表から原稿の下書きを作る、といった作業です。どれも手間がかかる一方で、やることの中身ははっきりしています。

決める工程とは、どの事実を載せるか、資料どうしが食い違ったときにどちらを採るか、会社にとって不利な出来事をどう書くか、関係者の了解をどう取るか、といった判断です。これらは会社の歴史をどう残すかという方針に関わるので、AIに判断させず、編集の責任者と委員会が持つことが前提になります。

この分け方をしておくと、AIに期待しすぎることも、使わなすぎることも避けられます。量の工程は、人が一から読むより速く下書きを作れる。けれども下書きはあくまで下書きで、決める工程を経ないと社史にはならない。この認識を、制作に関わる全員でそろえておきます。

社史の制作には長い時間がかかり、その多くが資料の収集と整理、関係者との原稿の確認に使われると、制作会社の案内はそろって書いています。AIで短くできるのは主に前半の量の工程で、後半の確認の工程は、むしろ丁寧に時間を取る必要があります。AIで浮いた時間を確認に回す、という配分で日程を組むのが現実的です。

制作の全体の手順

手順の全体を先に示します。資料を集める段階から残し方を決める段階まで、6つに分けて進めます。各段階でAIに任せる作業と、人が持つ判断を分けて書いているので、制作の計画を立てるときの叩き台にしてください。

STEP1
資料を集め、台帳を作る

社内・公的な資料・聞き取りの候補を洗い出し、資料ごとに番号・名前・部署・保管場所を台帳に書く。台帳づくりは人が主で、一覧の整形をAIに手伝わせる。

STEP2
読み取って、年表の下書きにする

紙の資料を読み取り、日付と出来事を抜き出して年表の下書きにする。AIに任せるが、1行ごとに資料番号を付けさせる。

STEP3
聞き取りをして、文字に残す

創業期を知る人や元役員に話を聞き、録音を文字起こしする。聞き取りの問いを作るのと、話の真偽を確かめるのは人。

STEP4
原稿の下書きを作る

章立てと載せる事実を人が決め、年表と聞き取りの範囲だけでAIに下書きを書かせる。

STEP5
事実を確かめ、関係者の確認を取る

年号・人名・数字を元の資料で裏取りし、原稿を委員会と関係者に回す。ここは人が持つ。

STEP6
残し方を決める

紙の本で終わらせず、年表と資料を社内で引ける形に残すかを決める。

手順の中で一番大事なのは、最初の台帳です。台帳の資料番号が、後の年表、原稿、事実確認のすべてをつなぐ糸になります。台帳を作らずに読み取りから始めると、AIが作った年表の1行がどの資料から来たのかを後から追えなくなり、裏取りの手間がかえって増えます。

各段階の境目では、次に進んでよいかを人が確かめます。とくに年表の下書きから原稿の下書きに進む前に、年表の主な出来事が資料で確かめられているかを見ておくと、原稿の段階での手戻りを大きく減らせます。

手順1:資料を集める

社史の材料になる資料は、大きく3つに分けられます。1つ目は社内の資料で、過去の社内報、決算書や事業報告書、事業計画書、会議の資料、会社案内、製品の資料、経営者の経歴などです。2つ目は公的な資料で、登記簿、官報、新聞記事、業界誌などが挙げられます。3つ目は人の記憶で、創業者や経営陣、長く勤めた社員、退職した元社員への聞き取りです。

社内の資料は、部署ごとに散らばっていることがほとんどです。総務の倉庫、各部署の書棚、支店や工場、退職した役員の自宅に残っていることもあります。まず各部署に「こういう資料があれば知らせてほしい」という依頼を出し、捨てる前に連絡してもらうことを徹底します。周年の話が社内に広まると、古い資料を整理しようとして捨ててしまう人が出るからです。

写真は、それだけで独立した山になります。撮影の日付や場所、写っている人が分からない写真も多く、後で説明を付けるのに手間がかかります。写真は資料とは別に番号を振り、分かっていることだけを書き留めておきます。写っている人の特定は、聞き取りの場で古参の社員に見てもらうと進みやすくなります。

この段階でAIに任せられることは多くありません。資料がどこにあるかは人が足で探すしかないからです。AIの出番は、集まった資料の一覧を整えることや、部署への依頼文の下書き程度です。資料集めを急いでAIの工程に入りたくなりますが、集める範囲が狭いと、年表に大きな穴が空くことを覚えておきます。

手順1の続き:資料の台帳を作る

集めた資料は、1点ずつ台帳に記録します。社史の制作会社の解説では、資料名、部署、概要、保管場所といった索引の情報を持たせることが勧められています。これに通し番号を加え、以後の工程では必ずこの番号で資料を呼ぶようにします。番号は、年表の出典欄と原稿の確認の場面で使います。

台帳は、資料が出そろってから作るものと思われがちですが、同じ解説は、初期の段階で作っておくと非常に役立つと述べています。資料が見つかるたびに1行ずつ足していけば、どの時代の資料が薄いかが途中で見えてきます。資料の薄い時代が分かれば、聞き取りで補う相手を早めに決められるという利点もあります。

台帳には、資料を外に出してよいかの区分も書いておきます。人事の記録、給与や処分に関わる書類、取引先との契約、個人の住所が載った名簿などは、社史の材料にはなっても、そのままAIの道具に入れてよいとは限りません。社内で使ってよいと決めたAIの道具の範囲と照らし合わせ、入れてよい資料と入れない資料を分けておきます。

  • 資料の区分は「AIの道具に入れてよい」「社内の人が読むだけ」「編集の責任者だけが見る」の3つ程度で足りる
  • 区分に迷う資料は、編集の責任者に判断を仰ぐまで、AIの道具に入れない

台帳の形は、表計算ソフトの1枚で十分です。凝った仕組みを作るより、制作に関わる全員が同じ台帳を見て、同じ番号で話せることのほうが大切です。社内の資料をAIが探せる形に整える考え方は、社内文書の整え方を扱った別の記事で解説しています。

手順2:紙の資料をAIで読み取る

台帳ができたら、紙の資料を読み取って文字のデータにします。スキャナーで画像にし、AIの文字読み取りで文字にする流れが一般的です。ただし社史の資料は、古い活字、手書きの議事録、旧字や和暦、かすれたコピーなど、読み取りにくい条件がそろっています。読み取りの精度は、道具の性能より原稿の状態に左右されることが多い点は、紙の書類の読み取りを扱った別の記事でも触れています。

読み取った文は、そのまま信用しないのが原則です。数字の1と7、漢字の似た字、人名の旧字などは取り違えやすく、しかも読み取った結果は一見きれいな文字になっているので、誤りに気づきにくいのです。年号・人名・金額の3つは、読み取った後に必ず画像と見比べると決めておきます。

手書きの議事録や古い日誌は、読み取りをAIに任せるより、人が読んで要点を書き起こすほうが早いこともあります。資料の状態を見て、機械で読む資料と人が読む資料を台帳の上で分けておくと、作業の見通しが立ちます。どちらで読んだかも台帳に書いておくと、後の裏取りの重みづけに使えます。

読み取りの作業を外部の業者に出す場合は、資料の区分に従って、出してよい資料だけを渡します。外部に出す資料の範囲は、社史の編集の責任者が決め、業者が使うAIの道具で資料がどう扱われるかも確かめておきます。

手順2の続き:読み取った文から年表の下書きを作る

読み取った文から、日付と出来事を抜き出して年表の下書きにします。ここはAIが力を発揮する工程です。社内報の束や事業報告書を読ませ、「日付・出来事・関わった部署や人・出典の資料番号」の形で抜き出させると、人が一から読むより何倍も早く下書きがそろいます。

このとき必ず守るのが、1行ごとに資料番号を付けさせることです。AIは、資料に書かれていない年号を補ったり、似た出来事を1つにまとめたり、人名を取り違えたりすることがあります。資料番号が付いていれば、その行が本当に資料にあるかを人が確かめられます。番号の付いていない行は、AIが作った可能性があるものとして扱います。

日付の書き方もそろえさせます。資料によって和暦と西暦が混ざり、年度と暦年が混ざり、月までしか分からない出来事もあります。年表の下書きでは、資料に書かれていたままの表記を残す欄と、西暦にそろえた欄を分けておくと、換算の誤りを後から見つけやすくなります。換算そのものは、人が検算します。

同じ出来事が、資料によって違う日付で書かれていることもよくあります。AIにどちらかを選ばせるのではなく、食い違いがあることを行に残させ、どちらを採るかは人が決めます。大手印刷会社の年表づくりの解説が年表づくりの注意点に「客観的な事実に基づき、不備のないように記す」ことを挙げているとおり、食い違いを消さずに残すことが、後の事実確認を楽にします。

年表の1行に持たせる項目

年表の下書きを作る前に、1行にどの項目を持たせるかを決めておきます。同じ印刷会社の解説では年表の例として年月日・主要事項・詳細の3列が示され、社史の制作会社の解説では、年表の台帳に事業年度や業績、資本金、従業員数、経営計画、人事、組織の改編、技術や製品、業界の動向などの軸を持たせる例が紹介されています。これらに、AIを使う前提で必要な項目を足すと、次のような形になります。

項目書く内容誰が埋めるか
資料どおりの日付資料に書かれたままの表記(和暦・年度など)AIの下書き
西暦の日付西暦にそろえた日付。月までしか分からなければそう書くAIの下書き、人が検算
出来事何が起きたかを1文でAIの下書き
分野経営・人事・組織・製品・拠点・業界などAIの下書き、人が見直す
関わった人と部署資料に名前がある人と部署AIの下書き、人が裏取り
出典の資料番号台帳の番号。複数あればすべてAIの下書き(空欄は要確認)
食い違いの有無資料によって日付や内容が違う場合の記録AIが気づいた分、人が判断
確かめた人と日付裏取りをした人の名前と日付人
載せるか載せる・載せない・保留と、その理由人(委員会)

この表のうち、最後の3つの項目はAIに埋めさせません。確かめた人と日付は、裏取りの責任を明らかにするための欄です。載せるかどうかは、編集の方針に関わる判断です。人が埋める欄が空いている行は、まだ原稿に使わないという決まりにしておくと、確かめていない事実が原稿に紛れ込むのを防げます。

項目が多すぎると、年表の下書きが扱いにくくなります。最初はこの表の項目で始め、分野の分け方や、業績の数字を入れるかどうかは、章立てに合わせて途中で調整します。途中で項目を足すときは、すでに作った行にも同じ項目を埋める手間が生じるので、早めに決めるほど楽になります。

手順3:聞き取りを文字起こしで残す

資料の薄い時代や、資料には残らない経緯は、聞き取りで補います。創業期を知る人、元役員、長く勤めた社員など、台帳で薄いと分かった時代に関わった人を優先して話を聞きます。高齢の方も多いので、聞き取りはできるだけ早い段階で始めます。

聞き取りの録音は、AIの文字起こしで文字にすると、後から読み返したり、年表と突き合わせたりしやすくなります。ただし、録音と文字起こしについては、事前に本人の了解を取り、社史の制作以外に使わないこと、文字にした記録をどこに保管するかを伝えておきます。文字起こしの精度の見方や道具の選び方は、別の記事で扱っています。

聞き取りで出てきた話は、資料と同じ扱いにはしません。人の記憶は、年号がずれたり、他の出来事と混ざったりすることがあるからです。聞き取りの話は台帳に「聞き取り」として番号を振り、資料で裏付けが取れるものと、証言だけのものを分けておくと、原稿でどう書くかを判断しやすくなります。

聞き取りの問いを作るのは人です。AIに年表の下書きを渡して、空白の時期や食い違いのある出来事を洗い出させ、問いの候補を出させることはできます。けれども、相手との関係や、触れてよい話題かどうかを判断して問いを選ぶのは、聞き手の役目です。

手順4:原稿の下書きをAIに書かせる

年表と聞き取りがそろったら、原稿の下書きに入ります。章立ては人が決めます。時代で区切るのか、事業の分野で区切るのか、どの出来事を章の山場にするのかは、社史の性格と読み手によって変わるからです。章立てと各章に載せる年表の行が決まってから、AIに下書きを書かせます。

下書きを書かせるときは、渡した年表と聞き取りの範囲だけで書かせることが大切です。AIは、一般的な知識や、それらしい経緯を補って文章を滑らかにしようとします。業界の出来事や時代の背景をAIが自分の知識で書き足すと、確かめていない事実が原稿に入り込みます。書き足した部分があれば、そこを分かるように印を付けさせます。

原稿の各段落には、どの年表の行を使ったかを残させます。これがあると、事実確認の段階で、段落ごとに元の資料までたどれます。文章を整えることより、たどれることを優先します。読みやすさの手直しは、事実が固まった後に人が行えば十分です。

社史には、経営者のあいさつや、社員の寄稿が入ることもあります。こうした本人の言葉で残すべき部分は、AIに書かせないのが原則です。下書きの手伝いをする場合でも、本人が自分の言葉として納得するまで手を入れてもらい、本人の名前で載せる文章は本人が最後に決める形にします。

手順5:年号・人名・数字を裏取りする

事実確認は、社史の制作で最も手を抜けない工程です。AIが関わった部分では、とくに年号・人名・数字の誤りに注意します。読み取りでの取り違え、年表化での補い、下書きでの書き足しと、誤りが入り込む機会が工程ごとにあるからです。どの工程で入った誤りでも、社史として出てしまえば会社の公式な記録として残ります。

裏取りは、原稿の段落から年表の行へ、年表の行から台帳の資料へと、番号をたどって行います。資料の画像や原本を開き、年号・人名・数字が一致しているかを確かめます。一致しない場合は、原稿を直すのか、資料どうしの食い違いとして扱うのかを判断します。確かめた行には、年表の「確かめた人と日付」の欄を埋めます。

人名は、旧字や異体字、役職名の変遷など、社史特有の難しさがあります。創業者の名前の字が資料によって違う、役職の名前が時代で変わっている、といったことはよくあります。表記をどうそろえるかは、編集の方針として人が決め、決めた表記の一覧をAIに渡して原稿全体をそろえさせると、人の確認と機械の整形をうまく分けられます。

AIに裏取りそのものを任せることはできません。AIに「この年号は正しいか」と聞いても、元の資料を見ずにそれらしい答えを返すことがあるからです。AIにできるのは、原稿の中の年号や人名を一覧にして、確かめる対象を漏れなく洗い出すところまでです。

載せない事実の判断は、人が持つ

社史には、載せるかどうかを迷う事実が必ず出てきます。業績の悪化、事業からの撤退、事故や不祥事、経営をめぐる対立、人員の削減などです。同じ印刷会社の解説は年表づくりの注意点として、企業にとってマイナスになる事実も含めることを挙げています。都合のよい出来事だけを並べた社史は、読み手の信頼を得にくいからです。

とはいえ、すべてを同じ重さで書けばよいわけではありません。関わった個人が特定される書き方をしないか、係争中の事柄に触れないか、取引先の事情を明かさないかなど、配慮が必要な点があります。こうした判断は、AIに判断させず、編集の責任者と委員会が決めることを、制作の最初に決めておきます。

AIは、下書きの段階で不利な出来事を和らげた表現にしたり、逆に省いたりすることがあります。年表にある出来事が原稿で消えていないかは、年表の「載せるか」の欄と原稿を突き合わせて確かめます。載せないと決めた事実も、年表には理由とともに残しておくと、次の周年の制作で同じ議論を一からやり直さずに済みます。

載せるかどうかの判断に迷ったときは、読み手を思い出します。社員向けなら、苦しい時期をどう乗り越えたかは、むしろ伝えたい中身かもしれません。社外向けなら、取引先や関係者への配慮がより重くなります。判断の理由を記録しておけば、後から問われたときにも説明できます。

関係者の確認を回す

原稿が固まったら、関係者の確認に回します。制作会社の案内では、社史の制作の工程に、委員会での原稿チェックと修正、構成やレイアウト案のチェック、本文と口絵の校正、最終チェックが並んでいます。そして、こうした確認のやり取りをいかに円滑に進められるかで、全体の期間が左右されると書かれています。

確認に回す相手は、原稿に名前が出る人、聞き取りに応じた人、各章に関わる部署、そして経営陣です。確認の依頼には、どの段落を見てほしいか、何を確かめてほしいか(事実か、表現か、載せてよいか)、いつまでに返してほしいかを書きます。確かめてほしい点を絞って渡すほど、返ってくる指摘の質が上がり、確認の往復も減ります。

確認の依頼文や、段落ごとの確認先の一覧は、AIに下書きさせることができます。年表の「関わった人と部署」の欄をもとに、どの段落を誰に回すかの一覧を作らせれば、回し漏れを防げます。ただし、誰に何を見せてよいか、とくに社外の人に原稿のどこまで見せるかは、人が判断します。

確認で返ってきた指摘は、原稿に反映した理由と、反映しなかった理由を記録します。関係者の記憶と資料が食い違う場合は、どちらを採ったかと、その根拠も残します。この記録は、社史が出た後に問い合わせを受けたときの答えにもなります。

手順6:紙の本で終わらせず、引ける形に残す

社史が刷り上がると、集めた資料や年表は、また段ボールに戻されがちです。けれども、台帳と年表と読み取った文字のデータは、社史の本そのものと同じくらい価値のある資産です。次の周年の制作の出発点になり、日々の業務でも、過去の経緯を調べるときに役立ちます。

そこで、制作の最後に、年表と資料を社内で引ける形に残すかを決めます。社内の検索や、社内の文書を探せるAIの仕組みに年表と資料を入れておけば、「この製品はいつ発売したか」「この拠点はいつ開いたか」といった問いに、資料の番号付きで答えられるようになります。社史を、本棚に並ぶ1冊から、会社の記憶を引く入口に変えるという考え方です。

残すときは、載せないと決めた事実や、配慮が必要な資料の扱いに注意します。社内の誰もが引ける場所に入れてよい資料と、閲覧できる人を限る資料を分け、台帳の区分をそのまま使います。聞き取りの記録は、本人の了解の範囲を超えて使わないよう、とくに慎重に扱います。

周年に合わせて公開する記念のサイトに、年表の一部を載せる会社もあります。その場合も、元になるのは確かめ済みの年表です。確かめた人と日付の欄が埋まった行だけを外に出すという決まりを守れば、紙の本とサイトで内容が食い違う事態を避けられます。

やりがちな失敗

最後に、AIを使って社史を作るときにやってしまいがちな失敗をまとめます。どれも、量の工程を速くしたことで、決める工程や確かめる工程が追いつかなくなったときに起こります。制作の計画を立てる段階で、担当者と委員会で読み合わせておくと役立ちます。

  • 資料の台帳を作らずに読み取りを始め、年表の行がどの資料から来たか追えなくなる
  • 読み取った年号や人名を画像と見比べず、取り違えたまま年表に入れる
  • 年表の下書きに資料番号を付けさせず、AIが補った年号を事実として扱う
  • 原稿の下書きで、AIが一般的な知識で書き足した経緯に気づかない
  • 不利な出来事がAIの下書きで省かれていることに、誰も気づかない
  • 刷り上がった後に資料を段ボールに戻し、次の周年でまた一から集める

これらを防ぐ要は、資料番号と「確かめた人と日付」の欄です。資料番号があれば、どの行もどの段落も元の資料までたどれる。確かめた人の欄があれば、確かめていない事実が原稿や公開の場に出るのを止められる。AIに任せる工程が増えるほど、この2つの仕組みが効いてきます。

社史の制作は、多くの担当者にとって一度きりの仕事です。だからこそ、制作の途中で作った台帳や年表、確認の記録を、次の担当者が読める形で残しておくことが、次の周年への一番の引き継ぎになります。

まとめ

社史の制作で最も時間がかかるのは、散らばった資料を集め、年表の形に並べる工程です。資料は台帳に番号を振って管理し、紙の読み取り、年表の下書き、聞き取りの文字起こし、原稿の下書きといった量の工程をAIに任せます。その際、年表の1行ごとに資料番号を付けさせ、年号・人名・数字は元の資料で人が裏取りする。どの事実を載せるか、関係者にどう確認を取るかはAIに判断させず、編集の責任者と委員会が決める。そして刷り上がった後も、年表と資料を社内で引ける形に残すかを決めておけば、社史は1冊の本を超えて、会社の記憶を引き継ぐ仕組みになります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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