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退去立会いの写真から、入居時との差と原状回復の負担区分の一次案を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

退去立会いで撮った部屋の写真を、入居時の写真と部位ごとに突き合わせ、変わった箇所を一覧にします。原状回復の負担区分は一次案までを機械が出し、決めるのは人です。退去者との金銭のやり取りに直結する判断は自動化しません。

サマリー
利用ツール
AWS Textract/Azure AI/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Google Vertex AI/Make/n8n/Power Automate/Python
対象業界
その他/不動産/建設
対象部門
カスタマーサポート/営業
対象業務
内容確認・チェック/比較検討
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
画像認識
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
60h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
60%
年間削減
432h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 退去の日に担当者が住戸へ行き、退去者の立会いのもとで部屋を見て回る
  2. 気になった箇所をスマホで撮る。枚数も画角も、そのときの担当者の判断
  3. 事務所へ戻り、入居時の写真とチェックシートを住戸のフォルダから探す
  4. 入居時と退去時の写真を画面に並べ、部屋ごとに見比べる
  5. 変わっている箇所を拾い、通常損耗・経年変化か、借主の責めに帰すべき損耗かを担当者が判断する
  6. 借主の負担と判断した箇所について、単価表を見ながら金額を出し、入居期間から割合を下げる
  7. 精算の明細を作り、退去者へ送る
導入後(After)
  1. 立会いアプリで部屋と部位を選んでから撮影する。撮る順番と枚数は手順で決まっている
  2. 自動住戸フォルダへの保存をきっかけにワークフローが動き、契約データから入居日・退去日・住戸IDを引く
  3. 自動同じ「部屋+部位」のタグを持つ入居時の写真を探し、対を作る。対が作れないものは判定不能として分ける
  4. 自動画像の向きと寸法をそろえ、1回の呼び出しに入れる枚数を部位単位に分ける
  5. 自動画像分析が入居時と退去時それぞれの領域の座標・信頼度・タグを返す
  6. 自動入居時と退去時の領域を突き合わせ、見るべき領域に番号を振る
  7. 自動生成AIに2枚の写真と領域の一覧を渡し、変化の有無と日本語の見え方の説明だけを書かせる
  8. 自動変化ありの箇所について、部位ごとの最小単位・単価・入居期間から金額の候補を計算する
  9. 担当者が一次案を開き、拾えていない箇所が無いかを見る
  10. 箇所ごとに通常損耗・経年変化/借主の責めに帰すべき損耗/判定不能を決める
  11. 数量を採寸して入れ、金額を確定し、精算明細を出す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 退去の日に担当者が住戸へ行き、退去者の立会いのもとで部屋を見て回る
  2. 気になった箇所をスマホで撮る。枚数も画角も、そのときの担当者の判断
  3. 事務所へ戻り、入居時の写真とチェックシートを住戸のフォルダから探す
  4. 入居時と退去時の写真を画面に並べ、部屋ごとに見比べる
  5. 変わっている箇所を拾い、通常損耗・経年変化か、借主の責めに帰すべき損耗かを担当者が判断する
  6. 借主の負担と判断した箇所について、単価表を見ながら金額を出し、入居期間から割合を下げる
  7. 精算の明細を作り、退去者へ送る

(a)入居時の写真が、同じ箇所を写していない。 退去時に洋室の窓側の壁の傷を撮っても、入居時の写真がその壁を含んでいなければ、入居時にあったのかが分かりません。このとき担当者は、たいてい「分からないので請求しない」に倒します。 妥当ですが、記録に残らないので翌月も同じことが起きます。

(b)判断が担当者ごとにぶれる。 同じ程度のクロスの汚れでも、人によって通常損耗と見たり借主の負担と見たりします。退去者が「前の部屋ではこう言われなかった」と言い出す場面の多くが、この差から出ています。 基準の表はありますが、写真のどの状態が表のどの行にあたるかを決めるのは各担当者です。

(c)入居時の写真を探すところで時間が溶ける。 ファイル名が IMG_2831.jpg のまま並んでいるので、どれが玄関でどれが洗面か、開いてみないと分かりません。 1件あたり10分がここに消えます。

(d)立会いの場で結論を言ってしまう。 退去者の目の前で「これは借主さん側のご負担になりますね」と口にし、事務所で見比べた結果それが覆ると、訂正の連絡が交渉になります。 言えることと言えないことの区別が、担当者の慣れに任されています。

  1. 【人】 立会いアプリで部屋と部位を選んでから撮影する。撮る順番と枚数は手順で決まっている
  2. 【自動】 住戸フォルダへの保存をきっかけにワークフローが動き、契約データから入居日・退去日・住戸IDを引く
  3. 【自動】 同じ「部屋+部位」のタグを持つ入居時の写真を探し、対を作る。対が作れないものは判定不能として分ける
  4. 【自動】 画像の向きと寸法をそろえ、1回の呼び出しに入れる枚数を部位単位に分ける
  5. 【自動】 画像分析が入居時と退去時それぞれの領域の座標・信頼度・タグを返す
  6. 【自動】 入居時と退去時の領域を突き合わせ、見るべき領域に番号を振る
  7. 【自動】 生成AIに2枚の写真と領域の一覧を渡し、変化の有無と日本語の見え方の説明だけを書かせる
  8. 【自動】 変化ありの箇所について、部位ごとの最小単位・単価・入居期間から金額の候補を計算する
  9. 【人】 担当者が一次案を開き、拾えていない箇所が無いかを見る
  10. 【人】 箇所ごとに通常損耗・経年変化/借主の責めに帰すべき損耗/判定不能を決める
  11. 【人】 数量を採寸して入れ、金額を確定し、精算明細を出す

10番目が、この設計の境目です。 ここから上は機械、ここは人、と決めてあります。一次案には区分を書く欄がありません。 欄が無ければ書けないので、担当者は必ず自分で選びます。

8番目が計算であって推測でないことも、意図してのことです。 写真を見て「7割くらい」と当てる処理を、どこにも置きません。 11番目で数量を人が入れるのも同じ考えで、個数や面積の見積もりは概算にとどまるとされており、請求金額の根拠にできる精度ではありません。

02今回想定するシステム構成

構成図
退去立会い(立会いアプリ)── 部屋・部位のタグを選んでから撮影
   ▼【トリガー】住戸フォルダへの写真の保存
Power Automate
   ├──▶ 契約データから 住戸ID・入居日・退去日 を引く
   └──▶ 同じ「部屋+部位」のタグの入居時の写真を探す
   ▼
Python ── 向き・寸法をそろえ、入居時と退去時の対を作る
   │        対が作れないものは 判定不能 として分ける
   ▼
Azure AI Vision ── Dense Captions / Tags / Objects
   │   領域の boundingBox・タグ名・信頼度
   ▼
Python ── 入居時と退去時の領域を突き合わせ、region_id を振る
   ▼
Claude API ── 入居時(Image 1)・退去時(Image 2)と領域の一覧
   │   変化の有無と、日本語の見え方の説明だけを書かせる
   ▼
Python ── 最小単位・単価・入居期間から、経過年数を考慮した
   │        割合と金額の候補を計算する
   ▼
一次案(変化箇所 + 金額の候補 + 判定不能の一覧)
   ▼
【人が負担区分を決める】通常損耗・経年変化/借主の責め/判定不能
   ▼
精算明細(数量の記入と確定は人)
役割想定する製品代替候補
処理エンジンAzure AI VisionGoogle Vertex AI、AWS Textract
生成AIClaude APIOpenAI API、Gemini API
差異計算PythonGoogle Apps Script
連携Power AutomateMake、n8n

賃貸管理システムと単価表は、新しく足すものではありません。 契約データは読むだけで、単価表と耐用年数の表はいまあるファイルをそのまま読みます。

役割を2つに分けているのが、この構成の要点です。 Azure AI Vision の Caption と Dense Captions は英語のみで提供されているとされ、さらに画像分析4.0のキャプションは特定のAzureデータセンターのリージョンでのみ利用できるとされています。公開されている表では、東日本は「キャプションを除く」側にのみ印が付いています。

そのため、日本語の説明文を画像分析に書かせる構成は取れません。 代わりに画像分析へは領域の切り出しをさせます。Dense Captions は最大10か所の領域の境界ボックスの座標を返すとされ、denseCaptionsResulttextconfidenceboundingBox が並びます。座標と信頼度は言語に関係しません。 タグ付けは tagsResultnameconfidence を、物体検出は objectsResult にそれらと boundingBox を返します。

日本語の説明は、生成AIに作らせます。 座標で絞った領域と入居時・退去時の2枚を Claude API に渡し、見え方を書かせます。英語のキャプション文は担当者に見せません。なお、画像分析4.0は非推奨とされ、2028年9月25日に廃止される予定が示されています。 長く使う仕組みにするなら、移行の選択肢を前提に置いてください。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

立会いアプリから住戸フォルダへ写真が保存されたことを起点にします。 事務所へ戻るまでに一次案ができている形を狙います。日次のまとめ処理にはしません。 繁忙期は1日に3件から4件回るので、まとめると全部が夕方以降に寄ります。

合図は、アプリ側で「立会い終了」を押した時点です。1枚ごとに動かすと、対応づけが途中の状態で計算が走ります。そのとき揃っている写真を1組として扱い、処理済みの住戸には印を付けます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
退去時の写真部屋タグ・部位タグ付きの画像。撮影の順番立会いアプリ
入居時の写真同じ部屋タグ・部位タグ付きの画像住戸フォルダ
入居時チェックシート入居時に記録した既存の傷・汚れの一覧住戸フォルダ
契約データ住戸ID、入居日、退去日、内装の仕様賃貸管理システム
単価表・耐用年数の表部位ごとの最小単位・単価・年数・割合の下限表計算ソフト

質を決めるのは、上の3つです。 入居時の写真が無ければ比べる相手がなく、入居時チェックシートが無ければ「入居時から既にあった」という記録が使えません。どちらも無い箇所は判定不能にしかなりません。

契約データの入居日と退去日は、必ず機械から引きます。 生成AIは画像のメタデータを読まないとされているので、写真から撮影日は分かりません。日付は文字として別に渡します。いちばん下の行は社内にあるものをそのまま使い、担当者ごとにばらばらに使われていること自体を直します。

Step3

データの取得方法を決める

写真は住戸フォルダから直接読みます。鍵は、部屋タグと部位タグでキーを作れることです。 roompart を組にした living/wall_a のような文字列を作り、同じキーのものを対にします。

取るものどこから何に使うか
領域の座標と信頼度denseCaptionsResult見るべき領域の切り出し
タグ名と信頼度tagsResult部位タグの取り違えの検知
物体の座標と信頼度objectsResult残置物・設備の位置の把握
入居日・退去日、単価・年数賃貸管理システム/表計算ソフト入居期間と金額の計算

タグを部位タグの検算に使えるのが、思わぬ拾いものです。 公開されている例では、家の外観の写真に grass outdoor house yard roof が信頼度つきで返っています。浴室と記録された写真に屋外のタグが強く出ていれば、付け間違いを疑えます。

呼び出しは Analyze Image の API で、featuresdenseCaptions Tags Objects を含めます。入居時と退去時は、それぞれ別に分析にかけます。 2枚をまとめて差を返す機能ではありません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 画像分析へ渡せる形にする … 入力は JPEG、PNG、GIF、BMP、WEBP、ICO、TIFF、MPO、20メガバイト未満、50×50ピクセルより大きく16,000×16,000ピクセル未満とされています
  2. 生成AIへ渡す寸法の調整 … 1枚あたり8000×8000ピクセル、10メガバイトまでです。1リクエストに20枚を超える画像を入れると、そのリクエストの全画像により厳しい寸法制限がかかります。 各辺2000ピクセル以下にそろえるか、1回の呼び出しを20枚以下に抑えます
  3. 向きの統一 … 天地が逆の写真をそろえてから比べます
  4. 明るさの記録 … 明るさを数値で持ち、極端に違う対には印を付けます。明るさの差を変化として拾わせないためです
  5. 対の作成 … 同じ roompart のキーで対にします。対が作れないものは、ここで判定不能として外します
  6. 位置情報の除去 … 送信前に、画像に埋め込まれた位置情報を落とします

2番の枚数の制限は、実装の形を決めます。 1住戸で20か所を撮れば入居時と退去時で40枚です。部位ごとに1回ずつ呼べば、1回あたり2枚で収まります。 まるごと1回で送ると、寸法の制限に当たって細かい傷が読めなくなります。

4番を省くと、変化ありの件数が跳ね上がります。 カーテンを開けた写真と閉めた写真では、同じ壁が違う色に見えます。数値で持っておけば、後から「明るさの差が原因だった」と説明できます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、2枚の写真を見比べて変化の有無を選び、それぞれの見え方を日本語で書くことだけです。 領域は処理側が番号で渡し、生成AIはその番号を指すだけにします。

見るもの何を返させるか判断できないときの扱い
対になった2枚changedunchangedundetermined迷ったら undetermined
入居時・退去時の見え方日本語の説明。評価の言葉を入れないout_of_frametoo_dark
広がりpointpartialwhole の3択数字では書かせない
モデルの確からしさhighmediumlow低いものは人へ回す

右端の列が、この構成では特に効きます。 画角や明るさが違うだけの差を changed にすると、一次案が使いものになりません。「区別がつかない」という選択肢を用意し、そこに逃がします。

させないこと理由
通常損耗か借主負担かの区分精算の金額に直結する。人が決める
負担割合・金額の計算耐用年数と入居期間からの計算。推測させない
数量・面積・寸法の数字個数や大きさの見積もりは概算にとどまるとされている
損耗の原因の断定引越しのときか搬入のときかは、写真からは分からない
座標の生成座標と位置特定の出力は近似的とされている。番号で指させる
入居時に写っていない箇所の推測写っていないものは判定不能。埋めない

1行目を守らせる仕組みは、指示文ではなく出力の形に置きます。 区分を書く項目をスキーマに持たせなければ、書く場所がありません。指示文だけで禁じると、「通常の使用による範囲と思われます」と説明文に混ざってきます。 3行目も同じで、extent を3択にしてあるのは数字を書かせないためです。

Step6

指示内容を固定する

あなたは賃貸住宅の退去立会いの記録を作る担当者です。入居時の写真(Image 1)と
退去時の写真(Image 2)を見比べ、変わっている箇所と見え方を日本語で書いてください。

【この住戸の情報】
住戸ID: {unit_id}/部屋: {room}/部位: {part}
入居時の撮影日: {before_date}/退去時の撮影日: {after_date}
(写真から撮影日は読み取れません。上の値だけを使ってください)

【見るべき領域】
{regions}
(画像分析が返した領域です。findings では、この region_id だけを使ってください)

【入居時チェックシートの記載】
{move_in_notes}
(記載のある傷・汚れは unchanged とし、note_for_human にその旨を書いてください)

【change の選び方】
- changed ....... Image 2 に、Image 1 には見られない状態がある
- unchanged ..... 見え方に差が無い。入居時チェックシートに記載がある場合も含む
- undetermined .. 比べられない。理由を undetermined_reason に書く

【厳守事項】
- 通常損耗か、経年変化か、借主の責めに帰すべき損耗かを書かないでください。
  負担区分は人が決めます。区分にあたる言葉を説明文に混ぜないでください。
- 原因を書かないでください。「引越しのときについた」など、写真から分からない
  ことを推測せず、見え方だけを書いてください。
- 面積・寸法・個数を数字で書かず、extent を選ぶだけにしてください。
  数量は担当者が採寸して入れます。
- 座標を作らず、位置は region_id で指してください。
- Image 1 に写っていない範囲は undetermined とし、undetermined_reason に
  out_of_frame または no_before_photo を入れてください。
- 明るさ・画角・向きが違うだけの差を changed にしないでください。区別がつかない
  ときは undetermined とし、理由に angle_differs または too_dark を入れてください。
- 写真に人が写っていても、誰かを特定しないでください。
- appearance_before と appearance_after には見えている状態をそのまま書き、
  比べた評価の言葉を入れず、迷ったときに changed を選ばないでください。

「区分にあたる言葉を混ぜない」と書いても、説明文には漏れてきます。 だから出力の形のほうで受け止めます。指示文は漏れを減らすための二重の網です。入居時チェックシートを渡すのは、既にあった傷を毎回拾わせないためです。

画像はテキストより前に置き、複数の画像を送るときはそれぞれの前に「Image 1:」のような短いラベルを置くとされています。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 構造化出力を使い、スキーマに合う形だけを返させます。

{
  "unit_id": "",
  "room": "",
  "part": "",
  "findings": [
    {
      "region_id": "",
      "change": "changed | unchanged | undetermined",
      "appearance_before": "",
      "appearance_after": "",
      "extent": "point | partial | whole",
      "model_confidence": "high | medium | low",
      "undetermined_reason": "no_before_photo | out_of_frame | too_dark | angle_differs | none",
      "note_for_human": ""
    }
  ]
}

構造化出力は、応答をスキーマに沿わせる仕組みです。 スキーマ違反での再試行が要らないのが、日々80件を回す処理では効きます。ただし、使える書き方には範囲があります。 オブジェクトでは additionalPropertiesfalse にする必要があり、minimummaximum といった数値の制約、文字列の長さの制約、パターンの指定は使えないとされています。

この制限が、設計をひとつ決めます。 負担割合を生成AIに返させるなら、0から1の範囲をスキーマで縛りたくなります。それができないなら、範囲外の値が返っても機械的には止まりません。 割合を計算処理の側に置く理由が、ここにもあります。

項目埋めるのは理由
change appearance_* extent生成AI見え方の判断
region_id、領域の座標・信頼度処理側座標を作らせない
負担割合・金額の候補処理側(計算)推測させない
負担区分スキーマに項目を持たない
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
住戸フォルダPower Automate のトリガー立会い終了の合図で写真の組を取る
賃貸管理システム読み取りのみ住戸ID、入居日、退去日、内装の仕様
Azure AI VisionAPI呼び出し領域の座標、信頼度、タグ
Claude APIAPI呼び出し変化の有無と日本語の説明
単価表・耐用年数の表ファイルの読み取り最小単位、単価、年数

賃貸管理システムへは書き込みません。 この構成が出すのは一次案までで、確定データを作るのは担当者の操作です。書き込みを足すと、区分が決まる前の金額が正式な記録として残ります。

負担割合の計算は、次の材料から行います。

入力出どころ
補修の最小単位(壁は平方メートル単位など)自社のルール表
単位あたり単価自社の単価表
数量担当者が採寸して入れる
入居期間契約データの入居日と退去日
部位ごとの耐用年数自社のルール表

割合は、耐用年数から入居期間を引いた年数が、耐用年数に対してどれだけかという形で出します。 金額の候補は、単位あたり単価に数量を掛け、その割合を掛けたものです。東京都のガイドラインでは、破損部分の補修費用は最小単位で経過年数を考慮して負担割合を算定するとされています。

Step9

人が確認する

人が見るのは全件です。 第10章の18分は、確認を省いて作った数字ではありません。省いたのは、写真を探す時間と、20か所を1つずつ開いて見比べる時間です。

  1. 判定不能を先に見る … 入居時の写真が無い箇所、画角が違う箇所。ここが多い住戸は一次案を使いません
  2. 変化ありの箇所を見るappearance_beforeappearance_after を読み、必要なら写真を開きます
  3. 拾えていない箇所が無いかを見る … 立会いで気になった箇所が一覧に出ているか。出ていなければ手で足します
  4. 区分を決める … 通常損耗・経年変化/借主の責めに帰すべき損耗/判定不能を選びます
  5. 数量を入れ、記録を残す … 採寸した値を入れて金額を確定し、誰がいつどの区分にしたかを残します

3番目を省かないでください。 画像の5%未満の物体は通常検出されず、近くに置かれた物体も検出されにくいとされています。細い擦り傷や家具の陰の汚れは一覧に出ません。一次案は出発点で、見落としが無いことの保証ではありません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
入居時の写真が無い部位がある判定不能。 比べずに人へ回す。件数を住戸ごとに数える
入居時の写真が全景だけ部位の対が作れない。判定不能として一覧に出す
部位タグが付いていない写真処理に入れず担当者へ戻す。推測でタグを付けない
タグと部位タグが食い違うtagsResult と照らし、印を付けて人へ回す
画角・明るさが大きく違うundetermined の理由として記録し、撮り直しを促す
画像が寸法・サイズの上限を超える縮小してから送る。細かい傷は寄りの写真を別に用意する
1回の呼び出しの枚数が多すぎる部位単位に分けて呼ぶ。 20枚超で寸法の制限が厳しくなる
キャプションが返らない特定のリージョンのみ。 リージョンを確かめる
残置物で壁が見えない・二度処理した判定不能として扱う。住戸IDと立会い日で重複を弾く

上の2行が、実際にはいちばん多く出ます。 画像分析の問題ではなく、入居時の撮影が決まっていなかったという問題です。 比べる相手が無いという状態は、精度を上げても変わりません。

Step11

記録を残す

  • 入居時・退去時の写真と、部屋タグ・部位タグ・撮影の順番
  • 画像分析が返したJSONの全文(denseCaptionsResulttagsResultobjectsResult
  • 生成AIが返した findings と、そのとき渡した領域の一覧
  • 計算に使った単価表と耐用年数の表の内容(そのときの版)
  • 担当者が決めた区分と、決めた人・決めた日時
  • 一次案と最終の明細の差(どの箇所の判定が覆ったか)と、判定不能の件数

4番目で「そのときの版」を残すのは、単価表が改定されるためです。 改定後に過去の精算を見直すと、金額が合わない理由が分からなくなります。最後の行は、この仕組みを育てる材料です。 判定が覆った箇所を並べると、説明のどこが人の判断とずれているかが見えます。判定不能の件数は、撮影の手順が守られているかを表します。

04実装レベルの3段階

最小構成:入居時と退去時の写真を2枚ずつ手でAIの画面に貼り、変化と見え方を書かせる / 1部位ごとの見比べ
半自動化:上記+部位タグで写真を自動で対応づけ、画像分析で領域を切り出して一次案を一覧にする / 写真の対応づけと、変化箇所の抽出
本格構成:上記+契約データと単価表をつなぎ、経過年数を考慮した金額の候補まで出す / 一次案の作成全体。区分の決定は人

最小構成では件数がさばけません。 1部位ずつ貼り付けるので、手作業と変わりません。確かめるための段階です。 半自動で、45分が25分前後になります。 写真を探して並べる10分がほぼ消え、見比べの20分が短くなります。残るのは判断と金額を出す作業です。本格構成で18分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動の一覧を2か月見ると、判定不能の多い担当者と、部位タグが抜けている物件が先に分かります。そこを直してから金額の計算をつなぐほうが、一次案を信じてもらえます。 撮影がそろわないうちに本格構成を作ると、比べられていない箇所の金額だけが並びます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
80 件
1件あたり現在時間
45 分
1件あたり導入後時間
18 分
現在  80件 × 45分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 80件 × 18分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
36h
削減率
60%
年間削減時間
432h
年間金額換算(時間単価3,500円)
151万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 月に数十件以上の退去立会いを扱い、入居時の写真とチェックシートが住戸ごとに残っている賃貸管理会社。立会いの撮影の手順を社内で決め直せて、部屋と部位のタグを付けてから撮る形に変えられる場合。部位ごとの補修の最小単位と単価の表を持っていて、契約データから入居日と退去日を機械で引ける場合。
向いていない
  1. 入居時の写真を撮っていない、または住戸ごとにそろって残っていない場合。退去が月に数件で、担当者が1名に固定されており、判断のぶれがそもそも起きていない場合。撮影の手順を変えられず、立会いのたびに画角も枚数も担当者まかせのままにする場合。なお、どこまでを借主の負担とするかという法的な判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の退去から10件を選ぶ(うち数件は、精算でもめたものを入れる
  2. 入居時と退去時の写真を部位ごとに手で並べる
  3. 手元のAIサービスに、同じ部位の2枚を貼り付ける
  4. 「この2枚を見比べて、退去時にだけ見えている状態があれば、その見え方を日本語で書いてください。通常損耗か借主負担かは書かないでください。 原因も書かないでください。面積や寸法の数字も書かないでください。入居時の写真に写っていない範囲は『判定不能』としてください」と指示する
  5. 出てきた内容を、当時の立会い記録と突き合わせる

2番で手が止まったら、そこが最初の課題です。 部位ごとに並べられない住戸が半分を超えるなら、撮影の手順を決めるのが先です。

出てきた内容判断
当時拾った箇所がおおむね出た対応づけの自動化に進む。構成は有効
頼んでいない区分や原因を書いてきた指示の書き方と出力の形で直る。構成は有効
明るさや画角の差を変化として出した撮影の手順が先。 AIの問題ではない
入居時の写真が無くて比べられない住戸が多い入居時の撮影から直す。 ここが本体

下の2行は珍しくありません。 失敗ではなく、見比べに20分かかっていた理由が1つ分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
入居時と退去時で撮る位置・画角が違う部屋ごとに立ち位置と向きを決め、同じ順番で同じ枚数を撮る。 壁は玄関側から時計回りに A から D と固定する
部位タグが付いていない写真があるアプリ側で部位を選ばないと撮影に進めない作りにする。 ファイル名の後付けは続かない
照明とカーテンの状態が違う撮影の手順に「照明を点ける」「カーテンを開ける」を入れる。明るさが違うだけで変化ありと出る
フラッシュのテカリが汚れに見える窓を背にしない立ち位置を決める。光の反射は新しい汚れと見分けにくい
入居時の写真が無い・少ない判定不能として人へ回す。 無理に比べさせない。件数を毎月数える
画像が縮小されて細かい傷が読めない大きい画像は縮小されることがある。傷は寄りでも撮り、送る前に寸法をそろえる
1回の呼び出しに写真を詰め込む20枚を超えると全画像に厳しい寸法制限がかかる。 部位単位に分けて呼ぶ
キャプションが使えないリージョンにリソースを作る4.0のキャプションは特定のリージョンのみ。東日本はキャプションを含まない側
説明文が日本語で返ると思い込むキャプションは英語のみ。 日本語の説明は生成AIに作らせる
小さい傷が物体検出に出ない画像の5%未満の物体は通常検出されない。 Dense Captions の領域とタグも併せて見る
AIが負担区分まで書いてしまう出力のスキーマに区分の項目を持たせない。 指示文だけでは漏れる
割合の範囲をスキーマで縛ろうとするminimum maximum は使えない。割合は計算処理の側で出す
提供終了の予定を見ていない画像分析4.0は非推奨とされ、2028年9月25日に廃止の予定。移行の選択肢を確かめる

上の5行は、すべて撮影の話です。 この構成の成否は、入居時と退去時に同じ場所を同じように撮れているかで決まります。 標準化を後回しにすると判定不能ばかりの一覧ができ、担当者が一次案を見なくなります。

撮影の標準化は、1枚の紙に収めてください。 部屋を回る順番、立ち位置、撮る部位、枚数、照明とカーテンの状態。この5つが決まっていれば足ります。 入居時の撮影にも同じ手順を使い、2年後の退去で比べられる写真を作ります。下の3行は、知らないと設計をやり直すことになる制約です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 退去者の氏名、部屋番号、入居期間、室内の写真、精算の金額です。写真には表札、郵便物、残置物、鍵の番号が写り込みます。

  1. 氏名と部屋番号を外してから送る退去者の氏名と部屋番号は個人情報です。 ファイル名にもフォルダ名にも入れず、住戸IDに置き換えて外部のAPIへ送り、対応表は社内にだけ置きます
  2. 写り込みを撮影の手順で減らす … 表札、宅配の伝票、残置された書類が写ります。手順に「書類と表札は写さない」を入れ、写った写真は送らず判定不能にします
  3. 位置情報を落とし、人物を特定させない生成AIはメタデータを読まず人物も名指ししないとされていますが、読まれないことと送らないことは別です。 位置情報は送信前に落とし、写真に人を写さない運用にします
  4. 一次案を退去者に見せない … 区分が決まる前の金額を見せると、後から変えるのが訂正ではなく交渉になります。出すのは人が決めたあとの明細だけです
  5. 決定の記録を必ず残す … 誰がいつどの区分にしたかを残します。説明を求められたときに出せるかどうかで、信頼されるかが決まります
  6. どのリージョンへ送るかを先に決める … キャプションが使えるリージョンが限られるため、国内のリージョンを使うという社内の規程と両立しない場合があります
  7. 法的な判断を代替しない … 東京都のガイドラインでは、原状回復は「借主の……責任によって生じた住宅の損耗やキズ等を復旧すること」とされ、経年変化及び通常の使用による損耗・キズ等の修繕費は家賃に含まれているという考え方が示されています。どの状態がどちらにあたるかは、自社の基準と契約の内容、必要に応じて専門家の助言によります
  8. 説明義務を置き換えない … 同じガイドラインでは、宅地建物取引業者に重要事項説明のときの書面での説明が義務付けられているとされています

誤りが起きた場合のリスクは、入居時からあった傷を請求してしまうことと、変化を見落として請求しそこねることの2つです。 前者は退去者とのトラブルになり、後者は貸主への説明になります。前者のほうが重いので、迷った箇所は判定不能に倒す設計にしてあります。

10まず何から始めるか

1週目:撮影の手順を1枚の紙にする

部屋を回る順番、立ち位置、撮る部位、枚数、照明とカーテンの状態を決めます。壁は玄関側から時計回りに A から D と固定します。 その週の立会いから使い、現場で守れるかを見ます。守れない項目は、その場で減らしてください。

2週目:10件で手で試す

先月の退去から10件を選び、写真を部位ごとに並べてAIの画面に貼ります。当時の立会い記録と突き合わせ、拾えた箇所と拾えなかった箇所を数えます。 頼んでいない区分や原因を書いてこないかも、ここで見ます。

3週目:ルール表を読める形にする

単価表と耐用年数の表を、機械から読める形に直します。部位の名前を、撮影の部位タグと同じ文字列にそろえるのが中心です。 ずれていると、計算のたびに対応づけが要ります。

4週目:対応づけと一次案までをつなぐ

部位タグで写真の対を作り、画像分析と生成AIを呼び、変化箇所の一覧を出すところまで作ります。この時点では金額を出しません。 変化箇所と判定不能の一覧だけを1か月見てもらいます。

2か月目: 契約データと単価表をつなぎ、金額の候補を出します。区分の欄は人が選ぶ形にし、選んだ結果を残します。3か月目以降: 一次案と最終の明細の差を毎月数え、どの部位で判定が覆りやすいかを見ます。判定不能の件数が住戸あたり数か所まで下がった時点で、この構成は完成です。 入居時の撮影を変えた効果が出るのは、その住戸が退去するときなので数年かかります。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-23/最終更新:2026-09-23
確認した内容情報源確認日
Dense Captions の返却(座標・信頼度)。キャプションは英語のみ特定のリージョンのみImage captions 4.02026-09-23
4.0の機能一覧と入力要件。東日本はキャプションを含まない2028年9月25日に廃止予定画像分析とは2026-09-23
objectsResult の返却。画像の5%未満の物体は通常検出されないこと物体検出2026-09-23
tagsResult の返却と、住宅の外観の例に返るタグコンテンツ タグ2026-09-23
原状回復の定義。経年変化・通常損耗の修繕費は家賃に含まれること。最小単位で経過年数を考慮して負担割合を算定すること。重要事項説明時の説明義務東京都: 賃貸住宅トラブル防止ガイドライン2026-09-23
複数画像の比較。20枚超で寸法制限が厳しくなること。メタデータを読まない人物を特定しない・個数と座標が概算であることVision2026-09-23
構造化出力の仕組みと、数値・文字列長・パターンの制約が使えないことStructured outputs2026-09-23

どの損耗をどちらの負担とするかは、自社の基準と契約の内容、必要に応じて専門家の助言によって決めてください。 本記事は東京都のガイドラインで確認できた考え方の範囲だけを扱っており、個別の事案の結論や特約の有効性には触れていません。運用前に最新版を確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。 </content> </invoke>

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