Webサイト運用はAIでどこまで回る?|更新・計測・改善の線引き

「AIを入れれば、サイトの更新はほとんど自動で回るようになるはずだ」「サイトの運用は制作会社に頼んでいるから、社内でAIのことまで考えなくていい」。法人サイトを広報・営業・人事など複数の部署で回している会社では、どちらもよく聞く見立てです。けれども、運用の中身を工程に分けて見ると、どちらも少しずれています。AIで軽くなるのは各工程の下ごしらえで、何を載せるか、何を消すか、どの改善を採るかを決める仕事は社内に残ります。つまり、Webサイト運用のAI化は自動で回る仕組みを買うことではありません。本当は、工程ごとにAIへ渡す範囲を決め、公開ボタンを誰が持つかを先に固める作業です。この記事では、公開後の決まった業務を5つの工程に分け、工程ごとの渡し方、権限の線、減った手間の数え方、四半期の見直しまでを整理します。
カメ先生サイト運用のAI化は、更新を丸ごと機械に任せることだと思われがちなんだけど、本当は、工程ごとの下ごしらえを渡して、決める仕事を人の手に残す組み替えなんだ。
カメ子お知らせの下書きをAIが作っても、載せるかどうかは人が決める、ということですか。
カメ先生そう。しかも複数の部署が原稿を出すサイトだと、決める人が部署ごとに違う。だから工程を分けて、どこまでを渡し、どこで人が止めるかを表にしておく必要があるんだ。
カメ子工程を分けないと、どこをAIに任せたのか誰にも分からなくなる、ということですね。
- Webサイト運用を掲載・差し替え・点検・月次の読み・改善の5工程に分けると、AIに渡せるのは各工程の下書き・洗い出し・候補出しだと分かる
- 公開・削除・表現の可否・改善案の採否はAIに決めさせない。AIに更新を実行させるなら、専用のアカウントを作り「下書きまで」の権限から始める
- 減った手間は工程ごとに月の時間で数え、確認に増えた時間も同じ表に載せる。渡す範囲は四半期ごとに広げるか戻すかを決める
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誤解1:AIを入れれば、更新は自動で回る
生成AIは、原稿の下書き、表記の揺れの洗い出し、数字の要約といった作業を確かに速くします。ただ、サイトの更新は文章を作る作業だけで成り立っていません。誰から依頼が来て、どの資料が正しく、いつまで載せ、誰が確認したかという流れの上に乗っています。この流れが決まっていないまま下書きだけが速くなると、確認待ちの原稿が積み上がるだけです。
もう1つのずれは、AIの出力には必ず確かめる手間が付くことです。お知らせの日付、製品の価格、担当部署の名前は、1字違っても問い合わせや苦情につながります。AIが作った下書きを確かめる時間は、手で書いていたときには無かった新しい仕事です。この時間を見込まずに「自動で回る」と考えると、担当者の手間はむしろ増えたように感じられます。
調査の数字も、運用の詰まりが文章作りだけではないことを示しています。富士フイルムビジネスイノベーションが2024年9月に事業会社のマーケティング担当者500名に行った調査では、Webサイトの運用に課題を感じる人が81.2%、課題の中身では「分析結果を具体的な改善施策に結びつけられない」が56.4%、「十分な時間・人員を割けていない」が50.5%でした。
つまり、詰まっているのは下書きの速さより、読んだ数字を打ち手に変えるところと、そもそも人手が足りないところです。AIはそこにも効きますが、効くのは判断の前の材料づくりまでで、判断そのものは残ります。この前提を、運用に関わる部署の全員で共有するところから始めます。
誤解2:運用は外に頼めば、社内に仕事は残らない
サイトの運用を制作会社や運用支援の会社に頼んでいる法人は少なくありません。頼んでいる場合でも、外の会社が自分で決められることは限られています。新製品のお知らせをいつ出すか、終わったキャンペーンのページを消すか、採用ページの文言をどこまで言い切るかは、どれも社内の誰かが決めないと進みません。
外の会社がAIを使い始めると、届く原稿や改善の提案の量は増えます。量が増えるほど、社内で「載せてよい」「この案は採る」と返す人の手間が先に詰まります。頼む範囲を広げても、決める仕事はむしろ社内に寄ってくる、というのが実際の姿です。
なお、管理画面の土台の更新、証明書やドメインの管理、保守を外にどこまで頼むか、費用や契約に何を書くかといった技術の保守の話は、この記事では扱いません。そちらは別の記事「サイトの保守は何をどこまで頼むか」にまとめています。
この記事が扱うのは、頼んでいるかどうかに関わらず社内で回す必要がある「中身の運用」です。外の会社が担う工程があれば、表の担当の欄に会社の名前を書けば足ります。どの工程を誰が担っても、公開ボタンを誰が持つかの線は同じです。
前提:複数の部署で回す法人サイトの「中身の運用」
この記事は、法人サイトを1人の担当者ではなく、Web担当と複数の部署で回している会社を前提にします。製品の情報は事業部、ニュースは広報、採用は人事、問い合わせの窓口は営業というように、原稿の出どころと確認する人がページごとに違う形です。小さなサイトを1人で更新している場合は、表の担当の欄が全部同じ名前になるだけで、考え方は変わりません。
「中身の運用」とは、公開した後のサイトで毎月くり返す仕事のことです。お知らせを載せる、古い記述を差し替える、導線や表記を点検する、月次の数字を読む、改善の打ち手を選ぶ、の5つが中心になります。サイトを作り直す制作の工程や、全ページを棚卸しする表づくりは、毎月の仕事ではないので外しています。
部署が多いサイトほど、AIを入れる前に詰まりの場所がはっきりします。よくあるのは、原稿は届いたが根拠の資料が付いていない、確認する人が休みで掲載が止まる、掲載を終える日が誰にも決められていない、という3つです。AIは原稿を速く作れても、決める人がいない詰まりは解けません。
そこで最初にやるのは、AIの道具を選ぶことではなく、工程を分けて担当と確認者を書き出すことです。工程の表ができてから、どの欄をAIに渡すかを決める順番にすると、後で「どこまでAIがやったのか」で揉めずに済みます。
手順1:公開後の決まった業務を5つの工程に分ける
中身の運用を5つの工程に分け、それぞれの頻度、AIに渡す範囲、人が決めることを並べると次の表になります。工程の名前は自社の言い方に合わせて変えてかまいません。大事なのは、右の2列を工程ごとに分けて書くことです。
| 工程 | 中身 | 頻度の目安 | AIに渡す範囲 | 人が決めること |
|---|---|---|---|---|
| 1 掲載 | お知らせ・ニュース・イベント告知の掲載 | 週に数回 | 部署の資料からの下書き、見出し・説明文の案 | 載せるか、いつ載せ、いつ下ろすか |
| 2 差し替え | 価格・組織名・数字・写真などの記述の更新 | 月に数回 | 差し替える箇所の洗い出しと差し替え文の案 | どの記述が正しいか、表現の可否 |
| 3 点検 | 切れたリンク・古い表記・問い合わせまでの導線 | 月1回 | 点検結果の一覧づくりと、直す順の案 | 直すか、消すか、残すか |
| 4 月次の読み | 検索とアクセスの数字の変化を読む | 月1回 | 前月との差の要約と、変化したページの抜き出し | どの変化を本物と見るか |
| 5 改善 | 読みから打ち手を選んで直す | 月1回 | 打ち手の候補と、候補ごとの根拠 | どの案を採り、どれを見送るか |
表を作ると、AIに渡す範囲の言葉がそろっていることに気づきます。下書き、洗い出し、要約、候補です。どの工程でも、AIは決める手前の材料までを作り、決めるのは右端の列の人という形になります。この形を崩さないことが、運用のAI化の芯です。
表の頻度は、自社の実際の件数で書き直します。前の四半期の更新履歴を見れば、お知らせが月に何本、差し替えが何件あったかが分かります。件数の多い工程ほど、AIに渡したときの効き目は大きくなりますが、確認の手間も件数に比例して増えます。
ページの棚卸しの表(全ページを1行ずつ並べ、残す・消すを判定する表)は、この5工程の外に置きます。棚卸しは半年や1年に1回の作業で、作り方は別の記事「ディレクトリマップに書く項目一覧」で扱っています。毎月の点検は、その表があれば対象のページを絞って回せます。
手順2:どの工程から渡すかを3つの問いで決める
5つの工程を一度にAIへ渡すと、確認の手間が一度に押し寄せて、運用が止まります。渡す順番は、工程ごとに3つの問いを当てて決めます。1つ目は、AIに渡す材料が社内でそろっているか。2つ目は、AIが間違えたときに読者に届く前に止められるか。3つ目は、出来を見る人が決まっているか、です。
1つ目の問いで多くの会社がつまずくのは、掲載の工程です。お知らせの下書きを作らせるには、部署から届く資料に日付・対象・問い合わせ先がそろっている必要があります。材料が欠けたまま下書きを作らせると、AIはもっともらしい日付や窓口を埋めてしまいます。材料の形が決まっていない工程は、後回しにします。
2つ目の問いでは、点検と月次の読みが先に来ます。点検の一覧や数字の要約は、社内で読まれるだけで、そのままサイトに出るわけではありません。間違いがあっても読者に届く前に人が気づけるので、最初にAIへ渡すのは、出力が社内で止まる工程からが安全です。
3つ目の問いは、部署が多いサイトで特に効きます。改善の候補をAIに出させても、どの部署の誰が採否を決めるかが決まっていなければ、候補の一覧は誰にも読まれずに残ります。出来を見る人の名前が書けない工程は、まだ渡す段階にありません。この3つで順番を付けると、多くの場合、点検→月次の読み→差し替え→掲載→改善の順になります。
工程1 掲載:お知らせの下書きは、部署の資料から作らせる
掲載の工程でAIに渡すのは、部署から届いた資料をもとにした下書きと、見出し・説明文の案です。社内向けの資料は、日付や対象者が箇条書きで並んでいるだけのことが多く、そのまま載せると読みにくい文になります。AIはこれを読者向けの文に整えるのが得意です。
下書きを作らせるときは、資料にある事実だけで書くこと、資料に無い日付・金額・人名は空欄のまま残すこと、文の末尾に使った資料の箇所を添えることを指示に入れます。資料に無いことは書かせず、書いた根拠の場所を示させるのが、確認の時間を短くするいちばんの近道です。
部署から届く依頼の形もそろえておきます。最低限、掲載を始める日、掲載を終える日、根拠の資料、部署の確認者の4つが欠けていないかを、AIに受け取り時に確かめさせるのは有効です。掲載を終える日が空欄のお知らせは、半年後に古い情報として残るので、空欄のまま受け取らない決まりにします。
グーグルの検索セントラルの生成AIコンテンツに関するガイダンスは、正確さ・品質・関連性を優先すること、タイトルや説明文、画像の代替テキストまで適切にすることを求めています。お知らせ1本でも、見出しと説明文の案はAIに出させつつ、事実と合っているかは部署の確認者が見ます。
工程2 差し替え:直す箇所の洗い出しをAIに任せる
差し替えは、価格の改定、組織名の変更、拠点の移転、製品の名称変更などに合わせて、サイト中の記述を直す工程です。部署が多いサイトでは、同じ情報が製品ページ、会社概要、採用ページ、資料のダウンロードページに散らばっていて、1か所だけ直して他が古いまま、という事故が起きやすくなります。
ここでAIに任せるのは、直すべき箇所の洗い出しです。全ページの本文を書き出したファイルを渡し、旧い社名や旧い価格を含む箇所を、ページと前後の文付きで一覧にさせます。言い回しが違う書き方(略称、表記の揺れ、数字の全角と半角)まで拾えるのが、単純な文字の検索との違いです。
ただし、洗い出しの一覧は漏れも誤りも含みます。画像の中の文字、PDFの資料、埋め込んだ動画の説明はAIの一覧から漏れやすいので、これらは別に担当者が見ます。逆に、過去の沿革として旧い社名を残すべき箇所まで「直す候補」に入ることもあります。
差し替えの文案もAIに出させてかまいませんが、どの記述が正しいかを決めるのは、その情報を持つ部署です。価格なら事業部、組織名なら総務や広報というように、正しさを決める部署を、差し替えの種類ごとに表に書いておくと、Web担当が判断を抱え込まずに済みます。
工程3 点検:切れたリンクと古い表記を一覧にする
点検は、月に1回、サイトの導線と表記に傷がないかを見る工程です。見る対象は、切れたリンク、問い合わせや資料請求までの導線、終わったキャンペーンへの案内、古い年号や「最新」「今なら」といった時期に縛られる表現です。リンクの点検そのものは専用の道具で機械的に出せるので、AIは結果の整理に使います。
AIに任せやすいのは、点検の結果を「直す」「消す」「残す」の候補に分け、直す順を付けた一覧にするところです。たとえば、問い合わせの導線の途中にある切れたリンクは先、何年も前のお知らせの中の外部リンクは後、というように、読者への影響の大きさで並べさせます。並べた理由も1行ずつ書かせます。
時期に縛られる表現の洗い出しは、AIが特に役に立つ所です。「今年」「来月から」「新登場」のような言葉は、書いた時点では正しくても、時間がたつと誤りになります。日付の無いまま時期の言葉を使っている段落を拾わせると、人が読んで探すより早く見つかります。
どの候補を直し、どれを消すかは、Web担当とページを持つ部署が決めます。リンク切れを見つけた後の直し方(転送の設定や、消したページの後始末)は、別の記事「リンク切れと404はどう直す?」で扱っています。点検の工程は、見つけて並べるところまでと割り切ると回しやすくなります。
工程4 月次の読み:数字の要約と、根拠の数字をセットで出させる
月次の読みは、検索とアクセスの数字が前の月とどう変わったかを読み、改善の材料にする工程です。サーチコンソールの検索パフォーマンスのレポートでは、クリック数・表示回数・クリック率・平均掲載順位を見られ、GA4ではページごとの閲覧や問い合わせの数を見られます。数字の書き出しは毎月同じ形にそろえておきます。
AIには、書き出した表を渡して、前月との差が大きいページの抜き出しと、変化の要約を作らせます。このとき、要約の1行ごとに、もとになった数字と表の行を並べて書かせるのが決まりです。数字の無い要約は、それらしく読めても、どこまで本当か確かめられません。
AIは数字の読み違いもします。期間の違う表を混ぜて比べる、件数の少ないページの割合の変化を大きく扱う、といった誤りはよく起きます。サーチコンソールのヘルプも、直近のデータは暫定の値で、その後に変わることがあると書いています。締めた後の数字だけを渡し、件数が少ないページは別に分けると、読み違いが減ります。
どの変化を本物と見るか、季節や広告の出稿で説明できる変化かどうかは、人が判断します。先の調査で「分析結果を具体的な改善施策に結びつけられない」が56.4%だったように、詰まりやすいのは読みの後です。だから月次の読みは、次の改善の工程とつなげて回します。
工程5 改善:打ち手の候補はAI、採否は人
改善の工程では、月次の読みで見つかった変化に対して、どのページの何を直すかを選びます。AIに出させるのは、打ち手の候補と、候補ごとの根拠、期待できる変化、直すのに要る作業の量です。候補を3〜5個に絞らせると、会議で比べやすくなります。
候補を出させるときは、自社のサイトで過去に試した打ち手と、その結果も一緒に渡します。過去の結果を渡さないと、AIは一般論の打ち手を毎月くり返し出してきます。去年試して効かなかった案が、また候補の1番目に並ぶこともあります。
採るか見送るかは、Web担当とページを持つ部署の責任者が決めます。改善案には、文言の変更のように表現の可否が絡むもの、導線の変更のように他部署の数字に響くものが混ざるからです。AIの候補の一覧には、採った・見送ったと、その理由を書き戻すと、翌月の候補の質が上がり、決めた経緯も残ります。
個別の打ち手の中身(導線の組み直し、表示の速さの改善、サイト内検索の活かし方など)は、それぞれ別の記事で扱っています。この記事では、候補を出すのはAI、選ぶのは人、という役割の線だけを押さえておきます。
手順3:公開ボタンを持つ人と、AIに決めさせないこと
5つの工程に共通して、AIに決めさせないことを先に書き出します。決めさせないのは、公開するか、削除するか、その表現を出してよいか、改善案を採るか、の4つです。どれも、間違えたときに読者や取引先に直接届き、取り消しても見た人の記憶には残る判断です。
公開ボタンを持つ人は、ページの種類ごとに決めます。ニュースは広報、製品ページは事業部の責任者、採用は人事というように、内容の正しさに責任を持つ部署の確認と、Web担当の最終確認の2段にするのが一般的です。部署の確認は中身の正しさ、Web担当の確認はサイトとしての体裁と導線と、見る観点を分けておくと、確認が重複しません。
- 表現の可否には、景品表示法など表示の規制が絡むことがあります。言い切りや比較の表現が入るページは、法務や広報の確認を通す決まりを、AIの導入とは別に持っておきます
- 削除は公開より重い判断です。外部から多くリンクされているページや、取引先が参照しているページを消すと、相手の側で案内が切れます。消す前に、どこから参照されているかを確かめます
確認する人が不在のときの決まりも要ります。担当者が休みだと掲載が止まる、という詰まりは、AIを入れても解けません。代わりに確認する人を工程の表に書き、急ぎの掲載は誰の確認で出してよいかを決めておきます。
どの確認も、AIの出力にどこまで手を入れたかを記録に残します。誰が、何を見て、公開してよいと決めたかが残っていれば、誤りが見つかったときにどこで止められたかを振り返れます。
手順4:AIに更新を実行させるなら、権限は「下書きまで」から
AIの道具の中には、サイトの管理画面に入り、ページの作成や更新まで実行できるものがあります。こうした道具に運用の一部を任せるときは、人の担当者のアカウントを貸さず、AI専用のアカウントを作って権限を絞ります。権限の線は「下書きまで」と「公開まで」の2つで考えます。
広く使われているワードプレスの既定の権限を例にすると、線の引き方が分かりやすくなります。公式の説明では、寄稿者は自分の投稿を書いて管理できるが公開はできず、投稿者は自分の投稿を公開できます。注意したいのは、投稿者には公開した投稿を削除する権限も一緒に付いていることです。「公開まで」の権限を渡すと、消す権限も渡ることになります。
固定ページの公開は、既定では編集者以上の権限です。会社概要や製品ページのような固定ページをAIに直させるなら、編集者の権限が要り、他の人の投稿まで直せるようになります。ここまで広い権限をAIのアカウントに渡す理由は、多くの運用では見当たりません。自社の管理画面でも、同じ考え方で役割の中身を確かめます。
公開までの権限を渡した後も、AIが公開した更新を人が後から確かめる仕組みは外しません。外部のAI事業者とつなぐ鍵の置き場所や、送ってよい情報の線は、管理画面の側の設定の話なので、ワードプレスについては別の記事「ワードプレス7.0のAI機能」で扱っています。
手順5:減った手間を、工程ごとに月の時間で数える
AIを工程に入れたら、減った手間を感覚ではなく月の時間で数えます。数えるのは工程ごとに、入れる前の月の作業時間と、入れた後の月の作業時間です。お知らせの下書きが1本30分から10分になった、というように、1件あたりの時間とその月の件数をかけ算して出します。
同じ表に、増えた時間も載せます。AIの下書きを確かめる時間、洗い出しの一覧から誤りを外す時間、指示の文を直す時間です。減った時間だけを数えると、確認の時間がどこにも載らず、担当者の負担が見えなくなります。差し引いた時間が、本当にAIで減った分です。
| 工程 | 1件あたりの作業時間(前→後) | 月の件数 | 増えた確認の時間 | 差し引き |
|---|---|---|---|---|
| 掲載 | 自社で測る | 前の四半期の平均 | 下書きの事実確認 | 減った分から確認の分を引く |
| 差し替え | 自社で測る | 前の四半期の平均 | 洗い出しの漏れの確認 | 同上 |
| 点検 | 自社で測る | 月1回 | 一覧の誤りの除去 | 同上 |
| 月次の読み | 自社で測る | 月1回 | 要約と数字の突き合わせ | 同上 |
| 改善 | 自社で測る | 月1回 | 候補の根拠の確認 | 同上 |
数え始めの1〜2か月は、確認の時間が多めに出るのが普通です。指示の文が固まり、どこを重点的に見ればよいかが分かってくると、確認の時間は下がってきます。数字が下がらない工程は、材料がそろっていないか、渡す範囲が広すぎるかのどちらかを疑います。マーケティング全体の工数の数え方は、別の記事「マーケの工数が読めない原因と対策」にまとめています。
手順6:四半期ごとに、渡す範囲を広げるか戻すかを決める
渡す範囲は、一度決めたら終わりではありません。四半期に1回、工程ごとに、広げる・そのまま・戻すのどれにするかを決めます。決める場には、Web担当、主な部署の確認者、運用の責任者が入ります。材料は、前の手順で数えた月の時間と、AIの出力が直された割合です。
広げる条件の例は、直された割合が3か月続けて低い、確認の時間が下がり続けている、誤りが読者に届いたことが無い、の3つがそろうことです。広げ方も1段ずつにします。点検の一覧づくりから、直す順の決定の案まで、というように、1回の見直しで広げるのは1工程につき1段までにします。
戻す条件も先に決めておきます。AIの下書きの誤りがそのまま公開された、確認者が交代して見る観点が引き継がれていない、道具の仕様が変わって出力の質が落ちた、といったときは、渡す範囲を1段戻します。戻すことを失敗と扱わないと決めておくと、問題が隠されずに上がってきます。
見直しでは、工程の表そのものも更新します。部署の組み替えで確認者が変わった、新しい種類のページが増えた、といった変化を反映させます。表の版の日付を残しておくと、どの時点で誰に何を渡していたかを後から確かめられます。
サイト運用のAI化でつまずきやすい進め方
工程を分けずにAIを入れたときに起きやすい形を並べます。どれも、AIの出来の問題ではなく、運用の決めごとが無いことから起きています。
- AIの道具を先に選び、工程の表と確認者を後回しにしている
- 部署の資料がそろわないまま、お知らせの下書きをAIに作らせている
- AIに担当者のアカウントを貸し、誰の操作か記録で見分けられない
- 「公開まで」の権限を渡し、削除の権限も付いていることに気づいていない
- 月次の要約を数字と突き合わせずに、そのまま会議の資料にしている
- 改善の候補の採否を書き戻さず、毎月同じ案が出てくる
- 減った時間だけを報告し、確認に増えた時間を数えていない
なかでも多いのは、最初の項目です。道具の機能から入ると、使える機能に合わせて工程を後から決めることになり、決める人の線があいまいになります。順番は、工程の表、確認者、渡す範囲、道具の順です。
4つ目の項目は、気づいたときには事故が起きていることが多いものです。AIが古いと判断したページを消してしまった、という形です。削除はAIの候補にとどめ、実行は人が行うと最初から決めておけば、この事故は起きません。
よくある質問
Q. 担当が1人の小さなサイトでも、工程の表は要りますか。
要ります。表の担当と確認者の欄が同じ名前になるだけで、どこまでをAIに渡しているかを書いておく意味は変わりません。1人で回している場合こそ、確認を飛ばしやすいので、公開前に見る項目を表に書いておくと、忙しい月でも抜けにくくなります。
Q. 運用を頼んでいる外の会社がAIを使うのは、止めるべきですか。
止める必要はありませんが、どの工程でAIを使っているか、出力を誰が確かめているかを聞いて、工程の表に書いておきます。外の会社が作った原稿でも、公開してよいかを決めるのは社内の確認者です。保守や契約の取り決めは、この記事の範囲の外です。
Q. AIが作ったお知らせを、そのまま載せてよい条件はありますか。
この記事では、そのまま載せる運用は勧めていません。部署の資料にある事実だけで書かせ、根拠の箇所を示させても、日付や金額の確認は人が行います。直しがほとんど入らない状態が何か月も続いた工程に限り、四半期の見直しで公開までの権限を検討する、という順番にします。
Q. 月次の読みをAIに任せると、分析の力が社内に残らなくなりませんか。
要約を読むだけになると、その心配はあります。だから要約には必ず根拠の数字を並べさせ、どの変化を本物と見るかの判断は人が書く形にします。判断の理由を毎月書き残していくと、それ自体が社内の分析の蓄えになります。
まとめ
Webサイト運用は、AIを入れるだけで自動では回りません。複数の部署で回す法人サイトでは、公開後の仕事を掲載・差し替え・点検・月次の読み・改善の5工程に分け、工程ごとにAIへ渡す範囲(下書き・洗い出し・要約・候補)と、人が決めること(公開・削除・表現の可否・改善の採否)を表に書くところから始めます。渡す順は、出力が社内で止まる工程からにし、AIに更新を実行させるなら専用のアカウントで下書きまでの権限から始めます。減った時間は確認に増えた時間と並べて月ごとに数え、四半期ごとに渡す範囲を1段ずつ広げるか戻すかを決めてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
コンテンツ制作・SEOにAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
